ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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トータス旅行記編
第1話 トータス旅行記 ~オルクス大迷宮編~


 

 

突然だが、俺達はトータスに来ていた。

理由は、ハジメの両親が連休を使って異世界に行きたいとゴネたらしいからだ。

ハジメとしては、もっと手軽にトータスと行き来できる研究の為に、魔力を無駄遣いするのは気が引けたが、ユエ達も既に根回しされていたらしく、両親の味方だったようで結局はハジメが折れる事になった。

そして、それならばと仲間内全員に声が掛けられ、その家族も含め、異世界ツアー御招待と相成ったのだ。

その異世界ツアーの参加者だが、まず言い出しっぺの南雲家のメンバー。

ハジメ、ユエ、シア、ティオ、レミアさん、ミュウとパートナーデジモン達、ハジメの両親である父親の愁さんと母親の菫さん。

ハジメの恋人である白崎さんとその父親の智一さんと母親の薫子さん。

同じくハジメの恋人である八重樫さんと父親の虎一さんと母親の霧乃さんに、更には祖父である鷲三さん。

ハジメの恋人で俺達の教師でもあった愛子先生とその母親の昭子さん。

次に俺の関係者だが、俺、葵、優花、シャルロット、イルククゥ、カトレア、テファ、アリス、エリス、クラウディア、エミリア、カンナ、クオン、シュヴァリアとパートナーデジモン達と冥夜、慧、ハル、悠陽は当然の事だが、そこに俺の父親の士郎(しろう)、母親の(りん)、姉の真姫、妹の美姫。

それと月読さん達メイド5人。

葵の父親の(すぐる)さんと母親の麗奈(れな)さん、お兄さんの(みのる)さん。

優花の父親の博之さんと母親の優理さん。

そして、タカト、ギルモン、ジェン、テリアモン、ルキ、レナモン、リョウ、モノドラモン、ヒロカズ、ガードロモン、ケンタ、マリンエンジェモン、ジュリ、レオモンのテイマーズの面々だ。

 

「ここが異世界かぁ~!」

 

「すっげ~! 俺達本当に異世界に来たんだ!」

 

トータスに転移して早速ヒロカズとケンタが興奮している。

 

「いや、お前らも一回デジタルワールドって言う異世界に行ってるだろ?」

 

俺は思わずツッコむ。

 

「だけど、デジタルワールドってデジモン達しかいないから俺達の考える異世界って感じじゃなっかったんだよ。こうやって人が住んでて、剣と魔法やモンスターがいる! これぞファンタジーな異世界って奴だよ!」

 

ヒロカズがそう熱弁する。

 

「言いたいことは分からんでもないが、ヒロカズが考えている様な甘いもんじゃ無かったという事だけは言っておく」

 

その後、リリアーナ王女がやってきて、王女という職業のブラックの片鱗を見せた後、王宮に案内され、王妃とランデル王子との顔合わせや軽い王宮の見学を行った後、復興中の街に出て南雲夫妻のリクエストにより冒険者ギルドに行くことになり、そこで親達がはしゃぎまくって子供達が恥ずかしい思いをしたり、ブルックにいた受付おばちゃんことキャサリンが、ハジメ曰く『ム〇ミンがシアになってるレベル』というほどのビフォーアフターを遂げていた事に、キャサリンを知る者が漏れなく驚愕の声を上げたりした。

更に新生聖教教会の教会前には立派な愛子像が立てられており、愛子先生が絶叫し、その様子を見た母親の昭子さんが笑った事に開き直った愛子先生が昭子さんを聖母に仕立て上げたりと、初っ端から騒動が絶えなかった。

次に向かったのはオルクス大迷宮。

現れる魔物を瞬殺しつつ俺達が辿った道を進んでいく。

最初はオスカーの隠れ家まで転移する事も考えたが、親達が子供達が辿った道を見たいと言ったので、魔物を殺す所までしっかりと見せている。

尚、最初にはしゃいでいたヒロカズやケンタは、余りのグロさに顔を青くしていた。

そして色々な運命の分岐点である20階層に辿り着いた。

 

「そう言えばこの階層だったよな………ドルモンと再会したのは………」

 

ポツリと漏らした言葉に、全員の視線が俺に向く。

 

「そう言えば、お前と神代は勝手に別行動をとってたんだったな?」

 

「ああ、突然Dアークに反応があって、居ても立ってもいられなくてな」

 

俺がそう言うと、

 

「ユエ」

 

「ん、〝過去再生〟」

 

ハジメがユエに呼びかけると、ユエが魔法を発動する。

すると、半透明の当時の俺達の姿が浮かび上がった。

ぞろぞろと並んで歩くクラスメイト達。

その最後尾に、俺と葵は居た。

一応護衛の騎士も一緒に居たのだが、ピピピッと鳴り響いた電子音に、当時の俺は足を止め、同時に気付いた葵も足を止めた。

しかし、一緒に居た騎士は丁度その時に欠伸をしており、立ち止まった俺と葵には気付かずに進んでいってしまう。

 

『まさかっ…………!』

 

当時の俺がDアークを取り出す。

 

『えっ…………? 大士君、それって…………』 

 

葵も驚きながら自分のDアークを取り出した。

 

『あれ? 私のも反応してる?』 

 

『Dアーク………!? もしかして、葵さんもテイマー!?』

 

『へっ? 知っての通り私はテイマーだけど?』

 

『いや、俺の言ってるのは『デジモンテイマー』の方だ。葵さん、昔パートナーデジモンがいたでしょ?』

 

『う、うん………ほんの一ヶ月ぐらいだけど………』

 

『一ヶ月…………もしかして昨日言ってた友達って…………』

 

『うん、そうだよ』

 

『そうだったのか…………』

 

懐かしいやり取りを交わす俺達。

すると、

 

「………………他人行儀なタイシとアオイって、すっごい違和感あるわね」

 

それを見ていたアリスが呟く。

 

「そうだな。特に私達は、親しい間柄の2人しか知らない。今の2人からは考えられない関係だな」

 

クラウディアが同意する様にそう言った。

すると、俺が皆とは違う道に進み始め、それを葵が追う。

やがて行き止まりに辿り着くと、そこには四角い光が集まった塊、

 

「デジタルゲート?」

 

ジェンが呟く。

すると、当時の俺と葵がDアークをそのデジタルゲートに翳し、Dアークの光が強くなっていく。

しかし、

 

『グルルルル…………!』

 

そこに現れる狼型の魔物。

 

『しまった………!』

 

『ッ…………!』

 

過去の俺と葵が息を呑むのが分かった。

 

『葵さん、俺が何とか奴らの気を引くからその隙に逃げるんだ………!』

 

俺が剣を構えながらそう言う。

 

『何言ってるの!? そんなこと………!』

 

『葵さんを巻き込んでしまったのは俺の落ち度だ! それにこのままじゃ2人ともやられる!』

 

『でも………ッ! 大士君! 前!』

 

狼型の魔物に襲い掛かられ、押し倒される俺。

 

「む? 何故この程度の輩にいい様にやられておるのだ? 殴り倒せばいいものを」

 

シュヴァリアが不思議そうにそう言った。

 

「この時の俺は、まだデジソウルに目覚めていなかったんだ。しかも、ステータスも最弱だったから、マジで大ピンチだったんだよ」

 

俺はそう説明する。

地面に抑え付けられ、狼の牙が迫る。

 

「お兄ちゃん!?」

 

美姫が溜まらずに声を上げた。

その時、

 

『ええぃっ!』

 

過去の葵が剣で魔物の目を突き、怯んだ隙に俺が魔物の口内に剣を突き刺し、何とか倒す事に成功する。

しかし、そのすぐ後に2匹の狼型の魔物が現れ、再びピンチに陥る。

だが、

 

『………諦めて堪るか…………!』

 

『大士君?』

 

『こんな所で俺は諦めない………!』

 

俺は狼を見据える。

 

『お前と再び会うまで…………俺は死なない!』

 

俺が自分の決意を口にする。

Dアークが俺の思いに共鳴する様に光を強め、また同じく共鳴する様にデジタルゲートに光が集中する。

その時、狼の1匹が俺に向かって飛び掛かってきた。

 

『なあ、そうだろ!? ドルモォォォォン!!』

 

俺が叫んだ瞬間、デジタルゲートからドルモンが飛び出してきて、

 

『メタルキャノン!!』

 

口から放った鉄球で俺に襲い掛かろうとした魔物を吹き飛ばした。

 

『………………………』

 

俺がゆっくりと後ろを振り向く。

俺の視線がドルモンを捉えた。

 

『………………ドルモン』

 

俺が感極まりながらその名を呟く。

 

『………………大士』

 

ドルモンも俺の名を口にする。

 

『久し振りだな、ドルモン』

 

『うん。大きくなったね、大士』

 

出てくるのは当たり前の言葉。

だけど、当時の俺達にはそれだけで十分だった。

 

「これが大士とドルモンが再会した時の出来事だったんだね………」

 

「ドルモンも嬉しそうだね~」

 

タカトとギルモンがそう漏らす。

 

「あの時は大士の声が聞こえて、夢中で声が聞こえた方に駆け出したんだ。それで気付いたらあそこに居たんだ」

 

ドルモンがそう言う。

しかしその直後、もう1匹の魔物が葵に襲い掛かろうとする。

しかし、再びデジタルゲートが輝き、そこからリュウダモンが飛び出し、葵の前に立ちはだかると、

 

『居合刃!!』

 

口から放った刃で魔物を切り裂いた。

 

『葵、大事無いか?』

 

『リュウダモン!』

 

リュウダモンに抱き着く葵。

 

『リュウダモン…………!』

 

葵は目に涙を浮かべながらその名を呟く。

 

『久しいな、葵………』

 

葵とリュウダモンの再会のやり取り。

 

「まあまあ。葵ったらあんなに嬉しそうに」

 

それを見ていた麗奈さんが微笑ましそうに呟く。

 

「まあ、実際に嬉しかったしね」

 

葵は照れ臭そうにそう言う。

 

「それに、大士君も凄いわね。迷わずに自分を囮にしようとしてたわ」

 

「まあ、流石に当時でも女の子を置いて逃げるなんて出来ませんし………」

 

強いて言うなら、あの時に既に葵に惹かれ始めてたって言うのもあるかな?

 

「ぐっ………まあ、その程度は男として当然だ」

 

そう言ったのは葵のお兄さんの実さん。

実の所、実さんだけには俺と葵の関係を認められてはいない。

実さんはシスコンなので、葵に彼氏が出来た事だけでも許せる事ではないのに、それが俺の様な複数の女を囲うハーレム野郎なので、その怒りも一押しだ。

今回の旅行についてきたのも、俺と葵の縁を切らせる為の材料探しという点が強い。

まあ実際の所、克さんと麗奈さんには認めて貰っているので、特に問題は無かったりする。

ドルモン達と再会した俺達は、元のルートへと戻る。

俺達がクラスメイトに追いつくと言う時、檜山がトラップを起動させて俺達以外のメンバーが転移させられてしまった。

それを追うように俺達も65階層に転移した。

そこで現れるベヒモスとトラウムソルジャーをあっさりと撃破し、過去再生が始まる。

 

『私は、お前達を死なせるわけにはいかないんだっ!』

 

切羽詰まったメルド団長の声が響く。

映像の中の生徒達が半ばパニックになっている状況は、否応なく当時の切迫した雰囲気を伝えてくる。

それが、強烈にベヒモス達の殺意を映像越しに伝えてくる。

その時、

 

「優花ッ!」

 

博之さんが叫んだ。

見れば、過去の映像の優花がパニックになったクラスメイトから後ろから突き飛ばされ、転倒していた。

そこにトラウムソルジャーが剣を振り被る。

 

『あ…………』

 

その声は、死ぬと実感して漏らした声。

しかし、突然足場が隆起してその剣は空を切る。

そのまま隆起した地面は数体のトラウムソルジャーを橋から落とした。

それをしたのはハジメだ。

 

「これが優花の言ってたハジメに命を救われたって奴か」

 

ハジメが居なかったら、確実に優花の命は無かった。

 

「…………ハジメ」

 

「ん?」

 

「優花を助けてくれて、ありがとう」

 

俺はお礼を言わずにはいられなかった。

 

「私からも礼を言わせてくれ! ハジメ君! 娘を助けてくれてありがとう!」

 

「い、いや………あの時は唯必至で…………」

 

俺と博之さんからの感謝の言葉にハジメは言葉を濁す。

その後もピンチは続く。

天之河が、撤退させようとするメルド団長と押し問答を繰り広げる。

八重樫さんがメルド団長に従おうと提言するが、天之河は参戦を決意。

この場面を見るのは初めてだが、何やってんだ天之河は?

どう見ても当時の天之河達の強さじゃ勝てない相手なんだが。

敵わないと思ったら撤退一択だろ?

本当に勇気と無謀を履き違えてるなコイツ。

そこへ、駆け込んでくるハジメ。

 

『みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!』

 

当時は大人しい性格で、争いを徹底的に避けるハジメが、轟くような怒声を上げている。

 

『前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!』

 

ハジメの説得で何とか天之河もトラウムソルジャーの方へ向かおうとしたが、その前に結界が破られ、その場の全員が吹き飛ばされる。

天之河も反撃に出るが、最強の技である〝神威〟も全く効かず、逆に吹き飛ばされる。

そこでベヒモスの足止めを買って出たのがハジメ。

錬成でベヒモスの動きを止め、その間に全員が退避していく。

回復した天之河とメルド団長がトラウムソルジャーを蹴散らし、階段の前まで到達。

そして、タイミングを見てハジメが駆け出し、クラスメイト達の魔法で撤退を援護。

このままであれば、撤退は成功するかに思えた。

しかし、魔法の1発がハジメの近くに着弾。

ハジメが吹き飛ばされる。

ハジメはそれでも立ち上がり、何とか逃げようとするが、その前にベヒモスの一撃が橋を崩落させた。

その崩落に巻き込まれ奈落に落ちていくハジメ。

 

「「ハジメ!」」

 

思わず映像の中のハジメに手を伸ばしたのは愁さんと菫さん。

ハジメはそのまま奈落の闇に消えていった。

 

「………これが、ハジメが奈落に落ちた経緯………か」

 

話には聞いていても、実際に映像で見ると何とも言えない気分になって来る。

 

「結果的には生きてたが…………俺達が一緒に転移出来なかった事が悔やまれるな………」

 

俺は思わずそう呟く。

 

「そういやお前らもベヒモスと戦ったんだろ? どうだったんだ?」

 

ハジメがそう言う。

 

「それならこっちも映像で見て貰った方が早いね」

 

葵がそう言うと〝過去再生〟を発動する。

すると、天井を突き破る音と共に、ドルガモンが現れる。

その背には、当時の俺、葵、リュウダモン、優花が乗っていた。

 

「あの時の俺は、ハジメが奈落に落ちた事を知って、僅かな生存の可能性を信じて大迷宮を攻略しにきた。まあ、メルド団長に気絶させられたり、冤罪吹っ掛けられたり、おまけに迷宮で迷ったりと、ここまで来るのに2週間ぐらいかかったけどな」

 

ドルガモンが橋に降り立つと、同じようにベヒモスとトラウムソルジャーの群れが現れる。

 

『やっぱり………! ベヒモスとトラウムソルジャー………!』

 

映像の中の優花が怯えた表情でそう呟く。

それを見て、

 

「昔とは言え、あの程度の魔物に怯えてた自分が情けないわ」

 

呆れる様に優花が言った。

 

『あれがベヒモスか…………なるほど、前門のベヒモス、後門の骸骨ってか?』

 

俺は軽口を叩く。

 

『園部さん』

 

過去の俺は怯えている優花に声を掛ける。

 

『黒騎…………?』

 

『安心しなよ。あいつは俺達が倒すから。必ずハジメに会わせて、お礼を言わせてやるから』

 

俺は安心させるために笑って見せる。

 

「おお~、カッコいいじゃないか!」

 

ハジメがニヤつく。

 

「うっせ」

 

俺は思わずそう漏らす。

 

『黒騎…………』

 

俺はベヒモスに向き直ると、

 

『葵さん! ここまでは食料の問題とかで温存してたけど、ここからは出し惜しみは無しだ! 後ろの骸骨たちは任せる!』

 

『フフッ! ようやくリュウダモンの進化のお披露目だね! それにこれ、ずっとやってみたかったんだ!』

 

葵は1枚のカードを取り出し、Dアークの溝に合わせる。

そして、

 

『カードスラッシュ! 超進化プラグインS!!』

 

葵がカードをスラッシュすると、リュウダモンが光に包まれ進化する。

 

『リュウダモン進化! ギンリュウモン!!』

 

ギンリュウモンが体をしなやかにくねらせ、体当たりでトラウムソルジャーの群れを薙ぎ払った。

ドルガモンもベヒモスを相手に終始優勢に戦闘を進める。

そして、カードスラッシュでパワーアップしたドルガモンとギンリュウモンの必殺技で、ベヒモスとトラウムソルジャーの魔法陣を吹き飛ばした。

 

「………とまあこんな感じだ。ベヒモスは成熟期クラスだからな。さほど苦も無く倒せた」

 

映像が終わり、俺がそう言う。

 

「お兄ちゃんが………ヒーローっぽい………」

 

美姫がそんな感想を零した。

 

「大士、アンタ結構似合わない事やってるのね?」

 

姉ちゃんまでそんな事を言う。

 

「似合わないのは自覚してるよ」

 

俺はそう言うが、

 

「そんな事ありません!」

 

そう叫んだのはエミリアだ。

 

「タイシさんは、いつだってヒーローです! タイシさんは、いつだって私達に希望を与えてくれるんです!」

 

力を込めてそう語るエミリア。

 

「そうね………大士の言葉は、なんて言うか………安心感があるのよね。天之河と違って」

 

「ああ。それ分かる。大士の言葉なら信じられる………そう思わせてくれるんだ」

 

優花と葵がそう言った。

 

「まあ、天之河君はどっちかと言えば根拠の無い希望的観測だからね………」

 

白崎さんがそう言う。

 

「黒騎君はちゃんと冷静に分析して、相手と自分達の戦力を比較して、その上で答えを出してるもんね」

 

八重樫さんまでそう言い出した。

 

「私達のパーティーのリーダーはハジメさんでしたけど、タイシさんは司令塔や参謀って感じですよね」

 

「うむ。テイマーとしての経験の賜物であろうが、タイシの作戦は見事なものだった」

 

シアやティオまでそう言い出す始末。

 

「要は俺ら全員、大士の事を頼りにしてたって事だな」

 

ハジメがそう締める。

俺は羞恥で死にそうになったが、先程のハジメが落ちた事でしんみりした空気が緩くなっていた事に気付いて、これが狙いだったのかと気を取り直した。

その後、ゲートで一気に奈落の階層まで転移した俺達は、ハジメの変貌を見る事になる。

俺達はクリスタルキーを作る時に何があったかは知っているが、その事を知らない親達やテイマーズの面々は魂魄魔法の補助が必要なほど精神を疲弊させていた。

最終的に俺達と合流し、パーティーを組んで奈落の攻略を挑むことになる。

しかし、その前に白崎さんと優花が魔物肉を食べ、ハジメと同じように外見が変貌する。

改めて攻略を開始した俺達。

まあ流石に全部見てると時間が足らないので、一気に50階層まで転移。

ユエとの出会いを見る事になる。

とは言え、ユエはこの先殆ど素っ裸なので、どうするのかと思いきや、過去映像に幻影を重ねてワンピースを纏った状態で見えるようにした。

因みにこれはTake2であり、Take1はバラエティー番組等でよくある『見せられないよ』という看板を持った自主規制君が体を隠している映像だったので、満場一致でやり直しとなった。

ハジメの錬成によりユエが助け出され、鋼鉄のサソリモドキとの戦闘になる。

サソリモドキの防御力に多少苦戦したが、ユエの魔法と葵の機転によってサソリモドキの甲殻をボロボロにして、優花が甲殻を砕き、ハジメの弾丸によって止めを刺した。

しかし、その直後に広がった霧の様なもの。

 

「これってまさか、デジタルフィールド!?」

 

ルキが叫ぶ。

 

「ああ。イグドラシルが送り込んできた先兵だな」

 

俺はそう言う。

デジタルフィールドの向こうから現れるのは蠍の様な姿のスコピオモン。

 

「改めて見ると、やっぱエヒトとイグドラシルの差が浮き彫りになるなぁ」

 

ハジメが突然そんな事を言った。

 

「どういうことだ?」

 

俺が聞くと、

 

「だってエヒトは何百年もこの場所に隠されたユエを見つける事が出来なかったんだろ? それなのに、イグドラシルはあっさりと見つけてしかもデジモンまで送りつけて来る。明らかに格が違うだろ?」

 

「なるほど………確かに」

 

ハジメの言葉に俺は納得して頷いた。

そうして動き出すスコピオモン。

手始めに邪魔だと言わんばかりにサソリモドキの死骸を前腕の一撃で粉々にした。

 

「お、おい………大丈夫なのか? あれだけハジメ達が苦労して倒した敵が、一撃で粉々になったんだが…………」

 

愁さんがその光景に恐れ戦く。

 

「あ~。正直当時の俺達じゃ勝ち目ゼロだったな」

 

ハジメはそう言う。

過去のハジメがスコピオモンにドンナーを放つが、スコピオモンの甲殻の前に、傷一つ付ける事無く弾かれる。

ドルガモンとギンリュウモンが攻撃を仕掛けるも、スコピオモンの反撃でギンリュウモンが一撃でリュウダモンに退化してしまう。

 

「ああっ! 葵のデジモンがぁ!?」

 

実さんが大仰に声を上げる。

それでも黙ってやられるつもりはないハジメ達は身構える。

しかし、過去の俺が両手を広げてそれを制した。

 

『ここは、俺達に任せてくれ………!』

 

『大丈夫なの…………?』

 

俺の言葉に、当時の葵が心配そうにそう呟く。

そんな彼女に俺は笑みを浮かべ、

 

『忘れたのか? 俺は地球を救ったデジモンテイマーの1人なんだぜ?』

 

改めて見るとこっ恥ずかしい。

よくもまああんなセリフを臆面もなく言えたものだ。

 

『ドルガモン!!』

 

『ああ!』

 

俺の呼びかけに力強く答えるドルガモン。

 

『俺達で護るんだ! 仲間達を!!』

 

『おう!』

 

またもや改めて聞くとこっ恥ずかしいセリフを吐く俺。

手に取った1枚のデジモンカードが光を放ち、その見た目が変わっていく。

普通のデジモンカードのデザインが、透き通るような青一色のカードへ。

 

『変わった…………』

 

『カードが…………青く…………』

 

俺はDアークとブルーカードを構え、

 

『行くぞ! ドルガモン!!』

 

『ああ! 大士!!』

 

『カードスラッシュ!! マトリックスエボリューション!!』

 

『ドルガモン進化!』

 

ドルガモンが光に包まれ完全体へと進化する。

 

『ドルグレモン!!』

 

巨大な紅の獣竜となったドルグレモンがその場に姿を現す。

それを見て驚く面々。

その時、スコピオモンが攻撃を仕掛けてくる。

それに対し、

 

『動くな! ドルグレモン!!』

 

過去の俺はそう叫んだ。

 

「なっ!?」

 

「何故そんな指示を!?」

 

親達は俺が指示した内容が信じられずに声を漏らす。

この場に居なかったシアやティオ、俺の恋人達は何も言わない。

スコピオモンの鋏の一撃がドルグレモンの頬を殴りつける。

 

『ぐう………!』

 

ドルグレモンはダメージを受け、声を漏らし、

 

『ぐっ………!?』

 

過去の俺も殴られたようによろめいた。

 

「大士!?」

 

母さんが心配そうに叫んだ。

 

「完全体まで進化させると、テイマーにまでダメージが通る事があるからね………」

 

タカトがそう呟いた。

スコピオモンは両方の鋏で次々とドルグレモンを殴りつけ、その度に俺もよろめく。

 

『まだだ………! まだ耐えるんだ………ドルグレモン………!』

 

過去の俺は痛みに耐えながらそう言う。

 

「何故反撃しないんだ!?」

 

実さんが勿体ぶるなと言わんばかりに叫ぶ。

 

「黙って! 兄さん!」

 

葵が叫ぶ。

 

「ちょっと考えれば分かるでしょ!? ドルグレモンの様な巨体で、こんな狭い部屋の中で暴れたらどうなると思ってるの!?」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

その言葉で何人かは察しがついたようだ。

その時、攻撃に耐えきれなくなった俺が倒れそうになる。

しかし、それを支えたのは過去の葵と優花。

 

『大士君、しっかり!』

 

『あれだけカッコいい事言ったんだから、最後までカッコつけなさいよ!』

 

『ッ…………! 葵さん!? 園部さん!?』

 

倒れそうになった俺の身体を支えた2人に俺は思わず声を上げた。

 

『一緒に戦える力は無いけど、大士君を支えることは出来るよ!』

 

『背中は支えてあげるから、黒騎は前だけ見てなさい!』

 

2人の言葉。

 

『葵さん………園部さん………ありがとう…………』

 

今思えばこの時が決定的だったのだろう。

俺が2人に惚れたのは。

それからもドルグレモンは殴られ続けるが、俺は2人のお陰で倒れたりしない。

やがてスコピオモンがドルグレモンに止めを刺そうと、毒針がある尻尾を大きく振りかぶった。

その瞬間、

 

『ドルグレモン!! 今だ!!』

 

過去の俺が叫ぶ。

その瞬間ドルグレモンが目を見開き、

 

『うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!』

 

スコピオモンが尾を振り下ろすより早く、鼻先のブレードをスコピオモンのガラ空きの腹部に突き刺した。

 

『シャ………ア…………!?』

 

胴体を貫かれたスコピオモンが消滅する。

すると、

 

「おおっ………何と素晴らしい一撃………!」

 

「うむ。反撃のタイミング、呼吸の合わせ方、申し分のない反撃だ」

 

何か虎一さんと鷲三さんにえらく好評だった。

 

 

 

 

次に来たのはいつかのエセアルラウネが居た所。

ゲートで現れた瞬間に攻撃が来たが、ユエの雷龍で迎撃と同時に本体を粉砕した。

因みにここは、ユエの強い希望で来ることになった。

あ、でもここって………

俺が思うより早く、ユエが過去再生を発動する。

そこには、洞窟に入って来たばかりの当時の俺達。

すると、俺達に向けて緑色のピンポン玉の様なものが飛んでくる。

 

『………危ない!』

 

過去のユエが風魔法で薙ぎ払うと、弾が弾けて中にあった粉の様なものが辺りに散らばる。

あれはエセアルラウネの胞子が詰まった種子の様なものだったんだろう。

その瞬間、

 

『……にげて……ハジメ!』

 

ユエの手がハジメの方を向き、魔法を放った。

ハジメが咄嗟に飛び退き、その魔法を躱す。

その光景に、見ていた親や仲間達が驚くが、

 

「簡単に説明すれば、敵は生物を操る事の出来る寄生植物型の魔物だったんだ。先程の緑の弾の中にあった粉が種子だったんだろう。魔物肉を食べて耐性のあったハジメ、白崎さん、優花と生物として根本から構造が違うドルモンとリュウダモンは操られなかったけど、ユエと葵………それに俺は………」

 

俺が説明していると、過去の俺が優花に後ろから抱き着いた。

その頭には花が咲いている。

だが、

 

「あっ………!」

 

誰かが声を上げた。

何故なら、過去の俺の優花に抱き着いた右手は、優花の豊満な胸を鷲掴みにしていたからだ。

ジト~っとした視線が俺に向く。

 

「いや、だからこの時の俺は操られていたんだって………!」

 

俺は何とか弁明する。

とは言え、ステータスが平凡な俺の力で魔物肉を食べてパワーアップしていた優花を拘束できるはずもなく、ゆっくりと過去の優花が俺に振り向いた。

恥ずかしさからか、顔を赤らめて涙を浮かべ、プルプルと震えている。

こう言っちゃなんだが、優花のこういう反応は今思うと可愛いな。

今の優花は俺に対してはめっちゃオープンだから。

 

『………………………………あの、園部さん』

 

『…………………………何?』

 

『言い訳はしないけど…………その……………………………手加減して?』

 

俺が懇願した直後、俺の頭に優花の拳が振り下ろされ、俺の頭に咲いた花を粉砕しながらゴッという重い音を立てて俺の脳天に直撃した。

当然ながら俺はその一撃で気絶する。

 

「「「「「「「「「「………………………」」」」」」」」」」

 

不可抗力とは言え自業自得だから何とも言えないんだが。

 

「よく生きてたな、俺。思えば、この時が奈落に来てから一番『死』を身近に感じた時かもしれない」

 

俺がそう言った直後、

 

『ハジメ! 私はいいから……撃って!』

 

悲劇のヒロインよろしく、そう叫ぶユエ。

緊迫した状況と、ユエの自己犠牲に、誰もが息を呑む。

普通なら躊躇うなり、葛藤するなりするだろう。

しかし、ここは安心のハジメクオリティー。

 

『え、いいのか? 助かるわ』

 

と、軽~い感じで引き金を引くハジメ。

映像の中のユエが「えっ?」という顔をする。

エセアルラウネも「えっ?」という顔をする。

そしてその映像を見ていた親や仲間達も「えっ?」という顔をする。

 

「……んっ。皆さん、見ましたか! 見ましたか!? ハジメ、撃ちました! ためらいなく私を撃ちました! 見てください! 私の頭皮、削れてます! ジョインッていう音は、頭皮が削れる音です! まさに鬼畜! 外道です! 超ドSです!」

 

「ハジメ、お前、なんてことを……」

 

「物語的に言うなら、ユエちゃんはヒロインよ? ヒロインの頭皮を削る主人公なんて聞いたことないわよ」

 

「ハジメくん、君、まさか香織にも同じようなことしてないだろうね?」

 

愁さん、菫さん、智一さんがハジメに詰め寄る。

俺はこの時気絶していて話に聞いていただけだが、映像を見て改めて思う。

 

「ハジメ、ないわ~」

 

 

 

 

 

 

その後、奈落の100階層に転移してきた俺達は、ヒュドラとの戦いを見ていた。

複数の属性ブレスと盾役と回復役。

バランスの良い強敵に苦戦するかと思われたが、俺がドルモンをドルグレモンに進化させたことで一気に形勢が傾く。

そのまま一気に倒せるかと思われたが、再びデジタルフィールドが発生。

そこからメガドラモンとギガドラモンが現れた。

 

「またデジモン!?」

 

「しかも完全体が2体だ!」

 

タカトとジェンが叫んだ。

その為戦力を分け、ハジメ、白崎さん、ユエがヒュドラを。

俺、ドルグレモン、葵、ギンリュウモン、優花がメガドラモンとギガドラモンを受け持つことになる。

だが、2体の完全体を相手に、ドルグレモンと当時成熟期までしか進化出来なかったギンリュウモン。

そして、成熟期レベルが精々の当時の優花。

それだけでは見る見る劣勢に追い込まれた。

メガドラモンの一撃でギンリュウモンが致命傷を負い、ほぼ同時にハジメ達も新しく現れたヒュドラの銀頭の極光に飲み込まれる。

 

「「ハジメ!」」

 

「「香織ぃ!!」」

 

その光景を目撃した、愁さん、菫さん、智一さん、薫子さんが思わず叫ぶ。

更にメガドラモンが葵に向かってミサイルを放つ。

しかし、ギンリュウモンが力を振り絞って立ち塞がり、葵を護った。

だが、それが致命的だったのか、ギンリュウモンがデータ分解を始めてしまう。

それでも戦おうと立ち上がるギンリュウモン。

 

『ギンリュウモン!? 動いちゃ駄目! これ以上無茶したら死んじゃうよ!?』

 

過去の葵はギンリュウモンを止めようとする。

 

『葵………某はまだ戦える…………!』

 

『でも、相手は完全体なんだよ………!? ここは大士とドルグレモンに任せて………!』

 

『葵………某は其方を護るために戦いたい………! 戦わせてくれ………我がテイマー…………!』

 

『だけど…………!』

 

話が平行線になりそうだった時、

 

『止めるな、葵』

 

過去の俺がそう言った。

 

『えっ?』

 

『パートナーが諦めずに戦おうとしているんだ………テイマーが諦めてどうする………?』

 

過去の俺は優花に肩を借りながら歩み寄り、そう語る。

そう言われた葵はギンリュウモンを見つめる

 

『ギンリュウモン………』

 

『葵………お前に足りないのは『戦う意志』だ』

 

『『戦う意志』………?』

 

『ああ………お前は心の何処かで戦って貰っている、護って貰っているというように、自分を後ろに置いてしまっている。けどそうじゃない………! テイマーとはパートナーを支え、共に戦う者だ』

 

『共に戦う…………』

 

『そうだ。パートナーと共に、自ら脅威へと立ち向かい、戦う意志! それを持つんだ!』

 

葵は目を瞑り、何かを考える仕草をする。

 

『…………………………』

 

目を開いた葵は、何かを決意した瞳になっていた。

前に歩き出し、ギンリュウモンの隣に並ぶ。

 

『葵……………』

 

『ギンリュウモン…………私も一緒に戦う…………今度こそ本当の意味で………!』

 

葵が『覚悟』を示した時、葵の持っていたカードの1枚が青い光を放つ。

 

『これは…………』

 

その輝くカードを手に取ると、ブルーカードへと変貌した。 

 

『ブルーカード……………』

 

葵はギンリュウモンを見上げ、

 

『……………ギンリュウモン、行ける?』

 

『当然だ………!』

 

葵がブルーカードをスラッシュし始め、

 

『カードスラッシュ! マトリックスエボリューション!!』

 

『ギンリュウモン進化! ヒシャリュウモン!!』

 

ギンリュウモンが完全体のヒシャリュウモンに進化する。

完全体に進化したことでメガドラモンと互角以上に戦う事が出来るようになり、劣勢だった状況を持ち直した。

ただ、完全体に進化したことで、ヒシャリュウモンのダメージが葵に伝わるようになり、倒れそうになる葵を俺が支える。

 

『きついだろうがもうひと踏ん張りだ…………勝つぞ!』

 

『…………うん!』

 

俺の言葉に葵は頷き、優花を含めた3人で互いを支え合いながら立ち続ける。

そして、ドルグレモンとヒシャリュウモンの連携により、遂にメガドラモンとギガドラモンを倒す事に成功した。

それとほぼ同時に、ハジメ達の方もヒュドラを倒していた。

 

「「「「「「「「「「おお~!」」」」」」」」」」

 

どちらも劇的な逆転劇に、見ていた皆は感嘆の声を漏らす。

 

「パパたちもおじちゃん達も凄かったの!」

 

ミュウが興奮した面持ちでそう言う。

 

「おとうさんたち………すごい………」

 

クオンも静かながら、憧れた様な目で俺を見上げる。

愛娘からの賛辞に照れ臭くなった。

すると、過去の葵がジッと俺を見つめ続けている。

 

『な、何だ………? その、そんなに見つめられると少し恥ずかしいんだが…………』

 

過去の俺は頬を赤くしながら狼狽える。

 

『大士…………』

 

『な、何………?』

 

『私ね…………大士に伝えたい事があるの…………!』

 

その流れで葵が何を伝えようとしているのかを察した者達が「おおっ!」と期待に満ちた声を上げる。

実さんは悔しそうに歯を食いしばっているが。

しかし、その時にまた新たに発生するデジタルフィールド。

大きさは直径5m程の小さなデジタルフィールド。

だがその中から現れたのは、先に現れたメガドラモンやギガドラモンとは比較にならぬ存在。

 

「ボルトモンッ!?」

 

リョウが叫んだ。

ボルトモンがバトルアックスを振り上げ、地面に向かって振り下ろす。

その一振りで地面に亀裂が入り、その亀裂が俺達の足元まで伸びていく。

寸前に気付いた俺が葵と優花を突き飛ばすが、直後に亀裂が俺の真下を通過し、その亀裂が広がって絶壁の様になり、俺はその亀裂の中に落ちていった。

すぐにドルモンが俺の後を追って亀裂に飛び込む。

 

「「「大士っ!?」」」

 

「お兄ちゃん!?」

 

父さんと母さん、姉ちゃん、美姫が思わず叫んだ。

 

『たっ、大士っ!?』

 

優花と葵がその亀裂に駆け寄るが、その亀裂の中は底が見えない程深い。

それからすぐに周りの圧力で亀裂が閉じてしまう。

 

『う………嘘……………?』

 

現実を認められないと言わんばかりの優花の呟き。

 

『あ…………い……嫌………………!』

 

葵が首を横に振りながら目の前の光景を否定しようとする。

 

『『大士ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!』』

 

2人の悲痛な絶叫が響く。

 

『嫌ぁああああああああッ!! 大士! 大士ぃ!!』

 

葵が顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら亀裂に駆け寄り、素手で掘り始める。

 

『大士! 今………今助けるから!!』

 

常識的に考えて助かる筈のない状況なのに、葵は掘るのを止めない。

指の皮が剥がれ、血が滲み始める。

それでも葵は掘る事を止めようとしない。

その時、

 

『葵! やめろ! そのままでは葵の手が壊れてしまう!』 

 

リュウダモンにその手を止められる。

 

『離して! 早く、早くしないと、大士が………大士がぁ……………!』

 

『落ち着け葵…………! おそらく、2人はもう……………!』

 

リュウダモンが現実を見る様に言う。

 

『あっ…………うあっ…………あああああああああああああああああああっ!!??』

 

葵の手が止まり、鳴き声を上げ始める。

 

『やっと………! やっと自分の心と向き合おうと思ってたのに…………! こんなの………! こんな別れ方って無いよっ……………!』

 

亀裂に縋り付く葵。

 

「葵があんなに取り乱すなんて…………本当に大士君の事が好きなのね………」

 

麗奈さんがしみじみと呟く。

 

「あ、あの時は大士に思いを伝えようと決心した矢先だったから、特に………」

 

葵は恥ずかしそうにそう言う。

その時、

 

『……………………よくも………』

 

今まで黙って俯いていた優花がゆっくりと立ち上がった。

 

『……………ッ! よくも大士をぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

顔を上げた優花の目からは涙が流れ続けている。

優花はボルトモンを見据え、背中の槍を掴むと思い切り振り被って全力で投げつけた。

付加された炎が槍を包み、ボルトモンに直撃して爆煙に包む。

 

『うぁあああああああああああああああああああっ!!!』

 

優花は叫び声を上げながらありったけの苦無と手裏剣を投げつける。

 

『はぁ………はぁ………はぁ…………』

 

全ての武器を投げつくした優花は肩で息をしている。

そして爆煙が晴れていくと…………

無傷のボルトモンがそこに佇んでいた。

優花は涙を流し続けながら悔しそうに歯軋りをして、

 

『畜生………………畜生っ!!』

 

そう吐き捨てる。

 

「優花があんなことばを使うなんて…………本当に悔しかったのね………」

 

優理さんが意外そうに優花を見た。

 

「………大士が死んだと思って改めて気付いたのよ。自分の本当の気持ちに………」

 

優花は少し照れ臭そうにそう言いながら顔を逸らす。

ボルトモンはゆっくりとバトルアックスを持ち上げ、大きく振りかぶった。

 

『トマホークシュタイナー………!』

 

そのバトルアックスが剛腕によって投げつけられた。

全てを断つ究極体の必殺技。

その先に居るのは優花、葵、リュウダモン。

 

『こんな………所で…………!』

 

悔しそうにしながらも、最後までボルトモンを睨み付ける優花。

 

『葵!』

 

自分のパートナーを守ろうと立ちはだかるリュウダモン。

 

『………………………ッ!』

 

そして葵は…………

何故か笑みを浮かべた。

そして、

 

『大士…………………………大好き………………!』

 

俺への想いが、その口から零れた。

次の瞬間、

 

―――ガィィィィィィン!

 

けたたましい音と共に、バトルアックスが弾かれる。

彼女達の目の前には、魔法陣が現れていた。

次の瞬間、地面の亀裂から光が溢れる。

地面が粉砕され、巻き上げられる瓦礫と共に、その下から現れたのは………

 

「アルファモン!!」

 

ジェンが叫ぶ。

 

「よかった! 間に合ったんだ!」

 

タカトもホッとした様に言う。

いや、ここにいるんだから無事なのは当然だろ?

アルファモンが葵達の前に降り立つ。

 

『あなたは……………?』

 

『俺の名は、アルファモン』

 

葵の問いに、そう名乗るアルファモン。

アルファモンは再び投げ付けられたバトルアックスを防御用の魔法陣で防ぐと、右手を突き出し、

 

『デジタライズ・オブ・ソウル!!』

 

現れた魔法陣から放たれる無数の光弾が、ボルトモンを瞬く間に粉々に粉砕した。

 

「改めて見ると、アルファモンって強いよな?」

 

リョウがそう漏らす。

 

「確かにね。私達の究極体も並の究極体より強いけど、アルファモンは頭一つ飛びぬけてるわ」

 

ルキもそう言う。

まあ、ロイヤルナイツの中でも最強と言っていいし………

映像のアルファモンは、皆の下に歩み寄っていく。

 

『……………無事か?』

 

そう声を掛ける。

 

『……………どうして………?』

 

過去の優花が呟いた。

 

『………どうしてもっと早く来てくれなかったの…………!?』

 

優花は涙を浮かべ、

 

『あなたがもっと早く来てくれれば…………大士は………大士はぁ…………!』

 

今にも泣きだしそうな表情で声を絞り出す。

その時、

 

『大丈夫だ…………!』

 

『『『『『『ッ!?』』』』』』

 

その言葉と共に、アルファモンが俺とドルモンに分離する。

 

『俺は………ここにいる………!』

 

そう言う俺。

…………何か改めて聞くと、こっ恥ずかしいセリフだな。

 

『た………大士……………?』

 

優花が呆然と呟く。

 

『ああ』

 

『ど、如何なってるの………?』

 

『アルファモンは、俺とドルモンが一つとなって究極体に進化した姿だ』

 

過去の俺がその事を説明する。

 

「なんつーか、スゲェ劇的なタイミングだな? もしかして出るタイミング計ってたんじゃねえのか?」

 

ヒロカズがニヤつきながらそう言ってくる。

 

「…………今だから言える事だが、あと1秒でもドルモンが飛び降りるタイミングが遅かったら死んでたからな。言うほど余裕があった訳じゃないぞ」

 

実際マジでギリギリだったからな。

迷いなく後を追いかけて来てくれたドルモンには感謝だ。

と、そこで俺はふと思い出した。

確かこの次にあった事は…………

 

『…………大士っ!!!』

 

過去映像の葵が俺に向かって飛び掛かり、押し倒す。

そしてそのまま…………

 

『ッ~~~~~~~!? あ、葵っ!? いきなり何するんむっ………………!?』

 

「「「「「「「「「「あっ…………」」」」」」」」」」

 

葵に口付けされた瞬間を目撃した全員が声を漏らす。

 

「ちょ!? ユエ!? ストップ! ストーップ!!」

 

葵が慌ててユエに詰め寄る。

 

「フッ! 何を仰る? これからが良い所………!」

 

「『やめなさい!』」

 

葵は神言まで使って止めようとする。

 

「ッ!?」

 

ユエは流石に止めてしまったようだが、過去映像はまだ流れ続けていた。

何故なら………

 

「香織っ!?」

 

過去再生の魔法を白崎さんが引き受けて続けていたからだ。

そして、

 

『好き……………大好き!!』

 

一度唇を離してそう言うと、再び口付ける。

 

「『もうやめてーーーー!!』」

 

全方位に放った神言によって、漸く過去映像が止まる。

 

「……………何か、何処かで見た光景だな」

 

クラウディアが既視感を感じる様にそう呟く。

 

「そ、そうですね………私もそう思った所です………」

 

エミリアも苦笑しながらそう言った。

因みに俺は、もういっそ殺せとも思っていたりする。

 

 

 

 

 

その後は、オスカーの隠れ家を見学していた。

オスカーの過去映像を映し出し、神の真実を聞いたりもした。

因みにその後、オスカーの骸を片付けると言ったり畑の肥料にすると言ったハジメやユエの発言に、愁さんと薫さんが説教を始めたりしていた。

そうしてあらかた見学を終え、とりあえず本日の午前中の予定が終わり、王宮に昼食の為に戻ろうかと思った時、美姫がとんでもない事を言い出した。

 

「お兄ちゃんと葵さんと優花さんが恋人になった所が見たい!」

 

妹として気になる所なのだろう。

更には俺の両親に姉ちゃん、葵の両親、更に優花の両親まで乗り気になってしまう。

俺達は、告白場所は風呂場で、裸の状態だったから見せるのは忍びないという事まで言ったのだが、

 

「だったらさっきのユエちゃんがやったみたいに、水着か何か着せた様に見せればいいでしょ?」

 

という姉ちゃんの案で押し切られてしまった。

俺達は渋々と風呂場へ移動する。

そこで始まる過去再生。

まず映ったのは、風呂に浸かっている俺。

その表情は、何かを考え込む様な顔をしていた。

すると突然お湯の中に潜った。

それから暫くして、水面から顔を出すと、

 

『ああくそ! 我ながらここまで最低ヤローだったとはな…………!』

 

そう吐き出す様に言う。

確かこの時は、葵と優花の2人を好きになっていた事に葛藤していた時か。

 

『…………………ん?』

 

足音が聞こえ、振り返った俺の視線の先に、

 

『気持ちいい?』

 

スポーツタイプの水着を着た葵が立っていた。

実際には全裸だったんだが。

 

「な、何やってるんだ葵ぃぃぃぃぃぃっ!?!?」

 

実さんがショックを受けた様に叫ぶ。

 

『………………………………』

 

振り返った過去の俺は一瞬固まり、

 

『あ、葵何がぼごぼがぼ…………!』

 

足を滑らせて湯船の中ですっ転んだ。

 

『何やってるんだ!? 葵!!』

 

立ち上がった俺は目を瞑りながら大声で叫ぶ。

 

『一緒に入ろうと思って』

 

楽しそうな声でそう言う葵。

 

『い、一緒にって……………! と、ともかく俺は先に出るから!』

 

俺は慌てながら湯船から出ようと立ち上がる。

因みに映像の俺は海パンを穿いていた。

 

『待って! 大士!』

 

そんな俺を、葵が後ろから抱き着きながら止める。

 

『あ、あの………葵………さん…………? その………当たってるんですけど…………?』

 

身体を硬直させながら、俺は何とかそう言うが、

 

『当ててるの…………! って言うのが普通なんだろうけど、大士を逃がさないためだよ…………!』

 

『ッ~~~~~~~~~~~~~~~!!??』 

 

『……………真面目な話、大士とちゃんと話がしたいの…………!』

 

『ま、真面目な話なら風呂から出た後でも…………』 

 

『ここじゃないとダメ』

 

結局折れた俺は、そのまま2人揃って湯船に沈む。

 

『…………それで、真面目な話って?』

 

俺がそう尋ねると、

 

『うん。私は、大士の事が好き。これは私自身の本当の想いだよ』

 

『ッ………!? あ、その…………あ、ありがとう…………』

 

その言葉に、顔を真っ赤にさせる俺。

 

『私と、結婚を前提としたお付き合いをしてください!』

 

葵の告白に周りの人間が「おおっ!」と期待の声を上げる。

誰もが、俺が即座に受け入れると思ったんだろう。

だが、

 

『ッ…………………………!』

 

俺は何かを我慢する様に俯き、

 

『……………………俺なんて、碌な人間じゃないよ』

 

出てきたのはそんな言葉だった。

誰もが意外そうな顔をしている。

 

『どうして?』

 

『…………その……………俺って結構スケベだし………』

 

『私、今すぐにでも大士に抱かれたいって思ってるよ?』

 

「葵さんぶっちゃけ過ぎだよ…………」

 

美姫が顔を赤くしながらそんな事を言った。

 

『……………誰かを幸せに出来るとは思えないし…………』

 

『私は大士と一緒に居られるだけで幸せだよ?』

 

『……………俺って面倒くさがりだから、基本的に必要最低限以外はやる気の無い人間だし…………』

 

『大丈夫! 私って、『大士に尽くし尽くすタイプ』だから!』

 

『………………他にもいい男なんていくらでもいるだろ?』

 

『私って、大士には盲目的だから、他の男なんて目に入らないんだよ?』

 

俺の言葉に間髪入れず返してくる葵。

 

『……………………………』

 

『大士………大士は…………私の事嫌い?』

 

少し悲し気にそう呟く。

俺は俯く。

そして、

 

『……………………………………………好きだよ』

 

俺は本音を呟く。

 

『じゃあ、どうして私を受け入れてくれないの?』

 

『…………………………………………好きだから…………俺みたいな最低ヤローと一緒に居るべきじゃないんだ………』

 

『最低って?』

 

『……………………………確かに俺は葵の事が好きだよ…………………でも同時に………優花の事も好きなんだ……………!』

 

過去の俺は懺悔の様にそう呟く。

 

『……………………………』

 

『2人を同時に好きになるだけでも最低なのに…………俺はどちらかを選ぶことすら出来なんだ………………どっちも同じくらい好きで……………どっちも手放したくないと思っている……………こんな最低ヤローが、お前達と居ていい筈がない…………!』

 

その言葉に一番意外そうな顔をしていたのは実さんだった。

 

「今の大士からじゃ考えられない言葉だな」

 

ハジメがそんな事を言う。

すると、

 

『要するに大士は、私と優花のどちらかを諦める状況が嫌って事だよね?』

 

きょとんとした表情で、葵が言った。

 

『あ、ああ………………そうだよ…………!』

 

『なら何も問題ないね!』

 

葵がそう言いながら俺の後方に視線を向けた。

それにつられて俺も後ろを向くと、

 

『あ…………た、大士………………!』

 

そこにはバスタオルを巻い優花が立っていた。

恥ずかしそうに頬を染めながら顔を逸らしている。

 

『ゆ、優花…………!?』

 

優花の存在に気付き、狼狽える俺。

 

『あ………その………優花…………俺は…………!』

 

俺が何か言おうとした時、

 

『待って! 何も言わないで!』

 

優花の叫びに俺は言葉を止められる。

 

『大士…………』

 

呼ばれた過去の俺が優花の顔を見る。

すると、

 

『大士……………あなたが好きよ』

 

優花の告白。

 

『……………えっ!?』

 

『だから、あなたの事が好きって言ったの! 何度も言わせないでよ…………!』

 

『ちょ…………ま、何で……………?』

 

『理由が無きゃ好きになっちゃいけないの!? 仕方ないじゃない! 好きになっちゃったんだから……………!』

 

優花はそこまで言うと恥ずかしそうに俯く。

 

「あらあら、意外と大胆な事をしてたのね、優花」

 

優理さんが楽しそうに呟いた。

 

『大士が亀裂に呑み込まれた時、私気付いたの…………大士は私にとって無くてはならない存在だって……………!』

 

『優花……………』

 

『これで何も問題ないよね?』

 

『え? ちょ、どういう事だよ!?』

 

『どういう事って? 私は大士の事が好きで大士も私の事が好き。優花も大士の事が好きで、大士も優花の事が好き。何か問題でも?』

 

『いやいや! 問題大ありだろ!? 俺がお前達2人と付き合うって、どっちにも失礼だろ!?』

 

『えっ? 私は問題無いよ。これは私達2人で決めたことだし…………』

 

『私も………相手が葵なら許せるわ…………他の女は絶対ダメだけど…………』

 

そう言いつつも、結局はハーレム許してくれたんだよな、優花も葵も。

 

『いや、でも、日本じゃ結婚は1人だけって決まってるだろ!?』

 

『別に無理に結婚しなくてもいいんじゃないかな? 最終的に私達3人で同居すればいいんだし。最悪私は使用人扱いで愛人にでもしてくれれば…………』

 

『待ちなさい! 言ったはずよ、正妻はあなた! 愛人は私よ!』

 

『優花………でも、私は気にしないよ?』

 

『私が気にするわよ! いい? アンタは実質6年以上も大士を思い続けてきたのよ? それをぽっと出の私が正妻を堂々と名乗れるわけないじゃない!』

 

『優花……………』

 

『それに、大士ならどっちかを特別扱いするなんて…………ううん、どっちも特別扱いしてくれるわよね?』

 

『そ、それは………まあ……………』

 

『じゃあ、そう言う事で改めて……………』

 

そう言うと葵が近寄ってきて右腕に抱き着く。

 

『あ、葵!?』

 

優花が湯船に入ってきて左腕に抱き付き、

 

『女の子にここまでさせて何もしないなんて事、無いわよね?』

 

同じように密着してくる。

 

『えっ…………そのっ…………………2人ともっ……………!?』

 

迫る2人に俺は押し切られ、

 

『ア―――――――――――――――――ッ!!!』

 

俺の叫びと共に映像は終わった。

因みに今更だが、予め刺激が強い事は分かっていたので、ミュウとクオンの幼女組は母親と一緒に別室だ。

多くの面々は、顔を赤くしていたが、実さんは難しい顔をしていた。

 

「ほら実。分かったでしょ? 葵も大士君も、軽い気持ちで付き合ってるわけじゃないって………」

 

麗奈さんが言い聞かせるようにそう言う。

 

「ぐぬぬ…………み、認めたくはないが、ただのふしだらな男では無い事だけは認めよう…………ちゃんと、一度は断ろうとしてたようだからな」

 

実さんがそう言った。

全く効く耳持たなかった今までと比べれば、大幅な進歩だ。

こうして異世界ツアーオルクス大迷宮編が終了した。

 

 

 

 

 







はい、トータス旅行記編第一話です。
今回はオルクス大迷宮編でした。
原作に近い所はどんどんすっ飛ばさせていただきますのでご了承を。
それからアンケートですが、『ありふれたフロンティアへ』がぶっちぎるかと予想してたんですが、意外にも『転生特典ジェイアーク(略称)』が割と好評なようで…………
とりあえず次回の投稿時に上位2つで決選投票をやろうと思ってます。
今年中にあと一話行けるかな?
お楽しみに。


次回作アンケート

  • EX-CALIBUR
  • 平々凡々(略称)
  • ありふれたフロンティアへ
  • 転生特典ジェイアーク
  • デュエルモンスターズでダンジョン攻略
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