ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第6話 事務次官来訪

 

 

 

月読中尉達との一悶着があった翌日。

朝のPXで朝食を取っている。

ただ、この場に居るのは訓練兵だけで武はこの場には居なかった。

 

「鑑さん。武は何処行ったんだ?」

 

俺が純夏に訊ねると、

 

「タケルちゃんは、霞ちゃんが朝から呼びに来て夕呼先生の所に行ったみたいだよ」

 

そんな答えが返って来た。

 

「やっぱり少佐ともなると、色々やる事があるんですね~」

 

壬姫が尊敬する様な眼差しでそう言う。

そのまま世間話を続けていると、

 

「よう! 訓練兵ども!」

 

正規兵の服を着た男女の2人が声を掛けてきた。

 

「ッ! 敬礼!」

 

相手が少尉であることに気付いた千鶴が号令を掛ける。

俺達も一応それに習って敬礼をした。

 

「少尉殿、何か御用でしょうか?」

 

千鶴が代表して問いかける。

 

「訓練兵はこれで全員か?」

 

女の少尉が問いかけて来る。

 

「はい。これで全員です」

 

武はこの場に居ないが、『訓練兵』という立場なら、ここにいるので全員だ。

 

「だったらハンガーにある特別機………帝国軍の新型は誰のだ? お前らの中の誰か用だと聞いたが…………」

 

「……………私のです」

 

男の少尉の問いかけに、口を開く冥夜。

 

「ん? あれ………? お前の顔、何処かで…………」

 

「ああ……どうなってる? 何で武御雷(あんなもの)がここにあるんだ?」

 

俺は漸く思い出してきた。

そう言えば紫の武御雷がある事に、少尉達が絡んでくるイベントがあったか。

 

「……………………」

 

口を閉ざす冥夜。

そりゃ自分が忌子である将軍の双子の妹だから何て言えるわけがない。

 

「黙ってちゃ分からねえだろう? 訓練兵?」

 

態々『訓練兵』と呼び、自分達が上官だという事を意識させようとしているな。

 

「少尉殿」

 

口を閉ざす冥夜に変わり、千鶴が口を開く。

 

「何だ?」

 

「あの機体の存在がご迷惑をおかけしたのであればご質問は道理ですが、少尉個人のご興味であればご容赦ください」

 

千鶴は詮索しないで欲しいという事を遠回しに伝える。

 

「あぁ!? ハンガーをあいつが1つ占拠してるのは事実だろ? 整備兵もあいつの点検を行っている」

 

「ましてや特別仕様と来ればそこらの戦術機とはわけが違う」

 

「その事情を聞く権利が、俺達に無いと言いたいのか!?」

 

いや、無理矢理こじつけしているようにしか聞こえないが。

 

「恐れながら、少尉個人のご興味ならばご容赦願いたいと申し出ただけです」

 

「個人の興味だろうが何だろうが、教えろと言われた事には答えればいい。逆に答えられない事情がある方が問題なんじゃないのか?」

 

「そ、それは…………」

 

B分隊は、それぞれが特殊な事情持ちだからなぁ…………

 

「聞けばお前らは、何か訳ありの特別待遇らしいじゃねえか、そこんとこも説明しろよ」

 

あ~も~、こんな時に武は何処に行ったんだよ?

 

「……で、お前。あの機体は何なんだよ?」

 

再び冥夜に矛先を向ける少尉。

 

「…………ご容赦ください」

 

目を伏せ口を噤む冥夜。

しかし、そんな程度で相手は容赦しない。

 

「あのなぁ!! 困ったように目を背けりゃいいってもんじゃねえだろ!? てめぇそれでも軍人か!!」

 

「………く!」

 

思わず少尉を睨み付ける冥夜。

 

「……っつーと今度は睨み返すのか? ったく………何様だよ。お前はさっさと………」

 

男の少尉はそう言いながら冥夜の胸倉を掴むと、

 

「あ!?」

 

「俺達の質問に答えりゃいいんだよ! そうだろうが訓練兵!」

 

そう怒鳴り散らした。

…………………仕方ないか。

俺はそう思うと手を伸ばし、冥夜の胸倉を掴んでいた少尉の手首を掴んだ。

 

「アンタらこそ何様のつもりだ? 少尉殿」

 

「あ? 何だよこの手は?」

 

俺を睨み付ける男の少尉。

 

「タイシ!?」

 

「やめなさい黒騎! 命令よ!」

 

美琴と千鶴が叫ぶ。

 

「悪いが榊さん。俺も分隊長でそっちと立場的には同格だ。だから俺の権限でその命令は拒否させてもらう」

 

千鶴にそう言うと、少尉に向き直る。

 

「上官の下に対する命令権は、作戦行動を円滑に進める為のものであって、個人的な好奇心を満たす為のものでも、優越感を得る為のものでも無いと思っていたのですが?」

 

「………なんだと?」

 

「先程少尉は、個人的興味だろうが何だろうが、言われた事には答えればいいと仰いました。ですが、個人的興味に階級の権力を使えば、それは職権乱用に当たると思われますが?」

 

「貴様! 誰に口きいてるか分かってるんだろうな!?」

 

「少なくとも自分には、特別待遇を受けたり新型機を与えられた訓練兵を僻んで憂さ晴らしをしようとしているロクデナシの少尉殿と認識できますが?」

 

「ッ!」

 

そこまで言った所で男の少尉が拳を振り被って俺の顔面に殴りかかって来た。

軍人とは言え、普通の人間の拳の速度なんて今の俺には止まって見える。

躱すのは簡単だが、俺はあえて動かなかった。

俺の頬に拳が叩きこまれる。

 

「タイシッ!?」

 

それを見た冥夜が悲鳴に近い声を上げた。

しかし、

 

「うぐぁっ!?」

 

苦しみの声を上げたのは俺に殴りかかった少尉の方だった。

俺は微動だにしていない。

何故なら、今の俺はデジソウルで防御力も強化されている。

要は素手で鉄の塊に殴りかかったに等しい。

 

「おや? 如何されました少尉殿? もしや手を痛めてしまったので? 一介の訓練兵ごときに殴りかかって自分が怪我をしてしまうとは、訓練をサボってるんじゃないんですか?」

 

俺は煽る様に言葉を並べる。

 

「て、てめぇ………何しやがった!?」

 

少尉は立ち上がると、今度はローキックを放ってきた。

俺はそれを棒立ちで受け、

 

「~~~~~~ッ!?」

 

少尉が脛を抱えて悶絶した。

 

「自分の訓練不足を人の所為にしないで欲しいですね………訓練兵相手にイキがる前に、自分を鍛え直すべきでは?」

 

「な、何なんだでめぇは………?」

 

「少尉殿がさっき仰ったじゃないですか。ただの訓練兵ですよ」

 

「ふ、ふざけやがって………!」

 

その少尉はまだ懲りて無いのか、再び殴ろうと拳を握る。

俺はやれやれと思いつつ、その拳を受けようとして、

 

「そこまでなの!!」

 

幼い少女の声が響いた。

そちらを見れば、エメラルドグリーンの髪を持つ幼女が、腕を組みながら机の上に仁王立ちしていた。

 

「ミュウ…………」

 

俺はその幼女の名を呟く。

 

「ここは、訓練に疲れた兵士さん達が、おいしくご飯を食べて体を休める憩いの場なの!! 暴力沙汰はご法度なの!!」

 

「「ッ!?」」

 

ミュウの何とも言えない迫力に、男女の少尉達は気圧されている。

 

「な、何だこのガキ…………!」

 

気圧された事を認めたくないように、ミュウを睨み付ける少尉。

しかし、ミュウはそれに全く怯まない。

それもそのはず。

ミュウはハジメの娘であり、曲がりなりにも俺達と行動を共にしていた。

その上デジモン達との戦いにも何度も参加しており、今更普通の人間の凄み程度では、全く恐れなくなっていた。

 

「それにさっきから聞いてればふざけてるの! 結局お前達は、お姉ちゃんたちを脅して優越感に浸りたいだけなの!」

 

ズバッと言い切るミュウ。

少尉の額に青筋が浮かぶ。

 

「こ、このガキ、黙らせてや…………ッ!?」

 

しかし、そこでハッとなった。

何故なら、PXに居た他の兵士達から責められるような視線を向けられている事に気づいたからだ。

因みにミュウやクオンは、このPXでマスコット的存在として男女問わず人気が高まっている。

この視線も、ミュウのファンとなった兵士達が非難の目を向けているのだ。

 

「「うっ…………!?」」

 

更に極めつけが、

 

「…………………!」

 

俺の後ろからハジメが、『俺の娘に手を出したらどうなるか分かっているだろうな? あぁん?』という威圧を遠慮なくぶつけているのだ。

 

「うっ……ううっ……………い、行くぞ………!」

 

「あ………あぁ…………!」

 

2人は逃げるようにその場を立ち去って行った。

すると、

 

「うぉおおおおっ! 凄いぞミュウちゃん!」

 

「凄いわミュウちゃん! 勇気あるのね!」

 

「カッコ良かったわよ、ミュウちゃん!」

 

周りの兵士達が湧きたつ。

ミュウは誇らしげにぴょんと机から飛び降りた。

すると、今度はトトトッとクオンが駆け寄って来る。

 

「おとーさん………大丈夫だった………?」

 

俺を見上げながら心配そうな表情を向けて来る。

先程殴られた俺を見て不安に思ったんだろう。

 

「ははは、大丈夫さ。クオンも知ってるだろ? おとーさんは強いんだ。あんなのシュヴァリアの拳に比べたら、蚊が止まったようなもんさ」

 

俺はクオンに笑い掛けながら頭を撫でる。

それで安心したのか、クオンも笑みを浮かべた。

すると、

 

「タイシ………」

 

冥夜が頭を下げてきた。

 

「私の所為で…………其方を巻き込んでしまった。許すがよい…………」

 

冥夜は本当に申し訳なさそうな表情をしていた。

 

「気にするな。俺が勝手に首を突っ込んだだけだ」

 

俺がそう言うと、

 

「だが! その所為で其方は要らぬ暴力を…………!」

 

「言っただろ? あんなの蚊が止まったようなものだって………腫れても無いだろ?」

 

さっき言った事は比喩でも何でもなく、本当にその程度にしか感じなかったのだ。

俺は殴られた個所を見せて、怪我が無い事を確認させる。

 

「確かにそうかもしれんが…………」

 

「俺は俺の意志で、俺の感情に従って行動を起こした。その責任を、お前に押し付けるつもりはない」

 

「タイシ…………」

 

「…………メイヤ、これがタイシ」

 

エリスが口を開く。

 

「エリス………?」

 

「タイシはどんな時でも自分の意志で行動を起こす。その意志を誰かの所為にする事は無い」

 

「自分の意志で………」

 

冥夜は再び俺を見た。

 

「まあ、そう言う事だ」

 

俺は心配させないように笑い掛けると、

 

「ッ!?」

 

冥夜は顔を隠すように俯いてしまった。

そんなに似合わなかったか?

 

「「「「「じぃ~~~~~~」」」」」

 

なんか圧のある視線を感じる気がするが、気にしないでおこう。

 

 

 

 

あの後、流石に上官に逆らった事は事実だから、謹慎位は食らうかなと思っていたが、

 

「すまねえ大士!」

 

話を聞きつけてやって来た武に頭を下げられた。

 

「武御雷が搬入された時にこう言う事があるって分かっていたのに、失念してた………!」

 

武は悔しそうに拳を握りしめる。

 

「まあ、仕方ないと思うぞ? あの程度の小物なんか、記憶に留める価値も無いし………」

 

武は武でやる事あったんだろうし。

 

「けど、階級を持つ俺がいれば、もっと穏便に済ませる事が出来た筈だ………! すまない……!」

 

武は重ねて頭を下げた。

 

「別に気にして無いって。そもそも、未来を知ってるからって全部背負い込もうとするな。もっと仲間を頼ってもいいと思うぞ。事実、俺は大したことないと思ってるし」

 

「………………ああ」

 

武は頭を上げる。

 

「だが、せめてもの詫びに、俺の権限で今回の事は不問にする。その位はさせてくれ。元々少尉達の態度にも問題があった事だしな」

 

「いいのか?」

 

「冥夜が俺に請願してきたんだぞ。責任は自分にあるってな」

 

それを聞いて俺は溜息を吐いた。

 

「責任を押し付ける気は無いって言ったのにな…………」

 

「そう言うな。あいつも申し訳なく思ってるんだ」

 

武はそう言うと、部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

それから数日間戦術機の訓練を行ったある日の事。

 

「珠瀬が分隊長!?」

 

PXで冥夜が叫んだ。

簡単に言えば、明日国連事務次官がこの基地に来るのだが、その事務次官というのが壬姫の父親だ。

で、その父親と壬姫は手紙でやり取りしていたのだが、その中で父親が壬姫を分隊長だと勘違いしていき、引っ込みがつかなくなった状態のまま明日やって来てしまうという。

つーか、そもそも壬姫の父親も悪ノリしてるだけだったと思うんだが?

少なくとも、そう言うお偉いさんたちに情報が行って無いとは思えないし。

で、武も2度ある事は3度あると言わんばかりに『たまの一日分隊長』計画を遂行し始めた。

まあ、少佐である武がやる事ならと皆も納得し始めた。

納得するのかと突っ込みたくなったが。

 

 

 

 

で、事務次官来訪当日。

少佐である武は神宮司教官と一緒に事務次官に付き添う事になっている。

案内役は武の発案通り壬姫が行う事になった。

そして、

 

「こ、こちらが兵舎です!」

 

ガチガチに緊張している壬姫の案内で父親である事務次官が現れた。

 

「うむ、君達がたまの部下かね」

 

俺達は別の分隊だが、一緒になって紹介されている。

 

「………あんたもたま」

 

慧が呟く。

 

「ん?」

 

その呟きが聞こえたのか、事務次官が慧の方を向くと、

 

「たまパパ…………ヒゲ……………」

 

慧は呟きを続ける。

武は位置的に慧を止められない。

 

「し、私語を慎めぇっ!!」

 

壬姫がテンパりながら慧を指差し、叫んだ。

 

「………申し訳ありません。分・隊・長…………!」

 

何とか堪えたが、イラッと来たっぽいな。

 

「いいじゃないかたまぁ~。パパもっとたまが命令している所を見て見たいなぁ~」

 

その事務次官は壬姫にデレデレしてるし。

 

「そっ! そこのっ! 手が空いているのならトイレの掃除でもしろ~!!」

 

壬姫が指差した先に居たのは何故か霞。

いや、霞も『前』の記憶持ってるのに、何で来たんだ?

霞は頷いて歩いていく。

つーか、霞は一応正規兵扱いだから、立場的には訓練兵より上じゃね?

俺が霞を見送っていると、事務次官は千鶴に目を向けた。

 

「ん………君はさっきまで一緒に居た………」

 

「はい! 榊 千鶴訓練兵です!」

 

「連中の相手は疲れただろう。官僚体質の無能ばっかりだからねぇ」

 

「い……いえ! とんでもありません!」

 

まあ流石に下手な返事はできんわな。

 

「榊君もたまの部下だったんだね」

 

「はい。分隊長には毎日ご迷惑をおかけしています」

 

千鶴は当たり障りのない返事を返す。

だが、

 

「うんうん、知っているよ。父上に似て物分かりが悪くて頑固で融通が利かないらしいねぇ」

 

「ッ!?」

 

「あまりたまに迷惑ばかりかけないでくれたまえよ?」

 

「は……い………!」

 

千鶴は怒りに震えつつも、何とかそう返した。

次に美琴に視線を向ける。

 

「君は………」

 

「鎧衣 美琴訓練兵です!」

 

「ほほぉ、君かね。たまより『平坦』な鎧衣君とは」

 

容赦なく言われたその言葉に、美琴はショックを受け、

 

「そんな………酷いよ~~~~! 僕だって気にしてるのに~~~~~~~~~~!!!」

 

泣きながら走り去る美琴。

…………ショックなのは分かるが、持ち場を離れていいのか?

事務次官の標的は次の冥夜に向く。

 

「……ん、君は?」

 

「御剣冥夜訓練兵です!」

 

「……そうですか、あなたが」

 

「……?  私には、何もないのですか?」

 

「……死活問題ですので」

 

「……そうですか」

 

事務次官は下手なことは言わなかったが、逆に言えば、死活問題になるほどヤバい内容という事だな。

さらに次は純夏に視線が向く。

 

「君は……?」

 

「鑑 純夏訓練兵です!」

 

「ほほう。君が…………たまの最大のライバルという………」

 

「………はい?」

 

純夏は首を傾げる。

俺も内心首を傾げた。

ライバルって何だ?

 

「なんでも、知識方面は非常に優れている反面、体力面では小柄なたま以上にズタボロな頭でっかちらしいね」

 

「はわっ!?」

 

ビクつくたまに、純夏は鋭い目を向けた。

まあ、純夏は訓練開始から一月も経ってないからなぁ。

 

「知識も大事だが、軍人は体力が資本だ。たまを見習ってしっかりと鍛えねばいかんぞ」

 

「は………はい…………!」

 

純夏の頭に怒りマークが浮かんでいる様な気がした。

すると、遂に俺に視線が向いた。

 

「君は…………?」

 

「C分隊分隊長! 黒騎大士訓練兵であります!」

 

俺は背筋を伸ばしてそう言う。

 

「ふむ………君かね。10人以上もの女性をとっかえひっかえしているスケコマシ君は………」

 

………………壬姫は、葵と優花、アリス、エリス、シュヴァリアにカンナの6人しか知らない筈なんだがなぁ?

それだけでも大概だが。

俺は壬姫に視線を向けると、

 

「(ブンブンブンブンブン!!)」

 

物凄い勢いで首を横に振っていた。

多分事務次官が手紙の内容を大袈裟に言ってるんだろうな。

だけど、

 

「………………いやぁ、耳が痛いですねぇ。事実なので何も言えませんが」

 

実際に11人と付き合ってるからな。

 

「………………それと、何でも異世界からやって来たという頭のおかしい事も口にしているそうじゃないか?」

 

「まあ、それも事実ですしね」

 

「…………訓練兵とは言え、夢物語を語るのは感心せんな。BETAとの戦いは、そんな甘いものではないぞ…………!」

 

事務次官の目が、真面目になっている事に気づく。

 

「…………ご安心を。年明け頃までには、地球上のハイヴは全て潰すつもりですから」

 

「ッ!? あまり、大仰な事は口にしない事だ」

 

「大仰かどうかはその時になれば分かる事です…………!」

 

俺は不敵な笑みを浮かべた。

 

「…………………………」

 

僅かながら目を見開く事務次官。

そのまま次に行くかと思われたその時だった。

 

―――ヴィー! ヴィー! ヴィー!

 

突如として警報が鳴り響く。

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

突然の事に、全員が驚愕する。

すると、

『207衛士訓練隊に告ぐ。直ちに第2ブリーフィングルームに集合せよ。繰り返す、207衛士訓練隊に告ぐ。直ちに第2ブリーフィングルームに集合せよ』

 

香月副司令の声で放送が響く。

それを聞き、事務次官に避難するよう伝えると、俺達はブリーフィングルームに急いだ。

 

 

 

ブリーフィングルームに集合すると香月副司令が待っていた。

香月副司令が説明を始める。

 

「事故の発生は41分前の15時04分。エドワーズから那覇基地に向かっていたHSSTが、再突入の最終シーケンス直前で通信途絶。15時19分、国連軍GHQは状況を原因不明の機内事故により乗員 全員死亡と推定。同時に遠隔操作による突入角の変更を試みるも失敗。自爆コードも受け付けずハッキングも失敗。結果、現在HSSTはここ横浜基地に順調に落下中………というわけ」

 

「しかし、それだけで防衛基準体制2と言うのがよく分かりません。HSSTの墜落事故は過去に例が……」

 

香月副司令の説明に疑問を持った千鶴が口を挟む。

 

「確かに通常の手順で滑空降下してくるHSSTの運動エネルギー自体は大したものではないわ…けど事故機の航法システムをモニターしていて分かったことだけど……なぜか電離層を突破した後、フルブーストする様に設定されていたわ。しかも機体の耐熱限界ギリギリで……」

 

「フルブースト!? 加速するんですか!?」

 

「減速ではなく!?」

 

千鶴に続いて冥夜も驚愕の声を漏らす。

 

「加速よ。どういうつもりか知らないけれど、まともな航行プログラムでないことは確かね」

 

香月副司令の説明に、B分隊の面々は静まり返る。

 

「極めつけはカーゴの中身、爆薬が満載だそうよ。それも海上運送がセオリーのデリケートなやつがね」

 

「「「「「「ええっ!!」」」」」」

 

その言葉にB分隊は驚愕の声を上げた。

 

「香月副指令、被害予測は………?」

 

神宮司教官がそう聞くと、

 

「HSSTの速度は激突直前には音速の数倍まであがっているでしょうね。軍用装甲駆逐艦の耐熱耐弾装甲の強度をもってすれば………地面を最低20メートルはえぐるでしょうね…………更にカーゴに満載の爆薬が爆発すれば……」

 

「想像を絶する大破壊が………」

 

美琴が顔を青くしながら呟く。

 

「基地………壊滅」

 

慧が事実を口にする。

 

「加速? 爆薬? どうして………偶然………ですか………?」

 

そんな偶然があるわけない。

 

「さあどうかしらね? あちらの方がご存じなければ誰にも分からないわ」

 

香月副司令が出入り口の方を見ると、事務次官が入って来た所だった。

 

「えっ?」

 

壬姫が声を漏らす。

 

「おお、お邪魔でしたかな?」

 

「パパ!?」

 

「事務次官!? 何故避難なさらないのです!?」

 

壬姫と神宮司教官が驚愕の声を上げた。

 

「私の仕事はこの基地の視察でしてな………それに今の香月博士の説明を聞く限り何処にいようが安全ではない様だ」

 

「ですが!!」

 

「優れた兵器? システム? そのような物を見た所でこの基地の真価は見えますまい。大事なのは人。極東の絶対防衛線。国連の最前線である横浜基地の実力、ここでとくと拝見させてもらいます」

 

事務次官はそう言い切った。

 

「随分と仕事熱心なようで………」

 

「ささ、私に遠慮なさらずに」

 

事務次官は先を促した。

 

「説明を続けるわ。こちらでも対応するプランは立てたけど、その前に聞きたいわ。そこでさっきから余裕綽綽のあんた達? この状況を打破する手段は何かある?」

 

香月副司令の視線が俺達に向いた。

 

「夕呼!? 何言ってるの!?」

 

神宮司教官が叫ぶ。

 

「あら? 私は真面目に聞いてるのよ。こいつらは年明け頃までに地球上のハイヴ全てを潰すって言ったそうじゃない? それなら、この程度の危機を乗り切るなんて楽勝でしょ?」

 

「確かにこの子達は尋常じゃない力を持っているのはこの目で見たけど、それでも…………!」

 

「はいはい。言い争ってる時間は無いの。それで? 何か案はあるの?」

 

香月副司令が改めてそう聞いてきた。

すると、

 

「……………撃ち落とす」

 

ハジメが答えた。

 

「へぇ………やっぱりそう言う結論に行きつくんだ?」

 

香月副司令が予想通りと言わんばかりの笑みを浮かべる。

しかし、

 

「それよりも飛んでいって直接叩いた方が確実じゃろう?」

 

続いてティオが口を開く。

 

「え?」

 

「う~ん………その位なら何とか防げるかな」

 

白崎さんの〝聖絶〟なら確かに防げそうだな。

 

「余のブラックウォーグレイモンならば受け止める事も可能であろう」

 

シュヴァリアの発言に、俺も確かにと納得する。

 

「空間ゲートで別の場所に飛ばす」

 

優花とユエなら可能だな。

 

「因みに俺達限定だが耐えるという選択肢も存在する」

 

ついでに俺が口を開いた。

 

「………………とどのつまり?」

 

香月副司令が呆気にとられながら改めて聞き返してくると、

 

「「「「「「「「「「如何とでもなる」」」」」」」」」」

 

俺達は口を揃えてそう言った。

 

「あ、そう…………」

 

若干呆れながらそう零した。

 

「そもそも、その程度の威力で大騒ぎし過ぎなんだよ」

 

ハジメが面倒くさそうに言う。

 

「その程度………って、基地が壊滅する威力なんだよ!?」

 

美琴が叫ぶ。

 

「だからその位で慌てるなっての」

 

「俺達にとっては、山が吹っ飛ぶ位の威力は日常茶飯事だからなぁ………」

 

俺はハジメの意見に納得してしまう。

 

「………で? 結局どうするわけ?」

 

香月副司令の言葉に、

 

「基地の人間の安全も考えれば、ティオの案が妥当だろ?」

 

ウイングドラモンのスピードなら余裕で追いつけるだろうし。

 

「うむ、妾とドラコモンに任せるのじゃ」

 

ティオは自信を持ってそう頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

基地の屋上に俺達は出ていた。

 

「ほ、本当に大丈夫なんですか?」

 

壬姫が心配そうな表情を浮かべる。

 

「ああ。ティオとドラコモンなら間違いない」

 

ハジメがそう言い切る。

 

「フフフ………ご主人に頼られるのは、嬉しいのう」

 

ティオはハジメの言葉に喜んでいる様だ。

すると、

 

『目標、60秒後に電離層を突破!』

 

通信機から報告が来る。

それを聞くと、

 

「では往くぞ! ドラコモン!」

 

「うむ!」

 

ティオがDアークとカードを取り出す。

 

「カードスラッシュ!」

 

ティオがカードをDアークに通していくと、カードがブルーカードへと変わっていく。

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

Dアークの画面に文字が刻まれ、光を放つ。

 

「ドラコモン進化!」

 

その光を受けてドラコモンが進化する。

翼が大きく発達し、重力を遮断する鱗に包まれる。

身体も空中を飛ぶことに適したものへと進化し、背中には鋭い槍を背負った天竜型デジモンとなる。

それは、 

 

「ウイングドラモン!!」

 

大きな竜の姿となったウイングドラモンを、B分隊の面々が驚愕の表情を浮かべながら見上げた。

 

「これがデジモンの進化………話には聞いてたけど、実際に見るとやっぱり驚きね」

 

香月副司令はそう言うが、その表情は驚いているようには見えない。

すると、ウイングドラモンは宙に浮いて行き、ある程度の高さまで来ると、翼を広げ、一気に加速した。

かなり離れていたにも関わらず、飛行時の衝撃波が俺達まで届く。

そのウイングラモンは、あっという間に消えてしまった。

それから約1分後。

駆逐艦が消滅したとの報告が入った。

 

 

 

 

 

 







はい、マブラヴ リ:デジタネイティヴ編第6話です。
何だかんだで色々やらかしました。
はい、もう我慢できなくなりました。
自重無しです。
何に我慢できなくなったかはお察しください。
それでは次も頑張ります。



P.S 今日の返信はお休みします。
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