ウォーケン少佐の部隊に紛れ込んでいた工作員を、ドルゴラモンのドルディーンで塵も残さず消し飛ばした後。
『な………何だ………? これは……………』
ウォーケン少佐が戦慄の声を漏らす。
『モ、モンスター……………』
『ジャ、ジャパニーズはモンスターを手懐けているっていうのか………!?』
米軍の誰かが呟く。
俺は、冥夜と悠陽に振り返ると、2人も驚いた表情でドルゴラモンを見上げていた。
「大士………これは一体………?」
冥夜が疑問を零す。
「ドルモンが究極体に進化したドルゴラモンだ」
「究極体………? 進化…………?」
冥夜が首を傾げたので、
「簡単に言えば、ドルモン達はパートナーがいると強くなれるって事だ」
「い、いや、強くなるとは言うが………それにしても限度が………」
雲が吹き飛ばされ、満点の星空が映る夜空を見上げてそう零す冥夜。
その威力に驚いているのだろう。
「言っただろ? 地球上のBETAは全滅させるつもりだって」
「……………まさか…………本気………だったのか?」
「まさかも何も、俺達はずっと本気だったが?」
俺はそう言い返す。
「………………………」
冥夜は呆気にとられたように目を丸くしていた。
「それで? ここからどうするんだ?」
ドルゴラモンの出現で膠着状態になっている現状を、悠陽へ問いかける。
結構無茶振りかと自分でも思ったが、悠陽は立ち上がると前に出て、
「沙霧大尉。これ以上戦う気が無ければ、戦術機から降りなさい」
沙霧大尉の不知火にそう呼びかけた。
沙霧大尉の不知火の頭部が一度ドルゴラモンを見上げた後、跪くような体勢を取ると、コクピットのハッチが開く。
そして、そこから昇降ワイヤーを伝って沙霧大尉が降りて来た。
そのまま悠陽に歩み寄ると膝を着く。
「これ以上の争いは、最早無意味です。そして、今現在も争う将兵達を1人でも多く救えるのは、そなただけです………!」
「…………殿下。我が同士の処遇………くれぐれも宜しくお願いいたします」
沙霧大尉はそう言うと、頭を垂れた。
その後、通信で戦闘終了の合言葉らしい言葉を伝えると、クーデター部隊は一斉に武装解除した。
そこで、俺はふと慧の吹雪を見た。
その頭部のカメラは、沙霧大尉に向けられている。
その様子が、何か言いたげに感じた俺は、そちらに向き直り、
「…………言いたいことがあるなら、今の内に言った方が良いと思うぞ?」
そう呼びかけた。
すると、慧の吹雪が近くまで歩いて来て、コクピットのハッチが開く。
そして、慧が降りてくると、
「ッ!?」
沙霧大尉が驚愕の表情を浮かべた。
「…………尚哉………」
慧が沙霧大尉の名を呟く。
「慧………!? 君もこの部隊に………!」
慧は沙霧大尉の近くまで歩み寄ると、
「バカだよ………あんた…………何でこんな事……………」
慧は涙を潤ませながらそう呟く。
「慧……………」
沙霧大尉は目を伏せて何も言わない。
「………この者は………?」
悠陽が俺に伺うように問いかけて来る。
「彩峰 慧。あの彩峰中将の娘だ」
「ッ!」
悠陽が目を見開く。
沙霧大尉と慧の関係に察しがついたんだろう。
俺は、そこで口を開いた。
「………………さっきの話を聞いていて、ふと思った事がある」
冥夜、悠陽、慧、沙霧大尉の視線が俺に向く。
「このクーデターには米国の思惑が絡んでいると言っていた。それは即ち、沙霧大尉が先導しなくても、このクーデターは起こっていた可能性が高い」
「大士………?」
慧が俺を見る。
「もし迷惑を全く考えない奴が頭になってクーデターを起こしていたら、もっとややこしい事態になっていたかもしれない。あんたはそれを防ぐ為に、自分がクーデターを主導する立場になった。クーデターをコントロールし、日本にとって一番被害が少なく、工作員を炙り出せる状況を作るために……………っていうのが、今俺が思った当てずっぽうだ」
俺が沙霧大尉の顔を疑うと、沙霧大尉は目を伏せたまま何も言わない。
「尚哉………!」
慧が確かめるように沙霧大尉を見る。
「………………我は外道。それ以上でもそれ以下でもない」
沙霧大尉は否定も肯定もしなかった。
「そうか…………言った通り俺の当てずっぽうだ。正解だろうが不正解だろうがどっちでもいい」
俺はそのまま背を向けようとした。
だがその時、もう1機の吹雪が近付いてきた。
それは千鶴の吹雪だ。
「………………」
千鶴が無言で降りて来る。
そして、沙霧大尉を何か言いたげに睨み付けた。
「榊…………」
「ッ!?」
慧が苗字を呟いた事で沙霧大尉も察したように目を見開いた。
「あなたが………父を………!」
千鶴は我慢する様に拳を握りしめる。
「榊………という事は、彼女はもしや榊首相の………?」
「はい、娘です。姉上」
悠陽の言葉に冥夜が頷く。
「なんという………此度の件に只ならぬ因縁のある者ばかり………」
悠陽は表情こそ平静を保っているが、悲痛そうな声を漏らした。
沙霧大尉は千鶴を見つめると、
「そうか………君は榊 是親の……………」
悟った様に目を伏せた。
それから目を開くと、
「…………………榊 是親は生きている」
「えっ……!?」
そう口にした。
その言葉に、冥夜や悠陽も驚きの表情を見せる。
「見逃したわけではない。私が是親を斬ろうとした時、是親の護衛を名乗る男に邪魔をされた。その後は今でも信じられぬが………八咫烏と共に飛び去り、行方知れずだ………」
沙霧大尉がそう告げる。
「八咫烏って………そんなデタラメな理由で言い逃れようとするなんて………」
沙霧大尉の言葉を言い逃れと判断した千鶴が食って掛かろうとする。
その瞬間、周辺を強風が襲った。
「きゃっ!?」
「くっ!?」
突然の風に声を上げる面々。
風に耐えながら目を開くと、そこには黒い翼を大きく広げた巨大な鳥のシルエット。
脚が3本あるその影はまさしく、
「や、八咫烏………!」
沙霧大尉が声を上げる。
「姉上!」
冥夜が悠陽を庇う仕草をした。
だが、
「安心しろ」
俺はそう呼びかける。
「大士?」
「………仲間だ」
俺がそう言った時、目の前に巨大な八咫烏………ヤタガラモンが着地する。
米軍の戦術機は思わず突撃銃を構えていたが、ヤタガラモンは意に介してはいない。
すると、その背中から1つの影が飛び降りた。
それは1人の人間を肩に担いだ黒い服を纏った男。
即ち遠藤だった。
そして、遠藤が担いでいた人間とは、
「失礼した、榊首相」
「やれやれ……心臓に悪い…………しかし、感謝はしておこう。アビスゲート卿」
「フッ………礼など不要」
榊首相を降ろした遠藤は、前髪を掻き上げる様な仕草をしながら不敵な笑みと共にそう言った。
俺はそれを見て、大分深い所まで入ってるなぁ、と思った。
榊首相は、まず千鶴に歩み寄ると、その頭に手を置き、
「心配をかけたな………」
「あっ…………」
その仕草に、千鶴は我慢できずに涙を溢れさせた。
それから悠陽の前まで歩いていくと、
「殿下………ご無事で何よりです」
「そなたこそ………生きていた事を嬉しく思います」
言葉を交わす2人。
それを遠目に見つつ、
「遠藤、ご苦労さん」
俺は遠藤に労いの言葉を掛ける。
「フッ、吾輩にかかれば容易い事」
再びフッと前髪を後ろに流すような仕草をしながらそう言う。
「………………何時まで深淵卿になってるつもりなんだ?」
俺がそう聞くと、
「……………………」
遠藤は無言でサングラスを外し、
「………………うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?!?!?」
顔を両手で覆い、奇声を上げながら雪の上を転げまわった。
どうやら正気(?)を取り戻したことで、羞恥心が限界を超えた様だ。
「ど、どうしたというのだ!?」
奇声に驚いた冥夜が駆け寄って来る。
「あ~、気にするな。ちょっと正気を取り戻して自分の行動の恥ずかしさに耐えきれなくなっただけだ」
俺はそう言った。
「???」
冥夜は首を傾げていたが、一先ず、これにてクーデターは収束を迎える事になる。
その後、悠陽の見送りやら何やらで事後処理が終わった後、
「かなり派手にやってくれたわねぇ~」
香月博士が面白そうな笑みを浮かべてそう言った。
ここは横浜基地の地下にある香月博士の執務室。
俺とハジメ、武で香月博士の元を訪れていた。
「殿下が撃たれた時は、どうなるかと思いましたよ」
武は苦笑いでそういう。
「まさか、黒騎達が関わる事で、ここまで大きく事態が変わる事は予想外だったわ」
「責任とって悠陽を助けたんだから勘弁してくれ」
俺はそう言う。
「まあいいわ。それでこの次なんだけど………」
「あいつらの任官ですね?」
「そうなんだけど、B分隊はA-01に入れるとして、あんた達は如何する?」
香月博士がそう聞いてきた。
「俺は目当てだった戦術機の動かし方は覚えたし、約束の吹雪2機の改造を始めたいんだが?」
ハジメがワクワクしているのを隠さずにそう言った。
因みにB分隊が任官する時に、練習機である吹雪2機を譲ってもらえるよう交渉済みだったりする。
「まあ、俺としても、これ以上兵士である必要は無いな」
あとやる事と言えば、トライアル中にBETAを放ったときに、被害が少なくなるように動く事位だし。
それが終われば、いよいよハイヴ殲滅に入る予定だ。
「ところで武。今の所、『前』と比べてB分隊の皆との仲は変わりないか?」
俺がそう聞くと、
「ん~? 何となくだけど、前と比べて冥夜と彩峰の2人と関わる事が少ないような気がするかな?」
武は自信無さげにそう言った。
「そうか…………」
まあ、こいつの事だから、何かきっかけがあれば速攻で落とすだろ。
俺はそう思っていた。
それがあんなことになろうとは、今の俺には知る由もないのだった。
【Side 三人称】
―――某国 某所
とある薄暗い部屋の中で、複数人の人間による密会が行われていた。
その彼らの前にあるスクリーンに映し出されているのは、ドルゴラモンがラプターを消し飛ばす瞬間の映像だった。
「まさか、横浜の女狐がこのようなモンスターを飼いならしていたとは………」
1人が神妙に呟く。
「おい! これは本当にあった事なのか!? 合成映像では!?」
また一人が叫ぶ。
「米軍、国連軍、帝国軍………全ての軍の諜報員から同じ記録映像が送られてきている。ほぼ間違いないだろう………」
「……………横浜の女狐は何と?」
「異世界からの協力者などと宣って、追及を逃れようとしております」
「だが、このモンスターの力は到底看過出来るものではない。報告の通り、地球上のハイヴを全て破壊出来る可能性も………!」
「もしそんな事になれば、BETAから解放された地球の主導権は横浜の女狐が握る事に………」
「それはならんぞ! 戦後の世界の主導者は我々でなければ………!」
「しかし、あれ程の力を持つモンスターは、G弾でも使わない限り………」
数々の言葉が飛び交う。
そんな中、
「……………私に妙案があります」
1人の男がそう発言した。
「妙案とは?」
「あれ程の『力』、排除するには惜しくありませんか?」
その言葉に、それは確かに等の同意する声が漏れる。
「そして、あのモンスターを直接操っているのは横浜の女狐ではなく、訓練兵に扮したあの男」
映像が拡大され、大士の顔が映し出される。
「この者を我々の陣営に引き入れれば、あのモンスターも我々の物という訳です」
「確かにそうだが、その男は我々に従うのかね?」
「そこもご安心を。この男には、『娘』がいるようです」
別ウインドウにクオンが映し出された。
「親子仲も良好の様子。つまり、この娘を人質にすれば、我々に従う他ありません」
「なるほど! よい考えだ! 直ちに指示を………!」
「既に手配済みです。好機があれば、即座に行動に移すよう指示しています」
その男は怪しく目を光らせた。
その後も、怪しい密会は続くのだった。
はい、マブラヴ リ:デジタネイティヴ編第14話です。
短いですがご勘弁を。
とりあえず今回は幕間みたいな感じです。
最後にはなんか怪しい人達が怪しい動きを………?
次回もお楽しみに。
………………悠陽は如何する?
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姉妹丼でいただきます
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いい加減にしろやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!