【Side 三人称】
優花達を元の場所に送り届けた後、アースラ艦内ではオペレーターのエイミィが情報を整理していた。
「すごいや! 2人ともAAAクラスの魔導師だよ!」
アースラのオペレーターであるエイミィ・リミエッタが、なのは達の戦闘データを見て、驚きの声を上げた。
「ああ」
クロノが頷く。
「こっちの白い服の子は、クロノ君の好みっぽい可愛い子だし」
「エイミィ………そんなことはどうでもいいんだよ!」
エイミィの冗談に呆れるクロノ。
「魔力の平均値を見ても、白い服の子で127万。黒い服の子が143万。最大発揮時は更にその3倍以上。魔力だけならクロノ君より上回っちゃってるね!」
「魔法は魔力値の大きさだけじゃない。状況に合わせた応用力と、的確に使用できる判断力だろ」
「それはもちろん! 信頼してるよ。アースラの切り札だもん、クロノ君は」
エイミィの言葉に微妙な顔になるクロノ。
そんな話をしていると、リンディが部屋に入ってきた。
「あ、艦長」
「ああ。あの子達のデータね」
リンディがモニターを見つめる。
「確かに、凄い子達ね」
「これだけの魔力がロストロギアに注ぎ込まれれば、次元震が起きたのも頷ける」
「なのはさんとユーノ君がジュエルシードを集める理由は分かったけど、こっちの黒い服の子は何でなのかしらね?」
リンディが疑問を口にする。
「随分と、必死な様子だった。何かよほど強い目的があるのか………」
「目的………ね」
リンディは呟いた後、少し哀しそうな目でフェイトが映ったモニターを見つめ、
「小さな子よね………普通に育っていたら、まだ母親に甘えていたい年頃でしょうに………」
寂しげに呟く。
「………それで…………もう1人の女の人と使い魔みたいな生物なんだけど…………」
エイミィはモニターを操作して優花とハックモン、バオハックモンの画像を映し出す。
「こっちの女の人はまともに戦闘したわけじゃないから、正確な魔力の数値は分からないけど、ジュエルシードを掴みに行った時の身体能力から考えれば、彼女はミッド式の魔法と違って、フィジカル方面に魔力を割り振ってるみたい。それに、このジュエルシードの暴走を鎮めた魔法。どうやら封印術式とは違うみたいなんだよね…………」
優花がジュエルシードを掴み、暴走を鎮めたシーンをモニターに移す。
「…………封印したわけじゃないのに暴走を鎮める…………まるで、暴走する前の状態に戻したみたいね………」
優花の映像を見ながらリンディはそう零す。
「それでエイミィ。こっちの使い魔の方は?」
クロノがハックモン、バオハックモンを指す。
「あ~………それがね…………ちょっと信じられないんだけど…………」
エイミィは言葉を濁す。
「………? どうかしたのか?」
クロノが不思議そうに問い返すと、エイミィはモニターを操作してハックモン、バオハックモンのデータを映し出す。
そこには、
「なっ!? 観測魔力ゼロだと!? これだけの戦闘力を持っていて!?」
クロノが驚愕する。
「そうなの。あの生物には魔力が全く無いの。それだけじゃなくて、こうやって映像には残ってるんだけど、サーチ魔法や魔力レーダーなんかの魔力由来の観測方法には、一切反応が無いの。まるで、魔力そのものを否定してるみたいな…………」
「ということは、使い魔では無いと言う事ね?」
リンディの問いかけに、
「はい、それは間違いないです。使い魔なら、主人の魔力を得て活動しているので、必ず魔力反応があります」
「そう…………」
リンディは、艦長としてあらゆる状況を想定し、
「…………クロノ。もしあの生物と戦闘になった場合、勝てる?」
クロノにそう問いかけた。
その問いに、クロノはバオハックモンの戦闘シーンをジッと見つめ、
「ジュエルシードの暴走体を圧倒した事から、相当な戦闘力を持っていると予想されます。ですが、見る限り飛行能力を持っていないため、油断せず準備を整え、空からの攻撃に徹すれば勝てる確率は限りなく高いと思われます」
「そう…………エイミィ、この生物について出来るだけ情報を集めておいて」
「了解しました」
リンディの言葉に、エイミィは頷いた。
【Side Out】
時空管理局とか言う組織と出会った翌日から、なのはは時空管理局に協力を申し出た。
どうしてもあのフェイトとお話をしたいのだそうだ。
確かに個人で探すより、組織で動く管理局の方がフェイトと出会える可能性は高いだろう。
でも、組織で動くという事は、個人の意志よりも組織の目的が優先される事を意味する。
『フェイトと話したい』というなのはの目的が達成されるかはあのリンディさん次第だろう。
あの人が、組織の目的の為に全てを切り捨てるか、それとも個人の意志を尊重するタイプかによる。
どっちが間違ってるかなんて言えないけど、結局はなのはが意志を貫き通せるかどうか、かな?
それはさておき、私は今日も翠屋のウェイトレスとして、せっせと料理を運んでいた。
【Side 三人称】
管理局と合流したなのはは、早速ジュエルシードの暴走体をユーノと共に相手取っていた。
ユーノがバインドで巨鳥型の暴走体を捕え、その隙になのはが封印する。
危なげの無い勝利だった。
その様子を見ていたアースラでは、
「状況終了です。ジュエルシード NoⅧ、無事確保。お疲れ様、なのはちゃん、ユーノ君」
アースラのオペレーターが、なのは達にそう言う。
「ゲートを作るね。そこで待ってて」
「う~ん。2人ともなかなか優秀だわ。このままうちに欲しいくらいかも」
その様子を見ていたリンディが満足そうにそう言った。
その近くでは、エイミィがフェイトの事について調べていた。
「この黒い服の子。フェイトって言ったけ?」
「フェイト・テスタロッサ。かつての大魔導師と同じファミリーネームだ」
クロノが答える。
「え?そうなの?」
「だいぶ前の話だよ。ミッドチルダの中央都市で、魔法実験の最中に、次元干渉事故を起こして、追放されてしまった大魔導師」
「その人の関係者?」
「さあね。本人とは限らない」
エイミィは、フェイトの位置を特定しようとするが、
「ああ………やっぱりダメだ。見つからない。フェイトちゃんはよっぽど高性能なジャマー結界を使ってるみたい」
「使い魔の犬。おそらくこいつがサポートしてるんだ」
「おかげで、もう2個もこっちが発見したジュエルシードを奪われちゃってる」
「しっかり探して捕捉してくれ。頼りにしてるんだから」
「はいはい………」
エイミィは仕方なさげに頷いた。
すると、
「所でエイミィ、例の優花さんが連れていた生物について分かった事は?」
リンディがそう尋ねる。
「はい。なのはちゃんから齎された情報で、あの生物がデジモンと呼ばれる生物であることが分かったので、そこからアプローチしてみました」
エイミィがモニターを操作して情報を表示させる。
「デジモン………正式名称はデジタルモンスター。元々は、この世界の時系列で30年ほど前に研究されていた人工知性が元になった、コンピューターネットワーク上に存在する電子生命体と言うべきものでした。少し前には、この世界のゲームやカードなんかにもなってたみたいです」
「電子生命体…………」
「ですが、この世界の技術の発展に伴い、ネットワークが拡大。それに伴ってそのデジモン達の世界も拡大………進化と言うべき発展を遂げたんです。それこそ、現実世界に実体化する程に…………」
「ネットワーク上の情報体でしかなかった電子生命体が現実世界に実体化するなんて………それが人の手が加えられたわけじゃなく、自然に発生したなんて信じられない……!」
クロノは戦慄を感じる。
「10年近く前には、一時期デジモンが頻繁に現実世界に現れる時期があったみたいです。更に『デ・リーパー』と呼ばれるデジモンより前に研究、開発されていたデータ消去プログラムもデジモンと同じく独自の進化を遂げて、現実世界に現れて猛威を振るったらしいです。その時のデータは、何故か徹底的に消去されてたみたいで、詳しい事は分かりませんでした」
「そう………デジモンは、この世界で独自の進化を遂げた原生生物として対処しましょう。デジモンも、なのはさんが言うには、まず見かけないものらしいし」
「はい」
一先ずアースラの指針としては、デジモンに関しては静観する事に決めた。
【Side Out】
なのはがアースラに合流してから10日が過ぎた。
時折ジュエルシードの魔力を感じるけど、なのは達が頑張っているのか、すぐにその反応は収まる。
何だかんだで、私の翠屋で働く期間もあと僅か。
このまま大士達といるいつもの幸せな日常に戻れると思っていた。
でも、
「ッ!?」
今回感じた魔力は、今までの比じゃなかった。
最初に感じたのはフェイトの魔力。
海の方で何かやってると思ったけど、次の瞬間、ジュエルシードの魔力が突然膨れ上がった。
それも1つや2つじゃない。
合計6つものジュエルシードの魔力を感じた。
これはただ事では無いと思った私は、
「すみません桃子さん! ちょっと休憩入ります!」
失礼だとは思ったが一方的にそう言って翠屋から出ると、まずは空間ゲートで高町家に向かってハックモンと合流し、そのまま海沿いの公園に空間ゲートを繋げた。
【Side 三人称】
その少し前、フェイトは海上で巨大な魔法陣を展開していた。
「アルカス・クルタス・エイギアス………煌きたる天神よ、今導きの元、降り来たれ………バウエル・ザルエル・ブラウゼル………」
魔法陣に稲妻が走る。
その様子を見ていたアルフは思った。
(ジュエルシードは、多分海の中。だから、海に電気の魔力流を叩き込んで、強制発動させて、位置を特定する。そのプランは間違ってないけど………でも、フェイト!)
フェイトは呪文を唱え続ける。
「撃つは雷………響くは轟雷………アルカス・クルタス・エイギアス………」
フェイトの周りに複数の魔力球が生み出され、雷を纏う。
「はぁああああああああっ!!」
フェイトがバルディッシュを振り下ろすと、雷が海に叩き込まれた。
それと共に、海の中からジュエルシードの反応が起こる。
「はぁ………はぁ………はぁ………見つけた………残り6つ」
荒い息をつきながらフェイトは呟く。
(こんだけの魔力を撃ち込んで、更に全てを封印して。こんなのフェイトの魔力でも、絶対に限界超えだ!)
そう考えているアルフにフェイトは言った。
「アルフ! 空間結界とサポートをお願い!」
「ああ! 任せといて!」
アルフは直ぐに返事を返す。
(だから、誰が来ようが、何が起きようが、アタシが絶対守ってやる!)
その心に決意を秘めて。
ジュエルシードの影響で、海面が荒くなり、竜巻が巻き起こる。
「行くよバルディッシュ。がんばろう」
フェイトはバルディッシュを構え、ジュエルシードに立ち向かった。
一方、その様子はアースラでも確認されていた。
「なんとも呆れた無茶をする子だわ!」
リンディが半分叫ぶように言った。
「無謀ですね。間違いなく自滅します。あれは、個人の成せる魔力の限界を超えてる」
クロノが冷静に分析する。
その時、ブリッジになのは達が駆け込んでくる。
「フェイトちゃん!」
なのははモニターに映るフェイトの姿を見て慌てて言った。
「あの! 私達! 急いで現場に!」
しかし、
「その必要はないよ。放っておけば、あの子は自滅する」
クロノが冷酷にそう言った。
その言葉に、なのは達は足を止める。
クロノは言葉を続けた。
「仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たしたところで叩けばいい」
「でも………」
「今のうちに、捕獲の準備を!」
「了解」
何か言いかけたなのはを無視して、クロノは局員に命令した。
「私達は、常に最善の選択をしなければいけないわ。残酷に見えるかも知れないけど、これが現実………」
リンディはなのは達にそう言う。
「でも………」
それでも何か言いたげななのはだったが、
「えっ? 海岸に魔力反応!?」
エイミィがそう報告する。
モニターを操作して画面を映し出すと、そこにはハックモンと共にフェイトの居る方向を見つめる優花の姿があった。
【Side Out】
空間ゲートから出て最初に見えたのは、荒れ狂う海。
そして、結界に覆われているため、一般人には見えないが、巨大な6つの竜巻が巻き起こっていた。
そして、その竜巻に囲まれながら果敢に立ち向かう2つの影。
「……って、何やってんのよあの子達は!?」
状況から察するに、海の中にあったジュエルシードを見つける為に海の中に魔法撃ち込んだんでしょうけど。
先程感じた魔力からすれば、相当本気で魔法を撃ち込んだはず。
明らかに消耗しているのが見て取れる。
見た感じ、状況は不利ね。
っていうか、これだけジュエルシードが荒れ狂ってるって言うのに、管理局とやらは何してるのかしら?
そう思っていると、目の前にモニターが開いた。
『何故ここに居るんだ!?』
そこに映ったのは、クロノとか言う少年。
「何故って………あれだけ荒れ狂った魔力を感じれば、ただ事じゃ無いって思うのは当然でしょ? っていうか、あんた達こそ何やってんのよ?」
クロノの問いに答えてから今度はこちらから問いかける。
『状況はこちらでも確認している。状況を鑑みれば、放っておけばあの子は自滅する。封印に成功したとしても力を使い果たす。そこで管理局がジュエルシードとあの子の確保を行なうつもりだ』
その言葉に、
「なるほど…………合理的ね。自分達の被害を最小限に抑え、最大の成果を上げる。組織として正しい選択だと思うわ」
『納得してくれて何よりだ。だから君は………』
クロノが何か勘違いしてたから、
「まあ、私の価値観からすれば、死ぬほどカッコ悪いけどね」
『なっ!?』
「別にあそこにいるのが根っからの悪人だったり目に見えてわかる凶悪犯なら文句は無いわ。自業自得。同情もしない。けどね、私には、今あそこにいるのは、フェイト…………何か大切なものの為に必死になって頑張ってる年端も行かない女の子にしか見えない。そんな女の子の頑張りを掠め取って漁夫の利を得ようとする組織なんて、信用に値しないわ」
『そんな事っ………!』
「それに、感情を抜きにしても、懸念があるの」
『懸念だって?』
「ええ。前に言ってたわよね? ジュエルシードが複数個集まって発動した時の影響は計り知れないって………今がその状態じゃないの?」
『そ、それは………』
「今はまだ対処できる範囲かもしれないけど、何かの切っ掛けで一気に魔力が解放されたら? そう言う事は考えてるの?」
『……………………』
「まあ、あんた達からすればここは他所の世界だし? 最悪失敗したとしても、自分達の世界に逃げ帰ればいいだけだもんね。命を懸けてまで護る義務も無いからそんな選択を取れるのかしら?」
『ち、違…………』
もはや言い返す言葉に力は無い。
「まあ、あんた達がどんな選択肢を取ろうとも私には関係無いわ。私は私の意志で『力』を振るう。そして私は『今、力を振るう』べきと判断した。誰に何と言われようと曲げるつもりは無いわ。もし邪魔するって言うのなら、『敵』として排除するから」
私は言いたい事を言い切ると、
「行くわよ、ハックモン!」
「うむ!」
私はDアークとカードを取り出す。
「カードスラッシュ! 超進化プラグインS!!」
―――EVOLUTION
「ハックモン進化!」
ハックモンが成熟期へと進化を遂げる。
「バオハックモン!!」
私はバオハックモンの背に飛び乗ると、もう1枚のカードを取り出した。
「カードスラッシュ!」
それをDアークにスラッシュする。
そのカードは、
「エアロウイング!!」
高速飛行を可能にするカード。
ハックモンの背中に、エアロブイドラモンの翼が生み出される。
『なっ!? つ、翼が………!?』
クロノが驚いたような声を漏らしたようだけど、私達は構わずにフェイトの所へ向かった。
【Side 三人称】
フェイトは、海上で必死に戦っていた。
サイスフォームでジュエルシードのエネルギーを切り裂き、ジュエルシード本体に近付いていくが、
「きゃあっ!?」
勢いに耐え切れず弾き飛ばされる。
「フェイト!? フェイトー!!」
アルフが助けに行こうとしたが、ジュエルシードのエネルギーに阻まれる。
フェイトはそのまま落下していき、海に落ちるかと思われた。
だが、突如横から猛スピードで
巨大な何かが接近してきてフェイトを拾った。
それは、
「相変わらず無茶な事やってるわね?」
呆れた表情でフェイトを横抱きで受け止めたバオハックモンに乗った優花の姿があった。
「あ、あなたは………」
「フェイト!大丈夫かい!?」
エネルギーを振り切ったアルフが、フェイトに近付いてきた。
「アルフ、私は大丈夫だよ」
フェイトの言葉にアルフが安心すると、
「アンタだったのかい! またフェイトを助けてくれたんだね! 感謝するよ!」
アルフはフェイトにお礼を言う。
「別に………お礼を言う位だったらこういう迷惑をしないで欲しいわ」
「うっ………ご、ごめんなさい………」
フェイトを降ろしながら言った優花の言葉に、フェイトは申し訳なさそうな顔をする。
すると、
「優花!」
バオハックモンが叫ぶ。
見れば、ジュエルシードによって引き起こされた竜巻の内の3つが迫ってきていた。
「や、ヤバい!?」
アルフが叫ぶ。
「ッ!」
フェイトも身構えた。
しかし、
「はぁ………」
優花は一度溜息を吐くと右手を上げ、その手に宝物庫から3枚の手裏剣を取り出して指の間に挟んだ。
その右手を投擲の為に振り被る。
すると、その手裏剣が炎に包まれた。
「…………ハッ!」
その手裏剣を投げ放つ優花。
炎に包まれた手裏剣は、3つの竜巻にそれぞれ一つずつ向かい、
「「なっ!?」」
フェイトとアルフの驚愕の声と共に竜巻を貫き、一気に四散させた。
「あ、あれだけのジュエルシードを、たったあれだけで黙らせるなんて………」
アルフは開いた口が塞がらない状態だ。
その時、
「フェイトちゃん!!」
空からなのはが降りてきた。
「やっと来たわね。なのは………」
優花はポツリと呟く。
なのははフェイトに近付くと、
「手伝って!一緒にジュエルシードを止めよう!」
なのはのレイジングハートから、桜色の光がバルディッシュに注がれる。
『Power charge』
バルディッシュの魔力が回復する。
「2人でせーので一気に封印!」
なのはが言った。
フェイトはなのはを呆然と見ている。
なのはは先に魔法陣を展開し、封印の準備を完了する。
そして、フェイトを見た。
フェイトはまだ迷っていたが、
『Sealing form. Set up』
バルディッシュが自動的にシーリングフォームになる。
「バルディッシュ?」
一度、バルディッシュを見た後、フェイトはなのはを見上げた。
なのははウインクする。
フェイトは決心し、魔法陣を展開した。
封印の為に、魔力を高める2人。
だがその時、残り3つの竜巻が突如として1つとなり、巨大な竜巻となって膨れ上がった。
「なっ!? ジュエルシードの竜巻が1つに!?」
アルフが驚愕する。
1つとなった巨大な竜巻が、まるで狙ったようになのはとフェイトに迫った。
「「ッ!?」」
2人は目を見開く。
しかし、そんな彼女達の目の前に、バオハックモンと共に優花が立ち塞がった。
「あんた達、あれは何とかしてあげるから、さっさと封印しなさい」
優花は巨大な竜巻を前にしても、尚も余裕の態度でそう言った。
「優花さん!?」
なのはが叫ぶと、優花は右手を横に伸ばす。
そして宝物庫から槍を取り出し、その手に握った。
優花がその槍に魔力を集中し、雷魔法を付与する。
雷鳴が轟いて槍に収束し、白く輝き出す。
優花はその槍を振り被り、
「ニーベルング………!」
一気に投げ放った。
白く輝く槍が一筋の光の尾を引きながら巨大な竜巻に突き進む。
そして、その巨大な竜巻すら呆気なく貫通し、四散させた。
「す、凄い……!」
フェイトは思わず呟く。
「今だよ!フェイトちゃん!せーのっ!」
なのはの声に、フェイトは気を取り直す。
「サンダー…………!」
「ディバイィィン…………!」
2人は渾身の魔法を溜め、
「レイジィィィィッ!!」
「バスターーーーーッ!!」
一機に撃ち放った。
2人の魔力は、凄まじい衝撃をおびながら、ジュエルシード全てを封印する。
「ジュエルシード!6つ全ての封印を確認しました!」
アースラではエイミィが状況を報告する。
「な、なんて出鱈目な!」
クロノが呆気に取られる。
「………でも凄いわ」
呆然と見ていたリンディがそう呟いた。
封印した6個のジュエルシードを挟んでなのはとフェイトが対峙していた。
なのはは、少し考えた後、胸に手を当てて、はっきりと言った。
「友達に…………なりたいんだ…………」
その言葉に、フェイトは目を見開く。
2人は見つめ合う。
(それが、なのはの理由なのね………)
その様子を見ていた優花はそう思う。
そして、優花はこれ以上バイトを抜け出す訳にはいかないと思って翠屋に戻ろうとした。
だがその時、
「ッ!?」
優花は咄嗟に上空を見上げた。
かなり大きな魔力反応を感じたからだ。
「あんた達! 気を付けなさい! 何か来るわ!!」
優花が叫んだ直後、空から紫の雷が降り注いだ。
それに一番驚愕していたのはフェイト。
「………母さん!?」
続けて落ちてきた雷がフェイトに直撃する。
「ああっ! うわあああああああああっ!!」
悲鳴を上げるフェイト。
「フェイトちゃん!」
なのはが叫び近付こうとしたが、
「きゃあっ!?」
なのはは落ちてきた雷の衝撃に吹き飛ばされた。
海に落下していくフェイトを、人間形態になったアルフが受け止める。
アルフは、そのままジュエルシードに手を伸ばすが、
――ガキィ
目の前に転移してきたクロノのデバイスに止められた。
だが、
「邪魔ぁ………するなぁ!!」
「うわっ!?」
そのまま魔力弾を放ちクロノを吹き飛ばす。
アルフはジュエルシードに目をやる。
しかし、
「3つしかない!?」
アルフは吹き飛ばしたクロノを見る。
その手には3つのジュエルシードがあった。
「あっ!」
その3つは直ぐにデバイスに吸い込まれる。
「うううっ!」
アルフは怒りの形相でクロノを睨み付ける。
「うああああああああっ!!」
拳を振り上げ、魔力弾を海面に叩き付けた。
水しぶきが上がり、視界を塞ぐ。
水しぶきが収まり、なのはが目を開けたとき、そこにはフェイトもアルフも居なかった。
「あ………」
なのはは声を漏らした。
アースラにも同時に攻撃が加えられており、混乱に陥っていた。
「機能が回復するまで、対魔力防御。次弾に備えて」
リンディはそう指示し、
「それから、なのはさん、ユーノ君、クロノの回収…………それと、優花さんもね」
報告を受けたクロノは優花に向き直り、
「失礼ですが、アースラまでご同行願います」
そう優花に伝える。
それに対する優花の答えは、
「お断りよ」
「なっ!?」
にべもなく断った優花にクロノが驚愕する。
「な、何故!?」
思わず問い返すと、
「だって、今だって翠屋のバイトを殆ど勝手に抜け出してる状態なのよ。これ以上迷惑かける訳にはいかないじゃない」
優花の中の優先順位は、翠屋の手伝い>管理局の要請、なのであった。
「そう言う訳で、私は戻るから」
優花はそう言うと、バオハックモンをハックモンに退化させ、空間ゲートで高町家に送ると、続けてもう1つの空間ゲートを作り出す。
「ちょ、待った………!」
クロノは慌てて引き留めようとしたが、優花は構わずに空間ゲートを潜ってしまった。
「…………………………」
その場からいなくなった優花に、クロノは何とも言えない状態になるのだった。
リリカルなのは編第5話です。
海上のジュエルシード暴走編です。
はい、フェイトが苦労してた戦いを、優花はあっさりと片付けてしまいました。
優花の管理局への心象は、組織としては理解できるが、余り関わり合いになりたくない相手、って感じですかね?
まあ、優花に直接手を出しているわけではないので、最悪って程では無いです。
次回はなのはとフェイトの対決の予定だけど、優花が関わる所あるかな?
お楽しみに。