【Side 雫】
メルジーネ海底遺跡の攻略から数日が経った。
私達はミュウちゃんのお母さんのレミアさんの家でお世話になっている。
南雲君も次の迷宮攻略へ行かなければいかないと分かっているみたいだけど、それはミュウちゃんとのお別れを意味するものなのでまだ踏ん切りがつかないらしい。
そして私は葵に頼まれて剣の手ほどきをしている。
エリセンの街の中では色々と危ないだろうという事で、リュウダモンをギンリュウモンに進化させて、陸地まで飛んで来ている。
葵は刀を2本使う二刀流だ。
理由として、オウリュウモンに進化した時に大刀の二刀流になるので、その時の訓練の為と言うことだ。
「はっ! せいっ!」
葵に木刀を持たせて軽く模擬試合をしている。
その剣筋は、オウリュウモンの時に何度も剣を振っているお陰か、素人にしては筋がいい。
まだまだ粗削りな感は否めないけど。
だけど、
「くっ………!」
一撃一撃がとても重い。
私がステータスで葵に勝っているのは俊敏だけ。
それ以外は数値として2倍近い差があるので受け流すのも一苦労。
実戦ではまだ負ける気は無いけど、もう少し剣の扱いに慣れてきたら私じゃ勝てなくなる。
それは優花にも同じような事が言える。
私は家の道場で投擲術も学んでいたけど、優花の投擲術は我流で技術的には無駄が多い。
でも、それを覆すステータスと技能で圧倒的な強さを誇る。
「あっ…………!」
私は葵の手から木刀を弾き飛ばす。
「…………は~! 雫は凄いなぁ~。私の方がステータスは上回ってるのに全然敵わないよ」
葵はそう言って私を褒めてくれるけど、葵の本職はデジモンテイマー。
リュウダモンと一緒に戦ってこそ真価を発揮する。
剣を習っている事も、要は手数を増やすための手段に過ぎない。
「………………………」
「雫? どうかした?」
いつの間にか俯いていたみたいで、葵から心配そうに声を掛けられる。
「あ、ううん………何でもないわ」
私はそう言うけど、パーティー内じゃ私が一番の足手纏いだ。
黒騎君は最弱は自分だって言うけど、彼のテイマーとしての能力は、パーティー内での指揮官や参謀の様な役も担っているように思える。
パーティーのリーダーは南雲君だけど、彼の戦いにおいての分析能力やそれに対する対処能力などは群を抜いてると思う。
メルジーネ海底遺跡の戦いで、最初に魔力攻撃が有効だと気付いたのも彼だし………
それに究極体に進化すれば葵と並んで最大戦力だし。
葵の特訓が一段落して休憩になった時、私は少し離れて森の中で佇む。
「はぁ…………」
やはりパーティーで一番貢献してないのは自分だ。
私は溜息を零してしまう。
「雫~、どうしたっクルか?」
「はわっ!?」
その言葉に私は変な声を漏らしてしまう。
振り返れば、クルモンが首を傾げていた。
そう言えばクルモンも付いてきたんだったわね。
「あはは、何でもないわ」
私は笑ってそう言う。
「クル~………?」
クルモンは不思議そうな表情をしながら首を傾げる。
「じゃ、じゃあそろそろ葵の所に戻らないとね」
私が誤魔化すようにそう言った時、背後でガサガサと茂みが揺れる音がした。
「ッ!?」
私は反射的に振り向き、腰の黒刀の柄に手を添える。
「クルモン、下がって………!」
「クル~…………」
クルモンは私の背に隠れるように下がる。
そして、
ガサッと茂みが大きく揺れると共に、それが姿を現した。
「む…………?」
「………………!」
茂みから現れたのは、私の半分ほどの身長の剣道の防具を付けた『何か』。
一瞬子供かと思ったけど、その足は爬虫類の様な鋭い爪を持つ足だし、背中の下の方から同じく爬虫類の様な尻尾も生えている。
「何者だ、お主は?」
驚くことに、普通に言葉を話してきた。
「……………人に名を尋ねる時は、まず自分から名乗るべきじゃないかしら?」
私は警戒しながらそう問い返す。
「ふむ、それは失敬。拙者はコテモン。一流の剣士を目指す武士でござる」
「コテモン………? もしかして、あなたデジモン?」
私がそう問いかけると、
「拙者は名乗った。次はお主が名乗るのが筋であろう?」
私の質問には答えずそう言い返してくるコテモン。
ちょっとムカッと来たけど、相手の言い分の方が正しい。
「…………雫よ。八重樫 雫。こっちはクルモン」
私は名乗り、背中に隠れているクルモンの事も教える。
すると、
「ふむ、雫か……………」
そう言いながらコテモンは腰の竹刀を抜き放った。
「腕の立つ剣士と見た! 1つ御手合わせ願いたい!」
「えっ………!?」
「ゆくぞ!」
コテモンは問答無用で竹刀を振りかぶって飛び掛かって来た。
「くっ………!」
私は咄嗟に黒刀を鞘ごと抜いてコテモンの竹刀を受け止める。
結構重い一撃だ。
「ほう………拙者の一撃を受け止めるとは、やるでござるな!」
「いきなり何するのよ!?」
「これ以上の言葉は無粋。剣士ならば剣で語れでござる!」
「こ………のっ…………! 怪我したって知らないわよ!」
私はコテモンの竹刀を弾くと、剣を薙ぎ払う。
「ぬっ!」
コテモンは後ろに飛び退いて私の薙ぎ払いを躱すと、
「サンダーコテ!!」
竹刀に電撃を纏わせて腕を狙って来た。
「ッ~~~~~~~!?」
何とか防御が間に合ったけど、電撃が私の腕を痺れさせる。
「ッ………! この位っ!」
「ぬおっ!?」
私は痺れる腕を我慢してコテモンの竹刀を弾き返すと、袈裟懸けに斬りかかる。
「何のっ!」
コテモンはその一撃を受け流した。
「とあぁぁっ!」
「ッ!」
突きを放ってきたので私はそれを飛び退いて避ける。
一旦間合いが開き、正眼の構えで睨み合う。
「やはりお主は出来るでござるな。力も速さも………そして剣技も拙者より上…………しかし、いささか剣に迷いが見える」
「ッ………」
そう言って来たコテモンの言葉に、私は声を漏らす。
「本来であれば、拙者など歯牙にも掛けぬのだろうが、その迷いがお主の剣を鈍らせている」
「…………………」
コテモンは私の実力を認めるような発言をするけど、私の実力なんてたかが知れてる。
私1人だけじゃベヒモスにすら苦戦するだろう。
私以外のパーティーメンバーならほぼ一撃で仕留められるのにだ。
香織と一緒に居たい一心で着いてきたけど、『足手纏い』。
その言葉が胸中を過る。
その瞬間、コテモンが私の頭上に飛び込んでいていた。
「ファイヤーメン!!」
竹刀に炎が宿って私に振り下ろされる。
「くぅっ………!」
今までで一番の打ち込み。
私は黒刀を横に構えて防御する。
私のステータスなら本来は耐えられたかもしれない。
だけど、
「あぐっ!?」
その一撃を防ぎきれずに何とか頭を逸らし、左肩に受ける。
おそらく成長期だろうが、それでも流石デジモン。
ステータスが上がって耐久も上がっている私にダメージを与える。
私は飛び退いて間合いを取りながら左肩を抑える。
「己の剣を信じぬ者に、剣を握る資格なし! そもそも剣を握りたく無くば、その剣を手放すがよい!」
「……………………」
そこまで見抜かれた。
私は自分から剣を握った訳じゃない。
ただおじいちゃんが戯れで4歳の時の私に竹刀を持たせた。
おじいちゃんもその時は本当に戯れだったんだろう。
だけど、私には才能があった。
その時のおじいちゃんの喜びようは今でも覚えている。
両親も道場の皆も凄い凄いと誉めてくれて、私はそんな皆の期待を裏切りたくなくて………
でも私は…………
「……………ッ」
私は剣の柄を握り直す。
「今はまだ手放せない………手放せない理由がある………!」
「迷いつつも剣を振るか…………それもまた剣の道の1つ也」
私は相手を見据え、居合の構えを取る。
「勝負よ………!」
「よかろう。拙者が編み出した秘技にてお相手しよう………」
コテモンは再び竹刀を正眼に構える。
「「…………………………」」
私達は睨み合い、相手の隙を伺う。
しかし、どちらも下手に動く事は出来ず、膠着状態に陥った。
でも、その時一陣の風が吹き、木の葉を舞い散らせる。
その木の葉が、私とコテモンの視界を一時的に遮った。
その瞬間、
「ッ………!」
コテモンは動いていた。
振りかぶったその竹刀には冷気を纏っている。
「ブリザードウッ!!」
一瞬面打ちかと錯覚するほどに綺麗な型。
振り下ろされる瞬間、剣の軌道が変わり、私の胴を打ち抜かんと薙ぎ払われる。
それに対し私は、
「ハッ!!」
限界まで集中し、研ぎ澄まされた一閃を抜き放つ。
私の剣とコテモンの竹刀がぶつかり合って弾かれ合う。
「「ッ!」」
でも、コテモンの竹刀は振り抜かれて大きく後ろに回ってしまったのに対し、私の剣は上段からすぐに切り返せる位置にあった。
私は両手で柄を握り直すと、
「フッ!」
一気に振り下ろした。
「…………………………」
「…………………………」
私の剣はコテモンの面に当たる寸前で止めていた。
「……………見事。拙者の負けだ」
コテモンは私に向き直ると、視線を正して礼をする。
「御手合わせ、感謝する」
「…………こっちからも感謝するわ。あなたのお陰でもう少し頑張れそうよ」
そう、私は香織達に付いて行きたい。
これだけは紛れもない本心だから。
その為に私はこれからも剣を振るい続ける。
「ふむ……………不躾な願いではあるが、拙者をお主に同行させては貰えんだろうか?」
「えっ?」
「拙者は一流の剣士を目指しているでござる。その為には、身近な目標が居てくれると助かるでござる」
「も、目標って………私より凄い人なんていくらでも…………」
「否。お主の剣は誠実で真っ直ぐだ。拙者もそのような剣を目指したい!」
「ええっ…………!?」
何か異様に気に入られたっぽい?
「そ、そう言われても、仲間にも聞いてみないと分からないとだし、私の一存じゃ………」
と、その時、
「雫? さっき大きな音がしたけどどうかした?」
葵がリュウダモンとクルモンを伴って様子を見に来た。
「葵………」
すると、葵がコテモンに気付き、
「あれ? その子………もしかしてデジモン?」
「拙者はコテモンでござる」
コテモンがそう名乗り、葵がDアークを取り出してデータを表示させる。
「コテモン 成長期 データ種 爬虫類型デジモン。必殺技は『ファイヤーメン』と『サンダーコテ』」
そう読み上げると、
「それで雫よ。先程の願い、どうか聞き届けはくださらんか?」
「ええ…………!?」
「その子がどうかしたの?」
「そ、それが…………」
先程の説明をしようとした時、ふと視界の上に光を感じた。
気になった私が見上げると、小さな光の球が現れており、それがゆっくりと私の前に降りてきた。
まるで、私に手に取れと言わんばかりだ。
「あっ………これってもしかして………!」
葵は思い当たることがあるような言葉を漏らす。
でも私は自然と手を伸ばしてしまった。
その光が私の手に収まると光が消えていき、
「………こ、これって…………!」
光が消えた私の手には、葵や黒騎君と同じ、紺色の縁取りがされたDアークが存在していた。
「……………雫がコテモンのテイマー………?」
「ええっ!?」
私は驚く。
いや、剣を交えて通じ合った感はあるけど、そんな簡単にテイマーってなれるものなの!?
「……………良くは分からぬが雫が拙者のパートナーという事でござるか?」
コテモンがそう言う。
「そう言う事だね。コテモンは平気?」
葵がそう聞くと、
「ふむ、雫ほどの剣士であれば拙者に否はござらん」
何かコテモンは自然に受け入れてるし!
「だって、雫」
「い、いきなり言われても………」
「まあ、そんなに難しく考える必要は無いよ。雫は雫らしくコテモンと付き合っていけば大丈夫」
「ええっ………!?」
そうして、何故か私はコテモンのテイマーになってしまったのだった。
第35話です。
オリジナルだったから考えるのに少し苦労した。
で、アンケートの結果雫にパートナーを付けることが決定。
剣士繋がりでコテモンにしました。
進化ルートは公式をほぼ無視してコテモン→ディノヒューモン→グレイドモン→ガイオウモンを予定。
まあ竜繋がりで剣士って事で。
しかし、こうなるとハジメの存在が薄くなってくるなぁ…………
全員は流石に無理なのでハジメにもパートナーつけるかなぁ………?
でも、それだけでも十分過剰戦力だしなぁ。
いっその事仲間全員にパートナーつけて、敵にロイヤルナイツ出して、デジモン大決戦にしてしまうか…………
こうなれば再びアンケートです!
ハジメ達にパートナーデジモンを付けるかどうか!
付ける場合はまた筆者の独断と偏見でパートナーデジモンを決めさせていただきます!
それでは!
ハジメ達にパートナーデジモンを付けるか?
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これ以上パートナーデジモンは増やさない
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ハジメのみパートナーデジモン有
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仲間全員にパートナーつけてデジモン大決戦