【Side 三人称】
「はぁああああああああああっ!!」
ウォーグレイモンがカオスモンに向かってドラモンキラーを繰り出す。
しかし、ギィンと言う音と共に、カオスモンが振るった大刀により弾かれる。
「うわぁっ!?」
その勢いでウォーグレイモンは少し吹き飛ばされた。
すぐに体勢を立て直し、構えを取るが、
「はぁ……はぁ………」
ウォーグレイモンは荒い息を吐く。
既にドラモンキラーは、幾度もの激突で罅だらけになっており、数度の切り結びで砕けるだろうと想像できる。
対して、カオスモンが振るうバンチョーレオモンの口から飛び出している大刀は傷一つ無い。
「くそ………何て強さだ………!」
ウォーグレイモンの後方で援護していたメタルガルルモンが悔しそうにそう漏らす。
メタルガルルモンも、装備されている全ての武装を駆使して戦っていたが、有効打は与えられておらず、残りの残弾も心許ない。
「ちっ………何て奴だい………」
メルヴァモンも大剣を支えにして、何とか立っていられるほどに疲弊している。
「皆………」
後方支援に専念していたクレシェモンだけは体力的に余裕があったが完全体の為、究極体を超える力を持つカオスモン相手には焼け石に水だ。
「…………………」
カオスモンは、相変わらずの無言で、悠々と一歩一歩歩みを進めている。
「……………くっ」
ウォーグレイモンはチラリと後ろに目をやると、エミリアやクラウディア達の姿がハッキリと見える位置まで近付いている事が分かる。
「ッ…………!」
ウォーグレイモンは、何かを決意したような表情になると、
「メタルガルルモン、一瞬でいい。奴の動きを止めてくれ」
そう呼びかけた。
「何をする気だ……!?」
「奴の動きが止まったところで、渾身の一撃を叩き込む! それしか手は無い!」
「ッ…………! 分かった! 残された全ての弾を使う!」
メタルガルルモンは一瞬目を見開くが、ウォーグレイモンの覚悟を悟り、頷く。
「行くぞ!」
「ああ!」
互いに呼びかけると、メタルガルルモンが飛び立つ。
「うぉおおおおおおおおおおっ!!」
メタルガルルモンは武装を全弾発射し、更にはガルルトマホークも追撃で放つ。
更に、
「コキュートスブレス!!」
絶対零度の息を続けて放った。
怒涛の三段攻撃に、カオスモンは今までよりも分厚い氷に覆われた。
しかし、今までの結果から推測するに、大したダメージは与えられていないだろう。
だが、氷が分厚い分動きを止める時間は僅かに増す。
ウォーグレイモンはその隙を見逃さず、両腕のドラモンキラーを頭上で合わせると、
「ブレイブトルネード!!」
高速回転を始め、金色の竜巻となる。
「貫けぇぇぇぇぇぇっ!!」
氷によって動きを止めたカオスモンに向かって突撃した。
氷を瞬く間に削り取り、カオスモンの胴体に直撃する。
「ウォーグレイモン! 頑張って!!」
それを見ていたエミリアが声援を送る。
その思いを現すように、握っていたデジヴァイスがオレンジ色の強い光を放ち、ウォーグレイモンに力を与える。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
エミリアの思いを受け、更に回転の激しさを増すウォーグレイモン。
「ウォーグレイモン………!」
メタルガルルモンが、
「行けっ……!」
メルヴァモンが、
「行け……!」
クレシェモンが、
「行って………!」
シャルロットが、
「行くのねーーー!!」
イルククゥが、
「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
そしてクラウディアが。
全ての望みを賭けるように声を漏らす。
そして、
―――バキィィィィィィィィィィィィン!
砕け散る音が響いた。
ドラモンキラーの砕ける音が。
「そ、そんな………………!?」
エミリアが絶望的な声を漏らす。
「………………ッ!?」
ウォーグレイモンも目を見開く。
そして同時に、カオスモンを覆っていた氷も砕け散り、カオスモンは右腕の大刀を振り被っていた。
「ッ!? ブレイブシールド!!」
ウォーグレイモンは回避は間に合わないと判断したのか背中の装甲を分離させ、前面で合わせて盾にする。
だが、
「覇王………両断剣………!」
大刀にエネルギーを纏わせた一振りの前には、全く意味を為さなかった。
ブレイブシールドは容易く砕かれ、ウォーグレイモンの胸当ても大きく斜めに切り裂かれて血が吹き出る。
剣圧により生じた衝撃波はウォーグレイモンの鎧に罅を入れ、破片を飛び散らせた。
「ぐぁあああああああああああああああああああああっ!?!?!?」
成す術無くウォーグレイモンは吹き飛ばされ、エミリア達の近くに吹き飛ばされる。
「ウォーグレイモン!?」
メタルガルルモンが思わず振り返りながら叫んだ。
だが、
「メタルガルルモン! 前だ!!」
クラウディアが切羽詰まった声で叫んだ。
「ハッ!?」
メタルガルルモンがそれに気付いて前に向き直った時、カオスモンが左腕のダークドラモンの頭を向けていた。
「ダークプロミネンス………!」
その口から放たれる暗黒球体。
それは巨大化しながらメタルガルルモンを飲み込む。
「うぁああああああああああああああああああっ!?!?」
暗黒球体に呑み込まれたメタルガルルモンは、身体中の装甲に罅を入れつつ吹き飛ばされ、ウォーグレイモンの隣に激突した。
「メタルガルルモンッ……!?」
クラウディアが悲痛な声を上げる。
その姿は背中のビームウイングも圧し折れ、見るからに満身創痍だ。
そして、別の場所で戦っているインペリアルドラモンも、黒いインペリアルドラモンの攻撃によって倒れ伏したところだった。
ヤタガラモンが究極体のヴァロドゥルモンに進化しているが、長くは持たないだろう。
すると、
「………やはり、状況は良くないようですね」
そう言って現れたのはホーリーエンジェモンだった。
「ホーリーエンジェモン!」
エミリアが声を漏らす。
「何故ここに!? あなたがやられてしまえば、ミレニアモンの封印が……!」
クラウディアもそう言う。
ミレニアモンの封印は、ホーリーエンジェモンがキーとなっており、ホーリーエンジェモンが倒されれば封印が容易く解かれてしまうのだ。
「ですが、このまま何もしないわけにはいきません。あなた達が倒されれば、私には成す術が無いのですから………」
ホーリーエンジェモンも、覚悟を持った表情でそう言う。
「そして、ウォーグレイモンとメタルガルルモンが倒れた今、カオスモンを倒すには賭けに出る他無いでしょう」
「賭け?」
ホーリーエンジェモンの言葉に、シャルロットが声を漏らす。
「はい。私の必殺技のヘヴンズゲート。これは亜空間への門を作り出し、悪しき者をその向こう側へ葬り去る事が出来るのです。しかし、私と同等以下の相手なら吸い込むことが可能ですが、究極体以上が相手では自力で吸い込むことは不可能です」
「でも、何とかしてその門にカオスモンを押し込む事が出来れば………」
「おそらく倒す事は可能でしょう」
シャルロットの言葉にホーリーエンジェモンは頷く。
「なら、迷うことは無い………!」
シャルロットは決意した表情になる。
「少しでも可能性があるっていうのなら、賭けない道理は無いね」
メルヴァモンも不敵に笑って見せる。
「皆さん………」
迷う素振りすら見せないシャルロットやメルヴァモンの姿に、軽い驚きを見せるホーリーエンジェモン。
それから気を取り直すと、
「では、行きます……!」
そう言うとホーリーエンジェモンは光を放つ。
一対の大きな翼に白い仮面と衣を纏っていたホーリーエンジェモンは、8枚の翼となり、仮面は紫色に白い十字架が描かれた物に変わり、右腕に剣、左肩にビームシールドを装備した、戦闘形態へと変化した。
そして、
「ヘヴンズゲート!!」
ホーリーエンジェモンは剣の先で大きく円を描く。
すると、そこには金色の門が現れ、数回回転したかと思うと、中央から横開きになる様に開いていき、その向こうの亜空間が露になる。
その門は吸引力を発生させ、カオスモンを吸い込もうとするが、カオスモンは平然として微動だにしなかった。
「やはり………!」
ホーリーエンジェモンは呟く。
吸引力が意味を為さないことは予想出来ていたので落胆は無い。
「クレシェモン!!」
シャルロットが呼びかける。
「ダークアーチェリー!!」
クレシェモンが闇の矢でカオスモンの足元を狙う。
カオスモンが踏み出した先の地面の一部が消失し、カオスモンは僅かにバランスを崩した。
その時メルヴァモンが駆け込んできて、
「マッドネスメリーゴーランドDX!!」
勢いをつけた回転斬りでカオスモンを弾き飛ばそうとした。
しかし、僅かに揺らいだだけで吹き飛びはしなかった。
「チィ! 私の力だけじゃ………!」
メルヴァモンが悔しそうに舌打ちする。
「やはり無理か…………」
ホーリーエンジェモンが諦めの言葉を口にしようとした時、
「まだ!」
シャルロットが叫ぶ。
「そうだよ! 一度失敗したぐらいでへこたれたりしない!」
クレシェモンが続けて闇の矢を連続で放つ。
「一度で無理なら、何度でもやるだけさ!」
メルヴァモンが大剣を振るい続ける。
「君達………」
その姿に、ホーリーエンジェモンは感動に似た感情を覚える。
「タイシだって絶対諦めない………! なら私も諦めない………! 絶対に……!!」
シャルロットはその決意を口にする。
その時、シャルロットのデジソウルが溢れかえる。
「これは……!?」
ホーリーエンジェモンが驚く。
「デジソウルは思いの力………私の思いはタイシと共に在る事………私は、こんな所で死ぬ気は無い!」
シャルロットが紡ぐ決意の言葉。
その瞬間、溢れかえっていたシャルロットのデジソウルが集約され、高密度のオーラとなってシャルロットを覆った。
そして同時に、シャルロットの持っていたデジヴァイスicがデジヴァイスバーストへ進化を遂げる。
「クレシェモン!!」
シャルロットがクレシェモンに呼びかける。
「ッ! シャルロット!」
クレシェモンが応える。
そして、
――ULTIMATE
EVOLUTION――
デジヴァイスバーストの画面に、その文字が刻まれた。
「デジソウルチャージ! オーバードライブ!!」
シャルロットは身体中に集約されたデジソウルをデジヴァイスバーストに叩き込む。
デジヴァイスバーストから光の奔流が溢れ、クレシェモンを包み込んだ。
「クレシェモン! 究極進化っ!!」
光の中で、クレシェモンは進化する。
白い鎧を身に纏い、足には三日月のような脛当てが。
手には両刃となったハーケンを持ち、神秘的な美しさと、水と氷を操る能力を持った神人型の究極体デジモン。
「ディアナモン!!」
ディアナモンへと進化した。
「究極体へ進化を!?」
ホーリーエンジェモンが驚きの声を上げる。
ディアナモンはカオスモンを見据え、背中から長大な氷の矢を引き抜くと、
「アロー・オブ・アルテミス!!」
それをカオスモンに向けて放った。
氷の矢はカオスモンの頭に当たり、カオスモンは仰け反る。
大したダメージでは無いのか、カオスモンはすぐに顔を戻したが、
「ッ………」
目の前にディアナモンがハーケンを振り被って迫ってきていた。
カオスモンは、即座に右腕の大刀を振るって迎撃しようとする。
しかし、その一撃はディアナモンの身体を通り抜け、ディアナモンの姿は掻き消えてしまう。
そのディアナモンは幻覚だったのだ。
カオスモンはディアナモンの姿を探そうとした瞬間、
「グッドナイト・ムーン!」
上空にディアナモンはいた。
足の三日月の脛当てから、月の光のような輝きが放たれ、カオスモンを照らす。
これは、光を浴びた相手を睡眠に誘う技だ。
本来であれば、自分の実力を超えた相手には効果は薄いだろう。
しかし、カオスモンは元々自我が希薄な存在。
己の意思をはっきりとは持たず、ただミレニアモンの意思によって誘導されていただけの存在だ。
そこにディアナモンのグッドナイト・ムーンを受ければ、僅かだが意識は飛ぶ。
そして、カオスモンの動きが止まった。
その瞬間、メルヴァモンは力を振り絞ってカオスモンの左腕に組み付き、ディアナモンも右腕に組み付く。
「メルヴァモン!!」
ディアナモンがメルヴァモンに呼びかける。
「ああ! 全力だ!」
メルヴァモンも応えた。
「「はぁああああああああああああああああああっ!!!」」
2体は同時に地を蹴り、カオスモンをヘヴンズゲートに向かって引っ張っていく。
カオスモンが、漸く意識を取り戻そうとした時、ディアナモンとメルヴァモンは同時にカオスモンを離すと、
「ファイナルストライクロール!!」
メルヴァモンが強烈な大剣の一撃を放ち、
「クレセントハーケン!!」
ディアナモンがハーケンによる鋭い斬撃を繰り出す。
2体の究極体の攻撃を同時に、しかも、碌に意識が無い状態で受けたカオスモンは、成す術無く吹き飛ばされていく。
そして当然、その先にはヘヴンズゲートが。
そしてカオスモンがハッキリと意識を取り戻したのとほぼ同時に、ヘヴンズゲートに呑み込まれた。
「「ホーリーエンジェモン!!」」
ディアナモンとメルヴァモンが同時に叫ぶ。
「………ッ!」
一瞬呆けていたホーリーエンジェモンだったが、すぐにヘヴンズゲートを閉じる、
金の門が閉まり、回転しながら光の粒子となって消滅していく。
そして、その門が完全に消え去った時、
「…………やったのか?」
クラウディアが呆けた様に呟く。
ホーリーエンジェモンは頷き、
「ええ。カオスモンは亜空間へ幽閉されました。自力での脱出は不可能でしょう」
自信を持ってそう言う。
その言葉に、それぞれが安堵の息を漏らし、笑みを浮かべる。
しかし、
―――ドンッ!!!
突如として大きな打撃音。
いや、空間自体が揺らぐ。
「な、何ですか!?」
エミリアが驚愕する。
ドンッ、ドンッ!と空間が続けて揺るがされる。
「こ、これは………まさか…………!」
ホーリーエンジェモンは信じられないという表情で呟いた。
次の瞬間、先程ヘヴンズゲートがあった周辺の空間が歪み、巨大なエネルギーの放出と共に空間に穴が開いた。
そして、その空間の穴から現れたのは……………カオスモンだった。
「まさか…………次元の壁を力尽くで突破するとは……………」
ホーリーエンジェモンは戦慄の声を漏らす。
「万事休すか…………」
最後の手も破られ、打つ手が無い事を悟るホーリーエンジェモンは項垂れた。
だが、
「まだ!」
シャルロットは叫ぶ。
「分かってる! シャルロット!」
ディアナモンもカオスモンに立ち向かう。
「言った筈だよ! 何度でもやってやるってね!」
メルヴァモンも諦めの色は見せない。
「君達は…………」
こんな絶望的な状況でも、諦めずに戦いを続ける彼女達に、ホーリーエンジェモンは驚く。
「そうです……! 諦めちゃダメなんです!」
「私達はまだ生きている! ならば、最後まで足掻き続ける!」
エミリアとクラウディアが駆け出す。
向かう先は、当然自分のパートナーの所。
「ウォーグレイモン!」
「メタルガルルモン!」
2人は呼びかけながら駆け寄る。
「ウォーグレイモン! しっかりして!」
「メタルガルルモン! 目を覚ましてくれ!」
互いに呼びかけるが、ウォーグレイモンとメタルガルルモンは完全に気を失っており、動く様子は無い。
その時、同じように気を失っていたインペリアルドラモンがアリスとエリスのデジソウルを受け、ファイターモードにチェンジした所を目撃した。
「アリスさん………エリスさん…………ッ! クラウ! 私達も!」
それを見たエミリアが叫ぶ。
「ああ! やってみよう!」
クラウディアも迷わず頷く。
エミリアとクラウディアは、それぞれオレンジ色と青色のデジソウルを発生させる。
「ウォーグレイモン………! 受け取って、私の『勇気』を………!」
「メタルガルルモン………! 受け取れ………! 私の『友情』を………!」
それぞれの進化の源である思いを胸に、2人はデジソウルをパートナーへ与える。
オレンジ色の光がウォーグレイモンを。
青色の光がメタルガルルモンを包み込む。
「無理だ………例え2体が目を覚ましたとしても、戦える状態では無い………」
ホーリーエンジェモンはどうしても現実を見てしまう。
「無理とか如何かなんて、関係無いんです……!」
エミリアが言った。
「そうだ。そんな事は関係無い………私達がこうしたいからこうするんだ……!」
クラウディアも呟く。
「ただ、私達は諦めたくない……!」
「ああ。諦めるのは死んだ後でいい……!」
「私は………」
「私達は………」
「「最期まで絶対に諦めない!!」」
2人の言葉が重なる。
その瞬間、2人のデジソウルが混ざり合って、白い輝きを放った。
「こ、この光は………!?」
その白い光が、まるでタマゴの様にウォーグレイモンとメタルガルルモンを一緒に覆っていく。
「まるで……デジタマだ………」
その形を見てホーリーエンジェモンは声を漏らす。
その光のタマゴの中で、ウォーグレイモンとメタルガルルモンは変化を起こしていた。
エミリアとクラウディアの目の前で浮かび上がると、2体の身体が頭を残して輝き、頭に吸い込まれるように消えていく。
そして次の瞬間、別の形となって現れた。
ウォーグレイモンの頭はオレンジ色になり、黒く細長い胴と金色の関節部。
末端には金色の球体とブレイブシールドに似た盾状のものが付く。
メタルガルルモンの頭はほぼ変わらず、同じく黒く細長い胴と青色の関節部。
末端には黄色い棘状の突起が付いた丸みを帯びた装甲。
それぞれの個々だけでは、全くの意味が分からない形態となっていた。
しかし、エミリアとクラウディアのデジソウルが交じり合った白い光が、2体の間に集まり、形を成していく。
その形は、言うなれば腕の無い人型だ。
しかし、その腕の無い人型に、形態を変化させたウォーグレイモンとメタルガルルモンが近付くにつれ、その形態の意味に気付いた。
「これは………」
「腕………?」
そう。
ウォーグレイモンとメタルガルルモンが変化した形態は、まさしく腕そのもの。
腕の無い人型の左側にウォーグレイモンの。
右側にメタルガルルモンの末端が近付き、そのままドッキングするように合わさる。
そして白い光の人型の背中に、外側が白、内側が赤のマントが現れ、同時に光が散ってその姿が露になる。
白く、スマートな装甲に金の脚の爪。
左腕がウォーグレイモン、右腕がメタルガルルモンの頭となり、マントを翻す姿はまさしく騎士。
その時、覆っていたタマゴのような光が上から消えていき、徐々にその姿を外からでも認識できるようになる。
「これは…………?」
ホーリーエンジェモンが驚愕の表情に彩られる。
「ウォーグレイモンと………」
ディアナモンが、
「メタルガルルモンが………」
メルヴァモンが、
「………合体した……!?」
そしてシャルロットが。
それぞれが驚愕の表情を浮かべている。
2体が合体したデジモンは、ウォーグレイモンの左腕と、メタルガルルモンの右腕を、顔を隠すように交差させていたが、シャルロットの言葉と共に、勢い良く広げた。
そして、その目を見開く。
エミリアの『勇気』と、クラウディアの『友情』を宿すその瞳。
その瞳がカオスモンを射抜く。
「ウォーグレイモン………?」
「メタルガルルモン………?」
エミリアとクラウディアは、まるで確かめるように呟く。
「「エミリア………クラウディア………」」
2体が合体したデジモンは、それぞれの名を呟く。
「一体、どうなったのだ………?」
クラウディアが呟く。
「「私は………オメガモン………」」
2体が合体したデジモン、オメガモンは自分の名を口にする。
「オメガモン………って、アオイさんが言ってた……!」
「ロイヤルナイツの1体………!」
エミリアとクラウディアが、驚愕しながら呟く。
「「2人の諦めない心が奇跡を呼び、この私を目覚めさせた」」
「私達の………」
「諦めない心………」
オメガモンの言葉に、2人は声を漏らす。
「「そうだ。絶望に染まった心では、私を誕生させることは出来ない。最後まで諦めない2人の強い心が合わさった時、私が生まれた」」
オメガモンは、マントを翻しながら左腕を斜め上に振り上げると、ウォーグレイモンの口から大剣が飛び出した。
その切っ先をカオスモンに向けると、
「「混沌より生まれし悲しきデジモンよ。安らかに眠れ………」」
そう告げると一気に地面を蹴った。
そのスピードはメタルガルルモンを超える。
「速いっ!?」
クラウディアがそう口走った時には、オメガモンは既にカオスモンの元へと到達し、左腕の大剣を振り被っていた。
カオスモンは右腕の大刀で受け止めようとしたが、剣戟の強さに耐えきれず、後方に吹き飛ぶ。
「カオスモンを吹き飛ばした………!?」
今までその場を動かす事すら困難だったカオスモンを容易く吹き飛ばしたその力に驚愕する。
カオスモンは空中で制動を取り、何とか踏みとどまる。
だが、オメガモンの姿を捉えた時、オメガモンの右肩の突起が付いた装甲が開いたかと思うと、そこからミサイルが放たれた。
今までは攻撃を避ける素振りすら見せなかったカオスモンは、そのミサイルを跳び上がる事で躱す。
すると、オメガモンは右腕を突き出すと、メタルガルルモンの鼻の上の装甲が展開し、そこから小型のミサイルが無数に放たれた。
「…………!」
カオスモンは、そのミサイルを躱しつつ、躱し切れないものは大刀で斬り払う。
しかし、斬り払った大刀は凍り付いていた。
「!?」
カオスモンがその事に気を取られた瞬間、オメガモンが上空から大剣を振り被って急降下してきた。
オメガモンはそのまま大剣を振り下ろす。
カオスモンは何とか受け止めるが、そのまま眼下に叩き落され、地面に激突する。
しかし、カオスモンは即座に飛び出すと、左腕のダークドラモンの頭を向け、
「ダークプロミネンス……!」
その口から暗黒球体を放つ。
だが、それと同時にオメガモンも行動を起こしていた。
右腕のメタルガルルモンの頭を軽く振ると、その口から巨大な大砲の砲身が現れる。
その砲口をカオスモンに向け、
「ガルルキャノン!!」
そこから強力なエネルギー弾を放った。
お互いの中央で激突する暗黒球体とエネルギー弾。
激しい爆発と共に相殺される。
「な、何と言う戦いだ………!」
ホーリーエンジェモンがその激しさに戦く。
そして、2体は同時にその爆炎の中を突っ切り、剣をぶつけ合っていた。
その剣戟の強さは、先程の砲撃の激突の煙を一撃で吹き飛ばす程だ。
それが何度も交差する。
その戦いは、並の究極体が介入できるものでは無かった。
「「うぉおおおおおおおおおおおおっ!!」」
「…………!」
互いの一撃を弾き合い、距離が広がる。
すると、カオスモンは大刀を掲げ、それにエネルギーを集中させる。
しかし、オメガモンは避ける素振りを見せなかった。
何故なら、オメガモンの後ろにはエミリアやクラウディア達が居るからだ。
すると、オメガモンも大剣を掲げ、エネルギーを集中させた。
そして、
「覇王……両断剣……!」
カオスモンがその大刀を振り下ろす。
同時に、
「「グレイソード!!」」
オメガモンも、渾身の一振りを繰り出した。
巨大な斬撃がぶつかり合う。
その余波が拡散するように広がり、無数の斬撃が降り注ぎ、大地や山を切り裂いていく。
オメガモンは大剣を構えなおし、前に突き出すと一気に突撃する。
カオスモンは、それに気付くと迎撃の為に大刀を振り上げた。
オメガモンはそれに構わずに突撃する。
オメガモンの大剣がカオスモンを貫くのが早いか、カオスモンの迎撃が早いかの勝負。
「「おおおおおおおおおおおおおっ!!」」
「……………ッ!!」
2体が激突する。
その刹那。
「「なっ!?」」
オメガモンが目を見開く。
何故なら、カオスモンが大刀を引っ込めたのだ。
それにより、カオスモンの迎撃は空振りに終わり、オメガモンの大剣はカオスモンの胴体を貫いた。
「「………カオスモン……何故………!?」」
オメガモンは思わず問いかける。
答えが返ってくるとは思っていた無かった。
だが、
「……………礼を言う………」
突如として声が響いた。
「「ッ!?」」
オメガモンは驚くが、その声はカオスモン自身ではなく、その右腕………
バンチョーレオモンの口から発せられていた。
「お前達のお陰で………俺はデジタルワールドの滅びの片棒を担がずに済んだ………」
「「お前は………」」
カオスモンが大刀を引っ込めたのは、僅かに意識を取り戻したバンチョーレオモンが行った事だったのだ。
カオスモンのデータ分解が始まる。
「「バンチョーレオモン……!」」
「気に病む必要は無い。俺は元々死んだ身だ」
「「だが……!」」
「礼を言うと言った筈だ。俺はお前達に感謝している。護るべき者をこの手で傷付け、殺めてしまうことは、俺にとって何より心苦しい。それから解き放ってくれたお前達には、感謝しかない」
「「バンチョーレオモン………」」
「さらばだ。若き戦士達よ。お前達のようなものが居れば、この先も……安心……だ………」
そう言い残して、カオスモンは消え去る。
「………バンチョーレオモンも、戦っていたんですね………」
エミリアが呟く。
「ああ………戦っていたのは、私達だけでは無かった………」
クラウディアもそう口にする。
そして、バンチョーレオモンの冥福を祈るように、目を伏せるのだった。
オリジナル異世界編第53話です。
遂に登場オメガモン。
あとディアナモン。
ちょっとオメガモンの強さを表現しきれなかった気がする。
カオスモンとの戦いはあんな感じで、最後はバンチョーレオモンの意地です。
さて、最大の脅威は何とかなりましたが果たして………