ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第57話 波乱の結婚式

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

大士達がリジアルに戻ってきてから3日後――――

ブラウザ帝国帝都において、盛大な式典が開かれようとしていた。

それは、皇帝であるアルベルトと、王国の王女であるリティナの結婚式であった。

晴天にも恵まれ、式は教会の前に設けられた式場で執り行われることになる。

そして、控室では既にリティナが侍女の手によって純白のウェディングドレスに着替えさせられ、式の始まりを待っていた。

その控室に、1人の男が入って来た。

 

「準備はできましたか? リティナ王女?」

 

正装に身を包んだその男こそ、ブラウザ帝国皇帝、アルベルトであった。

声を掛けられ、リティナはゆっくりと振り返る。

その姿を見て、

 

「おお……美しい…………私の花嫁に相応しい美しさだ………!」

 

満足そうにそう評するアルベルト。

 

「ありがとうございます。アルベルト陛下………」

 

リティナは笑みを浮かべ、そう返す。

しかし、その笑みは上辺だけのもので、リティナの心にはその様な誉め言葉では全く響かなかった。

 

「そのように畏まらなくともよい。私達はこれから夫婦になるのだから」

 

アルベルトは言葉を続ける。

 

「いえ、式が終わるまでは正式な夫婦ではありませんので………」

 

そう言って態度を改めたりはしない。

それは、リティナの最後の足掻きとも言うべきものであった。

すると、アルベルトはリティナに歩み寄ると、耳元に口を寄せる。

そして、

 

「………今夜はその姿で犯してあげよう」

 

「ッ………!?」

 

その呟きに、笑みの仮面が僅かに崩れる。

 

「お、お戯れを………」

 

リティナは何とか取り繕うが、その一瞬を見逃さなかったアルベルトは再び満足そうな笑みを見せてリティナから離れる。

 

「実に楽しみだ」

 

アルベルトは踵を返し、

 

「それでは失礼するよ。リティナ王女、また後で」

 

そう言ってアルベルトは控室を出ていく。

 

「……………」

 

それをリティナは無言で見送ると、

 

「………あなたも下がってください」

 

近くに控えていた侍女にそう告げる。

侍女は一礼して部屋を出て行った。

それでも、部屋の前に待機しているだけだが。

リティナは窓から外を見上げ、

 

「………………………覚悟は決めたと………思っていたのに…………」

 

どうしようもない現実を前に、リティナの心は再び揺らぎ始めていた。

 

「……………………カイル………エンジェウーモン」

 

勇気を貰うように、想い人とパートナーの名を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、太陽が頂点に登る頃―――

教会の前には式を執り行う祭壇が設けられ、司祭が待機しており、そのすぐ近くに新郎であるアルベルトが立っている。

教会は周りよりも高い位置にあり、教会の入り口の前は階段になっていて、丁度、階段を登り切った先に祭壇がある形になっていた。

そして、祭壇から教会敷地の境にある門に向かって赤い絨毯でバージンロードが敷かれており、教会の敷地内には両国の有力貴族達が参列しており、敷地の外には皇帝や王女の姿を一目見ようと、一般の人間が詰めかけている。

尚、有力貴族とは言うが、王国側の貴族には、フォルダ公爵を始めとした、新王を決める時にリティナに投票した貴族達の姿は無く、レオナルドから自分の領地での謹慎を言い渡されていた。

ガーランドは、以前からの政務の腕を買われて謹慎はされず、レオナルド達が居ない間の政務代行を任されていた。

ついでに言えば、王国側には召喚された3人の勇者の姿もある。

そして、暫くすると、教会の門の前に1台の豪華な馬車が到着した。

馬車の扉が開き、まず降りてきたのは正装に身を包んだレオナルド。

そして、そのレオナルドに手を支えられ降りてきたのは、ウェディングドレスに身を包んだリティナだった。

その瞬間、その姿を見た一般人達が色めき立つ。

歓声が飛び交う中、レオナルドにエスコートされたリティナはバージンロードを歩き出した。

本来は父親であるアスランがエスコートするはずだが、アスランが出られないためにレオナルドがエスコート役だ。

その最中、

 

「……………分かっているな………? くれぐれも皇帝陛下の機嫌を損ねる様な真似はするなよ………!」

 

レオナルドは何度も言い聞かせたその言葉を口にする。

 

「………………………ッ」

 

「我が国の命運は、どれだけ貴様が皇帝陛下に従順になれるかで決まると言っても過言ではない………!」

 

「………………」

 

自分の兄の事ながら、何とも情けない言葉だと、リティナは内心溜息を吐く。

こんな兄を国王に推薦した者達の気が知れないと、リティナは呆れて言葉も無かった。

リティナは無言でエスコートされながら歩き続ける。

階段に辿り着き、その階段を一歩一歩昇っていく。

この階段を登り切れば、そこに待つのはアルベルトの妻になるという未来。

リティナは、階段を一段昇る毎に、カイルとの思い出を振り返っていた。

その思い出を心の支えにするように。

階段が終わりに差し掛かるにつれ、アルベルトの姿が見えてくる。

 

「………………………」

 

それでもリティナは、躊躇する事無く階段を登り切った。

レオナルドとリティナがアルベルトの前で立ち止まる。

そして、アルベルトがゆっくりと手を前に差し出した。

その手を取れば、もう後戻りはできない。

それでもリティナはその手に手を伸ばす。

 

(………………さようなら、カイル)

 

心の中で、想い人への別れの言葉と共に…………

そして、アルベルトが差し出した手に、自分の手を重ねる為に近付けようとして、

 

――ズドォン!

 

アルベルトとリティナの間を切り裂くように、突如として飛来してきた大剣が、重なろうとした手と手の間に突き立った。

 

「きゃっ!?」

 

「ぬおっ!?」

 

リティナとアルベルトは思わず手を引っ込める。

両者は何事かと前を確認する。

 

「なっ!?」

 

アルベルトは純粋に剣が目の前に突き刺さっていた事に驚愕し、

 

「こ、この剣は………!」

 

そしてリティナは、その剣に見覚えがあった事に驚愕していた。

その直後、

 

――ダンッ!

 

何者かが大剣に続いて目の前に勢いよく着地し、

 

「ッ!」

 

立ち上がりながら前へ駆け出すと、その腕を振り被り、

 

「はぁああああああああっ!!」

 

リティナをエスコートしていたレオナルドの頬に拳を叩き込んだ。

 

「ぐはっ!?!?」

 

突然の事態にレオナルドも反応する事が出来ず、レオナルドは階段を転げ落ちていく。

 

「あ…………ああ…………!」

 

しかしリティナは、そんなレオナルドには目もくれず、目の前の人物に釘付けになっていた。

その何者かは、拳を振り切った状態から体勢を元に戻すと同時にリティナに振り返る。

 

「………………待たせたね」

 

その姿が、その声が、リティナの心を震わせる。

何故ここに居るのか?

何故来てしまったのか?

本当はいけないと頭では分かっているのに、それに反してリティナの心は喜びで満ち溢れている。

 

「攫いに来たよ……………リティナ」

 

手を差し出しながら言われるその言葉に、リティナは涙が溢れそうになる。

 

「ッ…………! カイルッ…………!」

 

その名を呼ぶリティナ。

微笑むカイル。

リティナは、思わず抱き着きたくなる衝動に駆られるが、

 

「な、何者だ!?」

 

アルベルトが指を指しながら叫んだ。

カイルがそちらに振り向くと、

 

「そうだね…………盗賊……かな?」

 

まるで、今思いついたかのようにそう言うカイル。

 

「盗賊だと!?」

 

アルベルトが叫ぶと、

 

「そう…………あなたの花嫁を頂きに来た、ただの盗賊だよ!」

 

まるで見せつけるようにリティナの肩に手を回しながら抱き寄せる。

 

「カッ、カイルッ………!?」

 

抱き寄せられた事に、リティナは顔を赤くしながら慌てる。

アルベルトはその態度に青筋を浮かび上がらせ、

 

「曲者め! 兵士達よ! その不届き者を捕えよ!!」

 

アルベルトが命じると、周りに待機していた完全武装の兵士達がガチャガチャと音を立てながら現れる。

しかし、

 

「ホーリーアロー!!」

 

今度は上空から光の矢が飛来して、兵士達の前に突き刺さり、それに驚いた兵士達が立ち止まったり尻餅を着いたりして、進行を止めてしまう。

それに驚いた者達が見上げると、そこには8枚の翼を持つ女性の天使型デジモン。

 

「エンジェウーモン!!」

 

リティナが己のパートナーの名を叫ぶ。

 

「こんな結婚、認める訳には行かないわ!!」

 

エンジェウーモンは、再び弓に光の矢を番えて放つと、アルベルトの前に光の矢が突き立ち、アルベルトは一歩後退する。

 

「バ、バカな!? リティナのデジモンは5人のロイヤルナイツに見張らせていた筈!?」

 

階段から転げ落ちたレオナルドが、身を起こしながら驚愕の声を上げる。

エンジェウーモンは、そのまま降下してきてリティナの傍に着地する。

 

「リティナ………間に合って良かった………」

 

ホッとする表情を見せるエンジェウーモン。

 

「エンジェウーモン………」

 

リティナもエンジェウーモンが無事だった事にホッと息を吐く。

すると、

 

「………………なるほど。王女のデジモンであるエンジェウーモンに、先程王女が口にした『カイル』という名…………貴様が噂の王女が最も信頼するという平民のデジタルナイトか…………」

 

アルベルトが納得と忌々しさが半分半分の感情で呟く。

 

「なるほど、随分なナイトぶりだな」

 

突然の奇襲に狼狽えていたアルベルトだったが、カイルの正体が分かって落ち着いてきたのか、余裕の態度を取り戻し始めた。

 

「だが、随分と無粋な真似をしてくれる。この私と王女の結婚式に乱入するとは如何いうつもりだ? 王女の騎士ならば騎士らしく、王女の門出を祝福するべきではないのか?」

 

アルベルトは上から目線でそう告げる。

すると、

 

「……………この結婚が、リティナが心から望んだものだったら、俺は潔く身を引いたさ…………例え王女としての政略結婚だったとしても、リティナ本人が納得し、望んだ事だったら、まだ納得できたかもしれない……………だけど、お前がやった事は、究極体を盾にして、不利な条件を押し付けた、ただの脅迫だ………! そんな結婚を認める訳には行かない………!」

 

「カイル…………」

 

カイルの姿に、リティナは心に響くものを感じる。

だが、アルベルトはその言葉を鼻で笑うと、

 

「フン。この世は所詮弱肉強食。弱き者は強き者に淘汰されるが定め。それがこの世の真理なのだ! 即ち! 究極体を手に入れた我が国! 私こそがこの世の正義なのだ!!」

 

尊大に言い放った。

 

「何て身勝手な…………」

 

「………………………」

 

アルベルトの言葉に、リティナは軽蔑する様な視線で睨み付け、カイルは黙って見据える。

 

「レオナルド王はその定めに従い、我らに服従したに過ぎん。責められることでは無い」

 

アルベルトはクククと楽しそうに笑う。

 

「ッ…………」

 

その姿に、リティナは嫌悪の表情を浮かべる。

すると、

 

「…………そう」

 

カイルが呟き、目の前に突き立っていた剣に手を掛ける。

 

「それなら…………」

 

大剣を片手で引き抜き、一度振り上げると、

 

「お前の言う真理に従い……………」

 

そのまま大剣の切っ先をアルベルトに突きつけると、

 

「今ここで、デジタルナイトとして1対1の決闘を申し込む!!」

 

そう言い放った。

その気迫に、周りの者達が気圧された。

 

「…………ッ!」

 

アルベルトは、気圧された事を悟られないよう歯を食いしばると平静を装い、

 

「………フッ、フフフッ………面白い事を言う…………だが忘れてはいないかな? この私には、君と決闘するメリットが無い事に」

 

「…………それは」

 

カイルが何か言いかけた時、

 

「メリットはあります!!」

 

その前にリティナが叫んだ。

 

「メリットは、このわたくしです!!」

 

リティナが自分の胸に手を当てながら続ける。

 

「正直に申しましょう。わたくしはこの結婚を、王女としても………そして1人の女としても、望んではおりません!!」

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

そう言い放ったリティナの言葉に、その言葉を聞いたもの全員が驚愕した。

 

「ですが、皇帝陛下がカイルに勝った暁には、身も心も陛下の物となりましょう!」

 

そう言い切るリティナ。

 

「リティナ………」

 

驚いた表情でリティナを見るカイル。

 

「カイル………わたくしはあなたを信じています………わたくしが最も信ずる騎士…………いいえ。わたくしが心から愛する、1人の男性として………!」

 

「リティナ………!」

 

その言葉に、カイルは笑みを浮かべる。

 

「ありがとうリティナ………君が信じてくれるなら、俺は負けないよ」

 

そう言ってカイルはアルベルトに向き直る。

しかし、アルベルトは気が気でなかった。

このような公衆の面前で、この結婚が望んでいたものでは無いと公言された挙句、リティナはカイルを愛しているとハッキリと言ってしまったのだ。

アルベルトからしてみれば、コケにされたに等しい。

アルベルトは怒りから顔を真っ赤にし、ギリギリと歯を食いしばっている。

 

「ぐぐぐ………! よかろう! そこまで究極体の恐ろしさを味わいたのなら望み通りにしてやろう!」

 

感情のままにそう叫ぶアルベルト。

そして、

 

「来い!! ファラオモン!!!」

 

アルベルトが叫ぶと、何処からともなく大きな黄金の棺桶が降ってきてアルベルトの後方に激突するように着陸する。

そのすぐ近くにいた兵士達が巻き込まれそうになって慌てていたが、アルベルトはそんな事を気にも留めてなかった。

そして、棺桶が2つに割れて中から現れたのは白い衣を纏った黄金のミイラと言うべきデジモンだった。

ウロボロスの様に尾を飲み込む蛇の形をした黄金の杖を持ち、古代の王を表すかのような黄金の仮面を付けている。

 

「…………これが、ブラウザ帝国の究極体…………!」

 

その威圧感を感じたのか、リティナは息を呑む。

 

「……………………!」

 

カイルは黙って睨み付けた。

 

「さあ、貴様も自分のデジモンを呼び出すがいい! 調べは付いているぞ。貴様のデジモンはライズグレイモンと呼ばれる完全体デジモン。完全体の中では強力なデジモンらしいが、所詮究極体の敵ではない!」

 

アルベルトは高笑いしながら叫ぶ。

 

「カイル…………」

 

リティナは心配そうな表情をカイルへ向ける。

すると、

 

「大丈夫だよ。リティナ」

 

カイルはリティナに笑い掛ける。

 

「さっきも言ったよ? 君が信じてくれるなら、俺は負けない!」

 

カイルは迷いを一切見せずに言い切った。

 

「ッ……………信じています。カイル」

 

リティナはその姿に見惚れつつ、ハッキリと頷いた。

 

「うん………!」

 

カイルも笑顔で頷いた。

カイルは一歩前に出ると、自分のデジヴァイスを取り出す。

 

「…………デジヴァイスの形が…………」

 

エンジェウーモンが気付いたように呟いた。

 

「えっ………? あっ!」

 

エンジェウーモンの言葉でリティナも気付いた。

カイルのデジヴァイスは、リティナの記憶にあるデジヴァイスicではなく、一回り大きなデジヴァイスになっていた事に。

カイルはそのデジヴァイス、デジヴァイスバーストを前に突き出すと、

 

「リアライズ…………!」

 

己のパートナーの名を叫んだ。

 

「ビクトリーグレイモン!!」

 

デジヴァイスの画面が輝き、その姿が実体化していく。

 

「おおっ!!」

 

その場に現れるのは巨大な大剣を持つ、黄金の鎧を纏いし竜戦士。

 

「漸く出番か!」

 

大剣を肩に担ぎ、堂々とファラオモンを見据えるビクトリーグレイモン。

 

「こ、このデジモンは………!?」

 

カイルの後ろでリティナが驚愕していると、

 

「ライズグレイモンが進化した究極体………ビクトリーグレイモンだ!」

 

カイルがそう言い放つ。

 

「なっ!? 究極体だと!?」

 

アルベルトがその姿を見て、明らかに狼狽えた様子を見せた。

流石にカイルも究極体を出して来るとは思っていなかったようだ。

その光景に、王国側にもざわめきが広がる。

 

「お、おい………もしこの決闘であの平民が勝てば………」

 

「あのような不利な同盟を呑まなくても………」

 

貴族達の間で色々な言葉が飛び交う。

カイルがリティナに視線を送り、そっと微笑むと、リティナも嬉しそうな顔をして、

 

「では、決闘の立会人はこのわたくしとエンジェウーモンが務めます」

 

堂々と決闘の段取りを始めた。

 

「なっ!? ま、待て!」

 

アルベルトが慌てて止めようとする。

 

「どうかなされましたか? 皇帝陛下。陛下は先程カイルの決闘の宣言に対し、受諾を宣言いたしました。今取りやめれば不戦敗となりますがよろしいので?」

 

リティナは煽る様にそう言う。

 

「ぐっ………!」

 

リティナの言葉に、アルベルトは言葉を詰まらせる。

不戦敗とは即ち、相手に恐れ戦いて逃げたに等しい。

アルベルトは戸惑うようにしていたが、少しすると突然落ち着いたように身形を正し、

 

「失礼。まさかそちらも究極体が出て来るとは思わず、取り乱してしまった」

 

冷静な表情でそう言った。

 

「……………それでは、改めて決闘は受諾ということで宜しいので?」

 

「ああ、もちろんだとも」

 

突然のアルベルトの変わりようにリティナは訝しむも、気を取り直して段取りを進める。

 

「それではこれより、アルベルト・ド・ブラウザ皇帝陛下と、騎士カイルの決闘の儀を執り行います。両者、準備はよろしいですか?」

 

「「………………………」」

 

リティナの言葉にカイルは真剣な表情で、アルベルトは何処か余裕の笑みを浮かべた表情で沈黙する。

 

「「…………………………」」

 

その2者と同様に、ビクトリーグレイモンとファラオモンが睨み合う。

 

「それでは……………」

 

リティナが手を掲げ、

 

「…………始め!」

 

振り下ろされると同時に、

 

「頼んだよ! ビクトリーグレイモン!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

ビクトリーグレイモンが大剣を振り被りながら、

 

「迎え撃て! ファラオモン!!」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオォッ!!」

 

ファラオモンは黄金の杖を構えながら突進した。

互いの中央で2体が激突する。

その衝撃は地面を陥没させ、凄まじい衝撃波を発生させる。

 

「きゃっ!?」

 

「リティナ!」

 

リティナをエンジェウーモンが庇う。

 

「ぬおっ!?」

 

「陛下!」

 

吹き飛ばされそうになったアルベルトを、親衛隊の騎士が支え、その前を完全体のボルケーモンが護った。

周りの貴族達は、その衝撃波に耐えきれず、殆どが転倒している。

 

「…………………」

 

因みにカイルはデジソウルを宿しつつ、素で耐えていた。

2体は鍔迫り合いの状態だったが、

 

「はぁあああああああああああっ!!」

 

ビクトリーグレイモンが気合の入った声を上げると、ファラオモンの杖を押し返していく。

 

「な、何っ!?」

 

アルベルトが驚愕の声を上げた瞬間、

 

「はぁあああああああっ!!」

 

ビクトリーグレイモンが剣を振り切り、ファラオモンを吹き飛ばす。

 

「ビクトリーグレイモン! 地上での戦いは皆が巻き込まれる! 空中に飛ばすんだ!!」

 

「任せろ!」

 

カイルの指示に、ビクトリーグレイモンは勇ましく応え、ファラオモンを追撃する。

吹き飛ばされたファラオモンは、足から着地して転倒は防ぐ。

だが、体勢は崩れている。

そこへ、

 

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

 

大剣を大きく振りかぶったビクトリーグレイモンが踏み込んできており、体勢が悪く、回避不能と判断したファラオモンは杖で防御姿勢を取った。

 

「おらぁああああああっ!!」

 

ビクトリーグレイモンは、大剣を下から掬い上げるように振り上げ、ファラオモンを打ち上げる。

 

「ビクトリーグレイモン! ファラオモンに飛行能力は無い! 畳み掛けろ!!」

 

「よっしゃあっ!!」

 

ビクトリーグレイモンは大剣を分離させ、両腕に装着する格闘形態となると、地面を蹴って空へ飛び立つ。

そして、空中に飛ばされたファラオモンに追いつくと、

 

「オラオラオラオラァ!!」

 

怒涛の拳のラッシュを叩き込んだ。

ファラオモンも防ごうとはしているものの、飛行能力を持たないファラオモンでは空中で満足に動く事が出来ず、攻撃の大部分を喰らってしまう。

ダメージが蓄積され、その特徴的な黄金の仮面にも罅が入った。

 

「オラァッ!」

 

ビクトリーグレイモンは、渾身の一撃で大きくファラオモンを吹き飛ばすと、周囲のエネルギーを集め始める。

 

「トライデント………!」

 

そして必殺の一撃を放とうとした時、

 

「ビクトリーグレイモン!」

 

警告する様な声で、カイルが叫んだ。

 

「ッ!?」

 

その瞬間、ビクトリーグレイモンに無数のミサイルが撃ち込まれた。

 

「くっ………」

 

ダメージは少ないが、突然の攻撃にビクトリーグレイモンは必殺技を中断してしまう。

ビクトリーグレイモンはミサイルが飛んできた方を見ると、完全体のメガドラモンを先頭に、セーバードラモンやプテラノモン、クワガーモンといった飛行型のデジモン達が向かってきていた。

更に、いつの間にかファラオモンが、オオクワモンの上に乗っている。

 

「これは………!」

 

次の瞬間、現れたデジモン達から攻撃が殺到する。

 

「ッ!?」

 

無数の攻撃を、ビクトリーグレイモンは躱し、あるいは防御する。

その時、別方向から黄金の包帯が伸びて来てビクトリーグレイモンを縛り付けた。

 

「しまった!」

 

その包帯は、ファラオモンから伸びてきている。

その隙に、攻撃が殺到してビクトリーグレイモンを爆炎に包む。

 

「ビクトリーグレイモン!!」

 

カイルが思わず叫ぶ。

 

「アルベルト陛下! 如何いうおつもりですか!?」

 

リティナが即座に抗議する。

 

「如何………とは………?」

 

アルベルトは、涼しい顔でそう返した。

 

「これは陛下とカイルの一騎打ちの筈です! これでは明らかに決闘のルールに違反しています!!」

 

リティナがアルベルトを強く非難する。

しかし、それでもアルベルトは涼しい顔で笑いながら、

 

「これは異な事を………その騎士殿は、『皇帝』に一騎打ちを挑んだのです。『皇帝』に挑むということは、即ち『帝国』に挑むと同義。お望み通り、全軍を以ってお相手いたしましょう」

 

「ッ………! なんて屁理屈を………!」

 

「これも『皇帝』………この私の力なのですよ。私の力を一騎打ちに使って何が悪いのです?」

 

悪びれも無くそう言う。

 

「騎士殿。これが『平民』である君と『皇帝』である私の違いだ。皇帝である私には、無数に使える『駒』がある。1人しかいない君と違ってね」

 

アルベルトは、いい気味だと言わんばかりにカイルを見下す。

 

「……………………」

 

カイルは、軽く俯くようになっていたため、アルベルトからカイルの眼は前髪に隠れて見えない。

しかし、その様子を見て、心底悔しがっているだろうと愉悦の笑みを浮かべた。

すると、

 

「………………確かに俺に使える『駒』はいないよ。だけど、俺は決して1人じゃない………」

 

「んんっ?」

 

その言葉の真意を測りかねたアルベルトが声を漏らす。

 

「俺には…………」

 

そう言って顔を上げたカイルの眼は、希望の輝きに溢れている。

その瞬間、上空から金色の光が一直線に降下してきて、ビクトリーグレイモンを縛り付けていた包帯を切り裂く。

続けて、無数のミサイルが降り注ぎ、現れたデジモン軍団を次々と氷漬けにしていった。

 

「な、何事だ!?」

 

思わず狼狽えるアルベルト。

その瞬間、ビクトリーグレイモンが包帯を振りほどき、

 

「トライデントガイア!!」

 

ファラオモンに向かって必殺技を放った。

エネルギー波の直撃を受けたファラオモンは、オオクワモンごと消滅する。

 

「ファ、ファラオモンが…………」

 

アルベルトが呆けた声を漏らした。

すると、

 

「俺には、頼もしい『仲間』がいる!!」

 

カイルが言い放った。

その瞬間、カイルの前にビクトリーグレイモン、ウォーグレイモン、メタルガルルモンが降り立つ。

 

「このデジモン達は………」

 

リティナが呟くと、

 

「メタルグレイモンが進化したウォーグレイモンと、ワーガルルモンが進化したメタルガルルモンだよ」

 

カイルが答える。

 

「ッ! ということは………!」

 

リティナが気付いて叫んだ時、突如として突風が吹き荒れた。

何故なら、上空に巨大な竜のデジモン、インペリアルドラモンが降下してきたからだった。

 

「あれは………!」

 

「インペリアルドラモン。パイルドラモンが進化した究極体だよ」

 

再びカイルが答えた。

すると、インペリアルドラモンの背から青い光が放たれ、複数の人影がその背から光の中を通って複数の人影が降り立った。

そして、

 

「リティナ様!」

 

クラウディアを筆頭に、エミリア、アリス、エリスが駆け寄る。

 

「クラウディア! エミリアさんにアリス、エリスさんも……!」

 

友人たちの姿に、リティナは嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「きゅ、究極体が………4体………!?」

 

アルベルトが現実を認識できないように狼狽える。

 

「ッ!? リ、リティナ王女! これこそ決闘のルール違反ではないかな?」

 

アルベルトは咄嗟に平静を装いながらリティナに問いかける。

すると、

 

「あら? これは異な事を。あなたが『皇帝の力』と称して、自分の家臣や部下達を『駒』として決闘に参加させたように、カイルも『カイル自身の力』として『仲間』と言う力を使ったに過ぎませんわ」

 

先程のアルベルトと同じ屁理屈で言い返すリティナ。

 

「ぐぐ…………」

 

悔しそうに歯ぎしりするアルベルト。

そして、

 

「この決闘は、カイルの勝利とします」

 

リティナがそう宣言した。

その瞬間、沸き立つのは王国側の人間達。

決闘を見た貴族達はどうやってカイルやクラウディア達を取り込もうかと策謀を巡らし始める。

その中で一番に動いたのは、

 

「アリス! エリス!」

 

アリスとエリスに駆け寄る1人の男。

それは、2人の父であるダニエル・ジエス・フォン・ファイル。

 

「………居たのねお父様………」

 

アリスが呆れたように溜息を吐く。

 

「アリス、エリス。私が悪かった。どうか私の所へ戻ってきておくれ………!」

 

今までの態度が嘘のように、下手に出ながら謝罪し、戻ってくるよう懇願する。

 

「………すごい掌返し」

 

エリスも呆れている様だ。

 

「悪いけど、私達は家に戻るつもりは無いわよ」

 

「そ、そう言わないでくれ………! そ、そうだ! 望みを何でも叶えよう。エリスの待遇も改善する。だから、戻って来ておくれ………!」

 

アリスの言葉に、ダニエルは更に必死に下手に出る。

 

「じゃあ望みを言うけど………」

 

「おお………」

 

アリスの言葉にダニエルは一瞬期待の声を上げるが、

 

「私達の望みは、2人一緒にタイシのお嫁さんになる事よ」

 

アリスとエリスが、近くにいた大士に抱き着きながら、アリスがそう言った。

 

「私達はタイシについて行く。だから家に戻ることはできない」

 

エリスもハッキリとそう言う。

すると、大士は2人の肩を抱き寄せ、

 

「そういう訳で、2人は俺が貰っていく。返事はいらない。決定事項だ」

 

そう言い放った。

 

「そ、そんな………」

 

ダニエルがガクッと項垂れた。

その時、

 

「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!」

 

突如としてアルベルトが激昂する。

懐から短剣を取り出すと、

 

「リティナ王女! あなたは私の物だぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

その短剣を振り被りながら、リティナに襲い掛かった。

 

「ッ!?」

 

突然の事に、リティナは動けない。

その短剣が振り下ろされ、

 

「リティナは………俺が護る!!」

 

それよりも早くカイルがリティナの前に立ちはだかり、その言葉と共に放たれた拳がアルベルトの頬を捉えた。

 

「ぐはぁっ!?」

 

拳が頬にめり込み、何本かの歯が宙を舞いつつアルベルトは吹き飛ぶ。

そのままアルベルトは数人の兵士を巻き込んで倒れると、

 

「あ……あひゃ………?」

 

ものの見事に頬が腫れ上がり、歯が何本か折れたアルベルトの顔があった。

 

「「「「「「「「「「………………………………」」」」」」」」」」

 

辺りが静寂に包まれる。

すると、

 

「ふっ………フフフフ……………フハハハハハハハハッ!!」

 

突然高笑いが響いた。

その笑いの出所は、

 

「お兄様………?」

 

リティナが呟く。

それは、先程カイルが殴り飛ばして階段から転げ落ちたレオナルドだった。

 

「よくやってくれた諸君! 国王として鼻が高いよ! まさか究極体を()()()連れて来てくれるとは!」

 

4体を強調するレオナルド。

その姿を見て、呆れた目を向けるクラウディア達。

レオナルドはアルベルト達の方に向き直り、

 

「さて諸君。見ての通り我が王国には4体の究極体がいる。この意味が分かるね………?」

 

今までの鬱憤を晴らすかのように、強気に出るレオナルド。

帝国側の貴族達は狼狽えるように騒めいていた。

その様子を見て愉悦の笑みを浮かべるレオナルドだったが、

 

「それまでだ………!」

 

「ッ!?」

 

そこまで大きくは無い声で………

しかし、有無を言わさぬ迫力を持った声が、レオナルドに向かって投げかけられた。

そして何より、この場に聞こえる筈の無い声に、レオナルドは動揺した。

レオナルドは恐る恐る後ろを振り返る。

大士やクラウディア達が道を開けるように両側に避ける。

そして、カツカツと足音を響かせながら歩いてくる1人の人影。

それは、毒で倒れて意識が無い筈のサーバー王国国王であり、

 

「ち………父上……………!?」

 

そして、己が父であるアスランの姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

 





オリジナル異世界編第57話です。
カイル君ヒーロータイム!
男を見せてくれました。
そして、勝利したことにいい気になる王子サマでしたが、そこに国王サマが現れて………
次回をお楽しみに。
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