【Side イグドラシル】
―――
―――非常事態命令…………発動
―――
【Side Out】
【Side 三人称】
デジタルワールドの何処か。
そこに4体の巨大なデジモンが集結していた。
「またイグドラシルがこのデジタルワールドからデジモンを呼び寄せようとしている様だ…………」
デジタルワールドの『西』のエリアを司る、四聖獣の1体である白虎をモチーフとしたバイフーモン。
「しかも今度は
デジタルワールドの『北』のエリアを司る、玄武をモチーフとしたシェンウーモン。
「おのれ………! 先のデ・リーパーとの戦いの時は傍観を決め込んでいた癖に、今回は
デジタルワールドの『南』のエリアを司る、朱雀をモチーフとしたスーツェーモン。
「……………すでに呼び寄せている2体…………そして、あの者達を除けば残り9体の聖騎士達……………」
そして、デジタルワールドの『東』のエリアを司る、青龍をモチーフとしたチンロンモン。
「チンロンモンよ………このまま黙って見ているつもりか…………?」
バイフーモンが問いかける。
「……………………」
チンロンモンは目を瞑りながら黙り込む。
「我もこのまま見ているのは癪じゃぞ……………」
「奴の気儘をこれ以上許してなるものか…………!」
シェンウーモンやスーツェーモンもそう言う。
「……………仕方あるまい。イグドラシルがこの世界からデジモンを呼び出すたびに世界のバランスそのものに影響を与える………………それがロイヤルナイツほどの力を持つ者を9体も呼び出せばデジタルワールドそのものが崩壊しかねない…………我々が全力で支えたとて、耐えきれる保証はない……………」
チンロンモンがそう告げると、
「ならば………!」
「うむ………!」
「やるか……!」
他の四聖獣達が頷き、4体が輝き始める。
「イグドラシルよ! これ以上お前の好きにはさせん!」
その言葉と共に4体の輝きが1つとなって天へと上った。
【Side Out】
王都を魔人族が襲撃した翌日。
俺達はハジメに案内されて神山へと向かっていた。
ここにある神代魔法を手に入れるためだ。
因みにロイヤルナイツの2体は、魔人族が撤退すると同時に退いた。
あと、檜山だが聞いた話では無残な姿で死んでいたらしい。
まあ、白崎さんを殺そうとしたんだ。(出来るとは全く思わないが)
それだけでもハジメの逆鱗に触れるには十分だろう。
それでなくても檜山はハジメを嫉妬から奈落の底へと突き落としたんだ。
ハジメは運よく生き残ったが、明らかな殺意を持っていた檜山をこれ以上放っておくわけにはいかなかっただろう。
まあ、それはともかく。
ハジメ曰く、ここにある神代魔法は〝魂魄魔法〟で、魔法陣に認められる条件は、2つ以上の大迷宮攻略の証を所持している事と、神に靡かない確固たる意志を有することらしい。
この世界の人間にとっては厳しい条件かもしれないが、俺達にとっては簡単な条件だ。
因みに愛子先生も攻略者と認められて、既に〝魂魄魔法〟を所持しているらしい。
それで現在、竜化したティオの背に乗って向かっているわけだが、その途中で愛子先生を助ける際に、ハジメが真の〝神の使徒〟と名乗る女性と戦ったらしい。
物質を分解する力を持ち、ハジメと互角の戦いを繰り広げたそうだ。
「…………で、ついでに言えば、そいつは大士の好きそうな天使みたいだったぜ」
などと、ニヤニヤと余計な情報を与えてきた。
「………………いくら俺が天使好きでも、俺が好かれるわけじゃねえから意味ねえだろ……………」
俺は極力反応しないようにそう言い返した。
やがて、神山の頂上にある聖教教会総本山が見えてくるはずだったのだが…………
「………………何だこりゃ?」
俺は思わずそう漏らした。
何故なら、教会総本山があるはずの神山の頂上は、まるで強力な爆弾が爆発したかのように根こそぎ吹き飛ばされていたからだ。
「あ~………これはな、ティオと先生の仕業だ」
「ティオ………はともかく愛子先生!?」
ハジメの言葉に俺は驚く。
『正確には火種は妾じゃが、ここまでの威力になったのは先生殿の力じゃな』
「でも、愛ちゃんの天職って作農師でしょ? どうやったらこんな真似が出来る訳?」
ティオの言葉に優花が言い返すと、
「簡単に言うとだ、作物が発酵する時にはメタン………可燃性のガスが発生するだろ? で、先生の技能の中には〝発酵操作〟つー技能があったんだわ」
「……………もしかしてそれで可燃性ガスを充満させてティオのブレスで引火させたとか?」
葵がそう聞くと、
「そう言う事だ。まあ、先生達にとってもここまでの威力は予想外らしくてな…………爆発の瞬間なんてキノコ雲が出来てたぞ」
ハジメの言葉に顔を引きつらせながら俺は改めて爆心地を見る。
ぶっちゃけギガデストロイヤーとかグラウンド・ゼロとかの完全体デジモンの必殺技を撃ち込んだと言われても納得できるほどの威力だ。
「…………その………先生は大丈夫だったの?」
八重樫さんがそう口にして、俺はハッとなった。
総本山が無人という事はまずないだろう。
ハジメの話では真の神の使徒を援護するためのイシュタルをハジメとした多くの信徒が状態異常魔法を唱え続けていたらしい。
それを阻止するためにティオと愛子先生が奮闘したらしいのだが、その結果がこれだ。
少なくとも、総本山に居た者達は一緒に消し飛んだだろう。
『流石に動揺はしておられたが、何とか割り切っておるよ。まあ、ご主人が『抱きしめて』慰めたのが大きかったのかもしれんがの』
そう言うティオは少し楽しそうだった。
「ハジメ君…………? もしかして先生にまで…………?」
白崎さんがハジメにジト目を向ける。
ハジメはその視線に気付かない振りを続けた。
やがて、その聖教教会跡地へ降りると、半透明の禿げ頭の男性が現れた。
「………あれは?」
ユエが尋ねると、
「【神山】の大迷宮の創設者、ラウス・バーンだ。あいつに付いて行くと転移魔法陣がある」
ハジメの言葉通り先へ進むと転移魔法陣があり、それに踏み込むと光沢のある黒塗りの部屋に転移した。
その部屋の中央には神代魔法の魔法陣がある。
その中に足を進めると、いつもよりも深い所まで入り込んでくる感覚がして皆が呻き声を上げる。
まあ、直ぐに収まったが。
そして手に入れたのはハジメの言った通り〝魂魄魔法〟。
魂に干渉できる魔法の様だ。
まあ、俺は使えんが。
そして何故か今回も葵の魔法適性はユエと並んで抜群だったりする。
とりあえず恙無く神代魔法を手に入れた俺達は転送陣で元の場所に戻ると、
「で? これからどうするんだ?」
インプモンがそうハジメに問いかける。
「神の使徒が出てきたって事は、一刻も早く神代魔法を手に入れる必要がある。一旦先生達には顔を見せて、そのままハルツィナ樹海に向かう。ま、その序に頼まれれば大結界ぐらいは修理してやるさ」
何だかんだで身内には甘いハジメに内心笑ってしまう。
そのまま、俺達が聖教教会跡地から出た時だった。
「…………あれ?」
反応したのはシアだった。
「どうした?」
ハジメが尋ねると、
「何か聞こえませんか?」
シアがウサ耳をピコピコと動かしながらそう言った。
俺達全員が耳を澄ますと、
―――ゴォォォォォォォォォォォッ
何か空気を切り裂く様な音が聞こえてきた。
「何の音?」
ドルモンが首を傾げた時、
「空です!」
シアが叫んだ瞬間、空の彼方から光の球が落下してきた。
それはそのまま俺達から少し離れた場所に落下し、ドゴォンと小さな爆発音を上げた。
「何だ!?」
リュウダモンが警戒する。
「クル~!?」
クルモンも驚いて背中に隠れた。
落下した時の砂煙が消えると、そこには光の球が存在していた。
全員がその光の球を警戒していると、その光の球は薄くなってやがて消える。
「………何だったの?」
ユエが呟いた時、光の球が消えた場所に何かが倒れているのが見えた。
「あれは…………?」
光の球が落下した時に出来た小さなクレーターの底には、俺の見た事のある4体の姿があった。
1つは青い体色をした小竜型デジモンのブイモン。
1つは蛇の様に長い体と白い体色をした聖獣型デジモンのクダモン。
1つは小型のドラゴンの様な竜型デジモンのドラコモン。
1つは赤いマントを羽織った白い体色の小竜型デジモンのハックモンだった。
ブイモン以外はこの世界では知られていないデジモンだ。
すると、
「……こいつらは…………」
「…………デジモンかな………? あれはブイモンだよね?」
ハジメと香織が呟く。
葵がDアークを取り出し、
「ブイモン 成長期 フリー種 小竜型デジモン。必殺技は『ブイモンヘッド』と『ブンブンパンチ』。クダモン 成長期 ワクチン種 聖獣型デジモン。必殺技は『弾丸旋風』、『絶光衝』、『ホーリーショット』」
続けて八重樫さんもDアークを取り出し、
「ドラコモン 成長期 データ種 竜型デジモン。必殺技は『ベビーブレス』、『テイルスマッシュ』、『ジ・シュルネン』。ハックモン 成長期 データ種 小竜型デジモン。必殺技は『フィフスラッシュ』、『ティーンラム』、『ベビーフレイム』」
それぞれのデジモンの情報を読み上げた。
「全部成長期か…………」
ハジメが如何するべきかと頭を掻く。
「どうするんですか? ハジメさん」
シアが尋ねると、
「どうするって言われてもな…………」
ハジメが腕を組んで考えていると、
「「うわぁああああああああああああああっ!?」」
突然上空から声がした。
「………ん?」
考え事をしていたハジメは反応が遅れ、
「ぐおっ!?」
上空から落ちてきた何かに下敷きにされた。
「ハッ、ハジメ君!?」
白崎さんが慌てた声を出す。
すると、
「いててて…………」
「た、助かったぁ~…………」
ハジメの背に落ちてきた2つの影が身を起こす。
片方は真っ黒な爬虫類型デジモン。
もう一体は、青い毛皮を被った角のある爬虫類型デジモン。
「えっ…………? ガブモンと…………黒いアグモン?」
白崎さんが驚いた声を漏らす。
アグモンとガブモン。
アニメのデジモンアドベンチャーで主役級のデジモンなので、デジモンを知る人ならまず知っている。
とは言え、アグモンの方は黒いのでウィルス種の様だが。
俺はDアークを取り出す。
「アグモン(黒) 成長期 ウィルス種 爬虫類型デジモン。必殺技は『ベビーフレイム』。ガブモン 成長期 データ種 爬虫類型デジモン。必殺技は『プチファイヤー』」
俺は2体のデータを読み上げる。
「あなた達は?」
白崎さんが声を上げるとその2体は振り向き、
「俺はアグモン!」
「オイラはガブモン!」
そう返事をした。
「へ~、やっぱり色は違ってもアグモンなんだ」
白崎さんは珍しそうにそう言う。
「おい…………! どうでもいいがさっさと俺の上から降りろ………!」
不機嫌そうな声色で頬杖を着きながらハジメがそう言う。
「おっと、悪かったよ」
「あ、ごめん」
ハジメの上から2体が退くと、ハジメは服の埃を払いながら立ち上がる。
「………で? 何でお前達は空から降ってきやがったんだ?」
「ん~~~~? わかんない! 四聖獣が光を放つところを見てたらいきなり空の上に出て落っこちたから!」
「オイラも!」
ハジメの質問にその2体はそう答える。
「四聖獣!? チンロンモン達か!?」
「うん」
俺の言葉にアグモンが頷く。
「おい、もしかしてその四聖獣って言うのがこの世界にデジモンを送り込んでるのか?」
ハジメがそう言うが、
「いやそれは無いと思う。俺がデジタルワールドの冒険をした時に四聖獣に会っているが、彼らの行動原理はデジタルワールドの安定を護ることだ。以前はクルモンを狙ってスーツェーモンがリアルワールドに手下のデジモンをリアライズさせていたが、このトータスにデジモンを送り込む理由はない筈だ。もう四聖獣にクルモンを狙う理由はない筈だし………」
俺はそう言ってハジメの推測を否定する。
「じゃあ何でこいつらがここにいるのかって話になるんだが……………」
ハジメがそう言い掛けると、
「大士、あの子達、目を覚ましたみたいよ」
優花の言葉で振り返れば光の球と共に落ちてきた4体のデジモンが身を起こしている所だった。
とりあえず俺は進み出る。
「お前達、大丈夫か?」
そう言葉をかける。
「「「「?」」」」
その4体は頭に疑問符を浮かべるような表情をしたが、
「身体に異常は無いか? 何でここにいるか分るか?」
俺はそう言葉を続ける。
「えっ? 僕………僕は………」
「我は………」
「己は………」
「私は…………」
それぞれが考え込み、困惑するような仕草をする。
「どうかしたのか?」
俺が不思議に思って訊ねると、
「………思い出せない」
「へっ?」
「…………何でここに居るのかも、我らが今まで何をしていたのかも………」
「同じくだ」
「私も何も思い出せない………!」
ブイモン、クダモン、ドラコモン、ハックモンが苦悶の表情でそう言う。
「記憶喪失………? でも、4体が同時に記憶喪失になるなんてあり得るか………?」
俺は明らかな不自然さに怪訝に思う。
その時だった。
【Side イグドラシル】
―――四聖獣からの妨害を確認
―――想定外の事態発生
―――残りの4体を、早急に回収せよ
【Side Out】
ビキリッと何かがひび割れる音が響いた。
「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」
俺達がそちらに顔を向ければ、神山の上空の空に罅が入っていた。
「何だ!?」
「空に………罅が…………!」
次の瞬間、バリンとガラスが割れるような音と共に、そこから巨大な鳥の影が姿を現した。
オウムの様な姿。
緑色の羽毛に包まれたそれは、翼を大きく羽搏かせる。
「くっ………!」
その際に巻き起こる風圧から目を庇った。
「あれは………パロットモン!」
俺はそのデジモンの名を呼ぶ。
すると、八重樫さんがDアークを確認した。
「パロットモン 完全体 ワクチン種 巨鳥型デジモン。必殺技は『ソニックデストロイヤー』と『ミョルニルサンダー』」
パロットモンは目の前に降り立つと、俺達を無視してブイモン、クダモン、ドラコモン、ハックモンに手を伸ばした。
「うわぁっ! な、何!?」
「くっ!」
ブイモン達は慌てて逃げる。
パロットモンの手はブイモン達が居なくなった地面を掴み、大地を削り取る。
だが、パロットモンの動きはブイモン達を倒そうとする動きではない。
「…………ブイモン達を捕まえようとしている………?」
パロットモンはブイモン達を捕まえようとしている様だ。
状況が分からない俺達は困惑していたが、
「ベビーフレイム!!」
突如としてアグモンが飛び出し、口から火球を放った。
それはパロットモンの顔付近に着弾。
小さな爆発を起こす。
パロットモンの視線がアグモンに向く。
「良く分からねえけど、ピンチの奴を放っておけるかよ!」
アグモンは勇ましくそう言う。
更に、
「プチファイヤー!!」
ガブモンも同じようにパロットモンに攻撃し始める。
「オイラもその意見に賛成!」
ガブモンはそう言ってパロットモンに攻撃を続ける。
しかし、相手は完全体故にダメージはほぼ無いに等しい。
パロットモンも鬱陶しくなったのか翼を羽搏かせて突風を巻き起こす。
「うわっ!?」
「くぅぅ………!」
その突風に吹き飛ばされまいと耐えるアグモンとガブモン。
因みに俺はちゃっちゃと退避して白崎さんの張った障壁に護って貰っている。
「まだまだぁっ!」
「まだ負けないっ!」
アグモンとガブモンはそれにも怯まずに攻撃を続ける。
しかし、やはりパロットモンには効いておらず、パロットモンは先程よりも強く翼を羽搏かせる。
「うわぁっ!?」
「わぁあっ!?」
その風に吹き飛ばされ、地面を転がるアグモンとガブモン。
パロットモンはそんな2体を無視して再びブイモン達に腕を伸ばそうとする。
「………………………」
流石にあんな姿を見せられては、放っておく気にはならない。
俺はDアークを取り出し、ドルモンを進化させようとして、
「待て………」
ハジメに止められた。
「ハジメ………?」
「あいつらはまだやる気みたいだぞ?」
「何…………?」
ハジメの視線を追うと、吹き飛ばされたアグモンとガブモンが必死に身を起こし、
「ベビーフレイム!!」
「プチファイヤー!!」
再びパロットモンに攻撃を加える。
パロットモンもいい加減鬱陶しくなったのか、頭部にある触角の様に生えている羽根に雷が迸る。
そして次の瞬間、
「クェェェェェェェェェェェッ!!」
その雷が放たれた。
その雷は拡散する様に放たれ、パロットモンの前方の広範囲を無造作に蹂躙する。
「くっ!」
その雷はこちらにも及び、白崎さんは障壁を必死で支える。
暫くしてその雷は収まるが、辺りは煙に包まれていた。
その時、
「「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」」
煙を切り裂いてアグモンとガブモンが飛び出す。
「……………………へっ」
その姿を見て、ハジメが何かを感じたのかニヤリと笑みを浮かべる。
パロットモンが近付いてきたアグモンとガブモンに腕を振り上げた時、ハジメがドンナーを抜いて発砲した。
電磁加速されて放たれた弾丸は、振り上げたパロットモンの腕に当たり、その軌道を逸らす。
腕が逸らされた事により、直撃を免れたアグモンとガブモンはそのままパロットモンに飛び掛かり、
「ベビーフレイム!!」
「プチファイヤー!!」
パロットモンの目に向けて必殺技を放った。
「グエェェェェェェェェェェェェェェッ!?」
痛みからか酷い声を上げるパロットモン。
しかし、即座にアグモン達を睨み付けると、右腕を伸ばしてアグモンを掴み取った。
「あぐっ!?」
「アグモン!」
ガブモンはアグモンを助けようとその腕に飛び掛かる。
しかし、翼の羽搏きによって吹き飛ばされてしまった。
「うわぁっ!?」
そのまま吹き飛ばされるかと思ったが、突如ガブモンの背後に光の壁が現れて、ガブモンはその光の壁に着地する。
それは白崎さんの〝天絶〟だった。
何事かと振り向いたガブモンと、白崎さんの視線が交わり、白崎さんは頷く。
ガブモンは一瞬躊躇したようだが、すぐに光の壁を蹴ってパロットモンへと向かった。
「リトルホーン!!」
ガブモンの勢いを付けた角の一撃。
それは先程攻撃を当てた目のすぐ近くに当たり、僅かにパロットモンは怯む。
その瞬間、再びハジメがドンナーを発砲。
アグモンを掴んでいた腕に当たり、アグモンを放し、アグモンは地面に落下する。
すると、
「どうした? もうギブアップか?」
煽るような口調でアグモンに呼びかけるハジメ。
すると、アグモンはムッとするような表情で、
「何言ってる!? まだまだ行けるぜ!」
ハジメの言葉に反応する様に起き上がると、パロットモンに向かって行く。
アグモンのその眼には闘志がギラギラと輝いていた。
「うぉおおおおおおおっ!!」
例え強大な相手だろうと、戦う事を、生きる事を諦めないその姿。
ハジメはそんなアグモンにシンパシーを感じたのか、アグモンを援護する様にドンナーを発砲する。
「クェエエエエエエエッ!」
パロットモンはガブモンに腕を繰り出そうとするが、その直前に白崎さんの〝天絶〟が張り巡らされて、その腕がガブモンから逸らされる。
「頑張って!」
白崎さんはガブモンに声を掛ける。
いつの間にかハジメはアグモンを、白崎さんはガブモンを援護している。
そして俺が気付かない内に、ユエがブイモンを、シアがクダモンを、ティオがドラコモンを、優花がハックモンをパロットモンの近くから救い出し、〝聖絶〟の障壁内に連れて来ていた。
アグモンとガブモンは互いに火炎を吐き出し、パロットモンに繰り返し攻撃する。
2体は圧倒的不利な状況であるにも関わらず、悲壮感は欠片も無く、寧ろ笑みを浮かべていた。
その理由は、
「………へっ………!」
「………へへっ!」
ハジメとアグモンが視線を交わして笑みを浮かべ、
「フフッ…………!」
「……………ハハッ!」
同じく白崎さんとガブモンが視線を交わして笑みを浮かべる。
その時、ハジメと白崎さんの目の前に光の球が発生した。
「んっ?」
「これは………?」
2人が声を漏らす。
「これってまさか…………」
八重樫さんが思い当たるような口振りでそう言う。
そう言う俺もその光景には見覚えがあった。
「こいつは………Dアークか………!」
「もしかして………私達の…………?」
ハジメと白崎さんがそれを手に取る。
ハジメは真紅の縁取りのDアークで、白崎さんは銀の縁取りのDアークだった。
その時、ハジメ達の援護が途切れてしまったせいか、アグモンとガブモンがパロットモンの一撃を掠めて地面を転がった。
「うわっ!?」
「くぅぅっ!?」
そんな2体に止めを刺さんとパロットモンは腕を振りかぶった。
その瞬間、
「おい! その程度で諦めるタマじゃねえだろ!? 立って見せろ!!」
ハジメの言葉にアグモンが目を見開き、
「そんなの………当然じゃねえか!!」
アグモンが力強く返事を返し、立ち上がると光を放ち始める。
そして、
「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」
振り下ろされるパロットモンの左手に向かって右腕を突き出した。
―――EVOLUTION
ハジメのDアークにそう表示される。
アグモンが光に包まれた。
「クェエエエエエエエッ!」
パロットモンはそれに構わず左腕を叩きつけようとする。
しかしその瞬間、光の中から青い体色の恐竜の様な強靭な右腕が飛び出し、パロットモンの左腕を受け止めた。
「アグモン進化!」
光の中でアグモンが進化する。
身体が巨大化し、高質化した頭部。
両側頭部から2本の角が生え、更に鼻先から1本の角が生える。
青い体色と黒い線の縞模様が特徴の恐竜型デジモン。
「グレイモン!!」
光の中からその全貌が露になる。
「うぉおおおおおおおおっ!!」
光の中から現れたグレイモンがもう片方の腕を突き出し、パロットモンの右手と掴み合う。
「青い………グレイモン………?」
ハジメが声を漏らす。
俺はDアークを取り出し、
「グレイモン(青) 成熟期 ウィルス種 恐竜型デジモン。必殺技は『メガフレイム』。ウィルス種のグレイモンだな」
俺はそう言う。
グレイモンは成熟期でも上位クラスのパワーを誇り、更にウィルス種の為、単純な力ならワクチン種よりも上だ。
その為、パワー型で無いにしろ完全体のパロットモンとそれなりに張り合っている。
しかし、不利なのは覆らず、徐々に押されていく。
「ぐおっ!?」
押され切った瞬間にパロットモンの右手がグレイモンの首を掴み、締め上げる。
「ああっ!?」
その2体の足元でガブモンが声を上げる。
すると、
「ガブモン………!」
白崎さんが呼びかける。
「君は………見てるだけなのかな?」
そう言いながらDアークを見せつける。
白崎さんの目からは、ガブモンへの信頼が見て取れる。
すると、ガブモンはハッとなり、
「………………オイラだって…………やって見せる!」
闘志を取り戻してガブモンは駆け出す。
「そう、それでこそだよ!」
白崎さんがそう叫んだ瞬間、
―――EVOLUTION
白崎さんのDアークが光を放つ。
「ガブモン進化!」
ガブモンの身体が分解され、再構築される。
巨大化し、4足歩行となり、ミスリル並みの強度の毛皮に覆われる。
蒼い狼の姿をした獣型デジモン。
「ガルルモン!!」
光の中からガルルモンが飛び出し、グレイモンの首を掴む腕へと噛みつく。
「クェエエエエエエッ!?」
その際にグレイモンの首を放してしまい、グレイモンは解放された。
パロットモンは鬱陶しそうに腕をガルルモンごと振り回し、ガルルモンを腕から投げ飛ばす。
しかし、ガルルモンは空中で体勢を整え、難無く地面へ着地した。
グレイモンとガルルモンは並んでパロットモンと睨み合うと、
「行くぞ!」
「おおっ!」
ガルルモンが先行し、グレイモンがその後に続く。
「クェェェェェェェェェェェッ!!」
パロットモンが触角の様に頭に生えている羽根に雷を帯びる。
次の瞬間、電撃がガルルモンに向かって放たれた。
だが、ガルルモンは地面を蹴って空中に飛び上がり、その雷を躱すと、そのままパロットモンの顔目掛けて飛び掛かる。
しかし、それに気付いたパロットモンがガルルモンに向き直ると再び電撃を溜め始める。
空中では身動きが出来ないガルルモンはそのまま電撃の餌食になるかに思われた。
その瞬間、ガルルモンの足元に光の足場が発生する。
白崎さんの〝天絶〟だ。
先程よりも大きな光の障壁をガルルモンの足場にしたのだ。
ガルルモンはその足場を蹴って空中で方向転換する。
「クェッ!?」
目標を見失った雷はそのまま空へと消えて行く。
そして再びガルルモンの先に光の足場が現れてガルルモンはそれを蹴ると、再びパロットモンへと飛び掛かった。
戸惑っていたパロットモンはそのまま顔面に跳び付かれ、視界を封じられる。
パロットモンはガルルモンを振りほどかんと頭を激しく振るが、ガルルモンも飛ばされまいと頭に噛みつき、それに耐える。
パロットモンがより激しく頭を振った瞬間、ガルルモンは振りほどかれて投げ出される。
パロットモンは一瞬ざまあみろと言わんばかりの目をしていたが、次の瞬間には驚愕からその目が大きく見開かれた。
何故ならグレイモンが既に懐まで踏み込んでいたのだ。
「うおらぁっ!!」
グレイモンが鼻先の角を下から突き上げる。
「グェエエエエエエッ!?」
その角はパロットモンの下嘴を貫き、確実なダメージを与える。
パロットモンは痛みからやや強引にグレイモンを引き剥がして突き飛ばすと、翼を大きく広げた。
元々パロットモンは巨鳥型で空中戦を得意とするデジモンだ。
地上戦ではグレイモンとガルルモン相手では分が悪いと判断したのだろう。
得意な空中の戦いに持ち込もうと翼を羽搏かせてその身を浮き上がらせる。
その時だった。
「おっと、空を飛ぶのは反則だ」
ハジメが宝物庫から対物ライフル〝シュラーゲン〟を取り出し、それを構えた。
引き金を引くと、ドンナーの約10倍の威力を持った弾丸が放たれる。
それはパロットモンの翼の片方を貫き、その翼を捥ぎ取った。
「グエェェェェェェェェェェェェェェッ!?」
翼を捥ぎ取られたパロットモンはバランスを崩して地に落ちる。
パロットモンは撃ち落とされた事と翼を失った事に狼狽え、困惑していた。
俺はその瞬間がチャンスだと判断し、1枚のカードを抜き出す。
「ハジメ! 使え!」
俺はそのカードをハジメに投げ渡した。
それと同時に、
「香織! 使って!」
葵も白崎さんにカードを渡す。
「大士………」
「葵ちゃん………」
2人がこちらを向く。
だから俺は笑みを浮かべ、
「決めろ!」
そう声援を送った。
ハジメと白崎さんは笑みを浮かべると、
「やるか、香織!」
「うん、ハジメ君!」
2人はDアークを構える。
「「カードスラッシュ!」」
2人は受け取ったカードをDアークへスラッシュする。
「キング・デヴァイス!!」
「クィーン・デヴァイス!!」
カードのデータがDアークを通してグレイモンとガルルモンへ送られる。
「これは…………!?」
「力が………溢れる………!」
グレイモンが巨大化し、ガルルモンは淡い光に包まれる。
慌てて立ち上がろうとするパロットモンに向かい、
「「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」」
ハジメと白崎さんの叫びと共に、
「メガ……フレイム!!」
「フォックスファイヤー!!」
紅蓮の豪火球と、青い火炎がパロットモンを呑み込んだ。
「ギェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!??」
パロットモンは断末魔の叫びと共に、データ粒子となって消え去った。
グレイモンとガルルモンはこちらに、いや、ハジメと白崎さんの方を向いた。
その2人は前に進み出ると、
「へっ! 気に入ったぜ、お前」
ハジメはニヤリと笑ってそう言う。
「俺もだ。俺もお前を気に入った! よろしく頼むぜ、相棒!」
一方、
「君がオイラに力をくれたのかい?」
「う~ん……そうなるのかな?」
白崎さんはちょっと冗談交じりにそう言う。
「テイマーになると同時に進化させるって………早過ぎないか?」
俺は思わずそう零す。
いや、俺でもドルモンを進化させるのに暫くかかったんだが?
「まあでも、戦いの中で通じる心って言うのもあるんじゃないかな?」
葵が笑いながらそう言う。
「ま、さしあたっては………こいつらをどうするかだな?」
俺は記憶喪失の4体のデジモンを見つめてそう呟いた。
【Side イグドラシル】
―――
―――想定外、予測不能
―――対処の為に
―――エネルギーチャージまであと……………
【Side Out】
第40話の完成。
今回はハジメ達のパートナーデジモンとの出会いでした。
まだ正式にテイマーになったのはハジメと香織だけですが。
イグドラシルがロイヤルナイツを集結させようとしましたが四聖獣の邪魔で失敗しました。
で、ギリギリトータスに引き込めたのは4体。
その4体も四聖獣の妨害の影響でが退化。
ネタバレになりますがイグドラシルも神域にいる為、すぐ外である神山に落ちてきた設定です。
アグモン(黒)とガブモンは純粋な巻き込まれ。
で、突っ込まれると思いますが、究極体ではなく何故完全体のパロットモンを回収に向かわせたのかと言えば、ロイヤルナイツを呼び出そうとするときに殆どのエネルギーを使い果たしてしまい、新たに究極体を呼び出す程のエネルギーは残ってなかったわけです。
なので、以前に呼び出していたパロットモンを神域から直接神山に送り込んだって言う設定です。
今回の戦いは割と熱く書けた気がしますがどうでしょうか?
あと、皆様からのご意見で多いのが主人公のパワーアップなんですけど…………
やっぱりした方が良いかなーとも思い始めたり。
進化すれば最終的に一番強くなりますんで最弱でもいいかなーって言うのが今までの考えだったんですけど…………
でもやっぱりそれなりに生身でも戦えないとあれかなーって感じです。
という訳で迷った時のアンケートです。
主人公である大士君をパワーアップさせるか?
という訳でアンケートのご協力お願いします。
では、次も頑張ります。
大士をパワーアップさせるか?
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このまま普段は最弱で
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魔物肉を食べてしまえ
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シリーズ違うけどデジソウルを使おう