ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第47話 皇帝との対面

 

 

予め待機していた優花に来てもらい、空間魔法で拠点に戻ると、既に大勢のハウリアが救い出されていた。

だが、カムの姿は無く、ハジメ達は別に捕えられたカムを救出に向かっているらしい。

程なく八重樫さんを含めた勇者(笑)パーティーが戻ってくると、デジモンが現れて大変だった等の愚痴を聞くことになる。

まあ、そのドルグレモンをけしかけたのは俺だから耳が痛い。

予定とは違ったが十分に陽動の役割は果たせたとの事。

すると、空間に穴が開き、そこからカムを含めたハジメ達が現れた。

お互いが情報共有をしていた時、

 

「デジモンが現れた?」

 

「ええ。でも、不思議だったのは、完全体のデジモンなのに手応えを全然感じなかったの。寧ろ、手加減して私達にやられる様に見せていたわ。ムカいついたからコテモンを完全体のナイトモンに進化させて叩き切ってやったけど」

 

「完全体に進化したのかよ………」

 

「へぇ~、敵はどんなデジモンだったの?」

 

ハジメが呟き、白崎さんがそう問いかける。

 

「Dアークで見た情報だと、ドルグレモンって言う赤いドラゴンの様なデジモンだったわ」

 

「「「「ドルグレモン?」」」」

 

八重樫さんの言葉を聞くと、ハジメ、白崎さん、ユエ、シアの視線が俺とドルモンに向いたため、俺は反射的に目を逸らしてしまった。

 

「……………どうしたの?」

 

俺達の反応を怪訝に思ったのか、八重樫さんはそう聞いてくる。

 

「ドルグレモンって、ドルモンの完全体ですよ?」

 

シアがそう言うと、八重樫さんがキッと俺を睨みつけてきた。

 

「ちょっと!? 今の如何いう事よ!?」

 

「そうだぞ! 何でお前は街を破壊しようとした!?」

 

八重樫さんだけでなく、天之河も便乗して俺を責めるような言動をする。

俺は溜息を吐き、

 

「仕方ねーだろ!? 正体バレちゃ拙いのに、お前らは顔だけ隠して格好はいつも通りの装備だし! 特に天之河! あんな聖剣に金色の鎧なんて装備してったら、誰だって一目で正体分かるわ!!」

 

逆ギレしてそう言い返す。

 

「うっ………!」

 

天之河も今思い当たったのか、気まずそうな声を漏らす。

 

「それから八重樫さんも!」

 

「えっ? 私!?」

 

「コテモン連れってってどうするんだよ!? 八重樫さんがコテモンのテイマーだって事はその時は知らなくても、後から八重樫さんがコテモン連れてれば即行で正体バレるわ!!」

 

「はうあっ!?」

 

「以上の理由からあのままお前達に任せておいたら絶対に正体がバレて、最終的にリリアーナ王女に迷惑がかかると思ったから、独断で計画を変更して凶暴な怪物から勇者一行が街を護ったって言うプランを立てたわけだ」

 

「なるほど…………こいつは大士の判断が正解だな。何考えてんだお前ら?」

 

ハジメが呆れた様に天之河達を見る。

 

「「「「うっ………」」」」

 

4人は落ち着いて考えたらやはり自分達が悪いと思ったのか何も言わなかった。

すると、

 

「ボス、宜しいですか?」

 

カムがハジメにそう進言する。

ハジメは錬成で手早く椅子を作り出すとそれに腰かけ、話すように態度で促す。

 

「まず、何があったのかということですが、簡単に言えば、我々は少々やり過ぎたようです……」

 

カムが話し出す。

亜人奴隷補充の為に樹海に侵入してきた帝国兵を、ハウリアはかなりの数を撃破したらしい。

しかも、ほぼ誰にも正体を悟られない見事な暗殺であったため、帝国側も正体不明の暗殺集団の正体を掴むため、カム達を帝都に誘い込み、そこで包囲網が敷かれ、多勢に無勢で捕らえられてしまったとの事。

しかし、カム達もただでは転ばず、包囲してきた帝国兵と対等以上に渡り合ったというのだ。

だが、逆にそれが帝国上層部の興味を引く事となった。

 

「その結果、我等は生け捕りにされ、連日、取り調べを受けていたわけです。あちらさんの興味は主に、ハウリア族が豹変した原因と所持していた装備の出所、そして、フェアベルゲンの意図ってところです。どうやら、我等をフェアベルゲンの隠し玉か何かと勘違いしているようで……実は、危うく一族郎党処刑されかけた上、追放処分を受けた関係だとは思いもしないでしょうなぁ」

 

「…………で? 捕虜になった言い訳がしたいわけじゃねぇんだろ? さっさと本題を言え」

 

「失礼しました、ボス。では、本題ですが、我々ハウリア族と新たに家族として向かえ入れた者を合わせた新生ハウリア族は……帝国に戦争を仕掛けます」

 

その言葉が紡がれた瞬間、辺りに静寂が満ちた。

かくいう俺も予想外過ぎる言葉に思わず目を見開いた。

 

「……………………………何を、何を言っているんですか、父様? 私の聞き間違いでしょうか? 今、私の家族が帝国と戦争をすると言ったように聞こえたんですが……」

 

長い沈黙の後、静寂を破ったのはシアだった。

 

「シア、聞き間違いではない。我等ハウリア族は、帝国に戦争を仕掛ける。確かにそう言った」

 

「ばっ、ばっ、馬鹿な事を言わないで下さいっ! 何を考えているのですかっ! 確かに、父様達は強くなりましたけど、たった百人とちょっとなんですよ? それで帝国と戦争? 血迷いましたか! 同族を奪われた恨みで、まともな判断も出来なくなったんですね!?」

 

「シア、そうではない。我等は正気だ。話を……」

 

「聞くウサミミを持ちません! 復讐でないなら、調子に乗ってるんですね? だったら、今すぐ武器を手に取って下さい! 帝国の前に私が相手になります。その伸びきった鼻っ柱を叩き折ってくれます!」

 

シアは宝物庫から戦槌であるドリュッケンを取り出すと、砂煙が舞うほどの勢いで振り回し、ビシッと突き付けた。

シアの身体強化は、今までの戦いの中で派生技能の〝効率変換Ⅲ〟を得たことで更に高まっており、ステータスプレートの数値だけで言えば、筋力は優花どころかハジメすらも超える。

ただ、ハジメ達には魔物から得た大量の技能や限界突破があるので、まだまだ単純な力押しでも負けないが。

そんなシアを前にしても、カム達は全く動じずに静かにシアを見つめ返していた。

すると、ハジメが突然手を伸ばし、シアの毛玉の様な尻尾を掴み、モフモフしだした。

 

「ひゃぁん!? だめぇ、しょこはだめですぅ~! ハジメしゃん、やめれぇ~」

 

微妙にエロい声を漏らしながらシアが悶える。

シアが地面に崩れ落ちると、今度はハジメはシアのウサ耳を撫でた。

その手にシアは気持ちよさそうに目を細めると、

 

「どうだ、少しは落ち着いたか? カムの話はまだ終わっていないんだ。ぶっ飛ばすのは全部聞いてからでも遅くはないだろ?」

 

「うっ……そうですね……すいません。ちょっと頭に血が上りました。もう大丈夫です。父様もごめんなさい」

 

「家族を心配することの何が悪い? 謝る必要などない。こっちこそ、もう少し言葉に配慮すべきだったな。……最近どうも、そういう気遣いを忘れがちでなぁ。……それにしても、くっくっくっ」

 

「な、なんですか、父様、その笑いは……」

 

「いや、お前が幸せそうで何よりだと思っただけだ。……ボスには随分と可愛がられているようだな? うん? 孫の顔はいつ見られるんだ?」

 

「なっ、みゃ、みゃごって……何を言ってるんですか、父様! そ、そんなまだ、私は……」

 

まあ、ハジメ本人は白崎さんとユエ以外に手は出す気は無いと口では言っているが、俺から言わせれば時間の問題だろう。

最低でもシアは間違いなくハーレム入りだろうと思っている。

 

「カム、まさかと思うがその話をしたのは、俺に参戦を促す為じゃないだろうな?」

 

「ははっ、それこそまさかですよ。ただ、こんな決断が出来たのも、全てはボスに鍛えられたおかげです。なので、せめて決意表明だけでもと、そう思っただけですよ」

 

カムはあっさりとハジメの言葉を否定した。

その言葉は本心だろう。

 

「理由は?」

 

ハジメがそう聞き返す。

 

「意外ですな、聞いてくれるのですか? 興味ないかと思いましたが……」

 

カムが軽く驚いたように口にした。

 

「俺に鍛えられたおかげで決断が出来たって事は、お前等が無謀をやらかそうって原因は俺にもあるってことだろう? それだけなら、知ったことじゃないが……」

 

ハジメにとって『大切』なシアが暗い顔をしている。

それだけでハジメが関わろうとする理由には十分だろう。

 

「先程も言った通り、我等兎人族は皇帝の興味を引いてしまいました。それも極めて強い興味を。帝国は実力至上主義を掲げる強欲な者達が集う国で、皇帝も例には漏れません。そして、弱い者は強い者に従うのが当然であるという価値観が性根に染み付いている」

 

「つまり、皇帝が兎人族狩りでも始めるって言いたいのか? 殺すんじゃなくて、自分のものにするために?」

 

「肯定です。尋問を受けているとき、皇帝自らやって来て、〝飼ってやる〟と言われました。もちろん、その場でツバを吐きかけてやりましたが……」

 

その言葉を聞いて、変貌する前のカムを知る俺達からしてみれば、本当に別人なほど変わったんだなぁとしみじみ思う。

 

「しかし、逆に気に入られてしまいまして。全ての兎人族を捕らえて調教してみるのも面白そうだなどと、それは強欲そうな顔で笑っていました。断言しますが、あの顔は本気です。再び樹海に進撃して、今度はより多くの兎人族を襲うでしょう。また、未だ立て直しきれていないフェアベルゲンでは、次の襲撃には耐え切れない。そこで、もし帝国から見逃す代わりに兎人族の引渡しでも要求されれば……」

 

「なるほどな。受身に回れば手が回らず、文字通り同族の全てを奪われる……か」

 

「肯定です。ハウリア族が生き残るだけなら、それほど難しくはない。しかし、我等のせいで、他の兎人族の未来が奪われるのは……耐え難い」

 

確かに今のハウリア族なら樹海という得意なフィールドに引き込めばまず負ける事はないだろう。

しかし、他の兎人族、亜人族はそうはいかない。

 

「だが、まさか本気で百人ちょいなんて数で帝国軍と殺り合えるとは思っていないだろう?」

 

「もちろんです。平原で相対して雄叫び上げながら正面衝突など有り得ません。我等は兎人族、気配の扱いだけはどんな種族にも負けやしません」

「つまり、暗殺か?」

 

「肯定です。我等に牙を剥けば、気を抜いた瞬間、闇から刃が翻り首が飛ぶ……それを実践し奴らに恐怖と危機感を植え付けます。いつ、どこから襲われるかわからない、兎人族はそれが出来る種族なのだと力を示します。弱者でも格下でもなく、敵に回すには死を覚悟する必要がある脅威だと認識させさます」

 

「皇帝の一族が、暗殺者に対する対策をしていないと思うか?」

 

「もちろんしているでしょうな。しかし、我等が狙うのは皇帝一族ではなく、彼等の周囲の人間です。流石に、周囲の人間全てにまで厳重な守りなどないでしょう。昨日、今日、親しくしていた人間が、一人、また一人と消えていく。我等に出来るのは、今のところこれくらいですが、十分効果的かと思います。最終的に、我等に対する不干渉の方針を取らせることが出来れば十全ですな」

 

えげつねぇとは思うが、少数のハウリア族が一国を相手にするには上層部を徹底的に狙うしかないだろう。

まあ、その帝国も亜人族を奴隷と言う迫害をしており、国全体で推奨しているので皇室の周りの人間も同罪に等しい。

特に心は痛まんな。

ただ、その皇室がハウリア族を脅威と思って交渉のテーブルに着くか、それとも樹海全てに攻勢を掛けるかは賭けだろう。

おそらく良くて3割。

いや、八重樫さんや天之河の話から聞いた皇帝の性格だと1割以下かもしれない。

 

「……父様……みんな……」

 

カム達の覚悟を目の当たりにしてシアは何も言えなくなって肩を落とす。

シア自身にもこれしか無いと分かっているのだろう。

 

「シア、そんな顔をするな。以前のようにただ怯えて逃げて蔑まれて、結局蹂躙されて、それを仕方ないと甘受することの何と無様なことか……今、こうして戦える、その意志を持てることが、我等はこの上なく嬉しいのだ」

 

「でも!」

 

「シア、我等は生存の権利を勝ち取るために戦う。ただ、生きるためではない。ハウリアとしての矜持をもって生きるためだ。どんなに力を持とうとも、ここで引けば、結局、我等は以前と同じ敗者となる。それだけは断じて許容できない」

 

「父様……」

 

「前を見るのだ、シア。これ以上、我等を振り返るな。お前は決意したはずだ。ボスと共に外へ出て前へ進むのだと。その決意のまま、真っ直ぐ進め」

 

カムが父親としての言葉をシアへと送る。

それを終始無言無表情で見ているハジメ。

そんなハジメへ静かに目礼するカム。

その姿は娘を頼みますと言わんばかりだ。

 

「…………安心してくれ! 俺が何とか………」

 

「お前は黙ってろ」

 

空気を読まない天之河が発言したので俺は反射的に言葉を被せて黙らせた。

 

「これはカム達ハウリア族………そして亜人族の問題だ。余所者の俺達が安易に首を突っ込んでいい問題じゃない」

 

「何を言ってるんだお前は!? カムさん達の言葉を聞いて何も感じないのか!?」

 

「感じるからこそ俺達が直接手を出していい問題じゃないと言っているんだ。お前お得意のその場凌ぎの安っぽい正義感は特にな」

 

「どういう意味だ!?」

 

「そのまんまの意味だ」

 

恐らく言っても分からないだろうからこれ以上言う気は無い。

すると、シアが何か言いたげにハジメを方を振り向いた。

おそらくハジメに助けを求めようとしたのだろう。

だがその瞬間、

 

「シア!」

 

シアを叱咤する様に叫んだのはカム自身だった。

カムは先程の言葉通りハジメの力を借りる気など毛頭無いのだ。

シアもそれを感じたのか口を噤む。

 

「シア」

 

「ハジメさん……」

 

シアを呼んだハジメの声に、シアは僅かばかり期待を膨らませる。

しかし、

 

「今回の件で俺が戦うことはない」

 

「っ……そう、ですよね」

 

その言葉に明らかに落胆した仕草を見せる。

 

「南雲! お前には血も涙も無い………!」

 

「ドルモン!」

 

「メタルキャノン!」

 

「ぐはっ!?」

 

再び声を上げた早とちりしている天之河に対し、俺はドルモンに呼びかけ、ドルモンが天之河の額目掛けて鉄球を放ち、気絶させる。

仮にも勇者だし成長期の攻撃位じゃ死なないだろう。

多分。

 

「おい、こら、早とちりするな。戦わないが、手伝わないとは言ってないだろう?」

 

「ふぇ?」

 

ハジメは天之河をまるで居ないようにスルーしてシアに優しく声をながらシアの頬を引っ張る。

 

「今回の件は、ハウリア族が強さを示さなきゃならない。容易ならざる相手はハウリア族なのだと思わせなきゃならない。この世界において亜人差別が常識である以上、俺が戦って守ったんじゃあ、俺がいなくなった後に同じことが起きるだけだからな。何より、カム達の意志がある。だから、俺は一切、戦うつもりはない」

 

ハジメもそこは俺と同じ意見の様だ。

 

「だが、うちの元気印がこんな顔してんだ、黙って引き下がると思ったら大間違いだぞ?」

 

「し、しかし、ボス……なら、一体……」

 

カム達は困惑しているが、ハジメはニヤリと笑みを浮かべ、

 

「カム、そしてハウリア族。こいつを泣かせるようなチンケな作戦なんぞ全て却下だ。お前等は直接、皇帝の首にその刃を突きつけろ。髪を掴んで引きずり倒し、親族、友人、部下の全てを奴の前で組み伏せろ。帝城を制圧し、助けなど来ないと、一夜で帝国は終わったのだと知らしめてやれ! ハウリア族にはそれが出来るのだと骨の髄に刻み込んでやれ! この世のどこにも、安全な場所などないのだと、ハウリア族を敵に回せば、首刈りの蹂躙劇が始まるのだと、帝国の歴史にその証を立ててやれ!」

 

ハジメの言葉に流石のハウリア族も硬直している。

ハジメはカム達があえて避けていた皇帝を直接狙えと言ったからだ。

その瞬間、ハジメがスゥっと息を吸う音が聞こえたと思った直後、

 

「返事はどうしたぁ! この〝ピー〟共がぁ!」

 

「「「「「「「「「ッ!? サッ、Sir,Yes,Sir!!」」」」」」」」」

 

「聞こえねぇぞ! 貴様等それでよく戦争なんぞとほざけたなぁ! 所詮は〝ピー〟の集まりかぁ!?」

 

「「「「「「「「「「Sir,No,Sir!!!」」」」」」」」」」

 

「違うと言うなら、証明しろ! 雑魚ではなく、キングをやれ!!」

 

「「「「「「「「「「ガンホー! ガンホー! ガンホー!」」」」」」」」」」

 

「貴様等の研ぎ澄ました復讐と意地の刃で、邪魔する者の尽くを斬り伏せろ!」

 

「「「「「「「「「「ビヘッド! ビヘッド! ビヘッド!」」」」」」」」」」

 

「膳立てはするが、主役は貴様等だ! 半端は許さん! わかってるな!」

 

「「「「「「「「「「Aye,aye,Sir!!!」」」」」」」」」」

 

「宜しい! 気合を入れろ! 新生ハウリア族、百二十二名で……」

 

「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」

 

「帝城を落とすぞ!」

 

「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAA!!!!」」」」」」」」」」

 

ハー○マン軍曹再び。

闘志を越えて殺意で熱狂するハウリア族達に、初めて見るメンバーはドン引きしていた。

 

「……うぅ~、シズシズ、あの人達こわいよぉ~」

 

「大丈夫よ、鈴。私も怖いから……ていうか南雲君の発想とノリも十分怖いけど」

 

「南雲の奴……へへ、まさかハー○マン先生を取り入れていたとはな、やるじゃねぇか」

 

「龍太郎!? なんで、ちょっと親近感持ってるんだ!? どう見ても異常な雰囲気だろ!?」

 

何か坂上はハー○マン軍曹を知っていたようだ。

意外だな。

 

「う~む、すごいのぉ~。兎人族がここまで変わるとは。流石、ご主人様じゃ。あっさり帝国潰しを目的にしよるし。堪らんのぉ~。あんな気勢で罵られてみたいものじゃ」

 

「……黙れ、変態ドラゴン」

 

「っ!? ハァハァ」

 

「うん、ティオさんはちょっと自重しようね? それより、シアの表情見てよ、ユエ。蕩けてるよ」

 

「……ん、可愛い。シアが泣かないためだから……嬉しくて当たり前」

 

「だよね~。もう、ハジメ君もいい加減認めちゃえばいいのに。私もシアならオッケーだよ?」

 

「ん………私も」

 

白崎さんとユエは何やら(ハジメにとって)不穏な事を呟いていた。

 

 

 

 

 

翌日。

天之河の勇者という名目を使い、正面から堂々と帝都へ入った俺達は、帝城にいるリリアーナ王女の下を訪れていた。

王女からは昨日の事が俺達に関係していないか勘繰られたが、目の前でドルグレモンを見せない限りは何とでも言えるだろう。

それで何故かヘルシャー帝国の皇帝ガハルドと謁見することになった。

通された部屋は、三十人くらいは座れる縦長のテーブルが置かれた、ほとんど装飾のない簡素な部屋だった。

そのテーブルの上座に頬杖を突いて不敵な笑みを浮かべる男がいた。

おそらく彼が皇帝ガハルドだろう。

更にその背後には、俺から見ても腕が立つだろうと思わせる男が2人立っていた。

 

「お前が、南雲ハジメか?」

 

俺達が部屋に入ると、間髪入れずガハルド皇帝がハジメにそう言った。

その言葉と同時にプレッシャーを叩きつけているのだろうが、大迷宮の魔物や試練に比べればぬるいので、ハジメ達は元より、俺もその程度では動じない。

 

「ええ、俺が南雲ハジメですよ。御目に掛かれて光栄です、皇帝陛下」

 

「「「「「!?」」」」」

 

胸に手を当て、軽くお辞儀をしながらそう言うハジメに天之河達の表情が驚愕に染まった。

まあ、気持ちはわからんでもない。

因みにハジメは空気を読もうと思えば空気は読める。

普段はそれをあえて無視しているだけだ。

 

「ククク……思ってもいないことを。普段の傍若無人な態度はどうしたんだ? ん? 何処かの王女様が対応の違いに泣いちまうぞ?」

 

その言葉にリリアーナ王女を見ると、ハジメからの視線からプイッと顔を逸らしている。

おそらくハジメからの彼女に対する扱いの愚痴を零したことがあるのだろう。

 

「似合わねぇ喋り方してぇねぇで、普段通り話しな。俺は、素のお前に興味があるんだ」

 

「……はぁ、そうかい。んじゃ、普段通りで」

 

「くく、それでいい」

 

それからガハルド皇帝に促され、俺達は席に座る。

ガハルド皇帝はハジメだけではなく、周りを陣取る香織やユエ、シア、ティオ、それから俺や葵、優花にも興味深そうな視線を向ける。

そしてそれぞれの傍らにいるドルモン達パートナーデジモンにも。

次いで八重樫さんに目を向けニヤリと楽しげな笑みを浮かべると、

 

「雫、久しいな。俺の妻になる決心は付いたか?」

 

「お、おい! 雫は、既に断っただろう!」

 

いきなりのガハルド皇帝の言葉に天之河が思わず突っ込む。

だが、ガハルド皇帝はあからさまに天之河は眼中にないという態度を取っている。

すると、

 

「前言を撤回する気は全くありません。陛下の申し出はお断りさせて頂きます」

 

「つれないな。だが、そうでなくては面白くない。元の世界より、俺がいいと言わせてやろう。その澄まし顔が俺への慕情で赤く染まる日が楽しみだ」

 

「そんな日は永遠に来ませんよ。……というか、皇后様がいらっしゃるでしょう?」

 

「それがどうした? 側室では不満か? ふむ、正妻にするとなると色々面倒が……」

 

「そういう意味ではありません! 皇后様がいるのに他の女に手を出すとか……」

 

「何を言っている? 俺は皇帝だぞ? 側室の十や二十、いて当たり前だろう」

 

「ぐっ……そうだったわ。と、とにかく、私は陛下のものにはなりません。諦めて下さい」

 

「まぁ、神による帰還が叶わない以上、まだまだこの世界にいるのだろうし、時間をかけて口説かせてもらうとしようか。クク、覚悟しろよ、雫」

 

この皇帝様はよっぽど八重樫さんを気に入っている様だ。

その八重樫さんはガハルド皇帝から顔を逸らしたが、その際に視線の先に居たハジメが八重樫さんを面白そうに見ていたので、その顔にイラッと来たのか紅茶に付いてきた角砂糖を指で弾いて飛ばす。

結構な勢いなんだが、それほどの勢いでどうして角砂糖が砕けないんだろうと俺はズレたことを考えていた。

その角砂糖は一直線にハジメの顔に向かって行ったのだが、その程度でハジメの虚を突くことは出来ず、パクリと角砂糖がハジメの口に収まった。

すまし顔のハジメに対して八重樫さんは悔しそうだ。

そのやり取りは何となく仲が良さげに思える。

と、そこでガハルド皇帝が口を開いた。

 

「ふん、面白くない状況だな。……南雲ハジメ。お前には聞きたいことが山ほどあるんだが、まず、これだけ聞かせろ」

 

「ああ? なんだ……」

 

「お前、俺の雫はもう抱いたのか?」

 

「「「「ぶふぅーー!?」」」」

 

八重樫さんと勇者(笑)パーティーが噴き出す。

 

「陛下……最初に聞くのがそれですか……」

 

ガハルド皇帝の後ろにいる護衛達もそう呟いて頭を押さえていた。

 

「ちょっ、陛下! いきなり何をっ……」

 

「雫、お前は黙っていろ。俺は、南雲ハジメに聞いてんだよ」

 

顔を真っ赤にしている八重樫さんと、真剣な表情にガハルド皇帝。

対するハジメは呆れ顔だ。

 

「何をどうしたらそんな発想に辿り着くんだよ」

 

「どうやら、雫はお前に心を許しているようだからな……態度から見て、ないとは思うが、念のためだ」

 

「はぁ、あるわけないだろ」

 

「……ふむ、嘘はついてないな。では、雫のことはどう思っている?」

 

ガハルド皇帝にそう問われ、ハジメは一度八重樫さんを見る。

白崎さん達も興味津々な表情だ。

見つめられる八重樫さんは若干顔を赤くしていた。

そしてハジメの口から出てきた言葉は、

 

「……オカンみたいな奴」

 

「OK、その喧嘩買ったわ。表に出なさい、南雲君」

 

おそらくガハルド皇帝が考えもしなかったであろう答えだった。

確かに八重樫さんって面倒見がいいから母親っぽいと言われる事がある。

 

「……まさかの回答だが……まぁ、いい。雫、うっかり惚れたりするなよ? お前は俺のものなのだからな」

 

「だから、陛下のものではありませんし、南雲君に惚れるとかありませんから! いい加減、この話題から離れて下さい!」

 

「わかった、わかった。そうムキになるな。過剰な否定は肯定と取られるぞ?」

 

「ぬっぐぅ……」

 

ぶっちゃけ時間の問題だとツッコミたい。

八重樫さんは口では否定しているが、少なくとも友達や仲間以上の感情を持っている事は確かだ。

 

「南雲ハジメ。お前も、雫に手を出すなよ?」

 

「興味の欠片もねぇから、安心しろ。つか、ホント無駄話しかしないなら、もう退出したいんだが?」

 

「無駄話とは心外だな。新たな側室……あるいは皇后が誕生するかもしれない話だぞ? 帝国の未来に関わるというのに……まぁ、話したかったのは確かに雫のことではない。わかっているだろう? お前の異常性についてだ」

 

今までの話も本気ではあったのだろうが、本命はこちらの話だ。

 

「リリアーナ姫からある程度は聞いている。お前が、大迷宮攻略者であり、そこで得た力でアーティファクトを創り出せると……魔人族の軍を一蹴し、二ヶ月かかる道程を僅か二日足らずで走破する、そんなアーティファクトを。真か?」

 

「ああ」

 

「そして、そのアーティファクトを王国や帝国に供与する意思がないというのも?」

 

「ああ」

 

「ふん、一個人が、それだけの力を独占か……そんなことが許されると思っているのか?」

 

「誰の許しがいるんだ? 許さなかったとして、何が出来るんだ?」

 

「………………それから黒騎 大士だったか?」

 

ハジメの問いには答えず、今度は俺に視線を向けてきた。

 

「何か?」

 

「貴様と貴様が連れているデジモンとやらは、王都の大結界を一撃で吹き飛ばした化物と互角に戦える力を持つと聞いている。そしてそれは横にいる神代 葵も同じだと………それも真か?」

 

「そうだが?」

 

リリアーナ王女の目の前でアルファモンとオウリュウモンに進化したため、ごまかしは効かないだろう。

 

「貴様たちも基本的に不干渉を貫くと聞いているが?」

 

「本当だ。デジモン相手ならば介入するが、基本的にこの世界の戦争に進んで介入する気は無い」

 

俺はそう答える。

 

「貴様たちはそれでいいのかもしれんが、我々にとっては困る。デジモンとやらに遭遇した場合の対処が出来んからな」

 

「ならどうしろと?」

 

ガハルド皇帝の言葉にそう聞き返すと、

 

「簡単な話だ。神代 葵を俺に寄越せ」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺の頭に血が昇…………

 

「え? やだ」

 

る前に葵が一瞬たりとも間髪入れずに拒否の意を示した。

 

「何故だ? 側室とは言え何不自由ない生活と、贅沢な暮らしを約束するぞ?」

 

「そんなものに興味無いよ」

 

ガハルド皇帝………いや、もう呼び捨てでいいか。

ガハルドの言葉に一切の興味も見せずに葵はそう言う。

 

「何が不満だ? 望みは全て叶えてやるぞ?」

 

「そこに大士が居ないなら、どれだけ贅を尽くしても、私にとっては地獄と変わらないよ」

 

空気を読んでないことは自覚するが、葵の言葉に嬉しさを感じてしまう。

 

「ならば…………」

 

「おい………!」

 

未だに口説こうと言葉を続けようとするガハルドに俺は言葉を被せる。

 

「それ以上葵に話しかけたら今この場で帝国を消滅させるぞ………!」

 

「…………出来るかな?」

 

ガハルドがそう言った瞬間、何かに目配せしようと視線を動かした。

直後、ガガガガッと連続して何かが突き刺さるような音が聞こえた。

見れば、天井に4本、壁に2本、扉にも2本の苦無が刺さっており、更にガハルドの背後にいた2人の護衛のそれぞれには苦無が付きつけられていた。

 

「南雲の言葉を聞いて無かったの? あなた達程度が私達に如何にかできると思った?」

 

優花が護衛の首に苦無を突き付けつつそう言った。

 

「確かに大士は進化する前ならあなた達程度でも殺せるでしょうけど、そうさせないために私が居るのよ」

 

優花は〝威圧〟を発動させると、

 

「あの程度の隠蔽で私を出し抜けるとは思わないことね」

 

目の前のガハルドを見下ろしながらそう言い放った。

 

「はっはっは、止めだ止め。ばっちりバレてやがる。こいつらは正真正銘の化け物だ。今やり合えば皆殺しにされちまうな!」

 

ガハルドが豪快に笑いながら、覇気を収めた。

それに合わせて周囲の者達も剣呑な空気を収めていく。

優花もそれを感じ取ったのか苦無を引いて席に戻る。

 

「なんで、そんな楽しそうなんだよ?」

 

「おいおい、俺は〝帝国〟の頭だぞ? 強い奴を見て、心が踊らなきゃ嘘ってもんだろ?」

 

ある意味分かりやすい男だが、仲良くなりたいとは思わんな。

 

「それにしても、お前らが侍らしている女達もとんでもないな。おい、どこで見つけてきた? こんな女共がいるとわかってりゃあ、俺が直接口説きに行ったってぇのに……一人ぐらい寄越せよ、南雲ハジメ」

 

「馬鹿言うな。ド頭カチ割るぞ…………いや、ティオならいいか」

 

「っ!? な、なんじゃと……ご、ご主人様め、さり気なく妾を他の男に売りおったな! はぁはぁ、何という仕打ち……たまらん! はぁはぁ」

 

「ちょっと問題あるが、いい女だろ、外見は」

 

「すまんが、皇帝にも限界はある。そのヨダレ垂らしている変態は流石に無理だ」

 

「こ、こやつら、本人を目の前にして好き勝手言いおって! くぅうう、んっ、んっ、きっと、このあと陛下に無理矢理連れて行かれて、ご主人様の目の前で嫌がる妾を無理やりぃ……ハァハァ、んっーー……下着替えねば」

 

とりあえずティオは自重しろ。

 

 

 

 

 






第47話です。
思ったよりも変えられなかった。
あのガハルドなら葵を欲しがっても不思議は無いと思ったんですよ。
一刀両断されましたが。
早く樹海の大迷宮編まで行きたい…………
では次も頑張ります。

大士をパワーアップさせるか?

  • このまま普段は最弱で
  • 魔物肉を食べてしまえ
  • シリーズ違うけどデジソウルを使おう
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