ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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最終話 トータス旅行記編 ~シュネー雪原・氷雪洞窟・魔王城編~

 

 

 

 

『――ポイ捨てはらめぇええええええぇぇぇ………………』

 

真っ白な雪原に悲鳴が木霊する。

それは過去再生によって再現された谷口さんがティオによって谷底にポイされた時の映像だ。

それ見た人達がティオに非難の声と視線を投げかける。

それを見て過去の天之河と坂上が自ら身投げする様に崖下へとダイブする。

それはまるで、身投げを強要しているかのようにも見えた。

 

「「「「「「「「「ティオさん………」」」」」」」」」」

 

それが更にティオへの非難の眼を加速させる。

 

「ち、違うのじゃ、これは………そう! 『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』という奴で………どちらにせよ飛び降りねば谷底には…………」

 

ティオが言い掛けたその直後、俺がドルモンをドルガモンに進化させ、その背に乗ってゆっくりと降下していく映像が映った。

 

「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

しらーっとした目がティオに突き刺さる。

 

「あんまりなのじゃタイシィー!!」

 

「いや、声かける前に放り投げられたから、教えるタイミング見失って………」

 

俺は目を逸らす。

因みに俺は、この時はまだデジソウルを十全に使いこなせていなかったので、600mのフリーフォールをする気にはならなかった。

葵はともかく、優花が一緒にドルガモンに乗ったのは、俺に対する気遣いだろう。

すると、

 

「この雪景色………旦那様と結ばれた日の事を思い出すわ…………」

 

唐突にカンナが言った。

 

「旦那様と結ばれた時も、こんな雪景色の中だったわ………」

 

カンナは懐かしむ様にそう言う。

その言葉に、他の女性陣は興味津々という表情になる。

 

「何々? もしかしてカンナさん。雪景色を見ながら告白されたんですか?」

 

白崎さんが期待に胸を膨らませた表情で詰め寄る。

 

「そんなロマンチックなもんじゃねえよ」

 

俺は口を開いた。

全員が俺の方を向く。

 

「リジアルのデジタルワールドに行ったときに、敵の罠にかかって光の柱に俺とカンナだけが呑み込まれて他の場所にランダムに転移させられたんだ。その転移先が極寒の雪山で、落下した衝撃でカンナは気絶。俺はカンナを背負って避難場所を探してたんだが、デジタルワールドではハジメのアーティファクトも使えないから、寒さでどんどん体力が奪われていった。何とか洞窟を見つけて入り口を塞いだまではよかったけど、そこで体力の限界が来て意識を失ったんだ。正直、死を幻視するぐらいにはヤバかったな。けど、そんな俺をカンナが人肌と尻尾で温めてくれて一命を…………」

 

「うぉおおおおっ! 分かるっ! 分かるぞぉぉぉっ!」

 

「雪山での遭難! 寒さを凌ぐ為に人肌で温め合う2人! 王道だわ!」

 

「そして、そんな状況で何も起きない筈が無いっ!」

 

気がつけば愁さんと菫さんが捲し立てる。

 

「いや、まあ、実際その通りなんですけど…………」

 

「大士がカンナちゃんに惚れたのはその時だったのね。今まで大士が助ける側だったけど、カンナちゃんは身体を張って自分を助けてくれた。だからカンナちゃんを好きになったのね!」

 

母さんが納得いったという表情になる。

確かに恋人の殆どは俺が助けるパターンが殆どだが、逆に命を救われたパターンはカンナ位か………

そのカンナも惚れられた切っ掛けはベリアルヴァンデモンから助けた事だが。

例外としてシュヴァリアとの殴り愛というパターンもある。

 

 

 

 

 

その後、洞窟前でビッグフットとの戦いを観戦し、いよいよ洞窟内部へ進む。

氷の迷宮を抜け、フロストゴーレムとの戦いはスルーした。

そして、いよいよ佳境である負の自分との戦いだ。

その前に、ハジメが内容を見せたくない奴は居るかと聞いてきたので、俺は手を上げておいた。

ハジメが意外そうな顔をしたが、

 

「いや、俺の試練の内容例の話に関係してくるから………ここで根掘り葉掘り聞かれるより、後で纏めて説明した方がいいから。ついでに言えば、俺の試練に見どころは無い……ワンパンで終わったから」

 

そう説明した。

そして始まる各メンバーの試練。

ティオの試練は、自分の中の憎悪と復讐心を煽られるが、最終的にすべてがティオの掌の上であり、垣間見せた自分の闇ですら、己の意志で態と見せたものだというティオの意志の強さを見せられた。

シアはその時ハジメに受け入れられて有頂天だったため、その勢いにパワーを乗せて粉砕し、ユエは叔父の真実を仄めかされて動揺しつつもハジメへの愛で何とか乗り越え、その不安からシアと白崎さんに自分が居なくなったもしもの話をしてシアにキレられ大喧嘩に発展。

そのまま終了直後の白崎さんの試練の場に乱入しつつも、白崎さんに止められる。

その直後にスラッシュエンジェモンの襲撃。

究極体相手の圧倒的不利な状況で苦戦しつつも、途中からティオとウイングドラモンの援軍と、白崎さんとガブモンの初めてのクーレスガルルモンへの進化で撃破する。

ハジメの試練はファンタジーそっちのけでアクション映画もかくやという射撃戦を披露しつつ、最終的に開き直って戦いの中で今までの自分より強くなるという、ある意味王道な展開で試練を突破。

直後に襲って来たダークドラモンに、メタルグレイモンと共に立ち向かうが、究極体の力の前に圧倒される。

しかし、ハジメとアグモンの『生きる』という意志が1つとなり、究極進化でブリッツグレイモンが誕生。

ダークドラモンを撃破する。

そして、この試練を見る中で最大の目的と言っていい八重樫さんの試練。

そこには、幼い頃からの苦悩と、ハジメを好きになった事を親友への裏切りと捉え、罪悪感に苦しむ八重樫さんの心の内。

コテモンが必死に呼びかけているが、全く耳に入っていない。

 

「改めて見ると、この時の私は本当にコテモンの言葉が耳に入っていなかったのね………こんなに呼びかけてくれていたのに………」

 

少し申し訳なさそうにする八重樫さん。

致命傷を負って動けなくなる八重樫さんに虚像が止めを刺さんと刀を振り上げる。

弱々しく助けを求める八重樫さん。

しかし、そこにコテモンが割って入る。

 

『黙れと言っている! 確かにお主は雫の抱えている闇なのかもしれん! だが、それが雫の全てではござらん!!』

 

『今は己の心の闇に呑まれてしまったのかもしれん! だが、雫は必ず立ち上がるでござる! 何故なら雫は、拙者のテイマーなのだから!!』

 

『雫! 気をしっかり持つでござる! 確かに奴の言う事は一理あるのかもしれん! だが、それは雫の一部分に過ぎないでござる!』

 

『雫を雫たらしめる一番大切なものは、雫自身が持っている筈でござる!!』

 

八重樫さんを………自分のテイマーを信じるコテモンの言葉。

そして八重樫さんは立ち上がる。

満身創痍ながら、今までで一番研ぎ澄まされた一閃を放ち、自分の虚像を切り裂く。

試練を突破するものの、そこに現れる究極体のタイガーヴェスパモン。

まともに動く所か、コテモンを進化させる事も覚束なかった八重樫さんは危機に陥る。

その口から漏れるハジメへの助けを求める言葉。

その言葉に応えるようにそこに現れるハジメ。

即座にブリッツグレイモンに進化し、止めの一撃から八重樫さんを護る。

すぐに八重樫さんに神水を飲ませ、回復させると、ハジメが戦おうとするが八重樫さんに止められる。

そしてハジメが見守る中、八重樫さんはコテモンと共にガイオウモンに進化。

タイガーヴェスパモンを倒す事に成功した。

それを見終わると、八重樫家の人達が

改めてハジメとコテモンにお礼を言っていた。

まあ、その後の乙女化した八重樫さんに、皆はほっこりとしていたが。

 

 

 

 

その後、シュネーの隠れ家を見学した後、ゲートを開く前にハジメが言った。

 

「次が今日最後の見学地…………魔王城跡地なんだが………大士、神代。本当にいいんだな?」

 

ハジメが俺達に最後の確認をしてくる。

 

「ああ。いつまでも黙って置くのも気が引けるしな」

 

「私も………いいよ」

 

俺と葵がやや神妙に頷く。

 

「先に言っておくが、これから行く場所で見る映像には、大士と神代の秘密が含まれている…………それこそ大士と神代への見る眼が変わるかもしれないってほどのな………その覚悟が無いなら、ここで待つことをお勧めするが…………どうする?」

 

ハジメが脅すような口調で問いかけた。

ハジメなりの気遣いだろう。

その言葉に、

 

「………僕は見るよ。大士は『仲間』だ。これからも本当の『仲間』として、『友達』でいる為にも、僕は知りたい!」

 

タカトが一番にそう言った。

 

「タカト………」

 

「僕達も見るよ。大士が抱えているものを。それを共有できなくて何が『仲間』だ!」

 

「ジェン………」

 

「アンタは昔っから隠し事が多かったからね。この際全部見てやろうじゃない!」

 

「ルキ………」

 

仲間達の言葉が心に染みる。

 

「私達にも見せてくれ。息子が今まで隠し続けていた事を」

 

「父さん?」

 

「私達を甘く見ないで欲しいわね。あなたが昔から何かを隠していたこと位、お見通しよ」

 

「母さん……!?」

 

誰も残ると言い出す様子はなく、ハジメは一度息を吐く。

 

「なら、行くぞ」

 

ハジメはクリスタルキーでゲートを開いた。

 

 

 

ゲートで出てきた場所は、まるで何処かの遺跡後のような場所だった。

崩れかけた柱と規則的に敷き詰められた石の床がある事で辛うじて何かの建物の跡であることが分かる程度だ。

そして、周りには一方向に向かって地平の彼方まで続く岩山と、そこが見えないほどに深い綺麗な亀裂。

それ以外にはきれいさっぱり何も無かった。

 

「………………………」

 

俺はそれを見て、何とも言えない気分になる。

 

「…………リリアーナ王女」

 

「………はい」

 

俺はリリアーナ王女に声を掛け、リリアーナ王女は何かを察した様に返事を返す。

 

「……………魔人族は…………」

 

俺がそう言うと小さく顔を伏せ、

 

「今までに、魔人族が見つかったという報告はありません」

 

そう答える。

 

「そうか……………」

 

俺はそれだけを言う。

 

「それにしても、何も無い所だなぁ…………」

 

「そうね。魔王城跡って言う位だから、もうちょっと城下町とかがあってもおかしくないのに………」

 

愁さんと菫さんが思ったのと違うと言いたげにそう言う。

 

「確かに、殺風景すぎるな。魔人族が暮らしていた所なのだろう? もう少し発展していなければおかしいんじゃないのか?」

 

智一さんが疑問を零す。

それに対し、

 

「その理由も、これからお見せします」

 

ハジメはそう言って、ユエに過去再生を促した。

すると、当時の煌びやかな魔王城の室内が再現される。

クラスメイト達とミュウ、レミアさんを人質に取られ、魔王城に連れて来られた俺達。

そこで始まる魔王アルヴとの対面。

それはユエの叔父の姿だった。

その口から出る言葉からユエに動揺が広がる。

しかしクルモンの一声で我に返る。

そこから始まる魔人族や中村からの攻撃。

必死に対処していく俺達。

そして一瞬のスキを突かれ、ユエが光の柱に包まれる。

ハジメが何とかユエの下に辿り着くも、ユエはエヒトに身体を乗っ取られていた。

神言擬きを始めとして、エヒトが行使する強力な魔法に圧倒される俺達。

しかし、

 

『やぁああああああっ!!』

 

唯一人、神言擬きの影響を受けない葵がエヒトに斬りかかる。

しかし、葵の一撃はあっさりと受け止められ、

 

『我が〝神言〟が通じぬとは…………貴様は一体何者だ?』

 

疑問を零すエヒトだが、瞬時に葵の後ろに回り込んでいた。

 

『まあ、何者でも関係ない。『(わたし)』の前では何者だろうと有象無象に過ぎん』

 

そのままエヒトによって背中から胸を貫かれる葵。

 

『葵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!』

 

目の前でそれを目撃した俺の絶叫が響き、

 

「葵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

同じように叫ぶ実さん。

 

「お、落ち着きなさい実! 今こうして生きてるんだからちゃんと蘇生できるのよ!」

 

麗奈さんがやや動揺しつつも実さんを宥めようとしている。

次の瞬間、

 

『葵を離せ…………!』

 

金色の光を纏った俺が、瞬時にエヒトの横に移動し、その横面に拳を叩き込んだ。

吹き飛んでいくエヒト。

 

「大士君、容赦なくユエちゃんの顔を殴り飛ばしたわね」

 

そこで菫さんから突っ込みが入った。

 

「中身が違うと分かってはいるが………ああも顔が変形する程思いっきり殴るなんて………少しは手心を加えても………」

 

更には愁さんの言葉。

 

「いや、もうあの時は葵の事で頭が一杯で………」

 

「そうだぞ! 葵の胸を貫いた輩なんぞに与える慈悲など無い!!」

 

俺の言葉に便乗する様に叫ぶ実さん。

 

『葵…………!』

 

過去の俺は倒れる葵を抱き留め呼びかける。

 

『あ……………た………い………………っ!?』

 

葵は俺の名を口にしようとした所で一瞬硬直し、その身体から全ての力を失い、息絶えた。

 

『ッ……………! 葵っ…………!? 葵っ!!』

 

俺は必死に葵の体を揺らすが何も反応しない。

俺は項垂れるが、

 

『落ち着けタイシ!! 再生魔法と魂魄魔法ならまだ助けられるかもしれん!』

 

叫んだティオの声でハッと我に返った。

すると、葵をその場に寝かせ、中村に操られ、白崎さんに斬りかかっていた天之河の背後に瞬時に移動すると、

 

『邪魔だ!!』

 

裏拳の様に腕を振るって天之河の頭を横から殴りつける。

吹き飛んだ天之河はそのまま壁を突き破って隣の部屋へ。

その後も暫く壁を突き破るような音が響いていたから、もう何部屋かぶち抜いてったようだ。

よく生きてたな天之河。

白崎さんは一瞬その出来事に呆けるが、

 

『白崎さん頼む!! 葵を………! 葵を助けてくれ!!』

 

『う、うん! 任せて!!』

 

直ぐに葵の下に駆け寄り再生魔法を行使。

瞬く間に葵の胸の傷は塞がる。

 

『葵! しっかりしろ! 葵!』

 

リュウダモンが呼びかけるが、葵は反応しない。

 

『ッ………あ、葵ちゃん!!』

 

白崎さんは即座に魂魄魔法を行使。

葵の魂に干渉して蘇生させようとするが、

 

『きゃっ………!?』

 

パンッと弾かれるような音がして白崎さんの魔法行使が中断された。

 

『嘘………何で…………葵ちゃん!』

 

白崎さんは困惑しながらも再度魂魄魔法を行使するが、その度に弾かれる。

 

『妾も手伝おう!』

 

『私も!』

 

ティオと優花も加わり、3人で魔法を行使するが、再び弾かれる。

 

「ど、如何いう事だ? 葵の蘇生は成功しなかったのか!?」

 

克さんが動揺した様子を見せる。

 

「はい、葵には魂魄魔法に対する絶対的な耐性があり、魂魄魔法による蘇生は不可能でした」

 

俺はそう答える。

 

「で、ではここにいる葵は!?」

 

「…………………」

 

俺はその問いには答えず、前を見続ける。

 

『葵ちゃん…………! お願い………戻ってきて………!』

 

『アオイ……………』

 

『葵! 目を覚ましなさい!』

 

3人は諦めず魔法を行使していくが、

 

『……………………ごめんなさい…………魔力が………もう…………!』

 

3人の魔力が尽きる。

白崎さんはボロボロと涙を零す。

 

『…………………………アオイ』

 

ティオは無念そうに顔を伏せ、

 

『葵…………嘘でしょ………………?』

 

優花は呆然と呟く。

それを見ていた俺は、

 

『あ…………ぐ………………あぁっ………………!』

 

何かに苦しむ様に、我慢する様に声を漏らし始める。

 

『ふん…………神である私を殴るとは…………ふむ………その小娘は死んだか…………私の〝神言〟を無効化する程のイレギュラー…………調べておいて損は無いだろう』

 

『エヒト様に歯向かった愚か者の末路だ。頭を垂れて許しを請うが良い』

 

エヒトとフリードの言葉に、俺の表情が歪んでいく。

 

「うっわ! ひっでぇ顔……!」

 

当時の俺の表情を客観的に見て、俺はそう漏らす。

拳も血が滲むほどに握りしめている。

だが、その感情を爆発させないよう理性が圧し止めている。

 

「………何故、ここまで我慢しているんだい?」

 

克さんが俺に問いかけた。

 

「娘が………葵が殺されたというのに、何故君は怒りを我慢しているんだ………!」

 

その声は俺を責める様な声色だ。

 

「……………パートナーデジモンは、テイマーの心の影響を強く受けます」

 

「それと今の状況と何の関係がある!?」

 

「テイマーの強い感情は、デジモンの力となり、進化を呼びます。ですが、怒りや憎しみといった負の感情は、デジモンの力を暴走させ、全てを破壊し、そのデジモンその者の命すら脅かす危険性があるんです。つまり、この状況で怒りと憎しみを解放させることは、ドルモンを失うかもしれないという事です。俺に残った僅かな理性が、それを理解していたために、ギリギリの状態で抑え込んでいました。しかし、それは俺の精神に多大な負荷をかけていました。このままでは精神が壊れるというほどに…………」

 

過去の俺は歪みに歪みつくした表情だ。

しかし、そんな俺にドルモンが歩み寄り、

 

『大士…………我慢しないで…………大士…………そのままじゃ壊れちゃうよ…………』

 

ドルモンは心配そうな表情を俺に向ける。

だが、

 

『…………駄目だ…………この思いを爆発させたら…………俺はお前を…………!』

 

俺はドルモンすら失う事を恐れていた。

 

『大丈夫…………』

 

そんな俺にドルモンは笑いかけ、

 

『大士の怒りも悲しみも……………全部俺が受け止めるから………………俺がどんな姿になっても……………俺は絶対に大士を恨んだりしないから…………………』

 

「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

「何という………深い思いやりじゃ…………」

 

鷲三さんが震えながら呟く。

 

「ええ………自分が死ぬかもしれない………いいえ、死ぬよりも深い業を背負うかもしれないのに…………」

 

霧乃さんもドルモンの言葉に感涙を浮かべる。

 

『ドルモン………………!』

 

ドルモンの言葉に、瞳から涙が零れる。

 

『だから大士……………我慢しないで……………大士の気持ちは、俺が一番分かってるから……………!』

 

『ドルモン………!』

 

俺の手のデジソウルが大きく輝きを増す。

 

『デジソウル…………チャージ…………! オーバー…………ドライブ………!』

 

俺は震えながらDアークにデジソウルを宿した右手を翳す。

Dアークから放たれる光がドルモンを包み、

 

『ドルモン進化!』

 

ドルモンを究極体へ進化させる。

護る為ではなく、『破壊』の為に。

 

『ドルゴラモン!!』

 

ドルゴラモンとなったドルモンは、身を起こして咆哮を上げる。

 

『グガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

それだけで魔王城の天井から上を全て吹き飛ばした。

 

「こ、これは…………!?」

 

「暗黒進化!?」

 

タカトとジェンがドルゴラモンを見上げながら叫ぶ。

 

『チッ! 出てこい!』

 

フリードが命令を下し、無数の魔物やデジモン達がドルゴラモンの前に立ちはだかる。

 

『貴様などエヒト様やアルヴ様が手を下すまでもない! 神の使徒と認められたこの私が…………』

 

フリードは何か言いかけたが、

 

『五月蠅い…………!』

 

その時の俺には、戯言を聞く余裕は無かった。

フリードたちに手を翳すと、

 

『ドルディーン…………!』

 

ドルゴラモンが口から放つレーザー状の破壊の衝撃。

フリードの目の前に居た灰竜やデジモン達を一瞬にして消滅させ、フリードを飲み込んで塵も残さず消し飛ばす。

破壊の衝撃はそのまま直進、城下町に直撃すると、ドルゴラモンが頭を振り上げ、破壊の衝撃が地平の彼方まで届くと共に真上の雲すら真っ二つにする。

それは、先程見た一直線に連なる岩山と同じ場所だ。

それから一瞬遅れてその亀裂からマグマが溢れ出した。

 

「ま、まさかこの岩山って…………」

 

母さんが恐る恐る声を漏らす。

そこから始まるのはドルゴラモンの蹂躙。

無双などという生易しいものじゃない。

行われているのは唯の虐殺。

デジモンを殺して喰らう、『破壊竜』の姿。

それと共にエヒトを睨み付ける。

 

『フン、気に食わない目だ。良かろう、更なる絶望を与えてやろう』

 

エヒトは俺に向かってそう言うと手を掲げる。

その瞬間、何処からともなく十数体の究極体デジモンが集まって来た。

更には数百体の完全体と、数千数万におよぶ神の使徒の女。

それらが魔王城を囲うように現れたのだ。

 

『どうかね? 今からでも許しを請う気は………』

 

『だからどうした?』

 

俺はドルゴラモンに合図を出す。

 

『行け………! ドルゴラモン………!』

 

ドルゴラモンが全身をエネルギーで包み、

 

『ブレイブメタル………!』

 

全身全霊で突撃した。

ドルゴラモンは目の前に立ちはだかるもの全てを粉砕しながら突き進む。

 

『ッ………!? 躊躇うな! どれだけ犠牲を出しても構わん! 奴に攻撃を集中しろ!!』

 

エヒトは焦りを隠せずに叫ぶ。

ドルゴラモンは敵を次々に粉砕するも、数万の攻撃がドルゴラモンに降り注ぐ。

すると、ドルゴラモンの動きが徐々に鈍って来る。

それを見て、エヒトは余裕を取り戻したのか再び笑みを浮かべる。

 

『フッ………どうやら奴もここまでの様だ。まあよくやったと褒めて………』

 

『…………しろ』

 

しかし、それは単なる準備でしかない。

 

『はか……ろ………』

 

『何だと………?』

 

俺の『憎悪』を受け止める準備でしか。

 

『全てを破壊しろ!! ドルゴラモォォォォォォォン!!!』

 

俺のデジソウルが憎しみに同調する様に黒紫色に染まり、

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!!」

 

同時にドルゴラモンも黒紫色の光に包まれる。

灰銀の甲殻が紫色に染まり、銀の骨格に青い膜だった翼が、黒い骨格に、血の様な紅の翼に変化した。

 

「デクス……ドルゴラモン………」

 

俺が呟くと、

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■――――――ッ!!!!』

 

デクスドルゴラモンが咆哮と共に口から破壊の衝撃を放つ。

それは直撃した敵だけではなく、その余波だけでも並のデジモンや神の使徒を塵も残さず消し飛ばしていく。

デクスドルゴラモンは、それを魔王城を中心に360°回転しながら放ったため、敵どころか城下町すらを余波だけで消滅させていく。

 

「あああっ………!」

 

それを見て悲痛な声が響く。

ドルディーンを放ち終えると、何も残ってはいなかった。

残ったのは、デクスドルゴラモンの真下にあった魔王城と、吹き飛ばされた後に再び湧き上がるマグマのみ。

しかし、俺はそんな事を気にする素振りも見せず、エヒトを見据えた。

 

『なっ…………ま、待て………! この体は貴様の仲間の…………!』

 

エヒトが体がユエの物だと主張するが、

 

『関係ない………!』

 

俺は一遍の躊躇も見せずデクスドルゴラモンに命令を下す。

いや、俺の感情に引き摺られるままにデクスドルゴラモンが動いたというべきか。

 

『ま、待て大士!! そのままじゃユエが………!』

 

ハジメが叫ぶが、その時の俺にはハジメ(仲間)の言葉も耳に入らない・

 

『破壊しろ……………奴を破壊しろ!! デクスドルゴラモォォォォォォン!!』

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!』

 

エヒトに襲い掛かるデクスドルゴラモン。

 

『畜生が!!』

 

俺にドンナーを向けるハジメ。

 

「だ、駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

悲鳴を上げる様に叫ぶジュリ。

しかし、その時気付いた。

息絶えた筈の葵が立ち上がっていた事に。

そして、淡い光に包まれ、

 

―――バサッ!

 

白い翼が広がり、蒼銀の髪を靡かせて飛び立ち、

 

『『落ち着いて…………………』』

 

不思議な響きを持つその声が辺りに響き渡った。

その瞬間、俺が纏っていた黒紫のデジソウルが、吹き消されるように消失する。

 

『何だ…………?』

 

ハジメも我に返ったようで、引き金を引くことを止める。

 

『グガッ!?』

 

デクスドルゴラモンが急速に力を失い、エヒトを手放してドルモンに退化する。

 

『一体何が………? いや、今はそれどころではない! このチャンスに奴を!』

 

エヒトは一瞬困惑したが孤立している俺を見下ろすと、

 

『〝五天龍〟!!』

 

エヒトが五属性それぞれで龍を形作り、俺に向かって放ってきた。

俺は棒立ちになっており、デジソウルで防御する様子も無い。

しかし、次の瞬間、俺の傍に葵が降り立ち、純白の翼で俺を包む。

五天龍は、その翼に触れる寸前で掻き消されて消えていった。

 

『なあっ!?』

 

エヒトが驚愕の声を漏らす。

そして、その翼が再び広げられ、

 

『『偽りの神よ……………この方を傷付けることはこの私が許しません…………!』』

 

アルオイスの姿となった葵がその姿を現した。

 

『な、何者だ貴様は…………!?』

 

エヒトが狼狽えた様に問いかける。

すると、アルオイスは目付きを鋭くしてエヒトを睨むと、

 

『『黙りなさい』…………!』

 

その口から命令が発せられる。

 

『ッ………………!?』

 

その命令通りエヒトは声が出せなくなる。

その目が何をしたと訴えるが、

 

『ただの『神言』です。貴方の使っていた、声に魔力を乗せて相手の魂に働きかける『神言の真似事』ではなく、『魂の格』が上の者から下の者へと行う『真の神言』…………もちろん心強き者であれば抗う事は難しくありません。ですが、貴方如きには抗う事は不可能です』

 

エヒトに向かってそう言い放つ。

その様子を呆然と見つめ続けていた俺は、

 

『葵…………なのか…………?』

 

そう問いかけた。

 

『その問いかけの答えは、少しお待ち下さい…………』

 

 

彼女は軽く腕を振ると、光の波動が広がり、重傷だったハジメやダメージを受けていた皆の傷を瞬く間に癒し、ミュウ達を閉じ込めていた檻もあっさりと消し去り、怪我をしていた異世界召喚組もあっという間に治癒された。

それからエヒトへと視線を向けると、

 

『『身体を持ち主へ返しなさい』』

 

その命令が発せられると、ユエの身体から光の球が分離した。

ついでにアルヴの身体からも光の球が分離する。

 

『ユエ!』

 

ハジメが駆け寄ると、

 

『………ん、ハジメ………?』

 

『ユエ………なんだな?』

 

『…………ん、あんな奴に身体を乗っ取られるとは不覚』

 

『ユエ…………おかえり』

 

『ハジメ……………ん、ただいま』

 

その様子を見て、

 

「よかったわ、ユエちゃん」菫さんがホッと息を吐く。

 

するとアルオイスは、ユエとユエの叔父から分離した光の球を見据える。

 

『数多の運命を狂わせ、神の名を騙る異世界の魔術師の魂よ……………運命神 アルオイスの名の下に断罪します…………………『消滅しなさい』』

 

『や、やめろ………! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

『き、消えたくなぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!』

 

ただ一言でエヒトとアルヴの魂は消え去った。

 

『……………どうなったの?』

 

ユエが呟くと、

 

『2つの魂は消滅しました。輪廻の環に戻るのではなく、存在そのものの消滅です』

 

「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」

 

その言葉に過去映像の俺達だけでなく、現在の皆も息を呑んだ。

 

「何故……葵にそんな事が………?」

 

言葉の意味を全て理解できては居ないだろうが、葵がとんでもない事をしているという事だけは理解した克さんが声を漏らす。

アルオイスが過去俺達に向き直り、

 

『お待たせしました。黒騎 大士さん……………先程の問いにお答えします。確かに私はあなた方と共に歩んできた『神代 葵』である事は間違いありません』

 

そう言うと一呼吸置き、

 

『ですが、今の私は『アルオイス』……………『運命を司る女神 アルオイス』。それが今の私です』

 

「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」

 

再び息を呑む皆。

 

『アル………オイス…………? 運命の………女神………?』

 

今の皆と同じように呆然としていた過去の俺が声を漏らす。

 

『あなたには…………『あなたを死なせてしまった女神』と言った方が分かりやすいかもしれません』

 

『ッ!?』

 

「ど、如何いう事!?」

 

「葵さんがお兄ちゃんを死なせた!?」

 

その言葉に姉ちゃんと美姫が驚愕の声を上げる。

 

『それってまさか………!』

 

『その通りです。大士さんの前世において、私の過失があなたの命を奪いました……………』

 

「「「「「「「「「「前世!?」」」」」」」」」」

 

全員が驚愕して俺を見た。

ユエが気を利かせたのか、一旦映像を止める。

 

「言葉の通りだ。俺には『黒騎 大士』として生まれてくる前、別の人間として生きた記憶がある」

 

俺はそう答える。

するとユエが映像を再生し、

 

『……………その女神様が、何故『葵』に?』

 

『………………………大士さん。あなたが上級神様に私の減刑を願い出た結果、上級神様はその願いを受け入れました。本来は数万年の幽閉どころか存在そのものの消滅すら視野に入れていた筈の私への罰は、あなたの願いによって、『神としての力と記憶を封印され下界に人間として転生する』罰へと軽減されました……………』

 

今度は葵へ視線が向く。

 

「今の言葉の通り、私は『神代 葵』として生まれてくる前はアルオイスって言う運命を司る女神だったの…………だけど、ある時、私のミスで前世の大士の運命を狂わせて死なせちゃって……………上級神様の計らいで大士を転生させて新しい人生を歩ませることでそのお詫びとしたの。それで、お詫びの一環として、少し大士の要望を聞き入れる事にして、大士が要望したのは、最初デジモンのテイマーになる事だったんだけど、私が最低でも数万年の幽閉である事を聞いたら、私の減刑を願い出ちゃって…………上級神様はその願いを聞いて私の刑を人間に転生する罰に減刑してくれたの」

 

更に過去再生は続く。

 

『記憶と力は魂の奥底に封印されていましたが、こちらの世界に召喚され、魂へ干渉されたり、魂魄魔法の取得などの影響で、徐々に封印が緩んできていました。そして先程の魂魄魔法が最後の切っ掛けとなり、記憶と、力を僅かに取り戻せるほどにまで封印が緩んでしまったのです』

 

女神として復活した経緯を話す。

 

『………………人間へ転生する際、上級神様は私に使命を与えました』

 

『使命…………?』

 

『大士さん、あなたはこの世界にとってはイレギュラーな存在です。それは同時に、『誰とも結ばれない運命』を背負って生まれてきました』

 

『誰とも………結ばれない…………』

 

『じゃあ、大士が異性から不自然に好かれなかったのは………』

 

『そう『運命』で決定づけられていたからです。より正確には、イレギュラーである大士さんの『運命』と、交わる『運命』の持ち主が居なかったと言うべきですが…………』

 

『そういう事だったのか……………』

 

『よって、上級神様は、あなたと共に歩む使命を私に与えました』

 

『えっ………………?』

 

『あなたを支え、共に歩むこと。それが、私があなたに出来る償いだと……………』

 

『…………………葵が俺を愛してくれたのは…………決められた事だったのか…………?』

 

『大士さん………………』

 

『答えてくれ! 葵が俺と一緒に居てくれたことは、予め決められた……………償いの為の偽りの愛だったのか!?』

 

『……………………………………………はい』

 

『ッ…………!?』

 

『………『本来は』その筈でした』

 

『………ッ?』

 

『本来であれば、『神代 葵(わたし)』が『転生したあなたの魂』を持つ者と出会った際、その魂の持ち主の姿に強烈な好意を植え付けるように…………要はこれ以上無いほどに一目惚れをさせるようになっていました』

 

『ですが、そこで予想外の事が起こりました。初めて『転生した魂の持ち主(あなた)』が『神代 葵(わたし)』の前に現れた時、それはアルファモンに進化した姿でした。ドルモンと共に進化したとはいえ、アルファモンも『転生した魂の持ち主』に違いありません。それによって『神代 葵(わたし)』は、アルファモンの姿に対して強烈な好意を抱くようになったのです。ですが、人間とは違うアルファモンに好意を持ったことで、同じ人間に好意を抱いていれば、気付くことも無かった自分の気持ちの不自然さに『神代 葵(わたし)』は気付いてしまいました』

 

『あっ!』

 

優花が声を上げる。

 

『どうした?』

 

『う、うん…………まだ奈落の攻略の途中の話なんだけど、葵が自分の気持ちに苦悩してた時があったから…………』

 

『更に2つ目の予想外が、この世界、『トータス』への召喚です。それによって、召喚された者達全ての運命が狂ってしまったと言っても過言ではありません。それによって大士さんの『誰とも結ばれぬ運命』も、僅かながら綻びを見せました。とはいえ、それでも『異性から好かれない』という因果は残ってしまいましたが』

 

『綻び…………』

 

『『神代 葵(わたし)』には元々、その因果は通用しません。なので、あなたの姿をありのまま受け止められました。あなたと共に過ごす内、あなたの優しさ、強さ、弱さに触れていきました…………そして、決められた運命ではない、『神代 葵(わたし)』自身の意志であなたに惹かれていきました。決められた運命の影響が全く無いとは言いませんが………『神代 葵(わたし)』が『黒騎 大士(あなた)』を愛したのは、紛れもなく私自身の意志ですよ』

 

『葵……………』

 

『そして優花さん』

 

『私………?』

 

『あなたは自らの運命を超え、大士さんを愛しました………』

 

『『運命』なんて知らないわ。私は大士を愛した。それが全てよ』

 

『ええ、そうですね』

 

『…………………あなたになら、彼を任せられます』

 

『えっ? ちょっと! 今の如何いう意味!?』

 

アルオイスは振り返り空を見上げる。

 

『もう時間がありません…………』

 

すると、強烈な光の柱が、天から俺達の前に降り注ぐ。

アルオイスはその場で跪くと、光の柱の中から翼を広げた上級神様が姿を見せた。

過去映像越しとは言え、その存在感は半端ない。

 

「あ、あの御方は………!」

 

エミリアが畏怖する様に声を上げる。

 

「あの方が上級神様。俺を転生させてくれたお方だ」

 

上級神様を知らない人たちに俺は言う。

 

『お久しぶりです。上級神様…………』

 

『下級神アルオイス……………あなたは自分がした事を分っているのですか?』

 

その声は責める様な声。

 

『はい…………下界において無許可での『顕現』。一定以上の『神力』の無断使用。そして、下級神独断での断罪の執行……………全てにおいて『神の規律』を破る大罪です。間違いなく『存在の消滅』を課せられる罰を与えられるでしょう』

 

『そこまで分かっていながら何故?』

 

『私が大士さんを護りたかったからです…………この『存在』の全てを懸けてでも………』

 

『……………それは、彼への贖罪の為ですか?』

 

『いいえ、違います』

 

『贖罪の為でも使命の為でもありません。私が彼を愛しているから…………それだけです』

 

『……………葵』

 

『その為に、あなたは破滅の道を選ぶというのですか?』

 

『覚悟の上です』

 

上級神様の言葉に迷い無く答えるアルオイス。

 

『良い覚悟です……………下級神アルオイス』

 

『はい』

 

『下界での無許可での顕現。一定以上の『神力』の無断使用及び下級神独断での断罪の執行。その全てを踏まえれば、『存在の消滅』の刑が妥当だと考えます』

 

『はい。その罰を受け入れ…………』

 

『待ってください!!』

 

俺が声を上げる。

 

『女神様! 葵を赦してください! 葵は俺達を助ける為に決まりを破ったんです! だから…………!』

 

『………………『口を挟まないでください』』

 

上級神様の『神言』に、一瞬声が出なくなる俺。

しかし、

 

『……………ぅ………ぁ…………あああああああああああああっ!!!』

 

俺は気合で神言を振り払った。

 

『黙りません! どうか葵を許してください!!』

 

俺はアルオイスの前に出ると、上級神様に土下座をする。

 

『…………神とは全てにおいて平等でなければなりません。下級神個人の意思で誰かに肩入れすることも、神としては失格です』

 

上級神様は淡々とそう言い放つ。

 

『……………どうしても………葵を許してくれないのなら…………俺は………! あなたと戦います!』

 

俺は土下座の状態から立ち上がると、拳を握ってデジソウルを発動させる。

 

『だ、駄目です!? やめてください大士さん! 上級神様は私達運命を司る神を束ねる御方! 人間であるあなたが敵う御方ではありません!』

 

『関係ない! 俺からお前を奪おうとするのなら、いくら恩神であるあなたと言えど、赦しはしない!!』

 

『大士が戦うなら………俺だって………!』

 

ドルモンが俺の横に並ぶ。

 

『葵は某のテイマーだ。例え女神だろうと関係ない! 葵を護るのは某の役目!!』

 

更にリュウダモンも立ちはだかる。

 

『リュウダモン…………!』

 

上級神様はそんな俺達を一瞥した後目を伏せ、

 

『『跪きなさい』…………!』

 

上級神様の先程よりも強い口調の『神言』が俺達を地面に跪かせようとする。

 

『あぐっ………!? ぐぅぅ………!』

 

『ッ………倒れない!』

 

『葵はっ………護る………!』

 

だが、俺達は膝を震わせながらもその『神言』に抗う。

 

『お、お止めください上級神様!! 罰は私が受け入れます! ですから、どうか大士さん達だけは…………!』

 

『そんな事は………認めない………!』

 

アルオイスの言葉を遮って俺はそう言う。

 

『葵が消えるなんて事は…………俺は絶対に許容できない!』

 

俺は叫ぶとデジソウルを全身に宿し、『神言』を振り切ってしっかりとその場に立つ。

 

『だから俺は、『神』に逆らって地獄に落ちようとも………葵は絶対に渡さない!!』

 

『ッ……………大士っ………!』

 

涙を流すアルオイスの口調が最後に『葵』に戻る。

 

『行くぞ! ドルモン!!』

 

『おおっ!!』

 

俺はDアークを掲げて進化しようとして、

 

『………………『話は最後まで聞きなさい』!』

 

『えっ?』

 

若干の呆れを含んだ『神言』に俺達は動きを止める。

 

『アルオイス…………確かにあなたは下界に顕現し、規定以上の神力を使用して2つの魂を断罪しました』

 

『はい…………』

 

『ですが、神を騙るエヒトルジュエとその眷属のアルヴヘイト。その2つの魂にはつい先ほど神会において断罪が決定していました』

 

『『えっ?』』

 

『世界その物を遊戯盤とした神気取りの遊戯……………この世界の内だけで行われていたのなら、『神』は手を出すつもりはありませんでした。この世界に辿り着いたエヒトルジュエは当時原始的で、魔物達に蹂躙されるだけだった人類に知恵と力を与え、人間の生活圏を広げたからです。エヒトルジュエが行った神の遊戯も、『神』の間では為政者による戦争と判断していました……………ですが、今回、エヒトルジュエはやってはならない事をしました。それが別世界からの召喚です。異世界からの召喚は、召喚者の運命を狂わす行為。『神』の間でも重罪です。しかし、『救い』を求める場合に限り、見逃すようにしてきました。ですが、全ての世界に常時目を光らせているわけでもないので、見落とす場合もあるわけですが………………ですが今回は、私が転生させたあなたと、アルオイスが召喚に巻き込まれた事で、早い段階からエヒトルジュエの蛮行が明らかになりました。そして、神会においてエヒトルジュエとアルヴヘイトの処遇を過去を踏まえて審議した結果、エヒトルジュエ、及びその眷属アルヴヘイトを、運命を狂わす大罪人として断罪することが決定されました。そしてその役目はアルオイス、あなたに言い渡される筈でした』

 

『えっ? し、しかし私は現在罰を受けている身で…………!』

 

『エヒトルジュエは神性を備えていたとはいえ、その力は『神』としては、下の下の下。一時的にあなたの封印を解き、対処させるつもりでした。そうすれば、天界の『神』に余計な力を使わせずに対処することが出来るからです。その前に封印が緩んでしまうとは思いませんでしたが……………』

 

『じゃ、じゃあ葵の罪は…………』

 

『フライングですが見逃しましょう。アルオイスが力を行使したのは神会による決定の後なので』

 

『あ、ありがとうございます!!』

 

『ですが、規律を破ろうとしたことには違いありません。よって、アルオイスには、私個神から罰を言い渡します』

 

『ッ…………!』

 

『下級神 アルオイス。あなたに罰を言い渡します』

 

『はいっ………!』

 

『引き続き、『神代 葵』として人間の生を全うしなさい』

 

『はい…………えっ?』

 

『『神代 葵』としての生を終えた時点であなたは再び『神』の座に戻るはずでしたが、規律を自分から破ろうとする者を神の座に戻す訳にはいきません。よって、『神代 葵』としての生を最後まで全うし、罪を最後まで償いなさい』

 

『は、はい! 謹んでお受けいたします!』

 

『ありがとうございます! 女神様!』

 

『…………本音を言えば、あなたには早く天界に戻ってきてほしいんですけどね』

 

『?』

 

『アルオイスは下級神と言えど、その力は既に上級神に迫ります。『神』としては若い方なので経験が足りませんが、いずれは私の後釜と言われるほどに優秀な『女神』なのですよ。あなたを過失で死なせてしまった事で、その座は遠のいてしまいましたが、優秀な『女神』であることには変わりませんから。普通の下級神の数十人分に匹敵しますよこの子は……………なので、現在の運命神達はアルオイスが抜けた穴を埋めようとてんやわんやしています。居なくなって初めて彼女に頼りきりだった事を実感しているようですね』

 

『黒騎 大士さん』

 

『はい』 

 

『『神』は必要以上の下界への干渉を禁じています。なので、私の力で召喚者達を地球へ戻すことは出来ません』

 

『それから、あなたの戦いにも助力することは出来ません』

 

『ッ……………はい』

 

『ですが、諦めなければきっと『運命』は拓けます。最後まで諦めないでください』

 

『ご忠告、感謝いたします』

 

『あなた達の『運命』に幸があらんことを…………』

 

上級神様はそう言い残すと、再び天から降り注いだ光の柱に包まれ、その光の柱が消えると同時に姿を消した。

そこで過去再生が終わる。

 

「……………とまあ、これが俺と葵の秘密だ。因みにデジソウルを知っていた事も、前世の記憶の1つです」

 

俺がそう言うと、

 

「「「「「「「「「「………………………」」」」」」」」」」

 

皆が呆然としていた。

 

「いや………想像の遥か斜め上を行ったというか……………」

 

リョウが苦笑い気味に呟き、

 

「お兄ちゃんが転生者で…………」

 

「葵の前世が女神様…………」

 

美姫と実さんが呆然と呟く。

 

「それに………私は大士君を誤解していた」

 

克さんが口を開く。

 

「私は……大士君が複数の女性を侍らすクソ野郎だと思っていた………」

 

「あ、そうなんですか? まあ、その通りなんですけど………」

 

葵との仲を認めてくれてたから、てっきり気にして無いと思ってたけど。

 

「しかし、あれだけ幸せそうな葵を見て、そして君の性格自体には問題が無い事を確認して、不本意だが……! 本当に不本意だが葵との仲を認める事にした………!」

 

かなり力籠ってるな………

それだけ不本意だったんだろうけど。

 

「だが、私は誤解していた。君は葵をとても深く愛していた。葵の仇を取るために国を滅ぼし、神に歯向かうほどに………!」

 

「いや、そこは大量虐殺者って言われる事を覚悟してたんですけど……!?」

 

「そこまで見境が無くなったのも、葵をそこまで愛していた反動だろう?」

 

「確かにそうですけど………」

 

「故に私は改めて言おう。葵をよろしく頼む」

 

その言葉に、

 

「はい!」

 

俺はしっかりと頷いた。

その後は、ロイヤルナイツとの戦いやグリューエン火山の跡地、メルジーネ海底遺跡を巡り、トータスの異世界旅行は幕を閉じる事になるのだった。

 

 

 

 

 

次回作の順番は?

  • 順番通りで良いです
  • 同時進行でお願いしやーす!
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