ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第28話 アンカジ公国 オアシスに潜むモノ

 

 

八重樫さんを仲間に加えてグリューエン火山を目指し、グリューエン砂漠を進む俺達。

魔力駆動四輪で進んでいるわけだが、流石に熱砂の中シア達を魔力駆動二輪で進ませるわけにはいかない。

なので白崎さんがクルモンを抱いたミュウを膝に乗せ、前列にシアを追加。

荷台に屋根を追加し、砂嵐の中も平気なようにしてインプモンがとティオが荷台にいる。

因みに、人の中で唯一荷台送りになったティオは、

 

「妾だけこんな扱い…………………………ハァハァ」

 

雑な扱いに逆に興奮していた。

因みに魔力駆動四輪はエアコン完備なので砂漠の中だろうと車内は快適だ。

車内でワイワイと騒ぎながら走っていると、いつもの如く感知距離がずば抜けている優花が異変を感じた。

 

「南雲、二時方向に何か反応があるわ。結構大型のモンスターね…………人間が襲われてるみたいだけど……………何か変ね?」

 

「変?」

 

「クル?」

 

優花の言葉に俺が尋ね、クルモンも不思議そうな声を漏らす。

 

「人の周りをグルグル回ってるだけで襲い掛かろうとしないのよ。まるで微妙な食べ物を前にして、食べようか如何か迷ってるみたいな?」

 

「そりゃ確かに変だな。この砂漠で大型の魔物って言うとサンドワームだと思うが…………」

 

ハジメがそう分析する。

 

「奴らは悪食じゃ。獲物を前に躊躇うという事はない筈じゃが…………」

 

何気にパーティー内でユエを超える年長者であり、知識も豊富なティオがそう言う。

 

「それにしてもサンドワームねぇ………砂漠の魔物としちゃ在り来たりだな」

 

RPGなどの砂漠のフィールドでは高確率で存在する奴だ。

優花に言われた方を眺めていると、巨大なミミズのような魔物が見えた。

 

「お、アレか…………」

 

俺がそう呟いた瞬間、

 

「ッ、南雲!!」

 

優花が切羽詰まった様に叫んだ。

 

「ッ! 掴まれ!!」

 

ハジメは叫ぶと同時にハンドルを切る。

その直後、先程まで魔力駆動四輪が走っていた場所にサンドワームが飛び出した。

 

「うおっ!?」

 

反応が遅れた俺は体制が横に崩れ倒れそうになる。

そのまま倒れた俺は頭を打ち付けるかと思いきや、ふよん、と柔らかい感触が頭を受け止めた。

すると、そのまま頭を抱えられてその柔らかいものに強く押し付けられ、

 

「掴まって!」

 

「むぐっ………!?」

 

優花の声が聞こえた。

そのまま車体が左右に振られ、その度に顔が柔らかいものに強く押し付けられたり、左右に揺れて擦り付けたりしてしまう。

やがて車体が安定すると、

 

「ゆ、優花!? あなた…………!?」

 

八重樫さんが慌てたような声を漏らした。

俺が何だと顔を上げると、どうやら俺は優花に顔を抱えられているらしかった。

つまり先程の柔らかい感触は優花の胸だったわけで、八重樫さんはそれを見て顔を真っ赤にしているようだった。

 

「………何赤くなってるのよ? 雫」

 

優花が八重樫さんの反応を見て面白そうにニヤニヤと笑う。

 

「えっ………ちょ、はしたないでしょ!? いくら恋人同士だからって………」

 

「だけど、大士を護るにはこれが一番確実だし………!」

 

「そ、そうかもしれないけど…………む、胸に押し付けるなんて…………!」

 

「え~? これぐらい香織も普通にやってるわよ?」

 

「ええっ!? ホントなの香織!?」

 

「えっ? そこで私に振るの? そりゃベッドの上ではよくやってるけど………って、今はそんな事を言ってる場合じゃ………!」

 

因みに今現在サンドワーム3匹に追われている。

さっきのハジメの急ハンドルは、地下から襲い掛かってきたサンドワームを躱すためだ。

 

「どうせ南雲の事だからこの車にも色々武装が積んであるんでしょ?」

 

優花は特に危機感を感じさせずにそう言う。

すると、ハジメはニヤリと笑って、

 

「そんじゃあリクエストにお応えするとしますか!」

 

特定部位に魔力を流して特殊ギミックを作動させる。

それと同時に車にドリフトをかけてサンドワームに車体前面をむけると、ボンネットの一部がスライドして開き、その中から4連装のミサイルランチャーが迫り出してきた。

そのミサイルランチャーはカクカクと動いて狙いを定めると、迫ってくるサンドワームに向かってミサイルを放った。

それぞれがサンドワームの口の中に吸い込まれる様に入っていくと、一拍置いて爆散した。

血の雨と肉片が降り注ぎ、フロントガラスをべちゃべちゃと汚す。

 

「うっ………!」

 

八重樫さんが気持ち悪そうに顔を青くする。

 

「うへぇ……香織、ミュウが見ないようにしてやっててくれ」

 

「もうしてるよ。ミュウちゃん、苦しいかもしれないけど、もう少し我慢してね」

 

白崎さんがミュウを正面から抱きしめ、ミュウが凄惨な光景を見ないようにしている。

 

「………………香織…………こんな光景を見ても全然動じないのね…………」

 

図太くなった白崎さんの神経を目の当たりにして、八重樫さんは感心したような悲しくなったような複雑な気持ちの様だ。

 

「ミサイルランチャーね…………ベタと言えばベタだな」

 

俺はそう呟く。

すると、

 

「そんじゃあお次はこいつだ………!」

 

俺の言葉に対抗する様にハジメは次のギミックを作動させた。

ミサイルランチャーが引っ込むと、今度はボンネットの中央から縦に開き、その中から長方形の箱型の物体が出てきたかと思うと、それが伸長してシュラーゲンのようなライフル銃となった。

それが再び標準を合わせると、先程の妙な動きをしていたサンドワームを纏めて吹き飛ばした。

 

「おお~………!」

 

俺は感心した声を上げる。

 

「どんなもんだ………!」

 

俺の声にハジメは満足気にそう言うと、先程のサンドワームの場所に向かって車を走らせた。

 

 

 

 

 

サンドワームが襲うかどうか迷っていたのはやはり人だった。

エジプトの民族衣装に似た白い服を身に纏った20代半ばぐらいの男だった。

苦しそうに歪められた顔には大量の汗が浮かび、呼吸は荒く、脈も早い。

服越しでもわかるほど全身から高熱を発している。

しかも、まるで内部から強烈な圧力でもかかっているかのように血管が浮き出ており、目や鼻といった粘膜から出血もしている。

治癒師である白崎さんが慌てて状態を診察する魔法を行使する。

すると、

 

「……魔力暴走? 摂取した毒物で体内の魔力が暴走しているの?」

 

「香織? 何がわかったんだ?」

 

「う、うん。これなんだけど……」

 

白崎さんが少し困惑しながらステータスプレートに表示された結果を見せる。

 

 

 

 

状態:魔力の過剰活性 体外への排出不可

 

症状:発熱 意識混濁 全身の疼痛 毛細血管の破裂とそれに伴う出血

 

原因:体内の水分に異常あり 

 

 

 

 

「おそらくだけど、何かよくない飲み物を摂取して、それが原因で魔力暴走状態になっているみたい……」

 

それでサンドワームが食うか食わざるべきか迷っていたようだ。

俺達が通り掛かったことも含めて、この男の運が良かったと言えよう。

 

「しかも、外に排出できないから、内側から強制的に活性化・圧迫させられて、肉体が付いてこれてない……このままじゃ、内蔵や血管が破裂しちゃう。出血多量や衰弱死の可能性も……。〝万天〟」

 

白崎さんは状態異常を解除する魔法を唱える。

 

「……効果が薄い……どうして? 浄化しきれないなんて……それほど溶け込んでいるということ?」

 

「治せないのか?」

 

ハジメがそう聞くと、

 

「治せないことは無いと思う。魔力をほぼ全て使い切れば………だけど」

 

「なるほど、香織がそこまでしなきゃいけないなんて厄介だな」

 

白崎さんのレベルでそこまでしないといけないとなると、この世界の誰にも魔法での治療は不可能だろう。

 

「……………今は応急処置だけしておくね。〝廻聖〟」

 

光系の上級回復魔法〝廻聖〟。

一定範囲内の魔力を他者へ譲渡する魔法だ。

主に自分の魔力を他者へ分け与えることが多いが、逆に他者の魔力を自分や第三者に与えることも可能。

しかし、その場合は効率がかなり悪くなる。

とは言え、白崎さんのレベルにもなれば、一般人の魔力など余裕で吸い尽くせるが。

白崎さんはその魔法を利用して過剰魔力分を吸いだし、自分の指にある神結晶の指輪に魔力を溜めておく。

それは効果があったようで、男の呼吸も安定した。

 

「とりあえず今は大丈夫。だけど、根本的な治療は出来てないからまたその内症状が出てくると思う」

 

つまり白崎さんが行ったのは症状を悪化させないための保存療法という事だ。

 

「この世界の病気にはあまり詳しくないけど、ユエやティオは何か知らないかな?」

 

白崎さんがこの世界の年長者であるユエとティオに問いかける。

だが、2人とも覚えが無いのか首を傾げたり、首を横に振るだけだ。

 

「香織、念のため俺達も診察しておいてくれ。未知の病だというなら空気感染の可能性もあるだろ。まぁ、魔力暴走ならミュウの心配は無用だが」

 

「うん、そうだね」

 

ハジメの言葉で白崎さんは俺達全員を診察したが、異常は見当たらなかった。

その事に一先ずホッとしていると、先程の男が目を覚ました。

 

「………う」

 

「あっ、大丈夫ですか?」

 

白崎さんが心配そうに声を掛けると、その男は白崎さんをボーっと見つめた後、

 

「………女神? そうか、ここはあの世か……」

 

白崎さんに見惚れた様にそう言った。

そのまま白崎さんに熱っぽい視線を向け、白崎さんに触れようと手を伸ばし始めたので、暑さと砂のウザさにイラついていたハジメはそんな行為を看過することが出来ず、その男の腹を踏みつけた。

 

「おふっ!?」

 

「ハ、ハジメくん!?」

 

「ちょ、南雲君!? 相手は病人よ!?」

 

その行動には白崎さんと八重樫さんも驚いたようで、慌てて制止に入る。

ハジメを落ち着かせたあと、脱水症状の危険もあるのでその人物を車内へ招き入れる。

元々定員一杯だったので荷台行きになっているが。

 

「まず、助けてくれた事に礼を言う。本当にありがとう。あのまま死んでいたらと思うと……アンカジまで終わってしまうところだった。私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ」

 

どうやらこのビィズと名乗った男は結構な大物だったようだ。

ビィズ曰く、四日前、アンカジにおいて原因不明の高熱を発し倒れる人が続出した。

それは本当に突然のことで、初日だけで人口二十七万人のうち三千人近くが意識不明に陥り、症状を訴える人が二万人に上ったという。

直ぐに医療院は飽和状態となり、公共施設を全開放して医療関係者も総出で治療と原因究明に当たったが、進行を遅らせることは何とか出来ても完治させる事は出来なかった。

処置を受けられなかった人々の中から死者が出始め、発症してから僅か二日で死亡するという事実に絶望が立ち込める。

そんな中、一人の薬師が飲み水に〝液体鑑定〟をかけた結果、その水には魔力の暴走を促す毒素が含まれていることがわかった。

直ぐにアンカジのオアシスが調べられたのだが、やはりオアシスそのものが汚染されていたらしい。

砂漠地帯においてオアシスはまさしく生命線であり、それが汚染されたとなればあっという間に人々は干からびてしまうだろう。

故にどうしようもなくなって汚染された水を飲み、感染してしまうという悪循環が発生する。

ただ、唯一患者を救える方法も見つかっており、〝静因石〟と呼ばれる鉱石を必要とする方法で、この鉱石はその名の通り魔力の活性を鎮める効果を持っており、それを粉末状にして飲めば体内の魔力を鎮めることが出来るだろうという事だ。

ただ、その〝静因石〟は希少な鉱石で、砂漠のずっと北方にある岩石地帯か【グリューエン大火山】で少量採取しか採取できないらしい。

しかし、北方の岩石地帯は遠すぎて往復に少なくとも一ヶ月以上はかかってしまい、アンカジの冒険者、特に【グリューエン大火山】の迷宮に入って〝静因石〟を採取し戻ってこられる程の者は既に病に倒れてしまっている。

仮にそれだけの実力者がいても、どちらにしろ安全な水のストックが圧倒的に足りない以上、王国への救援要請は必要だった。

本来、アンカジの現状を調査するための調査員が派遣されたり、面倒な手続きがあったりするのだが、そんな事を悠長に待っていられない為、強権を発動できるゼンゲン公か、その代理たるビィズが直接救援要請をする必要があった。

ビィズの家族も全員が感染していて、〝静因石〟を飲んで命の危機は脱したものの、衰弱が激しくとても王国に赴く事など出来そうになかった。

それでビィズが救援を呼ぶためアンカジを出たのだが、ビィズもすでに感染しており、アンカジを出て一日経ったつい先ほど症状が現れて倒れてしまったそうだ。

その際に護衛も居たそうだが皆サンドワームやられてしまい、残ったビィズは逆に感染していた事でサンドワームを躊躇させ命が助かった。

説明を一通り終えると、ビィズは衰弱した身体を必死に動かし、

 

「……君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。どうか、私に力を貸して欲しい」

 

そう言って深く頭を下げた。

 

「どうするんだハジメ。俺としては人助けは別に悪いことじゃないと思うが?」

 

俺はハジメに依頼を受けることに賛成という意を込めつつそう言う。

他の皆も大なり小なり賛成側が多そうだ。

そして一番の決め手は、

 

「パパー。たすけてあげないの?」

 

そう純真な瞳でハジメを見つめながら言ったミュウの一言だ。

ミュウにとってハジメはパパであると同時にカッコイイヒーローなのだ。

そんな期待するような眼差しで見つめられれば、ハジメに否は無い。

 

「しょうがねえな………まあ、元から【グリューエン大火山】が目的だったんだ。その序に採集依頼を済ませるぐらいは良いだろう」

 

「おおっ! それでは…………!」

 

「その依頼を受けよう」

 

「感謝する………!!」

 

ビィズは感極まった様に涙を流した。

その後、すぐに気を取り直すと、

 

「ハジメ殿が〝金〟クラスなら、このまま大火山から〝静因石〟を採取してきてもらいたいのだが、水の確保のために王都へ行く必要もある。この移動型のアーティファクトは、ハジメ殿以外にも扱えるのだろうか?」

 

「まぁ、大士と神代、デジモン達とミュウ以外は扱えるが……わざわざ王都まで行く必要はない。水の確保はどうにか出来るだろうから、一先ずアンカジに向かいたいんだが?」

 

「どうにか出来る? それはどういうことだ?」

 

怪訝そうに聞くビィズに内容を説明しながら、俺達はアンカジへと向かった。

 

 

 

 

 

 

アンカジの入場門は高台にあり、そこから街が見渡せるようになっている。

アンカジの建物は乳白色で彩られており、俺から見ても美しい都だと思った。

しかし、都は美しくても人々の活気は全く無く、建物の扉は固く閉じられており、人通りは殆どない。

ビィズは活気ある街を見せたかったと残念そうにそう言っていたが、今は一先ず問題の解決が先だという事で宮殿へ向かうことになった。

アンカジを出て一日で戻ってきたビィズに領主であるランズィは大層驚いていたが、そのランズィも衰弱している筈なのに執務室で気合いと根性で仕事に励んでいたので、よほどの人格者らしい。

俺はそんなランズィに王国にいた王族や貴族なんかよりも好感が持てると感心した。

ビィズがランズィに事のあらましを説明し、トントン拍子で話が進んだ後、手分けして問題の解決に乗り出すことになった。

 

「じゃあ、動くか。香織はシアと八重樫を連れて医療院と患者が収容されている施設へ。魔晶石も持っていけ。俺とユエは、水の確保だ。領主、最低でも二百メートル四方の開けた場所はあるか?」

 

「む? うむ、農業地帯に行けばいくらでもあるが……」

 

「なら、そこだな。シアと八重樫は、魔晶石がたまったらユエに持って来てやってくれ」

 

因みに運ぶ役が2人なのは、白崎さんの魔法の範囲と速度だと、おそらく1人がユエ達の下に魔晶石を届けて戻る前に次の魔晶石が一杯になるからだろうという理由である。

 

「大士達はオアシスの方を頼む。園部ならオアシス全部が感知範囲だろ」

 

「了解だ」

 

尚、クルモンはミュウと一緒にハジメと共に行動し、ティオもそちらへ。

インプモンは患者を運ぶのに人手が要るだろうと白崎さん達の方へ行くことになった。

因みに患者を運ぶ際、ベルゼブモンに進化したわけだが、その姿を見て地獄からの迎えが来たと患者たちを勘違いさせ、騒ぎになったのは余談である。

 

 

 

 

俺達はランズィの案内でオアシスへ来たわけだが、オアシスは、キラキラと光を反射して美しく輝いており、とても毒素を含んでいるようには見えなかった。

 

「ん~~~~………………」

 

優花が感知系の技能をフル活用してオアシスを探っていると、

 

「……………あれ?」

 

優花が何かに気付いたように声を漏らした。

 

「領主様、一つお尋ねしますが、オアシスの底には何かアーティファクトでも沈めているんですか?」

 

優花はランズィにそう問いかける。

 

「いや? オアシスの警備と管理に、とあるアーティファクトが使われているが、それは地上に設置してある……結界系のアーティファクトでな、オアシス全体を汚染されるなどありえん事だ。事実、今までオアシスが汚染されたことなど一度もなかったのだ」

 

「何か見つけたのか?」

 

俺が聞くと、

 

「ええ。オアシスの底に魔力感知に引っかかったのが一つ。それとは別で気配感知だけに引っかかったのが3つ。結構大きいわ」

 

優花が警戒する様にそう言った。

 

「そ、それが汚染の原因なのかね!?」

 

ランズィが焦った様に確認してくる。

 

「断定はできませんが、魔力感知に引っかかった奴が一番怪しいと思います」

 

優花の言葉にランズィは唸ると、

 

「そ、そうか! しかし、オアシスの底となれば安易に手出しできん。何か対策を講じねば…………!」

 

ランズィが早速宮殿に戻ろうとしていたので、

 

「ちょっと待ってください。ちょっくら炙り出してみます」

 

「……………何?」

 

「葵!」

 

「うん!」

 

俺と葵はオアシスと聞いて水中への攻撃手段を予め考えていた。

俺達は同じカードを取り出し、

 

「「カードスラッシュ!」」

 

そのカードを同時にスラッシュする。

 

「「サブマリモン! オキシジェンホーミング!!」」

 

サブマリモンの必殺技をドルモンとリュウダモンへ付与する。

 

「「オキシジェンホーミング!!」」

 

ドルモンとリュウダモンがオアシスに向かって数発の透明な魚雷のような物を撃ち出す。

それが水中に消えてしばらくすると、ドゴゴォォォォォンと水面が爆発したように水柱を上げた。

 

「うぉおおおおっ!? な、何だ!?」

 

「………優花、如何だ?」

 

驚くランズィを他所に俺は優花へ問いかける。

すると、

 

「……………来るわ!」

 

優花が叫んだ一瞬後、無数の水が触手となって襲い掛かってきた。

 

「メタルキャノン!!」

 

「居合刃!!」

 

ドルモンが鉄球を吐き出して撃ち落とし、リュウダモンの刃が触手を切り裂く。

 

「ふっ!」

 

優花も手裏剣や苦無を投げて触手を吹き飛ばす。

ランズィが何事かと水面に目をやると、その水面が盛り上がり、10m近い小山になった。

 

「なんだ……これは……」

 

ランズィが呆然と呟く。

更に、その小山の前の水面が盛り上がると、

 

「ゲッソモ~ン!」

 

「シェルモ~ン!」

 

「エビドラモ~ン!」

 

3体の水棲型デジモンが姿を現した。

 

「………気配感知に引っかかってた3体はコイツらね」

 

優花がそう呟く。

 

「シーフードミックスデジモンかよ…………」

 

出てきた3体のデジモンを見て俺は思わずそう漏らした。

すると、葵がDアークを確認して、

 

「ゲソモン 成熟期 ウィルス種 軟体型デジモン。必殺技は、『デビルバッシング』と『デッドリーシェード』。シェルモン 成熟期 データ種 軟体型デジモン。必殺技は、『ハイドロプレッシャー』。エビドラモン 成熟期 データ種 水棲型デジモン。必殺技は、『ツインネプチューン』。全部成熟期だね」

 

葵はそう言う。

 

「な、何だこの魔物達は………見た事ないぞ………」

 

「こいつらは魔物じゃなくてデジモンですね。あのでっかいスライムみたいなのは知りませんが…………」

 

問題は、このデジモン達があの魔物を護ってるって事だな。

成熟期でもこの世界においてはベヒモス級だ。

十分な脅威にはなるだろう。

 

「あのスライムは私に任せて。大士達はデジモン達をお願い!」

 

優花がそう言う。

 

「分かった。そっちは頼む」

 

巨大スライムは優花に任せ、俺達はデジモン達に向き直る。

 

「行くぞ! ドルモン!」

 

「分かった! 大士!」

 

「リュウダモン! お願い!」

 

「承知した!」

 

俺と葵は進化カードをスラッシュする。

 

「「カードスラッシュ! 超進化プラグインS!!」」

 

――EVOLUTION

 

Dアークにその文字が表示され、光を放つ。

 

「ドルモン進化!」

 

「リュウダモン進化!」

 

それと同時にドルモンとリュウダモンも光に包まれ、進化する。

 

「ドルガモン!!」

 

「ギンリュウモン!!」

 

2体は空中に飛び立ち、3体のデジモンを見下ろす。

因みに成熟期なのは、完全体以上になるとオアシスを吹っ飛ばしかねないという配慮からだ。

 

「パワーメタル!!」

 

ドルガモンが口から放った巨大な鉄球が襲い掛かる。

 

「ゲソッ!?」

 

それはゲソモンに直撃したが軟体の身体が衝撃を吸収した所為かダメージが少ない。

 

「くっ…………」

 

ドルガモンが悔しそうな声を漏らす。

すると、

 

「これならば!」

 

ギンリュウモンが前に出て、

 

「徹甲刃!!」

 

口から槍を放つ。

打撃で駄目なら斬撃で。

確かに有効そうに見えた。

だが、

 

「シェェェェェル!」

 

ゲソモンの前にシェルモンが現れ、その殻で徹甲刃を防ぐ。

 

「何っ………!」

 

ギンリュウモンも予想外のことに声を漏らした。

ドルガモンとギンリュウモンは水面近くに滞空しつつゲソモンとシェルモンの様子を伺う。

だが、その時俺はエビドラモンの姿が無いことに気付いた。

 

「ッ! 拙い! お前達! 水面から離れろ!!」

 

俺は咄嗟に叫ぶ。

しかし次の瞬間、ドルガモンの真下からエビドラモンが飛び出し、その巨大な鋏でドルガモンの首と胴体を掴むと、水中へと引きずり込んだ。

 

「うわぁっ!?」

 

「ドルガモン!!」

 

その光景を見て、俺は思わずオアシスに駆け寄る。

しかし、その前にゲソモンとシェルモンが立ち塞がった。

 

「ッ………!」

 

俺は咄嗟に足を止める。

 

「ドルガモンが………!」

 

葵も苦悶の声を漏らす。

エビドラモンはエビに近い姿とは言え立派なドラモン系デジモンだ。

そのパワーはドラモンの名に恥じぬモノであり、しかも水中は相手のテリトリー。

いくらドルガモンでも水中戦では分が悪い。

 

「くっ…………!」

 

ギンリュウモンもドルガモンを助ける隙を伺うが、ゲソモンとシェルモンの2体がそれを許さない。

焦りが生まれる中、俺は必死に頭を回転させた。

 

「落ち着け…………テイマーの役目は慌てふためく事じゃない………どんな時でも諦めずにパートナーを信じて、パートナーに勝利への道筋を示す事だ………!」

 

俺はテイマーとしての役目を口に出して自分を落ち着けようとする。

そして自分の手に持つ手札(カード)を見た。

 

「敵は水棲型………こっちも水棲系で………? いや、同じ属性では向こうに分がある………それならば…………」

 

その時、俺は手札の端にあった1枚のカードが目に入る。

その瞬間、俺は閃いた。

 

「ッ…………! こいつだ!」

 

俺はそのカードを手に取る。

 

「カードスラッシュ!」

 

そしてそのままDアークにスラッシュした。

 

「ベタモン!!」

 

俺はそのカードの名を叫ぶ。

 

「えっ? ベタモン?」

 

ベタモンは成長期デジモンだ。

このピンチに何故そのカードをと思ったのかもしれない。

だが、このカードこそこのピンチを乗り切る勝利の切り札!

Dアークがベタモンのデータをドルガモンへ送る。

そのデータを受け取ったドルガモンは、一時的にベタモンの力を手にする。

そう、それはつまり、

 

「電撃ぃ…………ビリリンッ!!」

 

「エビィィィィィィィィッ!?」

 

体中から電撃を放つ必殺技『電撃ビリリン』。

公式では100万ボルト以上の電撃と言われる強烈な電撃だ。

それがドルガモンから放たれる。

成長期の技だが水棲型デジモンにとっては弱点となり得る上に、水は電気を通す。

電撃は直接触れているエビドラモンだけではなく、ゲソモンやシェルモンも感電した。

 

「ゲソォォォォォッ!?」

 

「シェェェェェェェェェェル!?」

 

突然の電撃に身体を硬直させる2体。

そしてそれをギンリュウモンは見逃さない。

 

「徹甲刃!!」

 

鋼の槍がゲソモンに向かって放たれる。

先程はシェルモンがカバーに入ったが、今はゲソモンと同じく電撃に感電して硬直している。

先程の様にカバーに入ることは出来なかった。

ゲソモンが鋼の槍に貫かれる。

 

「ゲソォォォォォォォォォォッ!?」

 

ゲソモンは軟体の為、打撃には強くても斬撃や刺突には弱かったため、いとも容易く貫かれて消滅した。

すると、水面からドルガモンが飛び出してくる。

 

「大丈夫か!? ドルガモン!」

 

「何とか!」

 

ドルガモンの返事に俺はホッとする。

 

「早速で悪いがドルガモン!」

 

俺はシェルモンを指差す。

 

「わかった!」

 

ドルガモンはそれだけで俺の意図を理解する。

 

「パワーメタル!!」

 

ドルガモンはシェルモンに向けて巨大な鉄球を放つ。

シェルモンは慌ててからに引っ込み、身を護るが、ガァァァンとけたたましい音が鳴ると共に、シェルモンの殻に罅が入る。

シェルモンの殻は、ゲソモンとは逆で斬撃や刺突に強くとも打撃に弱い。

そしてそのひびが入った所に向けて、

 

「徹甲刃!!」

 

ギンリュウモンが槍を放つ。

罅の入った殻はその役目を全うすることが出来ず、その部分を貫かれてシェルモン本体へ届いた。

 

「シェェェェェェェェルッ!?」

 

シェルモンはそのまま消滅する。

 

「あと1体…………ッ!?」

 

葵がそう呟いた瞬間、再びエビドラモンがドルガモンの真下から飛び出した。

ドルガモンは先程と同じく首と胴を巨大な鋏に挟まれ水中に引きずり込まれる…………訳は無い。

エビドラモンがドルガモンを捉えたと思った瞬間、ドルガモンの姿が消え去る。

 

「エビッ!?」

 

エビドラモンが困惑したように声を上げた。

 

「エイリアス………分身のカードだ。こいつをスラッシュしておいた」

 

俺はエビドラモンに見せつけるようにそう言った。

そして空中に飛び出したエビドラモンは隙だらけだ。

故に、

 

「あとは任せたぞ………優花」

 

俺がそう言った瞬間、優花がエビドラモンの斜め上に飛び出し、槍を振りかぶっていた。

 

「くらいなさい! ニーベルング!!」

 

優花は雷を纏った槍をエビドラモンに投げつける。

その槍は、容易くエビドラモンの甲殻を貫き、貫通した。

 

「エビィィィィィィィィィッ!?」

 

貫かれ、消滅するエビドラモン。

尚、優花が相手していた巨大スライムは、先程の電撃ビリリンに巻き込まれて倒されていたりする。

 

「……終わったのかね?」

 

離れていたランズィが恐る恐る尋ねてくる。

 

「…………そうですね………オアシスに魔力反応はもうありません。原因を排除した事がイコール浄化と言えるのかは分かりませんが…………」

 

優花はもう一度魔力と気配を探り、それらしい反応が無いかをチェックしてランズィにそう告げる。

慌ててランズィの部下の一人が水質の鑑定を行った。

 

「……どうだ?」

 

「……いえ、汚染されたままです」

 

やはりそううまい事は行かず、元凶を倒したとしても、汚染された水は残る様だ。

 

「でも、元凶は倒したんだし、オアシスは地下水脈から湧き出してるものだから、時間が経てば毒は消えると思います。水もユエが何とかしてくれるだろうし、王国に救援を求める時間は十分にあると思います」

 

葵がそう言うと、ランズィ達は気を取り直していく。

 

「……しかし、あのバチュラムらしき魔物は一体なんだったのか……新種の魔物が地下水脈から流れ込みでもしたのだろうか?」

 

気を取り直したランズィが首を傾げてオアシスを眺める。

因みにバチュラムとはこの世界のスライムのような魔物の事だ。

 

「確証はないが……魔人族の仕業だと思う」

 

俺は自分の推測を口にする。

 

「!? 魔人族だと? タイシ殿、貴殿がそう言うからには思い当たる事があるのだな?」

 

ランズィが驚愕した表情でこちらに問いかけてくる。

 

「1つは見た事の無い魔物。最近の魔人族は今まで見たことも無い魔物を従えている。もう1つはデジモン。どんな理由かは分からないが、デジモンの中に魔人族に味方してる奴が居るみたいだ」

 

その可能性として今の所一番有力なのが、イグドラシルなんだがな。

 

「あとはこのアンカジは食料関係の要所みたいだし、狙われる理由としては十分あると思う」

 

「魔物のことは聞き及んでいる。こちらでも独自に調査はしていたが……よもや、あんなものまで使役できるようになっているとは……見通しが甘かったか……………」

 

「新種の魔物なんだ。対応が遅れても仕方ないだろう。まあ、今回は俺達が通りかかってラッキー程度に思っておけばいいんじゃないか?」

 

「いや、領民を護る領主にとって未知の脅威だろうと対応の遅れは許されるものではない……タイシ殿、アオイ殿、ユウカ殿。そしてこの場には居らぬハジメ殿達に、アンカジ公国領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、国を代表して礼を言う。この国は貴殿等に救われた」

 

そう言うと、ランズィを含め彼等の部下達も深々と頭を下げた。

領主が頭を下げるという意味を俺は分からないわけでは無い。

 

「まあ、ここは『気にしないでくれ。人として当然のことをしたまでだ』とでも言うべきなんだろうな」

 

ハジメなら『ああ、たっぷり感謝してくれ。そして、決してこの巨大な恩を忘れないようにな』と思いっきり恩に着せそうだが。

 

「ただ、俺達にもある程度後ろ盾が欲しい。無茶な事は言わないが、可能な限り俺達の味方で居てくれると助かる」

 

「ああ。もちろんだ。末代まで覚えているとも……だが、アンカジには未だ苦しんでいる患者達が大勢いる……それも、頼めるかね?」

 

「元々そのつもりだ。準備が済み次第向かうつもりだよ」

 

「感謝する」

 

こうしてアンカジを救うための〝静因石〟の採集を兼ねた【グリューエン火山】の攻略が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 





第28話です。
1週間ぶりの投稿です。
アンケートの結果この小説の続きが大多数を占めたので続きを書いていきます。
さて、アンカジ公国ですがあんまり変える所も少なかったのでオアシスで水棲型デジモンのシーフードミックス(笑)を出しときました。
少しは苦戦したかな?
次回は迷宮攻略かな?
お楽しみに。


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