ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第58話 断罪の時

 

 

「ち………父上……………!?」

 

突如として現れたアスラン王に、王子サマは狼狽えた表情を見せた。

 

「お父様!」

 

対して、リティナ王女はその姿を見て顔を輝かせる。

 

「お父様! ご無事だったのですね!」

 

純粋に、父親が無事であることに喜びを露にするリティナ王女。

 

「ッ……………!」

 

しかし、王子サマはあり得ないと言わんばかりに苦悶の表情を浮かべている。

その表情で全てを語っているも同然なんだが。

 

「心配をかけたようだな。アリス嬢とエリス嬢のお陰でこの通り何ともない」

 

アスラン王は無事であることを態度に出しながらそう言う。

 

「そうですか………アリス、エリス。お父様を救って頂いた事、心から感謝いたしますわ」

 

リティナ王女は、アリスとエリスに頭を下げる。

 

「ま、まあ、タイシの〝再生魔法〟あっての事だけど………」

 

アリスは居た堪れなくなって視線をズラしながらそう言う。

 

「さて…………」

 

アスラン王は改めて王子サマに向き直る。

 

「随分と勝手な事をしてくれたな? レオナルド………!」

 

目を細めながら、厳しい目付きで王子サマを睨み付けるアスラン王。

 

「わ、私は父上が不在の間、この国を守ろうと…………」

 

「ほう? 同盟内容は読ませてもらったが、あのような国が100年どころか、10年持つかどうかも怪しい条件を呑んで、国を守ると? その上リティナまで差し出して………か?」

 

「そ、そうしなければ、究極体の力で我が国は滅ぼされていました!」

 

アスラン王の言葉に、王子サマは言い訳がましくそう言う。

 

「………最善は尽くしたと?」

 

「そ、そうです!」

 

頷く王子サマ。

 

「では聞こう。お前はタイシ殿に応援を要請したのか?」

 

アスラン王が俺に視線を向けながら王子サマに問う。

 

「そ、その男は既に魔族領へ向かっておりました! それに、もし居たとしても、その男が私の命令を聞くはずがありません!」

 

『命令』ね…………

その言葉に、俺は溜息を吐く。

 

「『命令』では無い。『懇願』したのかと聞いている」

 

「なっ!?」

 

アスラン王の言葉に、王子サマは驚愕の声を上げる。

 

「な、何故私がその男に………!」

 

「国を守る為の最善策だからだ………!」

 

王子サマが反論しようとしたが、それ以上の威圧を以ってアスランが語り掛けた。

 

「究極体に対抗できるのは、先の時点でタイシ殿のみ。ならば、タイシ殿に助力を乞うのは当然では無いのか?」

 

「た、例え私が懇願したとしても、その男が聞き入れるとは思いませぬ!」

 

「ほう? お前は思い込みで最善策を切り捨てたと?」

 

その言葉に、王子サマは言葉を詰まらせるが、俺の方を向くと、

 

「ならば貴様に問おう! 私が貴様に助力を乞うていたら、要請に応じたか否か!?」

 

そう問いかけてきた。

 

「…………まあ、単純に俺だけだったら断るだろうな」

 

なので、俺はそう判断するであろう言葉を口にする。

 

「ふん、やはり………」

 

「だが………」

 

王子サマが鼻で笑いながら言葉を続けようとしたので、俺は言葉を被せた。

 

「そうなった時の状況は簡単に予想出来る」

 

「状況だと?」

 

王子サマが訝しむ様な声を漏らす。

 

「確かに俺は、お前に力を貸せと言われても断っただろう。だが、その話の中に、リティナ王女の婚約が盛り込まれている事を知れば、少なくとも黙っちゃいられない奴が1人いる。まあ、こうして現に結婚式に乗り込んだわけだしな」

 

俺はカイルに視線を向けながらそう言う。

 

「もちろんさ!」

 

カイルは当然とばかりに頷く。

 

「もちろんカイルだけじゃなく、クラウディアやエミリア、アリス、エリスも黙ってられないだろう」

 

「当然だな。良い噂を聞かないアルベルト殿下に嫁ぐと聞いて、黙っていられるわけはない」

 

クラウディアも同意する。

 

「それで、この5人が動くとなれば、それを放っておけない俺達も済し崩し的に動くことになる。まあ、状況にもよるが、高確率で究極体は倒す事になっただろうな。ま、その対価に、お前の王位継承権の放棄位は要求したと思うが」

 

「何ッ!?」

 

「本当に国の為を思うなら、王位継承権位安いものだろう?」

 

「ふ、ふざけた事を………!?」

 

「確かに安いものだな」

 

王子サマが反論しようとした時に、アスラン王が同意を示す。

 

「国の存亡の危機に、己の王位継承権の放棄で国が助かるのなら、確かに安いものだ」

 

アスラン王は、納得といった態度を示す。

 

「それともお前は、国民全員の命より、『王』と言う立場を守る方が大切だと思っているのか………?」

 

「そ、それは………」

 

アスラン王の言葉に王子サマは言葉が尻すぼみになってしまう。

 

「そのような者に、『王』の資格は無い」

 

「ッ………!」

 

言い放つアスラン王と、言葉が出てこない王子サマ。

すると、

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

そう言って飛び出してきたのは、久々に見るパチモン勇者。

 

「俺には王族の事はよくわかりません! でも、レオは今まで頑張って………!」

 

パチモン勇者は王子サマを擁護する言葉を口にする。

アスラン王はそんなパチモン勇者を見て、一度目を伏せると、再び王子サマに視線を向け、

 

「……………もう1つ聞こう。お前は、自分達だけではどうにもならない時の為に、勇者召喚を強行したのでは無かったのか?」

 

「ッ! 父上は、勝ち目の無い戦いにマリカ達を駆り出せというのですか!?」

 

「少なくとも、国の存亡の前には、非情な判断もしなければならないことは確かだ」

 

「ぐっ………!」

 

再び言葉に詰まる王子サマ。

そこで俺は口を開いた。

 

「俺からも聞きたいが、勇者の3人は王国の危機の前に何もしなかったのか?」

 

俺はパチモン勇者。

それと、その後ろにいる中島さんと山口に問いかける。

 

「そっ、それは………勝てない相手に無策で挑むのは、勇気じゃなくて無謀だからだ!」

 

山口がそう言う。

 

「なるほど、確かにその通りだ。だが、それはお前達にとって、王国は命を懸けてまで護るほどの価値は無いと言ってるも同義だということをわかっているか?」

 

「そ、そんな事っ………!」

 

「確かに勝てない相手に無策で挑むのは無謀だ。それは俺も同意する。だが、後が無い状態でそう言うということは、それは結局、わが身可愛さに王国の人達を見捨てるということだ」

 

「ち、違っ………! 今は勝てなくても、最後には必ず勝つ! だって俺は………!」

 

「主人公だから……か?」

 

「そ、その通りだ!」

 

俺の言葉に肯定の意を示す山口。

俺は軽く溜息を吐き、

 

「悪いが、俺はそんなキャラが主人公の物語は、まともに読む気がしないな」

 

「な、何ッ!?」

 

「偉そうに説教する気は無いが、目の前の困難から逃げ続けるだけの主人公には、全く持って魅力を感じない。それに、『勝てない』と思っているって事は、自分のパートナーデジモンを信じていないということだ。そんな奴に、更なる進化が出来る筈ないだろう」

 

「う、うるさい! そんなの、お前が強力なデジモンを持っているから言える言葉だ! お前だって俺と同じ立場なら………!」

 

「なるほど………まあ、俺じゃあ説得力薄いのは確かだな……………けど、カイル達は立ち向かったぞ」

 

「えっ?」

 

「俺と逸れ、救援も望めない状況で究極体と戦うことになり、ほぼ勝ち目が無いと言っていい戦い…………それでもカイル達は自分のパートナーを信じ、強大な敵に立ち向かった………! だからこそ、カイル達のパートナーはその信頼に応え、究極体へと進化したんだ。お前が主人公の物語より、カイル達を主人公にした物語の方が遥かに魅力的だな」

 

俺は山口の考えに合わせてそう言ってやる。

 

「ッ………………!」

 

山口は言葉を詰まらせて俯いた。

パチモン勇者も、自分のデジモン達を信じていないと言われてショックを受けている様だ。

中島さんは………おどおどしていて何を考えているのか分からん。

 

「お、お前にそんな事を言う権利があるのか!? 王国を助けないと言ったお前に!!」

 

山口が俺に指を指しながらそう言った。

すると、

 

「確かにタイシは王国を助けるとは言ってない。だが、大士の行動は結果的に何度も王国を救っているぞ」

 

そう言ったのはクラウディアだった。

 

「先の魔族侵攻は当然の事、今回の事もタイシが私達と共に行動しなければ成し得なかった事だ。タイシが居なければ、我々もパートナーを究極体へ進化させることは不可能だっただろう」

 

「そ、それは………」

 

「お前達は自分達を勇者だと言っているが、実際には勇者としての実績は何も無い。そのお前達が、結果的にとは言え、何度もこの国を救ったタイシを非難する権利など無い……!」

 

クラウディアは不機嫌そうな表情で山口に言った。

すると、アスラン王がクラウディアを制するように片手を横に広げた。

 

「勇者達については、強制的に召喚したこちらにも責任はあるため、罪に問うことはしない……………だがレオナルド………お前は別だ………!」

 

アスラン王はそう言って厳しい目を王子サマに向ける。

 

「ち、父上……!? どういう意味でしょうか……!?」

 

王子サマは少し慌てた様子でそう言うが、

 

「惚けるな! 私の食事に毒を盛る様犯人に指示したのは…………他でもない、貴様であろう、レオナルド?」

 

「ッ!?」

 

その言葉に、明らかに動揺した反応を見せる王子サマ。

 

「い、いきなり何を仰るのです父上! よりにもよってこの私が、どうして父上に毒を………!?」

 

「クラウディア嬢の婚約破棄からの決闘騒ぎ。フォルダ公爵領での魔族侵攻の阻止。エクスプローラー聖国でのデニティス教の失墜。それらの出来事で自分の支持率の急落を感じ、王位をリティナに奪われる事を危ぶんだお前が、これ以上支持率が落ちる前に私に毒を盛り、王位簒奪を目論んだ。しかし、おそらく殺すつもりだったのだろうが、宮廷魔術師達の必死の治療で一命は取り留めてしまった。だが、意識がいつ戻るかも分からないということで、これ以上怪しまれないように放置する事にした。と言う所か…………」

 

「ご、御冗談を………それに、私が黒幕と言う証拠はあるのですか?」

 

王子サマは引き攣った笑みを浮かべながらそう問いかける。

その反応が全てを物語っていると言っても過言じゃないんだがな。

 

「実行犯は既に処刑済み。口封じは完璧。と言いたげだな?」

 

アスラン王が確認するように問いかけた。

 

「口封じとは人聞きの悪い……! 私は父上に毒を盛った罪人を処罰しただけで………」

 

「莫大な謝礼金と共に秘密裏に国外に逃がすと言ってそそのかした挙句、その約束を反故にして口封じの為にその場で首を刎ねた事がか?」

 

「ッ!?」

 

王子サマは目を見開き、口をパクパクと開いたり閉じたりしている。

 

「何故その事を……と言いたげだな? ならば教えてやろう。 アリス嬢とエリス嬢がタイシ殿から受け継いだ異世界の魔法には、過去の出来事を映し出す事が出来る魔法が存在する。つまり、お前が実行犯に毒を盛る事を依頼した瞬間は、ハッキリとこの目で見て、この耳で聞いている」

 

アスラン王はハッキリと言い放つ。

 

「そ、そんな魔法がある筈が…………そ、そうです! きっと幻覚魔法か何かで、私に罪を擦り付けようとしているに違いありません………!」

 

王子サマは尚も言い逃れようとする。

 

「その程度の理由で言い逃れる事が出来ると思っているのか………!? 当然可能な限りの検証はした。タイシ殿が召喚される前の、私とガーランドしか知らぬ話し合いの場を映し出したりしてもらってな………その結果、私もガーランドも、その魔法に間違いは無いと判断した」

 

「ッ………!?」

 

二の句が告げなくなる王子サマ。

その様子を見て、

 

「そ、そんな………レオが本当に………!?」

 

パチモン勇者が驚愕の表情で王子サマを見る。

王子サマは悔しそうに俯き、歯を食いしばりながら拳を握って肩を震わせている。

その様子を見て、アスラン王は一度息を吐くと、

 

「……………何故だレオナルド………? 何がお前をそこまで急がせた………? お前は自他共に認める優秀な王子だった。焦らなくとも、いずれは優秀な王として王国を治める事が出来た筈だ」

 

アスラン王は『父』として王子サマに語り掛けた。

すると、

 

「…………優秀………? ええ、確かに私は優秀でしたよ。幼き頃から『王子』として英才教育を受け、他者よりも優れているという自負はありました………」

 

まるで諦めた様に身体の力を抜き、自嘲するように話し始めた。

 

「何事も無ければ、父上の言う通り優秀と言われる王となって私はこの国を治めていたでしょう」

 

「では何故………? その時にお前を支えてくれるように、クラウディア嬢も婚約者にしたというのに………」

 

「……………そのクラウディアが原因なのですよ。父上」

 

「何っ………?」

 

「ッ!?」

 

王子サマの言葉に、アスラン王は怪訝な声を漏らし、クラウディアは僅かに動揺する。

 

「何も知らぬ幼い頃はまだ良かった………婚約者と聞いても、将来は父上と母上の様になるのだと思っていた…………しかし時が経ち、教育が本格的になるにつれ、私は気付いてしまったのだ」

 

「気付くだと……?」

 

「私は教育係から優秀だと言われていた。確かに同年代の貴族の子息達と比べれば、私は優秀だった。切望の眼差しも受けた………! だが………!」

 

王子サマはそこまで言うと、クラウディアをキッと睨み付けた。

 

「私の前にはいつもクラウディアが居た! 礼儀作法、文学、武術、挙句の果てにはデジタルナイトとしても………クラウディアは、いつも私の一歩前を行っていた!」

 

今までの鬱憤を晴らすかのように吐き出し続ける王子サマ。

 

「そしてリティナの存在も私には目障りだった!」

 

「わたくしも………?」

 

リティナ王女が困惑する。

 

「公には誰も口にしてはいないが、リティナも私より優秀だった! ただ、リティナより先に生まれ、そして『王子』であるが故に私の方が王位継承権が上だっただけに過ぎん………! 『リティナの方が王に相応しい』。そのような陰口を耳にしたのも、一度や二度では無いぞ………!」

 

「お兄様………」

 

「このまま王になったとしても、私は『男だったが故に王位にありつけた王』であり、 『【歴史に残る優秀な王妃】の配偶者』にしかなれないと悟ったのだよ!」

 

王子サマには王子サマの確執があった訳か。

だが、

 

「…………………だから、クラウを陥れようとしたんですか………?」

 

エミリアがそう呟きながら前に出てきた。

その声色は重く、軽く俯いているため、前髪に隠れてその表情は伺い知ることは出来ない。

 

「ああそうだ! クラウディアがいると、私は唯の付属品にしかなれない! 私は『私』になれないのだ!!」

 

そう叫んだ瞬間、

 

――パァンッ!!

 

乾いた音が響き渡った。

エミリアが王子サマの頬を平手で叩いたのだ。

 

「…………ッ!?」

 

王子サマは一瞬何をされたのか理解できない表情をしていたが、少しして我を取り戻すと、

 

「こ、この平民がっ! 王族である私を打擲するなど………!」

 

怒りに満ちた表情でエミリアに言葉を吐こうとして、

 

「ふざけないでください!!!」

 

「ッ!?」

 

それ以上のエミリアの気迫の籠った声に黙らせられた。

 

「クラウが………クラウが今までどれだけ頑張って来たと思ってるんですか!? 自分の事は全て二の次で………人生の全てを投げ打ってまで王国の……あなたの為に頑張って来たというのに……! それなのにあなたは自分の事ばかり! そんなあなたがクラウに勝てないのは当然じゃないですか!!」

 

「リア………」

 

エミリアの言葉に、クラウディアは彼女の名を呟く。

 

「あなたはクラウの存在を言い訳にして、努力する事を止めてしまった、ただの情けない人です!!」

 

エミリアはそう言い切った。

 

「ッ……! こ……のっ………!!」

 

遂に王子サマが我慢できなくなったのか、エミリアに手を振り上げる。

俺は、即座に動こうとして……………やめた。

何故なら、

 

――バキィッ!

 

「ぐあっ!?」

 

俺が動くまでもなく、クラウディアが王子サマの頬を殴ったからだ。

転倒はしなかったが、数歩後退した後、一瞬呆気に取られた表情で殴られた頬に手を当てながら、クラウディアを見た。

 

「リアに手を挙げると言うなら、殿下と言えど容赦はしません………!」

 

敵意の籠った目で王子サマを見つめるクラウディア。

 

「クラウディア………貴様も私に手を………!」

 

再び沸々と怒りを募らせる王子サマ。

 

「…………殿下………昔の殿下は尊敬できる方でした………優秀な王子と言われるあなたの婚約者に選ばれた事は、公爵家の娘として誉であり、誇りでした…………あなたの努力する姿を見て、私もそんな殿下の婚約者の名に恥じぬよう、寝る間も惜しんで努力を続けて参りました………私が今まで努力を続けて来られたのは、間違いなく貴方の努力する姿を見てきたからです……………ですが、あなたはいつの間にか努力する事を止めてしまわれていたのですね………」

 

クラウディアは、落胆の表情を浮かべながら語り掛ける。

 

「今のあなたは、私が尊敬したレオナルド・オメガ・フォン・サーバー王子殿下ではありません…………王位簒奪を目論み、陛下暗殺未遂の、ただの犯罪者です」

 

そう言い切った。

 

「ッ…………!」

 

その言葉に何かショックを受けたのか、王子サマは項垂れる。

それを見たアスラン王が、

 

「レオナルドの罪は白日の下に晒された! 兵士達よ! レオナルドを国家反逆罪により拘束せよ!!」

 

そう命令を下した。

サーバー王国の数人の兵士達が少々戸惑いつつも、命令に従い王子サマを拘束する為に近付いていく。

 

「…………殿下、国王陛下のご命令です。拘束させていただきます」

 

そう断りを入れ、

 

「やめて…………」

 

王子サマに手を伸ばし、

 

「…………ッ! やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

慟哭の様な中島さんの叫びが響いた。

それと同時に、

 

「ッ!?」

 

クラウディアが咄嗟にエミリアを庇いながら王子サマから離れるように2人一緒に倒れ込む。

その直後、上空からヒポグリフォモンが急降下してきて王子サマの前に勢いよく着地した。

その時の衝撃波により、拘束しようとした兵士達が吹き飛ばされる。

 

「クッ!」

 

俺も衝撃波から顔を庇う。

 

「マ、マリカ………?」

 

王子サマも唖然としたように中島さんを見た。

 

「…………奪わないで…………」

 

中島さんはフラフラと身体を揺らしながら歩み寄っていき、

 

「私からレオを………奪わないでぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

「キュォオオオオオオオオッ!!」

 

中島さんの叫びと共に、ヒポグリフォモンが口から熱風を吐き出す。

 

「ブレイブシールド!!」

 

「させるか!!」

 

その熱風が俺達に襲い掛かる前に、ウォーグレイモンとメタルガルルモンが前に出てそれを防ぐ。

 

「ま、真里佳!?」

 

「何をしているんだ!?」

 

山口とパチモン勇者も驚愕している。

 

「………何がいけないの………?」

 

中島さんの口から疑問が零れる。

 

「自分の幸せを求めて………何がいけないの…………?」

 

顔を上げた中島さんの眼からは、涙が止め処なく溢れていた。

 

「レオは唯………自分の幸せを求めていただけなのに………」

 

「マリカ………」

 

中島さんは王子サマにしなだれかかる様に抱き着き、王子サマも少し戸惑ったが、彼女の肩を抱く。

 

「レオは幸せになりたかった………自分が幸せになる為に全力で行動した………あなた達の男も一緒でしょ!? レオとその男の何処が違うの!?」

 

中島さんは起き上がったクラウディアとエミリアに向かってそう言い放つ。

 

「だから私も自分の幸せの為に全力で行動する! 私にはレオしかいない……! 私を幸せにしてくれるのは………レオしか居ないの!!」

 

その叫びにどんな思いが込められてるのかは分からない。

ただその言葉から感じるのは、強い依存と執着。

もしかしたら、中島さんにも辛い過去があるのかもしれない。

 

「だから、邪魔をしないで………私達の幸せの邪魔をしないで………! それでも邪魔をするって言うなら……………!」

 

中島さんの心からの叫びと共に、ヒポグリフォモンに変化が訪れる。

ヒポグリフォモンが暗く怪しい光に包まれていく。

その光は、まるで中島さんの執着心を表すように、深く、暗い紫色に輝いている。

 

「これは、まさか……!」

 

俺が驚愕した瞬間、

 

「皆………皆……………消してやる!!」

 

執着と憎悪に塗れた叫びと共に、ヒポグリフォモンが放つ光が一段と強く、膨れ上がり、

 

「ギュァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

耳を劈く鳴き声と共に、巨大な紫色の翼が羽搏く。

それは、『天空の覇者』とも呼ばれる、巨大な古代鳥型デジモン。

 

「ッ………オニスモンッ!!」

 

中島さんの執着と憎しみによって進化した、上位に食い込む力を持つ究極体のデジモンだった。

 

 

 

 

 

 







オリジナル異世界編第58話です。
ちょっと物足りないような気もしますが、こんな感じで。
如何だったでしょうか?
このまま断罪かと思いきや、何と真里佳のデジモンが………
次回をお楽しみに。





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