ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

40 / 298
第39話 竜人剣士! ディノヒューモン!!

 

 

 

アルファモン()達は王都から少し離れた上空でロイヤルナイツの2体と戦っていた。

 

「デジタライズ・オブ・ソウル!!」

 

「ドラゴンズロア!!」

 

「永世竜王刃!!」

 

「アージェント・フィアー!!」

 

必殺技が飛び交う。

しかし、アルファモン()達が王都へ被害が及ばないように防御しているのに対し、デュナスモンとロードナイトモンは魔人族や魔物達を庇う様な素振りは見せず、アルファモン()達の攻撃を余裕で躱すどころか、アルファモン()達が魔人族、魔物達を背にしている時ですら容赦なく技を撃ち込んでくる。

その為、魔人族側には少なくない被害が出ている。

 

『……………容赦ないね』

 

葵が呟く。

 

『ああ、デュナスモンとロードナイトモンは魔人族に被害が出ることを別に気にしてはいない。やはり魔人族に味方しているとはいえ、完全に魔人族側とは言い切れないみたいだな』

 

俺がそう返すと再びロイヤルナイツの2体が襲い掛かってきたので、アルファモン()達は迎え撃つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side 雫】

 

 

 

 

 

 

 

檜山を行動不能にした香織は恵理に向き直る。

 

「恵理ちゃん………聞かせてくれないかな? 何でこんな事をしたの?」

 

香織はそう問いかける。

 

「わからないかなぁ? 僕はね、ずっと光輝くんが欲しかったんだ。だから、そのために必要な事をした。それだけの事だよ?」

 

「光輝が好きなら告白でもすれば………! 何でこんな事を…!」

 

恵理の言葉に私は反射的に反論する。

でも、

 

「ダメだよ、ダメ、ダ~メ。告白なんてダメ。光輝くんは優しいから特別を作れないんだ。周りに何の価値もないゴミしかいなくても、優しすぎて放っておけないんだ。だから、僕だけの光輝くんにするためには、僕が頑張ってゴミ掃除をしないといけないんだよ」

 

恵理の言葉に、納得は出来なくても理解はしてしまった。

確かに光輝は南雲君でいう香織の様に〝特別〟を作らない、いや、作れない。

例え告白して形式上は付き合えたとしても、それは当たり前のように作る大勢の〝大切〟と何ら変わりがない。

光輝の〝大切〟は、大切であって〝大切〟ではない。

恵理はそれを十分に理解していたのだろう。

 

「ふふ、異世界に来れてよかったよ。日本じゃ、ゴミ掃除するのは本当に大変だし、住みにくいったらなかったよ。もちろん、このまま戦争に勝って日本に帰るなんて認めない。光輝くんは、ここで僕と2人、ず~とずぅ~~と暮らすんだから」

 

彼女の言う『ゴミ掃除』とは、光輝に近付く女の子達を排除する事なのだろう。

という事は…………

 

「…………もしかして、私や香織も………?」

 

「うん、もちろんターゲットに入ってたよ。まあ2人は自分から光輝君から離れて行ってくれたからほっといても良かったんだけどね……あの子をお人形にして好きにしたい! って人が居たからね~」

 

恵理は当然のようにそう言う。

 

「檜山が香織を殺そうとしたのは…………」

 

「彼には色々と手伝って貰ったからそのお礼に彼女を傀儡にする約束をしてたんだ。まさかあれ程強くなってるとは思わなかったから一応諦めるようには言ったんだよ? でも、どうしてもって言うから、彼女を殺せたら約束は守るってことにしたんだよ」

 

「あなた…………!」

 

私は思わず黒刀の柄に手を掛ける。

だけど、

 

「おっと、下手に動かない方が良いよ? 頭では理解してるよね? 今この場でどっちが有利なのか」

 

恵理の言葉で私の手が止まる。

単純な計算ではさっきも考えた通り向こうの方が有利。

香織もリリィを護らなければならないことを考えると下手に動く事は出来ない。

でも、私がコテモンに加勢すれば?

成熟期はベヒモスクラス。

私個人では成熟期には勝てなくとも、コテモンと力を合わせれば行けるかもしれない。

私は恵理を睨み付ける。

 

「……………どうやらやる気みたいだね…………なら、容赦はしないよ!」

 

恵理は右手を挙げると、合図をするように前に振り下ろす。

その瞬間、

 

「覇王拳!!」

 

オーガモンが拳から拳型のエネルギー弾を放つ。

 

「獣王拳!!」

 

それに対し、レオモンは拳から獅子の頭を模したエネルギー弾を放つ。

それらはオーガモンとレオモンの中央でぶつかり、相殺と共に爆発した。

 

「おおおおおっ!!」

 

それと同時にレオモンはオーガモンに向かって飛び掛かっており、逆手に持った剣で斬りかかる。

対するオーガモンも骨棍棒でその刃を受け止めた。

 

「おおおおおおおっ!!」

 

「はぁあああああっ!!」

 

鍔迫り合いをしながら、その力のぶつかり合いで互いの足元が陥没する。

さらに、

 

「ソウルチョッパー!!」

 

ファントモンが優花に向かって大鎌を振りかぶる。

 

「はぁあああああっ!!」

 

それに対し、優花は簡易宝物庫からアザンチウム製の槍を取り出し、その大鎌に叩きつける。

その反動で互いに弾かれると、

 

「そこだ!」

 

ファントモンが空中で制動をかけ、体勢を立て直すと同じように空中に弾かれた優花に向かって大鎌の柄から繋がる鉄球を投げつけた。

普通なら人は空中で身動きが取れない為、直撃するかに思われた。

だけど、

 

「甘いわよ!」

 

優花は魔力で空中に足場を作り出し、それを蹴って更に空中へと跳ぶ。

優花の技能の1つ、〝天歩〟の派生技能〝空力〟だ。

 

「何ッ!?」

 

ファントモンは驚く。

ファントモンが驚いている隙に優花は両手に手裏剣と苦無を宝物庫から取り出し炎と雷を纏わせてそれを投げつけた。

 

「はっ!」

 

「ぬおっ!?」

 

ファントモンは大鎌を振り回してそれを弾く。

 

「チィッ!」

 

「フフッ………」

 

ファントモンは忌々しそうに優花を見つめ、優花は余裕の笑みを浮かべた。

それに対し、

 

「切り捨て御免!!」

 

「ぬおっ!?」

 

コテモンはムシャモンの一撃を避ける。

 

「コテモン!」

 

私は騎士達を飛び越えてムシャモンに向かって斬りかかる。

でも、私の一撃はムシャモンが頭上に翳した剣であっさりと防がれた。

 

「くっ!」

 

私は鍔迫り合いはせずに即座に飛び退く。

 

「コテモン、大丈夫」

 

「うむ!」

 

私の言葉にコテモンはハッキリと頷く。

 

「2人で行くわよ!」

 

「承知!」

 

私はムシャモンの正面から斬りかかる。

それは当然先程と同じように受け止められる。

でも、

 

「サンダーコテ!」

 

「ぬっ!?」

 

コテモンの電撃を纏った一撃がムシャモンの手にヒットする。

ムシャモンは多少怯んだけど、

 

「ぬぅん!」

 

「きゃあっ!」

 

「ぬおっ!?」

 

力尽くで腕ごと刀を振り回し、私とコテモンを吹き飛ばした。

 

「あっはっは! 2人掛かりでもその様かい? 君もデジモンをお供に連れてるみたいだけど、僕の借りたデジモンの方が優秀の様だ!」

 

恵理の言葉に何故かカチンとくる。

 

「どうだい? 君がこっち側に来るなら、もっと強いデジモンを貰えるように話を通してあげても良いけど?」

 

「お断りよ!」

 

私は即答で返す。

 

「じゃあそっちのデジモン達は? 僕に従ってくれるのなら命は助けてあげるけど?」

 

今度はレオモンやコテモンに呼びかけた。

 

「断る! 私のテイマーは1人だけだ!」

 

レオモンはオーガモンと睨み合いながらもそう言う。

 

「拙者も同じ答えだ! 拙者のテイマーは雫でござる!」

 

「コテモン………」

 

コテモンの言葉に私は胸が熱くなる。

 

「クルモンも嫌っクル!」

 

クルモンも便乗してそう言う。

 

「ふ~ん、馬鹿みたい」

 

恵理はつまらなそうにそう言うと、

 

「もういいや。やっちゃって」

 

興味を無くしたようにムシャモンにそう言った。

 

「むん!」

 

ムシャモンが私に斬りかかってくる。

 

「くっ!」

 

私はその一撃を何とか受け流したけど、

 

「はぁっ!」

 

体勢の崩れた私に体当たりを仕掛けてきた。

 

「かはっ!?」

 

それをまともに受け、吹き飛ばされて地面を転がる。

 

「雫!」

 

コテモンがムシャモンの後ろから斬りかかったけど、

 

「ふん!」

 

振り返り様に薙ぎ払ったムシャモンの刀によって跳ね返される。

 

「ぐはっ!?」

 

「コテモン!」

 

顔を上げた私は吹き飛ばされるコテモンを目撃して声を上げる。

 

「はい、終わり」

 

恵理がそう言うと、ムシャモンがコテモンに歩み寄って刀をゆっくりと振りかぶる。

私は何とか立ち上がろうとしたけど、さっきのダメージでまだ立ち上がれない。

でも、何とかしないとコテモンが!

必死に体を起こそうとした時、ポケットから零れ落ちたDアークが目に入った。

 

「ッ!」

 

それに気付いた私は反射的にそれを手に取った。

その時、

 

「切り捨て御免!!」

 

ムシャモンの必殺の一撃が振り下ろされた。

まともに喰らえば成長期デジモンでは耐えられない。

次の瞬間、その刃がコテモンを切り裂いたかに思えた。

でも、

 

「……………む? 何ともない?」

 

コテモンは不思議そうな声を漏らす。

 

「なっ!? どうして!?」

 

恵理も動揺した声を漏らす。

今の一撃は普通ならコテモンには耐えられない。

…………普通なら。

私は立ち上がる。

 

「何とか間に合ったみたいね」

 

「何だって………?」

 

私の言葉に恵理がこちらを向く。

 

「オプションカード、防御プラグインCよ。このカードでコテモンの防御力を上げたの」

 

私はついさっきスラッシュしたカードを見せつける。

 

「恵理…………あなたにとってデジモンは単なる手駒なのかもしれないけど、私にとっては違うわ…………」

 

私は目を伏せ、黒騎君とドルモンの姿を思い浮かべる。

 

「コテモンは…………」

 

葵とリュウダモンの姿を思い浮かべる。

 

「コテモンは…………!」

 

そして短くともコテモンと一緒に暮らしてきた日々を思い浮かべる。

私は顔を上げ、

 

「コテモンは私のパートナーよ!」

 

そう言い放った。

その言葉と共に、Dアークが強い光を放つ。

 

「クル~!」

 

それと同時にクルモンの額のマークが輝く。

 

「雫………!」

 

コテモンが起き上がると共に、光に包まれた。

そして、

 

―――EVOLUTION

 

私のDアークの画面にその文字が表示された。

コテモンが更に強い光を放つ。

 

「コテモン進化!」

 

光の中でコテモンのデータが分解され、再構成される。

より大きく、より強く。

それは、両腕に刃を持ち、左手には鉈の様な剣。

そして背中にも大剣を背負った竜人型デジモン。

 

「ディノヒューモン!!」

 

光の中から現れるディノヒューモン。

 

「コテモンが………進化した………」

 

私は思わず呟く。

 

「拙者の名はディノヒューモン! 雫のパートナーデジモンでござる!」

 

ディノヒューモンはそう言い放つ。

 

「…………ああもう! ほんっとムカつくね君達は! 何だよいきなり進化するなんて!」

 

恵理はイラつくようにそう言う。

その言葉と共にムシャモンが斬りかかってくる。

ディノヒューモンはその一撃を右腕の刃で受け止めた。

 

「何でこうも君達は偶然や奇跡に助けられたりするのかなぁ!? 不公平じゃないか!」

 

恵理は何か気に食わないようで不満を露にしている。

 

「……………奇跡などではない」

 

ディノヒューモンはそう言いながらムシャモンの刀を弾いた。

 

「拙者が進化できたのは決して偶然や奇跡などではない。雫が拙者を信じてくれた………その思いが起こした必然でござる!」

 

「信じるとか必然とか………ほんとムカつく事ばっかり連呼するね! 僕はそんなもの欠片たりとも信じちゃいないよ!」

 

「ならば見るでござる! 拙者と雫の力を!」

 

ディノヒューモンはそう言うと私に一度視線を向ける。

すると、ムシャモンが刀を構えて突っ込んできた。

私は葵から受け取ったカードの1枚を取ると、

 

「カードスラッシュ!」

 

それをDアークにスラッシュする。

 

「高速プラグインB!!」

 

そのデータがディノヒューモンに送られる。

 

「切り捨て御免!!」

 

ムシャモンが刀を振り下ろした瞬間、ディノヒューモンが超スピードでその場から消えるとムシャモンの背後に現れる。

 

「おおおおおおっ!!」

 

ディノヒューモンが逆手に持った鉈の様な剣でムシャモンを空中に打ち上げる。

 

「がはっ!?」

 

私は続けてもう1枚のカードをスラッシュした。

 

「カードスラッシュ! 攻撃プラグインA!!」

 

「リザードダンス!!」

 

カードの効果によって力を増したディノヒューモンの必殺技がムシャモンに叩き込まれる。

左腕の刃、右腕の刃、左手に持った剣の順で斬撃が叩き込まれ、最後に右手が背中の大剣の柄に掛けられ、

 

「はぁああああああああっ!!」

 

最大の一閃がムシャモンを切り裂いた。

 

「ぐわぁああああああああああああっ!?」

 

ムシャモンは叫び声と共にデータ粒子に分解される。

ディノヒューモンは地面に着地し、恵理に振り返った。

 

「見たか? これがデジモンを駒として扱う貴様と雫の違いだ」

 

ディノヒューモンがそう言い放つ。

その時、

 

「……一体、如何いう状況だ、これは?」

 

突如として南雲君の声が響く。

広場の入り口から南雲君が香織の横まで歩いてくると、

 

「あ、ハジメ君、先生は?」

 

「ああ、先生なら無事だ。ちゃんと助けた。今はティオと一緒に居る」

 

「そう、良かった」

 

香織は南雲君の言葉にホッとする。

 

「んで………? 今は一体…………」

 

ハジメ君がもう一度状況について問いかけようとした時、

 

「なぁぐぅもぉおおおー!!」

 

倒れていた檜山が突然立ち上がって南雲君に襲い掛かった。

おそらく、南雲君を見た瞬間に逆恨みの感情が限界突破して痛みを忘れさせたのだろう。

そんな獣の様な声を上げて飛び掛かってくる檜山に対し、

 

「…うるせぇよ」

 

南雲君は、煩わしそうに飛びかかって来た檜山にヤクザキックをかます。

 

「あ、ハジメ君。檜山君は私を殺そうとしてたから。恵理ちゃんに頼んで私を傀儡にしようとしてたみたいだよ」

 

香織は最優先事項と言わんばかりに南雲君にそう報告する。

 

「ほう?」

 

南雲君は先程の蹴りで宙に浮いた檜山に対して、真っ直ぐ天に向けて片足を上げると、そのまま猛烈な勢いで振り下ろした。

地面に罅が入るほどの威力で叩きつけられた檜山の額からは鮮血が飛び散る。

勢いよくバウンドした檜山は既に白目を向いて意識を失っていた。

でも、それでも南雲君は手を緩めない。

バウンドして持ち上がった頭を更に蹴り上げ、再び宙に浮かせる。

絶妙な手加減がされていたのか、その衝撃で檜山は意識を取り戻した。

南雲君はそのまま宙にある檜山の首を片手で掴み、掲げるようにして持ち上げる。

宙吊りになった檜山が、力のない足蹴りと拳で拘束を解こうと暴れるけど、南雲君は意に介さない。

 

「おま゛えぇ! おま゛えぇざえいなきゃ、がおりはぁ、おでのぉ!」

 

檜山は醜い逆恨みの言葉を吐き出す。

こんな檜山に香織が靡く事なんて決してあり得ない。

 

「俺がいようがいまいが、結果は同じだ。少なくとも、お前が何かを手に入れられる事なんて天地がひっくり返ってもねぇよ」

 

「きざまぁのせいでぇ」

 

「人のせいにするな。お前が堕ちたのはお前のせいだ。日本でも、こっちでも、お前は常に敗者だった。〝誰かに〟じゃない。〝自分に〟だ。他者への不満と非難ばかりで、自分で何かを背負うことがない。……お前は、生粋の負け犬だ」

 

「ころじてやるぅ! ぜっだいに、おま゛えだけはぁ!」

 

呪詛の様に南雲君への憎しみの言葉を繰り返す檜山。

南雲君はそれを機にも留めずに気付いたように視線を明後日の方向に向けた。

つられて私もそっちを見ると、王都に侵入してきた魔物の先陣がたむろしていた。

南雲君は冷めた視線を檜山に戻し、軽く放ると、

 

「生き残れるか試してみな。まぁ、お前には無理だろうがな」

 

回し蹴りを叩き込んで檜山を広場の外まで吹き飛ばした。

その瞬間、南雲君の背後に人影が走る。

それは、他の傀儡兵とは比べ物にならない程の身のこなしで南雲君に鋭い槍の一撃を放った。

影の正体は近藤君。

おそらく私達が到着する前に、既に傀儡にされていたんだろう。

 

「アハハ、油断大敵ぃ~! ッ!?」

 

恵理はニヤついた笑みを浮かべたが、すぐに異変に気付いた。

南雲君は全く意に介さずに恵理を見据えた。

そのまま無言で左腕の肘を背後に向けると、何の躊躇いもなく内蔵されているショットガンを撃ち放った。

近藤君の身体はバラバラに吹き飛ぶ。

 

「っ……殺れ」

 

恵里が、徐々に表情を険しくしながら次の傀儡兵に命令を下す。

今までメルド団長に殺到していた騎士達が一斉に南雲君へ襲い掛かった。

その瞬間、南雲君は宝物庫からガトリングガンを取り出す。

 

「皆! 伏せなさい! ディノヒューモンとレオモンも戻って!!」

 

騎士達が離れた為に香織の回復魔法で治癒されたクラスメイト達に向かって叫び、ディノヒューモンとレオモンにも退避を促す。

2体は即座に離脱し、クラスメイト達やメルド団長も地に伏せる。

電磁加速された無数の弾丸は、南雲君の銃口の向きに会わせて扇状に薙ぎ払われた。

騎士達は殆どが肉塊と化す。

やがて銃声が鳴りやむと、

 

「で?」

 

「っ……」

 

南雲君が何でもないように恵理に問いかける。

恵理は悔しそうに唇を噛んだ。

そんな恵理に南雲君は銃口を向ける。

恵理は南雲君に対し完全に敵意を示した。

そして、『敵』と認識した相手に南雲君は容赦しない。

 

「……てめぇの気持ちだの動機だの、そんな下らないこと聞く気はないんだよ。もう何もないなら……死ね」

 

南雲君の指が引き金を引こうとした瞬間、南雲君の背後から大鎌の刃が迫った。

 

「ッ!?」

 

南雲君はそれに気付くと即座に跳躍してその一閃を避ける。

南雲君ですら避ける事を最優先にしたその一撃を放ったのは、

 

「チィッ! 逃がしたか!」

 

優花が相手をしているファントモンを機械化したようなデジモンだった。

私はDアークでそのデジモンのデータを確認する。

 

「メタルファントモン 完全体 データ種 サイボーグ型デジモン。必殺技は『ソウルプレデター』と『グレイブスクリーム』」

 

「チッ、もう1体完全体が居たとはな」

 

「奥の手は取っておくものでしょ?」

 

舌打ちする南雲君に、恵理は再びニヤついた笑みでそう言う。

その時、

 

「……そこまでだ。白髪の少年。大切な同胞達と王都の民達を、これ以上失いたくなければ大人しくすることだ」

 

空から灰竜に乗った魔人族の男が降りてきた。

 

「てめえはグリューエン火山に居た…………」

 

「そう言えば名乗っていなかったな。私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である」

 

「神の使徒……ね。大仰だな。神代魔法を手に入れて、そう名乗ることが許されたってところか? 魔物を使役する魔法じゃねぇよな? ……極光を放てるような魔物が、うじゃうじゃいて堪るかってんだ。おそらく、魔物を作る類の魔法じゃないか? 強力無比な軍隊を作れるなら、そりゃあ神の使徒くらい名乗れるだろうよ」

 

「その通りだ。神代の力を手に入れた私に、〝アルヴ様〟は直接語りかけて下さった。〝我が使徒〟と。故に、私は、己の全てを賭けて主の望みを叶える。その障碍と成りうる貴様等の存在を、私は全力で否定する」

 

フリードと名乗った魔族は、何処かイシュタルさんと似たような印象を受ける。

でも、そんな事は関係ないとばかりに南雲君は銃を向けると躊躇なく引き金を引いた。

その弾丸は傍に居た亀形の魔物の張った障壁にギリギリだが防がれた。

その行動にフリードは狼狽えている。

 

「どういうつもりだ? 同胞の命が惜しくないのか? お前達が抵抗すればするほど、王都の民も傷ついていくのだぞ? それとも、それが理解できないほど愚かなのか? 外壁の外には十万の魔物、そしてゲートの向こう側には更に百万の魔物が控えている。お前達がいくら強くとも、全てを守りながら戦い続けることが……」

 

フリードはそう言うが、それでも南雲君は知ったこっちゃないと言わんばかりに、〝宝物庫〟から拳大の感応石を取り出しそれを起動させる。

その瞬間、天から光の柱が降り注いだ。

その光は、王都の外にいる魔物も魔人族も全てを焼き尽くしていく。

やがて王都の外に居た魔物達の大半を蹂躙すると、フッと光の柱は消えて行く。

そして、

 

「愚かなのはお前だ、ド阿呆。俺がいつ、王国やらこいつらの味方だなんて言った? てめぇの物差しで勝手なカテゴライズしてんじゃねぇよ。戦争したきゃ、勝手にやってろ。ただし、俺の邪魔をするなら、今みたいに全て消し飛ばす。まぁ、百万もいちいち相手してるほど暇じゃないんでな、今回は見逃してやるから、さっさと残り引き連れて失せろ。お前の地位なら軍に命令できるだろ?」

 

「き、貴様!? 少なくとも王都の外では貴様の仲間が戦っていたのだぞ!? その仲間すらどうなっても良いというのか!?」

 

フリードはそう言うが、

 

「ああん? あんなもん出力としては精々完全体クラスだ。究極体のあいつ等に直撃した所で大したダメージにはならねえよ」

 

南雲君がそう言うと、その言葉を肯定する様に王都の外で再び爆発音が木霊する。

 

「……この借りは必ず返すっ……貴様だけは、我が神の名にかけて、必ず滅ぼす!」

 

フリードは怨嗟の篭った捨て台詞を吐いてゲートを開いた。

フリードは踵を返すと、恵里を視線で促し、デジモン達と共に灰竜に乗せた。

灰竜がゲートの奥に消えると同時に、上空に光の魔弾が3発上がって爆ぜる。

おそらく、撤退命令だろう。

こうして、色々な意味で衝撃的だった王都への進行は幕を閉じたのだった。

 

 

 







第39話です。
ディノヒューモン進化の回でした。
で、檜山は結局選択肢4番、ハジメに地獄の苦しみの中で殺される、を選んでしまいました。
何だかんだでムシャモン以外を逃がしてしまった。
何て言うか、オーガモンはデジモンアドベンチャー:(リブート版)でかなりいい敵キャラやってましたので、ここであっさり終わるのは惜しいと思ったんです。
と言うか、リブート版のデジモンアドベンチャーはバトルシーンとか迫力上がってますから、成熟期同士の闘いでもかなり熱くなるんですよね。(特にグレイモンが尻尾を器用に使える所が)
さて、アンケートの結果は全員にパートナーを付けるって事で。
反対の人も多いので賛否両論でしょうがこっちルートで行きますのでご了承を。
出来るだけ熱く楽しく読めるように頑張ります。
では、次もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。