【Side 三人称】
大士とカンナが光の柱に巻き込まれて行方不明になった翌日。
デーモン軍は、ホーリーエンジェモンの城に向けて進行中だった。
ファイターモードとなった黒いインペリアルドラモンとカオスモンは、特に急ぐ様な仕草も見せず、ゆっくりとホーリーエンジェモンの城へと向かっていた。
カオスモンはともかく、アリスとエリスのインペリアルドラモンを標的としている黒いインペリアルドラモンも、まるで最初から仇敵がそこを動かないと分かっているかのように進んでいる。
デーモン軍は、その2体の進行速度と同じ速度で進んでいたため、ホーリーエンジェモンの城まで丸1日掛かって進攻していた。
「……ったく、あいつらトロトロ動きやがって………尻でも蹴っ飛ばしてやろうか?」
2体の進行速度の遅さに苛立ちを見せるガルフモン。
「やめておけ。あの2体は強大な力を持ち、ホーリーエンジェモン達を敵と認識しているが、我々の味方と言う訳では無い。目的の邪魔をする存在だと認識されれば、奴らは平然と我々に刃を向けるだろう」
そう言ってデーモンがガルフモンを窘める。
「それにどのみち、ホーリーエンジェモン達はあの城を捨てて逃げるという選択肢は取れん。ミレニアモンの封印の地はあそこだからな。逃げる事が出来ぬ相手を徐々に追い詰めていくというのも悪くは無かろう」
デーモンはニヤリと笑みを浮かべる。
「へ、へぇ………デーモン様がそう仰るなら………」
デーモンの言葉に、ガルフモンはおずおずと了承した。
ホーリーエンジェモンの城では、葵達が目前に迫るデーモン軍を迎え撃つために準備していた。
「じゃあ、作戦を確認するけど、まず優花とハックモンがデーモンを担当」
葵が話し出す。
「ええ」
「了解だ」
2人は迷わずに頷く。
「私とリュウダモンでガルフモンを」
「うむ」
リュウダモンも頷く。
「アリスとエリスとインペリアルドラモン、カイル君のビクトリーグレイモン。それからカトレアさんのヤタガラモンで黒いインペリアルドラモンを」
「え、ええ………」
「………………」
「うん」
「承ります」
葵の言葉にカトレア、カイルは普通に返事を返したが、アリスはやや戸惑い気味に。エリスも頷きはしたが戸惑いを隠せていない。
葵もそれに気付いていたが、話を進めた。
「そしてカオスモンは、エミリアとウォーグレイモン、クラウディアとメタルガルルモン、ティファニアのメルヴァモン、シャルロットとクレシェモンが相手をする」
「は、はい………」
「あ、ああ………」
「頑張ります………!」
「………わかった」
ティファニアは握り拳を作って気合を入れるように、シャルロットはいつも通り冷静な様子で頷く。
しかしエミリアとクラウディアは、どうしても不安は隠せなかった。
「最後に、クオンとシスタモン達は、皆を護るって大事な役目があるから、頑張ってね」
葵は最後にクオンに笑みを向ける。
「うん! がんばる!」
クオンは小さいながらも意気込みを見せる。
すると、
「……………アオイ、本当にこの振り分けで行くのか………? いや、黒いインペリアルドラモンにアリスとエリスのインペリアルドラモンを宛がうのは分かる。2人のインペリアルドラモンもファイターモードになれば、勝機は見えるのだからな。だが、カオスモンは…………」
クラウディアが不安を隠せない様子で問いかけた。
クラウディアとエミリアは、カオスモンの力を直に見ている。
ウォーグレイモンとメタルガルルモン。
更にはメルヴァモンとクレシェモンが力を合わせても、太刀打ちできないと考えているのだ。
「クラウディアが不安になるのも分かるよ。でも、私はこれが一番勝率が高いと思ってるし、大士がここに居ても、きっと同じ選択をすると思うよ」
「「えっ………?」」
葵の言葉に、クラウディアとエミリアは声を漏らした。
「前にもね、似た様な状況があったの。強大な力を持った敵が複数いて、こっちの戦力がギリギリ足りないって事が。その時も大士は、同じ敵に一度負けた仲間達を、迷うことなく宛がったよ。あの2人なら勝てる可能性があるってね」
「「………………」」
「そして実際、その2人は一度完膚なきまでに負けた相手に打ち勝った。大士の信じた通りに…………」
「私達にも………同じ事が出来ると………?」
「少なくとも、私は信じてるよ。だって大士が好きになった子達だからね」
葵は笑みを浮かべてそう言い切る。
「「「「………………………」」」」
エミリア、クラウディア、アリス、エリスの4人は目を伏せていたが、
「そこまで言われたらやるしか無いわね!」
「ん……タイシの気持ちを裏切る訳には行かない………!」
「全力を尽くします!」
「やってやるさ!」
それぞれが気合を入れるように意気込む。
その様子を見て葵は頷き、
「それじゃ………行くよ!」
デーモン軍に向き直ってDアークを掲げた。
――MATRIX
EVOLUTION――
「「マトリックスエボリューション!!」」
葵と優花が自分の胸にDアークを押し当てると、2人の身体がデータ化。
自分のパートナーと1つになる。
「リュウダモン進化!」
「ハックモン進化!」
自分のパートナーと1つになったリュウダモンとハックモンは究極体へと進化する。
「オウリュウモン!!」
「ジエスモン!!」
究極体となった2体が飛び出す。
続けて、
「エクスブイモン! リアライズ!」
「スティングモン! リアライズ!」
アリスとエリスのD-3からエクスブイモンとスティングモンが飛び出す。
そしてそのまま、
「エクスブイモン!」
「スティングモン!」
「「ジョグレス進化!」」
螺旋を描きながら1つとなり、
「「パイルドラモン!!」」
更なる輝きに包まれ、
「「究極進化!!」」
更に巨大化。
「「インペリアルドラモン!!」」
皇帝竜へと進化を遂げた。
そして、
「ビクトリーグレイモン! リアライズ!」
「ウォーグレイモン! リアライズ!」
「メタルガルルモン! リアライズ!」
「クレシェモン……リアライズ……!」
「ヤタガラモン、リアライズしてください」
「おねーちゃんたち! りろーど!」
カイル、エミリア、クラウディア、シャルロット、カトレア、クオンがそれぞれのデジヴァイスからパートナーを呼び出し、
「スピリットエボリューション!」
最後にティファニアがミネルヴァモンのデータを纏い、
「メルヴァモン!!」
メルヴァモンへと進化した。
クオンのクロスローダーから出たシスタモン達を除いて、それぞれがデーモン軍へと向かっていく。
「…………皆」
その背中を、大士が居ないために進化出来ないドルモンが悔しそうに見送っていた。
「…………やはり向かってくるか………!」
自分達に向かってくるオウリュウモン達を見て、デーモンは予想通りだと声を漏らす。
「ったく、何であいつらはこうも無駄な抵抗が好きなんですかねぇ?」
ガルフモンは呆れたようにそう言う。
その瞬間、
「永世竜王刃!!」
巨大な斬撃が飛んできてガルフモンを吹き飛ばした。
「どわぁあああああああああああっ!?!?」
ガルフモンは声を上げる。
「むっ?」
デーモンが声を漏らしながらそちらを確認すると、
「「はぁあああああああああああああっ!!」」
オウリュウモンとジエスモンが真っ直ぐにこちらに向かってきていた。
ジエスモンが腕の剣でデーモンに斬りかかり、オウリュウモンがガルフモンに向かっていく。
「ふん」
デーモンはひらりとジエスモンの一閃を躱すと、
「ほう? 1人でこの我の相手をするつもりか?」
余裕をもった表情でジエスモンに問いかける。
すると、
「逆だ」
「何………?」
ジエスモンの言葉にデーモンは怪訝な声を漏らす。
「貴様程度、私1人で十分だという意味だ」
その言葉に、デーモンは目付きを鋭くする。
「舐めるな!!」
声を荒げながら、ジエスモンに襲い掛かった。
一方、黒いインペリアルドラモン:ファイターモードは、インペリアルドラモンの姿を確認すると、まるで待ちかねたように移動速度を上げ、インペリアルドラモンへと向かっていく。
「「来るぞ!」」
インペリアルドラモンが叫ぶ。
「「手筈通り俺達が囮になる! ビクトリーグレイモンとヤタガラモンは隙を見て攻撃してくれ!」」
「おう!」
「分かった!」
その言葉に、ビクトリーグレイモンとヤタガラモンは応える。
「俺が突っ込む! ヤタガラモンは援護を頼む!」
「任された!」
ビクトリーグレイモンとヤタガラモンがそう言葉を交わす。
そして、
「「ポジトロンレーザー!!」」
インペリアルドラモンが先制攻撃とばかりにポジトロンレーザーを放った。
だが、
「ォオオッ!!」
黒いインペリアルドラモンが右腕を一振りすると、腕に装備されている爪から斬撃が飛び、ポジトロンレーザーを切り裂いて四散させる。
そして左腕のポジトロンレーザーの砲門を向けると、漆黒のポジトロンレーザーを放った。
「「くっ!」」
インペリアルドラモンは無理に対抗しようとせず、回避に徹する。
その瞬間、
「
ヤタガラモンが脚からエネルギー波を放ち、黒いインペリアルドラモンの顔面に直撃させる。
しかし、煙が晴れると無傷の姿を晒した。
だが、
「ドラモンブレイカー!!」
煙によって視界が塞がれている内にビクトリーグレイモンが至近距離まで接近し、大剣の一撃をぶちかました。
「オオォ……!?」
流石の黒いインペリアルドラモンでもこれには仰け反る。
「「メガデス!!」」
そして即座にビクトリーグレイモンが離れた瞬間に、インペリアルドラモンがメガデスを放った。
暗黒球体に呑み込まれる黒いインペリアルドラモン。
「「……………」」
「……………」
「……………」
それでも油断なく着弾点を見据える3体。
煙が晴れていくと、多少のダメージは負ったようだが、まだまだ余裕でその場に佇む黒いインペリアルドラモンの姿があった。
一方、カオスモンはホーリーエンジェモンの城へ向かって真っすぐに歩みを進めていた。
「うぉおおおおおおおおおっ!!」
そのカオスモンにウォーグレイモンがドラモンキラーで殴りかかる。
「………………!」
カオスモンがウォーグレイモンを認識すると、バンチョーレオモンの右腕から大刀を出現させ、ドラモンキラーを弾くように剣を振る。
「くっ………!」
軽々と弾かれ、ウォーグレイモンは声を漏らすものの、その勢いには逆らわずに距離を取った。
その瞬間、無数のミサイルと、巨大な1発のミサイルが降り注ぎ、カオスモンを氷漬けにする。
メタルガルルモンが放ったミサイルとガルルトマホークだ。
氷漬けにされ、動きを止めたかに思えたカオスモンだったが、氷の表面が震えたかと思うと、次の瞬間には粉々になり、無傷のカオスモンが再び歩き出す。
そこへ、
「アイスアーチェリー!!」
「ファイナルストライクロール!!」
氷の矢がカオスモンの胸に当たり、メルヴァモンが前方回転斬りを仕掛ける。
しかし、氷の矢は何もせずとも弾かれて粉々になり、メルヴァモンの一撃は大刀で防がれる。
カオスモンはメルヴァモンの剣を弾くと、再びホーリーエンジェモンの城へ向かって歩みを進める。
まるで、目的の物を優先して、邪魔な虫は最低限払うかのような仕草だ。
「くっ……止められない………!」
その様子を見ていたクラウディアが悔しそうに声を漏らす。
「ウォーグレイモン! 頑張って!」
エミリアはウォーグレイモンに声援を送る。
「ガイアフォース!!」
ウォーグレイモンはカオスモンの側面方向から高密度のエネルギー球を作り出してそれを投げ付ける。
「…………………」
だが、カオスモンは左腕となっているダークドラモンの頭だけを向けると、暗黒球体を無造作に放った。
「ッ!?」
その暗黒球体は、ガイアフォースを簡単に呑み込む。
ウォーグレイモンは咄嗟に回避したが、暗黒球体はそのまま直進して空へと消えた。
「くっ………僕達にこいつを止められるのか………!?」
ウォーグレイモンは圧倒的なカオスモンの力を前にして、戦慄の声を漏らすのだった。
「フレイムインフェルノ!!」
デーモンがジエスモンに向けて灼熱の業火を放つ。
だが、ジエスモンの周囲にアト、ルネ、ポルが顕現して結界を張り、その炎を防ぐ。
「フッ………大口を叩いた割には防戦一方ではないか………!」
デーモンは余裕の声色でそう言う。
「………………」
すると、ジエスモンは無言で右手の剣をデーモンに向け、合図の様に横に振るった。
その瞬間、デーモンの纏っていたローブに無数の線が入り、バラバラに切り裂かれる。
「何ッ!?」
デーモンが驚愕の声を漏らし、切り裂かれたローブの下から悪魔のような姿をしたデーモンの姿が露になった。
『何か言ったかしら?』
優花が煽る様にそう言う。
「貴様………!」
デーモンが忌々しそうにジエスモンを睨み付ける。
「ならば、我の真の恐ろしさを思い知らせてやる」
デーモンの身体中から闇のエネルギーが溢れ、デーモンの姿が巨大化していく。
『へぇ………』
「燃え尽きろ! ケイオスフレア!!」
デーモンは口から黒い炎を放ち、ジエスモンに向かって攻撃を仕掛けるのだった。
「永世竜王刃!!」
「のわぁああああああっ!?」
オウリュウモンが放つ斬撃を必死に避けるガルフモン。
見た所、オウリュウモンが優勢の様だ。
しかし、
「葵………」
『うん………』
オウリュウモンも葵も、決して楽観の表情はしていなかった。
何故なら、これまで幾度か攻撃を仕掛けているが、最初の不意打ちを除けば有効打が一発も入っていないのだ。
逃げ足が速いと聞けば情けなく聞こえるが、このガルフモンは異様に回避能力が高いのだ。
今までも不思議だったのだが、インペリアルドラモンやオウリュウモンの攻撃を不意打ちでまともに受けても、ガルフモンはぴんぴんしていた。
いや、不意打ちでも致命傷を避けていたのだ。
『………思ったよりも手古摺りそうだね』
「ああ。油断なく行こう」
オウリュウモンは気を引き締め、ガルフモンへと向かうのだった。
「羽黒!!」
ヤタガラモンが翼から放つ黒い光が黒いインペリアルドラモンの視界を遮断する。
「トライデントガイア!!」
「ポジトロンレーザー!!」
その隙にビクトリーグレイモンとインペリアルドラモンが必殺技を叩き込む。
その様子を見て、
「これなら……行けるかも………」
アリスが呟いた。
戦う前は不安に圧し潰されそうだったが、始まってみれば中々優位に戦いを進める事が出来ている。
「ん、やっぱり仲間と戦うことは大切」
エリスがそう言う。
その言葉通り、1対1だったら戦闘力の差で押し切られていただろう。
しかし、3体のデジモンが力を合わせることで、格上の相手に互角………
いや、それ以上に戦う事が出来ている。
「ようし! このまま一気に………!」
カイルが声援を飛ばす。
だがその時、
「……………!」
インペリアルドラモンばかりを狙っていた黒いインペリアルドラモンは、突如として振り返った。
その視線の先に居たのはヤタガラモン。
黒いインペリアルドラモンは、ヤタガラモンに向かって飛翔する。
「なっ!?」
突然の行動に、ヤタガラモンは反応できなかった。
黒いインペリアルドラモンは、左腕に装着されているポジトロンレーザーの砲台から放熱板を展開させ、ビームを槍状に発生させた。
これはポジトロンレーザーのエネルギーを圧縮し、近接武器として敵を貫く必殺技、『ポジトロンレーザーランス』だ。
突き出されたそれは、ヤタガラモンの右の翼の付け根辺りを貫く。
「ぐわぁあああああああああああああああああああああああっ!?!?」
翼を貫かれた痛みにヤタガラモンは悲鳴を上げる。
「ヤタガラモン!?」
それを目撃したカトレアが思わず叫んだ。
黒いインペリアルドラモンは、ゆっくりとランスを引き抜くと、ヤタガラモンは力を失ったように落下していく。
ヤタガラモンはそのまま地面に墜落し、砂煙を巻き上げた。
更に黒いインペリアルドラモンは、放熱板を収納し、今度は砲撃として放とうとしていた。
「やめろぉっ!!」
その瞬間ビクトリーグレイモンが大剣で斬りかかって来たため、黒いインペリアルドラモンは、攻撃を中断して回避する。
「くっ! こいつ、戦いを学習してるのか!?」
ビクトリーグレイモンはそう零す。
先程まで本能の様にインペリアルドラモンを狙っていただけで、ビクトリーグレイモンやヤタガラモンからの攻撃は避ける素振りも見せなかった筈なのに、今は回避してみせた。
そうなると、黒いインペリアルドラモンを倒す難易度は一気に跳ね上がる。
ビクトリーグレイモンとインペリアルドラモンは、これまで以上の脅威を感じるのだった。
ホーリーエンジェモンの城へ向かって歩みを進めるカオスモン。
ウォーグレイモン、メタルガルルモン、クレシェモン、メルヴァモンが攻撃を続けるが、僅かに足を止めるのが精一杯だった。
「このままじゃ………」
メタルガルルモンが後ろに目をやる。
カオスモンがこのまま進み続ければ、あと15分もしない内にホーリーエンジェモンの城に辿り着いてしまう。
だが、対抗策は何も無い。
タイムリミットは、刻一刻と迫っていた。
その頃、リジアルのサーバー王国王都では…………
豪華な馬車が城門を出た所だった。
その車内には、上品なドレスを着たリティナが座らされており、国民達はお祝いムードになっている。
その理由は、リティナ王女の輿入れだ。
国民には、サーバー王国と、隣国ブラウザ帝国の同盟の為に、帝国の皇太子………現皇帝にリティナ王女が嫁ぐことになったと知らされている。
王族の嫁入りとなれば、国民はお祝いムードになるのも仕方がない。
しかし、その実態はレオナルドが究極体と言う脅しに屈し、同盟とは名ばかりの属国に成り下がる条件を呑んだだけだが。
そんな事は知らない国民達は、馬車の窓からチラリと見えるリティナに歓声を上げていた。
だが、その馬車は実は、中からは開けられないようになっており、リティナを監禁しつつ護送しているのだ。
更には、リティナと皇帝の婚礼の儀は、一週間後である。
本来なら、王族や皇族の結婚式ともなれば、最低でも数ヶ月以上の準備期間を取るのが普通だ。
だが、帝国側がより早くお互いの国の融和を図るためと言う理由で急がせたのだ。
しかも、その資金の大部分は王国持ちである。
そして、リティナと同時にレオナルドや主だった貴族達も婚礼の儀に出席する為に出発している。
「…………………」
リティナは馬車の中で俯いていた。
リティナの脳裏には、今までの学院生活の思い出が思い起こされていた。
そしてもちろん、一番思い出すのはカイルとの思い出だ。
デススコーピオンから救われた衝撃の出会い。
一緒にデジタルダンジョンを攻略した事。
友人であるクラウディアが嵌められ、兄であるレオナルドと決闘することになり、味方の居なかったクラウディアに、大士に続いて味方になってくれた事。
追い詰められ、どんなピンチに陥っても諦めず、最後には奇跡を起こしてアグモンをジオグレイモンに進化させ、レオナルドのティラノモンを打ち破った事。
冒険者実習での遭難事件。
互いの想いを確認し、更には身体まで重ねてしまった。
その後も、色々な事があった。
「カイル…………せめて最後にあなたに…………」
会いたかったという言葉を飲み込む。
「いえ、会ってしまえば逆に諦められなくなってしまいますね………」
リティナは自嘲するように笑った。
「私は王族。元より自分の望む相手との結婚など無理だと分かっていた筈です」
自分に言い聞かせるように呟く。
「そう………それが国にとって意味の無い婚姻だとしても…………」
リティナはそう言うと、一筋の涙を流した。
「カイル………私の心はここに置いていきます………この涙と共に……………例え身体は皇帝の物になろうとも………心だけは………ずっと、あなたの傍に……………」
そう呟き、目を開けると、リティナの表情からは悲壮感は消えていた。
ただ、自分の役割果たすだけの………
そう、まるで人形のように……………………
そんなリティナを、馬車は変わらず運んでいった。
オリジナル異世界編第51話です。
場面がころころ変わり過ぎですね。
すみません。
まあ本番は次回からです。
そして最後にリティナが輿入れに…………
さてどうなる事やら?
次もお楽しみに。
P.S すみません、今回の返信はお休みします。