ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第2話 邂逅

 

 

 

 

【Side 武】

 

 

 

 

 

 

一体何が起こったのだろう………?

俺は目の前で起こった出来事を信じられずにいた。

柏木が要塞級に足で串刺しにされそうになり、麻倉が戦車級に食い殺されそうになった。

俺ならどちらかは助けられた。

だけど動けなかった。

どちらかを助け、どちらかを見捨てるという選択肢を、俺は選ぶことが出来なかった。

その所為で、どちらも見捨てるという最悪な選択肢を選んでしまいそうになった時、突如として弾丸の如く飛んできた人影が要塞級を殴り倒し、同時に数発の銃声と共に麻倉の不知火に群がっていた戦車級が弾け飛び、その倒れた不知火の腹部の上に黒コートを着た人影が立っていた。

黒コートの人影は、両手に大型の拳銃らしきものを握っている。

もしかしてアレで戦車級を倒したのだろうか?

いくら戦車級がBETAの中で小さい方に入るからって、拳銃なんかで倒せる相手じゃない筈なんだが?

って言うか、それ以前に何で人が要塞級を素手で殴り倒してるんだ。

いや、更にそれ以前に、何で人が弾丸の如く飛んできて、要塞級に衝突して、何事もなくスタッと着地してるんだ?

目の前で起こる非現実的な光景の中、更に非現実的な光景が目に飛び込んできた。

赤いドラゴンの様な怪獣と、身体の半分ぐらいが機械で出来た青い怪獣が現れたのだ。

赤い怪獣が首を上げると、いきなり超巨大な球体が現れてそれが高速で飛んでいってBETAを圧し潰すわ、青い怪獣の胸の装甲が開いて、何か口の様なものがついたミサイルが2発放たれたと思ったら、S-11を超える大爆発が起きてBETAを吹き飛ばした。

更に、見事なプロポーションの女性が、空を飛んでいて、その腰には黒い翼。

更には頭には捻じれた角らしきものが付いている。

それを見て、『元』の世界で創作物に出てくるサキュバスの様だとあり得ないことを考えていた。

続いて黒い鎧を纏った人型と、黒い鋼鉄の狼が現れ、黒い鋼鉄の狼が飛び立ったと思うと、全身の装甲が展開して無数のミサイルが放たれて一面を氷漬けにし、黒い人型が回転を始めたかと思うと、見る見る巨大な竜巻となり、BETAを巻き込みながら引き裂いて行った。

たった2体で、数百に及ぶBETAを瞬く間に減らしていく。

しかし、BETAの後続部隊が到着したか、レーダーで見る限り、千を超えるBETAが集まり始めた。

だが、

 

「コキュートスブレス!!」

 

「ガイアフォース!!」

 

半分は氷漬けになった後粉々になり、もう半分は赤い光の球体に飲み込まれて消し飛ばされた。

 

「……………………………………………………………………………」

 

もはや俺は言葉を発する事が出来なかった。

いや、俺だけではなく、伊隅大尉を始めとしたヴァルキリーズの面々も同様だ。

すると、要塞級を殴り倒した人影が、海岸沿い………

帝国軍が戦闘していた方を見た。

俺も釣られるままに視線を向けると、そっちからまた20体ほどの怪物たちがこのエリアに向かってきていた。

その光景に、俺は一瞬警戒しそうになったが、よく見ればその怪物達の背中には、人が乗っている事に気付いた。

すると、その怪物たちは先程BETAを殴り飛ばした人影の近くに降り立つ。

映像をズームさせると、お互いに笑い合っているのが見て取れた。

彼らの仲間なのだろうか?

彼らが互いに労いを終えたのか、こちらに向き直る。

 

『……………さて、聞こえているか? そこの戦術機部隊』

 

確認するように言葉を投げかけてきた。

集音マイクのお陰で人の声も聞き取れるが、ヴァルキリーズの誰一人としてその言葉に反応するものは居ない。

全員が唖然としているのだ。

 

『…………反応は無いが………聞こえているのか?』

 

その男が疑問の声を漏らす。

 

『えっと………聞こえてはいると思うよ? 戦術機の集音マイクなら、この距離の人の声も拾えるはずだし…………』

 

柏木がそう説明していた。

 

『ならいいんだが………………白銀 武という男は居るか?』

 

俺!?

何で俺の名前を!?

 

「………………白銀 武なら俺だ」

 

俺は少し迷ったが、彼らの言葉に応えることにした。

 

『白銀少佐!?』

 

伊隅大尉から驚愕の声が上がる。

だが、少なくとも彼らは柏木や麻倉を助けてくれた。

すぐに敵対する様な真似はしないだろうと考えての事だ。

 

『おっ、やっと答えたか。アンタが白銀 武か』

 

彼らは俺の不知火に向き直りながらそう言う。

 

「ああ…………まずは礼を言わせてくれ。柏木や麻倉を助けてくれて感謝する」

 

俺は一先ず礼を述べてみる。

相手の反応を見る為だ。

 

『別に礼を言われる事じゃない。俺達には俺達の目的があって介入しただけだ』

 

「………………………」

 

『目的』とやらは気になるが、彼らは2人を助けた事を笠に着て、無茶な要望を述べたりはしなかった。

 

「あんた達は何者なんだ?」

 

俺は一番気になっていた事を問いかけた。

 

『とりあえず、俺の名前は黒騎 大士。ここにいるメンバーの一応の代表者って事にしといてくれ。それで、俺達が何者なのかなんだが……………』

 

そこで黒騎 大士と名乗った男は言葉を濁す。

いや、如何説明したものかと迷っている感じか?

すると、そいつは顔を上げ、

 

『俺達はこの世界とは別の世界から来た』

 

『『『『『『『『『『はっ?』』』』』』』』』』

 

その言葉に、ヴァルキリーズの皆が素っ頓狂な声を漏らした。

何言ってんだコイツ?

と言いたげだ。

だけど、俺にはそれが満更出鱈目とは思えなかった。

俺自身が平行世界の人間でもあるし、何より彼らの周りにいる見た事も無い怪物達。

それに、BETAを生身で倒せる力もだ。

そんな事、普通の人間達には不可能。

 

『別の世界だと………!? そんなデタラメな………!』

 

伊隅大尉が反論しようとしたが、

 

「伊隅大尉!」

 

『白銀少佐!?』

 

俺は伊隅大尉を止める。

 

「ここは、俺に任せてください」

 

『………了解しました』

 

俺は彼らに意識を向け直し、

 

「………別の世界から、何でこの世界に来たんだ?」

 

俺はあえて別の世界云々の真偽には触れないようにした。

少なくとも、彼らが人智を超えた力を有しているのは紛れもない事実だ。

下手に機嫌を損ねれば、あっという間に全滅させられてしまう可能性だってある。

俺はコックピットの中で冷や汗を流しながら、一世一代の交渉に乗り出す。

 

『それは、とある『目的』の為だ』

 

「目的………?」

 

『ああ。その『目的』を達成しないと、俺達の世界が滅びるんでな』

 

「はっ………!?」

 

なんかいきなりスケールがデカいはなしになったんだが……………

 

「あ、あんた達の世界の滅びと、この世界にどんな関係が…………!?」

 

俺は思わず問い返してしまった。

 

『より正確に言えば、この世界の滅びの巻き添えで俺達の世界も滅びるって事なんだが』

 

「はぁっ!?」

 

この世界が滅びる!?

 

「そ、それはつまり、この世界のBETAが他の世界にも流れ出すって事か!?」

 

そう解釈した俺は聞き返すと、

 

『あ~………『滅び』っていうのは、そんな小さな事じゃねえよ』

 

若干呆れた様な声でそんな事を言いやがった。

BETAの侵攻が小さい事だって!?

 

『俺達が言う『滅び』っていうのは、『地球人類が滅亡する』とかそんな意味じゃ無い。この世界その物………宇宙丸々1つが消えるっていう意味だ』

 

「ッ…………!?」

 

この宇宙そのものが…………消える…………?

 

「そ、そんなの…………流石に信じられねえよ……………」

 

俺は思わずそう漏らす。

すると、

 

『まあ、そりゃそうだろうな』

 

そいつはあっけらかんと同意した。

 

『だから、俺達の話を一番聞いてくれそうな香月副司令を含めてより詳しく話をしたい。その話には、お前も同席してもらう』

 

「夕呼先生を!?」

 

そりゃ、俺よりかは理解してくれるかもしれないけど…………

 

「…………俺を指名した理由は?」

 

俺はそう問いかける。

何故名前を知っているのかとも聞きたかったが、なるべく質問数は減らした方がいいと思ったからだ。

 

『俺達の『目的』に対して、お前が重要なファクターを担っているからだな』

 

俺が重要なファクター?

 

「その『目的』と言うのは…………?」

 

俺はそう問いかける。

 

『それはこの場での発言は控えさせてもらう。お前の尊厳にかかわる事だし』

 

「は?」

 

世界の滅びを防ぐための『目的』が俺の尊厳にかかわる事って何だよ………?

いきなり話のレベルがガクンと下がった気がするんだが…………

 

『まあ、一先ず香月副司令との会談の場を設けて欲しい。話はそれからだ』

 

「………………………………」

 

その言葉に俺は迷う。

この得体の知れない人物たちを、はたして夕呼先生に会わせて良いものかどうか………

すると、

 

『こんな得体の知れない怪しい集団を香月副司令に会わせて良いかどうかで悩んでいるのなら、それは意味の無い事だ。もし俺達が香月副司令の命を狙うのなら、こんな回りくどいやり方はしない。直接横浜基地に行って、基地ごと全滅させた方が早いからな』

 

俺の考えを見透かすようにそう言う男。

最後に出てきた言葉は斜め上だったが。

 

「そ、そんな事簡単に出来る筈が…………」

 

『俺達なら出来る。それだけの『力』を持っているからな』

 

何の迷いも見せず、そう言い切った。

俺は、先程の戦場を見る。

そこには、一面氷漬けになった世界と、海岸線まで大地が吹き飛び、海水が流れ込んで入り江になって行く光景。

確かに、これだけの『力』があれば、横浜基地なんてひとたまりもないだろう。

 

「………………わかった。夕呼先生には俺から話をしてみる」

 

『白銀少佐!?』

 

俺の判断に、伊隅大尉が驚愕の声を上げる。

 

「この判断の責任は全て俺が負います。各機、直ちに輸送車両と共に横浜基地へ帰還を」

 

『『『『『『『『『『りょ、了解!』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

とりあえず思ったよりもスムーズに事が進んだ。

武も現実離れした光景を目にして半分放心状態だったのかね?

研究用にBETAを捕獲して横浜基地に護送する為の輸送車両に便乗して横浜基地まで連れて行ってもらうことになった。

まあ、怪しい集団を車内に入れる訳にはいかないので、輸送車両の屋根に一塊で乗っているが。

デジモン達を成長期に退化させ、世代固定グループはデジヴァイスにデジモンを入れると、再び武達は無言になったが。

そして約1日後。

 

「あんた達が別の世界からの来訪者?」

 

余りにもあっさりと香月副司令との面会が叶った。

俺は逆にその事に面食らっていた。

もうちょっと渋ると思ってたんだが………

傍らには、社 霞と思われる銀髪の少女もいる。

 

「…………随分とあっさり会ってくれましたね?」

 

俺がそう聞き返すと、

 

「そりゃこんな戦闘データを見せられたらね。伊隅達から提出されたデータじゃなかったら、一笑に付す所だったけど」

 

なるほど。

デジモン達の戦闘の記録データを見たわけか。

計らずとも、それが良い方向に働いたわけか。

 

「知ってるみたいだけど、私がこの国連軍横浜基地副司令の香月 夕呼よ。こっちは社 霞」

 

やはり霞だったな。

 

「俺は黒騎 大士。ここに居るメンバーの暫定代表だ。他のメンバーの自己紹介はおいおいで」

 

俺がそう言うと、

 

「それじゃあ、単刀直入に聞くけど、あなた達の『目的』は何? この世界が滅びると、あなた達の世界まで巻き添えになるって言うのは白銀から聞いたけど」

 

「それに答える前に確認したいんですけど、この会話は…………」

 

「心配しなくても記録してないわ。私の権限で監視も外してる。『別の世界からの来訪者』なんてイレギュラーな存在を公に出来るわけないでしょ」

 

なるほどね。

 

「じゃあ、まずこの世界が滅びる原因から話しますけど、そこに居る白銀 武が因果導体で同じ『時』をループしている事はもう承知の上で?」

 

「そんな事まで知ってるのね。勿論知っているわ。『前』の世界で因果導体から解放されたにも関わらず、何故かまた『時』をループしてるけど……………何の因果か、私と社もそれに巻き込まれたクチだしね」

 

「はい?」

 

俺は思わず素っ頓狂な声を漏らした。

香月副司令と霞もループした?

 

 

「あら? その事は知らなかったようね?」

 

香月副司令はしてやったりと言わんばかりの笑みを浮かべる。

 

「香月副司令達もループしたと?」

 

「ええ。だから『今回』は白銀に少佐の地位も与えたし、一定以上の信用もあるわ」

 

「なるほど…………」

 

武が『少佐』と呼ばれていたのにはそんな訳が…………

 

「で、この世界が滅びる原因に、その『時』のループが関係しています」

 

「へぇ……………」

 

香月副司令は興味深そうに目を細める。

 

「白銀 武がループする度、新たな平行世界が生まれます。自然な『時の流れ』の中でいくつもの平行世界が生まれますが、それは本来悪影響はありません。ですが、『同じ時』を繰り返してしまうと、その『同じ時』の中でイレギュラーな平行世界が生まれていきます」

 

「…………………ッ!」

 

香月副司令は何かに気付いたようにハッとなった。

 

「同じ『時』の中に存在できる世界の数には限りがあります。もしこのままループが繰り返され、その許容量を超えてしまえば、安定を保つために『世界の修正力』が働き、その原因となった世界を中心にいくつかの世界が消滅する事になります」

 

「そういう事……………」

 

香月副司令は今の説明で納得したのか、神妙な顔をする。

 

「ど、どういうことだよ…………?」

 

武は完全には理解できなかったのか聞き返してきた。

 

「白銀、話は後にして………! 今は一先ず、これ以上ループを繰り返せば世界が消滅する事になるかもしれないって事だけ頭に叩き込んどきなさい………!」

 

「えっ…………!?」

 

武はその言葉に動揺する。

 

「お、俺がループを繰り返すと世界が消滅する………!?」

 

武はショックを受けた様に絶望的な表情をする。

 

「そうなると、白銀を再び因果導体にした原因を探らないと………」

 

香月副司令が何やら考え始めたが、

 

「あ、『原因』なら既に分かっています」

 

「なんですって!?」

 

俺の言葉に香月副司令が食いつく。

 

「今回、武を因果導体にしたのは、御剣 冥夜、榊 千鶴、珠瀬 壬姫、彩峰 慧、鎧衣 美琴の5人です」

 

「何だって!?」

 

俺の言葉に武が声を上げる。

 

「207小隊の皆が俺を『因果導体』にしたって言うのか!?」

 

「ああ」

 

「一体なんで…………!?」

 

「何でも何も、理由は鑑 純夏がお前を『因果導体』にしたのと理由は一緒だ。『白銀 武に選ばれなかった』。それが理由だ。その5人には鑑 純夏程では無いが、因果導体を生み出す『力』はあった。でも、1人1人には武を因果導体にする『力』は無かったんだが、その5人が偶然にも同じ男に想いを寄せていた事が原因で、再び武を『因果導体』として時をループさせてしまったんだ」

 

「な、なんだよそれ……………純夏以外を選べば純夏が俺をループさせ、純夏を選べば純夏以外の5人が俺をループさせる………………そんなの、どうしようもねえじゃねえか!?」

 

武は打つ手なしと言わんばかりに頭を抱える。

 

「いや、別にその解決方法は簡単だろ?」

 

俺がそう言うと、

 

「本当か!? 如何すれば………!? 俺は如何すればいいんだ!?」

 

俺の肩をガッと掴みながら詰め寄る。

 

「その解決方法は…………」

 

「その解決方法は……!?」

 

俺の言葉を復唱する武。

 

「『ハーレム』だ」

 

「は…………………?」

 

俺の言葉に武は何言ってるんだコイツ?と言った表情をする。

 

「つまり、誰か一人を選ぶと『因果導体』になるって言うのなら、全員纏めてハーレムにすれば問題が無くなるだろう?」

 

「………………はぁああああああああああああああああああああああああっ!?!?!?」

 

驚愕の声を上げる武と、

 

「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」

 

本気で楽しそうに笑う香月副司令だった。

 

「ハ、ハーレムッ………!? 世界の消滅を止める為の方法がっ…………! ハーレムッ!?」

 

お腹を押さえながら本気で笑っている。

 

「こんな時に冗談を言ってる場合かっ!?」

 

武はそう叫ぶが、

 

「冗談じゃないんだなこれが」

 

俺はそう返す。

 

「プッ……ククク………! 白銀……! そいつの言ってることはっ………! 別に間違って無いわよ………! クククッ……!」

 

香月副司令は笑い交じりにそう言う。

 

「鑑とそれ以外の5人が原因だと言うのなら、確かにハーレムを作ってしまえば因果導体になる理由は無くなるわね………ププッ………!」

 

「笑いながら言わんでください!」

 

すると、

 

「ええ。でも真面目な話、因果導体から解放されるには、その6人が『あんたと結ばれて人生を終わらせる』。これが一番確実な方法ね」

 

「そ、そんなぁ…………」

 

武は情けない声を上げる。

 

「お前らの痴情の縺れが世界を危機に陥らせてるんだ。その責任を取ってハーレム作る位しろよ」

 

「お前っ……! 他人事だと思って………!」

 

「まあ、それでも不安だと言うのなら、ハーレムの手本ぐらいにはなってやる」

 

「は……………?」

 

俺の言葉に再び素っ頓狂な声を漏らす。

 

「俺は11人。そこに居るハジメは8人の恋人が居るぞ」

 

「はぁあああああああああああああああああああっ!?!?!?」

 

「話を戻すが、俺達の『目的』は白銀 武のハーレムエンドを目指す事。その為に障害に成り得るものの排除。これが目的だ」

 

「その『障害』にBETAは入っているのかしら?」

 

香月副司令がそう聞いてくる。

 

「月や火星のBETAまで相手にする気は無いが、地球上のハイヴ位は必要とあれば片付けてもいいと思ってる」

 

「なるほど、あくまで自分達の『世界』が滅びるから手を貸すのであって、慈善事業で『世界を救う』つもりは無いって事ね?」

 

「そう取って貰って構わない。俺達は『困っている人がいるなら無償で助けに行く』なんて殊勝な考えは持ち合わせちゃいないからな」

 

「なるほどね」

 

「信用できませんか?」

 

俺がそう確認すると、

 

「少なくとも、『無償で世界を救うためにやって来ました』なんて言うよりも、ずっと信用できることは確かね」

 

「そうですか」

 

「それよりも、私からも質問いいかしら?」

 

「何でしょう?」

 

「ずっと気になってたけど、あんた達の横にいるその生物は一体何?」

 

香月副司令は俺の横に居たドルモンに視線を向ける。

 

「ドルモン達は、デジモン………デジタルモンスターと呼ばれる生物です」

 

「デジタルモンスター…………デジタルな怪物?」

 

「俺達の世界では、一昔前に人工知性の研究で生み出された、コンピューターネットワーク上に存在する電子生命体でした。それが科学の発展と共にネットワークが拡大する事により、デジモン達も急速な拡大と進化をして、現実世界に実体化するまでに至ったんです」

 

「電子生命体が現実世界に実体化………? 俄には信じられないわね………」

 

「それはお互い様だと思いますよ? BETAとか戦術機とか、こっちの世界では創作物に出てくるようなものばかりですから」

 

「世界が違えば『常識』も違うって事?」

 

「そんな感じです。それで、デジモン達は、進化と呼ぶ成長を遂げます。デジタマ……タマゴから生まれ、幼年期、成長期、成熟期と言うように、成長していきます。このドルモン達は、成長期ですね。本来は長い時間をかけて進化していきますが、デジモンは人間と絆を結ぶ事で急激な進化を行うことが可能になります」

 

「それが戦場に出てきた時の怪物?」

 

「はい。ドルモンはドルグレモン………巨大な鉄球を放った紅い竜の様な怪物になります」

 

「ああ………あれね………っていうか、それ以前にアンタ要塞級を殴り倒してなかった?」

 

「あ、はい。俺自身も特殊な力を持っていてデジソウルっていうんですけど、これを使って身体能力を爆上げする事が出来るんです」

 

俺は拳にデジソウルを宿して見せる。

 

「ついでに言えば、ここにいるメンバーの大部分は大なり小なり特殊な力を持っています」

 

「……………脳がついて行かなくなりそうだけど………例えば?」

 

「魔法ですね」

 

「『魔法』…………これまたとんでもない言葉が出てきたわね…………あんた達の世界には、『魔法』まであるの?」

 

香月副司令は頭を押さえ始める。

 

「あ~、正確に言えば、『俺達』の世界には魔法は無い……というか、一般的にはありません。シャルロットやクラウディア、ユエ達の世界にはあります」

 

「……………どういう意味?」

 

「ここにいるメンバーは、同じ世界の出身ではありません。デジモンを除いても、4つの世界の混合パーティーです」

 

「……………ごめん。ちょっと待って……………頭痛くなってきた…………」

 

「ごゆっくり。気持ちは分かります」

 

暫く思考を整えた後、

 

「ふう………悪かったわね、話を折って…………続けて頂戴」

 

「では………俺やハジメ、タカト達の出身世界は地球………簡単に言えば、武の『元』の世界に近いな」

 

「『元』の世界!?」

 

「ああ。ただ、よく似てるってだけで違う世界だろうけど」

 

俺はそう答えると、

 

「それでユエ達は…………」

 

俺はそこからトータスへの召喚から始まり、ハルケギニア、リジアルへと、異世界に次々と召喚された事を話した。

 

「………………俺も相当だと思ってたけど、お前らも大概だな…………」

 

武が唖然としながらそう言って来た。

 

「…………………その『魔法』を証明できるの?」

 

「ええ。その為の手っ取り早い方法があります」

 

「何をする気?」

 

「鑑 純夏を元に戻します」

 

「ッ!? 出来るのか!? 純夏は脳髄の状態だぞ!?」

 

武が詰め寄る。

 

「可能だ。この世界の技術力では不可能かもしれない事をやってのける。これ以上無い証明になるだろう?」

 

「なら頼む!! 純夏を助けてくれ!!!」

 

必死な形相で武は頼み込んできた。

それだけ純夏の事が大切なんだろう。

その姿に俺は親近感を覚えた。

 

「そこまで言い切るのね…………なら、鑑を元に戻す前に、もう1つ疑問に答えてくれないかしら?」

 

「何か?」

 

俺が聞き返すと、

 

「何故あなた達は世界が滅ぼうとしている事を知る事が出来たの? 当たり前のように言っているけど、そんな事本来知る由もない筈よ」

 

香月副司令は、虚偽は許さないと言わんばかりの厳しい目付きで睨み付けてきながら、そう問いかけてきた。

 

「あ~…………その事ですか…………正直、今まで以上に信じられない理由なんですけど…………」

 

「今までも十分信じられない理由よ! いいから答えなさい!」

 

そう言われたので、

 

「じゃあ答えますけど…………それは………」

 

「それは!?」

 

「……………『神様』からの依頼です」

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」

 

超絶長い沈黙の後に、声が漏れた。

 

「いや、ですから『神様』からの依頼でこの世界に来たんです」

 

「…………………バカにしてるの?」

 

「そう言いたい気持ちは分かりますけど、本当に『神様』からの依頼なんですよ」

 

「仮に神様が居るとして、どうして神様は私達を助けてくれないのかしら?」

 

香月副司令がそう言うと、

 

「『神』は全てにおいて平等です。故に、『下界』の勢力のどちらかに味方する事はありません」

 

そう答えたのは葵だ。

 

「『神様』にとって、地球人類もBETAも変わらないって事?」

 

「端的に言えばそう言う事です。何より、神の掟において、神が下界に干渉する事は禁じられています」

 

「とってつけた様な理由ね」

 

香月副司令は胡散臭そうな表情をする。

すると、

 

「仕方ないか………」

 

葵は溜息を吐くと、

 

「では、これから『神』が存在する事を証明します」

 

「へぇ………どうするのかしら? この場に神様でも呼ぶ気?」

 

香月副司令が馬鹿にしたようにそう言うと、葵が淡い光に包まれ、

 

「「「ッ!?」」」

 

香月副司令、武、霞の3人が息を呑んだ。

葵が、蒼銀の髪に碧眼の瞳、真っ白な翼を持つ女神アルオイスとしてその場に顕現した。

 

「『…………私はアルオイス………運命の女神アルオイスです…………』」

 

「なっ……………!?」

 

「ッ……………!?」

 

「……………ッ!?」

 

3人は『神気』に当てられ、声も出ない様だ。

『神言』まで使っているので、その驚きは一押しだろう。

 

「『この私自身が………『神』の証明となりましょう…………』」

 

それは理屈ではなく魂に刻み込まれた本能。

目の前に居る存在が『格』の違う相手だという事を本能で理解してしまう。

アルオイスがそう告げると、元の葵の姿に戻る。

 

「……………はぁっ……はぁっ………!」

 

香月副司令は激しく息を吐いた。

 

「今ので信じてくれたかな?」

 

葵がそう問いかける。

 

「す、少なくとも、人智を超えた存在であることは理解したわ。それで、あなたが彼らにこの世界を救うように依頼した神様な訳?」

 

「依頼したのは上級神様だよ。『私』より、更に上に立つ『神』様だね」

 

「そ、そう………あなたより『上』なのね…………」

 

冷や汗を流しているのが良く分かるな。

 

「それじゃあ、さっき言った通り、鑑 純夏を元に戻してみせましょう」

 

俺はそう言った。

やるのは俺じゃないけどな。

 

 

 

 

 

俺達は場所を移動し、鑑 純夏の脳髄が入ったシリンダーのある部屋に案内された。

 

「これが鑑 純夏の脳髄よ。さて、ここからどうするのかしら?」

 

香月副司令が、この状態から何とか出来るなら何とかしてみろと言いたげだ。

 

「それじゃあ、白崎さん。頼む」

 

「は~い!」

 

俺の言葉で白崎さんが前に出る。

 

「あ、ユエ。再生させると同時に外に出したいから、〝空間魔法〟お願いね」

 

「ん。了解」

 

白崎さんの言葉でユエも歩み寄る。

 

「ん~と、魂はここにあるから〝再生魔法〟だけで十分だね。それじゃ、行くよ!」

白崎さんがシリンダーに手を触れると、〝再生魔法〟が発動し、シリンダーの中の脳髄が光を放つ。

 

「す、純夏………!」

 

武が光に目を庇いながら、何が起こっているのかと様子を窺おうとする。

しかし、その前に光が収まっていく。

それから、そこに『居る』少女の姿を見た時、

 

「す、純夏……………?」

 

武の目に、思わず涙がにじむ。

赤毛の少女、鑑 純夏がその場に座り込んでいた。

服まで再生させたのか、ちゃんと服も着ている。

武がフラフラと純夏に歩み寄る。

その時、

 

「…………………やる」

 

純夏が呟く。

 

「ころ……………る…………殺してやる…………皆殺しにしてやる…………」

 

怨嗟のように呟く純夏。

 

「こ、これは…………!」

 

「へぇ………………BETA」

 

武が驚愕し、香月副司令は興味深そうにそのキーワードを呟いた。

その瞬間、

 

「BETAっ!!」

 

純夏が激しく反応した。

 

「BETA殺す! 殺す殺す! 皆殺しにしてやる!」

 

「あの時と………一緒だ………00ユニットになったばかりの時と…………!」

 

「あ、ああっ………! いやぁあああああああああああああああああっ!?!?!?」

 

憎しみと悲しみが入り混じったような慟哭の叫び。

 

「純夏ッ!!」

 

武が純夏を抱きしめようとして、

 

「〝鎮魂〟っ!!」

 

淡いピンク色の光が純夏を包み込んだ。

すると、叫んでいた純夏が見る見る落ち着いていき、

 

「………………あ…………」

 

焦点の合わない視線を動かし、その視線が武を捉えた。

その瞬間、その目に光が戻る。

 

「タケル………ちゃん…………?」

 

「純夏………? 俺が………分かるか………?」

 

武がそう呟いた瞬間、

 

「タケルちゃん!!!」

 

思いっきり抱き着いた。

 

「純夏!!」

 

武も力強く純夏を抱きしめる。

 

「タケルちゃん! タケルちゃん! タケルちゃん!!」

 

「純夏っ……! 純夏ぁっ………!」

 

お互いの名を連呼する2人。

 

「ふう………良かったです」

 

純夏に〝魂魄魔法〟を使った人物、愛子先生がホッと息を吐く。

 

「……………………………………ちょっと席を外すわね」

 

香月副指令が部屋を出て自分の執務室に向かう。

その扉が閉まった時、

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………ふっざけんじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!! 魔法!? 物理法則や常識を根底から覆してんじゃないわよォォォぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

そんな叫びが響くのだった。

 

 

 

 

 





はい、デジタネイティヴ編第2話です。
今回は交渉からのいきなり純夏復活です。
いや、再生魔法で復活は簡単だろうし、精神も魂魄魔法で如何とでもなるし…………
武の苦悩は何だったんだろう?
って感じでシリアスブレイクでした。
さて、次回はどんなことになるんでしょうか?
お楽しみに。



P.S すみません。今週も時間が無いので返信はお休みです。


遊び半分でお聞きします。この章のラストは?

  • もちろん武ちゃんハーレムエンド
  • サブヒロイン位大士とハジメに……
  • 純夏と霞以外大士とハジメでいいんじゃ?
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