ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第9話 初出撃

 

 

ハンガーに集合するよう命令を受けた俺達は、小隊メンバーを集める為に声を掛けて回っていた。

俺は、集合メンバーの最後の1人である慧を探していると、ベランダで佇む慧を見つけた。

俺はベランダに出る扉を開けると、

 

「彩峰、ハンガーに集合だ。火器管制装置のマニュアル調整だってさ」

 

「……………」

 

慧は聞こえていないのか俯き続けている。

 

「彩峰……!」

 

俺は少し大きな声でもう一度声を掛けた。

すると、慧はゆっくりと振り返り、

 

「何?」

 

そう聞き返してきた。

 

「だからハンガーに集合だって」

 

俺はそう言うが、慧は思い詰めた表情をしている。

そして、その手には1通の封筒が握られていた。

 

「…………手紙か?」

 

「……………知ると……後悔するよ」

 

俺の言葉にそう返す慧。

 

「そういう言い方をするって事は、今回のクーデターに関係のある手紙か?」

 

「ッ」

 

慧は目を見開く。

 

「そんな分かり易い反応をするって事は図星か」

 

「………………」

 

慧は何も言わなかったが否定はしなかった。

 

「沈黙は肯定と受け取るぞ?」

 

「…………………」

 

慧はそれでも沈黙を続けた。

すると、

 

「………………スパイ容疑で報告する?」

 

そんな事を言って来た。

 

「そんな事しねーよ」

 

俺はそう答える。

 

「………どうして?」

 

「少なくとも、同じ小隊の仲間として、彩峰を信用しているからだな」

 

俺がそう言うと、慧は意外そうな表情をした。

そして、俺に封筒を差し出し、

 

「………読んで」

 

そう言って来た。

俺は封筒を受け取り、中にあった手紙を広げてその内容に目を通す。

内容は、言い回しが複雑すぎて1割も理解できなかったが、縦書きで書かれた内容の中に、横に読むと、彩峰慧という言葉が入っている事から、慧に対して何か大切な事を伝えようとしているのだけは分かった。

 

「…………これが最後の手紙となろう。君よ、願わくば幸多き未来を歩まん事を。津島 萩治」

 

俺が手紙を読み終えると、

 

「最後、名前が違う」

 

「って事は、偽名か」

 

「そう。その人の名前は………沙霧………沙霧 尚哉」

 

「なるほどね」

 

まあ、知っていたが。

 

「………驚かないの?」

 

「大騒ぎして欲しかったか?」

 

「…………」

 

慧は首を横に振る。

 

「…………知り合いか?」

 

「父さんの部下だった人。あの人は父さんを尊敬していたし、父さんもあの人をかわいがっていた」

 

「ふーん」

 

「…………光州(クアンジュ)作戦の悲劇………知ってる?」

 

「まあ、名前と公表されている内容ぐらいなら」

 

慧の父親の部隊が敵前逃亡した所為で国連軍事司令部が陥落し、それがBETAの日本侵攻の切っ掛けになったとも言われている事件だ。

 

「敵前逃亡なんて許されない……私も母さんも……その所為で全てを奪われた……」

 

慧は悲しそうな表情で続ける。

 

「あの人は光州作戦の前に負傷して内地送還になって………」

 

「そのお陰で難を逃れたって訳か」

 

「………最近、私に面会に来る人達が居る。父さんに世話になったとか、助けられたって言う大東亜連合軍の人達…………手紙はその人たちが持って来る。その人たちは父さんは悪くないっていう。民間人の避難と警護を優先して、司令部の即時移動命令を無視する事になってしまったんだ………って」

 

慧はそこで一度言葉を区切ると、

 

「『人は国の為に出来る事を為すべきである。そして国は人の為に出来る事を為すべきである』」

 

「それは………」

 

「父さんがよく言ってた言葉。失望はしたけど………その言葉には今も従える…………でも、私には軍の発表とその人たち………どっちの言ってることが正しいのかなんて………分からない。だから………もういいのに………後悔の綴られた手紙なんて欲しくない………だから開かない………だから読まない…………そう思ってた」

 

すると、慧は俺に向き直ると、

 

「だけど、昨日の黒騎の言葉で少し考えが変わった」

 

「ん?」

 

「黒騎、言ったよね? 世の中には正しいも間違いも無い。だから自分が後悔しない選択を選ぶって………」

 

「ああ」

 

俺は頷く。

 

「父さんの選択は、大東亜連合軍の人達からすれば正しかった…………だけど、軍から見ればそれは間違いだった…………だから父さんは責められた………」

 

「…………………」

 

「だけど、父さんはきっと後悔はしなかったと思う。父さんは、全部覚悟した上でこの選択を選んだ…………私や母さんに不幸が降りかかる事が分かってても…………私の知ってる父さんは、そういう人だから………だから、この最後の手紙だけは、読むことが出来た………」

 

慧は小さく微笑んだ。

 

「そうか…………」

 

俺はそう言うが、慧の目が再び下を向く。

 

「だから………もっと早く読めばよかった。そうしたら………少なくとも死ななかったかもしれない。あの人が……直接手を掛けた人たち……! もう………手遅れ………」

 

「……………」

 

慧は、後悔する様に顔を伏せる。

おそらく、千鶴に対する罪悪感で胸がいっぱいなんだろう。

今にも泣きそうな慧を見て、

 

「……………俺は、自己中心的な人間だ………だから、見ず知らずの人間が死んだとしても、今のお前ほど落ち込まないだろうし、今のお前の気持ちが分かるなんて無責任な事は言えない…………だけど、後悔する気持ちはよくわかる」

 

俺は、目の前で顔を伏せている慧の頭に手を置き、

 

「だから次は後悔しない様にしろ。どれだけ他者から責められてもいい。認められなくてもいい。自分を後悔させるな」

 

「黒騎…………」

 

「お前がどんな選択をしようと、それが俺の『大切』を傷付けない限り、俺はその選択を否定しない」

 

「だけど…………私の『手紙を読まなかった』っていう選択肢が、榊の父親を………」

 

「確かに、手紙を読んでいれば、クーデターを止められる可能性はあったかもしれない。だけど、クーデターを起こしたのは沙霧大尉の選択であり、お前じゃない」

 

「だけど、私があの人を止められていれば…………」

 

「過ぎてしまった『運命』は変えられない。だけど、これから起こる『運命』は変えられる」

 

「運命………?」

 

「ああ。運命を変える事は、とても難しい事だ。だけど、決して不可能じゃない。けど、少なくとも、そうやってふさぎ込んでるだけじゃ、変わる運命も変えられない」

 

「……………変えられるかな………? 私にも…………」

 

「それはお前次第だ」

 

「…………そこは絶対に出来ると言うべき」

 

「無責任な事は言わない性質なんでな」

 

「………………フフッ」

 

顔を上げた慧は笑みを見せた。

 

「ありがと………少し気が楽になったよ」

 

慧はそう言いながら歩き出し、すれ違い様に拳を俺の肩に当てた。

 

「ハンガーに集合でしょ? 行くよ」

 

慧が歩き出し、俺もその後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、207小隊に出撃命令が下りた。

任務内容は、将軍家の離城である塔ヶ島城の警備。

出撃メンバーは、前情報の通り207B分隊と俺とハジメ。

輸送車両で現地まで移動している最中、帝都でクーデター部隊と斯衛部隊との戦闘が始まったと知らされた。

現地に到着すると、交代で仮眠をとりつつ戦術機で警備を行っていた。

そして、ある時間になると、

 

『こちら、207EX』

 

通信が入った。

因みに207EXとは武のコールサインだ。

まあ、一時的に207小隊に組み込まれているという意味でEXと呼んでいるだけだろうが。

 

『俺はこれから周辺の哨戒に出る。バックアップを頼む』

 

『了解しました。たけるさん』

 

壬姫がそう返事をするが、

 

「…………20707より207EX。単独行動は危険性が高い。よって、俺も随伴する事を進言する」

 

俺はそれらしい理由を口にする。

 

『………こちら207EX。進言を承認する。2名で哨戒に出る』

 

「20707了解」

 

進言が通った事にホッとしつつ、俺は戦術機のコックピットから出る。

外は雪が降っており、気温も低いために息が白い。

それでも、強化装備のお陰で顔以外の体感温度には変わりがない。

俺は戦術機から降りて地面に着地すると、武も丁度戦術機から出た所だった。

因みに武の戦術機は吹雪ではなく不知火だ。

 

「なら、行くか」

 

武の言葉に俺は頷く。

武は、前の記憶を頼りに移動を始めた。

少し歩いて森の近くに来ると、パキリと枝を踏み折る音が聞こえた。

 

「来たっ………!」

 

緊張の面持ちになる。

 

「念のために不知火の暗視モニターにリンクを…………ッ!?」

 

その瞬間、武は息を呑んだ。

 

「ふ、2人じゃない!? ひぃふぅみぃ………10人以上!? それに明らかに人じゃない形も………!?」

 

武は記憶との人数が違う事に驚いている様だ。

銃を抜いて警戒を強める。

 

「207EXより207各機………もしもの時は援護を頼む」

 

武は通信で呼びかけると、

 

「止まれ!!」

 

銃を構えながら叫ぶ。

 

「手を頭の後ろに付けてゆっくりこちらに………!」

 

武が続けて警告を発しようとした時、青い疾風が駆け抜けた。

 

「なっ!?」

 

その青い影は瞬時に武の懐まで飛び込むと、武の銃を持つ手を掴み、そのまま投げ飛ばして武を地面に叩きつけた。

 

「ぐはっ!?」

 

強化装備を着ているので、ダメージはそれほどでも無いだろうが、一瞬で投げ飛ばされた武は混乱状態だ。

そして、青い影は武に追撃を加えようとしていたので、

 

「はい、ストップ」

 

その腕を掴んで止めた。

そして、

 

「落ち着けシャルロット。俺達だ」

 

俺は落ち着いた声でその青い影―――シャルロットに語り掛けた。

 

「…………タイシ?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、こっちは………」

 

シャルロットは地面に叩きつけた武を改めて見る。

 

「……………タケル?」

 

「いてて…………君は確か、大士の仲間の…………」

 

武もシャルロットを見て、見覚えがある事に気付いた。

シャルロットは武の上から退くと、

 

「ごめんなさい…………」

 

申し訳なさそうに謝った。

 

「い、いや、先に銃を向けたのはこっちだし………」

 

武はそう言って気にしていないという事を伝える。

 

「シャルロットがここに居るって事は………」

 

俺はシャルロットが飛び出してきた森の方を見つめると、そこには、

 

「タイシさん……」

 

「タイシ………」

 

「旦那様………」

 

エミリア、クラウディア、カトレア。

 

「黒騎君!」

 

愛子先生に、

 

「大士!」

 

タカト、ジェン、ルキ、リョウ。

それから皆のパートナーデジモン達だった。

 

 

 

 








マブラヴデジタネイティヴ編第9話です。
はい、今週も色々予定があり、余りかけませんでした。
短いですが、投稿します。
今回は彩峰フラグの強化と別行動組との合流でした。
次回は、何故彼らがここにいるのか………ですかね?
お楽しみに。


P.S すみません。今週も返信はお休みします。


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