次の日、俺達は【オルクス大迷宮】の入り口に来ていた。
迷宮と言うからには、もっと危険そうな雰囲気を予想していたのだが、実際は逆に観光名所のような賑わいだった。
その理由として、魔物達から取れる魔石が挙げられる。
魔石は地球で言う電池や燃料のような扱いが出来るもので、資源であり消耗品だ。
それを目当てに冒険者達が集まり、その周りにもその冒険者達を狙った武器防具屋、道具屋、宿屋などが集まるのだ。
とは言え、内部に入ってしまえばそこは予想通りの張り詰めた空気が流れている。
まあ、低階層の弱い魔物はこちらのチート軍団の前には成す術も無かったが。
因みに俺やハジメ、葵さんも弱らせた魔物に止めを刺す程度の事はやったが、魔物とは言え生き物を殺すことはやはり良い気分では無かった。
そして、本日の訓練の目標である20階層に到達し、何度目かの戦闘を終えた後、俺は葵さんと一緒に隊の最後尾を歩いていた。
その時、ピピピッと俺達日本人にとっては聞き慣れた、この世界では存在しない音が聞こえた。
「ッ…………!?」
それは電子音。
俺は思わず立ち止まった。
「大士君?」
葵さんが立ち止まった俺を不思議に思ったのか尋ねてくる。
俺はそれよりも今聞こえた電子音が気になっていた。
この世界で電子音が鳴るとすれば、生徒達が持ち込んだスマホや腕時計ぐらいだが、今の音は明らかに近くから、細かく言えば、俺の身体の何処かから聞こえた。
しかし、俺のスマホは既に電池切れだし何よりこの場には持ってきていない。
それでもその電子音はピピピッ、ピピピッ、と今も鳴り続けている。
俺の身につけている物で電子音が鳴るような物は……………
「まさかっ…………!」
俺はまさかと思い、異世界に来ても肌身離さず持ち歩いているDアークを手に取り、それを確認した。
すると、Dアークの画面が点滅していて、何かを指し示す反応をしていた。
「えっ…………? 大士君、それって…………」
葵さんがそう言うと、ポケットの中に手を入れて『それ』を取り出した。
「あれ? 私のも反応してる?」
『それ』は、黄土色の縁取りがされたDアーク。
「Dアーク………!? もしかして、葵さんもテイマー!?」
「へっ? 知っての通り私はテイマーだけど?」
「いや、俺の言ってるのは『デジモンテイマー』の方だ。葵さん、昔パートナーデジモンがいたでしょ?」
「う、うん………ほんの一ヶ月ぐらいだけど………」
「一ヶ月…………もしかして昨日言ってた友達って…………」
「うん、そうだよ」
俺が驚きながら問いかけ、葵さんは少し戸惑いながらそれに答えていく。
「そうだったのか…………」
葵さんがテイマーだったことは驚きだが、今はそれよりも気になることがある。
Dアークの反応は、皆が進んでいる道とは逸れた脇道を指している。
そして、パートナーデジモンとの絆の証であるDアークが反応するその意味。
「…………………………」
俺に迷いは無かった。
俺は皆が進む道から逸れて、Dアークが示す脇道へ入る。
「あっ、大士君!」
葵さんも俺の後を追って来た。
俺はこの時魔物に遭遇することも罠にかかることも頭に無かった。
ただ、友達と………ドルモンと再会できるかもしれないと思うといても立ってもいられなかった。
指し示す場所に向かって走ること数分。
そこは迷宮の一角にある変哲もない行き止まり。
「はぁ………はぁ…………」
俺は息を整えながら行き止まりの一点を見つめる。
そこには四角い光が集まったような塊が存在していた。
「この光は…………?」
「デジタルゲート………」
葵さんの呟きに俺は答える。
それはかつてデジタルワールドに行くときに見た、デジタルゲートだった。
俺はDアークを見る。
Dアークは紛れもなくそのデジタルゲートに反応している。
「…………ドルモン」
俺は何となくDアークをそのデジタルゲートに向けて翳してみる。
本当に何となくの行動だった。
するとDアークがより強く輝き出す。
それを見ていた葵さんも俺に倣ってDアークを翳した。
葵さんのDアークも光を放つ。
Dアークは輝きを放ち続け、強くなる光に俺はドルモンとの再会に期待を膨らませる。
しかし俺は忘れていた。
この場が迷宮内部。
しかも、俺達のステータスは一般人と変わりない事に。
「グルルルル…………!」
突如として聞こえた唸り声に俺は我に返った。
振り向いた俺の眼に映ったのは、白い狼の魔物。
逃げ道を塞ぐような位置取りで俺と葵さんを狙っている。
「しまった………!」
「ッ…………!」
俺と葵さんは息を呑む。
ドルモンと再会できると浮かれてしまった俺の落ち度だ。
俺は何とか葵さんだけでも逃がそうと考えを巡らせる。
「葵さん、俺が何とか奴らの気を引くからその隙に逃げるんだ………!」
俺は剣を構えながらそう言う。
「何言ってるの!? そんなこと………!」
「葵さんを巻き込んでしまったのは俺の落ち度だ! それにこのままじゃ2人ともやられる!」
「でも………ッ! 大士君! 前!」
俺と葵さんが揉めてる間に狼が襲い掛かってきた。
「うあっ!?」
俺は咄嗟に剣で防ごうとしたが、刀身をその口で咥えられ、そのまま勢いに耐えきれずに押し倒される。
「ぐっ!?」
「大士君!?」
葵さんが悲鳴のような声を上げる。
「来るな!」
俺は何とか押し返そうとするが、やはりステータスの差は大きいのか押し返すどころか逆に押されている。
俺を押さえつけている足の爪が服を突き破って皮膚に刺さり、痛みが走った。
「ぐうう…………!」
その痛みを堪えながら現状に抗う。
諦めて堪るか…………!
「こんな………所で…………!」
徐々にその牙が近付いてくる。
普通なら目を逸らして恐怖から逃れようとするのかもしれない。
だが、目を逸らしても現実は変わらない。
なら、目を逸らさずに精一杯抗うしかない。
その時、
「ええぃっ!」
俺を押さえつけていた狼の目に刃が突き刺さる。
「ギャウッ!?」
「ッ!?」
狼が怯み、拘束が緩んだ隙を突いて俺咥えられていた剣を引くと、
「はぁああああっ!!」
その口目掛けて剣を突き出した。
魔物の皮膚は思った以上に強靭で、俺のステータスでは致命傷を与えるのは難しい。
しかし、口内は外皮ほどの強靭さは無く、俺のステータスでも貫くことができ、内側から脳を貫いた。
「はぁ……はぁ………」
俺は立ち上がりながら剣を引き抜く。
「大士君! 大丈夫!?」
葵さんが俺に駆け寄ってくる。
葵さんの手には剣先に血が付いた細身の剣が握られていた。
先程狼の眼を刺したのは葵さんだったみたいだ。
「葵さん………ありがとう、助かったよ」
俺はお礼を言う。
「ううん………無我夢中で…………」
葵さんも命の危機に緊張していたのか、息が少し荒い。
ホッとしたのもつかの間、
「「グルルルルルル…………!」」
先程の騒ぎを聞きつけてきたのか、更に2匹の狼の魔物が迫ってきた。
「ま、また………!」
葵さんは絶望的な表情を浮かべる。
だが、俺は剣を握り直して構える。
「………諦めて堪るか…………!」
俺は呟く。
「大士君?」
「こんな所で俺は諦めない………!」
俺は狼を見据える。
「お前と再び会うまで…………俺は死なない!」
俺は自分の決意を口にする。
その時、俺は気付かなかったがDアークが俺の思いに共鳴する様に光を強め、また同じく共鳴する様にデジタルゲートに光が集中する。
しかし、そんな事知った事では無いと狼の一匹が俺に向かって飛び掛かってきた。
だが、不思議と恐怖は感じない。
何故なら、
「なあ、そうだろ!? ドルモォォォォン!!」
俺の叫びに応えるようにDアークが強く輝き、デジタルゲートから光が溢れる。
そして、
「メタルキャノン!!」
待ち侘びたその声と共に、俺の後方から高速で飛んできた『それ』に狼は直撃。
そのまま一直線に吹き飛ばされて壁に激突。
身体中の骨を砕かれて絶命した。
「………………………」
俺はゆっくりと後ろを振り向く。
そこには二本足で立ち、紫の体毛に覆われ、背中には退化した小さな羽。
額に赤い逆三角形のインターフェースがトレードマークの、ドラゴンの因子を内包した獣型デジモンがいた。
「………………ドルモン」
俺は感極まりながらその名を呟く。
「………………大士」
ドルモンも俺の名を口にする。
また会うことが出来たら言いたいことが沢山さんあったはずだ。
でも、こうやって会えると何も出てこない。
ただ、
「久し振りだな、ドルモン」
「うん。大きくなったね、大士」
そんな当たり前の言葉だけが互いに出て来た。
自然と俺達は笑い合う。
だがその時、警戒して動きを止めていたもう一匹の狼が動き出した。
俺とドルモンは警戒されていたようで、回り込むように葵さんに向かっている。
「ヤバい! ドルモ…………!」
俺はドルモンに指示を出そうとして、
「居合刃!!」
それよりも早く何かが葵さんの前に立ちはだかり、葵さんに襲い掛かった狼を口から放った刃で切り裂いた。
その『何か』は、和風の鎧をイメージさせる甲冑を身に纏った黄色い体毛の獣型デジモン。
「葵、大事無いか?」
そのデジモンが葵さんに振り返りながら言った。
「リュウダモン!」
葵さんもその名を呼ぶと、そのデジモン―――リュウダモン―――に抱き着いた。
「リュウダモン…………!」
葵さんは目に涙を浮かべながらその名を呟く。
「久しいな、葵………」
リュウダモンは目を伏せて葵の抱擁を受け入れている。
気が済むまでそうさせてあげたいが、生憎ここは迷宮内部。
またいつ魔物に襲われるかもわからない。
「葵さん」
俺は葵さんに歩み寄り、声を掛ける。
「あ、大士君………」
そこで葵さんはハッとして顔を上げた。
「そっちが葵さんのパートナー?」
「うん、リュウダモンだよ」
「某はリュウダモン。葵のパートナーデジモンだ」
俺の問いにそう答える葵さんとリュウダモン。
「俺は黒騎 大士。こっちはパートナーのドルモン」
「俺、ドルモン! よろしくね!」
俺達も自己紹介を返す。
「それにしても………リュウダモン、か…………こんな偶然もあるんだな」
俺はドルモンとリュウダモンの進化の関係性を思い出してボソッと呟く。
そこでふとDアークを取り出してアナライズ機能を表示させる。
「リュウダモン 成長期 ワクチン種 獣型デジモン。必殺技は『居合刃』。よし、問題なく使えるな」
すると、葵さんが驚いた顔をして、
「えっ! このデジヴァイスにそんな機能あったの!?」
初めて知ったと言わんばかりにそう言った。
「ああ、葵さんは知らなかったのか。このDアークにはパートナーが見たデジモンの情報を読み取るアナライズ機能があるんだ」
「へぇ~」
葵さんは自分のDアークを取り出すと、ドルモンのデータを表示させた。
「ドルモン 成長期 データ種 獣型デジモン。必殺技は『メタルキャノン』。ホントだ!」
嬉しそうにはしゃぐ葵さん。
そうなると………
「葵さんって、もしかしてカードスラッシュ機能も知らない?」
Dアークのもう一つの機能について尋ねると、
「まだ何かあるの!?」
葵さんは期待を込めた目で見つめてきた。
「ああ。でも、それは後でね。今思い出したけど、皆から勝手に分かれて別行動を取ったんだ。今頃騒ぎになってるかも…………」
「あ、そうだった。リュウダモンと再会できてすっかり忘れてた」
葵さんも現状を思い出したのか、あっ、と目を見開く。
「カードスラッシュ機能については落ち着いたら教えるから、今は皆と合流しよう」
「うん、わかった」
俺達は少し慌てながら元の道を戻っていった。
元の道に戻って暫く進んでいると、通路の奥からドォォォォンと大きな爆発音が響いてきた。
「この先で戦闘してるみたいだな」
「何とか追いつけそうだね」
ドルモンとリュウダモンを伴いながら俺と葵さんは先を急ぐ。
そして、通路の突き当りに皆の姿が見え、俺達はホッと息を吐こうとした。
その瞬間、
「団長! トラップです!」
「ッ!?」
そんな叫びが聞こえた瞬間、騎士団を含めたクラスメイト達の足元に魔法陣が広がり、その場から姿を消した。
「皆っ!?」
俺は思わず叫んだ。
だが、近くに皆の姿は無い。
「な、何が起こったの!?」
葵さんが動揺している。
「葵、落ち着け」
リュウダモンが葵さんを宥める。
「皆が消える前に聞こえた声から察するに、トラップに掛かったんだ! そしておそらくその罠は転移罠! 皆は別の場所に転送されたんだ!」
俺は現状からそう推測する。
「転送!? いったい何処に!?」
「分からない………だけど、トラップと言うからには現状よりいい状況になるとは考えにくい。最悪モンスターハウスやボス級モンスターの前に転送させられた可能性も………」
「じゃ、じゃあ早く助けに行かないと………!」
「どこに飛ばされたか分からないんだ。無理に探そうとしても見つけられる可能性は低い。もしかしたら、罠を突破すれば元の場所に戻ってこられるパターンかもしれないし………」
「でも…………」
葵さんは心配そうな表情のままだ。
「一先ず暫く待って様子が変わらないようなら外に助けを求める方が良いと思う。俺達は迷宮内部の事をよく知らない。それよりも救助隊を編成してもらった方が人手も増えて見つけられる可能性が高まると思う」
「ううっ……………」
「葵、辛いだろうがここは大士の言う通りだ。この洞窟の内部構造を理解していないのに闇雲に突っ込んでもどうにもならん」
リュウダモンが葵さんを諫める。
「2時間だ。2時間待って状況が変わらないようなら外に助けを求める。これでいいな?」
「…………うん、わかった」
葵さんは俯き気味に頷く。
すると、
「大士、大丈夫?」
ドルモンが心配そうな表情を俺に向けていた。
「ドルモン…………?」
「大士、辛そうだよ」
「ッ…………!」
ドルモンの言葉に俺はハッとなる。
「……………すまん、正直気が気じゃない…………あれだけカッコいいこと言っといて情けないが、俺も出来るなら助けに行きたいと思ってる………」
俺がそう言うと、
「ごめん!」
葵さんが突然頭を下げた。
「ごめんね、大士君………! 辛いのは大士君も一緒なのに、私は自分の感情だけで………」
「謝る必要は無いよ、葵さん。葵さんの思いは間違っちゃいない。クラスメイトや友達が居なくなったら慌てるのが当然だ」
「だけど………」
「そうやって自分に正直な所も、葵さんの良い所だと思うよ」
「な、何言ってるのこんな時に………!?」
葵さんは顔を赤くして何やら慌てている。
何か照れさせるような事でも言ったか?
その時、ズンと重そうな足音がした。
見れば、ゴリラのような魔物が近付いてきていた。
因みに名前はロックマウントと言い、カメレオンのように擬態する力を持っているのだが、ステータスの低い俺達には擬態する必要は無いと思われたのだろうか?
俺はロックマウントに向き直ると、
「丁度いい。葵さん、さっき言ってたカードスラッシュ機能を教えるよ」
俺はそう言いながらデジモンのカードデックを取り出す。
「デジモンのカード?」
葵さんが怪訝な声を漏らす。
「ドルモン! 準備は良いか!?」
「いつでも!」
俺の声に相棒は頼もしい返事を返してくれる。
「奴の力は強い、注意しろ!」
「分かった!」
ドルモンは駆け出すと、
「ダッシュメタル!!」
突進しながら鉄球を口から放つ。
鉄球が右肩にヒットし、ロックマウントは痛みから叫び声を上げ、後退する。
しかし、すぐに体勢を立て直すと、ドルモンに飛び掛かろうとしていたのが分かったので、俺は一枚のカードを抜き出し、Dアークの側面にある溝に当てると、
「カードスラッシュ!」
その溝にカードを通していく。
Dアークがそのカードのデータを読み取り、そのデータをドルモンへと転送する。
「高速プラグインB!!」
データがドルモンに送られた瞬間、ドルモンのスピードが桁違いに速くなった。
「速い!?」
リュウダモンが驚愕する。
「ドルモン! 後ろへ回り込め!」
ドルモンはそのスピードを活かしてロックマウントの背後に回り込む。
「そして、その後頭部に………!」
「メタルキャノン!!」
ドルモンは俺の思った通りにロックマウントの後頭部にメタルキャノンを放った。
「ガッ!?」
ロックマウントは脳震盪を起こしたのかそのままうつ伏せに倒れる。
しかし、身動ぎをしているのでまだ生きているのが分かった。
ロックマウントは総合的にはデジモンの成長期よりは強い。
ドルモンの攻撃は鉄球を放つ物理的な攻撃だ。
このままドルモンが攻撃を続けても止めを刺すまで苦労するだろう。
だけど、
「こいつで止めだ! カードスラッシュ!」
俺はあるモンスターカードをスラッシュする。
それは、
「ティラノモン! 『ファイヤーブレス』!!」
ティラノモンのカードをスラッシュし、一時的にティラノモンの必殺技をドルモンが使えるようにする。
「はぁああっ!!」
ドルモンの口から炎が吐き出される。
その炎はロックマウントを覆いつくした。
「グォッ!? グォォォォォォォッ!?」
ロックマウントは苦しそうな声を上げるが、脳を揺さぶられているのでまともに動けない。
そのまま炎に焼かれ、ロックマウントは息絶えた。
それを確認すると、俺は葵さんに向き直る。
「とまあ、こんな感じでデジモンのカードを使ってパートナーに他のデジモンの能力を付加させたり、一時的にパワーアップさせることができるんだ」
「おおっ………!」
葵さんは感心したような声を上げる。
「私の知らないことが一杯あったんだね!」
嬉しそうにそう言う葵さん。
「そう言えば、リュウダモンは進化できるの?」
俺はふと気になった事を尋ねる。
「えっと、一回だけ成熟期に進化したことはあるよ。でも、そのすぐ後にお別れしちゃったから…………」
「なるほど、『切っ掛け』は掴んでるわけか…………」
そのまま一時間ほど近付いてきた魔物を倒しながら待っていると、魔法陣が床に浮かび上がる。
「「「「ッ!?」」」」
俺達は一瞬警戒するが、その場にメルド団長やクラスメイト達が現れる。
「帰ってきたの?」
「戻ったのか!」
「帰れた……帰れたよぉ……」
クラスメイトはそれぞれがホッとしたり、中には泣き出したりする者もいた。
「メルド団長! 皆!」
俺は駆け寄るが、皆は明らかに疲弊していた。
「おお! お前達、無事だったか!」
メルド団長は俺達の姿を見て安堵の息を零す。
だが、ふと俺達の近くに居るドルモンとリュウダモンに目が行き、
「ッ! 魔物!?」
咄嗟に腰の剣を抜こうとしたので俺は思わずドルモン達の前に立ちはだかった。
「待ってください! ドルモン達は俺達のパートナーです!」
「パートナー………?」
メルド団長は怪訝そうな視線を向ける。
「本当です! 本当に久し振りに会えた、私達の友達なんです!」
葵さんも必死にメルド団長を説得する。
「…………信じていいんだな?」
メルド団長の重々しい声の質問に、
「少なくとも、今は味方です」
俺はそう返した。
そう言うと、メルド団長は剣の柄から手を離し、
「わかった、今は脱出が最優先だ。だが詳しい話は後で聞かせてもらうぞ」
「はい」
クラスメイト達はその場で座り込んでいる者達も居たが、メルド団長の一喝で迷宮脱出を始める。
俺達もそれに続く。
しかし俺はその時気付かなかった。
ハジメの姿が、その中に無かったことに……………
迷宮から皆と共に脱出した俺は、そういえばと友人の姿を探す。
だが、いくら探してもハジメの姿は見当たらない。
そこで気を失っている白崎さんを背負っている天之河の近くに居た八重樫さんを見つけた。
「八重樫さん!」
「あ………黒騎君………」
八重樫さんは沈んだ表情をしている。
「八重樫さん、ハジメはっ………!?」
俺が問いかけると、八重樫さんは目を伏せた。
そして、
「南雲君は……………いないわ…………」
絞り出したその声に俺は衝撃を受けた。
「なっ………!?」
「トラップに掛かって転移した先で、ベヒモスっていう魔物に襲われて、皆が脱出する隙を作る為に南雲君がベヒモスの足止めを買って出て、錬成を使って足止めしてたんだけど、南雲君を脱出させるために放った魔法の一斉射撃の内の一発が逸れて南雲君に直撃してしまったの…………その時のベヒモスの一撃が橋を壊して南雲君はそのまま奈落の底に………」
「そんな………ハジメ…………!」
「俺達がこうして生きていられるのも、南雲のお陰だ………! だからこそ俺達は南雲の死を乗り越えて前に進まなきゃいけない!」
天之河の言葉は確かに正しいのかもしれない。
でも、俺はそこまで諦めは良くない。
俺は足を迷宮の入り口に向ける。
すると、肩を掴まれた。
「待て! 何処に行くつもりだ!?」
「離せ。俺はハジメを探しに行く!」
「話を聞いていたのか!? 南雲はもう………!」
「お前達が見たのはハジメが橋から落ちる所までだ。死んだところを見たわけじゃない」
「だが、あの高さから落ちて南雲が無事とは思えない! いや、例え生き残ったとしても、あの階層以下の魔物と戦って南雲が勝てるとは思えない……! だから………」
「確かにハジメじゃ魔物には勝てないかもしれない。だが、勝てないからと言って生き残れないと思うのは早計だ」
「何を………!」
「お前とこれ以上問答するつもりは無い。俺はハジメを助けに行く」
俺は天之河を振り切って迷宮へ向かおうと、
「待て」
した瞬間、メルド団長に肩を掴まれ振り返させられる。
「なに……かはっ!?」
振り向かされた瞬間、腹部に衝撃が走り、気が遠くなっていく。
気付けば腹部にメルド団長拳が突き刺さっていた。
「すまんな。お前達の身を預かる者として、これ以上の犠牲者は出せんのだ」
その言葉と共に、俺の意識は闇に落ちた。
園部 優花はどちらのヒロイン?
-
オリ主
-
ハジメ