佐渡島ハイヴを消滅させてから数日後。
横浜基地に戻って来た俺達は、朝食を取るためにPXに来ていた。
すると、
「………………気のせいかもしれないんですけど…………」
壬姫が遠慮がちに発言しだした。
その言葉に、ヴァルキリーズのメンバー+俺達の視線が壬姫に向く。
「冥夜さんと慧さん………あと、晴子さんも…………何か今日、肌が艶々してません?」
「「「ッ!?」」」
壬姫の何気ない質問に3人がビクッと身体を震わせる。
3人は顔をサッと反らすが、徐々に顔を赤くしていく。
それを見て、
「ほほう………? もしや3人とも、意中の男と男女の関係にでもなったか?」
ヴァルキリーズの中で、よく突拍子もない発言をする宗像中尉がいつもの如く邪推とも言うべき発言をした。
本人にとっては、3人が同時にそんな事になる事は無いだろうと思っての、いつもの揶揄い半分の発言だったのだろうが、
「「「ッ………………!!」」」
それを聞いた3人はますます顔を赤くしてしまった。
何故なら、宗像中尉の言葉はビンゴであったからだ。
………とまあ、その理由を知っている俺が、その3人を抱いた張本人なのだが…………
因みに俺は男女関係で揶揄われる事など日常茶飯事なので、最早この程度で動揺などしない。
そして、その3人の反応を見れば、他のメンバーにもその言葉が事実だという事が伝わる訳で、
「マジで!?」
速瀬中尉が思わず立ち上がりながら叫んだ。
「マジで!? あんた達マジで!?」
驚きのあまり、何度も聞き返す速瀬中尉。
「……………え、ええ………まあ…………………はい…………」
その剣幕に、思わず肯定してしまう冥夜。
その瞬間、ヴァルキリーズのメンバーの目がクワッと見開かれる。
「ほ、本当なの御剣!?」
近くにいた千鶴が食いつく。
「うっ………!」
その剣幕に、思わず引いてしまう冥夜。
「も、もしかして彩峰さんや柏木さんも!?」
純夏が他の2人にも詰め寄ると、
「あ~、あはは…………そうだね…………」
「……………大人の階段を上ったね」
ハルは乾いた笑いを零しつつ肯定し、慧は開き直った様にそう言った。
「「「「「「「「「「うぇええええええっ!?」」」」」」」」」」
大半が驚愕して大声を上げる。
もちろん武も驚愕していた。
「あ、相手は!? 相手は誰よ!?」
速瀬中尉が更に踏み込む。
「え~っと………」
「それは………」
「………………」
3人は名前を言わなかったが、その視線がチラリと俺の方を向く。
そして、その視線の動きを誰もが見逃さなかった。
「ま、まさか………!? 黒騎!?」
視線に気づいた千鶴が叫ぶ。
「大士が!?」
その叫びで続けて武が驚愕し、
「っていうか、3人とも!?」
速瀬中尉が肝心な事を口にした。
「あ~、まあ、うむ………そう言う事だ」
冥夜が顔を赤くしつつも認め、
「あはは。まあ、初体験が3人同時とは思わなかったけどね」
ハルがこの際とばかりにぶっちゃけ、
「大士、鬼畜だね」
慧が昨夜の事を思い出したのか、頬を赤らめながらそう言う。
「どどど、如何いう事だよ大士!?」
武が俺に詰め寄る。
「どうもこうも、お前が鑑さん以外に手を出さなかったからいつの間にかこうなったんだろうが! 俺だってこうなるとは微塵も予想していなかったわ!」
俺は逆ギレする。
「つまり黒騎は、恋人が11人だけではまだ足りなかったと…………」
宗像中尉が更に火種を投下しようとする。
「自分でも節操無いとは思ってますよ。でも、好きになっちまったもんはしょうがないでしょう! 少なくとも、女なら誰でもいいって思ってるわけじゃ無い事は言っておきます!」
俺は場をかき乱される前に認めて被害を最小限に止める。
その時、
『国民の皆様に、これから重大発表があります』
PXに設置してあるテレビからそう声がした。
見れば、榊首相と悠陽が会見を開いていた。
「お父さん………」
「姉上…………」
2人が呟いた事で、ヴァルキリーズの注意がそちらに向く。
発言したのは悠陽だった。
『皆様の知っての通り、先日帝国の悲願であった佐渡島が解放されました…………しかし、世界にはまだ多くのハイヴが残っています。その為、これから先は今まで以上に国が1つとなって行かなければなりません。故に、私は1つの決意を致しました』
その言葉に、PX内が自然と静まり返る。
そして、悠陽はその言葉を発した。
『わたくし、日本帝国国務全権代行、征夷大将軍、煌武院 悠陽は、本日を以って政権を天皇陛下へ返上いたします!』
「ぶふっ!?」
俺は驚愕のあまり思わず吹き出してしまった。
ヴァルキリーズのメンバーも目を点にしている。
余りにも予想外な展開に、俺達はテレビに釘付けになった。
『突然の事に、驚く者も多い事でしょう。しかし、聞いてください。まだ記憶に新しい12.5事件の折、わたくしは首謀者である狭霧大尉と話す機会がありました。彼は議事堂を襲撃し、多くの官僚たちを殺しました……………それは既に飾りとなりつつあったわたくしを思っての事…………彼はやり方は間違えたのかもしれませんが、確かにこの国の事を思っていたのです………! では、何故この国を思う者達が互いに争い、傷付け合うのでしょうか? わたくしはそれを、この国の何を信じているか、によるものだと考えました』
「この国の何を信じるか………?」
武が呟く。
『今現在、この国を象徴するべきものは大きく3つに分けられると考えます。まず1つ目は天皇陛下………2つ目は内閣総理大臣率いる内閣…………そして、3つめはわたくしが担う征夷大将軍…………これでこの国は1つになっていると言えるのでしょうか? 国を思う事は同じなれど、重んじるものが違えば道を違え、血を流す事に繋がる事でしょう。先の事件の原因は、正にそれだったのです!』
『目的が同じでも、重んじるものが違えば道を違えることもある』。
それは冥夜も言っていた事だ。
『故にわたくしは、今一度天皇陛下の元、1つになるべきだと考えたのです。勿論戸惑う方も多いでしょう。しかし、本当の意味で我が国が1つになるチャンスは、佐渡島ハイヴという眼前の脅威が取り払われた今しかないと思い、踏み切りました』
その後はこれからの政権運営についての話が続き、会見が終わった。
「……………………マジか?」
俺は思わず呟く。
なんで悠陽が政権を天皇に返上してるんだよ!?
アレか!?
俺が以前大政奉還について説明した所為なのか!?
PXに何とも言えない空気が漂う中、休憩時間は終わりを告げた。
さらに翌日の12月29日。
原作では、佐渡島攻略で生き残ったBETAが横浜基地を襲撃する日だった。
今回は根こそぎ消し飛ばしたはずなので大丈夫だとは思ったが、念の為にこの日まで待機しておくことにしたのだ。
まあ、その心配も杞憂だったようで、大深度地下侵攻が起こることは無かった。
その為、今日一日様子を見て、翌日に世界中のハイヴを潰しに行く予定だったのだが………
「ごきげんよう大士様」
俺の目の前にはニッコリと笑みを浮かべた悠陽が居た。
因みに傍らには月読中尉に似たメガネをかけた女性がいる。
この人ってもしかして、オルフェに出てきた月読さん………真那さんの従姉妹の真耶さんか?
「ゆ、悠陽………」
思い掛けない人物の登場に俺は固まる。
「で、殿下!? 如何して横浜基地に!?」
武が驚きながら問いかけるが、
「白銀少佐。もうわたくしは『殿下』ではありませんわ」
悠陽はもう征夷大将軍で無い事を改めて強調する。
「姉上……」
冥夜が進み出ると、
「漸く会えましたね冥夜。この時をどれほど待ちわびた事か………!」
悠陽はそう言って冥夜の手を握る。
「もうわたくし達を縛るものは何もありません………これからは、何処にでもいる姉妹として歩んでいきましょう」
「姉上…………ッ!」
その言葉に感極まり、冥夜は涙を流す。
「…………はいっ!」
しっかりと手を握り返しながら、冥夜は頷いた。
いや、でも、冥夜は俺と一緒に元の世界に行くから悠陽とは一緒に居られないんじゃ………
そう思った時、
「そして、わたくしが何をしに来たかと仰られましたが……………」
そう言いつつ悠陽が俺に向き直った。
「大士様に嫁ぎにまいりました」
「………はっ!?」
俺は思わず素っ頓狂な声を上げる。
悠陽は俺の前で深々と頭を下げ、
「不束者ですが、末永くよろしくお願いします」
礼儀正しくそう言葉を発した。
「……………………」
突然の事に何も言えなくなる。
すると、ポンポンと両肩に手を置かれた。
右側に振り向くと、ハジメがニヤニヤしながら、
「よっ! モテモテだな。ハーレム野郎♪」
揶揄うようにそう言って来た。
次に俺は左側に振り向く。
そこには、同じくニヤニヤした遠藤が居て、
「いやぁ、羨ま………」
「居たのか遠藤?」
揶揄われるままは癪だったので、そう言い返した。
いや、本心でもあるんだが。
「居たわ! ずっと居たわ!!」
声を上げる遠藤。
俺はそれをスルーし、再び悠陽の方を向く。
悠陽は顔を上げ、笑みを浮かべたままだ。
「あ~、その~、何というか……………いいのか? 俺は異世界の人間だぞ?」
俺は問い返す。
「もちろん承知しております。その為に征夷大将軍の地位を返上したのですから」
「おいおい………」
先日のテレビで色々理由を説明していたようだが、その本音が、俺について来るためだったとは…………
「それに冥夜もそなたについていくのですよね?」
「ッ!? どうしてそれを!?」
俺が聞き返す。
「月読から報告は受けています」
俺が月読中尉……真那さんの方に視線を向けると、真那さんは澄まし顔のままだ。
「大士様と共に在れば、わたくしも冥夜と離れ離れにならなくて済みます」
「いや、一緒に連れてってくれって言うなら連れてくし、無理に俺に嫁ぐなんて言わなくても…………」
「無理ではございません!」
「おわっ!?」
声を上げた悠陽に俺は驚く。
「………コホン」
悠陽はハッとして咳払いをすると、
「大士様には直接言った方が宜しいみたいですね」
悠陽は再び身形を正すと、
「大士様………わたくしはそなたをお慕いしております。どうかわたくしを側室の1人に加えていただきたく存じます」
「う………………」
ドストレートに好意をぶつけられ、俺は戸惑ってしまう。
正直、悠陽の事は好意的に感じていると言っていい。
ほんの少しの間だが、コクピット内で密着状態で言葉も交わし、彼女の心の強さと弱さ、そして冥夜を想う気持ちと将軍であろうとする気持ちで揺れ動いていた葛藤を感じた。
その中で彼女は俺を頼り、冥夜を護る選択をした。
「……………………」
そして悠陽が撃たれた時、俺はドルモンをドルゴラモンに進化させて工作員を消し飛ばした。
あの状況では、ドルグレモンやグレイドモンでも十分だったはずなのに、オーバーキルにも程がある究極体のドルゴラモンに進化させた。
「ッ………………!」
その事に思い至った時、俺は腑に落ちた。
俺は悠陽が撃たれた事に怒りを感じていた。
ドルゴラモンを暴走させるほどではないにしろ、悠陽を撃った関係者を消し飛ばしたくなるぐらいには、怒りを感じていたのだ。
それはつまり、
「………………俺も悠陽を、『大切』に思っていたのか…………」
そう自然と口に出た。
「ッ……!?」
目の前の悠陽が息を呑んだ。
俺は悠陽を見つめる。
その頬は赤く染まっている。
「悠陽………俺と一緒に来てくれるか?」
俺はそう言って手を差し出す。
「………っはい! 何処までもお供いたします!」
まるで従者のような発言に少し呆気にとられた後、
「「………ぷっ!」」
2人揃って笑いを零した。
「はははっ!」
「ふふふっ!」
思わず笑ってしまう俺達。
その時、じ~~~~~っという視線を感じた。
「………ふむ、やはりとは思っていたが、姉上まで落とすとはな………」
「大士、節操無しだね」
「あはは………まさか将軍様まで落とすとは思わなかったよ」
冥夜、慧、ハルが呆れた様にそう言った。
「これで総勢15人だね~。2年前は私と優花の2人だけだったのに、よくここまで増えたね~!」
葵があっけらかんと笑いながらそう言う。
「むしろ、大士の『誰とも結ばれない運命』が無かったら、もっと増えてたんじゃないの?」
優花がやれやれと言った雰囲気でそう言う。
「あの~、ところで真耶さん達は良いのでしょうか?」
愛子先生が小さく手を上げながらそう言った。
「もちろん悠陽様が行く所には私も行く。幼少の頃より悠陽様に仕えていた身だ。今更他の誰かに仕えようとは思わん」
真耶さんがそう言うと、
「私も勿論冥夜様についていく所存だ」
真那さんもそう言う。
「「「もちろん私達もです!」」」
神代、巴、戎が何処からともなく現れてそう言う。
「……………2人のメイドにでもなる気ですか?」
俺が呆気にとられながらそう言うと、
「メイドか………それも良いかもしれんな」
何故か真那さんが肯定的な意見を述べた。
「メイド服の月読さん………」
武が呟いた。
武にとっては見慣れていた姿を思い浮かべているのだろう。
とりあえず、この出来事で予定が1日遅れたことを記しておく。
その晩に何があったかは……………お察しである。
【Side 三人称】
12月31日。
図らずも大晦日の今日、世界は一遍しようとしていた。
「衛星画像から鉄原ハイヴとブラゴエスチェンクスハイヴがあったと思われる場所に、巨大なクレーターを確認!」
「重慶、マンダレー、ボパールの各ハイヴ、完全に凍結している模様!」
「ロヴァニエミハイヴ、リヨンハイヴ、ブダベストハイヴ! 壊滅しています!」
「エヴェンスクハイヴ及びヴェルホヤンスクハイヴ! 共に消滅しています!」
次々と横浜基地の中央作戦司令室に情報が入って来る。
本来は入れない筈のA-01部隊のメンバーや悠陽達も、夕呼の命令でこの場に居る事を許されていた。
「す、凄い………ハイヴがどんどん消えていく………」
美琴が呟く。
「ほ、本当に地球上のハイヴを…………」
壬姫は、大士達が地球上のハイヴを全て片付ける事は聞いていたが、その時は本気とは思っていなかった。
それが画面越しとは言え、次々とハイヴの反応が消えて行っている事が信じられなかった。
「……………我々が、苦渋を舐めさせられ続けてきたハイヴを、これほどまでにあっさりと………」
ラダビノッドが現実感を感じさせない唖然とした表情で呟く。
「佐渡島ハイヴの時は、手加減しろとは言ったけど、本当に手加減してたわけね………」
夕呼は参ったと言わんばかりに息を吐く。
しかも、ハイヴの攻略は、ハイヴ1つに付き一分前後。
ハイヴの攻略よりも、移動時間の方に時間がかかっているぐらいだ。
こうしている間にも、次々とハイヴの反応が消えていく。
すると、
「H1! 喀什ハイヴの反応消滅!」
そう報告が飛ぶ。
「もうオリジナルハイヴまで到達したの!?」
夕呼が思わず叫ぶが、
「いえ、ハイヴの反応の消滅部分からの予測ですが、彼らは現在モンゴル周辺を移動中の模様!」
「……………どういう事?」
夕呼は、大士達から離れている筈のオリジナルハイヴが突如消滅したことに、夕呼は怪訝な声を漏らした。
【Side Out】
【Side
緊急事態。
予測不能の災害が発生。
対策を検討。
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・
現状の下位存在では対策不能。
更に対策を検討。
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検討。
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検討。
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検討。
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重大災害と同種と思われる反応を感知。
早期対策を実行。
・
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・
理解不能。
災害は下位存在を飲み込み、更に強大になって行く。
工場内の全ての存在を向かわせるも、全てのみ込まれた。
対策不能。
対策不能。
災害が上位存在に接近。
対処を敢行
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・
・
失敗。
対策不…………………………………
【Side Out】
【Side 三人称】
地球上に一番最初に出来たハイヴであり、オリジナルハイヴとも呼ばれる喀什ハイヴ。
地球上では最も巨大な
そんなオリジナルハイヴが今、一瞬にして消えた。
破壊や融解などと言ったものではない。
物質を分解し、消し去ったというべきものだった。
オリジナルハイヴがあった場所には、底の見えない大穴が存在していた。
そしてその穴の底…………
オリジナルハイヴを消滅させた元凶が、無数の触手を蠢かせ、地の底で動き出そうとしていたのだった。
【Side Out】
はい、マブラヴ リ:デジタネイティヴ編第19話です。
ハイヴ最後の日と言いつつ、悠陽のハーレム入りが主軸となり、ハイヴ殲滅はダイジェストで終わってしまった。
しかし、オリジナルハイヴには何やら不穏な影が…………
次回をお楽しみに。
………………悠陽は如何する?
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姉妹丼でいただきます
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いい加減にしろやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!