ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第13話 『運命』の分岐点

 

 

 

【Side 武】

 

 

 

 

『沙霧大尉に告ぐ。私は帝国斯衛軍第19独立警備小隊の月読中尉である』

 

月読中尉が通信で狭霧大尉に呼びかける。

沙霧大尉を説得する為に『謁見』の場を用意する為だ。

悠陽は先程と同じように大士の吹雪のコクピットに同乗している。

 

『私は帝国本土防衛軍帝都守備連隊沙霧大尉である………貴官らの熟慮の結果、聞かせていただこう』

 

沙霧大尉から応答が来る。

 

『この通信は貴官の要求に対する回答をする為ではない。殿下が直々に貴官に会って話される事を望まれている』

 

『……………それは事実か?』

 

『それは貴官が決める事だ。殿下のご要望……疑うも信ずるも貴官次第であろう』

 

『………………了解した。謁見の手筈を聞こう』

 

沙霧大尉が『謁見』を了承したことに、俺は一先ずホッとする。

『前』の世界とは違う流れになった事で、沙霧大尉が『謁見』を拒否するなんて言う最悪の状況に陥らないか心配していた事にならなかった事に安堵した。

それにしても、

 

「まさか、殿下が冥夜の替え玉作戦を断るなんて……………」

 

俺ではなく、大士の吹雪に乗せただけで、こんな変化が起こるとは予想外だった。

『前』と同じ流れなら、本物の殿下が直接説得に行っても大きな問題は無いんだろうけど………

俺は、以前の記憶を思い起こす。

米軍側が発砲したことで戦闘状態に陥ったが、最終的に207小隊と月読中尉の部隊には人的被害は無かった。

だけど、今回は殿下が直接出向くなんて大きな違いが起こっている。

何があってもおかしくない。

俺は、改めて気を引き締め直す事にした。

それぞれが『謁見』の為の配置に着く。

俺はその際、ハンター2………イルマ少尉のラプターの射線軸を遮るような配置を取った。

もちろん射線軸が取れないと文句が来たが、そこは色々理由を付けた上で少佐権限で黙らせた。

月読中尉の武御雷と、大士の吹雪が『謁見』の場所に到着すると、クーデター側の不知火が2機出てきて、月読中尉達の前に着地した。

こちらが指定した殿下が乗る大士の吹雪との距離は20m。

データに表示された大士の吹雪と沙霧大尉の不知火の距離は、20.21mを示していた。

つまり、こちらの指定した距離と、誤差が21cmしかない。

 

「ブーストジャンプからのダイレクトランディングで誤差21cm………相変わらずいい腕してるぜ沙霧大尉………!」

 

俺は、沙霧大尉の操縦技術に素直に感心した。

 

『1901より20707………大尉の準備が完了した………『謁見』を開始する!』

 

月読中尉が『謁見』の開始を告げる。

吹雪と不知火のコクピットのハッチが開き、殿下と沙霧大尉の姿が見えた。

 

『………殿下、拝謁の栄誉を賜り恐悦至極にございます。私は帝国本土防衛軍帝都防衛第1師団第1戦術機甲連隊所属沙霧 尚哉大尉であります』

 

『……面を上げるがよい。此度……このような形でそなたと顔を合わさねばならぬ事………真に遺憾です』

 

言葉のやりとりが始まる。

俺はそれを聞いていて思った。

やはり、殿下と冥夜は姉妹で繋がっているんだと。

何故なら、殿下の口から出る言葉は、『前』の世界で替え玉として沙霧大尉の前に立った冥夜の言葉とほぼ一緒だったのだから。

 

「殿下…………」

 

そして、今回のクーデターの発端が、極東での復権を望む米国の工作員の仕業であり、また、その米軍を容易く引き入れた仙台臨時政府こそが帝都を戦火に晒した張本人だという事を聞いた時も、

 

『…………そこまで………そこまで国を………民を………この煌武院 悠陽を想うのならば………何故そなたは……人を切ったのですか……!?』

 

『……………!』

 

その言葉を聞いた時、殿下の姿と、『前』の冥夜の姿が重なって見えた。

きっと、この後に出てくる言葉も冥夜と一緒なんだろう………

そして、それは同時にハンター2からの発砲の可能性が高い事も意味している。

俺は、レーダーに映るハンター2の光点の動きに注視し、

 

―――タァーンッ………………!

 

戦術機の集音マイクでも、僅かに聞き取れるぐらいの銃声が響いた。

 

「何だ…………?」

 

俺は、まだ遠くで戦闘を行っている所があると思ったのだが、それにしては今の銃声には違和感があった。

戦術機の突撃銃ならもっと重い音になる筈だ。

まるで今のは、遠くから狙撃したような………

そう思った瞬間、俺が見たのは、力無く崩れ落ちていく殿下の姿だった。

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

 

 

 

―――タァーンッ………………!

 

大士達の耳にも届いた僅かな銃声。

その瞬間、沙霧を説得していた悠陽の言葉が止まった。

 

「……………殿下?」

 

顔を伏せつつ話を聞いていた沙霧が、怪訝に思ったのか顔を上げた。

そして、沙霧のその目に映ったのは…………

夕日の着ている白い洋服の胸の部分に赤いシミが出来ており、そのシミが徐々に広がっていく光景だった。

これは、大士達が介入してしまった事で起きた不運。

追撃部隊の足止めの為に、葵達がデジモン達と共に戦闘に参加し、前と比べて足止めに残った部隊の被害は激減した。

しかし、それが原因で『前』の世界では死亡していた工作員が生き残り、ラプターのステルス性能を利用して行方を晦ませ、遠くから悠陽に対しスナイパーライフルによる狙撃を行ったのだ。

 

「ぁ…………………」

 

悠陽は僅かに声を漏らすと、その身体がぐらりと傾き、力無く倒れていく。

 

「悠陽っ!?!?」

 

「殿下ぁーーーーーっ!?!?」

 

大士と沙霧がほぼ同時に叫んだ。

 

『なっ!?』

 

それを見た武が、驚愕しつつも援護に向かおうとして、

 

―――ドォン!

 

『ぐあっ!?』

 

武の不知火の左肩が弾した。

 

『タケルちゃん!?』

 

純夏が思わず叫ぶ。

撃ったのはハンター2………イルマ・テスレフのラプターだった。

 

『ハンター2!? 何をしている!? 何故撃った!? ハンター2!!』

 

ウォーケンが通信で問いただすが返答は無い。

 

『ハンター2って………イルマ少尉がどうして……!?』

 

その言葉に壬姫が動揺する。

壬姫は、先程までの停戦時間の時にイルマと話す機会があり、交流を深めていたのだ。

そのイルマが突如発砲したことが壬姫には信じられなかった。

それどころか、武の不知火が被弾し、倒れた事で開けてしまった大士の吹雪への射線軸に、続けて放たれた弾丸が大士の吹雪のコクピット付近に直撃し、爆発させた。

その爆発の衝撃で倒れかかっていた悠陽は吹き飛ばされ、宙を舞う。

 

『黒騎っ……!?』

 

慧が目を見開きながらその名を叫び、

 

『殿下ぁっ!? 大士ぃっ!?』

 

冥夜の吹雪が叫びつつ全速で飛び出した。

 

『02! 待てッ! 御剣っ!!』

 

まりもが止めようと叫ぶが、冥夜はそのまま行ってしまう。

 

『…………………!』

 

ハジメは、何かに気付いたように目を細める。

次の瞬間、

 

「うぉおおおおおおっ! 悠陽ぃーーーーーっ!!」

 

爆煙を切り裂き、その中からドルモンが進化したドルガモンと、その頭に乗る、全身にデジソウルを纏った大士が飛び出した。

 

『『『『『『『『『『なっ!?』』』』』』』』』』

 

その光景に、ハジメ以外の全員が驚愕する。

 

「悠陽っ!!」

 

大士はドルガモンの頭から跳躍すると、吹き飛ばされていた悠陽を空中で横抱きに受け止め、大士はそのまま自分の足で雪に覆われた地面に着地する。

 

「悠陽っ………!」

 

大士は上半身を抱き上げたまま、すぐに悠陽の容態を確認する。

悠陽の胸の中央辺りに銃創があり、そこを中心に血のシミがどんどん広がっている。

息はある事から、心臓に直撃はしていない様だが出血が酷い。

おそらく大動脈や、それに近い太い血管を傷つけてしまったのだろう。

 

「く…………」

 

大士は苦い表情をする。

その時、冥夜の吹雪がやや乱暴に到着し、

 

「殿下っ!!」

 

吹雪のハッチが開き、冥夜が昇降ワイヤーで降りてくると、一目散に駆けてきた。

 

『ッ!? あの顔はっ………!』

 

沙霧が悠陽そっくりな冥夜の顔を見て目を見開く。

 

「殿下!」

 

冥夜が悠陽に呼びかける。

すると、その表情が一瞬動き、ゆっくりと瞼が開かれる。

 

「………冥夜…………そこに………居るのですか…………?」

 

悠陽の力無い言葉と共に、悠陽の手が求めるように宙を彷徨う。

 

「殿下………! はい……! ここに居ります………!」

 

冥夜はその手を両手でしっかりと握った。

すると、悠陽の表情が僅かに穏やかになる。

 

「………めい………ごほっ………!」

 

冥夜の名を口にしようとした所で悠陽が咳き込み、その口から血が溢れる。

 

「殿下!? お気を確かに! すぐに治療を………!」

 

冥夜は叫ぶが、悠陽はゆっくりと首を横に振った。

 

「よいのです…………自分の身体の事は………自分がよくわかります…………わたくしは………もう助からないでしょう……………」

 

「殿下っ………!? そのような事は…………!」

 

冥夜はそう言うが、悠陽の傷口からは血が止まらない。

それを見て、冥夜は悔いるように顔を伏せる。

 

「…………殿下…………! 申し訳ありませぬ…………!」

 

冥夜が口にしたのは謝罪の言葉だった。

 

「………何を謝るのです…………?」

 

力無く問い返す悠陽。

 

「あの時………私が無理にでも替え玉として志願していれば、このような事には…………!」

 

その言葉からは多大な後悔が伺える。

しかし、

 

「………………わたくしは…………これでよかったと思っています…………」

 

悠陽の口から零れたのは安堵の言葉であった。

 

「何故ですかっ!? 私が替え玉になっていれば……………!」

 

「そうなれば…………撃たれていたのはそなたでした…………」

 

悠陽は冥夜を見つめる。

その表情は、慈愛に満ちていた。

 

「殿下………?」

 

「死を目前にして………やっと…………やっと己の本当の気持ちに気づきました…………」

 

悠陽は片手を冥夜の顔に伸ばし、その頬に手を添える。

 

「ッ? 殿下…………?」

 

冥夜は一瞬驚く様に目を見開くも、その手を受け入れる。

 

「…………冥夜………………わたくしの…………………大切な妹………………」

 

「ッ!?」

 

その言葉に、冥夜は再び目を見開く。

 

「………………そなたを守る事が出来て……………………本当に良かった…………………」

 

そう言いながら微笑む悠陽。

それは間違いなく、妹を大切に思う姉の表情だった。

 

「……………殿下……………! いえ………………姉上………!」

 

冥夜は頬に添えられた手を握りしめ、涙を流しつつ悠陽を姉と呼んだ。

 

「ッ…………………!? わたくしを………………『姉』と呼んでくれるのですか…………?」

 

悠陽は意外そうにそう聞き返した。

 

「…………………あなたは………………私のたった1人の姉上だ……………! 幼少の頃より…………ずっと…………ずっとあなたの事を大切に思っておりました…………!」

 

冥夜も、ずっと心の内に秘めていた思いだろう言葉を口に出す。

 

「ッ…………! 冥夜……………!」

 

「姉上ッ………………!」

 

2人は互いに力一杯手を握り合う。

 

『妹…………? 姉……………? 殿下の…………? ッ!? 将軍家の忌児の風習っ!? もしや…………!』

 

沙霧も2人の関係に感づいたのか、驚愕の声を漏らす。

2人は堅く手を握り続ける。

しかし、徐々に悠陽の手から力が抜け始めた。

 

「ッ! 姉上っ!」

 

それに気付いた冥夜が悠陽に呼びかける。

 

「………………どうして………………?」

 

悠陽が呟いた。

 

「姉上………?」

 

「……どうしてもっと早く、己の心に素直にならなかったのでしょうか…………? もっと早く、そなたとこうして話していれば………………!」

 

悠陽は涙を流しつつ、後悔の言葉を零す。

 

「姉上…………! 私も同じです………! 将軍家のしきたりだと、己に言い聞かせ続け、己の心を偽っておりました………!」

 

冥夜も涙を流しながら同じ気持ちだと胸の内をさらけ出した。

 

「冥夜……………」

 

「姉上……………」

 

2人は見つめ合う。

すると、悠陽の顔が大士の方を向いた。

 

「…………大士様………そなたに感謝いたします……………大士様と話さなければ………わたくしはきっと、死を前にしても、心の内をさらけ出す事は出来なかったでしょう……………ほんの僅かでも…………冥夜と姉妹に戻れたのは…………大士様のお陰です…………」

 

「……………………」

 

大士は黙って悠陽を見つめる。

悠陽は大士に向かって微笑むと、再び冥夜に視線を戻る。

 

「………冥夜…………もし…………もし来世があるのなら…………その時は、そなたと普通の姉妹として………………」

 

「……………はい…………その時は、普通の姉妹として、一緒に……………」

 

その続きを口にする事はどちらもできなかった。

どちらも、今生の別れなど望んでいないからだ。

 

「………………いや…………嫌です姉上!! 死なないでください!!」

 

「…………冥夜…………」

 

冥夜はもう我慢が出来なかった。

 

「やっと……やっと姉上と姉妹になれたのに…………これでお別れなんて、絶対に嫌です!!」

 

冥夜は泣き喚くように叫ぶ。

 

「…………………冥夜…………わたくしも………わたくしも同じ気持ちです…………! 死にたくない…………! これからも………冥夜と一緒に……………!」

 

「姉上………!」

 

「冥夜………!」

 

2人は互いの思いを確認する様に顔を寄せ合う。

すると、

 

「……………………ふう。だったらそうするんだな」

 

大士は、どこか諦めた様な溜息を吐くと、そう口にする。

 

「………大士?」

 

「………大士様?」

 

2人は大士に視線を移す。

すると、大士は〝宝物庫〟から神水の試験管を取り出す。

大士が持っている最後の1本だ。

大士は右手で試験管を持つと親指で蓋を折って開けると、悠陽の口に添える。

 

「飲め」

 

大士はそれだけを言う。

 

「大士様………これは………?」

 

悠陽は思わず聞き返すが、

 

「いいから飲め」

 

「んむっ……?」

 

大士はやや強引に悠陽の口に試験管を突っ込んだ。

試験管を傾けて悠陽の口に神水を流し込んでいく。

悠陽は突然の事にビックリするも、大士の言葉に従い神水を飲み込んだ。

 

「大士………何を………?」

 

冥夜は大士の行動を怪訝に思う。

しかし、変化はすぐに訪れた。

先程まで胸の傷口から流れ続けていた血がピタリと止まった。

 

「えっ………?」

 

冥夜が声を漏らす。

 

「………………痛みが…………消えた………?」

 

悠陽が驚いたように身体を起こす。

そして、未だ血まみれの服の上から傷口があった場所に触れると、

 

「傷が…………塞がっている……………?」

 

信じられないと言わんばかりの声を漏らした。

すると、

 

「お~お~。最後の神水まで使っちまうなんて、大盤振る舞いじゃねえか!」

 

いつの間にか近くに来ていた吹雪のハッチが開き、ハジメが大士達を見下ろしながらそう言って来た。

 

「うっせ。それよりもハジメ………」

 

「安心しろ。もう補足してる」

 

ハジメの手には〝導越の羅針盤〟が握られており、その針はとある方向を指している。

するとハジメは〝宝物庫〟から〝クリスタルキー〟を取り出すと、自分の左側にゲートを作り出し、左腕を突っ込んだ。

そして、その左腕を引き抜くと、その手には米軍の強化服を着た1人の男が首根っこを掴まれて藻掻いていた。

 

「な、何が起こった!? ここは一体………!?」

 

男は訳が分からず混乱していたが、

 

「ハジメ、そいつか?」

 

大士が確認する様に問いかけると、

 

「ああ。将軍サマを狙撃した犯人だ」

 

「!?」

 

ハジメの言葉にその男は驚愕で目を見開く。

その男は、一瞬躊躇した後、歯を強くかみしめた。

 

「ぐふっ!?」

 

その直後、男は血を吐き出して息絶える。

 

「っと………奥歯に毒でも仕込んでたか………」

 

ハジメは男の様子を見てそう判断すると、〝宝物庫〟から液体の入った無針注射器を取り出し、男の首筋に撃ち込んだ。

直後に男の身体がビクリと震え、息を吹き返す。

 

「なっ………!?」

 

気付いた男はまるで信じられないと言わんばかりに目を見開いた。

すると、

 

「そう簡単に死ねると思うなよ?」

 

ハジメがその耳元で、ある意味死刑宣告……いや、それ以上とも思える言葉を囁く。

すると、ハジメは軽めの〝纏雷〟を発動させて男を気絶させた。

 

「これで一先ず一件落着か?」

 

ハジメが呟く。

イルマは米軍によって既に拘束されていた。

だが、

 

『うぉおおおおおおおおおおっ!!』

 

突如として米軍のラプターの1機が飛び出し、突撃銃を乱射しながら大士達の方に向かって来た。

 

『こうなれば、将軍だけでも………!』

 

弾丸が周辺に着弾しつつ、大士達に迫る。

 

「大士!!」

 

ドルガモンが大士達の前にその身を盾にして立ち塞がる。

ハジメの吹雪には弾丸が直撃し、大破するが、

 

「おっと………!」

 

ハジメは落ち着いてコクピットから飛び降り、狙撃犯を捕まえたまま地面に着地した。

やがて銃弾が止む。

成熟期のドルガモンでは戦術機の突撃銃に耐えきれず、ドルモンに退化してしまったが、その後ろに居た大士、冥夜、悠陽は無事だ。

 

「大丈夫か? ドルモン」

 

大士がドルモンに声を掛ける。

 

「うん。ちょっと痛かったけど、平気!」

 

ドルモンは立ち上がる。

 

『くそっ! 何なんだ貴様らは!?!?』

 

そのラプターの衛士は再び突撃銃を撃とうとしたが、ガキンという引き金を引く音だけで弾は発射されなかった。

 

『―――!?』

 

何故なら、

 

『………指揮官権限で武装をロックした。そして、たった今操作も受け付けないようにした。我が部隊にまで浸透していたとは………舐められたものだ』

 

ウォーケンが言葉通り指揮官権限でそのラプターの武装、及び操作をロックしたからであった。

 

『………………殺さんのか隊長? ロックなどせず撃てばよかったものを………放っておけば何をするか分からんぞ?』

 

そのラプターの衛士は脅すような口調でそう言うが、

 

『侮辱するな。私は米国人だ。クーデターを起こした連中とは違う………貴様を捌くのはアメリカの法と秩序だ…………話は法廷で聞く』

 

ウォーケンはそう言い放つ。

 

『…………………………』

 

その男は無言だったが、

 

『……………………悪いな……隊長』

 

その男はコクピットのパネルを操作すると、ウォーケンの網膜投影にアラートが表示された。

その内容は、

 

『ロックを解除した!? バカな! ラプターのシステムは機密中の機密だ! それを書き換えるなど………! そこまで根の深い話だというのか!?』

 

ウォーケンは驚愕で叫んだ。

工作員の男のラプターが動き出す。

 

『いかん! 奴を行かせるわけには………!』

 

ウォーケンは咄嗟に操縦桿を動かすが、ラプターは動かなかった。

 

『何ッ!? まさか! ロックを解除しただけではなく、システムが侵食されたというのか!?』

 

ウォーケンはまさかと言わんばかりの声を上げる。

 

『悪く思うなよ、ガキども………!』

 

工作員のラプターは突撃銃を乱射し、沙霧達の不知火を牽制しつつ、大士達に向かう。

 

『いかん! 殿下が………!』

 

沙霧は焦るが、牽制射撃が激しくカバーに入れない。

 

『このまま圧し潰してやる!!』

 

工作員は射撃で沙霧達を牽制するのに集中し、大士達を戦術機の巨体で圧し潰そうとしていた。

 

「姉上………!」

 

「冥夜………!」

 

冥夜と悠陽はひしっと抱き合う。

最期まで一緒にという意思表示なのだろう。

しかし、ハジメは涼しい顔だった。

何故なら、そのラプターが目前まで迫った時、

 

「オラァッ!!」

 

大士が跳躍し、デジソウルを纏った拳でラプターを殴り飛ばしたからだ。

 

『うぉおおおおおおおおおっ!?!?』

 

工作員は何が起きたのか分からず困惑の声を上げる。

ラプターは跳ね返されるように殴り飛ばされ、大士達から50m程先で倒れている。

 

『な、何が起こった………!?』

 

状況を理解できない工作員は声を上げる。

大士は地面に着地すると、その右手にデジソウルを宿らせつつ、

 

「さて、伝えられるなら今の内にお前らの飼い主に伝えておけ」

 

大士はそのラプターに向かって告げる。

 

「お前らが何を企んでようと、1ヶ月後には全て無意味に終わる……とな」

 

『な……何………?』

 

「1ヶ月後には、地球上の全てのハイヴが消え去っているからだ」

 

『そ、そんな事………出来る筈が………』

 

「信じられないか? なら、証明してやろう。お前の身をもってな………」

 

大士はそう告げると、Dアークを取り出す。

そして、

 

――ULTIMATE

  EVOLUTION――

 

Dアークの画面に、その文字が刻まれた。

 

「デジソウルチャージ! オーバードライブ!!」

 

大士は身体中に集約されたデジソウルをDアークに叩き込んだ。

Dアークから光の奔流が溢れ、ドルモンを包む。

 

「ドルモン進化!」

 

ドルモンの腕が分解され、灰銀の甲殻を持つ獣竜の腕として再構成される。

ドルモンの脚が分解され、灰銀の甲殻を持つ獣竜の脚として再構成される。

ドルモンの体が分解され、灰銀の甲殻を持つ獣竜の体として再構成される。

ドルモンの頭が分解され、灰銀の甲殻を持つ獣竜の頭として再構成される。

それは、灰銀の甲殻を持ち、青い翼膜の翼を持った獣竜であり、ドルモンの究極体としての姿。

 

「ドルゴラモン!!」

 

全長30mにもなるの灰銀の獣竜がその場に現れた。

 

『『『『『『『『『『「「ッ!?」」』』』』』』』』』』

 

その姿に、全員が絶句する。

 

『な、何だこの化け物はぁぁぁぁぁぁっ!?!?』

 

工作員が狼狽えながらラプターの突撃銃を乱射した。

 

「…………………」

 

それに対し、ドルゴラモンは静かに佇むだけだ。

まともに狙いも定められず乱射される弾丸は、多くは外れるものの、それでも何発かはドルゴラモンに当たっている。

しかし、その弾丸は全て、ドルゴラモンにかすり傷一つ負わせることは無かった。

やがて弾切れとなり、突撃銃は空しい音を響かせるだけとなる。

すると、ドルゴラモンは一歩踏み出した。

 

『く、来るな………!』

 

ドルゴラモンは、更にもう一歩踏み出す。

 

『来るなぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

工作員のラプターは背を向けてフルブーストで逃げ出す。

その速度は吹雪とは比べ物にならない。

 

『いかん! 奴を逃がしては………!』

 

ウォーケンが我に返り、動ける部隊に指示を出そうとして、それよりも早くドルゴラモンがそのラプターに追いつき、後から上半身を鷲掴みにしていた。

 

『な………何というスピード………』

 

正に目にも止まらぬ速さだった。

 

「ドルゴラモン………」

 

大士は静かに告げる。

すると、ドルゴラモンはそのラプターを空中に放り投げる。

 

『うぉおおおおおおおおおおおおおっ!?!?』

 

その男は悲鳴を上げるが、何とか制動を取った。

だが、その男の眼に映ったのは、口を開け、そこにエネルギーを集中しているドルゴラモンの姿。

 

『あ…………………』

 

男が声を漏らした瞬間、

 

「撃て……………」

 

「ドルディーン………!」

 

大士の言葉と共に、破壊の衝撃がレーザーの如く放たれた。

その一撃はラプターを衛士ごと塵も残さず消滅させ、そのまま天を貫き、雲を吹き飛ばして夜空に消える。

そして、その軌跡が消えた時、辺りには静寂だけが残るのだった。

 

 

 

 






はい、マブラヴ リ:デジタネイティヴ編第13話です。
こんな感じになりました。
悠陽が撃たれるとは誰が予想したでしょうか?
理由付けはあんなんでしたけど、納得できますかね?
そんで、悠陽を助ける為に最後の神水を使ってしまった大士です。
でもってラプターを殴り倒すわ、そのラプター相手にドルゴラモン顕現というオーバーキルにも程があるという言葉も生温い状況になるわです。
そして、公衆の面前で姉妹だと明かしてしまった悠陽と冥夜の行く末や如何に。
次も頑張ります。

………………悠陽は如何する?

  • 姉妹丼でいただきます
  • いい加減にしろやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
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