ライセン大迷宮の観光が終わった後、近くにあるブルックの街に俺達は向かう事になった。
観光と夕食を兼ねて、距離的にも丁度良かったのがそこだからだ。
で、そのブルックの街に到着したのだが……………
「「「「「「「「「…………………………」」」」」」」」」
この街に来たことのある、俺、ドルモン、葵、リュウダモン、優花、ハジメ、白崎さん、ユエ、シアは唖然としていた。
因みに観光メンバーは、驚きやら感心やら面白そうな表情やらをしている。
何故ならば、以前来たこの街の外壁は木造でそこまで高さも無かった筈なのだが、それが石造りになり高さも倍以上になっている。
それに伴い、物見櫓なども30m程の高さになっており、極めつけなのが、
『始まりの町 聖地ブルックへようこそ!』
『魔王陛下の旅はここから始まった!!』
という看板が掲げられていたからだ。
更に追撃として、
『魔王アミュレットの新作発売! 魔王様の御利益で貴方も成功者に!』
『聖地巡礼ツアー受付中! 魔王の軌跡を、貴方も追体験!』
『第十二回、魔王軍コスプレ大会開催中!!』
『第五回、魔王クイズ大会受付中! クイズ女王ソーナ・マサカに、君は勝てるか!?』
バカでかい垂れ幕が外壁に垂れ下がっていた。
「ま、魔王様!? ナンデここに魔王様!?」
門番が狼狽えた様に叫んだ。
「おい、なんだこの有様は」
ハジメが問いかけると、
「え? な、何がでしょうか?っていうか、ぼーっとしている場合じゃねぇっ。おい、お前等っ! 至急、町長と幹部方に連絡してこい! 我等の魔王様がご降臨なされたとな! ご家族もご一緒だ! 歓待の一つもできないようじゃあ聖地の沽券にかかわるぞっ」
「「「イ、イエッサーッ」」」
慌てて駆け出していく門番の部下達。
その直後、
「魔王陛下ご一行、降臨! 降臨ッ!!」
「聖火を灯せ! 歓声を上げろ! 生魔王様だぞっ」
「道を空けろ! そこの酔っ払い共は納屋に放り込んでおけ!」
「誰かマサカの宿に連絡してくれ!」
「クリスタベル殿はどこだ!? 誰か知らないか!?」
「こうしちゃいられないわ! 我等の誇りを見せるわよ! 聖地の民として!」
「三十秒で門前へ! 」
「お母さぁーんっ、どこぉーっ」
「お前の母ちゃんならもう門前にダッシュしたよ! 重度の魔王様ファンだからな!」
なんて叫びが壁越しに聞こえてきた。
更に物見櫓から警鐘を鳴らす音が響き渡り、ほら貝を吹き鳴らす音が響いたり、外壁の周りに設置されている聖火台とやらに炎が灯される。
「まるで、これから戦争でも始まるみたいな空気じゃな」
「ミュウ、知ってるの! ファンタジー映画で、邪悪な敵軍と戦う騎士達が砦で同じ事してたの! クーちゃんも一緒に見てたの!」
ミュウがそう言いながらクオンに目配せすると、
クオンはコクッと頷き、
「同じ事してる………」
ミュウに同意した。
「いや、確かに魔王が来たという言葉だけで考えれば、正しい反応なのかもしれないが…………」
ただ、逆に歓迎されてるっていう現実。
そこに、
「陛下。このポーター・ヘリー、二度目の拝謁を賜ったこと、歓喜の極みにございます」
先程の門番がハジメの前で跪きながらそう挨拶した。
「二度目?」
「ハッ。覚えておられないのも無理はございません。私も神話決戦終戦時の王女からの発表により、貴方様が以前、私が対応した変わった生き物を連れた一行であることを思い出した故…………その方が神殺しを為した魔王様であることを知り、恥ずかしながら腰を抜かしてしまいました」
「あ、あの時の奴か………つか、神に止めを刺したのは大士達なんだが………」
どうやらこの門番は、俺達が初めてこの街を訪れた時に対応した門番らしい。
つ~か、今更だが神殺しの一番の功績はハジメという事になっている。
仲間内やクラスメイト達には俺が止めを刺したことは知れ渡っているが、トータスの一般人達はハジメがイグドラシルやエヒトを倒したと思っている。
それは、神が倒された事を報じたのがリリアーナ王女と豊穣の女神として名を馳せていた愛子先生達が、想い人であるハジメを持ち上げようとして、ちょっと(?)盛って伝えた結果、伝言ゲームであれよあれよという間に尾ひれ背びれがくっ付きフンが切り離された事で、トータスの人々には、『神殺しの魔王はハジメである』と認知されるようになったのだ。
「ハッ。おかげ様で世界一有名な門番となることができました! 記者や歴史学者の方々にもインタビューを何度も受け、おそらく歴史書にも私の名が刻まれるでしょう! 今や、門番という職は偉人に最初に遭遇できるかもしれない職として大変人気です! 以前が嘘のようにモテにモテるし給料もがっぽり! 陛下のおかげで今日もメシが美味い! 一生ついていきます!」
「聞いちゃいねーな。つか、ついてくんな」
要は甘い汁が吸いたいという事である。
まあ、こそこそ甘い汁を吸おうとする連中よりかは、こうハッキリ言ってくれた方がまだマシである。
マシなだけで、ドン引きする事には変わりないが。
ハジメが引き攣った表情で肩越しに振り返る。
眼が口よりもモノを言っていた。
「やっぱりブルックはやめておこう」と。
愁さんと菫さん以外が同意して踵を返そうとした時、
「魔王さまぁ~~~~っ、お久しぶりですーーーーーっ!!」
外壁の上から元気な声が響いた。
その声に上を見上げれば、何処かで見覚えのある女の子が手を振っていた。
すると、次の瞬間には外壁から飛び降り、ロープを使った見事なアクションで軽やかに着地する。
それは、この町に来た時にお世話になった宿屋の娘さんだった。
更に、
――ズドンッ!
砲弾が発射されたかと勘違いする程の轟音がした。
それは、
「ハジメきゅ~~ん♡ カオリちゃん、ユエちゃん、シアちゃぁ~ん!! また会えて嬉しいわぁん!!」
野太い声、野太い四肢、鋼の筋肉、劇画タッチの顔。
そして、ミニスカふりふりドレスのモンスターだった。
そのモンスターは、そのままズドンッ!と地響きを上げながら豪快に着地する。
その姿が見事なヒーロー着地だった事も、色々ヤバい絵面を加速させる。
こう言うタイプであった事があるのは、ハルケギニアにあった『魅惑の妖精亭』のスカロン店長ぐらいなのだが、オネエ言葉はともかく、割と常識はある人だったのでまだマシだったが、このモンスターはスカロン店長の比にならない。
更には、
「カオリちゃんに癒され隊! スクランブル!!」
「ユエちゃんに踏まれ隊! 突撃! 突撃ぃ! ご挨拶一番乗りの栄誉を賜るのだ!」
「シアちゃんの奴隷になり隊! 遅れを取るな! GOGOGOGOッ!!」
「カオリ様親衛隊! 他の隊に後れを取るな!!」
「ユエお姉様と姉妹になり隊! 今度こそ義妹になるわよ! 我に続けっ!!」
「魔王ハジメぇっ、今日こそ玉ぁっ取ったらぁーーーーーーっ!!」
合戦場のような雄叫びを上げながら外壁の上から次々と飛び降りて来る人影。
そして、最終的に町の門が内側から破壊され、見覚えのある格好をした住民達が雪崩出てきた。
それを見てハジメは、
「………………………魔境じゃねえか」
そう一言戦きながら零すのだった。
「…………………………」
暫く反応が無かったので、俺はチラッとハジメの顔を覗いてみた。
すると、目が死んでいた。
序にハジメの嫁達も目が死んでいた。
何故なら目の前には、
白髪のカツラに眼帯黒コート、模造品の義手とモデルガンを両手に香ばしいポーズを取っている青少年(一部老人)が約40人程。
かつての白崎さん、ユエ、シアの恰好をした女性が、それぞれ20人ずつ程。
更には直接この町に来たことが無かった嫁達の恰好をした者達もチラホラと。
なぜこんな事になっているのかと思ったが、先程の垂れ幕にコスプレ大会開催中と書かれていたのでおそらくその参加者なんだろう。
「あはっ、あはははははっ。ハ、ハジメがいっぱいだわ! クオリティーたか~い!」
「おい、ハジメ! 皆さん待ってるだろ! 早く評価して差しあげろ! ぷはっ」
愁さんと菫さんが笑い転げる。
「これは……きつい……」
ハジメが弱音を吐く。
「……ハジメ。雷龍していい?」
ユエや白崎さん達も恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしている。
「や、やめてやってくれ……」
「そんなっ、ハジメさんが配慮するなんて! 正気ですか!?」
「ハジメくん! 魂魄魔法だよ!」
いつもの如くドパンしてでも止めると思っていたシアたちが驚愕の声を上げた。
「コスプレイヤーに、乱暴はいけない」
それはハジメのオタクとして譲れない一線。
「あ、あの……なぜ私まで……」
「ミュ、ミュウまでいるの……」
パーティーの一員だった八重樫さんや豊穣の女神として名を馳せている愛子先生はともかく、殆ど戦いに関与していない自分がいるのかと困惑するレミアさんとミュウ。
しかし逆に、
「……なんでじゃ。なんで妾だけ3人しかおらんのじゃ」
八重樫さんよりも先にパーティーに入った筈のティオのコスプレイヤーは、たった3人しかいなかった。
「…………っていうか、何で大士達は1人も居ないんだよ!?」
ハジメが叫ぶ。
そう、俺達のコスプレイヤーは1人もいなかったのだ。
「さあ? 日頃の行いの差じゃね?」
この町で俺達はハジメ達とは別行動をしていたが、大きな問題を起こした覚えはない。
質の悪い冒険者に絡まれこそしたが、優花が適度な力の差を見せつけ、追い払っただけだ。
ハジメ達の様に、この町の噂になるような真似(スマッシュ)などしてはいない。
ハジメは行く先々で目立つような真似をしているため、祭り上げられやすいんだろうと俺は予想する。
「メシを食いに来たんだ。通せ」
最終的に、ハジメはスルーする方針に決めた様だ。
すると、
「「「「「「「「「「サーッイエッサーッ」」」」」」」」」」
訓練されたと思わされるような一斉の敬礼と共に、道が開かれたのだった。
その後、マサカの宿で食事を終えた後、この町を観光したのだが…………
やはりブルックは魔境だったと言っておこう。
この魔境を普通の町として抑えていたキャサリンは、やはり只者では無かったという。
そして翌日。
俺達はウルの街へ向かっていた。
今度はリリアーナ王女も一緒だ。
ハジメは最初ウルもブルックの様に魔境になっていると思い込んで行く事を拒否していたが、菫のリリアーナ王女のブラック振りを前面に出して説得し、ウルに行く事を決めさせた。
そうして、ハジメがいろんな意味で覚悟してやってきた【湖畔の町ウル】は……
「うそ……だろ?」
ハジメが呆然と呟く
「あの、ハジメさん? キャサリンさんのいないブルックがかなり〝あれ〟なだけですからね?」
リリアーナ王女が苦笑しながら説明する。
そのリリアーナ王女の言葉通り、ウルの町は至って普通だった。
アルファモンが魔物を一掃し、序に吹き飛ばされていた地面が復興序に穀倉地帯になってはいるが、それは歓迎すべき変化であり、それ以外はほぼ依然と一緒だった。
「なんて常識的なんだ……」
「ハジメさん、この世界の人達をなんだと思っているんですか」
リリアーナ王女がハジメに対してジト目を向けるが、ぶっちゃけブルックの町を見た後だと、ハジメの反応にも共感出来てしまう。
王都でも結構な人種が居たし………
「いや、だってな……」
あれこれ話をしながらハジメがフェルニルを着陸させると、ウルの住民達が歓迎の声と共にで迎えた。
多少恥ずかしいが、普通に歓迎してくれているだけなので、ブルックの様に気を失うような事にはならない。
まあ、愛子先生に関しては羞恥心で悟りを開くほどだが。
そんなこんなでこのウルの町に来た時に宿泊した『水妖精の宿』に向かっていたその道中。
「……………ッ! ね、ねえ大士…………」
突然ドルモンが何かに気付き、ある一点を見つめながら震えそうな声で俺に声を掛けてきた。
「ん? 如何したドルモン?」
俺が聞き返すと、
「あ………あれ…………」
ドルモンが指した場所は、かつて6万の魔物が襲ってきた時、ハジメが住民を扇動する為に作った2m四方の台座。
以前無骨に作られていたそれには、見事な彫刻が彫られている。
それは別に問題では無い。
しかし、その台座の上には小柄な少女の像。
いや、より正確に言えば、祈る様に手を組んだ愛子先生の像が作られていた。
しかし、それもまあ俺にとっては問題では無い。
問題は、その台座の後ろに作られた2体の像。
片方は仮面を被り、一対の翼を生やした悪魔のような像。
ぶっちゃけベルゼブモンである。
そしてもう1体は、重厚な鎧を纏った4m程の騎士の像。
「こう来たかぁーーーーーーーーっ!?」
俺はその場で崩れ落ちた。
もう1体の像はアルファモンの像。
アルファモンは、ウルでは女神の騎士として戦ったから、こうなる事も十分考えられる。
「何で予想出来なかった、俺!」
不意打ちを受けた俺の心にクリティカルヒット。
せめて予想出来ていればまだ少しは耐えれたのに………!
で、その後、再び宿への道すがら、余りにも持ち上げられる羞恥に愛子先生が耐えられなくなり、ハジメ監修の元、民衆を扇動し、かつての奇跡を再現するという御触れを出してこの場から民衆を移動させることに成功した。
その間、葵が何か難しそうな顔をして考え込んでいたが…………
水妖精の宿のオーナーに挨拶し、部屋を見学した後、北の穀倉地帯で過去映像を披露する事になったのだが、
『我らの傍に愛子様がいる限り、敗北はありえない! 愛子様こそ! 我ら人類の味方にして〝豊穣〟と〝勝利〟をもたらす、天が遣わした現人神である! 愛子様こそ人類の味方! 現に6年前に世界は知られざる危機を迎えていた! しかし、それは女神に仕える6人の戦士たちによって人知れず防がれた! そして今! このウルの街の危機に、女神様は再び憂いている! 人々を想う女神様の祈りに応え、世界を救いし女神の戦士の1人が再び降臨する!!』
過去のハジメが声を上げている。
『〝豊穣の女神〟愛子様の名の下に、光と共に降臨せよ! 女神の騎士よ!!』
ハジメの合図で台座の裏に隠れていた俺とドルモンがアルファモンに進化。
進化の時の光も相まって、ハジメの言葉通り、光と共に降臨した様に見える。
それに伴い、住民から女神の騎士様という声があちこちから飛び交う。
それを聞いて羞恥で悶える俺。
『我が名はアルファモン!! 女神を護る聖騎士にしてロイヤルナイツの1人也!!』
まあ、ノリノリで口上を述べた俺達にも責任はあるっちゃあるんだけどさ。
『女神の名の下に、魔物達に神罰を下す!』
「ノリノリじゃないか大士」
父さんから的確な突っ込みが入る。
『デジタライズ・オブ・ソウル!!』
そのまま必殺技で魔物の大半を殲滅する。
『更に! 愛子様の御威光はこれだけにはとどまらない!! 愛子様の力を持ってすれば魔王ですらも改心し、正義の使者となる!!』
ハジメが更に叫ぶ。
それに伴ってインプモンがベルゼブモンに進化。
空に飛び立って空中の魔物を殲滅していく。
「ベルゼブモン………」
「何やってるのよ、あいつも………」
レナモンとルキが呆れた声を漏らした。
『愛子様、万歳!!』
過去のハジメのその言葉に過去の………そして現在のウルの住民達も大歓声を上げた。
「「「「「『『『『『愛子様、万歳! 愛子様、万歳! 愛子様、万歳! 愛子様、万歳!』』』』』」」」」」
「「「「「『『『『『女神様、万歳! 女神様、万歳! 女神様、万歳! 女神様、万歳!』』』』』」」」」」
「あうぅぅ~~~」
愛子先生はプシュ~と顔から湯気が出るほどに赤くなって恥ずかしがっている。
俺も内心荒れ狂っているが。
その時だった。
突然光が辺りを照らす。
住民達が何事かとざわつき、ハジメも予想外だったのか警戒する仕草を見せる。
光の大本を探すと、丁度像の上に光の珠が浮いていた。
その光が徐々に消えていくと………………
「『………………皆様、楽しんでいただけたでしょうか?』」
蒼銀の髪を靡かせ、白い翼を広げた女神姿の葵ことアルオイスがそこに居た。
何やってるんだお前?
ハジメも目を点にしている。
「『私の名はアルオイス………運命の女神アルオイス…………我が騎士であるアルファモンをこの地に遣わせた者です』」
その言葉に、住民達がざわつく。
「騎士様を遣わせた………?」
「騎士様の主は愛子様では………?」
といった声が聞こえる。
「『あなた方が豊穣の女神と呼ぶ愛子は、私がこの地に遣わせた現人神…………言わば私の分身であり眷属なのです。そして、アルファモンも正確には愛子の騎士ではなく、この私、アルオイスの騎士。愛子の願いが私に届き、その願いに応え、私がアルファモンをこの地に降臨させたのです』」
「あ、葵さん? 何言って………?」
「『我が眷属と騎士がこれほどまでに人々に愛され、主として誇らしい限りです』」
愛子先生のツッコミをスルーしてアルオイスは続ける。
「『ウルの町の皆様…………我が眷属と騎士をこれからもどうぞよしなに…………』」
そう言うと、アルオイスは再び光に包まれ、その姿を消した。
シンと静まり返るが、その直後に爆発した。
「女神様!? 女神様が降臨為された!」
「愛子様が現人神という話は本当だったのか!?」
「アルオイス様! 万歳! 愛子様! 万歳! 騎士様! 万歳!」
住民達が連呼する。
その直後に俺の横にゲートが開いて葵が現れた。
どうやら優花の空間魔法で移動していたようだ。
「………………何やってんだお前?」
俺は思わず尋ねる。
「え~? だってアルファモンが愛子先生の騎士だっていう事に納得いかなかったんだもん!」
それだけの理由か!?
「そんな事で女神の姿晒すなよ…………」
俺は若干呆れてしまった。
その後、俺達だけで街から少し離れた場所に来ていた。
何故なら、
「………ここなの?」
ジュリが俺に訊ねる。
「ああ、ここだ。ここが………レオモンが現れた場所だ」
俺がそう告げると、葵が過去再生を始めた。
清水の説得が終わろうとした時、突然現れるデジタルフィールド。
そこから現れるレオモン。
しかし、レオモンは正気を失っていた。
『オォオオオオオオオオオオオオオッ!!』
獣のような叫び声と共に俺に向かって襲い掛かって来るレオモン。
「レオモン!?」
ジュリが驚きで叫ぶ。
「この時のレオモンは、おそらくイグドラシルに操られていたんだ。逆に言えば、レオモンを復活させたのはイグドラシルって事になるんだが………」
俺はそう言う。
その時ベルゼブモンが立ちはだかり、レオモンの一撃を受け止める。
『チッ………! 何してくれてんだテメェ!』
『オオオォ………!』
『ッ…………!? お前っ…………まさか!?』
間近でレオモンの唸り声を聞いたベルゼブモンが、何かに気付いた表情になった。
『良く分からないが、このレオモンに意思はない! やるぞ! ドルモン!』
『分かった!』
俺とドルモンがベルゼブモンの背後から側面に回り込み、レオモン向かって攻撃を仕掛ける。
しかし、ベルゼブモンがその攻撃からレオモンを庇った。
「ベルゼブモン!」
ルキが叫ぶ。
『待て大士!! そいつは…………そのレオモンは……………『ジュリのレオモン』だっ!!』
「「「「「「ッ!?」」」」」」
その言葉にテイマーズの皆が驚愕する。
「驚くことに、ベルゼブモンは一目でこのレオモンがジュリのレオモンである事に気付いたんだ…………ベルゼブモンがレオモンのデータをロードしていたからなのか。それとも、それだけジュリに対して罪悪感を感じていたのか………」
「ベルゼブモン………」
ジュリは悲しそうな眼で過去のベルゼブモンを見つめる。
再びレオモンが俺に攻撃し、その攻撃を優花が受け止め、反撃しようとするが、それを俺が止める。
『大士!? 何を………!?』
『待て! 待ってくれ優花!! そのレオモンは『敵』じゃない!!』
『何言ってるの!? こいつは実際に大士を!?』
『分かってる! 俺だって何でこんなことになってるのか理解できない! あのレオモンがここに居ることも! 俺達に襲い掛かってくることも! だけど、これだけは言える! あのレオモンは『敵』じゃない! レオモンは…………『仲間』だ!!』
「大士………」
レオモンが申し訳なさと嬉しさが半々の声でそう漏らす。
『ベルゼブモン! さっきの言葉は間違いないんだな!?』
『ッ………! ああ間違いねえ! こいつは間違いなくジュリのパートナーのレオモンだ!』
そう言い切るベルゼブモン。
『だからこいつの相手は俺にやらせてくれ! あの時のあいつが俺を止めようとしてくれた様に、今度は俺があいつを止める! そして、絶対にジュリの下へ連れて帰る!!』
「ッ……! ベルゼブモンッ!」
ジュリが感極まった様に声を漏らした。
レオモンの攻撃をドルモンがブレイブシールドで防ぎ、その間にベルゼブモンがレオモンに掴みかかり、
『おい! いい加減目を覚ませよバカ野郎! 何でお前が生き返ったのかは知らねえ………けどよ! せっかく生き返ったんならこんな所で暴れてねえでジュリの所へ帰ってやれよ!』
ベルゼブモンが叫ぶ。
『……………………ジュ…………………リ………………』
レオモンが僅かに反応する。
しかし、
『ウォオオオオオオオオオオッ!!』
再び叫び声を上げてベルゼブモンを振りほどこうとする。
それを離すまいとするベルゼブモン。
振り回す腕が先程からベルゼブモンの各部を打ち付けているが、ベルゼブモンは決してレオモンを離そうとはしない。
『レオモン!! 思い出せ! お前はそんな心無い拳を振るうような奴じゃ無かった筈だ!!』
俺もレオモンに呼びかける。
『ウォオオオオオッ!!』
『レオモン! お前はいつだって俺達を………『仲間』達を気に掛けてくれたじゃないか………!?』
『ウゥゥゥゥゥ…………!』
『思い出すんだレオモン! 俺達の事を! 一緒にデジタルワールドを旅した時の事を………! そして、自分の『テイマー』の事を!!』
『ッ……………!? て……………い…………まー……………?』
『そうだ! お前にはテイマーが居たじゃないか! 他人を思いやる優しい女の子が!!』
『ゥ…………ォ…………ァ…………じゅ………………り…………』
「レオモン!」
レオモンがジュリの名を呟いた事で、タカトが期待に満ちた声を上げる。
『そうだ! ジュリだよ!! お前のテイマーの名前だ!!』
『ジュ…………リ……………うぉぁああああああああああああああっ!?』
レオモンはベルゼブモンから組み付いていた手を離し、頭を抱えた。
『レオモン!』
俺が更に呼びかける。
『早く目を覚ませ! お前は俺みたいなバカ野郎じゃ無かっただろ!!』
ベルゼブモンも続く。
『…………あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………!』
叫び声を上げたレオモンは力が抜けた様にその場で膝を着き、その場で項垂れた。
『レオモン!』
俺はレオモンに駆け寄る。
『レオモン! しっかりしろ! レオモン!』
俺は項垂れるレオモンに声を掛ける。
『………………………ゥ』
レオモンがピクリと体を揺らし、ゆっくりと目を開ける。
『レオモン………!』
俺は目を開けたレオモンにホッとし、
『…………ウォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』
次の瞬間には、目の前でレオモンが右腕を振りかぶっていた。
「「「「レオモンっ!?」」」」
『レオモ……………!?』
思わず叫ぶテイマーズの皆と、反応できない当時の俺。
そのまま右の拳が俺に振り下ろされ、その拳が俺の頭を捉える。
そう思った瞬間、その拳は俺の目の前で止まっていた。
『ウォッ………!?』
しかし、レオモンが正気を取り戻したわけでは無い。
『………何やってんだよ! 馬鹿野郎!!』
ベルゼブモンが後ろからレオモンの二の腕を掴み、その拳を止めていたからだ。
『ベルゼブモン!』
『お前が………あの時俺を止めようとしてくれたお前が………! 何俺と同じことをやってんだよ!?』
ベルゼブモンがそう叫び、レオモンの頬を殴りつける。
『あの時もお前はこうやって俺を殴りつけたじゃねえか! 俺は何者かに踊らされてるだけだってよぉ! 今のお前は、あの時の俺と全く同じじゃねえか!!』
『ウォッ………………ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
レオモンは一瞬躊躇したようだが、すぐに振り払うように右の拳を振り被ってベルゼブモンの腹部に叩き込んだ。
「ベルゼブモンッ!!」
レオモンの腹が貫かれた時と重なったのか、ジュリが涙を流しながら叫んだ。
そして………
『……………ったく…………本当にあの時と一緒じゃねえか…………』
ベルゼブモンは呆れたような声を漏らす。
『……………だからよ、返すぜ…………お前から奪っちまった物をよ!』
ベルゼブモンは腹部に叩き込まれた右腕を掴むと、
『うぉあああああああああああああああああああああああああっ!!!』
渾身の咆哮を上げた。
すると、ベルゼブモンの身体からデータ粒子が分離し、それがレオモンの身体へロードされていく。
『これは…………まさか、過去にロードしたレオモンのデータを返しているのか!? そんな事が…………!?』
「ロードしたデータを返す!? そんな事が!?」
ジェンが大声で驚いている。
『さっさと目え覚ませバカ野郎! テメェの『運命』はこんな所で大士を殺す事じゃねえ! お前の『運命』は『ジュリと共に在る』事だろうっ!!』
その言葉と共にベルゼブモンから分離したデータ粒子が全てレオモンに吸収された。
それと共に、禍々しい赤色に染まっていたレオモンの目に理性の輝きが戻った。
『…………ッ! 私は!』
先程までの獣のような唸り声とは違い、確かな言葉を口にするレオモン。
『ヘッ………手間かけさせやがって…………』
ベルゼブモンが呆れた様にそう言いながらレオモンの右手を放す。
『お前はっ…………!』
ベルゼブモンを見て驚きの声を漏らすレオモン。
『レオモン!』
過去の俺はドルモンと共にレオモンに駆け寄る。
すると、レオモンの視線が俺に向く。
『お前は……………ドルモンと居るという事は、まさか大士かっ?』
『ああ、分からないのも仕方ない。あれからもう6年も経ってるんだ』
『6年…………? そうだ、私はあの時に…………!』
レオモンがベルゼブモンに向き直ると、
『……………どうやら過ちには気付いたようだな?』
レオモンは殺された事を怒るでもなくそう言う。
『お陰様でな………』
ベルゼブモンはそう言うと、何やら腕を組んだり頭を掻いたりした後レオモンに背を向け、
『その…………悪かった…………謝って済む問題じゃねえが……………あの時の事は反省してる………』
謝罪の言葉を口にし、
『そうか…………ならばいい』
レオモンはその謝罪を受け入れたのだった。
そこで過去映像が終わる。
「…………とまあ、これがレオモンが復活した経緯だよ。レオモンが復活したのは、曲がりなりにもイグドラシルのお陰かな?」
俺がそう言うと、レオモンが歩み寄ってきて、
「大士、改めて礼を言いたい。ありがとう。私に呼びかけ続けてくれて………」
「レオモン………」
「私からも言わせて! 本当にありがとう! レオモンを助けてくれて!」
ジュリも頭を下げながらそう言った。
「俺はちょっと手伝っただけだよ。本当に礼を言うべき相手はベルゼブモン………インプモンさ」
「ああ。分かっている。帰った時にはジュリと一緒にもう一度感謝を伝えに行こう」
レオモンは、笑みを浮かべてそう言うのだった。
あけましておめでとうございます。
トータス旅行記編第3話です。
今回はブルックとウルの町をお送りいたしました。
ブルックの町って特に大士達は何もやってないのでほぼすっ飛ばし。
ウルでは色々やらかしました。
それにしても、アンケートが滅茶苦茶拮抗してます。
ほんとどっちになるかわかりません。
まだ投票してない人はよろしくお願いします。
PS:今日の返信はお休みします。
次回作決選投票
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ありふれたフロンティアへ
-
転生特典ジェイアーク