ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第4話 ゆうか、見せ場をブレイクする

 

 

 

温泉旅行からまた数日。

ここ最近、なのはが目に見えて悩んでいる事が多くなった。

おそらく、あのフェイトっていう女の子の事が気になっているんだろう。

あのアリサ達とも口喧嘩をしたっぽいような事を聞いた。

なのはは悩みを全て自分で解決しようとするタイプの様だ。

誰かに迷惑をかけないように、『良い子』でいようとしている。

そう感じさせる節があった。

小学三年生の子供が、そんな迷惑を気にする必要は無いのにね。

それに、魔法が使える事を秘密にしている事もよく考えれば少しおかしい。

あの年頃なら、魔法が使えると言う事を自慢しても良いぐらいだ。

アニメとかの影響で、特別な力が使える事は隠すのがお約束、って事で隠してるのかもしれないけど。

とは言え、私は翠屋のアルバイトが主だ。

なのはの交友関係まで面倒は見られない。

今日も翠屋の閉店時間となり、私達は高町家に戻ってくるが、

 

「まだなのはは帰って来てないのか?」

 

士郎さんが呟く。

なのははジュエルシードを探しているんでしょうけど。

時計は午後7時を回った所。

小学生が出歩くには少々遅い時間だ。

私は立ち上がると、

 

「なのはを探して来るわ。大丈夫だとは思うけど、万が一があったら困るし」

 

そう言ってハックモンと共に家を出た。

なのはの位置は既に把握している。

ハックモンを背負って建物の屋根を飛び移りながら街へ向かっていると、突然街の一区画に魔力が渦巻き始めた。

この魔力は、あのオレンジ色の狼の魔力ね。

辺り一帯に魔力流を流し込んで、発動前のジュエルシードを叩き起こして位置を特定しようって事かしら?

でも、次の瞬間その周辺が結界に覆われる。

こっちはユーノの魔力ね。

前から思ってたけど、ユーノって空間魔法に適性ありそうよね。

魔力はなのはやフェイトよりは少ないだろうけど、技術に関しては優秀だと思う。

少なくとも、トータスに召喚されたクラスメイトの主力要員以外のメンバーよりかは。

私は少ししてその結界内に侵入する。

そこでは、ジュエルシードは既に封印されており、なのはとフェイトが戦闘を行っていた。

すると、

 

「フェイトちゃん!!」

 

なのはが強い声でフェイトの名を叫んだ。

 

「ッ!?」

 

なのはの呼びかけにフェイトの動きが止まる。

 

「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど。だけど、話さないと、言葉にしないと伝わらない事もきっとあるよ!」

 

なのはの言葉に、フェイトは動揺している。

 

「ぶつかり合ったり、競い合うことは仕方が無いのかもしれない。でも、何もわからないままにぶつかり合うのは、私、嫌だ!」

 

なのはは必死にフェイトに呼びかける。

 

「私がジュエルシードを集めるのは、それがユーノ君の探し物だから。ジュエルシードを見つけたのはユーノ君で、ユーノ君は、それを元通りに集めなおさないといけないから。私はそのお手伝いで………だけど、お手伝いをするようになったのは偶然だけど、今は自分の意思でジュエルシードを集めてる。自分の暮らしてる街や、自分の周りの人達に危険が降りかかったら嫌だから………! これが私の理由!!」

 

その言葉を聞いて私は、

 

「甘いわね…………」

 

そう思った。

 

「でも………それがなのはなのかしらね…………」

 

それを否定する気は無い。

私には私の戦う理由がある様に、なのはにはなのはの戦う理由がある。

それが私の意に沿うかは別問題だ。

フェイトはその言葉を聞くと、一度目を伏せる。

 

「………私は」

 

ポツリと、フェイトが言葉を発しようとしたその時、

 

「フェイト!! 答えなくていい!!」

 

オレンジの狼が叫んだ。

 

「優しくしてくれた人達のとこで、ぬくぬく甘ったれて暮らしてるガキンチョになんか、何も教えなくていい!! 私達の最優先事項は、ジュエルシードの捕獲だよ!!」

 

その言葉に感化されたのか、フェイトもデバイスをなのはに突きつける。

まあ、正論ね。

『敵』の言葉を馬鹿正直に受け止める理由は無いわ。

だけど、フェイトも一瞬動揺したようだから、彼女にもなのはの言葉に感じる『何か』があったんでしょうけど。

それはともかく、さっきからあそこにほったらかしにされてるジュエルシード、2人の激突の余波を受けて結構不安定になってるっぽいんだけど?

私がそう思っていると、フェイトがなのはに背を向けてジュエルシードに向かった。

狼の言葉通り、ジュエルシードの確保を優先したみたいね。

なのはも急いで後を追う。

そして、両者が突き出したデバイスの先が、ほぼ同時にジュエルシードに届き、そして、互いのデバイスの先と激突した。

…………あれって拙くない?

ただでさえ不安定になってた所に、あんな衝撃を与えたら…………

次の瞬間、互いのデバイスに罅が入り、辺りを埋め尽くす光と共に、ジュエルシードから膨大な魔力が放たれた。

 

「きゃぁああああああああああああああっ!?!?」

 

「くぅぅぅぅっ…………!?」

 

突然の事になのはは成す術無く吹き飛ばされ、フェイトは少し吹き飛ばされるも制動をとって、空中に留まる。

なのはは突然の事態に対応できず、そのまま地面に激突しそうだったので、

 

「フッ………!」

 

その前に回り込んでなのはを拾った。

 

「う………え………? 優花さん!?」

 

「大丈夫?」

 

私がそう聞くと、

 

「は、はい………でも、レイジングハートが………」

 

なのはの杖をみると、見事に罅だらけだ。

そして、それはフェイトも同じようで、デバイスを待機状態に戻すと、何かを決意したようにジュエルシードを見つめた。

そのジュエルシードは一旦は沈黙したけど、嵐の前の静けさのような気配がした。

 

「さっきの魔力放出は、地震で言う初期微動って所かしら? なら、この次に起こるのは先程とは比べ物にならない威力になりそうね………!」

 

私がそう判断した時、フェイトがジュエルシードに向かって飛び、ジュエルシードをその手に掴んだ。

 

「フェイト!? ダメだ! 危ない!!」

 

オレンジ色の狼が叫ぶ。

あの子、これから起こる魔力暴走を止めるつもり?

フェイトは両手でジュエルシードを握りしめる。

すると、その中にあるジュエルシードから魔力が溢れ出そうとしている。

フェイトは魔法陣を展開し、その魔力を抑え込もうとしていた。

 

「フェイトちゃん!?」

 

なのはが叫ぶ。

フェイトの魔力とジュエルシードの状況的に、感覚的には抑えられるかギリギリってとこかしらね。

まあ、ここであんな魔力が暴発したら何が起こるか分からない。

最悪、翠屋や高町家に被害が及ぶかもしれない。

 

「…………仕方ないわね」

 

私は溜息を吐きつつなのはを降ろす。

 

「ハックモン! なのはを頼んだわ!」

 

「承知した」

 

「優花さん!?」

 

私はなのはをハックモンに任せると、フェイトの所に向かって駆け出す。

そのままフェイトの目の前に辿り着くと、フェイトの両手を覆うように自分の両手で握りしめた。

フェイトの手は魔力の放出に耐えきれず、掌の皮膚が破れ、血が噴き出している。

全く無茶するわね。

 

「ッ!? あなたはっ!」

 

「ジュエルシードの魔力は私が抑えるわ! あなたは封印に集中しなさい!」

 

私はそう叫ぶと、〝魔力放射〟を発動。

自分の魔力を直接ジュエルシードに叩きつける。

 

「なっ………!?」

 

衝撃と共に広がる私の魔力に、フェイトが驚愕の声を漏らした。

私の魔力により、ジュエルシードから溢れ出そうとする魔力を力尽くで抑え付ける。

 

「な、何て魔力だ…………桁が違う…………!」

 

ユーノが後ろで驚愕の声を漏らしていた。

 

「今よ!」

 

「は、はい!」

 

フェイトは驚愕していたようだけど、私の言葉で気を取り直し、封印術式を発動。

ジュエルシードの魔力が抑えられていくのを感じ、それに合わせて私も魔力を抑えていく。

 

「はぁ……はぁ………」

 

フェイトは息を吐いていたが、意識はハッキリしている、

その手には封印されたジュエルシード。

でも、その掌は先程の抑え損なったジュエルシードの魔力で皮膚が破れており、血まみれだった。

まあ、その程度の傷は、奈落では日常茶飯事だったから、私は如何とは思わなかったけど。

けど、ここまで頑張ったこの子には、少し位お節介を焼いてもいいかしら?

 

「手を見せなさい」

 

「え………?」

 

私がそう言うと、状況がよくわかっていないのか、素直に両手を見せた。

その手に右手を翳し、〝再生魔法〟を発動させた。

見る見るうちに傷が塞がり、元通りになる。

 

「えっ? 回復魔法……? それもこんな一瞬で………!?」

 

なにやらフェイトは驚いている様だけど、そんなに驚く事かしら?

すると、

 

「フェイト!!」

 

オレンジ色の狼が人型となってフェイトに抱き着く。

 

「フェイト! よかった! フェイトがジュエルシードに飛びついた時には、心臓が止まるかと思ったよ!」

 

「アルフ………ごめんね、心配かけて………」

 

今初めて知ったけど、この使い魔はアルフと言うらしい。

そのアルフは涙を浮かべてフェイトを抱きしめた後、私の方を見て、

 

「…………ありがとう! フェイトを助けてくれた事には感謝するよ!」

 

頭を下げてそう礼を述べた。

すると、消耗が伺えるフェイトを抱き上げて去って行った。

 

「さてと………」

 

私はなのはに振り返る。

 

「あ、ゆ、優花さん………」

 

動揺している様子のなのはに歩み寄ると、

 

「さっさと帰るわよ。晩御飯の時間だから」

 

私がそう言うと、

 

「って、えぇえええええっ!? 最初に言う事がそれですか!?」

 

なのはがズッコケそうな勢いでそう言う。

 

「当然でしょ? 私は晩御飯の時間なのになのはが帰ってこないから探しに来ただけよ。ジュエルシードは帰るのに邪魔になりそうだったから黙らせただけよ」

 

「そ、そうですか………」

 

なのはは困惑する様な表情を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

なのはのデバイスは損傷したようだけど、ユーノが言うには自己修復機能があり、1日ぐらいで何とか元通りになるようだ。

なのははどうしてもフェイトの事が気になるようで、あんなことがあってもジュエルシード探しは止めないつもりらしい。

あの子って、結構頑固なのね。

そして翌日。

私が既に慣れた翠屋の接客作業を終え、高町家に戻った時だった。

ジュエルシードの魔力の高まりを感じた。

 

「……………いつもより、発動したジュエルシードの魔力が大きいわね…………場所は………海沿いの公園の辺りかしら」

 

この場所なら行った事があるから、空間ゲートで移動できる。

昨日みたいなことがあったら事だし。

 

「行くわよ、ハックモン」

 

「わかった」

 

ハックモンを連れて、空間ゲートを開いた。

 

 

 

空間ゲートの向こうでは、丁度ジュエルシードが木に取り着き、まるで魔物のようになっていた。

 

「確か奈落の魔物にも、こういうの居たわねぇ………」

 

何となく懐かしい気分になる。

すると、桜色の魔力弾と、金色の魔力弾がその魔物みたいな暴走体に撃ち込まれるが、その暴走体は魔力障壁を張ってその攻撃を防いだ。

 

「あっ、優花さん!」

 

なのはが私に気付く。

 

「ッ!」

 

フェイトとアルフも私に気付き、警戒の眼差しを向ける。

 

「…………………………」

 

それは置いていて、私は少し考えた。

このまま2人に任せてもいいが、昨日みたいなことになったら万が一という事もあり得る。

なので、

 

「………あんた達は下がってなさい。今回は私がやるわ」

 

なのはとフェイトの2人に呼びかける。

一先ず、昨日のような事故を起こさないためには、私が確保しておくのがいいだろう。

私が暴走体に向き直ろうとすると、

 

「優花、今回は私にやらせてくれないか?」

 

ハックモンがそう言って来た。

 

「平和も良いが………偶には身体を動かしたい」

 

そう言えばハックモンは高町家からあまり出てないから、少し位気晴らしをさせた方がいいわね。

 

「良いわよ。でも、成熟期までだからね」

 

「十分だ」

 

ハックモンがそう言うと、私の前に出る。

 

「えっ? ハックモンが戦うんですか?」

 

なのはが驚いた声を上げる。

 

「そうよ。何か問題ある?」

 

「いえ………その……ハックモンは大丈夫なんですか?」

 

なのはは心配そうにハックモンを見つめる。

まあ、ハックモンは成長期だし、なのはの実力からすれば、心配になるのも無理ないかしら?

だけど、

 

「………私のパートナーを、甘く見ないで欲しいわね」

 

私はDアークと1枚のカードを取り出す。

 

「カードスラッシュ!!」

 

そのカードを、Dアークにスラッシュする。

 

「超進化プラグインS!!」

 

そのカードのデータがハックモンに送られた。

そして、

 

―――EVOLUTION

 

ハックモンが光を放つ。

 

「この光は!?」

 

「一体何事だい!?」

 

フェイトとアルフも驚愕の声を漏らす。

 

「ハックモン進化!」

 

光の中で、ハックモンは進化する。

成長期の姿から、成熟期の姿へ。

 

「バオハックモン!!」

 

光の中からバオハックモンが現れる。

 

「ハックモンが………大きくなった………!?」

 

なのはがバオハックモンを見上げながら呆然と呟く。

ハックモンが子供とあまり変わらない大きさなのに対し、バオハックモンは全高約5m、全長約10mと巨大。

驚くのも当然ね。

 

「これがデジモンの進化よ」

 

私はそう言う。

 

「さあ、行きなさい! バオハックモン!」

 

「おおっ!」

 

バオハックモンが木の魔物のようなジュエルシードの暴走体に向かって突進する。

 

「ォオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

それに対し、暴走体は木の根を鞭のように伸ばしてバオハックモンに攻撃する。

でも、

 

「バーンフレイム!!」

 

バオハックモンの口から放たれた火炎が一瞬にして木の根を全て焼き尽くす。

そのまま炎は暴走体まで到達した。

暴走体は魔力障壁を張るけど、周りが炎に包まれる。

その直後、

 

「ティーンブレイド!!」

 

尾の刃を軸に回転しながら突貫してきたバオハックモンにより、暴走体の魔力障壁が砕かれる。

そして、

 

「フィフクロス!!」

 

鋭い爪が付いた両前足をクロスするように振り、暴走体を切り裂いた。

 

「優花!」

 

バオハックモンの呼びかけに、私は跳躍して切り裂かれた暴走体を見つめ、

 

「そこね!」

 

暴走体の内部にあったジュエルシードを見つけ、飛び込みながらそれを掴む。

私には、なのは達のような封印術式は無い。

でも、最近思いついた方法がある。

それは、

 

「〝再生魔法〟!」

 

〝再生魔法〟により暴走前の状態に戻す事。

一時しのぎかもしれないけど、後で封印して貰えば問題無い。

ジュエルシードを暴走前の状態に戻したことで、暴走体も消滅する。

私はそれを手に振り返ると、

 

「さてと、ジュエルシードはこれで良いけど、あなた達はどっちも譲れないのよね?」

 

私がそう聞くと、フェイトが迷いなく頷き、なのはも自分の意志を持って頷く。

 

「それじゃあこうしましょう。2人が戦って、勝った方にこのジュエルシードを渡すわ。それなら文句ないでしょう? その間このジュエルシードは私が責任をもって抑えるわ」

 

これなら昨日のような事故は無いでしょう。

 

「わかった。それで構わない」

 

フェイトはすぐに了承する。

 

「私も………いいよ」

 

なのはも真剣な表情で頷いた。

 

「ジュエルシードは………譲れない」

 

フェイトが空中でバルディッシュを構える。

 

「私は………フェイトちゃんとお話がしたいだけなんだけど…………」

 

なのはもフェイトと同じ高度でレイジングハートを構え、

 

「私が勝ったら………ただの甘ったれた子じゃないってわかってもらえたら………お話………聞いてくれる?」

 

なのはの真剣な表情に、フェイトは小さく頷いた。

 

「「……………………」」

 

そして、一瞬見つめ合った後、同時に動き出した。

互いにデバイスを振り被り、最初の一撃が交差する。

その瞬間、2人の間に別の魔力反応を感じた。

これは空間魔法!?

何者かが転移してくる!?

次の瞬間、なのはのレイジングハートが掴まれ、フェイトのバルディッシュが杖によって受け止められる。

 

「ストップだ!!」

 

両者の間に現れた何者かが叫んだ。

 

「ここでの戦闘は危険すぎる!」

 

受け止められたなのはとフェイトは呆然としている。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ! 詳しい事情をきかせてもらおうか」

 

そこにいたのは黒髪の少年だった。

 

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ! 詳しい事情をきかせてもらおうか」

 

突如現れた黒髪の少年はフェイトとなのはを交互に見ながらそう叫ぶ。

 

「まずは2人とも武器を………」

 

クロノと名乗った少年は、フェイトとなのはに武器を引くように言おうとして、

 

『クロノ君! 動かないで!!』

 

そのクロノに切羽詰まった声で通信が届いた。

 

「エイミィ………? ッ!?」

 

クロノはその通信の意味を計りかねて怪訝な声を漏らしたが、すぐに気付いた。

いつの間にかクロノの背後から首元に刃物………苦無が添えられていたからだ。

そして、その苦無を持つのは、

 

「優花さん!?」

 

なのはが叫ぶ。

クロノの背後には、優花が〝空力〟の足場に立ち、逆手に持った苦無でクロノの喉をいつでも切り裂ける体勢でそこに居た。

 

「………………で? あなた何者?」

 

優花は冷たい声で問いかける。

 

「………ッ。先程名乗っただろう! 時空管理局執務管、クロノ・ハラオウンだ。君の行為は公務執行妨害に当たるぞ!」

 

「…………何で?」

 

「何でって………これは執務官に対する明らかな敵対行為だ!」

 

クロノはそう叫ぶ。

 

「…………私から見れば、得体の知れない組織名と役職名を一方的に名乗った得体の知れない奴が知り合いの勝負に突然乱入してきたから、それに対する当然の警戒行動なんだけど? なのはが傷付けられたら事だし」

 

「ッ………! 時空管理局執務官として、こちらの指示に従ってくれれば手荒な真似は絶対にしない!」

 

「だから時空管理局なんて聞いた事無いって言ってるのよ。そんな得体の知れない相手が一方的に突き付けてきた要求を、どうして飲まなきゃいけないわけ?」

 

優花はそう言って警戒を緩めようとしない。

 

「ッ……………」

 

クロノは冷や汗を流す。

その時、

 

「待ってください優花さん! その人は味方です!」

 

地上に居たユーノが叫んだ。

優花がユーノに視線を向ける。

 

「時空管理局と言うのは、僕達の世界にある警察のような組織です! 武器を引いてください!」

 

ユーノにそう言われ、

 

「………………………それなら取引よ。そこのフェイトたちを今は見逃しなさい。その代わり、あなた達の話を聞いてあげる。これで如何?」

 

「そ、そんな事…………」

 

クロノが答えに渋った時、

 

『わかりました。その要求を受け入れましょう』

 

優花の近くに投影されたモニターが現れ、そこに映っていた翠の髪の女性がそう言った。

 

「か、艦長………!?」

 

クロノがそう呟き、

 

「あなたは?」

 

『私はリンディ・ハラオウン。そこのクロノ執務官の直属の上司に当たるわ。戦いに乱入し、状況を混乱させてしまった事は謝罪しましょう。先程言ったあなたの要求は受け入れるから、武器を引いて貰えないかしら?』

 

その言葉に、優花は視線をフェイトに向けると、

 

「あんた達、さっさと行きなさい」

 

「で、でも………」

 

フェイトの視線は優花の持つジュエルシード。

 

「フェイト! ここは撤退だよ!」

 

アルフが叫ぶ。

 

「だけど、ジュエルシードが………」

 

「今捕まったら元も子もないよ! 折角あいつがチャンスを作ってくれたんだ! 今は逃げなきゃ!」

 

「ッ…………!」

 

フェイトは、後ろ髪引かれる思いながらも飛び去った。

フェイトが見えなくなると、優花は苦無をクロノの喉元から放し、距離を取った。

クロノはホッとしたように息を吐く。

 

『随分とあっさり放してくれたのね?』

 

リンディと名乗った女性は、あっさりとクロノが解放された事に少々以外そうだった。

 

「自分で言った約束は守るわよ。で? 話を聞きたいんでしょ? どうすればいい訳?」

 

優花は投げやりに聞き返すと、リンディはクロノの方を向き、

 

『クロノ、そちらのお嬢さん達をアースラに案内してあげてくれるかしら』

 

「了解です。すぐに戻ります」

 

クロノがそう言うと、投影された画面が消える。

そんなクロノの姿に、なのははついて行けずに呆然とするばかりだった。

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

クロノと言う少年が発動した転移魔法によって、私達は別の場所に転送された。

そこは、見た目だけでもかなり進んだ文明を思わせる作りをしていた。

 

『ユーノ君。ここって一体………?』

 

なのはが不安そうに辺りをキョロキョロしながらユーノに念話で問いかけている。

 

『時空管理局の次元航行船の中だね。簡単に言うと、いくつもある次元世界を自由に行き来するための、そのための船』

 

『あ、あんまり、簡単じゃないかも………』

 

ユーノが歩きながらなのはに次元世界とやらの説明をしていく。

要は異世界って事でいいのよね?

転移してきた部屋を抜けると、クロノが振り返る。

 

「ああ。何時までもその格好というのは窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは、解除してもらって平気だよ」

 

「そっか………そうですね。それじゃあ…………」

 

クロノの言葉になのはは返事をしてバリアジャケットを解除し、デバイスを待機状態にする。

私から言わせてみれば、得体の知れない組織の中で、無防備になるのは如何かと思うんだけど?

すると、クロノはユーノに視線を向け、

 

「君も、元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」

 

そう言った。

 

「あ、そうですね。ずっとこの姿でいたから、忘れてました」

 

「?」

 

ユーノの言葉になのはは首を傾げる。

すると、ユーノが光に包まれ、

 

「ッ!?」

 

なのはが驚愕の表情になった。

何故なら、そこに居たのはなのはと同年代と思われる少年が居たからだ。

 

「なのはにこの姿を見せるのは、久しぶりになるのかな」

 

そう言って立ち上がり、なのはに視線を向ける少年となったユーノ。

そのなのはは、驚愕のあまり固まってるけど。

 

「ふ……ふ………ふぇええええええええええええええええええええええええええええっ!?!?!?」

 

なのはが叫び声を上げる。

 

「…………? なのは?」

 

なのはの反応が理解できなかったのか、ユーノは首を傾げる。

 

「えと……あの……ユーノ君って…………えぇぇぇぇぇっ!?!?!?」

 

なのはは驚き過ぎてろれつが回っていない。

 

「……………君達の間に、何か見解の相違でも?」

 

クロノがそう聞くと、

 

「え~っと……なのは? 僕達が最初に出会った時って、僕ってこの姿じゃ………」

 

「違う違う! 最初からフェレットだったよ~~~~~っ!!」

 

「……ん~っと…………」

 

なのはの言葉に、ユーノは思い出そうと頭に手を当て、

 

「………ああ! そうだそうだ! ご、ごめん、この姿を見せてなかった」

 

どうやら思い出したらしく、ユーノはなのはに謝る。

 

「そ、そうだよね! びっくりしたぁ~………」

 

2人のやり取りに、

 

「ゴホン。ちょっといいか?」

 

クロノは咳払いをして話し出す。

 

「君達の事情は良く知らないが、艦長を待たせているので、できれば早めに話を聞きたいんだが?」

 

「は、はい…………」

 

謝罪の言葉を聞くと、

 

「では、こちらへ」

 

クロノは再び、先導して歩き出した。

その道すがら、

 

「あの、優花さん」

 

なのはが話しかけてきた。

 

「何?」

 

「優花さんは、ユーノ君が人間だった事に驚かないんですか?」

 

「意外とは思ったけど、驚くほどでは無いわね」

 

人が竜になるティオを知ってるし、逆に竜が人になるシルフィードも見慣れている。

それにデジモンだって見慣れているからね。

今更フェレットが人間になった程度では驚けない。

暫く歩いていると、クロノはとある一室の扉を開け、

 

「艦長、来てもらいました」

 

そう言いながら入室した。

 

「あっ」

 

なのはが声を漏らす。

その部屋は、盆栽、茶釜、鹿威しなど、和風に彩られていた。

……………私達にとって身近なものを飾っておくことで、警戒を緩めようって魂胆なのかしらね?

そしてそこには、

 

「お疲れ様、まあ皆さん、どうぞどうぞ楽にして」

正座し、笑顔でそう言うアースラ艦長、リンディ・ハラオウンがいた。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、そうですか。あのロストロギア…………ジュエルシードを発掘したのはあなただったのですね」

 

ユーノからジュエルシードの経緯を聞いたリンディがそう言う。

 

「はい………それで、僕が回収しようと………」

 

ユーノが頷き、同時にそれがジュエルシードを回収しようとした理由である事を言った。

 

「立派だわ」

 

リンディはそう言うが、

 

「だけど、同時に無謀でもある」

 

クロノが直球にそう言った。

上げて落とすって聞いてると割とひどいわね。

まあ、確かに間違ってはいないんでしょうけど。

 

「ハッ…………」

 

思わず鼻で笑ってしまった。

 

「何がおかしいんだ?」

 

それに気付いたクロノが私を睨んだ。

 

「別に………ユーノが行動しなかったら、今頃ジュエルシードが幾つも暴走して、海鳴の街が滅茶苦茶になってたかも~、なんてこれっぽっちも思って無いわよ?」

 

「ぐっ…………」

 

「ああ、フェイトが居たからそれは無いか。ユーノが居ないって事はなのはも魔法に出会わなかったって事だからなのはに邪魔されなければ、今頃フェイトがジュエルシードを全部集めてたりして」

 

「うぐっ…………」

 

少し位皮肉を言ってもバチは当たらないわよね?

なのはは苦笑しつつ、

 

「…………あの、ロストロギアって何なんですか?」

 

そう訊ねた。

 

「ああ………遺失世界の遺産………って言っても分からないわよね。えっと………次元空間の中には幾つもの世界があるの。それぞれに生まれて育っていく世界。その中に、ごく稀に進化しすぎる世界があるの。技術や科学、進化しすぎたそれが、自分たちの世界を滅ぼしてしまって。その後に取り残された失われた世界の危険な技術の遺産」

 

「それらを総称して、ロストロギアと呼ぶ。使用方法は不明だが、使いようによっては世界どころか、次元空間を滅ぼすほどの力を持つ、危険な技術」

 

神代魔法もある意味ロストロギアに入るのかしら?

 

「然るべき手続きを持って、然るべき場所に保管されていなければいけない危険な品物。あなた達の集めているロストロギア………ジュエルシードは次元干渉型のエネルギーの結晶体。いくつか集めて特定の方法で起動させれば、空間内に次元震を引き起こし、最悪の場合次元断層まで引き起こす危険物」

 

「君とあの黒衣の魔導師がぶつかった時に起こった振動と爆発。あれが次元震だよ」

 

クロノの言葉に、なのはは、はっとなる。

ああ、あれがそうなのね。

 

「たった1つのジュエルシードの………何万分の一の発動でもあれだけの影響があるんだ。数個集まって動かしたときの影響は、計り知れない」

 

その言葉を聞いて、ユーノが思い出したように言った。

 

「聞いた事あります。旧暦の462年、次元断層が起こったときのこと」

 

「ああ。あれは酷いものだった」

 

「隣接する次元世界が幾つも崩壊した、歴史に残る悲劇…………繰り返しちゃいけないわ」

 

リンディは神妙な顔でそう呟くが………

 

「あ」

 

なのはが声を漏らした。

リンディは、お茶の中に砂糖を入れたのだ。

そして、リンディはそれを全く躊躇することなく口に運ぶ。

まあ、外国じゃ緑茶のにハチミツ入れて飲んだりするって聞いた事はあるけど。

実際に見ると少しは文句言いたくなるわ。

そして一息つくと、

 

「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収については、時空管理局が全権を持ちます」

 

「「えっ?」」

 

なのはとユーノが声を漏らす。

 

「君達は今回の事は忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい」

 

クロノがそう言った。

 

「でも………そんな…………」

 

なのはは何か言おうとするが、

 

「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」

 

クロノがきっぱりとそう言う。

 

「でも!」

 

「私はその言葉に甘えさせてもらうわ」

 

なのはが何か言おうとした時、私はそう言う。

 

「あなた達がロストロギアの専門家だって言うのなら、そっちにお任せするわ。私は元々、荒事に自分から首突っ込む気は無いし」

 

「優花さん………」

 

「まあ、いきなり言われても気持ちの整理がつかないでしょうから、今夜一晩、ゆっくり考えて、それぞれで話し合って、それから改めてお話をしましょう」

 

「送っていこう。元の場所でいいね?」

 

そう言って、クロノが立ち上がった。

そんな中、なのはは納得がいかないのか、悩んでいるようだった。

 

 

 

 

 

 







リリカルなのは編第4話です。
なんか優花が介入する所が少なかったから端折りまくったらアニメ3話分ぐらいが一気に進んでしまった。
ハックモンが初めての活躍です。
さて、最初の時空管理局との邂逅はこんな感じに。
クロノ君、折角の見せ場があんなことに。
因みにもう1つの案では、クロノが転移してきた瞬間に優花が豪脚で蹴っ飛ばしつつフェイトとなのはの間に割り込む、何て事も考えてました。
まあ流石にそれはクロノ君が死にそうだったので止めましたが。
さて、優花は管理局に協力する気ゼロ。
なのはは原作通りに………
では、次も頑張ります。


PS.すみません、今日も返信はお休みします。
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