【Side 三人称】
時は暫く遡る。
大士やハジメ達を中心とした横浜基地で活動するグループとは別に、この世界の日本の食糧事情を少しでも改善するため、愛子が農地を回って自身の持つ作農師の天職の力で生産性を向上させようとする為に分かれていたもう1つのグループ。
愛子を中心として、その護衛にシャルロットとディアナモン、カトレアとヴァロドゥルモン、ティファニア、エミリアとウォーグレイモン、クラウディアとメタルガルルモン、タカトとギルモン、ジェンとテリアモン、ルキとレナモン、リョウとサイバードラモン。
因みに実は共に来ていた浩介とファルコモンは、クーデターの時の為の榊首相救出の為に別行動だったりする。
早速行動を開始した愛子達だったが、最初はやはり中々信じては貰えなかった。
理由を話しても、怪訝な目で見られたり、バカにされたりした。
それでも愛子は何度も頼み込み、その姿勢に根負けしたのか、ある1人の農場主が愛子の言葉を受け入れたのだ。
まあ、その農場主も半信半疑………というより1:9程の割合で信じてなかったわけだが、その評価はすぐに覆った。
愛子はハジメの作った〝昇華魔法〟が付与されたアーティファクトで作農師の力を増幅されており、収穫が終わった農地を数日で再度収穫が出来るようにしてしまったのだ。
その話は瞬く間に広まり、次から次へと愛子の元に依頼が殺到した。
その為、この世界でも愛子は『豊穣の女神』として称えられることになる。
その話を聞いて、愛子は恥ずかしさで悶絶していたが。
農地訪問を繰り返し、12月に入ったある日の事。
愛子達の目の前には、収穫時期が過ぎている………というより、そもそも稲が育たない筈の冬の田んぼに、これでもかと言うほど稲穂を実らせる稲の群生。
「何度見ても凄い光景だね………」
その光景を眺めながら、タカトが呟く。
「うん………しかも、これが1週間もかかって無いって所がまた………ね」
ジェンも同意する様に頷く。
トータスの旅に殆ど関わっていないテイマーズの面々は、常識を覆す帰還者の力に戦いている。
「っていうか、冬に米が実ること自体異常でしょ………」
ルキは驚きを通り越して呆れている。
「まあ、食料が多い事に越したことは無いさ!」
リョウは結果オーライだと受け止めている。
愛子の前では、農地の主達が感謝を捧げるようにヘコヘコとしており、愛子はそれを恥ずかしそうに止めようとしていた。
すると、そんな愛子に向かって1人の人物が歩み寄ってきていた。
その人物は女性で、翠の長い髪を持ち、メガネをかけているが、目付きが鋭く、キツそうな性格のイメージを持たせる。
更にその女性は、斯衛の軍服の赤を着ていた。
「………失礼。其方が最近帝都で噂になっている『豊穣の女神』殿か?」
その女性は、愛子に向かって話しかけた。
「こ、斯衛軍ッ!?」
農地主達は慌てて平伏する。
愛子は一瞬ポカンとしていたが、
「え、えっと………自分から名乗った訳ではありませんが、そう呼ばれている事は間違いありませんが…………あなたは?」
愛子が聞き返すと、その女性は直立して敬礼すると、
「私は帝国斯衛軍所属の月読 真耶中尉だ。畏れ多くも征夷大将軍で在らせられる煌武院 悠陽殿下がそなたに興味を示し、お会いしたいと仰せだ。一緒に来てもらおう」
「ええっ!? 将軍様が!?」
愛子は驚く。
愛子は少し困るような仕草をした後、
「え、えっと………皆さんと一緒なら構いませんが………」
愛子はタカト達を見渡しながらそう言う。
「ふむ…………いいだろう。『豊穣の女神』には複数の人物の集まりだと聞いている。殿下は全員との面会をご希望だ。問題ない」
真耶と名乗った女性は頷く。
こうして愛子達は、帝都へと向かう事になった。
帝城へ連れて来られた愛子達は、謁見の間に通された。
謁見の間は、時代劇などでよく見る畳張りの部屋に、一段高い将軍の為の座所にすだれが降ろされている。
愛子達は、その部屋の畳の上で正座で待っていた。
流石にデジモン達の同席は許可されなかったが、この場にはシャルロットもいる上、エミリア、クラウディア、カトレアのデジヴァイスの中にはデジモン達が居り、デジモンに進化できるティファニアもいる。
安全上の問題は無かった。
やがて、すだれの向こうに人影が現れ、座所に座る様子が伺えた。
すると、
「征夷大将軍! 煌武院 悠陽殿下のおなーーーーりーーーーーー!!」
付き人の言葉で全員が平伏の体勢を取る。
すだれがするすると上がっていき、その姿が見えた。
その顔は、愛子達は知らないが、冥夜そっくりであり、髪型を合わせれば見分けがつかない程だ。
「…………面を上げてください」
悠陽の言葉で全員が頭を上げる。
「よくぞいらっしゃいました。『豊穣の女神』、畑山 愛子様」
「い、いえ! 自分から名乗っているわけではありませんので! 様付けなど……!」
基本的に一般人である愛子は将軍である悠陽の前に緊張しっぱなしだ。
「ですが、其方の行動が、我が国の食料事情の助けになっている事は事実。改めて感謝を……」
「ううっ…………」
愛子は畏れ多くてかなわなかった。
すると、
「ですが、農産物の成長促進に其方達が連れている未知の生物………少々腑に落ちない事も事実…………単刀直入に聞きます。其方たちは何者ですか?」
真剣な声色で悠陽は問いかけた。
「…………信じられない話ですが………私達は、この世界の人間ではありません。別の世界からやって来た人間です」
「別の世界だと!? 殿下の前で言うに事欠いて出鱈目を申すか!?」
悠陽の警護に当たっていた真耶が怒鳴る。
「信じられないのも無理はありません。ですが、誓って嘘は言っていません!」
愛子は真剣な表情でそういう。
「貴様! まだ………!」
真耶が更に怒鳴ろうとした時、
「月読」
悠陽が一声で真耶を諫める。
「出過ぎた真似をいたしました」
真耶は頭を下げて一歩下がる。
「確かに簡単に信じられる話ではありません…………ですが、あなた達の行いが、この世の理でも説明できないのもまた事実………そして何より、其方の眼は、嘘を言っている者がするそれではありません。わたくしは、其方の言葉を信じてみようと思います」
「あ、ありがとうございます!」
愛子は頭を下げる。
「其方達の話には、とても興味があります。後でゆっくりとお話しましょう」
悠陽はニッコリと笑みを浮かべながらそう言った。
「部屋を用意させます。暫く滞在なさってください」
謁見はこれで終わったが、愛子達は帝城に留まる事になった。
ここ数日で愛子達は空いた時間に悠陽と話す事になり、その中でデジモン達の事、シャルロット、クラウディア、カトレアが公爵令嬢だという事や、その3人とエミリア、ティファニアが同じ男性の恋人だという事、更にはその恋人の男性が大公の地位を持っている事などを話した。
そして、12月5日にそれは起こった。
沙霧大尉を中心とした軍事クーデターだ。
最初こそ議事堂を制圧し、帝城に背を向けていたクーデター軍だったが、歩兵部隊の一部が発砲。
即座に戦闘が開始されてしまった。
悠陽が停戦を呼びかけるも戦闘は止まらず、寧ろ激化していく。
その為、悠陽は帝都脱出を決意。
更に自分の脱出情報をリークさせ、自分を囮に戦闘を止める方法を取った。
鎧衣と呼ばれた男性の先導で、侍女長1人をお共に帝都を脱出しようとした悠陽だったが、そこで護衛を名乗り出たのが愛子達だった。
悠陽は愛子達を信用し、共に帝都を脱出するのだった。
【Side Out】
思わぬところでシャルロット達と合流した俺達。
だが、疑問がある。
「どうしてシャルロット達がここに………」
俺はそう零すが、ふと見るとメタルガルルモンの背中に2人の人影があった。
1人はそれなりに歳を取った女性。
あの人が侍女長だろう。
そして、もう1人一緒に居る女性が………
「……………へぇ、やっぱり冥夜にそっくりだな」
俺は思わずそう零した。
もう1人の女性は、冥夜そっくりだった。
この女の子が征夷大将軍で、冥夜の双子の姉、煌武院 悠陽なんだろう。
「…………めいや?」
悠陽殿下が呟く。
その時、
「後ろからコッソリと近付くのは趣味が悪いですよ、鎧衣課長?」
武がそう言った。
「おっと、気付いていたのかね」
武の後ろから気配を消して近付いてきた男性がいた。
武が鎧衣と言ったから、この人が美琴の父親の鎧衣課長なんだろう。
「まさかこの場所に君達が居るとは………いやはや流石香月博士と言うべきか」
「そっちこそ無茶しますね。こんな所まで護衛を付けずに将軍を連れて来るなんて」
「おや? 気付いていたのかね」
「鎧衣? その者は?」
武達の話の途中で、悠陽殿下が尋ねる。
「はっ! この者は横浜基地の香月副司令の部下で………」
「白銀 武少佐であります! かの征夷大将軍! 煌武院 悠陽殿下にお目にかかれて光栄であります!」
「横浜基地207訓練小隊所属、黒騎 大士訓練兵です」
武の名乗りに合わせて俺も敬礼しながら名乗る。
「……………クロキ?」
何故か悠陽殿下は武ではなく、俺の名に反応を示した。
悠陽殿下は何かを確認する様にクラウディアに目配せすると、クラウディアは肯定する様に頷く。
すると、俺の前に歩み寄ってきて、
「クラウディア達から話は伺っております。わたくしは日本帝国国務全権代行、征夷大将軍、煌武院 悠陽と申します。お会いできて光栄です。黒騎大公」
「んがっ!?」
俺は思わず変な声を出した。
「大公?」
武が首を傾げる。
「大公とは、貴族社会の最高位である公爵の更に上に位置する位だ。王から賜る最高の位であり、自国を持つ事も許されている」
クラウディアがそう説明した。
「え? つまりそれって……………」
「立場的にはユウヒ殿下とさほど変わりが無いという事だな」
「はぁああああああああっ!?!?」
クラウディアの言葉に、武が大層驚いている。
「お、お前………そんな偉い立場だったのか!?」
「いや、確かにリジアルでは大公の位を貰ったが、結局は名前だけだぞ? 特に治めている領地も無いし」
「ですが、大公の位を授けられるほどの功績を上げたのは間違いないと聞き及んでおります。であれば、礼儀は尽くさねばなりません」
なんか悠陽殿下に突っ込まれるし。
「…………好きにしてくれ」
もうなるようになれだ。
「そ、それで鎧衣課長。殿下がここにいるという事は………」
「もちろん決起部隊もその情報を掴んでいる」
「ですよね」
「ああ。自分が囮になって戦闘を止めたのか」
「聡いですね黒騎大公。その通りです」
「別に敬語使わなくてもいいですよ?」
「悠陽殿下と同格の方に、下手な言葉遣いをするわけには参りません」
「左様で………」
逆に疲れるんだけどな。
「そして、あなたを見込んでお願いがございます。悠陽殿下を横浜基地までお連れ下さい」
「俺? 確かに戦術機のコックピットの中が一番安全だろうって事は理解できるけど、操縦技術なら武の方が遥かに上だぞ。安全上なら武の方が………」
「いや、逆にそっちの方がいいかもしれない。殿下を乗せるという事は、無茶な機動が出来なくなる。戦力的には俺が殿下を乗せるより、大士が乗せた方が俺が自由に動けて良い」
「む、確かに………」
戦術機の機動では、武の方が遥かに分がある。
戦力的には俺が自由に動けるよりも、武の方が自由に動けた方が良いだろう。
「わかった。俺が乗せてくよ」
というより、メタルガルルモンに乗ってった方が更に安全………じゃないな。
この寒さだと全力飛行で凍える。
防寒のアーティファクトも個人専用で作ってあるし。
「では殿下……こちらへ」
俺は自分の吹雪に悠陽殿下を案内する。
因みに鎧衣課長は、やる事があると言ってさっさと行ってしまった。
シャルロット達も、残念ながら別行動だ。
相手は人間。
シャルロットやクラウディア達は未だしも、タカト達に人間の相手はさせたくない。
ただ、もうすぐ俺達の目的も最終段階に入るので、横浜基地に合流する様に伝えておいた。
吹雪のコックピットに戻ると、
「あ、おかえり」
ドルモンが出迎えた。
実はドルモンはずっと同行していたりする。
ハジメのアグモンも同様だ。
悠陽殿下も驚くと思ったんだが、
「黒騎大公。もしやこの者もデジモンですか?」
意外と冷静だった。
「あ、クラウディア達から聞いたんですか?」
「はい。松田殿達のデジモンとも触れ合う機会があったので」
「なるほど」
俺は言葉を交わしつつ、準備を進める。
簡易ハーネスを付け、酔い止めを飲んでもらう。
「感謝します。黒騎大公」
悠陽殿下にそう言われ、
「……………あの、悠陽殿下。その『黒騎大公』って言うの、やめません? さっきも言いましたが、俺の大公の位は名前だけみたいなものなんで。黒騎でも大士でも好きに呼んで構いませんので」
俺がそう言うと、
「そうですね…………」
悠陽殿下少し考える仕草を見せると、
「………では、其方もわたくしの事を名前でお呼びください。口調も砕けたもので構いません」
「いや、流石にそれは…………」
「そうでなければわたくしも止めませんよ? 黒騎大公」
「…………オーケー。分かったよ悠陽。これでいいか?」
俺は折れてそう呼ぶ。
「はい。構いません、大士様」
「様っ!?」
今までにない呼ばれ方でドキッとした。
いや、カトレアには多少そう呼ばれた時期があったか………
すぐに旦那様呼びになったから印象は薄いが。
やがて準備が完了したのか、通信で現状の説明、脱出ルートの確認、作戦説明が行われる。
厚木基地からの通信が途絶した事や、冷川料金所跡が最重要ポイントになる事などが伝えられる。
「この任務に携わる事は、国連軍の兵士であり日本人でもある我々にとってこの上ない名誉である。各自の奮闘を期待する……! 以上!」
そして、
「207戦術機甲小隊……全機発進!!」
「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」
戦術機が一斉に発進した。
はい、マブラヴ リ:デジタネイティヴ編第10話です。
コロナ過も終わり、上司の鮎掛けのお付き合いが再開して執筆時間が削れる削れる。
文章量的に物足りないかもしれませんが、暫くこの位が続くと思われます。
そして、仲間達と合流したと思ったら悠陽殿下だけ受け取って再び別行動。
流石にタカト達に人間の相手をさせようとは思わんので。
で、ここで登場したのは大士の大公設定。
大公なら悠陽とそう変わらない立場だよね?
って事で、こんな感じに。
因みに大士に大公設定を追加したのは、この辺で色々使えないかなーって思った事が切っ掛けだったり。
ってわけで、いきなり悠陽を呼び捨てで呼ぶことになった大士ですが…………?
次もお楽しみに。
………………悠陽は如何する?
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姉妹丼でいただきます
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いい加減にしろやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!