ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第61話 漆黒の竜人の追憶

 

 

 

【Side ????????????】

 

 

 

 

 

 

「ブラ………ォー………モン………!!」

 

声が遠く聞こえる。

奴の攻撃で俺の身体は致命的なダメージを受けた。

自分でもわかる。

俺は『死ぬ』と。

 

「俺の身体はもうダメだ………ダークタワーから作られた命もこれまで………しかし! 俺に出来る事がまだある!」

 

「「もう喋るな……!」」

 

俺に何度敗れようと、何度も立ち向かって来た奴がそう言う。

 

「この身体を使って……光ヶ丘からデジタルワールドへのゲートを封印する事が、きっと出来る!」

 

「何をする気だ!?」

 

俺と同じ姿だが、俺とは違う存在でありながら、俺を『仲間』になれると説得しようとしてくれた奴が引き留めようとする。

しかし、俺はもう決心した。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………………!!!」

 

俺は雄叫びを上げながら、最後の力を振り絞って空へと飛び立つ。

崩れていく身体。

この忌まわしい身体にも、使い道があったか………

チンロンモンが言っていた、この俺の存在の意味………

この世界に『俺』が生まれたのは、このためだったのかもしれない………

普通のデジモンであれば、死ねばデジタマとなり、再び生まれ変わる事が出来るらしいが、俺はダークタワーから作られたデジモンのカタチをしただけの別物だ。

生まれ変わる事は不可能だろう。

俺は最期にあいつらに目を向ける。

人間と共に戦うデジモン達。

最初に戦った時は、全く相手にならなかった。

止めを刺す必要すら感じられなかった。

だが、あいつ等は何度でも立ち向かって来た。

立ち向かうたびに、強くなってきた。

俺には無い『何か』を、あいつ等は持っていた。

俺にも、あいつ等の様に支えてくれる『パートナー』がいれば、その『何か』を得る事が出来ただろうか?

叶わぬ願いだが、もし生まれ変わる事が出来るのなら、俺も、あいつ等の様に………

その瞬間、身体が砕け散り、俺の意識は闇に呑まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………俺はどうなった?

死んだのか………………?

何も見えない……………

何も感じない……………

何も聞こえな………

 

「………………まだ生まれないかな?」

 

…………何だ?

…………声?

 

「あっ………! 動いた!」

 

………声が………聞こえる…………

 

「頑張れ! もうちょっとだよ!」

 

その声が聞こえた瞬間、暗闇に罅が入った。

そして、その罅から暗闇が砕け散る様に光が溢れ、そこに見えたのは………

 

「あっ! 生まれた!」

 

人間の………子供…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くの時が流れ、俺は成長期の黒いアグモンとなっていた。

最初は訳が分からなかったが、俺はどうやら生まれ変わったらしい。

しかも、デジタルワールドでないどころか、あの世界とも違う、全く別の世界に生まれたようだ。

この身体も、ダークタワーではなく純粋なデジモンとして構成されており、存在するだけで時空を歪ませることも無い。

 

「何してるの? アグモン」

 

そう声を掛けてくるのは、俺がこの世界に生まれた時に最初に見た少女。

 

「シュヴァリアか………」

 

最初は唯の人間の子供かと思ったが、頭に生える2本に角と、腰の辺りから生える一対の黒い翼がそれを否定した。

シュヴァリアは、この世界に居る魔族と言う括りの中の、サキュバスと言う種族らしい。

そして、そのシュヴァリアの横には、黒いガブモンの姿。

このガブモンは、俺と同時期に生まれたデジモンだ。

シュヴァリアが偶然拾った2つのデジタマから、俺とガブモンは生まれたらしい。

ガブモンは、生まれる前の記憶がある俺とは違い、純粋に普通のデジモンだ。

今は俺とシュヴァリアとガブモンで、森の中でひっそりと隠れるように暮らしている。

その理由は、どうやらシュヴァリアの種族であるサキュバスは、魔族の中でも弱い部類になり、他の魔族からは格下に見られているらしい。

他の魔族に出会ってしまえば、一方的に虐げられてしまうという。

だからと言って、コソコソ逃げ回るのは俺の性に合わん。

俺は、シュヴァリアに戦えと言ったのだが、

 

「だ、だって、私………弱いし………」

 

イジイジとそう言うだけで戦う気も見せない。

そう言う所は俺をイラつかせる。

ならば強くなれ。

そう言い聞かせてはいるが、シュヴァリアは少しも戦う気を見せない。

そんなシュヴァリアにイラつきながらも、俺は強くなるために日夜特訓に励んでいた。

そんなある日…………

 

「きゃぁあああああああああああああっ!?」

 

俺がいつもの日課となっていた特訓をしていると、シュヴァリアの悲鳴が響いた。

俺は何事かと急いで悲鳴が聞こえた方に向かうと、

 

「チッ! こんな所にコソコソ隠れ住んでる奴がいると思ったら、ガキのサキュバスと雑魚デジモンが1匹か…………サキュバスのガキの方は、もう少し育ってれば使い道はあったのによ」

 

そこにはシュヴァリアの胸倉を掴んで持ち上げ、地面に倒れているガブモンを踏みつけている、褐色の肌をした、コウモリのような翼と、角、口に牙を持つ魔族がいた。

後で聞いた話だが、この魔族は悪魔族と言う種族で、魔族の中でもトップクラスの力を持つ種族らしい。

そして、そいつの後ろには、漆黒の恐竜型デジモンである、ダークティラノモンの姿。

 

「貴様! 何をしている!!」

 

俺は思わず叫んだ。

 

「んんっ?」

 

その男は興味無さげに俺を見ると、

 

「なんだよ? もう1匹雑魚が居たのか」

 

その男は、あからさまにガッカリしたような様子でそう言う。

 

「………その手と足を退けろ………!」

 

俺はそう言う。

 

「ほう………? 手と足って言うのは………これの事か?」

 

その男はワザとらしくシュヴァリアの胸倉を掴む手の力を強め、ガブモンを踏みつける足を踏みにじる様に動かす。

 

「ううっ……!」

 

「くぅ……!」

 

シュヴァリアとガブモンは苦しそうな声を漏らす。

 

「ッ! 退けろと言った!」

 

俺は反射的にその言葉と共にベビーフレイムを放つ。

俺の口から放たれた火球が、その男に向かって突き進んでいくが、

 

「ふん!」

 

シュヴァリアを掴んでいる手とは反対の手を払うように振ると、俺が放った火球は簡単に掻き消された。

 

「この程度か?」

 

男は嘲笑うように言う。

 

「………………!」

 

俺は黙って睨み付ける。

 

「気に食わない目だ。弱いくせに身の程を知らない奴ほど救えない奴はいない」

 

男はそう言うとダークティラノモンに目を向け、

 

「ダークティラノモン、遊んでやれ」

 

「グォオオオッ!」

 

ダークティラノモンが咆哮を上げながら前に出てくる。

 

「チィッ………!」

 

俺は油断なく身構えた。

 

「ベビーフレイム!」

 

俺は先制攻撃として火球を放つ。

その火球はダークティラノモンの顔付近に当たり、多少怯んだ様だが直ぐに俺を睨み付け、俺を踏みつぶさんと足を振り上げる。

 

「その程度……!」

 

俺は飛び退いてその踏み付けを避ける。

だが、

 

「グォアッ!」

 

ダークティラノモンは身体を捻って尾撃を繰り出してきた。

尾撃の範囲は広く、飛び退くだけでは避け切れずに直撃を貰う。

 

「ぐあっ!?」

 

俺はそのまま吹き飛ばされ、

 

「ガハッ!?」

 

木の幹に叩きつけられた。

その衝撃で、ぶつかった木が圧し折れる。

 

「ア……アグモン……!」

 

シュヴァリアが苦しそうな声を上げる。

 

「雑魚め。やはり相手にならんな」

 

男は興味を失ったようにそう言う。

 

「ぐっ………!」

 

しかし、俺は痛む体を動かして立ち上がる。

 

「………うぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

俺は再びダークティラノモンに向かう。

 

「グォオッ!」

 

ダークティラノモンは腕を繰り出してくる。

俺は走りながらその腕を避け、

 

「ベビーフレイム!」

 

再びダークティラノモンの顔にベビーフレイムを撃ち込む。

先程よりも近くで放たれた事で威力が増しており、ダークティラノモンは驚いたように顔を背けた。

 

「まだまだ!」

 

俺はベビーフレイムを連射する。

何発もの火球がダークティラノモンに当たり、ダークティラノモンを怯ませ続ける。

しかし、

 

「グォアアアアアッ!!」

 

いい加減頭に来たのか、ダークティラノモンは火球を受けるのも厭わずに口から火炎を吐き出してきた。

 

「ぐあああっ!?」

 

身体を焼かれながら俺は吹き飛ぶ。

 

「ふん、少しは頑張ったようだが、結果は変わらん」

 

男の言葉が癪に障る。

 

「ぐぅぅ……!」

 

俺は、今にも意識が飛びそうな痛みの中でも、歯を食いしばって立ち上がる。

 

「俺は………俺は負けない………!」

 

そうだ。

あいつ等も何度俺に叩きのめされようと立ち向かって来た。

 

「二度もあいつらに負けて………なるものか……!」

 

ここで倒れたままでは、俺はまたあいつらに負けたことになる。

足を踏ん張り、俺はダークティラノモンを見据える。

すると、

 

「お前は何故そうも立ち上がる? 何故弱いくせに戦おうとする?」

 

男は意味が分からないと言いたげに問いかけてきた。

 

「…………そうだ。俺は弱い…………! だが、『弱い』事が、『戦わない』理由にはならない!!」

 

あいつらも………

いや、あいつ等だけじゃない。

俺がホーリーストーンを破壊しようとした時、俺よりも弱い筈のデジモン達も、俺に戦いを挑んできた。

 

「アグモン………」

 

シュヴァリアが苦しそうな表情でも俺を見つめる。

 

「俺は戦う………! 俺より強い奴が相手だろうと………! そして………俺の『運命(さだめ)』だろうと! 俺は戦い抜いて見せる!!」

 

俺は咆えてダークティラノモンを睨み付ける。

 

「グオッ……!?」

 

ダークティラノモンが一瞬怯んだ気がした。

 

「アグモン………!」

 

「アグ………モン………!」

 

シュヴァリアとガブモンが呟く。

すると、

 

「う、うぁあああああああああああっ!!」

 

シュヴァリアが突然拳を振り被って、男の顔を殴りつけた。

 

「…………何の真似だ?」

 

男がシュヴァリアに問いかける。

シュヴァリアの拳は全くと言っていいほど効いてはいなかった。

 

「わ、私も…………!」

 

シュヴァリアは震えた声で。

しかし、決意の籠った目で、

 

「………私も……戦う!」

 

そう叫んだ。

再び拳を繰り出す。

もちろんそれも効いてはいない。

それでも、何度も拳を繰り出す。

 

「やあっ! やあっ!」

 

何度も何度も。

 

「……………フッ」

 

俺はそれを見て自然と口元に笑みが浮かんだ。

今のこいつなら、少しは気に入る事が出来る。

 

「………見苦しい………貴様らサキュバスは魔族の中でも最下級の種族…………対して俺は最上級の悪魔族! 最下級が最上級に戦いを挑んで何になる!?」

 

男が理解不能と言いたげに叫んだ。

 

「弱いっ……! 事がっ……! 戦わない理由にはっ……! ならないっ!!」

 

シュヴァリアは先程の俺と同じ言葉を叫ぶ。

 

「ならば今すぐ、その首を圧し折ってやる!」

 

男はシュヴァリアの首を掴む。

そして、その手に力を加えようとした時、

 

「プチファイヤー!!」

 

「ぬおっ!?」

 

男の足元から炎が広がった。

ガブモンが放ったものだ。

男は驚いてシュヴァリアを掴む手を放してしまい、シュヴァリアは地面に落ちる。

 

「ッ………!」

 

それでも、シュヴァリアはすぐに立ち上がると、

 

「う………ぁああああああああああああああああああっ!!!」

 

逃げるのではなく、男に立ち向かうことを選んだ。

シュヴァリアが拳を振り被る。

 

「くっ………! ならば何度やっても無駄だということを知るが良い!!」

 

男は両手を広げて無防備な胴体を晒す。

それだけ力の差に自信を持っているのだろう。

シュヴァリアの拳が繰り出される。

男は薄ら笑いを浮かべながら、シュヴァリアの拳を受け入れ、

 

「………………ぐぼぁっ!?!?」

 

シュヴァリアの拳が腹にめり込んだことにより悶絶した。

 

「ぁあああああああああああああああああっ!!」

 

シュヴァリアが拳を振り切ると、男が吹き飛んでいき、木を数本圧し折って太めの木の幹に叩きつけられて止まった。

 

「………………えっ?」

 

その事に一番驚いていたのは、他ならぬシュヴァリア自身。

更に、その繰り出したシュヴァリアの拳には、炎のように揺らめく黒い輝きがあった。

 

「これ………何……?」

 

拳に宿った黒い輝きを見つめるシュヴァリア。

 

「す、凄いじゃないかシュヴァリア!」

 

立ち上がったガブモンが驚きながらシュヴァリアに声を掛ける。

 

「う、うん………」

 

シュヴァリアはまだ戸惑っている様だ。

俺はそんな2人に歩み寄り、

 

「フン、やればできるではないか」

 

そう声を掛けた。

 

「アグモン………」

 

シュヴァリアは嬉しそうに微笑む。

その時、吹き飛ばされた男が身動ぎし、

 

「ぐぐ………な、何だ……? 何が起こった………?」

 

戸惑いながら状況を理解しようとする。

 

「ぐっ……ゲホッ!?」

 

ダメージから咳き込み血を吐く。

すると、その血を手で拭って、その手に付いた血を見ると、わなわなと震えだした。

 

「血………? 血だと……!? 魔王様と同じ高潔な悪魔族である俺が、最下級のサキュバスのガキに、傷を負わされただと………!?」

 

どうやらシュヴァリアにダメージを負わされた事が、奴のプライドを傷つけた様だ。

 

「ゆ、ゆるさん………! 絶対に許さんぞぉ!! ガキども!!」

 

奴が怒りの表情で咆える。

すると、

 

「アグモン………ガブモン………」

 

シュヴァリアが左手で俺の、右手でガブモンの肩に手を添える。

 

「…………戦うよ………!」

 

決意を持った声でそう言う。

 

「私達3人なら………きっと勝てる………!」

 

今のシュヴァリアの言葉に、迷いは無い。

 

「もちろんさ!」

 

ガブモンが頷き、

 

「『3人』か…………」

 

今まで1人で戦い続けてきた俺にとって、初めての経験だ。

だが…………

 

「………悪くない……!」

 

悪くない。

本気でそう思えた。

その時、俺達の肩に触れていたシュヴァリアの両手の手首から、光が放たれた。

 

「今度は何っ………!?」

 

驚くシュヴァリアだが、その手首には、あいつらの持っていたデジヴァイスというものに近い形状の物が付いていた。

 

「これは………」

 

突然現れた物に驚きの声を漏らすシュヴァリア。

 

「それは……デジヴァイスと言う奴か………俺の知っている物とは形が違うが………」

 

「デジ……ヴァイス………?」

 

シュヴァリアは疑問の声を漏らすが、

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

ダークティラノモンの咆哮に気を引き締めた。

 

「やれ! ダークティラノモンよ! 奴らを灰にしてしまえ!!」

 

そう命令を下す男。

ダークティラノモンが俺達に向かって進んでくる。

 

「………アグモン」

 

「ああ」

 

シュヴァリアの呼びかけに応える。

 

「………ガブモン」

 

「おう」

 

ガブモンも呼びかけに応えた。

 

「…………戦うよ!」

 

「「おう!」」

 

その意志に俺達は応える。

その瞬間、シュヴァリアの両腕のデジヴァイスから光が溢れた。

その光を受けると、

 

「こ、これは………力が……溢れる……!」

 

初めての経験に俺は驚愕する。

 

「身体が………熱い………!」

 

シュヴァリアの心が流れ込んでくる感覚。

これがシュヴァリアの………『パートナー』の力………!

その力が最大限に高まった時、

 

「アグモン進化ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ガブモン進化ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

俺達は新たな力を得る。

 

「グレイモン!!」

 

「ガルルモン!!」

 

俺は青い身体のグレイモンに。

ガブモンは黒い毛皮のガルルモンへと進化した。

 

「アグモンとガブモンが………進化を………」

 

シュヴァリアが驚いているが、俺はダークティラノモンを睨み付け、

 

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

 

鼻先の角を向けながら突進した。

先程は全く歯が立たなかった相手。

だが、

 

「グォオオオオオオオオオオッ!?!?」

 

今度は俺が奴を吹き飛ばした。

 

「な、何だと!?」

 

狼狽える男。

 

「フォックスファイヤー!!」

 

ガルルモンが火炎の息を吹きかけ、

 

「メガフレイム!!」

 

俺が止めの豪火球を吐き出した。

 

「グォオオオオオオオオオオオオォォォォォォォッ!?!?!?」

 

2つの必殺技を受けたダークティラノモンは消滅する。

 

「ダ、ダークティラノモンが………!?」

 

狼狽えながら後退る男。

そしてその前に、シュヴァリアが立ちはだかった。

 

「……………………」

 

黙ったままジッと男を見据える。

 

「な、何だその目は………? 最弱種族のガキの癖に…………!」

 

その男は、まるで怯えている自分を隠すように強気な発言をする。

 

「……………………ッ!」

 

シュヴァリアが拳を握ると、あの黒い光が再びその拳に宿った。

 

「お、俺は最強種族の悪魔族だ………! お前なんぞに………最弱のサキュバスのガキに、そんな目で見られる謂れは無いわぁっ!!!」

 

まるで恐怖を振り払うかのようにシュヴァリアに向かって飛び掛かる男。

鋭い爪を持つ右腕を繰り出し、シュヴァリアを狙う。

だが、

 

「な、何ッ!?」

 

驚愕の声を上げる。

何故なら、シュヴァリアは左手一本でその右腕を掴んで止めていたからだ。

そしてそれは同時に。男を捕えた事も意味する。

 

「まっ、待てっ………!?」

 

男は制止の言葉を叫ぶが、シュヴァリアは黒い光を宿した拳を腰溜めに握りしめ、

 

「はぁああああああああああああああっ!!!」

 

動きを封じた男のその顔面に叩き込んだ。

その拳は男の頭蓋を砕き、吹き飛ばしていく。

文句なく会心の一撃だろう。

すると、シュヴァリアは殴り飛ばした男には目もくれず、自分の手を見つめていた。

 

「……………勝った………私が………サキュバスの私が………悪魔族に………」

 

その手を握りしめると、

 

「アグモン、ガブモン………ううん、グレイモン、ガルルモン……!」

 

改めて俺達の名を呼ぶと、

 

「……………強くなろう!」

 

そう口にした。

 

 

 

 

 

 

 

それから俺達は、強くなるために戦いに明け暮れた。

時が流れ、完全体のメタルグレイモン、ワーガルルモンに進化し、やがて俺は前世と同じブラックウォーグレイモンに進化し、ワーガルルモンはブラックメタルガルルモンへと至った。

シュヴァリアも成長し、大人になった。

関係の無い話だが、大人になったサキュバスは、他の種族の男から『セイキ』と呼ばれるものを摂取しなければならないようで、戦いで倒して気絶させた男の夢に侵入し、その『セイキ』とやらを頂くようになった。

そんな時、今代の魔王が死んだという話が耳に入った。

そして、次の魔王を決める為に、闘技会が開かれるらしい。

そしてそれは、シュヴァリアが待っていた好機でもあった。

シュヴァリアと俺達は、その闘技会に乱入。

4人の魔王候補たちを全員叩きのめした。

正直、次の魔王候補と聞いて、どれほどの物かと期待したが話にならなかった。

4人全員のデジモンは完全体止まり。

ヴァンデモンが2体に、スカルグレイモン、メガドラモンと言う組み合わせで、ヴァンデモンはブラックメタルガルルモンにより簡単に氷漬けにされ、スカルグレイモン、メガドラモンは共に竜種の為に、俺のドラモンキラーの一撃で沈黙した。

魔王候補の4人(獣人族が1人に悪魔族が3人)も、それぞれシュヴァリアに一撃で沈められており、拍子抜けだった。

その後、シュヴァリアが魔王として名乗りを上げたが、やはり最弱種族のサキュバスが魔王と言うのは納得できない者が多く、反発の声が多かった。

俺がガイアフォースで近くの山を消滅させたら全員黙ったがな。

そして、シュヴァリアが魔王となったのには目的があった。

魔族の中の暗黙の了解として、魔王と同じ種族は尊ばれるというものがある。

今までの魔王は悪魔族だったため、悪魔族がその立場に居たが、シュヴァリアが魔王になった事でその立場はサキュバス族の物となった。

それにより、今まで虐げられるだけだったサキュバス族が大手を振って歩けるようになったのだ。

シュヴァリアは、同族達を救う為に魔王になったのだ。

まあ、俺からしてみれば、何もしてない奴が偉そうにするのは気に食わんがな。

シュヴァリアが魔王になったのはいいものの、それからは正直退屈だった。

どいつもこいつもシュヴァリアの前ではヘコヘコと頭を下げるだけ。

シュヴァリアも、魔王の座が欲しければいつでも挑戦は受けると宣言しているものの、最初の頃に何人かが挑戦に来ただけで、それ以来誰も挑戦しに来なくなってしまった。

唯一の楽しみにと言えば、シュヴァリアと行う戦闘訓練位か。

あの気弱だったシュヴァリアが究極体相手に張り合えるほどになるとは、あの時の俺には考えもしなかった事だが。

 

 

 

そんな退屈な日々が続いたある日。

突如として空に黒い稲妻が轟き、その黒い雷を受けた四天王のデジモンが、究極体へ進化したのだ。

四天王は調子に乗って俺達に挑んできたが、1対1では少々手古摺った物の、俺達3人の相手では無かった。

しかし、究極体に進化して調子に乗った四天王は、人間族に攻め込むと言い出したのだ。

シュヴァリアが魔王になってから人間族への侵攻は控えていたが、その分魔族達の鬱憤は溜まっており、このまま放っておけば、反乱を起こす可能性もあった。

まあ、反乱が起きたら起きたで楽しめるかもしれんがな。

そこでシュヴァリアは、ガス抜きの意味も含めて侵攻を許可した。

そこに住む者達には悪いが、大きな街の1つでも落とせば、ある程度満足するだろうとの判断だ。

シュヴァリアは、命を奪うことを好むわけではないが、自分が護るべきものをしっかりと見定めている。

同族の安全と人間族を天秤にかけた結果、同族の安全に傾いただけの話だ。

ところが、蓋を開けてみれば侵攻軍は全滅。

四天王のガビエルと、そのデジモンのヴェノムヴァンデモンも斃されたというのだ。

それは俺にも意外だった。

人間族も、デジモンを完全体に進化させるのが精々と聞いていたため、ヴェノムヴァンデモンの前に手も足も出ないと踏んでいた。

生き残った者の報告を聞けば、ヴェノムヴァンデモンを殴り倒した人間がおり、その者のデジモンも究極体へ進化したという。

その話を聞いて、俺も久々に疼いた。

そいつらと戦ってみたいとも思った。

それはシュヴァリアも同じであり、密かに燃えている事を俺は知っている。

とは言え、減ってしまった軍を立て直すために、戦力の増強の方が急務だった。

そこでも予想外が起こり、戦力を集める為に各地を回っていた四天王の1人のシオウとベリアルヴァンデモンがやられたのだ。

四天王の行動の結果とは言え、こうも失敗続きでは魔王としての立場が揺らいでしまうため、シュヴァリアは仕方なく自ら人間領への侵攻を決意した。

魔王の力を見せつける意味と、被害を最小限に抑える意味も含めて、全軍を連れてはいくものの、実際にはシュヴァリアと俺とブラックメタルガルルモン。

後は、シュヴァリアの腹心であり、同じサキュバス族のミリム率いる精鋭部隊のみで人間の街へ攻め込んだ。

その結果は、『つまらない』。

この一言に尽きた。

この街の防衛戦力には、立派な装備の騎士達と、少し質の劣る装備をした騎士の2種類が居り、俺とブラックメタルガルルモン、シュヴァリアが相手をしたのは立派な装備をした騎士達だ。

しかし、それは見掛け倒しだった。

多少力の差を見せつけただけで戦意を無くし、逃げ惑っている。

ミリムが率いて相手をしている方は、街を護る為に必死になって食らいつこうとしているというのに。

逃げ惑う騎士達を見て、イライラしていた俺は、日頃の溜まっていた鬱憤も相まって、止められていたにも拘らずガイアフォースを放ってしまった。

だが、

 

「ガイアフォース!!」

 

その声と共に、飛来したエネルギー球が、俺の放ったガイアフォースと共に上空へ逸れて大爆発を起こす。

そして俺の目の前に降り立ったのは、俺と同じ姿をした、黄金の鎧を纏った戦士。

更に蒼いメタルガルルモンも降り立ち、更にはインペリアルドラモンも見えた。

俺は一瞬、あいつらかと期待したが、インペリアルドラモンから降りてきたのは全く別の人間達だった。

俺はその事実に若干ガッカリしたが、

 

「はぁあああああああっ!!」

 

シュヴァリアが人間の男の1人に殴りかかった。

俺は1人死んだかと思ったが、その男は左手に、シュヴァリアと同種と思われる金色の光を宿してその拳を受け止めていた。

 

「ほう………余の拳を受け止めたか…………」

 

そう言うシュヴァリアの顔は、嬉しそうな顔をしている。

漸く好敵手に巡り合えた。

そんな表情だ。

そう言う俺も、先程のウォーグレイモンを見据える。

そして、ブラックメタルガルルモンも同じ姿のメタルガルルモンと相対している。

今までにない戦いへの高揚感に、俺は期待を膨らませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

 

 

シュヴァリアと名乗った魔王を、俺は油断なく見据える。

だが、その外見は美しい女性にしか見えない。

背中までかかる紫がかった黒髪、その黒髪に対比するように目立つ赤い瞳。

腰辺りから生える黒い翼と、頭に生える捻じれた角。

そして抜群のプロポーション。

ここが戦いの場でなければ、思わず見とれてしまうほどだ。

そして、その両手首に装着されている黒いデジヴァイスは、

 

「……………デジヴァイス01か…………」

 

漫画のVテイマー01に出てきたデジヴァイスだ。

しかもそれが両腕に付けられていて、パートナーがブラックウォーグレイモンとブラックメタルガルルモンということは……………

 

「エミリア、クラウディア」

 

俺は近くにいた2人に呼びかける。

 

「ジョグレスは温存しておけ。おそらく、奴らも余力を残してる」

 

俺の言葉に2人は頷く。

 

「他の皆は、他の魔物達に街が襲われないように気を付けてくれ。後は、俺達の戦いで街に被害が及ばないようにカバーを頼む!」

 

俺がそう言うと、

 

「勝負だ! ウォーグレイモン!!」

 

ブラックウォーグレイモンがウォーグレイモンに向かっていく。

 

「うぉおおおおおおおおっ!!」

 

ウォーグレイモンも飛び出し、2体が激突してすさまじい衝撃波が発生する。

 

「お前の相手は俺だ!」

 

ブラックメタルガルルモンがメタルガルルモンに向かって無数のミサイルを放つ。

 

「望むところだ!」

 

メタルガルルモンも同数のミサイルを放って相殺した。

そして、俺も魔王シュヴァリアと相対する。

 

「ゆくぞ!」

 

シュヴァリアは地を蹴って俺に向かってくる。

その手には、黒いデジソウルを宿していた。

 

「ッ!」

 

俺も拳にデジソウルを宿し、迎え撃った。

繰り出した拳がぶつかり合う。

その瞬間、衝撃が地面にクレーターを作り出した。

その手に感じるのは、究極体デジモンの攻撃を受け止めたかと思うほどの衝撃。

すると、

 

「フハハハハハハッ!」

 

シュヴァリアは嬉しそうに笑い声を上げた。

 

「余の拳を受けて立っていた者は、ブラックウォーグレイモン達を除けばお前が初めてだ!」

 

そりゃこの威力を受けて生身で立っていられる奴なんて普通居ないだろ?

 

「………フッ!」

 

俺は拳を弾くと、足にデジソウルを宿して水面蹴りを放つ。

 

「おっと!」

 

シュヴァリアは軽く飛び退く。

翼があるので、その飛翔は緩やかだ。

俺は、空が飛べる分相手が有利かと思っていると、

 

「ふむ……翼を使うのはフェアでは無いな」

 

シュヴァリアは俺の視線に気付いたかのように翼を小さく折り畳んだ。

 

「………何のつもりだ?」

 

「何、余も久々に存分に拳を振るいたいだけよ。それに、空が飛べたから負けた。そのような言い訳など欲しくはあるまい?」

 

「ッ…………!」

 

別に空を飛ぶことが卑怯とは思わない。

だが、正々堂々勝負を挑んでくる所は、何となく好感が持てた。

 

「………だったら、存分に相手をして貰おうじゃないか!!」

 

俺は全身にデジソウルを纏う。

 

「是非も無し!!」

 

シュヴァリアも全身に黒いデジソウルを纏った。

俺達は互いに笑みを浮かべ、再び激突するのだった。

 

 

 

 







はい、オリジナル異世界編第61話です。
軽く流す筈だった部分がほぼ1話になってしまった。
皆さん予想通り、このブラックウォーグレイモンは、02のブラックウォーグレイモンの生まれ変わりです。
凄い反響でした。
そして、シュヴァリアの持つデジヴァイスは、ブレスレット型と言う表現ではややこしかったかもしれませんが、バイタルブレスではなくVテイマーのデジヴァイス01です。
何故これなのかはお察しです。
次回から本格的な戦いです。
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