【Side 三人称】
ここは大士達が居た世界とは少し違う世界。
大士、葵という『イレギュラー』が存在せず、デジモンも普通のメディアとしてはあるが、現実世界に実体化などせず、『デ・リーパー事件』も起こらなかった世界…………
この世界でもハジメ達はトータスに召喚された。
そして、1年近い旅と戦いの末、エヒトルジュエを倒し、この世界へと帰還を果たした。
まあ、大士達が居ない影響で、ハジメの正妻がユエだったり、香織や優花が奈落に行かなかったりなど、大士達がいる世界との差異はそれなりに見受けられる。
そして、その世界でハジメ達が地球に帰還してから1年。
今日は帰還者達が優花の両親が経営する洋食店『ウィステリア』で帰還一周年を祝う集まりが開催されるのだ。
因みに大士達の世界では、大士達がハルケギニアに召喚されていた所為で行われていなかったりする。
ハジメの音頭で宴会が始まると、トータスの思い出話や帰還してからの1年の出来事などで盛り上がっていく。
その盛り上がりが最高潮に達する頃だった。
―――ヴンッ!
と、空気が震える様な音と共に、ハジメ達が集まっていたテーブルに影が掛かる。
「ッ!?」
ハジメが何事かと視線を向けた瞬間、複数の影が落ちてきて、その一部はテーブルを巻き込んで、ガシャーン!と食器が割れる音が響く。
「ッ! クソが!!」
その影から聞こえた声と共に、殺気を感じたハジメは、即座に〝宝物庫〟からドンナーを取り出してその影に向ける。
平和な地球に戻ってきたとはいえ、危機に対する反応は衰えてはいない。
しかし、
「ッ!?」
その影にドンナーを向けたハジメは、一瞬驚きで目を見開いた。
何故なら、ドンナーを向けた銃口の先には、同じように『自分にドンナーを向けたハジメ』の姿があったからだ。
「「…………………………」」
2人のハジメはまるで鏡写しの様にドンナーを向けたまま固まる。
だが、周りはそうはいかなかった。
「……………な、南雲が分裂したぁぁぁぁぁぁっ!?」
「魔王が2人にっ!?」
「しかも互いに戦おうとしてるっ!?」
「魔王VS魔王……………地球が滅びるぞ……………!」
「もうダメだぁ! お終いだぁ!」
ハジメが2人いる事に気付いたクラスメイト達が騒ぎ出し、混乱の渦が広がっていく。
騒ぎが広がると同時に2人のハジメの警戒意識が増していき、どちらからともなくドンナーの引き金に掛けられた指に力が籠り……………
「待てハジメッ!」
その引き金が引かれる寸前で2人のハジメの間に何者かが割って入り、両手に金色の光を宿しながらドンナーを構えていた2人のハジメの右手首を掴むと、両者の銃口を天井へ向けた。
「落ち着いてくれ! えっと………どっちのハジメも!」
「大士…………」
「………誰だ?」
突如現れた方のハジメは、割り込んできた青年………大士の名を呟き、この世界のハジメは警戒しつつ声を漏らす。
この世界のハジメは、隙あらば手を振りほどこうと期を窺っていたが、予想以上の力で手首が掴まれており、それが簡単でないことに気づいていた。
「ハジメ! 俺の勘ではここは平行世界だ! さっき現れたパラレルモンの影響で、平行世界に飛ばされたんだ!」
「平行世界…………」
突如現れたハジメに向かって、大士はそう言う。
すると、そのハジメはこちらの世界のハジメ(以後、○○(原作)と記載)を見ると、
「すると、こいつは別の世界の俺自身って事か…………」
ハジメは相手の正体を理解したのかドンナーを持っていた腕から力を抜く。
それが分かったのか、大士はハジメの手を放した。
そして、大士はハジメ(原作)の方を向くと、
「そっちのハジメも、まずは話を聞いて欲しい。そちらから仕掛けて来ない限り、こちらも危害を加えないと約束する!」
その目を見ながらそう言い切った。
「………………………」
ハジメ(原作)は少しの間大士の目をジッと見ていたが、
「……………いいだろう」
そう言って力を抜く。
警戒はしているが、即座に戦闘をするつもりが無いと判断した大士は、ハジメ(原作)の手を放した。
すると、
「だ、誰だあいつは………!? 魔王同士の戦いに割り込んで、しかも戦いを止めたぞ……………!?」
「信じられねえ……………」
「救世主だ………! 世界は救われた………!」
クラスメイト達が口々に驚嘆の声を漏らす。
その時、
「あれ? よく見れば優花っちももう1人いる!」
宮崎 奈々(原作)が、優花を指差しながら叫ぶ。
「………香織ももう1人居るわね…………」
雫(原作)も香織がもう1人居る事に気付き、
「ユエさんも居ますよ」
シア(原作)がユエに視線を向けながら言った。
「わ、私ッ………!?」
優花(原作)は狼狽えた声を漏らし、
「えええっ!? 私がもう1人いる!?」
香織(原作)も大きな声で驚愕し、
「……………………」
ユエ(原作)は訝しむ様な表情でもう1人の自分を見つめる。
「あとは………見知らぬ顔が3人と、見た事も無い生き物も連れておるのう」
ティオ(原作)が、大士、葵、シュヴァリアとデジモン達を見てそう呟いた。
とりあえず〝再生魔法〟で滅茶苦茶になってしまったテーブルを元に戻し、それぞれが向かい合いながら席に着いた。
「「「「「「「「………………………………」」」」」」」」
お互いにもう1人の自分を興味深そうに見つめている。
すると、大士が切り出した。
「さて、おそらく俺達は、この世界とは違う平行世界から来た。まずは、場を混乱させてしまった事を謝罪する」
そう言って頭を下げる。
「まあ、こうやってもう1人俺達が居るんだ。平行世界ってのも、あながちデタラメじゃなさそうだ」
ハジメ(原作)は、もう1人のハジメ達を見て、大士の言葉に嘘は無い事を察する。
「とりあえず、優花とハジメ、白崎さんにユエに関しては自己紹介の必要は無さそうだから省略するが、俺は黒騎 大士という。こっちはパートナーのドルモン」
大士はそう言って自己紹介する。
すると、ハジメ(原作)がピクリと反応した。
「私は神代 葵。パートナーはリュウダモン」
葵がそう言うと再びハジメ(原作)がピクリと反応する。
「余の名はシュヴァリア。サキュバスだ。余にもパートナーはいるが、この場所では狭すぎるのでな。紹介は後にしておこう」
「因みに、そっちのハックモンは優花の。黒いアグモンはハジメの。ガブモンは白崎さんので、ブイモンはユエのパートナーだ」
大士のその言葉を聞くと、再びハジメがピクピクと反応を見せた。
「で、最初に聞きたいんだが、こっちの世界に俺や葵は居ないんだな?」
大士がそう質問すると、
「あ~………少なくともクラスメイトには居ねえな」
ハジメ(原作)がそう言いながら他のメンバーにも視線を向けるが、誰もが首を横に振る。
「私も社会科の担当教師としていくつかクラスを受け持っていましたが、お2人の名前は聞いた事がありません」
そう言ったのは愛子(原作)だ。
「まあ、それも当然か。俺や葵は元々の世界でも『イレギュラー』な存在だったからな」
予想していたのか、何でもないように答える大士。
「まあいい。それよりも、何で俺達がこの世界に来たのかだが、ハッキリ言えば事故だ」
「事故?」
「ああ。いきなりパラレルモン…………平行世界を渡り歩く怪物に奇襲されてな。その影響で時空の歪みに巻き込まれてこの世界の流れて来てしまったんだと思う」
「パラレルモン……………」
大士の言葉に、ハジメ(原作)がその名に思い当たる事があるように呟く。
「…………なあ。お前らが連れてるそいつらって………もしかしてデジモンか?」
『デジモン』という単語が出てきた事に、大士は若干驚いた。
「知ってるのか? こっちの世界にもデジモンが居るのか?」
大士がそう聞くと、
「いや、居るっつーか、普通に創作物でアニメとかゲームとかになってるぞ」
そう答えるハジメ(原作)。
「アニメ………って、デジモンアドベンチャーとか?」
「ああ、そいつがアニメシリーズの最初だな。今はゴーストゲームとか言ってたか? 少し前には無印のリメイクバージョンが放送されてたな」
「ゴーストゲームに無印のリメイク………? 俺でも知らないものだな…………じゃあ、『デジモンテイマーズ』ってわかるか?」
「おお。確かデジモンシリーズアニメの3作目だったか?」
「俺達の世界は、そのデジモンテイマーズの世界線にある」
「……………はぁ?」
ハジメ(原作)が、意味が分からないと言った表情になる。
「俺達の世界じゃ8年位前に『デ・リーパー事件』があったんだよ」
「マジか!?」
「おう。因みに俺はまた別の世界からの転生者で、『デ・リーパー事件』に関わってタカト達と一緒に戦ってたりする」
「転生者とか、重要そうなキーワードをさらりと言いやがったな」
「元の世界じゃクラスメイト全員知ってるし。ついでに言うと、こっちのハジメ達はトータスの旅の最中にデジモン達と出会ってパートナー関係を結んだ」
「って待てや。何でトータスにデジモンが出てくるんだ?」
「あ~、『イグドラシル』って分かるか?」
「確かデジタルワールドの『神』に当たるんだったか? 詳しい設定は知らんが」
「ああ。そのイグドラシルがトータスに干渉してきてな。その所為で結構な頻度でデジモン相手に戦ってたんだよ」
「マジか…………」
ハジメ(原作)が半ば同情するような表情を見せた。
その時だった。
「…………気に入らない」
唐突にユエ(原作)が口を開いた。
その視線は、もう1人の
「……………何が?」
ユエが聞き返すと、
「ハジメとの距離。何で
睨み付けるように目を細めながら、そう問いかけるユエ(原作)。
「………ハジメの一番はカオリ。私は二番」
その瞬間、ショックを受けた様に呆然となるユエ(原作)。
すると、
「………フ………フフフ…………!」
突然怪しい笑い声が漏れた。
それは、
「アハハハハハ! 如何かなユエ!? 世界がほんのちょっと違えば、私がハジメ君の一番になれた世界だってあったんだよ!!」
まるで勝ち誇ったようにユエにドヤ顔を向ける香織(原作)。
「ん? こっちだとハジメの正妻はユエなのか?」
「お、おう………そっちじゃ違うのか?」
「こっちだとハジメの正妻は白崎さんだぞ? そもそも、トータスに召喚される前から付き合ってたし」
「なん………だと…………!?」
ユエ(原作)が再びガガーンと交換音が鳴りそうな表情を浮かべる。
「そうだよ! 私とハジメ君が結ばれる可能性もちゃんとあったんだ!!」
香織(原作)が今にも踊り出しそうな表情で勝ち誇る。
すると、
「あ、でも、私とハジメ君が付き合う切っ掛けになったのは黒騎君の一言だから、黒騎君が居ないこの世界じゃそのきっかけが無くて付き合えなかったんだね」
香織がそう発言した。
香織(原作)の高笑いがピタリと止まる。
「切っ掛け?」
そう聞く香織(原作)。
「そういやそうだったな。いや、ハジメに好意を持ってるのにそれを自覚して無くて、無自覚に目の前でイチャラブされてたから、ある日我慢できなくなって『お前らもう付き合っちまえ』って言ったのが切っ掛けだったか………」
大士は懐かしむ様にそう言う。
「………余計な事を………!」
ユエ(原作)が、大士を仇の様に睨み付ける。
「でもでも! それはほんのちょっとの切っ掛けで私がハジメ君の一番になれたって事だよね!?」
香織(原作)が尚もそう言う。
すると、
「ふっ………哀れな」
まるで馬鹿にするような物言いでユエ(原作)が言った。
「あっちに居るのは所詮違う世界のハジメ。この世界のハジメは
『私』を強調するユエ(原作)。
明らかに香織(原作)を煽っている。
「ほんのちょっとの切っ掛けだろうと、そのほんのちょっとの切っ掛けを掴めなかったカオリは所詮負け犬」
「ユゥゥゥゥエェェェェェェェッ!」
負け犬呼ばわりは我慢ならなかったのかユエ(原作)に掴みかかる香織(原作)。
ユエ(原作)も迎え撃つように両手を突き出し、手四つ状態でギリギリと組み合う。
「ばーかばーか!」
「あほーあほー!」
小学生の喧嘩かと思うような低レベルな罵倒を繰り返す2人。
そんな2人を見て、
「ああ。こっちの私とユエは、喧嘩する程仲が良い間柄なんだね!」
香織がわかった、と言わんばかりに手を叩きながら笑顔で言った。
「「良くない!」」
同時に振り向きながら叫ぶ2人。
「………息ピッタリ」
ユエが追撃する。
「「ピッタリじゃない!」」
やはりピッタリである。
すると、
「私からもしつもーん!」
奈々(原作)が手を上げながら口を開く。
その顔は何か面白い事を思いついたと言わんばかりの笑みだ。
「何だ?」
「そっちの優花っちと南雲は如何いう関係?」
「ちょ、奈々!? 何言ってるの!?」
奈々(原作)の言葉に優花(原作)が慌てた様な仕草を見せる。
「園部との関係………? 『仲間』だが?」
「………『仲間』ね。それ以上でもそれ以下でも無いわ」
互いに顔を見合わせつつ、何でもないようにそう言い切った。
そのやり取りに恥じらいや違和感などは無く、本心からそう言っているのは明白だ。
「なーんだ。そっちの優花っちは、こっちよりもスタイルよくなってるし、何か綺麗になってるから、南雲と大人の階段上ったと思ったのに…………」
それを聞いて、期待外れと言わんばかりに奈々(原作)はガッカリした様子を見せる。
「…………何? 奈々の反応から察するに、こっちの私は南雲に惚れてるの?」
優花(原作)に目をやりながら優花は言った。
「なっ!? ほ、惚れてるか、そんな訳ないじゃない!!」
顔を真っ赤にしつつ否定する優花(原作)だが、
「何て分かり易い…………」
「ムキになって否定してる所が、逆に証明してるものだよね」
ユエと香織がそう言う。
「ありえない! ありえないから!!」
尚も否定する優花(原作)。
それを見て、
「違う世界とは言え、我ながら見ていて情けなくなってくるわ………」
呆れた様に優花が呟く。
「アンタねぇ………そうやって恥ずかしがってないで好きなら好きってハッキリ言いなさい!」
まるで叱るようにビシッと指を突き付けながら優花が言った。
その指摘に益々顔を真っ赤にする優花(原作)。
すると、優花(原作)は反射的にテーブルにあった野菜スティックを手に取り、
「違うって言ってるでしょ!」
至近距離から全力で優花に向けて投げ付けた。
この至近距離では、一般人は愚か、チート持ちのクラスメイト達でも反応できない。
そしてその威力はチート持ちのクラスメイトでも悶絶させる程度の威力はある。
そんな威力と速度で投げ付けられた野菜スティックは…………
「……………ッ」
事も無げに優花の右手の人差し指と中指に挟み込まれて止められていた。
その行為に周りのクラスメイト達が驚いていたが、優花は投げ付けられた野菜スティックを不思議そうに眺めた。
それから優花(原作)に向き直り、
「ねえ、そっちの私………」
そう声を掛けた。
「な、何よ………」
優花(原作)は、事も無げに止められた事に驚きつつ、声を掛けられた事に反応する。
「もしかして、あなた『奈落』に行ってないの?」
「『奈落』って………オルクス大迷宮のか?」
優花の言葉に反応したのはハジメ(原作)だ。
「ええ」
肯定する優花。
「そ、そんな所行けるわけないじゃない!!」
自殺志願者では無いと言わんばかりに捲し立てる優花。
「なるほど………やっと腑に落ちたわ。今の投擲、余りにも弱すぎたからね」
優花はそう言いながら投げ付けられた野菜スティックを指先で弄ぶと、人差し指で弾いた。
ただそれだけの動作で、優花(原作)が投げ付けた以上の速度と威力で野菜スティックがはじき出され、優花(原作)が座っていたすぐ横の椅子の背もたれに、深々と突き刺さる。
「ッ………!?」
それを見て優花(原作)が息を呑んだ。
「『奈落』に行かなかったら、私もこうなってたわけね」
もう1人の自分を情けないと感じているのか、呆れた声でそう言った。
「つーか、何で園部が奈落に行ってるんだ? 俺と同じように橋から落ちたのか?」
ハジメ(原作)が疑問に思ったのか、そう問いかける。
「そう言う訳じゃないけど………え~っと、何処から説明したものかしら?」
優花が説明に困っていると、
「そっちのハジメも、トータスに召喚されて2週間ぐらいした後に、オルクス大迷宮の実戦訓練の途中でトラップに引っかかって65階層に転移。ベヒモスとの戦いの中で檜山に魔法を当てられて橋から落ちたって事で間違いないのか?」
「ああ」
大士の言葉にハジメ(原作)は頷く。
「ふむ…………こっちでも同じようにトラップには引っ掛かったんだが俺と葵は勝手に別行動してたから、トラップには引っ掛からなかったんだよ。因みにその時に俺と葵は自分のパートナーデジモンであるドルモンとリュウダモンに再会した。で、暫く待って皆が戻って来たんだが、その中にハジメが居なかったから、八重樫さんにハジメが橋から落ちたという話を聞いて、俺は即座に助けに行こうとしたんだが、メルド団長に気絶させられて王都まで連れてかれた」
「因みに大士が気絶してる間に、天之河君が余計な事を言ったせいで、デジモンであるドルモンとリュウダモンは魔物みたいなもの。私と大士はそれを操る魔人族みたいな存在だって話になってたの」
葵が大士の言葉を補足する。
「で、3日ぐらいして俺が目覚めた後、葵から話を聞いて、クラスメイトの連中は八重樫さんと白崎さん以外は信用できないと判断したんだ。まあ、偶然出くわした優花はその場で謝ってくれたから、すぐに信用できる相手だと分かったが。で、そのまま優花も連れて八重樫さんの所に行って、俺とドルモンでハジメを助けに行くことを話したんだよ」
「ッ!」
それに一番驚いていたのはハジメ(原作)の様だった。
「八重樫さんから話を聞いて、ベヒモスの強さは精々成熟期レベルだと判断した上で、八重樫さんと優花に食料の調達を頼んだ。俺と葵は目を付けられてたからな。まあ、その代わりに、出発までに白崎さんが目覚めたら一緒に連れて行って欲しいと条件を出されたわけだが」
「ッ…………!」
それに反応したのは香織(原作)。
「まあ、その話の中で、葵と、それから優花も一緒について来ることになったんだが」
「私が残ってると、リュウダモンと一緒に処罰されそうだったからね」
「私はその時は、南雲にトラウムソルジャーから助けられたお礼を言いたいって理由だったけど…………さっきの奈々の話じゃないけど、今思えばその時の私は南雲に惹かれかけていたんだと思うわ。そうじゃ無きゃ、命懸けで迷宮に挑むなんて言わなかった筈だし……………ま、でも、南雲と合流した時に香織と付き合っている事を知って、無意識の内にスッパリ諦めたんだと思うわ」
「それで出発直前に目覚めた白崎さんも一緒になって、オルクス大迷宮に挑んだわけだ。順調とはいかなかったが、65階層に辿り着いた俺達は、ベヒモスを倒してそのまま奈落の底に向かったわけだ。細かい所は省くが、辿り着いた奈落の先でハジメと合流した俺達は、そのまま奈落の攻略に挑んだわけだ」
「まあ、奈落の魔物との戦いで力不足を実感した私と香織は、南雲と同じように魔物の肉を食べたのよ。因みにスタイルが良くなったのも、魔物の肉を食べた副産物ね」
優花が魔物の肉を食べた事を言い、序に先程の奈々(原作)の疑問にも答える。
「もちろん死にそうな痛みを長時間受け続けたけどね。それで力を得た私達は、皆と協力しながら奈落を攻略していったんだよ」
香織がそう補足する。
すると、
「……………いいなぁ、そっちの私は………」
香織(原作)がそう呟いた。
「一緒にハジメ君を助けに行ってくれる、頼れる人が居て……………こっちには、そんな人いなかったから、ゆっくり一階層ずつ攻略していくしか方法が無かったんだよ」
切望の眼差しを香織に向けた。
「あーあ。こっちにも黒騎君みたいな人がいてくれたら、私もすぐにハジメ君を助けに行って、ユエにハジメ君が盗られる事も無かったのになぁ…………」
「………………ふっ、負け惜しみを」
ユエ(原作)が煽るような笑みを浮かべる。
「いくら切望しようと、私とハジメが結ばれる事は決まっていた! この世界がそう決めた!」
そんな事を言うユエを見て、
「何か、そっちのユエって、一歩間違えればとんでもない傲慢者になりそうね」
優花がそう漏らす。
「あ~、それ何となくわかるかも。こっちのユエは2番であることを自覚しているから、自重出来てるけど」
葵も同意する様な言葉を漏らした。
「なん………だと………!?」
再びショックを受けた様な表情になるユエ(原作)。
「まあ、互いに若干の違いはあるようだな………」
ハジメがそう言うと、
「いや、お前らの方はデジモン達が居るっていう事が大きな違いだと思うが………」
ハジメ(原作)がツッコミを入れる。
すると、
「誰が何と言おうとこっちのハジメは私のもの………!」
そう言いながらユエ(原作)がハジメ(原作)にしなだれかかると、金色の光を纏い、大人の姿に変身した。
「「「「「は…………?」」」」」
その事に驚くのは、平行世界から来た一同。
「…………………何それ?」
ユエが動揺しつつ問いかける。
ユエは自身の再生能力の所為で年を取らず、成熟する前に成長が止まってしまったため、少女の様な見た目が若干のコンプレックスだったりした。
しかし、目の前のユエ(原作)はそんなコンプレックスを吹き飛ばす程に成熟し、魅惑的なスタイルを持つ美女となっていた。
「何って………通称大人モードだけど………」
目を丸くして見て来る大士達に、言葉が尻すぼみになるユエ(原作)。
「そっちのユエは大人モードになれねぇのか?」
「なれねぇっつーか、大人モードって何だよ!?」
ハジメ(原作)の言葉にハジメが叫ぶ。
「何って………そっちのユエはエヒトに身体乗っ取られなかったのか?」
「エヒト…………? ああ、そう言えば居たなそんな奴。確かにユエの身体が一度奪われたな」
「そのエヒトがユエの体を掌握する際についでとばかりに成長させて、ユエが身体を取り戻すときにその能力も一緒に手に入れて…………」
「ちょっと待て! あの短時間でそんな事出来たのか!?」
「短時間って………3日は時間あったぞ?」
「3日!? って……………ああ、そう言う事か…………」
驚いていたハジメだったが、突然納得したように大人しくなった。
「こっちには神代が居ねえからな。あの時はそのままユエの身体が乗っ取られ続けたのか…………」
ハジメがそう言うと、
「そういや居たな。イグドラシルとの戦いの前座にもならなかった奴が………」
「そう言えば居たわね。葵の鶴の一声で消されてた奴が…………」
「神様気取りで本当の神罰受けて消えた人が居たねぇ………」
大士、優花、香織が順番に懐かしむ様にそう言った。
エヒトをまるでいなかったも同然の様に語る大士達に、今度はハジメ(原作)達が目を丸くした。
「くっ…………エヒトに身体を乗っ取られ続けることで、そんな特典があったとは…………!」
ユエはまるで、景品を逃したと言わんばかりに悔しそうにしている。
「…………………なあ? ちょっと提案なんだが、こっちとそっちで出来事の比較をしていかねえか?」
ハジメ(原作)がそう提案した。
「確かに、そうした方が話も分かり易いか………単純に興味もあるし」
大士がそう言うと、再び互いに向かい合うのだった。
はい、原作クロス編第2話です。
時期はアフターの帰還者の集いの時です。
いきなりバトルになりそうだったのを大士が仲裁?して止めました。
互いの違いに混乱する中、情報の共有を提案するハジメ。
次回は互いの出来事のお話です。
お楽しみに。
マブラヴ編の次は?
-
トータス旅行記編
-
原作クロス編