ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第62話 激闘

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

 

「はぁあああああああああああっ!!」

 

ウォーグレイモンとブラックウォーグレイモンが、ドラモンキラーの応酬を繰り広げる。

 

「はぁっ!」

 

ブラックウォーグレイモンの一撃がウォーグレイモンのドラモンキラーを弾いて隙を作り、

 

「はっ!」

 

反対側のドラモンキラーによってウォーグレイモンを吹き飛ばした。

 

「くっ……!」

 

「うぉおおおおおっ!!」

 

ブラックウォーグレイモンはすかさず追撃に入るが、

 

「ッ!」

 

ウォーグレイモンが上空に逃れてその追撃を躱し、

 

「はぁっ!」

 

隙だらけの背中に蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐはっ!?」

 

ブラックウォーグレイモンは吹き飛ばされるものの、すぐに体勢を立て直してウォーグレイモンに向き直る。

 

「やるな! ウォーグレイモン!」

 

「お前もな!」

 

お互いに相手を認める発言をすると、

 

「ガイアフォース!!」

 

ブラックウォーグレイモンが巨大な負のエネルギー球を作り出す。

 

「ッ! ガイアフォース!!」

 

ウォーグレイモンも即座に黄金のエネルギー球を作り出した。

そして同時にそれを投げつけ合い、空に太陽がもう1つ生まれたかのような大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

別の場所では、ミサイルの嵐が吹き荒れていた。

メタルガルルモンとブラックメタルガルルモンは、高速で飛び回りながら身体中の武装を撃ち合っている。

冷凍弾の爆発によって空気中の水分が凍り、白い煙のようになって視界を塞いでいるが、高性能のセンサーを持つメタルガルルモン達には全く苦にならない。

正確に互いの位置を把握しながらミサイルを撃ち込み、また、迫りくるミサイルを迎撃及び回避する。

 

「ガルルトマホーク!!」

 

メタルガルルモンが、腹部から大型のミサイルを放つが、ブラックメタルガルルモンは加速してそのミサイルを振り切る。

 

「グレイスクロスフリーザー!!」

 

ブラックメタルガルルモンはお返しとばかりに、身体中の武装を一斉に放つ。

 

「くっ!」

 

メタルガルルモンは、急旋回や地上すれすれを飛行することで、ミサイルを振り切ったり誘爆させて回避した。

そしてお互いに息を大きく吸い込むように口を上に向けると、

 

「「コキュートスブレス!!」」

 

絶対零度の息のぶつかり合いに、地表が瞬く間に氷の世界に覆われた。

 

 

 

 

 

 

片や太陽、片や極寒の戦いに、市壁の上からそれを見ていたフォルダ公爵達は呆然としていた。

 

「これが………究極体同士の戦い…………」

 

自分達では全く介入できない戦いを前に、フォルダ公爵はそう漏らす。

 

「はい…………正に、神話の戦いと呼ぶべきものでしょう………」

 

クラウスも何とかそう言う。

 

「それに……………」

 

クラウスがそう言いながら視線を落としたその先には、

 

「あっはっはっはっは!!」

 

楽しそうな笑い声を上げるシュヴァリアと、

 

「オラァァァァァァッ!!」

 

気合の入った声を上げる大士がデジソウルを全身に纏いながら、拳の乱打の応酬を繰り広げていた。

因みにその両者の足元は、拳の激突による衝撃で大きなクレーターとなっている。

 

「よい! よいぞ! 余をここまで楽しませたのはお前が初めてだ!」

 

嬉しそうな表情と声でそう叫ぶシュヴァリア。

 

「そりゃ光栄だね!」

 

大士もそう返すが、その間にも拳の応酬は繰り広げられている。

 

「……………何て言うか、魔王とまともに殴り合うタイシが凄いのか、タイシとまともに殴り合う魔王が凄いのか、どっちか分からなくなるわね………」

 

その様子を見ていたアリスが何とも言えない表情で呟く。

アリスは大士の強さはよく知っているし、それに魔王の恐ろしさも伝え聞いた話の中で何度も耳にしている。

 

「…………デジモン以外でタイシと殴り合える人を見たのは2人目」

 

そう言ったのはシャルロット。

 

「えっ!?」

 

その言葉を聞いて、本気で驚いた顔をするアリス。

 

「タイシと殴り合える人が、魔王以外にも居たの!?」

 

「ん。その人はタイシより強かった」

 

「ええっ!?」

 

シャルロットの言葉に更に驚くアリス。

因みにシャルロットの言う『その人』とは、もちろん某喧嘩番長の事である。

 

「……………魔王に立ち向かう勇者…………というところですか」

 

クラウスがその戦いを見ながら呟く。

 

「………本当に、父上がタイシ殿を『保護』した事は、このフォルダ領………いえ、この国、延いてはこの世界に『希望』を導いた英断だったのですね………」

 

「私としては、何気ない判断だったのだがな」

 

「その何気ない判断が、『運命』の分かれ道だったということです。命運を左右する選択が、いつ訪れるか分からないという事を痛感しました」

 

「そうか……………」

 

「それにしても、他の魔王軍が動かないのはともかく、先程まで戦っていた精鋭部隊の動きが止まっている事が気になります」

 

「む。そう言えばそうだな………あの戦いに巻き込まれないため、と言えばそれまでだが」

 

「それでも向こうの部隊を率いていた指揮官は優秀です。何か理由があるのかもしれません」

 

クラウスはそう言うと、

 

「父上、私は今のうちに守備隊を立て直します。この均衡がいつまで持つかは分かりませんが、出来る事はしておくべきかと」

 

「うむ、任せる」

 

「はっ!」

 

クラウスはそう言うと、守備隊を立て直すために駆けて行った。

 

 

 

 

一方、魔王軍では、

 

「ミリム様。何で攻めちゃいけないんですかい? 今なら簡単に………」

 

精鋭部隊の1人である悪魔族の男が、指揮官であるサキュバス族のミリムに問いかける。

 

「お姉様の戦いに巻き込まれても~いいんですかぁ~? それでなくても~、お姉様達の戦いの邪魔をしたら~、あなたがお姉様に殺されますよ~? あんなに楽しそうにはしゃぐお姉様は初めてですから~」

 

ミリムはそう言って待機を命じる。

 

「チッ! この臆病者が………! 何で高位の魔族である悪魔族の俺が、こんな弱いサキュバスの命令を聞かなきゃいけねぇんだ………!」

 

小声で不満を零す男。

因みにその声はミリムにも聞こえていた。

 

(確かにサキュバス族は弱いです。お姉様が特別なだけで、サキュバス族全体が強くなったわけではありません。お姉様が魔王になった事によって、サキュバスの立場は上がりましたが、サキュバス自体が最弱種族である事は事実ですしね。でも、最弱だからこそ、脅威に対する危機察知能力は優れていると自負できます)

 

そう心の中で想いながら、ミリムは人間の方の1人に視線を向けた。

それは優花だ。

 

(…………あの女を見てると、さっきから震えが止まりません。迂闊に動けば殺される。そんな予感がします………!)

 

優花は何でもないように佇んでいる。

ただそれだけなのに、ミリムは優花を脅威と感じていた。

すると、優花の視線が動き、ミリムの視線と交わる。

 

(ッ! 唯の観察で気付かれた!? どういう気配察知能力してるんですか!?)

 

ミリムは冷や汗を流す。

 

(あの女………下手すればお姉様に近い実力を持ってるかもしれません。最悪全滅の可能性も………やはり、ここは静観がベストな選択ですね)

 

ミリムは周りに動揺を悟られないよう、表情を取り繕うことに注意した。

 

 

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおおっ!!」

 

「はぁああああああっ!!」

 

大士とシュヴァリアの拳が交差し、お互いの頬に拳が突き刺さる。

 

「がっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

しかし、互いにそれに怯むことなく次の拳を繰り出す。

大士の拳がシュヴァリアの腹に突き刺されば、シュヴァリアのアッパーカットが大士の顎を打ち上げる。

 

「………はっ……!」

 

シュヴァリアの口から笑い声が漏れる。

 

「ッ……!」

 

それでも大士は拳を繰り出し、シュヴァリアの頬を殴る。

シュヴァリアは即座に顔を向き直すと、大士の顔に打ち下ろしを放つ。

 

「ぐっ……!」

 

大士は拳の勢いで地面に叩きつけられそうになるが、足を踏ん張ってそれに耐える。

 

「……………ははっ……!」

 

再びシュヴァリアの口から笑みが零れる。

大士は上体を持ち直すと同時にアッパーを放ち、シュヴァリアの顎を打ち上げた。

それでもシュヴァリアは嬉しそうな顔のまま、

 

「………あはははははははははははっ!!」

 

拳の連撃を放つ。

その笑みは、先程と違い、何処か無邪気さを感じさせる笑い声だった。

大士も負けじと拳で応戦する。

互いの拳が頬を捉え、お互いに距離が開いた。

 

「…………ああ、楽しい………楽しいなぁ………!」

 

シュヴァリアはまるで大士に同意を求めるようにそう言う。

大士は血が混じった唾を吐き捨てると、

 

「………こちとら痛くて仕方ないんだがな」

 

そう言い返す。

しかし、シュヴァリアは薄く笑みを浮かべると、

 

「そう言う割には、貴様もいい顔をしているではないか」

 

シュヴァリアの言葉通り、大士の表情も何処か楽しそうに見えた。

 

「…………まあ、正直お前と殴り合うのは悪い気分じゃない。何て言うか………お前の拳は真っ直ぐだからな」

 

「フッ………貴様の拳も身体の芯まで響いてくるぞ。こんな拳は初めて受けた」

 

「そうかい」

 

「フフッ………それに、サキュバスである私に全力で挑んでくるのも高評価だ」

 

「如何いう意味だ?」

 

「サキュバスと言う種族は、無意識に男を魅了する力を持っている。その為、男がサキュバスを襲う時は、性欲に駆られて襲うことが殆どだ。余に挑んできた者達も、大なり小なりそのような考えを持つものばかりだった。だが、貴様は違った。唯真っ直ぐに、余を対等な相手として挑んで来る。それだけでも、そこらの下賤な輩とは違うことが分かる」

 

「…………恋人が10人もいるのに、他の女に目移りするわけにはいかんだろ?」

 

大士はそっと目を逸らす。

戦いの場でなければ、シュヴァリアに見惚れそうになっていたのは秘密だ。

 

「くくく………そうか。恋人が10人もいる男を、今の余は独り占めしていると言う事だな…………」

 

「…………それは意味が違うだろう?」

 

「そうかな? 余は魔王ではあるがサキュバスだぞ? サキュバスの性質上男を求めるのは当然だ」

 

「恋人や妻がいる男を寝取るのはお手の物ってか?」

 

大士が冗談半分にそう言うと、

 

「………勘違いしている様だから言っておくが、余は生娘だぞ」

 

「……………はっ!?」

 

シュヴァリアの言葉に、大士は驚愕した。

言葉の意味ではなく、こんな時にそんな発言をした事に対して、ではあるが。

 

「『精気』を得る為に男の夢に侵入して淫夢を見せる事はあるが、実際に男を誘惑した事など一度も無い」

 

「おおう…………」

 

「その余が初めて興味を持った『男』がお前だ。誇って良いぞ」

 

「あくまで『敵』として………だろ?」

 

「さあどうかな?」

 

シュヴァリアはそう言うと、再び拳を握る。

 

「今は、この楽しい一時を、もう少し楽しもうではないか!」

 

シュヴァリアは再び大士に向かい、

 

「あんまり勘違いさせるような言動は控えてくれよ!」

 

大士もそれを迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 





オリジナル異世界編第62話です。
短いですが今回はここまで。
大士と殴り愛を繰り広げる魔王様、実は処女サキュバスだった(核爆)
次回は殴り愛に決着?
お楽しみに。
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