【Side 三人称】
「ミレニアモンが………復活する………!」
ホーリーエンジェモンが城の跡地より現れた、黒い2つの頭を持つ影を内包した巨大なクリスタルを見上げながら、呆然と呟く。
黒い雷鳴が轟き、クリスタルが空へ上昇していく。
『クリスタル………?』
オウリュウモンの中の葵が呟く。
「凄まじいエネルギーを感じる………!」
オウリュウモンはその力を感じ取り、警戒心を強める。
「あれが………ミレニアモン………」
ジエスモンが呟くと、
「いえ、あれはまだ封印が完全に解けていない状態です。例えるなら、卵から孵化する直前………もしくは蛹から羽化する寸前の状態と言うべきでしょうか………」
ホーリーエンジェモンがそう呟く。
「これほどのエネルギーを発して尚封印が完全に解けていないだと!?」
クラウディアが驚愕する。
突然のミレニアモンの復活に、その場の誰もが驚愕し、動けないでいた。
その間にもミレニアモンは上昇を続け、発するエネルギーを増していく。
「あ………あ…………」
その光景に、誰もが恐怖を覚える。
そして、ミレニアモンから発せられるエネルギーが最大限に高まろうとした。
その瞬間、
「轟炎輪!!」
何処からともなく4つの炎の塊が降り注ぎ、クリスタルのミレニアモンに直撃。
少しだけだがクリスタルを傾かせる。
更に、
「はぁあああああああああああああああああああああああっ!!!」
上空から拳に金の光を宿らせながら、ミレニアモンに向かっていく1人の人影。
それは、
「「「「「「「「『『大士っ(おとーさんっ)!!』』」」」」」」」」
その姿を見た全員が叫んだ。
それと同時に、
「うぉらぁああああああああああっ!!!」
クリスタルのミレニアモンの上部にその拳を繰り出した。
凄まじい衝撃音と共に、クリスタルが大きく傾く。
大士はそのまま自由落下していくが、
「待たせたな! ドルモン!」
その事に何の戸惑いも見せず、大士はドルモンに向かって叫んだ。
「大士!」
ドルモンは、一目散に大士の落下地点へ向けて駆け出していた。
大士はDアークを取り出すと、ドルモンに向ける。
「行くぞ! ドルモン!」
「うん!」
大士が地面に落下する丁度その時、ドルモンがその地点に駆け込み、
――MATRIX
EVOLUTION――
「マトリックスエボリューション!!」
2人は共に進化する。
「ドルモン進化!」
大士がドルモンと一体化し、究極体へと姿を変える。
「アルファモン!!」
黒き聖騎士が降り立った。
「「「「「「「「「「アルファモン!」」」」」」」」」」
全員が希望に満ちた声色でその名を呼ぶ。
その時、上空からミタマモンが降下してきてクオンの傍に降り立った。
「クオン!」
その背からカンナが飛び降りる。
「ッ! おかーさん!」
その姿にクオンは思わず駆け寄り、抱き着いた。
「良かった……無事で………」
カンナもクオンを抱きしめる。
すると、
「カンナ、感動の再会は後だ。先ずは奴をどうにかしなければ」
ミタマモンがそう言う。
「ええ、そうね………でも、きっと大丈夫よ………」
ミタマモンの言葉に頷きながら、カンナは前を向く。
「………何故だ?」
ミタマモンが聞き返すと、
「だって、旦那様が居るんだもの」
カンナは、大士を信じ切った表情でそう言い切った。
その視線の先で、
『葵!』
「オウリュウモン!」
大士とアルファモンはその名を呼ぶ。
『うん!』
「承知!」
そして、
――BLAST
EVOLUTION――
「アルファモン!!」
「オウリュウモン!!」
「「ブラストエボリューション!!」」
2体が1つとなり、
「「アルファモン王竜剣!!」」
オウリュウモンが剣となった、究極戦刃王竜剣を持つ、アルファモン王竜剣へと進化した。
アルファモンは金の翼で飛び立つ。
それを見て、
「あれは………!」
「アルファモンとオウリュウモンのジョグレス………?」
アリスとエリスが驚愕の声を漏らす。
すると、
『少し違うわね』
ジエスモンGXと一体化している優花が言った。
『ジョグレスは、2体のデジモンが融合して、1つ上の世代に進化する方法………要は、全ての能力が掛け合わされて昇華されるって感じなんだけど、アルファモンとオウリュウモンの場合は、オウリュウモンの全ての能力を攻撃力のみに振り切った王竜剣にする事で、攻撃力のみに特化した形態になるのよ。だから、アルファモン自身の能力は、飛行が可能になった程度で、大した違いは無いわ。だけど…………』
優花がそう言いながらジエスモンGXと共にアルファモン王竜剣を見上げる。
『その攻撃力は、他の追随を許さない………!』
優花がそう言った瞬間、アルファモン王竜剣がクリスタルのミレニアモンに向かって薙ぎ払うように一閃する。
すると、巨大なクリスタルが上下に分割された。
「す、凄い………!」
エミリアがその光景を見て声を上げる。
アルファモン王竜剣は切り返す刃で更に一閃。
今度は縦に分割された。
すると、先程まで続いていたエネルギーの放出が止まる。
アルファモンは一旦離れると、
「今だ! 皆で一斉攻撃だ!!」
そう叫んだ。
その言葉に最初に反応したはジエスモンGXだった。
ミレニアモンに向かって飛翔すると、
「ナイツ・イントルーダー!!」
その身を突撃弾劾剣となり、ミレニアモンの中央を貫き、大穴を開ける。
その行動で皆が自分のやるべき事を理解し、
「「オメガモン!!」」
エミリアとクラウディアが叫ぶ。
オメガモンは右腕の大砲を向け、
「「ガルルキャノン!!」」
圧縮されたエネルギー弾を放った。
「「インペリアルドラモン!!」」
アリスとエリスが叫ぶと、
「「ギガデス!!」」
ポジトロンレーザーをドラゴンヘッドに接続し、強力な一撃を放つ。
「ビクトリーグレイモン!!」
「ファイナルガイアバースト!!」
カイルの掛け声で、ビクトリーグレイモンBMが全エネルギーを集中させたガイアブレイカーの切っ先をミレニアモンに向けると、そこから巨大な砲撃が放たれる。
「ディアナモン!!」
「アロー・オブ・アルテミス!!」
シャルロットの声に、ディアナモンが巨大で鋭利な氷の矢を放つ。
「ヴァロドゥルモン!!」
「オーロラアンジュレーション!!」
カトレアの掛け声で、ヴァロドゥルモンがパージシャインを集中させた光を放つ。
「ラブポイズン!!」
メルヴァモンが左腕の大蛇の口から毒霧を吐き出す。
「ミタマモン!!」
「灰迅雷瞳!!」
カンナの声で、ミタマモンが瞳から雷を放つ。
「おねーちゃん!!」
「グランドシスタークルス(覚)!!」
クオンの声で、覚醒シスタモンXが十字架を放つ。
そして、
「聖剣グレイダルファー!!」
アルファモンが光の剣でミレニアモンを貫く。
全ての攻撃が同時にミレニアモンに命中。
一瞬音が消えたかと思うほどの爆発音が響き、凄まじいエネルギーの開放で白く輝いて見える。
その白く輝く光の中で、ミレニアモンはそのクリスタルの身体を徐々に消滅させていった。
そんな中、
『…………コンカイハシッパイカ…………マアヨイ…………スデニ………タネハ………マカレテ………………』
誰にも届かぬ言葉を呟き、完全に消え去った。
光が消えると、そこには何もなかった。
「………………倒した………のか…………?」
ホーリーエンジェモンが、信じられないと言わんばかりの表情で呟く。
暫く待っても何も起きない所を見て、漸く事実を受け止めたようだ。
「………ま、まさか………こんなにあっさりと………!?」
大士が現れ、アルファモンに進化したと思ったら、瞬く間にミレニアモンが倒された事に、ホーリーエンジェモンは驚愕の声を漏らす。
『だから言ったじゃない。大士が居れば何とかなるって』
ホーリーエンジェモンの近くに、ジエスモンGXが降り立ちながら優花が言った。
その声は、さも当然と言いたげだ。
その隣にアルファモン王竜剣が降りて来て、着地すると同時に進化を解き、大士とドルモン、葵とリュウダモンに分離する。
ジエスモンGXも進化を解き、優花とハックモンに分離した。
すると、
「大士っ!」
葵が一目散に大士に抱き着く。
「っと! 葵………」
その勢いに押されそうになるものの、何とか踏ん張って転倒は免れる。
「よかった! 無事で………!」
葵は涙を浮かべながらそう言う。
「葵………」
その様子に、大士はまた心配をかけてしまったと反省した。
そして優花も大士に寄り添ってきて、
「心配したのよ………」
額を大士の肩に当てるようにしながらそう言った。
「優花………」
大士は愛おしそうに優花を見る。
その時、
「「タイシーーーっ!!」」
「「タイシッ………!」」
「タイシさんっ!」
「「タイシ!!」」
「旦那様!」
皆が一斉に駆け寄ってくる。
メルヴァモンも進化を解いてティファニアが駆け寄ってきている。
大士の恋人達は涙を浮かべつつ、カイルは笑みを浮かべてそれぞれが大士が無事だった事を喜んでいる。
「皆………心配かけて済まなかった………それと、よく頑張ったな」
大士は労いの言葉を賭ける。
「ホントよ………遅れて来て結局いいとこ取りしただけじゃない」
「はは………」
アリスの言葉に、大士は苦笑する。
「それにしても、よく無事だったな。ドルモンも居なかったのに………」
クラウディアがそう言うと、
「ああ………まあ………な。正直言うと結構ヤバかったんだが、カンナとミタマモンのお陰で助かったんだ」
大士はそう言いながら、遅れてクオンを抱きながら歩み寄って来たカンナに視線を向ける。
その後ろにはミタマモンも付いてきている。
「あのデジモンは………?」
エリスが尋ねると、
「紹介が遅れたわね。こっちに居るのは私のパートナーになったミタマモンよ」
「よろしく頼む」
カンナの言葉に、ミタマモンは軽く頭を下げる。
「おとーさん!」
クオンがカンナの腕から離れると、大士に駆け寄って来た。
「クオン!」
大士はしゃがみながら手を広げると、駆け寄って来たクオンを受け止めながら抱き上げる。
「えへへ! おとーさん!」
クオンは嬉しそうにタイシの頭に抱き着く。
「クオンもよく頑張ったな」
「うん!」
大士の言葉に笑顔になるクオン。
「………そう言えば、これだけは先に伝えとかなきゃいけないな」
大士はそう言うと、カンナに歩み寄り、皆の方に向き直る。
「あ~、その~………自分でも節操無いとは思ってるんだが…………カンナも恋人にする事にした」
大士は怒られる事を覚悟でそう告白した。
「よろしくね」
カンナはいつも通り飄々とした態度でそう言う。
すると、
「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」
恋人達からは、特に反応は無かった。
「あ、あれ………?」
誰も怒らないことに大士は戸惑う。
「如何したの?」
葵がそう聞いてくる。
「い、いや……怒らないの?」
大士がそう聞くと
「え? カンナさんはフツーに大士の恋人としてカウントしてたけど?」
葵はあっけらかんとそう言う。
「時間の問題と思ってたわよ」
優花もそう言った。
「…………………」
大士は如何反応していいか分からなくなり、話を変える事にした。
「…………それにしても」
大士はそう言いながら彼女達の後ろに立ち並ぶデジモン達を見回す。
オメガモンにインペリアルドラモンFM。
ビクトリーグレイモンのバーストモードにディアナモン。
ヴァロドゥルモンに覚醒したシスタモンX。
そしてミタマモン。
究極体デジモンの揃い踏みだ。
「壮観だな……………」
クオンを降ろしながら、大士はそう声を漏らす。
「ふふん………!」
その言葉に、誇らしげにするアリス達。
その時だった。
突如として激しい揺れがその場を襲ったのだ。
「うわっ!?」
「何だ!?」
それぞれが驚きつつ揺れに耐えていると、大地に亀裂が走り、それが地平の彼方まで広がっていった。
「一体何!?」
「まさか、まだミレニアモンが!?」
揺れの原因をそう予想するが、
「…………いえ、そうでは無いでしょう」
そう言ったのはホーリーエンジェモンだった。
「………デジタルワールドが、崩壊を始めているのです」
「そんな! ミレニアモンは倒したはずです!」
その言葉にエミリアがそう言うと、
「はい。ミレニアモンは、間違いなくあなた達によって倒されました」
「じゃあどうして!?」
ホーリーエンジェモンの言葉にアリスが問い返すと、
「そもそも、私が存在しているのにミレニアモンが復活した理由は、封印の基盤となるデジタルワールドそのものを破壊したからです。故にミレニアモンが復活した時点で、既にデジタルワールドの崩壊は始まっていたのです」
「そんな………私達がミレニアモンを倒したのは、無駄だったんですか………!?」
エミリアが悲痛な表情を浮かべながらそう言うと、ホーリーエンジェモンは笑みを浮かべながら首を横に振り、
「いいえ。無駄ではありません。少なくとも、ミレニアモンが倒された事で、リアルワールドが侵略される事は無くなりました」
「でも………それじゃあこの世界に住むデジモン達が………」
エリスも不安そうな表情を浮かべている。
「ありがとうございます。優しい人間達よ。我々デジモン達は、この世界と共に運命を共にします。ですが、あなた達がそれに巻き込まれる必要はありません。これより、私の力をすべて使い、リアルワールドへのゲートを作り出します。あなた達は、パートナーと共に、自分達の世界へお帰り下さい」
「そんな! 俺達だけで逃げろっていうの!?」
カイルも声を上げる。
「デジタルワールドの崩壊が始まった今、滅びを止める術はありません。さあ、早く帰る準備を………」
ホーリーエンジェモンがそう言いかけた時、
「タイシ! 何か方法は無いの!?」
アリスが大士に振り向きながら問いかけた。
「デジタルワールドを………滅びから救う方法を………!」
エリスも、
「このまま黙って見ているだけなんて出来ません!」
エミリアも、
「何でもいい! 何か方法は無いのか!?」
そしてクラウディアも。
一途の望みを賭けて大士に問いかけた。
「そういわれてもな……………」
大士は困った表情をする。
強大な敵を倒すだけなら何とかなる。
しかし、世界の崩壊を止める術など、大士や葵、優花でも持ってはいなかった。
だが、恋人であるアリスやエリス、エミリア、クラウディアの願いに、大士は残された少ない時間で頭をフル回転させて考えた。
このままデジタルワールドを見捨てて逃げる事は最終手段として。
「…………………ッ!」
その時、こちらを見下ろすインペリアルドラモンFMとオメガモンを見て、大士はハッとなった。
「もしかしたら………行けるか……?」
大士はそう呟く。
「本当!?」
その呟きを聞いたアリスが詰め寄る。
「お、落ち着け! 正直、成功するかどうかも分からない。成功したとしても、それが救いになるかどうかも分からない。そんな方法だ」
「何でもいいです! デジタルワールドの為に、何か出来るのなら!
「そうだ! 方法があるなら試したい!」
全員に迷いは無かった。
「……………わかった。だが、もしダメだったら無理やりにでもリジアルに戻るからな」
「「「「はい/ああ/ええ/うん!」」」」
4人は同時に頷く。
「まず最初に必要なのは、インペリアルドラモンとオメガモンのジョグレスだ」
「インペリアルドラモンとオメガモンのジョグレス!? そんな事が可能なの!?」
アリスが驚愕で声を上げた。
「ああ、可能だ。だが、お前達のデジモンは進化したばかりだろう? 立て続けに進化出来る可能性が低い事が最初の難関だな」
大士がそう言うと、
「そんなの簡単じゃない!」
アリスが自信を持っていった。
「ジョグレスに必要なのは、パートナーとの信頼関係だけじゃなく、相手と心を1つにする事が重要」
エリスもそう言う。
「それなら、私達4人の心を1つにすればいいって事ですね!」
エミリアも希望に満ちた表情だ。
「確かに、私達なら簡単な事だ」
クラウディアも強気な発言をする。
「お、おい。2人ならともかく、4人の心を1つにするって、簡単な事じゃ無いだろ?」
大士は困惑しながらそう言うが、
「いいえ。私達なら簡単な事よ」
4人が互いに向かい合い、アリスがD-3を前に突き出しながらそう言う。
「ここに居る4人には、共通点がある」
エリスもD-3を前に突き出しながら言う。
「それは、タイシさんの恋人である事……!」
エミリアもデジヴァイスを突き出す。
「私達は、同じ男を愛したからだ」
クラウディアもデジヴァイスを突き出すと、
「「「私は、タイシ(さん)を愛している!」」」」
その思いが重なった時、4人のデジヴァイスが輝いた。
それに反応するようにオメガモンが光に包まれる。
すると、巨大な1本の白い剣となった。
「オメガモンが………剣に………」
その剣がインペリアルドラモンFMの前で、まるで手に取れと言わんばかりに浮遊する。
インペリアルドラモンFMは右手を伸ばしてその柄の上部を掴み、更に左手で下部を掴む。
すると、その剣が一瞬強く輝いたかと思うと、インペリアルドラモンFMの色が白く染まっていた。
「インペリアルドラモンの色が……白く………」
そして、
「「「「インペリアルドラモン:パラディンモード!!」」」」
名乗りを上げるインペリアルドラモンPM。
「「インペリアルドラモン………」」
「「………パラディンモード」」
アリスとエリス、エミリアとクラウディアが同時に呟く。
「成功した…………!?」
大士は驚愕の声を上げる。
「タイシ! ここからどうすればいいの!?」
アリスが叫ぶ。
その言葉に、大士は気を取り直し、
「その剣、『オメガブレード』にはイニシャライズ………初期化の力がある! その力で、『デジタルワールドを初期化』しろ!!」
そう叫んだ。
その言葉を聞き、
「「「「インペリアルドラモン!!!」」」」
「「「「おおっ!!」」」」
4人が同時に叫び、インペリアルドラモンPMが飛び立つ。
インペリアルドラモンPMは一定の高さまで到達すると、デジタルワールドを見下ろす。
既に崩壊が始まっており、巨大な罅が至る所に広がり、今にも砕けそうだ。
インペリアルドラモンPMは、その剣を構え直し、正眼に構えた。
そして、
「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」
咆哮と共に、急降下を始めた。
その姿は、大士達から見ると白い流星の様に見えた。
その流星が大地へ向かって流れ落ちる。
「「「「オメガブレェェェェェェェェェェドッ!!!」」」」
白き流星が大地へ激突し、光が全てを包み込んだ。
【Side Out】
光が全てを包み込み、俺達は腕で目を庇う。
暫くして、光が消えた事を感じて目を開ける。
その目に映ったものは………………何も無かった。
「えっ…………?」
俺は思わず声を漏らす。
腕を退かして見えた景色は、『何も無い』。
『無』そのものだった。
例えるなら、星の無い宇宙空間と言うべきか。
「これは…………」
「大士!」
その声に後ろを振り向けば、そこには葵や優花達も居た。
光が何も無いのに彼女達の姿が見えるのは、そこに居たインペリアルドラモンPMが仄かな輝きを放ち、辺りを照らしていたからだ。
「デジタルワールドはどうなったの?」
エリスが尋ねる。
「……………分からない。もしかしたら、初期化したことでデジタルワールドが消滅してしまったのかも…………」
俺は、失敗してしまったのだろうと思った。
その時、
「あっ! あれを見てください!」
エミリアが突然叫んだ。
エミリアが指を指す方向に、光の粒子が集まっていき、何かを映し出していった。
それは、
「島…………?」
カイルが呟く。
そこに映し出されたのは、海に囲まれた島。
丁度俺達が上空から見下ろす形となっている。
この現象は………まるで………
俺は、その光景に既視感を感じていた。
「ねえ大士。これってもしかして………?」
葵も同じことを思ったのか、俺に問いかけてくる。
「ああ………俺も同じことを思った所だ」
「どういうことだ?」
俺の言葉にクラウディアが疑問の声を漏らす。
「俺達の推測だが、デジタルワールドは初期化によって一度消えた。そして、新たなる天地創造を迎えたのかもしれない」
「新たなる………天地創造…………!」
スケールの壮大さに、呆気に取られた声を漏らすクラウディア。
「…………行ってみるか?」
俺は全員に訊ねると、
「「「「「「「「「「うん!」」」」」」」」」」
全員が迷いなく頷いた。
島に降り立つと、草木が生い茂り、川が流れ、気持ちのいい風が吹いていた。
「これはまるでスポットに居る様な………いや、それ以上に環境が良い………!」
ホーリーエンジェモンが驚きの声を漏らす。
その時、
「おおーーーーい!!」
聞き覚えのある声と共に、誰かがこちらに駆けよってくるのが見えた。
それは、
「ジジモン!」
「ババモンも!」
ジジモンやババモンを始めとして、このデジタルワールドの冒険で出会ったデジモン達だ。
「お主ら! 大変じゃ! こちらへ来てみろ!」
ジジモンに促されるままについて行くと、そこには、
「これは………デジタマが………」
再びホーリーエンジェモンが驚愕の声を漏らす。
俺達の目の前には、たくさんのデジタマが空から降り注ぎ、おもちゃの街のような作りの街のクッションのような地面に次々と転がっていた。
「………もしかして、はじまりの街か………?」
俺はそう予想する。
「奇跡じゃ! もう二度と生まれることのないと思っていたデジタマがこんなにも………!」
ババモンが感極まった声を漏らす。
「デジタルワールドが再構築された事で、デジモン達もまた生まれるようになったのかな?」
「かもな」
すると、ホーリーエンジェモンがこちらに振り向く。
「皆さま! ミレニアモン討伐だけでなく、デジタルワールドを復活させて下さるとは、感謝の言葉もありません!」
ホーリーエンジェモンが深く頭を下げた。
「い、良いのよ! 私達が、私達のやりたい事をやった結果なんだから……!」
アリスは照れ臭そうにそう言ってそっぽを向く。
「やはりデジタルワールドを救ってくれたのはお主らじゃったか…………言い伝えは本当だった様じゃな」
ジジモンがそう言う。
「それって前に言ってた、『デジタルワールドが滅びの危機にある時、世界を滅びから救う為に選ばれた人間達が現れる』って奴か?」
「そうじゃ。主らは見事にデジタルワールドを滅びから救ったのじゃ」
「まあ結果的にだが」
俺はそう言っておく。
「それじゃ、やる事もやって全員揃ってる事だし、帰る方法を探す………というか、さっきホーリーエンジェモンがゲートを作れるって言ってたか?」
俺は先程のホーリーエンジェモンの言葉を思い出す。
「はい。私のヘヴンズゲートを応用すれば、リアルワールドへのゲートを作り出す事は出来ますが………もう帰ってしまわれるのですか? せめて、お礼をと………」
ホーリーエンジェモンはそう言ったが、
「元々デジタルワールドには事故で来ただけだし、それに、そろそろリアルワールドに迎えが来る予定なんだ。何だかんだで結構デジタルワールドに留まってたから、出来るだけ早く戻っておきたいんだよ」
「そうですか…………」
ホーリーエンジェモンは残念そうにそう言う。
「分かりました。そう仰られるのなら、すぐにゲートの準備に取り掛かりましょう」
ホーリーエンジェモンはそう言った。
暫くして、ホーリーエンジェモンはゲートを作り出した。
因みにデジモン達は、インペリアルドラモンPMは、ウォーグレイモン、メタルガルルモン、エクスブイモン、スティングモンに分離し、それぞれのパートナーのデジヴァイスに入っており、ビクトリーグレイモンBMも通常のビクトリーグレイモンに戻り、カイルのデジヴァイスに。
シスタモンX(覚)も元のシスタモン達に分離し、クオンのクロスローダーに入り、ドルモン、リュウダモン、ハックモンを除いた他のデジモン達は、それぞれのパートナーのデジヴァイスに入っている。
そしてゲートに入る直前、
「ほんの2週間程度の旅だったのに、随分長く感じたわね」
アリスがそう言うと、
「濃密な時間だった」
エリスもそう言う。
「でも、貴重な体験でした」
エミリアが嬉しそうに言い、
「私達のデジモンも、究極体へ進化したしな」
クラウディアも満足そうに言う。
「私としては、ミタマモンがパートナーになった事と、旦那様と結ばれる事が出来たのが一番良かったわね」
「わたしもおねーちゃん達といっしょにいられてうれしい!」
カンナとクオン。
「ん、私もパートナーが出来て嬉しい」
「きゅい! おねーさま! シルフィのこと忘れないで欲しいのね!!」
シャルロットとイルククゥ。
「私もヴァロドゥルモンというパートナーが出来て嬉しいわ」
「私もミネルヴァモンと友達になれて良かったです!」
カトレアとテファ。
「俺も……デジタルワールドに来られてよかった………今ならそう思えるよ!」
そしてカイルも。
それぞれがデジタルワールドの冒険に感謝していた。
「それでは皆様。お達者で」
ホーリーエンジェモンがそう言うと、ゲートの輝きが増す。
「それじゃあ、帰ろう!」
「「「「「「「「「「うん!」」」」」」」」」」
俺の言葉に全員が頷き、ゲートを潜るのだった。
オリジナル異世界編第55話です。
仕事が休みに入ったので早めに更新です。
はい、皆様ミレニアモン復活すると思ってたのでしょうが、ここはあえて完全復活直前で叩きのめしてしまいました。
もちろんこれで終わりでは無いので悪しからず。
そしてここで登場してしまったインペリアルドラモンPM。
実際、当初の予定では、インペリアルドラモンPMは、この世界優花がやって来た時、アリス達を試す目的で戦いを吹っ掛け、ジエスモンGXにインペリアルドラモンFMとオメガモンが圧倒されて、その時にPMになるということを考えてたんですが、色々予定が変わって(狂って)こうなりました。
デジタルワールド編はここまで。
次回から再びリジアルに場面が映ります。
はてさて、現在の王国は…………お楽しみに。