ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第56話 帰還と王国の危機

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

――サーバー王国  デジタルナイト養成学院 訓練場

 

教師であるアリアは、今日も平民クラスの担任として、デジタルダンジョンに挑む学生たちの姿を見守っていた。

そんな中、

 

「ふう………カイル君達が魔族領に向かってから大体3週間………無事だといいんですけど………」

 

アリアはポツリと呟く。

魔族の少女であるクオンを送り届ける為に、大士達が魔族領へ向かい、カイルやエミリア、アリス、エリス、更には貴族クラスで公爵令嬢であるクラウディアまでついて行ってしまったのだ。

魔族領は、魔物や魔族が跋扈する地獄のような土地と言われている。

そんな所に、生徒達だけで向かってしまった事をアリアは心配していた。

 

「まあ、タイシ君がいるなら大丈夫なのかもしれませんが………」

 

アリアは大士の事を思い返していた。

突然この学院に編入してきた生徒で、普段からデジモンを連れて歩いている変わり者の少年。

それがアリアが最初に抱いた大士への印象だった。

デジモンも成長期だったので、そこまで優秀では無いと考えていた。

大士が最初にその真価を発揮したのは、大士が編入してきて初めての訓練用デジタルダンジョンでの実戦訓練の日。

全員が成長期の為、一番難易度の低いデジタルダンジョンですらクリアできていなかったカイル君達のグループに大士を宛がう。

同じ成長期。

ただそれだけの理由でアリアは大士をカイル達のグループに入れた。

だが、それがまさに分岐点だったと今のアリアは思う。

最初の実戦訓練を成長期だけでクリアしたかと思えば、次の実戦訓練ではエミリアが育てるのが難しいと言われているグレイモンに進化させ、冒険者実習では危険度Sランクのデススコーピオンを討伐したかと思えばいつの間にか王女であるリティナのグループと親密になり、そのままグループに加入。

次の実戦訓練ではエリスがスティングモンに進化させ、決闘騒ぎではカイルが今まで見たことが無いジオグレイモンに進化させた。

その後も、大した時間を掛けずに全員が完全体へと進化させており、大士と言う存在がカイル達に与えた影響は絶大だった。

 

「…………それにしても、リティナ殿下の事を聞いたら、カイル君達はどう思うでしょうか…………?」

 

アリアがそう呟いた時、

 

―――バチッ!

 

突然訓練場の周囲に電撃が奔った。

 

「ッ!?」

 

アリアは咄嗟に辺りを見回す。

見れば、5つあるデジタルダンジョンの入り口から放電が起こり、それがどんどん激しくなっている。

その電撃が1ヶ所に集まり、新たなデジタルゲートを作り出した。

 

「こ、これは一体………!?」

 

アリアは驚愕しつつも気を取り直し、

 

「皆さん! 緊急事態です! すぐに避難を!!」

 

アリアは残っている生徒に叫ぶ。

生徒達は異変に気付くと、一目散に逃げていく。

アリアは、何が起こるか分からないため、自分のデジモンであるキウイモンと共にデジタルゲートに向き直った。

 

「……………ッ!」

 

そしてついに、ゲートが開き切り、

 

「「「「「うわっ!?」」」」」

 

「「「「「「「「「「きゃあっ!?」」」」」」」」」」

 

そのゲートから10人程の人影が飛び出してきた。

その人影は、次々と床に倒れる。

そのすぐ後に、デジタルゲートは消えてしまった。

 

「あいたたたた…………戻って来たの?」

 

その人影の中、金髪の少年が身を起こしながら辺りを見回す。

すると、

 

「カイル君!?」

 

その声に思わず振り向く金髪の少年、もといカイル。

 

「アリア先生……?」

 

「エミリアさんに、エリスさん、アリスさん。タイシ君まで……!」

 

アリアは驚きながら自分の生徒の名前を続ける。

 

「皆……どうしてここに………?」

 

アリアは困惑していたが、

 

「アリア先生が居るって事は、ここは学院か?」

 

大士が起き上がりながら呟く。

その時、

 

「まっ、魔族!?」

 

アリアが驚愕の声で叫んだ。

その視線はカンナに向いている。

カンナには、狐耳と9つの尻尾があるので一目瞭然だ。

 

「だ、大丈夫ですよ先生。カンナさんはクオンちゃんのお母さんで、今は私達の仲間です」

 

エミリアがそう言う。

 

「カンナよ。よろしくね、セ・ン・セ・イ」

 

「ええぇ~~……?」

 

状況が理解できないアリアは困惑の声を漏らす。

すると、クラウディアが歩み寄り、

 

「アリア教諭。色々ありましたが我ら一同、只今を以って帰還しました」

 

背筋を伸ばしながら貴族として報告した。

 

「あ、いえ……公爵令嬢であらせられるクラウディア様におかれましては…………」

 

アリアは平民出の教員なので、公爵令嬢であるクラウディアには委縮してしまう。

クラウディアは柔らかく笑みを浮かべると、

 

「そのような言葉使いは無用だ。あなたはリアの先生なのだろう? ならば、礼を尽くすのはこちらだ」

 

「ええっ!? そんな畏れ多い………!」

 

そんなアリアの姿に苦笑するクラウディア。

 

「そうだ! リティナにも帰ってきた事伝えなきゃ!」

 

カイルが思い出したようにそう言う。

すると、

 

「あっ…………」

 

アリアが声を漏らして少し残念そうな表情になった。

 

「どうかしましたか?」

 

エミリアが尋ねると、

 

「その………リティナ王女殿下は、もう学院にはおられません………」

 

「「えっ?」」

 

その言葉に、カイルとクラウディアが思わず声を漏らした。

 

「ど、どうして………!?」

 

カイルは何とかその言葉を絞り出す。

 

「リティナ王女殿下は、ブラウザ帝国の皇太子、アルベルト殿下………いえ、今は皇帝陛下ですね………そのアルベルト陛下に嫁ぐことになり、既に王国を出ております」

 

「何だって!?」

 

カイルが叫ぶ。

 

「馬鹿な! ブラウザ帝国のアルベルト殿下と言えば、好色で残虐な人間だという話で有名ではないか!? そのような者にリティナ様を嫁がせるなど、アスラン陛下がお許しになる筈が………! しかも皇帝陛下だと!?」

 

クラウディアもアスラン王の性格から、リティナをアルベルトに嫁がせる筈が無いと叫んだ。

すると、アリアは更に言いにくそうに、

 

「その………アスラン陛下は食事に毒を盛られ、何時目覚めるかも分からない意識不明の状態です」

 

「なっ!?」

 

その言葉にクラウディアは絶句する。

 

「そして………現在レオナルド殿下が、国王に即位し、政務を取り仕切っております。戴冠式が行われていないので、暫定ではありますが………リティナ王女殿下の輿入れを決めたのも、レオナルド陛下だそうです」

 

「殿下が!?」

 

更に驚愕するクラウディア。

 

「そ、それで! リティナは何時結婚するんですか!?」

 

カイルは感情を隠し切れずに問いかけた。

 

「それは…………急な話ですが………3日後になります」

 

「馬鹿な!? 早すぎる!」

 

クラウディアはあまりの準備期間の短さに驚愕を隠し切れない。

王族の結婚式は、少なくとも数ヶ月。

長ければ1年以上の準備期間を設けるのも珍しくないからだ。

 

「………ッ!」

 

カイルは反射的に踵を返し、駆け出そうとして、

 

「ちょっと待て」

 

大士に襟首を引っ掴まれて止められた。

 

「離して大士! 早くリティナの所に行かないと!」

 

カイルはその手を振りほどこうとする。

 

「行ってどうするんだ?」

 

大士が落ち着いた声でそう聞くと、

 

「もちろんリティナを連れ戻す!」

 

カイルは迷いなく言い切った。

 

「…………それは、帝国に……いや、両国に喧嘩を売る行為だって事を解ってるのか?」

 

「分かってる! たとえそうなったとしても、俺はリティナを連れ戻す!」

 

「…………言い切ったな」

 

大士は呆れた様な。

それでいて、何処か共感する様な口振りでそう言った。

 

「だから放して! 時間が無いんだ!!」

 

カイルは尚も振りほどこうとしたが、

 

「気持ちは分かるが落ち着け。少なくとも、結婚式は3日後だ。今すぐ如何こうと言う訳じゃない。それに、今の俺達なら帝国なんて5分もあれば着く」

 

大士は、アリスとエリスに視線を向けながらカイルにそう言う。

 

「あっ………」

 

カイルもその事に気付いたのか、暴れるのを止めて落ち着く。

 

「ご、ごめん………取り乱してた…………」

 

カイルは頭を下げて謝る。

 

「いいさ。大切な相手が結婚だなんて聞いたら、俺も平静でいられる自信は無い」

 

大士はそう気にしないように言う。

 

「とりあえず、強引に掻っ攫うのは最終手段だ。お前も覚悟はあるんだろうが、出来れば後腐れ無く済ませた方がいい」

 

「でも、どうやって………?」

 

カイルの言葉に、大士は小さく笑みを浮かべた。

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、俺達がやって来たのは王宮だった。

公爵令嬢であるクラウディアが居れば入るのは容易い。

まあ、カンナとクオンが一緒だと、色々大問題になると思ったので、優花を護衛にして学院の寮に残って貰っている。

クラウディアを先頭に、カツカツと早歩きである場所に向かっていた。

行先は執務室。

クラウディアは、ノックも無しに執務室の扉を開け放つと、

 

「タスク宰相!!」

 

執務机に座っていた男にそう呼びかけた。

 

「ッ!? クラウディア嬢!?」

 

タスク宰相と呼ばれた男は、驚いた目でクラウディアを見つめた。

彼はガーランド・ドゥフト・フォン・タスク。

アスランの右腕とも呼ぶべき男だった。

そして、フォルダ公爵とも懇意でクラウディアとも知り合いだ。

 

「いつお戻りに?」

 

「つい先ほどだ。それよりも宰相。私が居なかった間の話は大まかに聞いている」

 

「ッ………そうですか」

 

「時間が無い。すぐに陛下の所へ案内してくれ」

 

「陛下………といいますと………?」

 

「当然アスラン陛下の事だ」

 

「しかし、アスラン陛下は………」

 

「話は聞いていると言っただろう? これより陛下を回復させる」

 

「ッ!? 可能なのですか!? 宮廷魔術師総出でも延命が限界だというのに………!」

 

「可能だ。アリスとエリスならな」

 

クラウディアは、アリスとエリスを見ながら自信を持って言う。

 

「………おや? もしや彼女達は………」

 

「お察しの通りファイル伯爵家の令嬢だ。最も、今は勘当されて平民だがな。しかし、その魔法の効果はこの私が保証する」

 

「クラウディア嬢がそこまで仰るとは………分かりました。陛下の元へご案内します」

 

宰相はそう言って席を立った。

 

 

 

 

 

通された部屋では、大き目のベッドにアスラン王が寝かされていた。

毒の影響か、前に見た時よりも幾分やつれているようにも見える。

 

「陛下………」

 

クラウディアが呟く。

 

「陛下に盛られた毒は、何とも厄介な毒で………一命を取り留めるのが精一杯でした………」

 

宰相はそう悔しそうに呟く。

 

「実行犯は既に処刑されておりますが…………捕まったその場で斬られたので、陛下の命を狙った動機や、何処の派閥の者なのかも分かっておりません」

 

その言葉を聞いて、なんとなーく犯人の可能性が高いのは、あの王子サマなんだろうなーと俺は考えていた。

 

「その話は一先ず陛下が起きてからだ。ではアリス、エリス。頼む」

 

「ええ」

 

「任せて………」

 

クラウディアの言葉に、アリスとエリスは迷わずに頷いた。

2人はアスラン王のベッドに近付くと、手を翳して〝再生魔法〟を発動させた。

淡い光がアスラン王を包む。

程なくしてその光が消え、

 

「……………ううっ……!」

 

アスラン王が意識を取り戻した。

 

「陛下!?」

 

宰相が驚き、駆け寄る。

アスラン王が身を起こすと、

 

「ど、どうしたガーランド? そんなに慌てて………」

 

アスラン王は状況を良く呑み込めていないのか、そんな言葉を漏らす。

 

「如何したではありません! 陛下は毒を盛られて倒れられていたのですよ!」

 

「毒……………? ッ!? そう言えば、食事の最中に胸が焼けるように熱くなって………」

 

アスラン王もその事を徐々に思い出してきたのか、その時の事を口にする。

 

「そうです! 陛下は2週間以上眠り続けていたのですよ!」

 

「なっ!? そんなにか!?」

 

「というより、いつ死んでもおかしくない意識不明の状態でした! アリス嬢とエリス嬢の魔法が無ければ助からなかったかもしれないのです!」

 

「ッ……! そうか………」

 

アスラン王はそう言うと、視線をクラウディアとアリス、エリスに向ける。

 

「どうやら君達に助けられた様だな………心から礼を言う」

 

アスラン王はそう言って頭を下げる。

 

「あっ、いえ、そんな畏れ多い! 私達は、自分の出来る事をやったまでで………」

 

流石のアリスも、王様に頭を下げられるとあっては、平静ではいられない様だ。

それから宰相に向き直ると、

 

「それでガーランド。私が意識を失っていた間の報告をしてくれ」

 

「ハッ!」

 

アスランの言葉に、宰相は力強く答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「リティナがブラウザ帝国に嫁ぐだと!?!?!?」

 

怒声に近い驚愕の声が響き渡った。

俺達は思わず耳を押さえる。

 

「はい。既に1週間近く前にレオナルド殿下と共に王都を発っておられます」

 

「あの馬鹿者が!! このような不利な条件を呑んだ上でリティナを差し出すとは何たることだ!!」

 

アスラン王は、宰相から受け取った報告書を読みながら憤慨している。

俺達も内容を聞いていたが、その内容の酷い事酷い事。

マジで近いうちに王国が滅びかねん内容だった。

 

「ですが、本当に帝国側に究極体が居るとなれば、下手な答えが出来ない事も確かです。その………レオナルド殿下は、タイシ殿の心象が良くないわけでして………」

 

「むぅ…………」

 

宰相としては、俺を頼って究極体を何とかしてほしかったが、王子サマがトップでは断られる可能性が高いと踏んだんだろう。

それ以前に、あの王子サマが俺に懇願するとは思えんが。

すると、

 

「……あのさ………究極体がいるって………大変な事なのよね?」

 

すぐ横でアリスが呟いた。

 

「ん。リジアルでは御伽話や神話のレベルだった」

 

エリスが答える。

 

「陛下や宰相様の反応が正しいのよね………?」

 

アリスが再び尋ねる。

 

「そう………なんですよね?」

 

エミリアが自信無さげに応える。

 

「究極体が居るって聞いて、『ふーん』って思ってる私はおかしいのかしら?」

 

アリスが三度尋ねる。

 

「安心しろ。私も同じ気持ちだ………」

 

クラウディアが半ば呆れたように呟いた。

 

「あはは………デジタルワールドでの体験が濃密過ぎたからね………」

 

カイルが苦笑する。

すると、アスラン王と宰相の話が纏まったのかこちらに歩み寄って来た。

そして、

 

「タイシ殿。無理を承知で頼みたい。帝国の究極体を何とかする為に、力を貸しては貰えないだろうか?」

 

予想通りの要請を受けた。

 

「出来る限りの謝礼は致します。どうかお力添えを………」

 

宰相も頭を下げてくる。

それに対する俺の答えは…………

 

「……………悪いが、今回の件に関して、俺は直接手を貸すつもりは無い」

 

『No』だ。

 

「ッ!? そこを何とかお願いしたい! この国の未来が掛かっているのです!」

 

宰相は尚も頼み込んでくる。

 

「………勘違いするな。この国の未来に関してはどうでもいいが、リティナ王女に対しては、少なからず仲間意識を持ってる。その仲間がピンチで、本当に俺の力が必要なら、手は貸すことは吝かじゃない」

 

「ではなぜ!?」

 

「そもそも、俺が手を貸す必要が無い…………と言うより、その『役目』には、俺よりも遥かに相応しい奴が居るからな」

 

俺はカイルに視線を向ける。

カイルは頷き、

 

「帝国の究極体は、俺が相手をします!」

 

カイルがそう言い放つ。

 

「君が……!? しかし………」

 

「安心しろ。カイルは俺が信じる仲間だ」

 

「………………」

 

「それよりも、俺としては、あの王子サマの暴挙を止める事が先決だと思うんだが? 俺の直感では、おそらく王様に毒を盛った黒幕はあの王子サマだと思うぞ」

 

俺は話を変える。

 

「殿下が………!? そんな事…………」

 

宰相は否定しようとして、言葉が尻すぼみになって来る。

可能性が無いとは言い切れないからだろう。

 

「少なくともあと2日は時間があるんだ。ゆっくりと証拠を探そうじゃないか」

 

俺はニッと笑いながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

尚、宰相からリティナ王女のエンジェウーモンが王宮の一角に囚われている事を知り、ロイヤルナイツ(笑)の5人が見張りについていたので、救出ついでに全員伸しておいた。

 

 

 

 

 

 

 







あけましておめでとうございます。
新年初っ端からオリジナル異世界編第56話です。
まあ、少し短いですが。
リジアルに帰還してリティナや国の現状を知りました。
そんで早速王様を秒で完治させました。
次回は結婚式に殴り込み?
お楽しみに。


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