この位でいいのかな?
一発の銃弾が魔人族の女の命を奪った。
その事実に、周りのクラスメイト達は沈黙する。
目の前で明確な人死を見たのだ。
それも仕方ないだろう。
檜山に至っては腰を抜かしているが。
しかし、大半は割り切ろうと努力しているように伺える。
殺しに掛かってきた相手だ。
それを殺したハジメを非難するのは間違っていると頭では分かっているのだろう。
それでも多少は思う所はあるようだが。
その時、オウリュウモンが光に包まれて葵とリュウダモンに分離する。
「ふう………」
葵は一息つくと、リュウダモンと顔を見合わせて笑みを浮かべた。
すると、
「お疲れ様、ハジメ君」
こちらに戻ってきたハジメを白崎さんは労わる。
「おう………香織もよくやった。ユエもありがとな。頼み聞いてくれて………」
「んっ」
3人の周りに桃色空間が発生する。
「3人とも空気読んでださい! ぞろぞろ集まって来ましたよ!」
シアが突っ込むと、メルド団長を含めたクラスメイト達が集まってきた。
「………おい南雲、何故彼女を………」
天之河が何か言いかけた所で、
「香織! さっきも言ったけど、本当に無事だったのね!」
八重樫さんが白崎さんに駆け寄って改めて再会の感動を噛み締める。
「うん。約束通り、ハジメ君と一緒に戻って来たよ!」
その言葉に八重樫さんはハジメに向き直り、
「南雲君も無事でよかったわ。生きててくれて安心した………」
「………香織を悲しませるわけにはいかないからな………運の割合もデカかったとは思うが………意地で生き延びたよ」
ハジメはそう答える。
「優花と葵も元気そうで安心したわ…………それから黒騎君。約束通り、香織達を護ってくれてありがとう」
八重樫さんは俺達の方を向くとそう言って頭を下げた。
「正確には俺達が護ったのはハジメと合流するまでだけどな。そこからは白崎さんも優花も自分の身は自分で護ってたし………葵もリュウダモンがいたからそこまで俺が気にする必要も無かったし………」
俺がそうお言うと、
「何言ってるのよ? 途中で出てきたデジモン達は大士が居なかったら絶対にヤバかったじゃない」
「そうそう。特に究極体のボルトモンが出てきた時にはもう終わりかと思ったよ」
優花と葵がそう言う。
「………………」
そう言ってくる2人に俺は照れ臭くなって顔を逸らす。
そんな俺達の反応に八重樫さんが何かに気付いたと言わんばかりに目を光らせた。
「……………そう言えば、あなた達名前で呼び合うようになったのね? 距離感も近くなってるみたいだし」
八重樫さんは面白そうに笑みを浮かべている。
「そ、そりゃ奈落の底で死線を何度も一緒に潜り抜けたんだ。互いの絆が深まるのは当然だろ………!」
俺はクラスメイト達の前で余計な勘繰りを受けないように当たり障りのない答えを返す。
すると、
「そうだよね~。そりゃ勿論…………」
「日本の常識がぶっ壊れるぐらいには…………ね?」
葵と優花がニヤリと笑いながら、俺の両腕に手を回し、密着してくる。
この2人は、クラスメイトの前でも俺達3人の関係を隠すつもりが全く無いらしい。
「なっ!?」
揶揄うつもりだったのが逆に衝撃的な事実を返されて八重樫さんは驚愕の表情を浮かべている。
「あはは……………まあ、そう言う事だ」
俺は苦笑しつつもこの際なので認めてしまう事にした。
「………………………」
固まったままの八重樫さん。
すると、
「やはり最低だな、君は………!」
横から声がした。
そちらを向くと天之河がズカズカと歩いて来て、
「君の事だ。魔物から護る代わりに2人との関係を強要したのだろう………! 元から気を引こうとした神代さんだけではなく、園部さんにまで毒牙を伸ばすとは、見下げ果てた奴だ………!」
「「「…………………」」」
俺達は呆気にとられた。
何言ってんだコイツ?
葵と優花も同じ思いの様だ。
「それに南雲もだ…………! お前は戦意を喪失した相手を撃ち殺したんだ。しっかりと話し合う必要がある。香織も南雲から離れた方がいい」
その言葉にクラスメイトの中から非難の眼差しが飛ぶ。
流石に今の物言いは無いと分かっている様だ。
「ちょっと光輝! 助けてくれた南雲君にそんな言い方はないでしょう?」
八重樫さんが天之河に向かって抗議する。
「だが雫。彼女は既に戦意を喪失していたんだ。殺す必要はなかった。南雲がしたことは許されることじゃない」
「光輝! いい加減にしなさいよ? 大体あなたがあの時に……」
八重樫さんが天之河に抗議しようとした時。
「え? 何でハジメ君から離れないといけないの?」
白崎さんが天之河を軽く睨み付けながらそう言う。
「何を言ってるんだ!? 香織! 南雲は人殺しなんだぞ!? そんな奴の傍に香織を置いておけるわけないだろう!?」
天之河はさも当然のように言った。
「…………………ハジメ君が人を殺す所なら、もう何度も見てるよ」
「なっ!?」
白崎さんの言葉に天之河は絶句する。
「……………な、なら何故まだ南雲の傍に居るんだ………!? はっ! そうか! 脅されているんだな!」
コイツの自己完結思考はどうにかならんのかね?
「勝手な事言わないで欲しいな。私は自分の意思でハジメ君の傍に居るの」
白崎さんが心外だと言わんばかりにそう言う。
「何故だ!? 何故…………」
天之河が尚も問いかけようとした時、
「……くだらない…………ハジメ、カオリ………行こう?」
ユエが冷たい声色でそう呟いた。
「あー、うん、そうだな」
「そうだね、これ以上問答しても意味無いし」
ハジメも白崎さんもその言葉で天之河から興味を失ったように視線を切る。
だが、
「待て! まだ話は終わっていない!南雲や黒騎の本音を聞かないと『仲間』として認められない。それに、君は誰なんだ? 助けてくれた事には感謝するけど、初対面の相手にくだらないなんて……失礼だろ? 一体何がくだらないって言うんだ?」
「……」
ユエは言葉を交わす価値も無いと判断したのか顔を背けるだけで何も言わない。
だが、
「別にお前に『仲間』として認められたいなんて思ってねえよ」
ついつい俺が口走ってしまう。
「何だと!?」
天之河がこちらに振り向く。
「俺は元より、ハジメがここに来たことだって遠藤にせがまれたとか、クラスメイトがピンチだから助けに来たとかじゃない。あくまで『白崎さんが、八重樫さんを助けに行きたい』と言ったからここに来ただけだ。まあ、クルモンが居ることは知らなかったから来ただけの価値はあったが………ハッキリ言えば、俺達は八重樫さんが居なきゃお前らを助けに来る気は無かったって事だ」
「な、何だって………!? 『仲間』を見捨てるつもりだったのか!?」
「………だから誰が『仲間』だ?」
俺は理解しようとしない天之河に呆れてくる。
「…………さっきの私の話を聞いて無かったの? 大士があなた達の中で助ける気があったのは、雫とクルモン、後はメルド団長ぐらいよ。後はオマケだって言ったじゃない」
優花が横から口を出す。
「園部さん! 君は黒騎の味方をするのか!?」
「そんなの大士の味方に決まってるじゃない」
天之河の問いかけに、さも当然と優花は答える。
「なっ!?」
「あなたの勘違いした正義感がどれだけ大士を傷付けたか分からないの? 檜山の勝手な行いの責任を押し付けられ、親友であるドルモンを魔物と同列に扱われ、挙句に冤罪で投獄される寸前だった………その間、私たちと愛ちゃん以外の誰一人として大士の味方をしなかったのに、それで愛想を尽かされないと思うなんて、ホントおめでたいわね」
「そ、それは冤罪ではなく事実だろう!?」
「何を以って事実だって言い切るのよ?」
天之河の言葉に優花は問い返す。
「実際に今黒騎は神代さんに関係を強要しているじゃないか! その事実が檜山の証言を裏付けている!」
「強要されてるわけじゃないんだけど……………」
葵の静かなツッコミは天之河には届かない。
「ふ~ん…………確かに今葵は大士と関係を持ってるけど、それが何で檜山の証言の裏付けになるの?」
「黒騎は神代さんの気を引こうと檜山に宝石を取りに行かせたんだろう? その理由と現状に矛盾は無い」
矛盾は無くとも穴だらけだと思うんですが?
「なら聞くけど、大士と葵は何時ドルモンとリュウダモンに再会したの?」
「そ、それは…………」
「葵が訴えてたけど、2人が罠に掛からなかったのはドルモンとリュウダモンに再会するために別行動をしていたから。その証拠にドルモンとリュウダモンの存在があるわ」
「………………そ、そうだ! 罠に掛かった後に出会っただけかもしれないじゃないか!?」
「例えそうだとしても、低ステータスの2人だけが罠に掛からなかったとして、あの階層の魔物相手に生き残れると思ってるの? 少なくとも、大士はそう言う事を考えない馬鹿じゃないわよ。どっかの馬鹿と違ってね」
優花はそう言いながら檜山を睨む。
「ッ…………!?」
檜山は咄嗟に目を逸らす。
「そ、それは…………! な、なら本当は迷宮に潜る前にデジモンと再会していたんだ! そうであれば2人で孤立したとしても無事だった説明が付く!」
「何が『なら』なのよ…………結局アンタは自分が間違ってた事を認めたくないだけでしょ? この頭お花畑の天然勇者」
優花は呆れた様にそう言う。
最早説得する気力も失せたようだ。
優花が俺に振り返り、
「無駄な時間を取らせたわね。さ、行きましょ?」
優花は俺の腕を取ると同時に歩き出し、
「待つんだ! 園部さんも神代さんも黒騎に関係を強要されてるだけなんだろう? なら俺達と来ると良い! もう黒騎に好き勝手な真似はさせない!」
その言葉に思わず足を止めてしまった。
優花は深く、深く溜息を吐き
「……………いい加減にしてくれないかしら…………? アンタの自分勝手な思い込みを否定するのももう疲れたからこれだけは言っておくわ。私も葵も、自分自身の意志で大士を好きなった…………大士を愛したの。強要なんて一切されてない!」
「くっ………ここまで言っても認めないなんて………お前は一体どれだけ卑劣な事を………!」
「「「…………………………」」」
天之河の言葉に優花だけではなく、俺や葵も呆れた表情をする。
「…………………あ~、天之河」
俺は最早否定する気力も無くし、天之河に声を掛けた。
「何だこの犯罪者………!?」
「お前、ステータスどの位?」
天之河の言葉に突っ込まずに自分の要求だけを伝える。
「何故お前にそんな事を教えなければならない…………!」
俺を睨みつけてそう言ってくる。
「いや、俺から2人を護るって言う位だからどれほどのものか気になって」
「教える気は無い!」
「あっそ。優花」
俺は優花に耳打ちする。
優花は自分のステータスプレートを取り出すと、天之河に投げ渡した。
「何のつもりだ?」
「それを見て私を護るって言えるなら考えてあげる……………“考えるだけ”だけど」
「ッ…………?」
天之河は怪訝に思いながらも優花のステータスプレートに視線を落とす。
「なっ…………!?」
絶句して声が出なくなる表情がすぐにわかった。
「多分だけど、さっきの魔物程度に苦戦する様だから、あなたの基本ステータスは1000に届くかどうかって所じゃないかしら? 限界突破を使っても私なら片手で完封できるわね」
「…………な、ならどうして黒騎に従ってるんだ!?」
「その問いにはもう答えてるわ。わるいけど、もう返してもらうわね」
「…………なっ!?」
いつの間にかステータスプレートは優花の手にあった。
「ま、待て………まだ……!」
天之河が懲りずに叫ぼうとした瞬間、その頬を何かが掠めて迷宮の壁に突き刺さった。
迷宮の壁に深々と突き刺さったのは苦無だ。
「いい加減にして………! 次に何か言ったら本気で当てる………!」
流石の優花もマジギレしれてるっぽい。
その気持ちは良ーくわかる。
「ッ……………!?」
そのまま俺達が歩いて天之河の前から離れると、
「天之河。どちらが正しいかなんて問答するつもりは無いが、少しだけ指摘させてもらう」
ハジメが天之河の前に立ってそう口を開いた。
「指摘だって? 俺が、間違っているとでも言う気か? 俺は、人として当たり前の事を言っているだけだ」
「お前は、俺があの女を殺したから怒っているんじゃない。人死にを見るのが嫌だっただけだ。『殺す』事に恐怖し、逃げた事で仲間を危機に陥れた自分の不甲斐なさを隠すために、『無抵抗の人間を殺した』というもっともらしい理由で俺を責め、覆い隠すことも含めてな」
「ち、違う! 勝手なこと言うな! お前が、無抵抗の人を殺したのは事実だろうが!」
「生き残るために敵を殺す………それの何が悪い?」
「なにっ!? 人殺しだぞ! 悪いに決まってる!」
「俺は容赦するつもりは無い。『敵は殺す』。これは俺が奈落で生き残るために培った価値観だ。お前達に押し付けるつもりは無い。だからお前も、俺にお前の正義を押し付けるな。それでも気に食わないと言って俺の前に立ちはだかるのなら………」
ハジメは銃を向け、
「例え元クラスメイトでも『殺す』!」
「ッ……!?」
ハジメの『威圧』によって天之河は動けなくなって押し黙る。
「勘違いするなよ? 俺は、戻って来たわけじゃないし、まして、お前等の仲間でもない。大士が言った通り香織が八重樫を助けたいと言ったから助けに来ただけ。ここを出たらお別れだ。俺には俺の道がある」
ハジメの『威圧』で動けなかった天之河は、『威圧』が解けたことで動けるようになり、まだ納得していないと言わんばかりにハジメに向かって口を開こうとして、
「……これ以上、ハジメ君を悪く言うの、やめてくれないかな?」
「か、香織……!?」
白崎さんが天之河に責めるような視線を向ける。
「ハジメ君は『必死』なの。私達を護るために………私のお願いを叶える為に必死に行動してるだけなの…………今回も私が『雫ちゃんを助けて』とお願いしたからハジメ君はその『お願い』を叶える為に全力で行動しただけ…………」
「だ、だけど、彼女を殺す必要は無かった筈だ!」
「うん。確かに殺す必要は〝無かった〟。だからハジメ君は最初見逃そうとしたんだよ。すぐに立ち去るなら追わないってね。そこで退いてればハジメ君は本当に見逃すはずだった。だけど、その言葉を無視してあの女の人はハジメ君と敵対する道を選んだ。だからハジメ君はあの人を殺す〝必要がある〟と判断したんだよ」
「何故だ!? 最後には彼女も戦意を失ってた! 殺さなくても捕虜にして幽閉するなりなんなり、他にも方法があったはずだ!」
「今は無くても何れあの人はまた立ちはだかってたと思うよ。だからハジメ君は『敵』として殺した」
「そ、そうならないように説得すれば…………!」
「話し合って分かり合えるなら、そもそも1000年以上も争い合って無いよ………」
「ッ……………」
「ハジメに文句言いたいなら、ハジメと同じように奈落で2週間以上独りで過ごしてから言え」
「爪熊辺りに殺されると思うけどね」
「むしろ蹴りウサギに返り討ちに遭うんじゃないかな?」
俺、優花、葵の順番でそう突っ込む。
「……戦ったのはハジメ。恐怖に負けて逃げ出した負け犬にとやかくいう資格はない」
「なっ、俺は逃げてなんて……」
ユエが冷たい口調で天之河を非難する。
その時、
「よせ、光輝」
「メルドさん!」
メルド団長が天之河を止めた。
そして、ハジメや俺達を見回すと、
「お前達……………すまなかった………!!」
メルド団長は土下座する勢いで頭を下げた。
「あの時………俺はお前達を助けられなかった…………本当にすまなかった………!!」
ハジメに対しては奈落に落ちてしまった事。
俺に対しては、庇いきれずに冤罪の責任を押し付けてしまった事だろう。
「それから、お前達が生きていたことを本当に嬉しく思う」
メルド団長は本当に嬉しそうにそう言った。
まあ、メルド団長にそう言われるのは悪い気はしない。
そして、天之河達に向き直ると同じように頭を下げた。
「メ、メルドさん!? どうして、メルドさんが頭を下げるんだ?」
「当たり前だ…………俺はお前達の教育係……………『戦争』をする上で『敵を殺す』ことは避けて通れない問題だ…………本当ならもっと早く盗賊などをけしかけてお前達に『殺す覚悟』を教えるはずだった……………だが、お前達はこの世界とは関係の無い人間だ。俺達の世界の都合でそのような事を教えていいのかとずっと悩んでいて、自分に言い訳をしながら先延ばしにしてしまった………それが今回の結果だ。これは俺のミスだ。本当にすまなかった」
メルド団長もどうやら天之河達の扱いについて悩んでいたらしい。
騎士団長である自分と、メルド自身との間で葛藤していたようだ。
そんな傍ら、依頼は完了したとばかりにこの場を去ろうとした俺達だが、メルド団長の頼みで勇者パーティーを地上まで護衛することになった。
面倒そうに遭遇する魔物を片手間に全滅させていくハジメ達に、感嘆の視線を向ける者、妬みの視線を向ける者、青ざめたまま睨む者などに別れている。
そんな中、自分の中におっさんが居るという谷口が、以前と比べて格段にスタイルが良くなっている白崎さんや優花に狙いを定めたり、シアのウサ耳や巨乳に狙いを定めたりしていた。
尚、クルモンはドルモンの頭の上で楽しそうにしている。
【オルクス大迷宮】の入場ゲートを出た瞬間、
「あっ! パパぁー!!」
「ミュウ?」
何故かミュウがハジメの下に駆け寄って来た。
「パパぁー!! おかえりなのー!!」
ミュウはステテテッとハジメに駆け寄ると、そのままの勢いでハジメに跳び付く。
ハジメは自然にミュウを受け止めると、
「ミュウ、迎えに来たのか? ティオはどうした?」
そう問いかける。
「うん。ティオお姉ちゃんが、そろそろパパが帰ってくるかもって。だから迎えに来たの。ティオお姉ちゃんは……」
ミュウがそう言いかけた所で、
「妾は、ここじゃよ」
少し離れた所からティオが現れる。
「おいおい、ティオ。こんな場所でミュウから離れるなよ」
「目の届く所にはおったよ。ただ、ちょっと不埒な輩がいての。ミュウには刺激が強かろうて………」
「なるほど………それなら仕方ないか……で? その自殺志願者は何処だ?」
ハジメが雰囲気を鋭くしてギラリと目を光らせる。
「いや、ご主人様よ。妾がきっちり締めておいたから落ち着くのじゃ」
「……チッ、まぁいいだろう」
舌打ちしつつそう言うハジメ。
「……ホントに子離れ出来るのかの?」
それには同意する。
どうやらミュウを誘拐しようとした輩が居る様だ。
まあ、ティオが居たのが運の尽き。
その結末は言うに及ばず。
すると、八重樫さんがゆらりと白崎さんに近付き、ガシッと肩を掴んだ。
「ちょっと香織!? どういう事!? アンタいつの間に子供産んだの!?」
白崎さんをガクガクと揺さぶりながら八重樫さん問いかける。
「し、雫ちゃん落ち着いてぇ~~~~!」
揺らされながら白崎さんが叫ぶ。
どうやら八重樫さんは、ハジメの子=白崎さんの子と判断した様だ。
まあ、冷静に考えれば4ヶ月で子供が生まれるわけないし、何より種族自体が違うのだが。
暫くして落ち着いた八重樫さんが、
「穴があったら入りたい…………!」
見事に羞恥で蹲っていた。
「雫、元気出すっクル」
その頭をクルモンがナデナデしている。
すると、
「わぁ、パパ。その子何?」
ミュウがクルモンを見て顔をパッと輝かせる。
「あぁ、コイツはクルモンって言うんだ。大士の友達だな」
「おじちゃんの?」
「グフッ!?」
ミュウの一言に俺は胸を貫かれたような衝撃を受ける。
今更だが、俺はミュウからおじちゃん呼ばわりされている。
何度呼び方を変えさせようとしても、ハジメの事をパパと呼ぶのと同じぐらい固持してしまっている。
挙句の果てにはハジメに泣き付いて、『何ミュウを泣かせてんだゴラァ』と言わんばかりの視線を向けられたため、今は仕方なく受け入れているのだが。
……………………精神年齢ならおじちゃんと言われても仕方なんだがな。
「はじめまして! ミュウは、ミュウって言うの!」
「クルックル! クルモンは、クルモンでクル!」
ミュウとクルモンが笑い合う光景を見て、ま、いいかと心がほんわかしてしまう。
「クルックル!」
「あはは~!」
ミュウがクルモンを頭にのせて駆け回る。
クルモンも嬉しそうだ。
「ッ……………!」
隣では八重樫さんが未だ項垂れていた。
耳まで真っ赤にしているが、それほどまでに恥ずかしかったのだろうか?
「ど、どっちも可愛すぎる……………」
何か呟いたようだが俺には聞こえなかった。
ティオとミュウが合流したために、ギルドに行ってそのままホルアドを発とうと決め、俺達は歩き出した。
すると、
「待つんだ! もう南雲や黒騎が俺達を仲間と思って無い事には何も言わない! だが、香織や園部さん、神代さん達をこれ以上無理矢理連れ回すのは止めてもらおうか!」
頭お花畑の天然勇者がまた訳の分からんことを言いだした。
つーか、優花があれだけハッキリ自分の意思を伝えたのにまだ俺達が無理矢理連れ回してると思ってるのかよ。
「君達もだ。これ以上、その男の元にいるべきじゃない。俺と一緒に行こう! 君達ほどの実力なら歓迎するよ。共に人々を救うんだ。それからシア………だったかな? 安心してくれ。俺と共に来てくれるなら直ぐに奴隷から解放する。ティオも、もうご主人様なんて呼ばなくていいんだ」
何処までこいつは自己完結してんだろうか?
少なくともハジメは自分から言い寄ったことは一度も無いぞ。
むしろシアとティオに至ってはほぼ押し掛け状態だ。
シアの首輪はむしろシアの身を護る為。
あの首輪が無かったら何回人攫いを病院送りにする羽目になったか。
そんな事を言って爽やかな笑顔を浮かべながら、ユエ達に手を差し伸べる天之河。
八重樫さんはは顔を手で覆いながら天を仰ぎ、白崎さん、優花、葵は開いた口が塞がらない。
ユエやシア、ティオはドン引きしている。
「南雲や黒騎は、女性をコレクションか何かと勘違いしている最低な男だ。人だって簡単に殺すし、強力な武器を持っているのに、仲間である俺達に協力しようともしない。香織や君達もあいつに付いて行っても不幸になるだけだ。だから、ここに残った方がいい。いや、残るんだ! 例え恨まれても、君のために俺は君を止めるぞ。絶対に行かせはしない! どうしても行きたいというのなら俺を倒してから行くんだ!」
剣まで抜いて立ちはだかる天之河。
ハジメがやれやれと天之河をゴム弾で黙らせようと銃を抜こうとして、
「…………香織?」
白崎さんが前に出ながら手で制された。
白崎さんはそのまま天之河の前に歩いていき笑みを浮かべた。
「香織………! 分かってくれたか………!」
天之河は笑みを浮かべて白崎さんに手を差し伸べようとした。
そして、
「………………がっ!?」
一瞬で白崎さんに顔面を掴まれ、そのまま地面に叩きつけられた。
不意打ちな所為もあるだろうが、何よりもステータスの差で地面に叩きつけられた天之河は一瞬にして意識を刈り取られた。
「言われた通り倒したから行かせてもらうね」
笑みを浮かべたままそう言った。
いや、ホント神経図太くなったな白崎さん。
天之河に同情……………しないな。
うん、欠片も出来ない。
俺達は倒れた天之河を一瞥すらせずにその横を通り過ぎる。
その時、何かを決意したように八重樫さんが顔を上げて俺達に駆け寄って来た。
「待って!」
そう言って俺達を呼び止める。
「何? 雫ちゃん。いくら雫ちゃんに言われても………」
白崎さんは俺達を引き留めようとすると判断した八重樫さんに自分の決意を口にするが、
「ううん、違う! 止めるつもりは無いわ!」
八重樫さんはそう言った。
すると、
「私も連れてって!」
信じられないことを言いだした。
「えっ!? 雫ちゃん!?」
流石の白崎さんも予想外だったのか、驚愕の表情で声を漏らす。
「皆には勝手言って悪いんだけど、私は香織達の傍に居たいの」
「天之河君の事は良いの?」
葵が八重樫さんに問いかける。
「黒騎君が聖人君子じゃないのと同じように、私も聖母じゃないわ。香織が居なくなってからの光輝は、まるで主人公に助けられる囚われたヒロインの様に香織『だけ』の生存は疑ってなかったわ。南雲君のことはあっさりと見限った癖に。それにさっき光輝が南雲君や黒騎君が女性をコレクションの様に考えてるって言ってたけど、光輝こそ女性を自分のヒロインというコレクションにしか考えてないことがハッキリと分かったの。挙句に私達を助ける為に『殺す』という行為からも逃げた。悪いけど愛想が尽きたわ」
「雫ちゃん…………」
「雫が愛想尽かすなんてあいつ何をやったのよ…………」
「相当だね…………」
八重樫さんはハジメの方を向くと、
「だからお願い。私も連れて行って………」
「連れてけと言われてもな…………」
ハジメが困った顔をする。
八重樫さんの実力を考えると、大迷宮攻略に連れて行くのは不安が残るからだろう。
まあ、ミュウや俺、葵を連れている時点で今更だとは思うが。
未だ迷っているハジメを見ると、八重樫さんが近付き、
「………連れてってくれないと……大変な事になるわよ?」
「? 大変なこと? 何が………」
「〝白髪眼帯の処刑人〟なんてどうかしら?」
「……は?」
八重樫さんがボソッと呟いた言葉に、ハジメは怪訝な声を漏らす。
「それとも、〝破壊巡回〟と書いて〝アウトブレイク〟と読む、なんてどう?」
「ま、待て……! お前一体何を……!?」
ああ、もしかしてこれって…………
俺は八重樫さんが何をしようとしているのかを察した。
「他にも〝漆黒の暴虐〟とか〝紅き雷の錬成師〟なんてのもあるわよ?」
「お………お前………まさか…………!?」
そう言えば八重樫さんは白崎さんに付き合ってそう言うオタ知識を知ってるって言ってたっけ。
「ふふふ、今の私は〝神の使徒〟で勇者パーティーの一員。私の発言は、それはもうよく広がるのよ。ご近所の主婦ネットワーク並みにね。さぁ、南雲君、あなたはどんな二つ名がお望みかしら……随分と、名を付けやすそうな見た目になったことだし、盛大に広めてあげるわよ?」
「待て! ちょっと待て! 何故、お前がそんなダメージの与え方を知っている!?」
ハジメって、意外と自分の厨二キャラみたいな見た目を気にしてるからなぁ………
「香織の勉強に付き合っていたからよ。香織は南雲君と話したくて、黒騎君や葵と良く話してたデジモンはもちろんの事、他のオタ知識も頑張って勉強してて、それに私も結構な頻度で付き合わされてたから……知識だけなら結構あるのよ。確か、今の南雲君みたいな人を〝厨二〟…………」
「やめろぉー! やめてくれぇ!」
ハジメが頭を抱えて本気で叫んだ。
「あ、あら、想像以上に効果てきめん……自覚があるのね」
八重樫さんは思った以上のハジメの反応にちょっと呆気に取られていた。
「こ、この悪魔めぇ……」
ハジメが八重樫さんを睨みながらどこぞの小者のようなセリフを吐く。
「わぁー…………雫ちゃん凄い」
「南雲が口で完膚なきまでにやられてるわ」
「こういう南雲君も新鮮だねー」
白崎さん、優花、葵が八重樫さんを尊敬するような目で見る。
「ふふ、じゃあ連れてってくれるわよね?」
「…………………」
その言葉にハジメが黙っていると、
「ふぅ、
「わかった! わかったから、そんなイタすぎる二つ名を付けないでくれ」
八重樫さんの追撃にハジメはあえなく陥落した。
「じゃあすぐに荷物纏めてくるから! その間に出発したりしたら、この世界でも日本でも、あなたを題材にした小説とか出すから覚悟してね?」
「おまえ、ホントはラスボスだろ? そうなんだろ?」
完全に言葉だけでハジメを言い負かした八重樫さんに、ユエやシア達は戦慄の表情を浮かべた。
八重樫さんが荷物を纏めに行っている間、ようやく立ち直ったハジメがふと檜山を見た。
すると、檜山に近付いていき、
「檜山。火属性魔法の腕は上がったか?」
「……え?」
そう問いかけた。
その問いに一瞬ポカンとした後、檜山の表情が徐々に青ざめていく。
「な、なに言ってんだよ………? 俺は前衛だし……一番適性あるのは風属性だ」
明らかに動揺した口ぶりで檜山はそう言う。
「ほう? てっきり火属性だと思っていたよ」
ハジメはその言葉にニヤリと笑ってそう口にする。
「か、勘違いだろ………!? いきなり何言い出して……!」
「じゃあ好きなんだな! 特に火球とか。思わず使っちゃうくらいになぁ?」
「……」
畳み掛けるように続けられるハジメの言葉に、檜山の表情が青を超えて白くなっていく。
ハジメは納得いったとばかりにフンと鼻を鳴らすと、
「お前等の謝罪なんざいらないし、過去の事を気にしてもいない。俺にとって、お前らは等しく価値がない。だが、『敵』として俺の前に立つなら容赦なく『殺す』。それだけは覚えておけ」
「ヒィッ………!」
その言葉に檜山は腰を抜かす。
ハジメは確認したいことは済んだと興味を無くしたように檜山の前から立ち去る。
すると、入れ替わるように白崎さんが檜山の前に立つ。
白崎さんは笑みを浮かべているが、俺達から見れば目が全く笑っていない。
しかし、その笑顔を浮かべたまま顔を近付けられた檜山は白かった顔が赤くなっていく。
「…………ハジメ君が復讐を考えてない以上私から如何こう言うつもりは無いよ。けどね、これだけは言っておこうと思って」
「な、何を………?」
檜山は顔を赤くしたまま聞き返すと、白崎さんは更にニッコリと笑って、
「……………私、とっくにハジメ君に『女』にして貰ったから」
その言葉の意味を正しく理解した檜山が、表情が抜け落ちた様に呆然となる。
確かに白崎さんのその言葉は、今の檜山に対してどんな罵詈雑言よりもショックがデカいかもしれない。
その時、丁度八重樫さんが戻ってきたために、
「さ、行こう!」
呆然となった檜山を無視して白崎さんはハジメに最高の笑顔を向けた。
ギルドで用事を終わらせた俺達は魔力駆動四輪で再び荒野を走っていた。
八重樫さんが加わったために、四輪が更に人数オーバーになったため、シアの運転する二輪にティオが同乗することでスペースを作った。
「この自動車やあのバイクも南雲君が作ったの?」
「まぁな………ベルゼブモンは自前だが」
丁度ハジメの真後ろに位置する後部座席から八重樫さんが問いかける。
席順は運転手のハジメの隣に白崎さん、その隣にクルモンを抱いたミュウ。
その隣にユエで、後ろの席に八重樫さん、優花、俺、葵の順で並び、荷台にドルモンとリュウダモン。
ベルゼブモンはベヒーモスに乗り、魔力駆動二輪にシアとティオが乗っている。
「………改めて南雲君の事を凄いと思うわ」
「何だ急に?」
「最初は〝無能〟と言われていた南雲君が、ここまで強くなった事も、こんな自動車や銃まで作り出せるようになったことに感心してるのよ」
「出来るようにならなきゃ死んでたからな」
ハジメは何でもないように答える。
そんなハジメに八重樫さんは小さく微笑む。
「雫ちゃん………?」
「………ラスボス?」
そんな八重樫さんに白崎さんとユエが訝しむ様な視線を向ける。
「えっ? なに? 二人共、どうしてそんな目で見るのよ?」
いきなりそんな目で見られた八重樫さんは困惑する。
「あはは、これは思わぬ伏兵かもね~」
葵が面白そうにそう言う。
「そうね。案外香織の最大のライバルになるかも」
「ちょ、ちょっと2人も何言ってるのよ!?」
八重樫さんはますます動揺し、声を張り上げた。
こうして八重樫さんを加えた俺達は騒がしさを増し、次の目的地である【グリューエン大火山】を目指した。
第27話です。
ちょっと脈絡が無い様な気がしないでもないけどまあいいや。
雫がここでメンバーINです。
ここで入れとかないと後々面倒な事になる気がして…………
勇者(笑)は哀れ香織にやられました。
これを予想してた人はいるのか?
さて、当初確実に続けようとした所はここまでなんですけど……………
ちょっとここで休憩します。
いや、普通なら半年以上かかる更新をここ1ヶ月でやってしまったのでちょっと疲れました。
約1週間程休みたいと思いますが…………
その先如何してほしいかアンケート取ります。
いや、更新を凍結してしまってるものが結構あるので…………
このままこの小説を続けて欲しいかそれとも別の小説を進めて欲しいかです。
流石に全部という訳には行かないので………
それでは。
この後の方針は?
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この小説の続き書けや
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IS×ネプテューヌの続き早よ
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むしろアルカディアでの凍結中の続き書いて