ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第48話 ハウリアの『戦争』

 

 

 

ティオが悶えた後、

 

「俺としては、そちらの兎人族の方が気になるがね? そんな髪色の兎人族など見た事がない上に、俺の気当たりにもまるで動じない。その気構え、最近捕まえた玩具を思い起こさせるんだが、そこのところどうよ?」

 

ガハルドはまるで神経を逆撫でするかのように〝玩具〟という言葉を強調する。

それにシアはピクリとしたが、隣のユエに手を握られて落ち着かされた。

 

「玩具なんて言われてもな……」

 

「心当たりがないってか? 何なら、後で見るか? 実は、何匹かまだいてな、女と子供なんだが、これが中々――」

 

「興味ないな」

 

掴まったハウリア族が全員救出された事はカムを通じて確認済みである。

明らかなカマかけだ。

予めそう言うハッタリをきかせてくることは予想済みなのでシア以外に反応する者はいない。

 

「ほぉ。そいつらは、超一流レベルの特殊なショートソードや装備も持っていたんだが、それでも興味ないか、錬成師?」

 

「ないな」

 

「……そうかい。ところで、昨日、地下牢から脱獄した奴等がいるんだが、この帝城へ易々と侵入し脱出する、そんな真似が出来るアーティファクトや特殊な魔法は知らないか?」

 

「知らないな」

 

「……はぁ……ならいい。聞きたい事はこれで最後だ……神についてどう思う?」

 

「興味ない………が、俺達の故郷にもちょっかいかけてくるってんなら『殺す』」

 

「あ~、もう、わかったわかった。ったく、愛想のねぇガキめ」

 

ガハルドの言葉に全く動じずに答えていくハジメ。

ガハルドは恐らくハウリアを逃がしたのもハジメだと気付いている様だが、敵対することは避けたいのだろう。

すると、時間が来たのか護衛の1人がガハルドにそっと耳打ちする。

ガハルドは席を立つと、

 

「まぁ、最低限、聞きたいことは聞けた……というより分かったからよしとしよう。ああ、そうだ。今夜、リリアーナ姫の歓迎パーティーを開く。是非、出席してくれ。姫と息子の婚約パーティーも兼ねているからな。真実は異なっていても、それを知らないのなら、〝勇者〟や〝神の使徒〟の祝福は外聞がいい。頼んだぞ? 形だけの勇者君?」

 

ガハルドは明らかに天之河を馬鹿にするような物言いで爆弾発言を残して部屋を出た。

その言葉に一瞬固まっていた天之河だが、ハッとなってリリアーナ王女に問いかける。

 

「リリィ、婚約ってどういうことだ! 一体、何があったんだ!」

 

「それは……たとえ、狂った神の遊戯でも、魔人族が攻めてくれば戦わざるを得ません。我が国の王が亡くなり、その後継が未だ十歳と若く、国の舵取りが十全でない以上、同盟国との関係強化は必要なことです」

 

「それが、リリィと皇子の結婚ということなのね?」

 

「はい。お相手は皇太子様ですね。ずっと以前から皇太子様との婚約の話はありました。事実上の婚約者でしたが、今回のパーティーで正式なものとするのです。魔人の侵攻で揺らいでいる今だからこそ、というわけです」

 

「王国には? 協議が必要ではないの?」

 

「事後承諾ではありますが、反対はないでしょう。元々、そういう話だったわけですし。それに、今の王国の実質的なトップは私です。ランデルは未だ形だけですし、お母様も前には出ない人ですから。なので、問題ありません。今は何事も迅速さが必要な時なのです」

 

王女としてそう言うリリアーナ王女。

天之河は苦虫を噛み潰したような表情して口を開いた。

 

「……リリィは、その人の事が好きなのか?」

 

「好き嫌いの話ではないのです。国同士の繋がりのための結婚ですから。ただ、皇太子様には既に幾人もの愛人がいらっしゃるので、その方達の機嫌を損ねることにならないか胃の痛いところです。私の立場上、他の皇子との結婚というのは釣り合いが取れませんから、仕方がないのですが……」

 

「な、なんで、そんな平然としているんだよ! 好きでもない上に、そんな奴と結婚なんて、おかしいだろ!」

 

「光輝さん達から見れば、そうなのかもしれませんが、私は王族で王女ですから。生まれた時から、これが普通のことです」

 

「普通って……リリィだって、女の子なんだ。ちゃんと好きになった人と結婚したいんじゃないのか?」

 

納得できない天之河に対し、リリアーナ王女はただ困ったような笑みを浮かべる。

 

「それ以上は止めろ天之河。お前の言葉は逆にリリアーナ王女を辛くするだけだ」

 

俺はそう口を出す。

 

「何だと………!?」

 

「お前はいい加減日本の常識をこの世界に求めるのは止めろ。地球ですら地域によって相容れない常識があるんだ。それが異世界であるトータスなら尚更な。この世界は日本の様に個人の命は重くないんだ。王族にとって婚姻による結び付きは国同士の結束を強める手段に過ぎない。そして、王族であるリリアーナ王女にとって、他国の皇子との婚姻は言わば『義務』なんだよ。簡単に言えば、俺達が小学校や中学校に行かなきゃいけないのと同じだ」

 

「何を………! 結婚はリリィの一生に関わる問題なんだぞ! そんなのと一緒にしていい筈がない!」

 

「…………義務教育も個人の一生に関わる問題だけどな……………」

 

俺は天之河に聞こえないように呟く。

 

「確かに結婚は個人の一生に関わる問題だ。だが、『王族』であるリリアーナ王女の場合、その問題はリリアーナ王女『個人』に留まらない」

 

「何っ………?」

 

「例えばお前の我儘………進言でこの婚姻が破談になったとしよう。その場合どうなると思う?」

 

「そんなのリリィが好きでも無い相手と結婚しなくて済んで良かったじゃないか!」

 

「………………………」

 

俺は思わず呆気にとられる。

俺が態々『問題はリリアーナ王女個人に留まらない』と前置きしたのに、出てきた答えが『好きでもない相手と結婚しなくて済んで良かった』だ!?

どんだけ異世界舐めてんだコイツ!?

俺が助けを求めるように視線を彷徨わせると、八重樫さんが頭が痛そうに手で頭を抱えており、ハジメは肩を竦めてお手上げのポーズ。

リリアーナ王女は笑みを浮かべようとしているが、その表情は明らかに引き攣っていた。

元王族のユエは呆れを通り越してゴミを見るような目だ。

 

「どんだけ頭お花畑なの、この天然勇者………?」

 

「成績良くても馬鹿な人って初めて見た………」

 

優花と葵も遠慮が無い。

誰も説明したく無さそうなので仕方なく俺が話を進める。

 

「リリアーナ王女『個人』として見るならそれでいいかもしれない。だが、婚姻を破談にされた帝国が面子を潰されたと判断して同盟を破棄する可能性が高い。その場合、魔人族との大規模な衝突………決戦が起きた場合、王国と帝国の連携が上手くいかず、多くの犠牲………下手をすれば、各個撃破されて人間族が負ける」

 

「そんな………!? そんな馬鹿げた理由で同盟を破棄するなんてあるわけが………!」

 

「王族にとって面子って言うのは重要なものなんだ。一方的に婚姻を破棄されて、何もせずに黙っていれば、帝国が王国より下だと示すことになる。実力主義の帝国がそんな事を黙って受け入れるはずがない」

 

「人間族の存亡が懸かっているのに力を合わせられないわけがないだろう!?」

 

「王族としては、その戦争の後も考えなきゃいけないんだよ。戦争に勝っても、帝国が王国より下と判断され続けるのは、帝国にとって面白くないからな」

 

「そんなの…………!」

 

「捕らぬ狸の皮算用とでも言うんだろうが、そう言う問題云々を起こさないためにも、形だけでも婚姻という繋がりを持つことが一番後腐れ無いんだよ」

 

「ぐっ…………!」

 

天之河が言葉に詰まる。

内心、あのガハルドが政略結婚をどれだけ重要に見てるか分からないけどな、と付け加える。

序に、どちらにせよ今回の婚姻は無くなる可能性が高い、とも付け足して。

 

 

 

 

 

応接室を出てお付のメイドに部屋へ案内された俺達。

メイドを追い返したあと、ハジメが何かに集中するようにずっと目を瞑っていた。

やがて、スッと目を開けたハジメに気付いたユエが問いかけた。

 

「……どう? ハジメ」

 

「……ん~、上々だな。……途中、ちょっと面倒事があったが……予定の六割は完了した」

 

「面倒事って何だ?」

 

ハジメの答えにアグモンが問いかける。

 

「大したことじゃない」

 

ハジメが何でもないようにそう言うと、

 

「早いね。やっぱりトラップは多いのかな?」

 

白崎さんがそう聞く。

 

「……そうだな。だが、全てを解除する必要はない」

 

「ふむ、今夜がパーティーというのは幸いじゃの。人が固まれば、色々動きやすいのじゃ」

 

「最終的にはパーティー会場に集まることになりそうですね。……上手くいくでしょうか?」

 

シアが少し不安そうな表情をみせる。

そんなシアをハジメ達がウサ耳をモフモフしたり、頭を撫でたり、頬をムニムニしたり、手を握ったりしている。

シアは感極まったのか、目が潤んできた。

それでも涙は流さず、代わりにニッコリと笑みを浮かべた。

 

「さて、主役達のために舞台を整えようか」

 

その言葉に俺達は笑みを浮かべて力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

煌びやかなパーティー会場で、ハジメ達は注目を集めていた。

〝神の使徒〟にして〝勇者一行〟と認識されているので、実力主義の帝国貴族からすれば、興味をそそられる存在だ。

更にハジメの周りにいる女性達は全員見た目麗しい美女美少女ばかりだ。

ダンスのお相手やお近付きになりたい男はいくらでもいるだろう。

ただ、その全員はハジメ以外と踊る気は無く、にべもなく断られているのだが。

デジモン達は流石にパーティー会場に入れる訳にはいかなかったが、パーティーにも参加させないという事はパートナーとして許容できなかったので、テラスの一角を陣取り、そこに御馳走を運んでデジモン達にもパーティー気分を味わってもらっている。

そう言う俺は壁の花ならぬ壁の雑草として、ハジメ達から少し離れた所で壁にもたれ掛かっていた。

ぶっちゃけ俺がここに居るのは場違いだと思っている。

顔も中身も平凡の域を出ない俺は、目立たないように隅に居るわけだが、先程からチラチラとそれなりの人数から視線を向けられていた。

何故なら、俺自身が壁の雑草だとしても、その両隣に美しい花が咲いていれば自然と注目はされるだろう。

 

「……………なあ? 俺に遠慮せずにパーティーを楽しんできてくれていいんだぞ? お前達ならこのパーティーでも引けは取らないだろうし…………」

 

俺は両脇に咲く花………パーティードレスを纏った葵と優花にそう言う。

因みに最初見た時は思わず見惚れてしまった。

すると、

 

「別に遠慮してるわけじゃないよ」

 

「私達の居場所は大士の隣………私達は自分の居るべき場所に居るだけよ」

 

2人は恥じらいも無くそう言う。

 

「………………………ありがとな」

 

2人の想いに俺は思わずお礼を言ってしまった。

 

「だからお礼を言われる事じゃないよ。私達が大士の隣に居るのは当然のことなんだから!」

 

葵にそう言われ、改めてこの2人の少女に深く想われている事を再認識する。

だが、その事を嬉しいと思うと同時に、アルファモンに進化した時は別として、普段はこの2人に護られているという事実に、ほんの少し情けなさを感じている。

普段でもせめて彼女達に心配をかけないぐらいの強さが…………

いや、正直に言えば、普段でも彼女達を護れる位の強さが欲しいと思っている。

俺は下げている右手に自然と力が入り、握り拳を作っていた。

この手で、2人を護れるだけの強さを…………!

談笑をする2人の顔を見ながら強くそう思う。

その思いの強さに比例する様に右の拳を握りしめる。

 

「………………………ん?」

 

その時、視界の片隅に無数の四角い金色の粒子が映った様に見えた。

何だ?

俺はその粒子の出所を追うように視線を下げて行く。

その視線が辿り着いたのは俺の右手。

俺は右手を前に持ってくるが、そこには何の変りもない自分の右手だけが映っていた。

 

「……………気の所為か………」

 

俺は呟く。

 

「どうしたの?」

 

葵が俺の行動を不思議に思ったのかそう聞いてくる。

 

「いや、何でもない」

 

俺はすぐにその事を頭の片隅に追いやる。

やがて、パーティーの主役であるリリアーナ王女と、その婚約者でありガハルドの息子で皇太子のバイアスが入場してくる。

ザワッとどよめきが広がるが、それは祝福する様なものではなく、逆に困惑する様なざわめきだった。

何故なら、リリアーナ王女は婚約発表のパーティーには似つかわしくない漆黒のドレスを身に纏っていたからだ。

こちらの世界でもこういった祝い事には白の様な明るい色が好まれる。

しかし、リリアーナ王女はそれとは真逆の漆黒のドレスを選び、更には義務としてここに居ますと言わんばかりのすまし顔だ。

バイアスは苦虫をかみつぶしたような表情をしており、これから夫婦になる2人にはとても見えなかった。

 

「リリアーナ王女…………何かあったのかな?」

 

「公の場であんな態度を取るような人には見えなかったけど…………王族として割り切っていたみたいだし………」

 

その後のダンスでも、バイアスが強引に抱き寄せてもいつの間にかリリアーナ王女が音楽に合わせて離れると言った事の繰り返しで終わり、すぐに挨拶回りへと進む。

バイアスは完全にイラついている表情だ。

ふと、優花がハジメの方を見ていた。

ハジメは何かを知っているような様子で八重樫さんに説明している。

 

「なるほどね…………」

 

優花が納得したように頷く。

 

「何か分かったのか?」

 

「ええ。何でもあの王女様、あの皇太子にレイプされそうになったらしいわ」

 

「ぶふっ!?」

 

その言葉に俺は思わず吹き出した。

 

「何考えてんだあいつ………!?」

 

婚約パーティーの前にレイプとか本当に何考えてんだ?

 

「それは南雲が止めたみたいだけどね」

 

「流石ハジメ…………これはフラグ立ったか?」

 

「可能性はあるわね。よく見ると、リリアーナ王女、さっきからチラチラと南雲に視線向けてるわ」

 

俺もリリアーナ王女をよく見て見ると、確かにハジメの方に視線を向ける回数は多い。

すると、そんな彼女の前でハジメがユエとダンスを始めた。

何で正妻の白崎さんじゃないんだろうと思っていたが、その理由はすぐにわかった。

元王族であるユエはダンスの嗜みもあったのか、うまい具合にハジメをリードしていく。

因みに何故同じ庶民である筈のハジメがユエについて行けるのかと言えば、

 

「南雲………〝瞬光〟も使ってついて行ってるわね」

 

優花が半分呆れた様に呟く。

何と言う最終派生技能の無駄遣い。

楽士達は、先程のリリアーナ王女とバイアスのダンスがギスギスしたもので、場を盛り上げようと必死に演奏していたのが、ハジメとユエの楽しそうなダンスを見て、こちらも楽し気に演奏をし始めた。

その雰囲気は自然とパーティー会場全体に伝わり、結果的にパーティーを盛り上げる立役者となっていた。

2人のダンスが終わると、すぐに白崎さんがユエと交代し、ハジメと踊り始める。

ハジメは先程ユエと踊った経験を活かして白崎さんをリードしていく。

これが先にユエと踊った理由だった。

ダンスを踊ったことが無いハジメは、経験者のユエと踊ることで少しでもダンスに慣れ、自分がリードすることで白崎さんに恥をかかせないようにしたのだ。

そのお陰か、2人のダンスも大分様になっている。

すると、

 

「ねえ大士! 私達も踊ろうよ!」

 

葵からそうお誘いが来た。

 

「いや、ちょっと待てって! 俺はダンスなんか踊れないぞ! 恥掻くだけだって!」

 

俺を引っ張る葵にそう言うが、

 

「大丈夫! 恥掻く時は私も一緒だよ!」

 

寧ろお前達に恥を掻かせたくないんですけど!

俺は抗おうとするが、ステータスに天と地ほどの差がある俺は如何する事も出来ずにダンスホールへと引っ張られていく。

 

「強引だな…………」

 

「ふふっ………!」

 

遂にダンスホールまで連れ出されてしまった俺は、仕方なく腹を括って葵と向かい合った。

それなら、少しはらしくするとしますか。

俺は改めて、アニメや漫画などで見るダンスの見よう見まねで、胸に手を当て一礼する。

それを見た葵が微笑むとスカートの両裾を持ち上げ、恭しく頭を下げた。

手を握って葵の腰を抱くと、周りの人に合わせるようにステップを踏み出す。

やはり最初はたどたどしく、ステップを踏み間違えたり周りの人にぶつかりそうになったりしたのだが、不思議な事に割とすぐにコツを掴むことが出来た。

リズムに合わせてステップを踏むだけだったのが、ターンを入れたり、スピンやスウェイなんかもやる余裕が出てきた。

 

「やるじゃねえか」

 

すぐ後ろで踊っていたハジメが話しかけてくる。

 

「思ったよりも俺にダンスの才能があったって事かな」

 

俺は冗談交じりでそう言う。

 

「とは言え、長話できるほど余裕とは言えないからな」

 

「フッ………」

 

俺の言葉にハジメは口元に笑みを浮かべると、パートナーの白崎さんと一緒に目立つように踊り始めた。

まるで俺達についてこいと言わんばかりだ。

 

「フフッ………」

 

葵は楽しそうな笑みを浮かべると、まるでハジメ達と競うようにダンスの動きを大きくし始めた。

楽士達も、先程場を盛り上げてくれたハジメの行動を後押しする様に楽しく、軽快なリズムで演奏する。

俺は、ここまで来ればもうヤケだと開き直って葵に付き合う事にした。

ハジメ達に負けないようにステップを踏み、細かい技などは気にせずに勢いに任せるままにポーズを取る。

先程のハジメとユエのダンスとはまた違った雰囲気に、楽士達は競い合う俺達を盛り上げる。

俺達は気付かなかったが、他の踊っていた人達も俺達に引っ張られる………と言うより、俺達を中心にして注目させるように自然と踊っていた。

俺達とハジメ達は、曲の終わりが近付くにつれ隣り合わせとなって踊り、終曲と共にフィニッシュのポーズを取った。

奇しくもそれは同じ形となり、場を最高に盛り上げる事となった。

割れんばかりの拍手の中、俺は葵の手を取りながら優花の所へ戻っていく。

その優花も、拍手と共にで迎えた。

 

「2人とも、凄かったわよ」

 

優花は笑みを浮かべながらそう言う。

ダンスホールでは、次の演奏に向けて準備が進められている。

 

「………………………」

 

俺はそれを見てから優花に向き直り、

 

「優花」

 

「えっ? 何?」

 

声を漏らした優花に先程と同じように胸に手を当てて一礼し、

 

「私と一曲踊ってくれませんか? レディ」

 

この際だと優花をダンスに誘う事にした。

優花は一瞬驚いた顔をしたが、

 

「よ、喜んで………!」

 

顔を赤くして恥ずかしそうにしながらも俺の手を取った。

 

「頑張ってね~」

 

葵はそれを見て楽しそうに手を振る。

優花の手を引いて再びダンスホールに来ると、ハジメが今度はリリアーナ王女を相手に踊り始めていた。

今度は俺と競い合おうとはせず、ゆっくりとリリアーナ王女を相手にステップを踏んでいる。

俺もそれに習って今度はゆっくりと優花とのダンスの時間を楽しんだ。

すると、

 

「意外だったわ………」

 

優花が踊りながら口を開いた。

 

「何が?」

 

「大士が私をダンスに誘ってくれたこと。さっきはあまり乗り気じゃなかったでしょ?」

 

「まあ、ダンスなんて初めてだったしな。けど、やってみたら案外踊れたもんだから、優花とも踊りたくなったんだよ」

 

「意外な才能ね………」

 

「俺もビックリだ」

 

俺の言葉に優花は可笑しそうに笑みを浮かべる。

先程とは違い、ゆっくりと流れる2人の時間。

俺達はこの時間を心行くまで楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

ダンスが終わって少しすると、ガハルドが壇上に上がった。

何かスピーチをする様だ。

 

「さて、まずは、リリアーナ姫の我が国訪問と息子との正式な婚約を祝うパーティーに集まってもらったことを感謝させてもらおう。色々とサプライズがあって実に面白い催しとなった」

 

ガハルドは楽し気な視線をハジメへ向ける。

まあ、ハジメはそんな視線知ったことか、何だが。

 

「大士、来るわよ」

 

その時、隣の優花がそう言う。

 

「パーティーはまだまだ始まったばかりだ。今宵は、大いに食べ、大いに飲み、大いに踊って心ゆくまで楽しんでくれ。それが、息子と義理の娘の門出に対する何よりの祝福となる。さぁ、杯を掲げろ!」

 

ガハルドの言葉にパーティー会場の人々がグラスを掲げる。

 

「この婚姻により人間族の結束はより強固となった! 恐れるものなど何もない! 我等、人間族に栄光あれ!」

 

「「「「「「「「「「栄光あれ!!」」」」」」」」」」

 

その瞬間、パーティー会場が闇に呑まれた。

 

「なんだ!? なにが起こった!?」

 

「いやぁ! なに、なんなのぉ!?」

 

パーティーが最高潮に達した瞬間に暗闇に落とされた貴族達が悲鳴を上げる。

 

「狼狽えるな! 魔法で光をつくっがぁ!?」

 

「どうしたっギャァ!?」

 

「何が起こっていっあぐっ!?」

 

その暗闇の中で響く切り裂く様な音と悲鳴。

 

「落ち着けぇ! 貴様等それでも帝国の軍人かぁ!」

 

ガハルドが叫ぶが、ヒュンヒュンと何かが空気を切り裂く音がしたかと思うと、

 

「っ!? ちっ! こそこそと鬱陶しい!」

 

ギンッギンッと金属がぶつかり合う音が響く。

ぶっちゃけ俺には真っ暗で何も見えてないわけだが、何が起きているのかは把握している。

ハウリア族が『戦争』を仕掛けたのだ。

 

「ッ!? 何者っげぶっ!?」

 

運良く火球を作り出した者が1人いたが、その直後に首を飛ばされる。

その際に発生した僅かな明かりで、一瞬だが黒装束を着たウサ耳が見えた。

 

「ひっ、ば、化け物ぉ~!」

 

「し、死にたくないぃ~、誰かぁ!」

 

情けなく悲鳴を上げて逃げようとする者も、直後には切り裂かれる音と共に床に倒れ伏す。

それでも実力主義の帝国の底力と言うべきか、襲撃を切り抜けた者が何人もいる様だ。

魔法の詠唱や金属音が聞こえてくる。

すると、

 

「大士、葵。耳を塞いで目を瞑って」

 

優花が小声で警告してきたので、疑いもせずに言う通りにする。

その直後、瞼越しにも分かる強烈な光と、塞いでも耳が痛いと感じるほどの高周波の音がパーティー会場を襲った。

 

「ぐぁあ!?」

 

「ぐぅうう!」

 

「何がァ!?」

 

何人もの悲鳴が響く。

その中で切り裂く音や金属がぶつかり合う音がしばらく続く。

 

「散らせぇ! 〝風壁〟!」

 

「撃ち抜けぇ! 〝炎弾〟!」

 

「おぉおおお! 爆ぜろぉ、〝炎弾〟!」

 

「舞い踊る風よ! 我が意思を疾く運べ、〝風音〟!」

 

ガハルドが魔法を連発する。

ハウリアと激しい攻防を繰り広げているのだろう。

 

「らぁああ!!」

 

「ッ――!!」

 

「くぅう!」

 

おそらくガハルドが1人で奮闘しているのだろう。

ハウリア族にも苦悶の声が聞こえる。

 

「ククク、心地いい殺気を放つじゃねぇか! なぁ、ハウリアぁ!」

 

ガハルドは楽しそうに叫ぶ。

 

「あぁ? ビビって声も出せねぇのか!?」

 

「戦場に言葉は無粋。切り抜けてみろ」

 

「っ! はっ、上等ぉ!」

 

カムの言葉にガハルドは逆に闘志を漲らせる。

そのまま暫く剣戟の音が鳴り響いたかと思うと、

 

「っ! なんだっ? 体が……」

 

ガハルドが困惑の声を漏らした。

 

「ぐぁ!」

 

ガハルドの苦悶の声。

続いて、ドシャッと地面に倒れる音が響く。

 

「ふん、魔物用の麻痺毒を散布してここまで保つとはな」

 

「くそがっ、最初からそれが狙いだったか……」

 

そんな声が響いたかと思うと、スポットライトの様に光がガハルドを照らした。

ガハルドは手足の腱を切り裂かれ、地に伏せられている。

その姿に帝国貴族達は困惑と恐怖に陥った。

 

「さて、ガハルド・D・ヘルシャーよ。今生かされている理由は分かるな?」

 

「ふん、要求があるんだろ? 言ってみろ、聞いてやる」

 

「……減点だ。ガハルド。立場を弁えろ」

 

地に伏せられても攻撃的な姿勢を変えないガハルドにカムは冷たく言い放つと、ガハルドから少し離れた場所にスポットライトが当たる。

そこには同じように手足の腱を切り裂かれ、詠唱封じのために口元も裂かれた男の姿があった。

すると、次の瞬間にはその男の首が斬り飛ばされる。

 

「てめぇ!」

 

「減点」

 

声を上げたガハルドに再び冷たく言い放つカム。

再び別の場所にスポットライトが辺り、同じように男の首が刈り取られた。

 

「ベスタぁ! このっ、調子にのっ――」

 

「減点」

 

名前を呼んだことから、ガハルドに近い人物だったのだろう。

ガハルドは怒りの声を上げるが、その言葉を言い切る前にカムが冷たく言い放つ。

再び別の男の首が刈り取られた。

 

「……」

 

ガハルドはそこまでされてようやく歯を食いしばりながら押し黙った。

 

「そうだ、自分が地を舐めている意味を理解しろ。判断は素早く、言葉は慎重に選べ。今、この会場で生き残っている者達の命は、お前の言動一つにかかっている」

 

カムはそう言うとガハルドの首にネックレスを掛けた。

 

「それは〝誓約の首輪〟。ガハルド、貴様が口にした誓約を、命を持って遵守させるアーティファクトだ。一度発動すれば貴様だけでなく、貴様に連なる魂を持つ者は生涯身に着けていなければ死ぬ。誓いを違えても、当然、死ぬ」

 

それは言外に帝室の人間は全て確保しているという事なのだろう。

 

「誓約……だと?」

 

「誓約の内容は四つだ。一つ、現奴隷の解放、二つ、樹海への不可侵・不干渉の確約、三つ、亜人族の奴隷化・迫害の禁止、四つ、その法定化と法の遵守。わかったか? わかったのなら、〝ヘルシャーを代表してここに誓う〟と言え。それで発動する」

 

「呑まなければ?」

 

「今日を以て帝室は終わり、帝国が体制を整えるまで将校の首が飛び続け、その後においても泥沼の暗殺劇が延々と繰り返される。我等ハウリア族が全滅するまで、帝国の夜に安全の二文字はなくなる。帝国の将校達は、帰宅したとき妻子の首に出迎えられることになるだろう」

 

「帝国を舐めるなよ。俺達が死んでも、そう簡単に瓦解などするものか。確実に万軍を率いて樹海へ侵攻し、今度こそフェアベルゲンを滅ぼすだろう。わかっているはずだ。奴隷を使えば樹海の霧を抜けることは難しくない。戦闘は難しいが、それも数で押すか、樹海そのものを端から潰して行けば問題ない。今まで、フェアベルゲンを落とさなかったのは……」

 

「畑を潰しては収穫が出来なくなるから……か?」

 

「わかってるじゃねぇか。今なら、まだ間に合う。たとえ、奴の力を借りたのだとしても、この短時間で帝城を落とした手際、そしてさっきの戦闘……やはり貴様等を失うのは惜しい。奴隷が不満なら俺直属の一部隊として優遇してやるぞ?」

 

「論外。貴様等が今まで亜人にしてきた所業を思えば信じるに値しない。それこそ〝誓約〟してもらわねばな」

 

「だったら、戦争だな。俺は絶対、誓約など口にしない」

 

ガハルドはそれでも頷かなかった。

 

「そうか。……減点だ、ガハルド」

 

カムの言葉が再び冷たくなる。

そして再びスポットライトが照らされ、浮かび上がったのは、

 

「離せェ! 俺を誰だと思ってやがる! この薄汚い獣風情がァ! 皆殺しだァ! お前ら全員殺してやる! 一人一人、家族の目の前で拷問して殺し尽くしてやるぞ! 女は全員、ぶっ壊れるまでぇぐぇ――」

 

リリアーナ王女の婚約者でもある皇太子のバイアスだった。

しかし、直後にあっさりと首を斬り飛ばされる。

リリアーナ王女が嫌悪感を露にするぐらいに嫌っていた相手はあっさりと命を落とした。

 

「……」

 

「あれが次期皇帝。お前の後釜か……見るに堪えん、聞くに堪えん、全く酷いものだ」

 

「……言ったはずだ。皆殺しにされても、誓約などしねぇ。怒り狂った帝国に押し潰されろ」

 

「息子が死んでもその態度か。まぁ、元より、貴様に子への愛情などないのだろうな。何せ、皇帝の座すら実力で決め、その為なら身内同士の殺し合いを推奨するくらいだ」

 

実の息子が死んだというのに全く冷静さを失わないガハルド。

それは、一族の者なら血が繋がらなくとも家族同然と言うハウリア族とは全く真逆に位置する者だろう。

 

「わかってんなら無駄なことは止めるんだな」

 

「そう焦るな。どうしても誓約はしないか? これからも亜人を苦しめ続けるか? 我等ハウリア族を追い続けるか?」

 

「くどい」

 

「そうか……“デルタワン、こちらアルファワン、やれ”」

 

カムの言葉と共に、遠くで爆発音が響き渡る。

 

「っ。なんだ、今のは!」

 

「なに、大したことではない。奴隷の監視用兵舎を爆破しただけだ」

 

「爆破だと? まさか……」

 

「ふむ、中には何人いたか……取り敢えず数百単位の兵士が死んだ。ガハルド、お前のせいでな」

 

「貴様のやったことだろうが!」

 

「いいや、お前が殺ったのだ、ガハルド。お前の決断が兵士の命を奪った。そして……“デルタワン、こちらアルファワン、やれ”」

 

「おい! ハウリアっ」

 

ガハルドは制止の言葉を掛けるが再び轟音が響く。

 

「……どこを爆破した?」

 

「治療院だ」

 

「なっ、てめぇ!」

 

「安心しろ。爆破したのは軍の治療院だ。死んだのは兵士と軍医達だけ……もっとも、一般の治療院、宿、娼館、住宅街、先の魔人族襲撃で住宅を失った者達の仮設住宅区にも仕掛けはしてあるが、リクエストはあるか?」

 

「一般人に手を出してんじゃねぇぞ! 堕ちるところまで堕ちたかハウリア!」

 

「……貴様等は、亜人というだけで迫害してきただろうに。立場が変わればその言い様か……“デルタ、やれ”」

 

「まてっ!」

 

ガハルドの制止も空しく三度目の爆発音が響き渡る。

ガハルドは一般人が犠牲になったと思ったのだろう。

しかし、ハウリアは予め一般人は巻き込まないと決めていた。

故にこれはハッタリだ。

 

「貴様が誓約しないというのなら、仕方あるまい。帝都に仕掛けた全ての爆弾を発動させ、貴様等帝室とこの場の重鎮達への手向けとしてやろう。数千人規模の民が死出の旅に付き合うのだ。悪くない最後だろう?」

 

言い方が完全にテロリストなわけだが、それだけのことをガハルドは、そして帝国はやってきたので同情することも出来ない。

 

「“デルタへ、こちらアルファワン……や”」

 

「まてっ!」

 

再びカムが爆破の指令を出そうとした瞬間、今までよりも強い制止の声がかかった。

それから数回ガハルドは悔しそうに床に頭を打ち付けると、

 

「かぁーー、ちくしょうが! わーたよっ! 俺の負けだ! 要求を呑む! だから、これ以上、無差別に爆破すんのは止めろ!」

 

「それは重畳。では誓約の言葉を」

 

要求が通ってもカムは淡々とした言葉で促す。

最後まで隙は見せないという事なのだろう。

 

「はぁ、くそ、お前等、すまんな。今回ばかりはしてやられた。……帝国は強さこそが至上。こいつら兎人族ハウリアは、それを“帝城を落とす”ことで示した。民の命も握られている。故に、“ヘルシャーを代表してここに誓う! 全ての亜人奴隷を解放する! ハルツィナ樹海には一切干渉しない! 今、この時より亜人に対する奴隷化と迫害を禁止する! これを破った者には帝国が厳罰に処す! その旨を帝国の新たな法として制定する!”文句がある奴は、俺の所に来い! 俺に勝てば、あとは好きにしろ!」

 

その言葉と共にネックレスが輝く。

 

「ふむ、正しく発動したようだ」

 

それを見てカムが呟く。

 

「ヘルシャーの血を絶やしたくなければ、誓約は違えないことだ」

 

「わかっている」

 

「明日には誓約の内容を公表し、少なくとも帝都にいる奴隷は明日中に全て解放しろ」

 

「明日中だと? 一体、帝都にどれだけの奴隷がいると思って……」

 

「やれ」

 

「くそったれ! やりゃあいいんだろう、やりゃあ!」

 

「解放した奴隷は樹海へ向かわせる。ガハルド。貴様はフェアベルゲンまで同行しろ。そして、長老衆の眼前にて誓約を復唱しろ」

 

「一人でか? 普通に殺されるんじゃねぇのか?」

 

「我等が無事に送り返す。貴様が死んでは色々と面倒だろう?」

 

「はぁ~、わかったよ。お前等が脱獄したときから何となく嫌な予感はしてたんだ。それが、ここまでいいようにやられるとはな。…………なぁ、俺に、あるいは帝国に、何か恨みでもあったのかよ、南雲ハジメ」

 

それはシアの家族に手を出したことが運の尽きってだけだな。

ハジメはガハルドの言葉には答えない。

最後まで傍観者を貫き通すためだろう。

 

「ガハルド、警告しておこう。確かに我等は、我等を変えてくれた恩人から助力を得た。しかし、その力は既に我等専用として掌握している。やろうと思えば、いつでも帝城内の情報を探れるし侵入もできる。寝首を掻くことなど容易い。法の網を掻い潜ろうものなら、御仁の力なくとも我等の刃が貴様等の首を刈ると思え」

 

「専用かよ。羨ましいこって。魔力のない亜人にどうやって大層なアーティファクトを使わせてんだか……」

 

その辺は地球の技術の知識と組み合わせればどうとでもなったり。

つーか、それ使えば俺にもアーティファクト使えるんじゃ?

今更な事に気付く俺。

 

「案ずるな、ガハルド。ハウリア族以外の亜人族にアーティファクトが渡ることはない。お前が誓約を宣誓したところで、調子に乗って帝国を攻めることなど有り得んよ。もしそうなったら、我等ハウリア族の刃はフェアベルゲンの愚か者に振るわれるだろう」

 

「そうかい。よーくわかったよ。だから、いい加減解放しやがれ。明日中なんて無茶な要求してくれたんだ。直ぐにでも動かなきゃ間に合わねぇだろうが」

 

「……いいだろう。我等ハウリア族はいつでも貴様等を見ている。そのことをゆめゆめ忘れるな」

 

その言葉を最後にハウリア族達が闇に消える。

 

「くそっ、アイツ等、放置して行きやがったな。……誰か、光を……あぁ、そうだ誰もいねぇ……って、ゴラァ! 南雲ハジメ! てめぇ、いつまで知らんふりしてやがる! どうせ、無傷なんだろうが! この状況、何とかしやがれ!」

 

ハジメはめんどくさそうに宝物庫から発光する鉱石を取り出し、それを天井に飛ばす。

あっという間にパーティー会場に明かりがもたらされ、その凄惨な現場が露になった。

それを見て悲鳴を上げる者、気絶する者が続出する。

全く動じてないのはハジメ達や俺達ぐらいだ。

そんな俺達を、手足の腱を着られて床に倒れている者達は視線だけで人を殺せそうな眼で俺達を睨んでいる。

 

「おい、こら、南雲ハジメ。いい加減、いちゃついてないで手を貸せよ。この状況で女、しかも兎人族の女を愛でるって、どんだけ図太い神経してんだよ」

 

「いや、ほら、シアはか弱いウサギだから、さっきの襲撃で怯えちまってんだよ。可哀想になぁ。ほんと恐ろしい奴等だった。俺も、身を守るので精一杯だったよ」

 

完全にワザとらしい態度で震えて見せるハジメ。

 

「いけしゃあしゃあと……とにかく、無傷であることに変わりねぇだろ。お前等に帝国に対する害意がないってんなら、治療するなり、人を呼ぶなりしてくれてもいいんじゃねぇか?」

 

「だがなぁ、あんたの部下達が、治療した瞬間に襲いかかってきそうな殺気を放っているんだが……その場合、そのまま殺っちゃっていいのか?」

 

「いいわけ無いだろ! おい、お前ら! そこの化け物には絶対手を出すなよ! たとえ、クソ生意気で、確実にハウリア族とグルで、いい女ばっか侍らしてるいけすかねぇクソガキでも無駄死には許さねぇぞ!」

 

ガハルドの言葉に部下たちは悔しそうに表情を歪める。

 

 

「ほれ、お前のことを殺したくても、実際に化け物の顎門に飛び込むような馬鹿は、ここにはいねぇ。俺がさせねぇ。そろそろ出血がヤバイ奴もいるんだ。頼むぜ、南雲ハジメ」

 

「まぁ、向かってこないなら別にいいけどな。……香織、頼む」

 

「うんっ、任せて……“回天”!」

 

白崎さんの回復魔法がパーティー会場全体を一気に癒していく。

 

「回復まで化け物クラスかよ。……やってられねぇな」

 

中級の回復魔法で上級以上の効果範囲と回復力を見せるその凄まじさにガハルドは悪態を吐く。

傷が癒えたガハルドの側近たちは、即座にガハルドの傍に集まってハジメに警戒の眼差しを向けた。

 

「だから、よせっての。殺気なんか叩きつけて反撃くらったらマジで全滅すんぞ」

 

「しかし、陛下! アイツ等は明らかに手引きを!」

 

「そうです! 皇太子殿下まで……放ってはおけません!」

 

「このままでは帝国の威信は地に落ちますぞ!」

 

側近たちはそう言って警戒を緩めようとしなかったが、

 

「ガタガタ騒ぐな! 言ったはずだぞ、お前等を無駄死にさせるつもりはないと。いいか、あの白髪眼帯の野郎は正真正銘の化け物だ。ただ一人で万軍を歯牙にもかけず滅ぼせる、そういう手合いだ。……強ぇんだよ、その影すら踏めない程な。奴に従えとは言わねぇが、力こそ至上と掲げる帝国人なら実力差に駄々を捏ねるような無様は晒すな!」

 

ガハルドの一喝がそれらを黙らせる。

 

「それはハウリア族に対しても同じだ。最弱のはずの奴等が力をつけて、帝国の本丸に挑みやがったんだ。いいようにしてやられたのは、それだけ俺達が弱く間抜けだったってだけの話だろう? このままで済ますつもりはねぇし、奴等もそうは思っていないだろうが……まずは認めろ。俺達は敗けたんだ。敗者は勝者に従う。それが帝国のルールだ! それでもまだ、文句があるなら俺に言え! 力で俺を屈服させ、従わせてみろ! 奴等がそうしたようにな!」

 

仲良くなりたいとは思わんが、こういう所でガハルドは分かりやすい男だ。

ハウリアは力を示し、ガハルドはそれに屈した。

それが全てだ。

 

「うん、これにて一件落着だな」

 

ハジメの満足気な言葉に、会場の全員が何かを言いたげにハジメを睨む。

だから俺は、

 

「お前が言うな」

 

その気持ちを代弁しておいた。

 

 

 

 

 

 

 






第48話の完成。
やっと帝都編が終わった…………
デジモンをあんまり絡められないからちょいと苦しかった。
最後は少々駆け足でしたが…………
さて、何気にパーティーを楽しんでいた大士でしたがその手にはあの片鱗が……………
って事で、大士のパワーアップは大差でデジソウルと相成りました。
それに伴ってネタもいくつか浮かんできましたのでお楽しみに。
では、次も頑張ります。

大士をパワーアップさせるか?

  • このまま普段は最弱で
  • 魔物肉を食べてしまえ
  • シリーズ違うけどデジソウルを使おう
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