【Side 三人称】
中島 真里佳の父親は、お世辞にもいい父親とは言えなかった。
真里佳が物心ついたころから飲んだくれで乱暴な父親。
酒を飲んでは母親に暴力を振るっていた。
そんな父親を、母親は献身的に支えていた事に、幼い頃の真里佳は理解が出来なかった。
母親に聞けば、父親は昔は目標に向かって頑張れる人で、その頑張っている姿を見て母親は父親を好きになったのだと言う。
ただ、事業に失敗したことを皮切りにふてくされてしまい、今の様に飲んだくれで乱暴になってしまったらしい。
それでも母親が父親を支え続けたのは、いつかきっと昔の父親に戻ってくれると信じていたからだ。
今は目標を見失っていても、いつかは新しい目標を見つけ、頑張る姿を再び見せてくれるだろうと。
しかし、そんな母親の思いとは裏腹に、父親の行為はエスカレートしていった。
母親が生活を支える為に夜遅くまで働いて稼いだお金を、父親は酒、ギャンブル、はては女遊びと、湯水のように使い、いつの間にか莫大な借金まで抱えていた。
真里佳もアルバイトが出来る年齢になったら、すぐにアルバイトを始め、少しでも生活の支えになればと稼いだお金は全て母親に渡し、何とか生活と学校だけは続ける事が出来ていた。
だが、真里佳が高校生になり暫くした後、それは起こった。
真里佳が家に帰ると、母親が居間で倒れていたのだ。
真里佳はすぐに救急車を呼ぶが、母親はそのまま死亡。
死因は過労死だった。
母親の死に悲しむ真里佳だったが、父親はその日も不倫相手の所へ行っていたらしく、連絡が取れなかった。
父親が戻って来たのは、通夜の準備が終わった頃だった。
そして、父親は物言わぬ母親の姿を見ても、涙一つ流さず、それどころか心無い言葉を吐き捨てるだけであった。
母親の死後、生活費と学費を稼ぐ為に、真里佳は今まで以上にバイトをするようになった。
ただ、父親への援助は打ち切り、真里佳も家を出てとあるアパートで一人暮らしを始めた。
父親にも住む場所は伝えず、真里佳は父親と縁を切ったつもりで新生活を始める事にした。
その生活は、とても充実したものになっていた。
バイトこそ忙しいものの、家に戻っても気負うものは無く、精神的に解放されたと清々しい気分になっていた。
そんな生活が1カ月程続いた後。
真里佳がバイトを終え、自分のアパートの部屋に戻ってくると、部屋の鍵が開いていた。
真里佳は泥棒が入ったのかと思い、恐る恐る中を確認すると、そこに居たのは数人の見知らぬ男達。
そして、縁を切ったと思っていた父親だった。
真里佳は咄嗟に逃げようとしたが、男達によって部屋の中に連れ込まれる。
そして父親の口から語られたのは、真里佳を男達の慰み者にするということだった。
母親が亡くなり、真里佳も家も飛び出したことで、金の当てが無くなり、父親は手っ取り早く金を稼ぐ為に、真里佳の体を売る事を思いついたのだ。
家を飛び出したとはいえ、学校には通い続けていたため、真里佳のアパートはすぐバレる事になり、学生のバイト代で借りれるアパートの為、セキュリティも高くなかったので、鍵はピッキングが得意な者に開けさせ、真里佳を待ち伏せていたのだ。
真里佳は何とか逃げようとしたが、出入り口は男達によって塞がれ、部屋の中で逃げ惑うものの、それすら男達は楽しむように真里佳を追い詰めていった。
そして、部屋の隅に真里佳を追い詰め、いよいよ手を出されようとした時、真里佳の足元に魔法陣が発生。
父親と男達の目の前で真里佳はリジアルに召喚された。
犯されそうになった事と、見知らぬ場所にいきなり連れて来られた事で、不安で堪らなくなる真里佳。
そんな真里佳に歩み寄り、優しく声を掛けてきたのがレオナルドだった。
真里佳にとって、レオナルドはまさしく自分の窮地を救ってくれた、白馬に乗った王子様だったのだ……………
【Side Out】
「ギュァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
耳を劈く鳴き声と共に、巨大な翼を羽搏かせて空へ舞い上がるオニスモン。
「ッ………オニスモンッ!!」
俺はその名を叫ぶ。
そして、Dアークでその情報を確認した。
「オニスモン 究極体 ウイルス種 古代鳥型デジモン。必殺技は、『コズミックレイ』」
俺はそう言ってオニスモンを見上げる。
巨大な翼の羽搏きで、暴風が巻き起こっている。
「これは………マリカのデジモンが、究極体に…………!」
王子サマが驚愕の表情で呟く。
次の瞬間、
「ギュァアアアアアアアアアアアッ!!」
オニスモンが咆哮と共に口を大きく開けると、雷のような膨大なエネルギー波が放たれた。
その一撃は特に狙いなど付けられておらず、着弾した場所から帝都の端までを一気に蹂躙した。
エネルギー波が直接通過した場所は何も残っておらず、地面も大きく抉れ、その周囲も衝撃波によって甚大な被害が齎されている。
「て、帝都が…………」
帝国側の兵士の1人が呆然とした声を漏らす。
「お、おい中島………!? 何やってるんだ………? いくらなんでもそれはやり過ぎ………」
山口が狼狽えながら中島さんに声を掛ける。
だが、
「皆消えればいいんだ………私とレオの幸せを認めない世界なんて……消えちゃえばいいんだ………!」
「ッ………!?」
薄ら笑いを浮かべながら物騒な事を呟く中島さんの姿を見て、山口は怯えた様に後退った。
「マ、マリカ…………」
彼女の名を呟く王子サマの表情は、戸惑いと、僅かな畏怖を感じさせる。
「レオ……見てて………あなたを邪魔する奴らは、私が皆消してあげるから………」
その言葉と共に、オニスモンの口から放たれる破壊光線が帝都を薙ぎ払う。
「ッ………! 殿下! マリカ殿を止めてください! このままでは帝都の一般人までもが………!」
クラウディアが王子サマに中島さんを止める様叫ぶ。
「……………………………」
王子サマは俯き、何かを堪えるように拳を握って肩を震わせていた。
「殿下!!」
クラウディアはより強く王子サマに呼びかけた。
すると、
「…………………何故止める必要がある?」
「えっ?」
沈黙の後に出てきた言葉に、クラウディアは呆けた声を漏らす。
「何故止める必要がある……? と言ったのだ」
「で、殿下……? 何を………?」
クラウディアは困惑した表情だ。
「帝国は我々サーバー王国を食い物にしようとしてきた国だ。そんな国に住む者共が粛清されているのに、なぜ止める必要があるのだ?」
王子サマは吹っ切れた様にそう語り出す。
「違います! 確かに帝国の上流階級の者達は、その様な企てがあったのでしょう! しかし、そこに住んでいるだけの民達には、罪はありません!! これではただの虐殺です!!」
クラウディアは必死に呼びかける。
「否! そのような者達の庇護下に居るだけで同罪だ! これは虐殺では無い! 正当な防衛行動による、脅威に対する粛清なのだ!!」
王子サマはそう言って中島さんに向き直り、
「マリカ………私の『敵』を全て排除しておくれ………」
「レオ………うん、あなたの為なら、私は何だってしてあげる……!」
まるで芝居がかったような仕草で軽く抱き合う。
「ギュァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
そんな2人の思いに応えるように、オニスモンが一際強い破壊光線で帝都を薙ぎ払った。
既に帝都の4割ほどが破壊されているだろう。
それに比例して、数万人の犠牲者が出ていることは明白だ。
「……………そこまで堕ちてしまわれたのですか………殿下、いや、レオナルド・オメガ・フォン・サーバー!!!」
クラウディアが怒りの籠った声で、『殿下』呼びを止めた。
「うるさい! 私達の邪魔をするというのなら、貴様らも粛清対象だ!!」
「消えちゃえ!」
「ギュァアアッ!!」
その言葉と共に、オニスモンが破壊光線を放ってきた。
中島さんと王子サマを巻き込まないためか、相当威力を絞っている様だが。
クラウディアに向かって破壊光線が降り注ぐ。
「ウォーグレイモン!」
「ブレイブシールド!」
その前にエミリアの呼びかけでウォーグレイモンが前に飛び出し、ブレイブシールドで破壊光線を防いだ。
しかし、弾かれた破壊光線が辺りに四散し、教会や近くにあった建物の一部を崩壊させる。
それに伴い、瓦礫が結婚式に参加していた者達に降り注いだ。
その中には、アリスとエリスの父親であるダニエルの姿もあった。
「ひぃぃっ!?」
ダニエルは頭を抱えて蹲る。
そのダニエルや周辺の貴族達に向かって瓦礫が落ちてくる。
普通の人間では、間違いなくぺちゃんこになる大きさ。
瓦礫はそのまま落下し……………
「「インペリアルドラモン!」」
その言葉と共に突き出されたインペリアルドラモンの前足が、ダニエル達を瓦礫から護る傘となった。
瓦礫が降ってこなかった事に、ダニエルが恐る恐る顔を上げ、そこに居たインペリアルドラモンに驚愕する。
「アンタ達! 死にたくなかったらインペリアルドラモンの下から出ない事ね!」
アリスがそう呼びかける。
「ア、 アリス……エリス……何故………」
ダニエルが困惑した表情で2人に声を掛ける。
すると、
「…………お父さん………だから………」
エリスが呟いた。
「ッ!?」
その言葉に目を見開くダニエル。
「確かにアンタは最低な父親だけどね、私もエリスも肉親が目の前で死ぬところを黙って見ていられるほど落ちぶれちゃいないわ」
「……………………………」
アリスの言葉でダニエルは呆けた表情になる。
「……………………すまん」
長い沈黙の後、謝罪の言葉が漏れた。
尚、他の貴族達については、大きな瓦礫を優花が苦無や手裏剣の投擲で砕き、軽症者だけで済んでおり、アスラン王やリティナ王女はカイルとビクトリーグレイモン、エンジェウーモンによって守られていた。
すると、
「…………大士」
隣にいた葵が、何か言いたげな瞳で俺を見てきた。
葵の言いたい事を理解した俺は、
「ああ。お前のやりたいようにやれ」
頷いてそれを了承した。
「うん」
葵は微笑んで頷くと、光に包まれてアルオイスの姿へと女神化する。
白い翼を羽搏かせて空へ舞い上がると、
「はぁああああああああああああああっ!!」
両手を広げて〝再生魔法〟と〝魂魄魔法〟を最大限に展開した。
オニスモンによって破壊された帝都や、殺されてしまった人々が元へ戻っていく。
「か、神様…………?」
「神の奇跡だ…………!」
「め、女神………!?」
それを目撃した者達から畏敬の声が漏れる。
「ふざけるな……! 私が折角レオの為に消したものを、元に戻すなっ!!」
中島さんの怨嗟の叫びと共に、オニスモンが羽搏いてアルオイスに向かい、口を大きく開けてエネルギーを溜め始めた。
その時、
「はぁあああああああああああああっ!!」
そのエネルギーが放たれる寸前に、ウォーグレイモンがオニスモンの横面に突撃してきて、首の向きを変える。
強制的に首の向きを変えられたオニスモンの破壊光線は、明後日の方向へ飛んでいった。
「ウォーグレイモン! アルオイス様を護って!」
エミリアが叫ぶ。
更に、
「メタルガルルモン! 邪魔をさせるな!!」
「おおっ!」
メタルガルルモンも飛翔し、オニスモンに向かって無数のミサイルを浴びせる。
オニスモンの各部にミサイルが命中し、命中した部分が凍り付いていくが、オニスモンが一度力強く羽搏くと、全ての氷が砕け散った。
「ギュァアアアアアアアアアッ!!」
オニスモンは忌々しそうにウォーグレイモンとメタルガルルモンを睨み付ける。
直後、2体に向かって破壊光線を吐き出した。
2体は2手に別れて回避すると、オニスモンへ向かっていく。
しかし、オニスモンが力強く羽搏くと、暴風が発生して逆に吹き飛ばされた。
「うわっ!?」
「くっ!?」
2体は何とか制動を取って立て直す。
その様子を見て、
「ははは! 凄いぞマリカ! 君のデジモンは! 2体の究極体を相手に押しているぞ!」
「はい! 私達の愛で進化したデジモンは無敵です!」
中島さんを称える王子サマと、それを『愛』と言い切ってしまう中島さん。
「…………『愛』っていうより、『執着』や『依存』じゃないかしら、アレ。ま、私も人の事言える立場じゃないかもだけど」
隣で優花が呟いた。
「やはり『王妃』に相応しいのはクラウディアではなく君だった!」
王子サマは、何もかも吹っ切れた様に叫ぶ。
「レオ………!」
中島さんは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「あなたにとって、『力』がある事が王妃の条件なのですか!?」
クラウディアが叫ぶ。
「当然だろう! 皇帝も言っていたではないか! この世は『力』こそが全て! 『力』が無くば国を守ることは出来ず、『力』が無ければ何も為す事は出来ない!」
そう言い切る王子サマ。
「あなたと言う人は…………!」
クラウディアが歯を食いしばる。
すると、
「……………マリカ殿………あなたは先程言ったな? タイシとレオナルドの何が違うのかと…………」
クラウディアは、やや俯きつつ重苦しい声で問いかけた。
「ッ………そ、そうよ! 何が違うっていうのよ!?」
中島さんがその雰囲気に吞まれそうになりながらも言い返す。
「…………私から言わせれば…………全く違う!!」
クラウディアは顔を勢い良く上げながら叫んだ。
「そのような男とタイシを一緒にするな! 馬鹿者!!」
そう叫ぶクラウディアの声には、怒気すら含まれているように聞こえた。
「その通りです!!」
エミリアも叫んだ。
「確かにタイシさんは他者よりも自分を優先します! でも、自分が『幸せになるため』に他者を蔑ろにする事はしません!!」
エミリアがそこまで言うと、
「自分の身を『護る』……! 自分の『大切』なものを『護る』……! 『護る』為に他者の命を奪ったり、幸せを踏みにじる事はする……! だけど、その根底には、必ず『護る』という行動原理がある……!!」
エリスが続き、
「そして、その『護る』中でもタイシは出来る限り他者の事を考えるわ! 自分の起こす行動によって、どれだけ関係の無いものを巻き込むか、どうすれば他者を巻き込まないか! その上で仕方がない時は、『覚悟』を以って踏み越える! それがタイシよ!」
アリスもそう言い、
「それに比べて、その男は如何だ!? ただ自分の為だけに他者を陥れ、時には容赦なく殺そうとし、その罪を受け止める『覚悟』すらない! これでもタイシとその男が一緒だと世迷言を言うか! 愚か者!!」
クラウディアはそう言い切った。
「ッ………!?」
中島さんは口を噤む。
「………嬉しい?」
優花が俺に問いかける。
「まあな。自分の為に誰かが怒ってくれるっていうのは、嬉しいもんだな」
恋人達が自分の為に怒ってくれる。
その事に、とても嬉しいと感じている。
「ッ……! だ、黙れ! どれだけ綺麗事を並べようと、私とマリカの『愛の力』の前には無力!!」
王子サマは開き直ったように叫び、
「ギュァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
その叫びに応えるように、オニスモンが破壊光線を乱射する。
「やめろ!」
ウォーグレイモンが頭上にエネルギー球を作り出し、メタルガルルモンは口の中に冷気を溜める。
「ガイアフォース!!」
「コキュートスブレス!!」
2体が必殺技を放つ。
ガイアフォースが直撃して爆炎に包み、続けてコキュートスブレスが一気に凍結させる。
炎属性と氷属性の二重攻撃。
並の物質であれば、その急激な温度変化によって崩壊しても可笑しくないのだが、
「ギュァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「「ッ!?」」
煙を切り裂き飛び出したオニスモンが放った破壊光線に
ウォーグレイモンとメタルガルルモンは呑み込まれた。
その光景を目にした王子サマは、
「フハハハハハハハハッ! 見たか! これが私とマリカの愛の力だ! 私達の愛の力は無敵なのだ!!」
高笑いしながら悠々と叫んだ。
「……………愛の力………ですか」
「その通りだ。貴様達の『絆』等と言う幻想ではなく、我々の確かな『力』だ!」
クラウディアの呆れたような呟きにも、王子サマはいい気になっているのか高々と叫ぶ。
「そうですか…………では、次は私とメタルガルルモンと、エミリアとウォーグレイモンの『絆の力』を見せる番ですね」
クラウディアは静かにそう告げた。
「何…………?」
王子サマが怪訝な声を漏らした時、クラウディアとエミリアは落ち着いて空を見上げていた。
王子サマもそれにつられて視線を上げると、先程ウォーグレイモンとメタルガルルモンが破壊光線に吞み込まれた場所に、光の球が浮いていた。
そして、その光の球が消えていくと、そこに居たのは1体のデジモンだった。
マントを靡かせ、白いボディとウォーグレイモンとメタルガルルモンの頭部が両腕となった、聖騎士型のデジモン。
「な、何だ……? あのデジモンは………?」
王子サマは困惑した声を漏らした。
「………オメガモンです」
「な、何…………オメガ………だと?」
流石の王子サマも、クラウディアの言葉に狼狽えた仕草を見せる。
「そうです。私とエミリアの『絆』によって、ウォーグレイモンとメタルガルルモンが1つとなって現れる真の『オメガ』の名を冠するロイヤルナイツ………聖騎士オメガモンです!」
クラウディアのその言葉と共に、オメガモンが左腕を横に振ってマントを翻す。
すると、
「真のロイヤルナイツだからって何よ!? 私とレオの邪魔をするなら消すだけよ!」
中島さんの言葉と共に、オニスモンが破壊光線を放つ。
それに対し、オメガモンはマントを前に翻すと、マントの表面に当たった破壊光線は弾かれる。
「えっ………?」
その事実に、中島さんは呆けた声を漏らす。
そして、オメガモンが右腕を振ると、メタルガルルモンの口から大砲が飛び出し、それをオニスモンに向ける。
「「ガルルキャノン!!」」
そこから放たれるのは、圧縮された冷気弾。
それがオニスモンに直撃し、オニスモンは身体全体を凍り付かせた。
先程のメタルガルルモンの時の様に表面が凍っただけではない。
体の内部まで完全に凍り付く、『凍結』だ。
オメガモンは、左腕を振ってウォーグレイモンの口から大剣を飛び出させると、大剣を頭上に掲げ、
「「グレイソード!!」」
それを真っすぐに振り下ろした。
それだけで凍り付いたオニスモンは、縦に真っ二つになる。
中央に入った縦線に沿って、体の左右がズレると、氷と共に砕け散り、データの粒子へと分解された。
「え……………?」
中島さんは、現実を認められない様な、呆けた声を漏らす。
「な、何が…………?」
王子サマも呆けている。
「…………あなたのデジモンは消滅しました。これで終わりです」
クラウディアがそう告げる。
「……………………どうして………?」
中島さんが力を失ったように膝を着く。
「どうして私は幸せになれないの………?」
涙を流しながら、誰に訊ねるでもなくそう呟く。
そんな彼女に歩み寄ったのは、エミリアだった。
「確かに幸せを求める権利は誰にだってあります…………でも、その為に誰かの幸せを壊していい理由にはならない……………いいえ、『誰か』の幸せを壊そうとすれば、その『誰か』も自分の幸せを護ろうと必死になるんです。そうなれば、どちらかが必ず『不幸』を被ることになります。あなたは自分達の幸せの為に、クラウと………そしてたくさんの人達の幸せを壊そうとした。だからあなた達の幸せを、私達は認められなかった………そういうことです」
諭すようにそう告げるエミリア。
「ッ……………!」
その時、中島さんが何かに気付いたようにハッとなった。
「あ…………わ、わたし…………私のやった事って…………お父さんと同じ……………」
そのまま蹲り、
「あ………あぁ…………あああああああああああああああっ!!!」
叫び声を上げながら泣き出した。
「……………終わりだ…………何もかも…………」
王子サマは膝を着き、両手を地面に付けて項垂れた。
この2人にはどの様な罰が下されるのかは分からない。
それでも、今まで通りの生活を続ける事は不可能だろう。
2人の処罰は、アスラン王に委ねられることになった。
オリジナル異世界編第59話です。
真里佳の過去とオニスモンとの戦いでした。
まあ、真里佳にも真里佳なりの過去があったって事で。
それでも認められませんがね。
次回はおそらく(ハジメではない)魔王様の登場になるかと。
お楽しみに。
PS:今日の返信はお休みします。