「………………と、言う訳で、冥夜、慧、ハルの3人が恋人になった」
俺は、11人の恋人達の前で、冥夜と慧、ハルの3人が新しく恋人になった事を報告した。
「は~い」
葵があっさりと返事をする。
というか、誰も一切文句を言わない。
「……………自分で言うのも何だが………何も言わないのか?」
俺がそう聞くと、
「タイシの恋人になると決めた時点で、こういうことは覚悟してるわよ」
「納得できなきゃタイシの恋人になる資格は無い………」
アリスとエリスがそう言う。
「………………………」
俺は何とも言えない。
すると、
「あのぅ………」
テファが遠慮がちに手を上げると、
「メイヤさん達が恋人になる事はいいんだけど…………その………例の件は大丈夫なの?」
そう問いかけてきた。
「その点については心配ないと思うよ」
そう答えたのは葵だ。
「白銀君をループさせてた原因は、あくまで彼女達が白銀君に対して愛情を持ってて、それに対する強い後悔を持ってたから。だから、彼女達が大士を好きになっちゃえば、そもそも白銀君をループさせる原因が取り除かれちゃうから問題無いよ」
そう説明した。
「そうなんですか………」
テファがホッと息を吐く。
「…………? 何の話なのだ?」
冥夜が首を傾げる。
「……………そうだな。話しておくべきか」
俺は冥夜達に、俺達がこの世界に来る経緯を話す事にした。
「…………その………つまり大士達は、上級神様というお方から世界の危機を知らされ、その原因となるこの世界へと来た……………」
「…………その原因が鑑と、私達207B分隊…………」
「私としては、白銀が同じ時間を何度もループしてるって事の方が驚きだけどね」
ハルはともかく、自分達が世界滅亡の原因となっている事に、冥夜と慧はショックを受けた様だ。
因みに、神様の存在に関しては、葵がアルオイスの姿を見せて信じさせた。
「まあ、当初の予定では、武のハーレム作って問題解決しようと思ってたんだが………」
結果的に俺が貰ってしまった。
「だけど、この国って一夫一妻制だよ?」
ハルがそう聞いてくる。
「その辺は悠陽や榊首相に言って何とかしてもらうつもりだった。そもそも、男性の方が圧倒的に少ないこのご時世、何時までも一夫一妻に拘るのはナンセンスだ」
「まあ確かにね~」
ハルは軽い言葉で答える。
「それと、冥夜と慧は気にするな。世界を滅ぼさない為に俺達が来たんだしな」
俺は笑みを浮かべてそう言う。
「あ、ああ………」
「ん………」
2人はつられて笑みを浮かべて顔を上げた。
「さて、そろそろ時間だ。行こう!」
俺の言葉に皆が頷いた。
【Side 三人称】
帝国海軍作戦旗艦『最上』。
そのブリッジで、夕呼と最上の艦長であり提督である小沢が作戦開始時間を待っていた。
今回作戦に参加するのは大士達デジモンテイマーとA-01部隊、月読達の第19独立警護小隊のみ。
帝国軍や国連軍から援軍を出す話も出たが、大士達に『犠牲が増えるだけで邪魔』と一蹴されている。
「……………そろそろ時間ですな」
小沢が夕呼に話しかける。
「異世界から来たと仰るあの者達…………信用できますかな?」
少し疑り深そうにそう言った。
「…………少なくとも、この世界では考えられない超常的な力を持っている事は確かです」
夕呼はそう答える。
「ですが、その力が人に向けられたとも聞きましたが?」
その言葉を聞くと、夕呼はクスリと笑った。
「ご心配なく。先の出来事は、愚か者が彼らを害したために起きた単なる報復です。彼らは非常に分かり易い人間です。自分達に無害な事には無関心。敵対する者には容赦しない。それだけですわ」
「その言葉、信用してもよろしいので?」
「少なくとも、世界の覇権やらなにやらくだらない事で暗躍する連中より、余程分かり易く、そして御しやすい者達です」
「……………その言葉、信じましょう」
小沢は帽子を深く被り直す。
夕呼は通信機を手に取ると、
「あ~、聞こえる?」
そう呼びかけた。
「分かってるとは思うけど、この作戦に参加するのはあんた達だけ。援護も支援砲撃も無い事は覚悟しときなさい」
『『『『『『『『『『はっ!』』』』』』』』』』
A-01部隊から返事が返って来る。
「とは言っても、今回の主役は黒騎達よ。あんた達の役目は、出来るだけ記録を取る事。悔しいかもしれないけど、勝手な真似はしない事、良いわね?」
『『『『『『『『『『了解!』』』』』』』』』
とは言え、全員が一度はデジモン達の力を見ているため、不満そうな声は上がらなかった。
「そして黒騎達。あんた達の言葉が、単なる戯言じゃ無い事を証明してみせなさい」
『了~解!』
夕呼の言葉に、緊張感の欠片感じさせない声で返事が返って来た。
『さてと、それじゃあ…………やるとしますか!』
大士の言葉で船の甲板に立つデジモンテイマー達が、それぞれのデジヴァイスを構えた。
――MATRIX
EVOLUTION――
「「「「「「「「「「「マトリックスエボリューション!!」」」」」」」」」」」
俺達の身体がデータとなり、自分のパートナー達と1つになる。
「ドルモン進化!」
「リュウダモン進化!」
「ハックモン進化!」
「アグモン進化!」
「ガブモン進化!」
「ブイモン進化!」
「クダモン進化!」
「ドラコモン進化!」
「コテモン進化!」
「ファルコモン進化!」
「ギルモン進化!」
「テリアモン進化!」
「レナモン進化!」
「モノドラモン進化!」
光の中でデジモン達の身体が分解され、再構成される。
パートナーとテイマーの『絆』が行きつく先の姿へ。
「アルファモン!!」
「オウリュウモン!!」
「ジエスモン!!」
「ブリッツグレイモン!!」
「クーレスガルルモン!!」
「アルフォースブイドラモン!!」
「スレイプモン!!」
「エグザモン!!」
「ガイオウモン!!」
「レイヴモン!!」
「デュークモン!!」
「セントガルゴモン!!」
「サクヤモン!!」
「ジャスティモン!!」
テイマーとデジモンが1つになった姿を現す。
更に、
「行くわよエリス!」
「うん!」
アリスとエリスが手を繋ぎ合う。
2人はD-3を掲げ、
「「リアライズ!」」
そう叫ぶと液晶画面が輝き、エクスブイモンとスティングモンが実体化する。
そしてそのまま、
「エクスブイモン!」
「スティングモン!」
「「ジョグレス進化!!」」
輝きに包まれ1つになる。
「「パイルドラモン!!」」
更に輝きが高まり、
「「究極進化!」」
皇帝竜となってその姿を現す。
「「インペリアルドラモン!!」」
続けてエミリア、クラウディア、シャルロット、カトレア、カンナ、クオン、シュヴァリアがデジヴァイスを掲げ、
「ウォーグレイモン!」
「メタルガルルモン!」
「ディアナモン!」
「ヴァロドゥルモン!」
「ミタマモン!」
「おねーちゃん達!」
「ブラックウォーグレイモン! ブラックメタルガルルモン!」
「「「「「「「リアライズ!」」」」」」」
そこからデジモン達が具現する。
更にそこから、
「おねーちゃん達! ちょうしんか!」
「シスタモン ノワール!」
「シスタモン シエル!」
「シスタモン ブラン!」
「「「超進化!」」」
クオンの声でシスタモン達が覚醒する。
「覚醒! シスタモン ノワール!!」
「覚醒! シスタモン シエル!!」
「覚醒! シスタモン ブラン!!」
そして、
「でじくろす!!」
「「「デジクロス!!」」」
シスタモン達が1つとなり、
「覚醒! シスタモンX!!」
シスタモンX(覚)が現れた。
「スピリットエボリューション!」
ティファニアがミネルヴァモンのデータを纏う。
「メルヴァモン!!」
メルヴァモンへと進化し、
「べるちゃん!!」
最後にミュウがベルフェモン:スリープモードを掲げるように持つと、目覚まし時計の様なけたたましい音が鳴り響き、ベルフェモン:スリープモードが宙へ浮かぶ。
そして、一定の高さに達すると、巨大化すると共にその姿を変えていき、
「ルォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
七大魔王の1体、ベルフェモン:レイジモードとなって咆哮を上げた。
『『『『『『『『『『ッ!?』』』』』』』』』』
その姿を見たA-01部隊のメンバーは息を呑む。
『……………前と違うのがいる………?』
吹雪・凶鳥に乗っていた晴子がそう零す。
A-01部隊は以前にデジモン達の戦っている所を見た事があり、その時とは大半が姿が違う事に疑問を覚えていた。
『簡単に言えば、前よりも『上』の姿だと思ってくれればいい』
大士の声で通信が聞こえた。
『た、大士!?』
晴子は驚く。
デジモンと融合している間は、通信が可能になるのだ。
何故なのかは分からないが。
『前の姿と比べると、随分とちっさくなったのが居るわね………デカくなってる奴も居るけど………』
水月がそう漏らすと、
『そう思うなら見せてやりますか………! 俺達の力を………!』
大士がそう言い放つと、ヴァロドゥルモンが翼を大きく羽搏かせて空へと飛び立つ。
「なっ!? 飛ぶ気か!? 光線級が居るのだぞ!?」
小沢が驚愕の声を上げ、
「…………………ッ!」
夕呼は目を細める。
ヴァロドゥルモンが高度を上げ始めた時、佐渡島から無数のレーザーが放たれた。
戦術機なら一瞬で、戦艦ですら十数秒で融解してしまう重光線級の高出力レーザー。
それが幾つもヴァロドゥルモンに照射される。
着弾時の閃光に、小沢や夕呼は手で目を庇う。
小沢はやられたと思いつつ、何とか目を細めてヴァロドゥルモンの様子を伺うと、
「なっ!?」
次の瞬間目を見開いた。
何故なら重光線級のレーザーは、ヴァロドゥルモンが全身に纏う虹色の光によって全てが弾かれており、その身には届いていなかったからだ。
「あの光………防御フィールドの力を持っているようね………」
夕呼はそう推測する。
その言葉通り、ヴァロドゥルモンの纏う虹色の光、『パージシャイン』は自身に対する攻撃に高い耐性を持っている。
とは言え、例えパージシャインが無くとも究極体であるヴァロドゥルモンには傷一つ付くことは無い。
何故なら、高出力レーザーが驚異的とは言え、それはこの世界の技術レベルでの話。
戦艦の装甲も十数秒で融解する。
逆に言えば、戦艦の装甲を融解させるのに十数秒
デジモンにとって、戦艦を一瞬で融解させる攻撃など、完全体では当たり前。
成熟期ですら十数秒かければ可能なデジモンは多いだろう。
つまり、重光線級でもデジモンで言えば攻撃力は成熟期と同等レベル。
それでは究極体に大きなダメージを与える事は出来ない。
射程と命中率こそずば抜けているが、レーザーに耐えうる防御力さえ持っていれば、光線級など何ら脅威ではないのだ。
ヴァロドゥルモンはそのまま大空を舞い、佐渡島の上空を旋回する様に飛び回る。
佐渡島中から無数のレーザーが放たれているが、そんもの知った事かと言わんばかりに飛び続けていた。
ヴァロドゥルモンが本気を出せば、レーザーに狙われない位のスピードを出す事もできるが、あくまでヴァロドゥルモンの役目は囮であり、光線級がしっかりと狙える程度のスピードに抑えている。
そして、佐渡島中の光線級がヴァロドゥルモンに釘付けになっている事を確認すると、
『行くぞ! まずはA-01部隊の上陸地点の確保だ!』
「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」
アルファモンがオウリュウモンの背に飛び乗り、クーレスガルルモンがブリッツグレイモンに。
ガイオウモンがスレイプモンに跨り、ディアナモン、メルヴァモン、シスタモンXがインペリアルドラモンに飛び乗る。
そして、デュークモン、サクヤモン、ジャスティモンがセントガルゴモンの肩に飛び乗ると、それぞれのデジモン達は、佐渡島に向けて飛び立った。
そのスピードは戦術機の飛行速度を遥かに超え、一分と掛からず佐渡島へ到着する。
上陸予定地点には、無数のBETAが屯していたが、
「デジタライズ・オブ・ソウル!!」
アルファモンが右手の先に描いた魔法陣から無数の光弾を発射。
放たれた光弾は一発でその後方にいるすべてのBETAを貫いていく。
そのまま薙ぎ払うように右腕を動かし、見える範囲のBETAを一掃した。
『上陸予定地点を確保!』
大士がそう報告する。
『嘘ッ!? もう!?』
水月が余りの早さに驚く。
『………驚くのは後だ! ヴァルキリーズ! 全機発進!!』
『『『『『『『『『『了解!』』』』』』』』』』
因みにヴァルキリーズとはA-01部隊の通称だ。
正式名称は伊隅ヴァルキリーズである。
輸送艦から戦術機部隊が飛び立つ。
その中に、不知火以外の機体が6機混じっている。
冥夜の乗る紫の武御雷。
冥夜に随伴する月読の赤の武御雷と、そのお付きの3人の白の武御雷。
そして、ハジメの魔改造が施された吹雪・凶鳥と吹雪・虎鉄だ。
吹雪・凶鳥には晴子が、吹雪・虎鉄には慧が搭乗している。
晴子と慧の魔改造吹雪は規格が合わず、格納の仕方が特殊だったため、最後に発進する事になり、先に発進した者達とは少し距離が離れてしまった。
「……っと! 少し遅れちゃったね!」
「追いつく…………!」
2人は先に発進した者達に追いつく為、不知火の感覚でペダルを踏み込み、機体を加速させようとした。
その瞬間、
「わっ…………!?」
「ッ…………!?」
2人は驚愕で声を漏らした。
何故なら、その加速力は不知火の比ではなく、追いつく所かあっという間に追い抜いてしまったからだ。
『柏木! 彩峰! 先行し過ぎだぞ!』
みちるからお叱りが飛ぶ。
「す、すみません、大尉……! 思ったよりも凄い加速力で…………」
「だけど、Gは殆ど感じなかった………」
その加速力に驚く声を漏らす2人。
スピードを落とし、並走する様に並ぶ。
やがて上陸予定地点に到達すると、
『これは…………』
みちるが声を漏らした。
みちるは、上陸地点を確保したとはいえ、まだ戦闘中だと思っていた。
しかし、到着した時には周りにBETAの姿は無く、無数のクレーターだけがあった。
『もしかして…………この短時間でこの辺りのBETAを全部倒しちゃったの………!?』
茜が驚きで声を漏らす。
『それも………たったこれだけの数で………』
高原もそう呟く。
すると、
『正確にはアルファモンだけで、だがな』
ブリッツグレイモンと融合しているハジメが訂正を入れる。
『『『『『ええっ!?』』』』』
驚きの声を漏らす新任少尉達。
それはさておき、
『さて、ここからは作戦通りいくぞ』
「分かっている」
大士の言葉にブラックウォーグレイモンが頷く。
大士は作戦とは言ったが、作戦と呼べるほどのものではない。
単純に、究極体を等間隔で島の外周に設置し、そこからハイヴに向かって片っ端からBETAを倒しつつ前進していくだけだ。
単純にドルゴラモン等で吹っ飛ばした方が早いのだが、香月博士からハイヴに存在するBETAの数の想定の甘さを世界に知らしめるために、この佐渡島ハイヴだけは順番にBETAを殲滅して行って欲しいとの要請だった。
この場にはアルファモンとオウリュウモンだけを残し、他のデジモン達が島の外周に沿って散らばっていく。
『さて………俺達も行くか……!』
「ああ!」
大士はアルファモンと共に、新たに現れたBETAの大軍を見据えた。
『『『『『『『『『『……………………………』』』』』』』』』』
ヴァルキリーズの面々は言葉が無かった。
BETAの最大の脅威である『数』。
その数の前に、『質』などほぼ意味を為さず、蹂躙されてきた。
その驚異的な『数』が、たった今『2』という『質』の前に意味を為していないことが信じられなかった。
「デジタライズ・オブ・ソウル!!」
アルファモンの放つ無数の光弾が、強靭な甲殻を持つ突撃級や耐久力の高い要塞級も関係無いとばかりに貫き、弾けさせ、
「黄鎧!!」
オウリュウモンが荒れ狂う大河の土石流の様に暴れまわり、触れるもの全てを切り裂いていく。
その力の前に、BETAの『数』は全くと言っていい程意味を為してはいなかった。
『彼らの力がこれほどとは…………』
みちるが呆然と呟く。
因みにその呟きを聞いた大士が、
(これでも大分抑えてるんだけどな………)
と、内心思っていた事は言うまでもない。
すると、次のBETAの群れが見えた時、
『………っと、そうだ』
何かを思い出したように大士は声を漏らした。
そして、
『ハル、慧』
ハジメの魔改造機体に乗る2人に声を掛けた。
「大士………?」
「どうかした……?」
2人が答えると、
『その機体の性能テストだ。次の群れを相手してくれ』
その言葉に、一瞬戸惑うものの、
「えっ? う、うん……! 分かった……!」
「やってみる………!」
初めての機体で不安もあるのだろう。
しかも、大士が言った群れは、突撃級を筆頭に要撃級や要塞級も含めた1000体近い規模の群れだ。
既存の戦術機2機では、厳しい数………というより自殺行為に等しいだろう。
「…………行くよ、彩峰!」
「………やってやる!」
2人は臆さずに立ち向かった。
2機が飛び立つと、
「グラビトンライフル! セット!」
晴子は吹雪・凶鳥のグラビトンライフルで群れの先頭に狙いを定める。
「………シュート!」
晴子は引き金を引く。
その瞬間放たれたのは、黒い閃光。
重力によって光が捻じ曲げられ、黒い光として人の目に映る。
その黒い閃光が先頭の突撃級に当たり、そのまま貫いた。
重力によって当たった部分が圧し潰され、その閃光は次々と後方を貫いていく。
そのまま数十匹を纏めて蹂躙した。
「………す、凄い威力………」
引き金を引いた本人も呆然となる。
他のメンバーも一緒だ。
しかし、それに驚かず飛び出したのは、吹雪・虎鉄を駆る慧。
吹雪・虎鉄は、グラビトン・ライフルの範囲外に居て、未だに向かってくる突撃級に真正面から向かっていく。
突撃級に正面から挑みかかる。
それは、衛士としては一番やってはいけない事の1つ。
しかし、慧はそれでも臆さずに突撃する。
「………バンカー……セット!」
右腕に装備されているパイルバンカーのリボルバーの撃鉄がガキンという音と共に引かれる。
「…………どんな装甲でも…………!」
その右腕を振り被り、
「打ち貫く!」
前方の突撃級に向けて繰り出した。
繰り出した極太の杭の切っ先が突撃級の甲殻の表面に触れる。
その瞬間、撃鉄が撃ち出されリボルバー内の炸薬が爆発。
杭が打ち出されると同時に、〝纏雷〟の付与効果により杭が電磁加速され、凄まじい勢いと衝撃を生み出す。
その杭は強靭な装甲殻を紙の如く貫き、その内部に達する。
それと同時に発生した衝撃が、突撃級の内部で膨れ上がり、その身を破裂させるように粉々に粉砕した。
しかもその衝撃は、バンカーを突き刺した突撃級だけに留まらず、その周辺に居た突撃級も粉砕、もしくは転倒させるほどの威力を持っていた。
その威力にヴァルキリーズのメンバーは再び絶句し固まるが、BETAはそのような反応などしない。
構わずに突撃級の後ろに控えていた要撃級が吹雪・虎鉄に襲い掛かる。
「ッ…………!」
慧はそれに気付くと、左腕に装備されているドリルを回転させ始めた。
「ドリルクラッシャー………!」
そのドリルを、前腕で殴りかかって来た要撃級に向かって繰り出す。
突撃級の甲殻並みの強度を持つ要撃級の前腕が引き裂かれ、そのまま要撃級本体に大穴を開けた。
「………いいね。私好みの武器だ」
慧は気に入った様に口元に笑みを浮かべながらそう評する。
慧はそのまま回転させたドリルを装備した左腕を振り被り、
「ドリルブースト・ナックル!!」
要塞級へ向けて左腕を突き出すと、左腕の肘から分離し、飛翔していく。
その一撃は、要塞級のどてっぱらに風穴を開けた。
戻って来た左腕が再び接続される。
慧は続けてドリルを展開し、内部のガトリングレールガンを露にすると、無数の電磁加速された弾丸で周辺のBETAをセオリーなど関係無しに粉砕していく。
「てやぁあああああああああっ!!」
晴子もビームソードを抜くと、次々とBETAを切り裂き、
「リープ・スラッシャー!!」
背中から無数のパーツが分離。
空中で合体し、円月輪の様な武器となって自在に飛び回りながらBETAを切り裂いていった。
気付けば、1000体近くいたBETAはほぼ全滅している。
それがたった2機の戦術機の戦果だというのだから、この世界の人間にとっては驚愕物だった。
別の場所では、白銀の鎧を纏った騎士、デュークモンが聖槍グラムで要撃級を貫いた所だった。
『…………………………』
デュークモンと融合しているタカトは、BETAの血がべったりと付いたグラムを見て、何とも言えない気持ちになっていた。
デジモン相手でも、血は出る事はあるが、デジモンは倒せばデータに分解されて消滅し、血の跡が残ることは無い。
しかし、BETAはデジモンではなく現実の存在だ。
倒してもデジモンの様に消えることは無い。
肉を切り裂く感触を、生暖かい血が降りかかる感覚を、タカトはデュークモンを通して直に感じ取っていた。
「タカト…………」
デュークモンがタカトの心を感じ取り、心配そうな声を漏らす。
『…………………大士達は、いつもこんな思いをしていたんだね…………』
タカトは改めてそう思う。
人は慣れる。
他者を傷付ける事も、殺す事すらも。
他者を殺す事になれてしまえば、命を雑に扱ったり、殺す事を快感に思う者だって出てくるだろう。
しかし、大士達はそうはならなかった。
殺す事に戸惑いは無くなったのかもしれない。
でも、彼らの心の奥にある大事な物は無くさなかった。
タカトは、純粋にその事を凄いと感じていた。
『……………大丈夫だよ。デュークモン』
タカトはデュークモンの中でそう呟く。
『僕は決めたんだ。大士達の力になるって………!』
決意の言葉を口にすると、改めてグラムを構え直す。
『行くよ! デュークモン!』
「おおっ!!」
デュークモンは再びBETAの群れへと突貫して行った。
作戦旗艦最上では、レーダーに表示されるBETAの数が瞬く間に激減している事に、小沢は驚愕を隠せないでいた。
「異世界から来た者達の力………これほどとは…………」
これだけBETAに損害を出すには、自分達だけではいったいどれほどの犠牲を払わねばならないのか。
それを、彼らは一切の犠牲を出すことなく、しかも短時間で成し遂げている。
「佐渡島解放の悲願………現実になりそうですわね」
夕呼が小沢の隣でそう言う。
「……………そうですな」
小沢が頷くが、その言葉には僅かな悔しさも入り混じっていた。
証拠にその拳が強く握りしめられている。
「………………どうかされましたか? 小沢提督」
それを感じ取った夕呼が問いかける。
「………………確かに佐渡島が取り戻せる事は喜ばしいことです……………ですが、同時に悔しさも感じているのです。我らの地は、我々の手で取り戻したかった…………! 違う国どころか、違う世界の者達の手を借りなければならないことに、不甲斐なさを感じているのです………! 我々にもあのような『力』があれば…………! ただの我儘ですな………」
小沢は内心を口にする。
それを聞くと、夕呼は一旦目を伏せる。
そして、もう一度目を開けると、
「私は逆に、あれ程の『力』を持つ者達が、異世界の人間であることにホッとしております」
そう口にした。
「ッ………! それは何故ですかな? あれ程の『力』があれば、我々は
小沢がその言葉に驚きながらそう返すと、
「簡単な話です。もしこの世界の人類があれ程の『力』を手に入れていれば、もっと早くに人類は滅びていますわ。他でもない、自分自身達によってね」
「ッ!?」
まるでそれが当然と言いたげに夕呼が口にした言葉に、小沢は目を見開く。
「人類滅亡まであと10年と言われる昨今。そう言われても尚自国の利益等とくだらない理由で暗躍し、互いの足を引っ張り合う今の人類があのような『力』を得たとしても、その『力』の矛先が自らに向くのは目に見えております」
「………………………」
夕呼の言葉に小沢は否定する事が出来なかった。
「あれは人類には過ぎたる『力』です。あれ程の『力』を持つ者達が、何物にも揺るがぬ『強き心』の持ち主だった幸運に、心から感謝している所ですわ。この世界の人類の様に『弱き心』の持ち主があの力を手に入れていれば、今頃どうなっていた事か………」
夕呼の目には、壊滅する世界の様子が簡単に想像できていた。
「香月副司令…………」
小沢は帽子を深く被り、簡単に『力』を求めようとした自分を恥じた。
小沢は改めて佐渡島を見る。
「……………頼む。佐渡島を………この世界を取り戻してくれ………!」
小沢は改めて戦う者達に、自らの願いを託すのだった。
【Side Out】
戦闘開始から1時間足らず。
既に地上に出ていたBETAの9割以上が殲滅されていた。
残るBETAは
『……………さて』
俺はどうやって
当初はウォーグレイモンやブラックウォーグレイモンのガイアフォースで吹っ飛ばす事も考えていたが、先程の香月博士と小沢提督の話を聞いて気が変わった。
『……………ハル、聞こえるか?』
『大士? どうかした?』
俺の言葉に、ハルが疑問の声を零す。
『……………お前がやれ』
『えっ…………?』
俺の言葉の意味が分からなかったのか、ハルが声を漏らす。
『お前が
『わ、私が…………!? でも、どうして…………?』
ハルは戸惑い、理由を聞いてくる。
『……………その方が良いと思った。あれを破壊するのは、俺達余所者より、この世界の人間がやるべきだと…………そう思った……………ま、単なる自己満足だな』
俺は理由を口にする。
『大士……………』
ハルが軽く微笑む様に俺の名を呟く。
すると、
『何をボーっとしている、柏木!? 折角、獲物を譲ってくれると言っているのだ。遠慮なく貰ってしまえ!』
伊隅大尉がそう言った。
『た、大尉……!』
『そうよ! この世界の人類代表として、バーンとやっちゃいなさい!!』
『は、速瀬中尉まで……………』
上官達の言葉に一瞬驚くハルだったが、
『……………あはは。人類代表なんて私には荷が重すぎるけど…………やってやりますか!』
ハルは声を張り上げた。
吹雪・凶鳥が空中に躍り出る。
しかしその瞬間、レーザー照射警報が鳴り響いた。
『なっ!? 光線級だと!? まだ残っていたのか!? 拙いっ! 柏木っ!!』
伊隅大尉が驚愕し、叫んだ瞬間、吹雪・凶鳥にレーザーが殺到した。
『『『『『『『『『『柏木っ(さん)/晴子っ!?!?』』』』』』』』』』
ヴァルキリーズ全員が叫ぶ。
しかし、よく見ればレーザーは吹雪・凶鳥に当たる前に捻じ曲げられ、全てが後ろに逸れていた。
『ッ…………! びっくりしたぁ! 今のがグラビティ・テリトリーって奴?』
ハルが驚きながらも、今起きた事を察する。
続けてレーザーが照射されるが、グラビティ・テリトリーにより、吹雪・凶鳥には届かない。
ヴァルキリーズのそれぞれは、ハルが無事だった事にホッとしつつも、レーザーすら無効化する吹雪・凶鳥の力に驚いていた。
『じゃあ、気を取り直していくよ! 凶鳥の力、今ここに!!』
ハルが叫ぶと、吹雪・凶鳥のツインアイが輝く。
『ブラックホールキャノン、セット!』
吹雪・凶鳥の背中から巨大な砲身が分離し、両腕で取っ手を掴むと、前面に構える。
機体全長と同等の大きさを誇る巨大な砲身。
本来なら機体バランスなどで、大きな問題が出る筈だが、そこは付与された〝重力魔法〟で全ての問題をクリアしている。
ハルは砲口を
『オーバードライブ!!』
藍色の機体色が赤色に輝く。
標準を
そのコクピットで、ハルは一度目を伏せた。
『………………太一………皆…………私は大士についていくから……………自分勝手なお姉ちゃんでゴメンね……………だけど、せめて太一達がすぐに戦わなくていい世界には、してあげるから………………』
弟達への思いを呟き、ハルは目を見開いた。
『ブラックホールキャノン! デッド・エンド・シュート!!』
引き金を引くハル。
ブラックホールキャノンの砲口から赤黒い輝きを放つ球体が発射された。
それは、辺りの瓦礫を吸い込みながら突き進み、
着弾時の衝撃が辺りに広がったと思うのもつかの間、その衝撃はすぐに逆方向に向くように、強烈な吸引を始めた。
〝黒天窮〟を応用したブラックホールキャノン。
それは光すら捻じ曲げるマイクロブラックホールと言っていいもので、着弾点が黒い黒球に覆われていくように見える。
その直径は数十メートル程度だが、その吸引力は凄まじく、
そして、やがて起点となったマイクロブラックホールが臨界点を迎え、引力が消えると同時に限界まで圧縮された質量が解放され、爆発に似た衝撃波が起こった。
それを見たヴァルキリーズのメンバーは、
『………………ハイヴが……………消えた……………?』
一瞬言葉を失った。
今まで誰も破壊する事が叶わなかったハイヴの
それが一瞬で、一撃で消え去った事に、現実味が湧かないのだろう。
『………………ッ!』
引き金を引いたハルも涙を浮かべている。
その思いは、この世界の人間ではない俺達には分からない事だ。
『さあアルファモン。後は俺達の仕事だ!』
「ああ!」
後は反応炉を破壊し、残存BETAを殲滅するだけだ。
そう思った時、
「……………何だ?」
大地に立っていたアルファモンが地面の揺れを感じた。
「地面が揺れている…………?」
そう感じた次の瞬間、目の前の地面が噴き上がる様に粉砕された。
「ッ…………!」
アルファモンは咄嗟に飛び退く。
目の前に見えたのは巨大な円柱のように見えた。
『な、何だあれは!?』
『BETA!? 未確認種!?』
『胴体直径170m!? 大きすぎる!』
ヴァルキリーズから驚愕の声が飛ぶ。
確かこれって、地面を掘削しながら大量のBETAを輸送する母艦みたいな役目を果たすBETAだったか?
『大尉! 未確認種の口から大量のBETAが!!』
『要塞級まで!? なんて滅茶苦茶な!?』
トータスで見た、サンドワームの様な姿の巨大なBETA。
ドリルのような頭部が開くと、そこから大量のBETAが吐き出される。
『奴は母艦の様な役目を果たすBETAという事か! 各機! 奴を
『『『『『『『『『『りょ、了解!』』』』』』』』』』
伊隅大尉の言葉に、各員が返事を返す。
『このようなBETAが未だに確認されずに存在したとは…………』
『個体数は、そう多くないのかもしれません』
戦慄を覚えるヴァルキリーズを他所に、俺はその母艦級を眺めつつ、
『さて、倒すのは簡単だが…………』
ふと視線を吹雪・虎鉄に向けた。
『…………フッ』
ニヤリと笑みを浮かべ、
『慧………!』
『大士………?』
俺は慧に呼びかけ、
『………叩っ切れ!』
『…………ッ!』
俺の言葉に、慧は一瞬目を見開く。
そして、不敵に笑みを浮かべると、
『……………やってみる!』
そう頷いた。
吹雪・虎鉄の左腕に装備されているドリルが分離し、左手が露になる。
そのまま両手で右肩後方の長大な剣の柄を掴むと、一気に引き抜き、正眼に構えた。その剣は、戦術機の全長よりも大きな大剣。
『オーバードライブ………!』
先程の吹雪・凶鳥と同じように装甲表面が赤く染まる。
そして、
『……………行く!』
ブーストで飛び立つ。
その動きは、巨大な剣を持っているとは思えない速度。
吹雪・虎鉄は一瞬で母艦級の上を取った。
直径170m。
全長1kmはありそうな巨大なBETA。
それは、戦術機に装備されている通常兵器どころか、S-11を使っても致命的なダメージを与えられるか怪しい所。
それに対し、慧は巨大とは言え剣1本で立ち向かう。
しかし、
『一刀………両断っ………!!』
慧は臆さずに母艦級に急降下し、その大剣を振るった。
直径170mに対し、吹雪・虎鉄の持つ剣は精々20m。
普通であれば、母艦級の表面に傷が付けば精々と言った所。
しかし、その剣にはハジメが許す限りの付与を施してある。
故にその威力とリーチは見た目よりも遥かに大きかった。
その結果、
―――ズバンッ!!
母艦級を大地ごと一直線に両断した。
胴体が縦に真っ二つとなり、文字通り血の雨が降る。
その血の雨が止んだ後、吹雪・虎鉄は大剣を振り払って血を飛ばすと、再び背中に収めた。
『我に断てぬもの無し………!』
決め台詞まで言ってくれる慧のノリの良さ。
その一撃は、母艦級が出てきて戦いていたヴァルキリーズのメンバーを奮い立たせるには十分だった。
俺はそれを見届けると、地中にまだいるであろう母艦級と、それが運んできたBETAが這い出てくるのを感じる。
だが、
「ウォーグレイモン!! ブラックウォーグレイモン!!」
アルファモンが2体に呼びかける。
「「おおっ!!」」
2体はドラモンキラーを頭上で合わせ、高速回転を始める。
「ブレイブトルネード!!」
「ブラックトルネード!!」
2体はそのままドリルの様に地中へ潜っていく。
究極体のパワーなら、地中に適応できるデジモンでなくとも、移動するぐらいは可能だ。
佐渡島の大地の所々から、衝撃とひび割れが起こり、時にはBETAの血が噴き出す。
やがて、黄金と黒の竜巻が地面を突き破って現れると、回転を止め、ウォーグレイモンとブラックウォーグレイモンの姿が露になった。
更に2体は頭上に両手を掲げると、ウォーグレイモンは大気中のエネルギーを。
ブラックウォーグレイモンは負のエネルギーを集め出す。
そして、
「「ガイアフォース!!」」
作り出した巨大な正と負のエネルギーの球体を眼下に投げ放った。
ガイアフォースのエネルギーは、地上だけではなく、ハイヴ内の通路と、先程2体が駆け巡り作り出した地下空洞全てに行きわたる。
そして、佐渡島地下に張り巡らされたハイヴ全てにガイアフォースのエネルギーが行きわたった。
当然反応炉も消滅している。
ガイアフォースの輝きが消えていき、ハイヴも完全に崩壊したのか、
『……………任務完了だ』
俺は香月博士にそう伝える。
「……………ええ、ご苦労様。全員戻って頂戴」
香月博士は平静を装ってそう返事をした。
まあ、その内心が如何なのかは俺の知る所では無い。
マブラヴ リ:デジタネイティヴ編第18話です。
今週は時間があったのでそれなりに頑張ってみた。
デジモン達の総進撃ですが、どっちかと言えば魔改造吹雪の方が目立ってましたね。
ブラックホールキャノンの決めセリフは、フル・インパクトとどっちにするか悩んだけど、柏木が青髪なので青髪繋がりでイングラム系譜のデッド・エンド・シュートにしてみた。
彩峰の方は、割とそのまんま?
ハイヴはブラックホールキャノンで消滅し、何故か出てきた母艦級は斬艦刀(仮)で一刀両断。
こんな感じになりました。
次は世界ハイヴ相手かな?
お楽しみに。
P.S また明日から仕事でテンションダウン中なので返信はお休みします…………
………………悠陽は如何する?
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姉妹丼でいただきます
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いい加減にしろやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!