ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第52話 快楽の試練

 

 

 

天之河達の琥珀の柩を壊すと、そう大した時間を置かずに3人が目を覚ました。

 

「……あ? あれ、香織? 雫? ここは? 俺は、二人と……」

 

「んあ? どこだ、ここは? 俺は、確か……」

 

「え? そんな、恵里はっ、恵里……」

 

どうやら3人は理想の世界にどっぷりと浸かっていて、一瞬夢と現実の区別がつかなくなっている様だ。

これでは試練を突破する確率は、ほぼゼロに等しかっただろう。

暫くして3人が現実を認識すると、坂上は一度大きく溜息を吐いてガッカリしたようだが、すぐに気を取り直し、天之河は悔し気に唇を噛み締める。

谷口さんは直ぐに笑顔を浮かべたが、その笑顔は俺から見ても痛々しく、白崎さんと八重樫さんが耐え切れずにギュッと抱きしめていた。

すると、地面に魔法陣が現れた。

全員の試練が終わったことで、次のエリアに飛ばされるのだろう。

 

「天之河、谷口、省みている時間はないぞ。備えろ。でないと、お前らの望みは本当の意味で潰えることになる」

 

「っ……ああ、わかってる」

 

「う、うん。そうだね!」

 

ハジメが、特に夢の内容を引き摺っている2人に声を掛けると、再び転移の光が視界を埋め尽くした。

 

 

 

 

 

気が付くと、俺達は再び樹海の中にいた。

今度はスライムでは無いし、俺の周りにも他のメンバーは全員いる。

 

「今回は全員いるみたいだな」

 

ハジメがそう言う。

 

「……ハジメ、偽物は?」

 

ユエがそう聞いた。

聞いた話では、入り口から転移した直後は、魔物に変えられた俺達の偽物が居たらしい。

 

「いや、大丈夫みたいだ。俺の眼も感覚も全員本物だと言ってる」

 

「ハジメさんがそう言うなら大丈夫ですね」

 

シアが安堵したように言う。

その言葉からは、ハジメへの絶対の信頼が伺える。

その言葉に、照れ隠しなのか、

 

「自分でも気をつけろよ?」

 

と肩を竦めていた。

それから、全員に出発の号令をかける。

目標は、明らかに目立つ大きな樹だ。

おそらく次のエリアへの入り口だろう。

しかし、そのハジメの号令に応えないのが2人いた。

天之河と谷口さんだ。

2人の気持ちは分からなくもないが、そのような心情で大迷宮の探索をするのは自殺行為だ。

 

「天之河、谷口。お前等やる気あんのか?」

 

ハジメもそれを感じていたのか2人にそう言う。

 

「なっ、あ、あるに決まってるだろ!」

 

「え? あ、あるよ!」

 

2人はそう反発するが、

 

「ここは大迷宮だ。一歩踏み込んだ先、一秒後の未来、そこに死が手ぐすね引いて待っているような場所だ。集中できねぇなら、攻略は今ここで諦めろ。無駄死にするだけだ」

 

「ま、まて、俺は……」

 

「何をどう言い訳したところで、さっきの試練をお前がクリアできなかったという事実は変わらない。なら、最低でも必要なのは残りの全てを踏み越えてやるという決意だ。今のお前等にはそれが見えない。気概のない奴はただの足手纏いより質が悪い」

 

「……俺は」

 

「出来そうなら大迷宮の外までゲートを開いてやるし、使えなくても結界くらいは敷いてやる。進むか引くか、今決めろ。惰性で進むことは俺が許さない」

 

追い打ちとも思えるハジメの言葉。

しかし、それは全て事実であり、そんな心情で進んだとしても確実に命が無い。

すると、その言葉に気力を取り戻したのか、何度か深呼吸し、

 

「南雲。もう大丈夫だ。俺は先に進む!」

 

「鈴も行く。やる気十分だよ!」

 

「そうか。ならいい。集中を切らせるなよ」

 

彼らの言葉にハジメはそれだけ言うと先に進んだ。

しばらく目的の樹に向かって歩いているが、おかしなことにトラップ所か魔物の1体にも遭遇していない。

 

「う~む、何だか嫌な感じじゃの」

 

「うん。何だか、オルクスで待ち伏せされた時みたい」

 

「確かに……魔物の気配も全くないものね」

 

現状を訝しむティオの言葉に鈴が呟き、八重樫さんも同意する。

 

 

「一応、蜘蛛型ゴーレムを先行させているんだが特に何もないな。このまま何事もなくとは流石にいかないと思うが……いっそのこと、巨樹までの樹海を全部焼き払うか?」

 

「南雲……俺が言うのもなんだけど、取り敢えず面倒いから壊しとけみたいな発想はどうかと思うんだ」

 

「ああ、もうあの灼熱地獄は勘弁だぜ。マジで鈴の結界があっても生きた心地がしなかったんだからな」

 

ハジメの案に天之河と坂上が異を唱える。

少し前に出たトレントの様な魔物をハジメが焼き払った時のことを思い出したのか、坂上は顔を青くしている。

ある意味ハジメの案は手っ取り早いって言ったら手っ取り早いんだがな。

ハジメは渋々その案を却下した。

それから少しして、

 

「……ん? 雨か?」

 

「ほんとだ。ポツポツ来てるね」

 

天之河と谷口さんがそんな事を言い出した。

 

「いや、ここは迷宮内だぞ。雨なんか降るわけが………」

 

俺がそう言い掛けた瞬間、頬に水滴が落ちるのを感じた。

いや、水滴の割には滑り気を感じる。

 

「ハジメ!」

 

それに嫌な予感を覚えた俺は、咄嗟にハジメに警告のつもりで呼びかける。

 

「チッ! 香織!」

 

「うん! 〝聖絶〟!」

 

ハジメの言葉で即座にドーム状の結界を張る白崎さん。

その直後、にわか雨の様に土砂降りとなり、結界の表面をドロリと粘り気のある液体が垂れて行く。

 

「ハジメ君、周りがッ」

 

白崎さんが気付いたように叫ぶ。

その声に従って周りを見渡すと、樹々、草、地面、あらゆる場所から乳白色の何かが滲み出てきた。

 

「嘘ッ!? 私の気配感知に引っかからないなんて!」

 

優花が驚愕の声で叫ぶ。

 

「スライムか? クソ、気配遮断タイプにしても、園部の気配感知どころか魔眼石にすら感知されないなんてどんな隠密性だよ」

 

「大士! 地面からも!」

 

ハジメの悪態と、ドルモンの警告が響く。

地面を見ると、結界内の地面からも乳白色のスライムが滲み出ていた。

直後、そのスライムが風呂敷の様に体積を広げて襲い掛かってくる。

 

「チィッ!」

 

俺は咄嗟に拳にデジソウルを纏って右ストレートを繰り出すと、殆ど手応え無くスライムが弾け飛んだ。

 

「きゃっ!?」

 

「うっ!?」

 

その際に飛び散ったスライムの破片が葵と優花に振りかかってしまう。

後自分にも少し。

 

「あっ、すまん! 大丈夫か!?」

 

俺は思わず謝ると、

 

「仕方ないよ、不可抗力!」

 

「戦いの最中に返り血を浴びるなんて珍しくはないわよ!」

 

2人はそう言って気にしないように言う。

とは言え、魔物の体液を浴びるのは、体にはあまり良くないだろうと思う。

魔物の肉を食べてきた優花はともかく、葵や俺は命に係わる危険性だってある。

その為、拳やメタルキャノンなどの物理攻撃では飛沫が飛び散り、体液を浴びることになるだろう。

その事を証明する様に坂上が殴り飛ばしたスライムが飛び散り、

 

「ちょっ、バカ、龍太郎! こっちにも飛び散って来ただろう!」

 

「この脳筋! 思いっきり掛かったじゃない!」

 

「お? すまん、すまん!」

 

「うぇ~、ドロドロしてて気持ち悪いよぉ」

 

八重樫さんや天之河、谷口さんに振りかかった。

 

「全く、大丈夫か、しず……」

 

「ええ、大丈夫よ、光輝。こいつら案外簡単に死ぬわ……ってどうしたの?」

 

「えっ、いや、何でもないぞ! ああ、何でもない!」

 

「?」

 

天之河が慌てた様に八重樫さんから視線を逸らす。

まあその理由は分かっているので、仕方ないとは思う。

ようは絵面がヤバいのだ。

年頃の少女達に乳白色のスライムの体液………つまり白濁液塗れになっている。

つまりそう言う事である。

俺は気を取り直してスライムを排除する方法を考える。

 

「…………やっぱり焼き尽くすのが一番かな」

 

俺はそう言うと、

 

「カードスラッシュ! ダークティラノモン! ファイヤーブラスト!!」

 

ダークティラノモンのカードをスラッシュしてドルモンに火炎放射能力を付与する。

 

「ファイヤーブラスト!!」

 

ドルモンが勢いよく口から炎を吐き出す。

 

「ハックモンもお願い! 私もやるわ!」

 

「ああ! ベビーフレイム!!」

 

ハックモンは、アグモンと同じ必殺技である、口から火球を吐く技でスライムたちを焼いていき、優花は火魔法を今回は武器に付与せずに直接使ってスライムを焼き払っていく。

 

「ベビーフレイム!」

 

「プチファイヤー!」

 

「ベビーブレス!」

 

「ナイトオブファイヤ―」

 

アグモン、ガブモン、ドラコモン、インプモンの、炎系の必殺技を持つデジモン達も協力してスライムを焼く。

そんな彼らの協力もあり、結界内のスライムは全滅させることが出来たが、結界の外はまるで海の様に乳白色で染まっている。

 

「さて、どうするか…………」

 

ハジメが外を眺めながら呟く。

スライムの雨は未だに降り続いており、止む気配は無い。

天井から次から次へと染み出してきているのだ。

 

「このまま進むわけにも行かないからな…………面倒だけど、全部焼いて進むしか無いんじゃないか? デジモン達が居れば、そこまで時間は掛からないだろうし。その前にこのスライムの雨をどうにかしなきゃいけないわけだが………」

 

俺がそう言うと、

 

「そっちは俺に任せてくれ。天井を錬成してスライムが出てこないようにする」

 

ハジメはそう言うと、蜘蛛型のゴーレムを天井に貼り付け、天井を錬成し始めた。

ハジメの睨んだ通り、錬成した所からはスライムが染み出してくることは無い。

 

「よし、後は地上だ。アグモン!」

 

「おう!」

 

「私達も行くよ! ガブモン!」

 

「ああ!」

 

ハジメと白崎さんに進化カードを渡す。

 

「「カードスラッシュ! 超進化プラグインS!!」」

 

2人が同時にカードをスラッシュする。

 

――EVOLUTION

 

「アグモン進化!」

 

「ガブモン進化!」

 

アグモンとガブモンが成熟期へ進化する。

 

「グレイモン!!」

 

「ガルルモン!!」

 

2体は結界から飛び出すと同時に辺りは焼き払い始める。

 

「メガフレイム!!」

 

「フォックスファイヤー!!」

 

すると、ハジメがユエに、香織がティオに進化カードを渡す。

 

「…………ん、ブイモン」

 

「おう!」

 

「ゆくぞ、ドラコモン」

 

「うむ!」

 

2人がそれぞれのパートナーに声を掛ける。

 

「「カードスラッシュ! 超進化プラグインS!!」」

 

――EVOLUTION

 

「ブイモン進化!」

 

「ドラコモン進化!」

 

2体が成熟期へ進化する。

 

「ブイドラモン!!」

 

「コアドラモン!!」

 

「ブイブレスアロー!」

 

「ブルーフレアブレス!!」

 

ブイドラモンは後方を。

コアドラモンは空中を飛び回りながらスライムを焼き尽くしていく。

続けてユエがシアに。

ティオが優花に進化カードを差し出し、2人は受け取るとそれを同じようにDアークへスラッシュする。

 

「「カードスラッシュ! 超進化プラグインS!!」」

 

――EVOLUTION

 

「クダモン進化!」

 

「ハックモン進化!」

 

光に包まれ、成熟期に進化。

 

「レッパモン!!」

 

「バオハックモン!!」

 

更に俺は、

 

「シア! こいつを使え!!」

 

1枚のカードを投げ渡す。

 

「はいです! カードスラッシュ!」

 

シアは受け取ったカードをそのままDアークにスラッシュする。

 

「マスターティラノモン! マスターファイアー!!」

 

シアがスラッシュしたマスターティラノモンのデータがレッパモンに送られる。

 

「マスターファイアー!!」

 

本来は炎を吐く能力がないレッパモンが、口から高熱の炎を吐く。

その炎はスライムを包み、焼き尽くしていく。

 

「バーンフレイム!!」

 

バオハックモンも負けじと炎を吐いてスライムを減らしていく。

そして最後に、八重樫さんと葵がカードを受け取り、

 

「「カードスラッシュ!! 超進化プラグインS!!」」

 

――EVOLUTION

 

「コテモン進化!」

 

「リュウダモン進化!」

 

「ディノヒューモン!!」

 

「ギンリュウモン!!」

 

2体が成熟期に進化すると、

 

「雫、これ使って!」

 

葵が八重樫さんにカードを渡す。

 

「ありがとう!」

 

八重樫さんはそれを受け取り、

 

「カードスラッシュ!」

 

迷いなくそのカードをスラッシュする。

 

「メラモン! バーニングフィスト!!」

 

ディノヒューモンの両腕に炎が宿り、それを放ってスライムを焼き尽くす。

 

「私も、カードスラッシュ!」

 

葵が別のカードを取り出し、スラッシュした。

 

「フレアリザモン! フレイムタワー!!」

 

ギンリュウモンが炎を発し、辺り一帯を炎の柱で包む。

 

「最後は俺だ!」

 

俺は右手にデジソウルを発生させる。

 

――EVOLUTION

 

「デジソウルチャージ!!」

 

Dアークから放たれる光がドルモンを包む。

 

「ドルモン進化!」

 

俺のデジソウルでドルモンは成熟期へ進化する。

 

「ラプタードラモン!!」

 

サイボーグ型の獣竜が空中に浮くと、

 

「カードスラッシュ! デスメラモン! ヘヴィメタルファイアー!!」

 

ラプタードラモンが空中から液体となった超高温の重金属を吹き掛ける。

合計9体もの成熟期デジモンによる火炎攻撃により、乳白色の海だった樹海はあっという間に炎に包まれ、山火事など比にならない程の勢いで焼失していく。

とりあえず見える範囲にあるスライムを焼き尽くした事を確認すると、

 

「ん~、どうやら、大体焼き尽くしたみたいだな」

 

「もう、結界解いても大丈夫かな?」

 

白崎さんがハジメに確認を取る。

 

「いや、もうちょい維持しててくれ。地面の下に潜んでないとも限らないからな」

 

ハジメがそう言うと、天井から蜘蛛型ゴーレムが糸を垂らして降りてくる。

それらが地面に着地すると、目標の巨樹に向かって一斉に地面を錬成し始めた。

 

「目標の巨樹まで錬成するのに少し時間がかかる。あのスライムの総量がわからない以上、適時撃破するより少し時間を割いてでも襲撃対策をしておいた方が面倒がなくていいだろう。悪いがその間、念のため結界の維持は頼むな、香織」

 

「了解だよ」

 

ハジメの言葉に白崎さんが頷く。

 

「錬成の完了には少し時間がかかる。今のうちに身体を休めておけ。グレイモン達は悪いが周りの警戒を頼む。スライムが出てきたら遠慮なく燃やせ」

 

ハジメがそう言って腰を下ろしたので、俺や他のメンバーもその場に座り込む。

ふと見れば葵と優花がタオルを取り出して被った粘液を拭き取っていた。

つーか、このスライムは本当に何なんだ?

色的にも狙ってるとしか思えないぐらいなんだが…………

現に俺もこうやって見ているだけでもムラムラと…………

って、俺は大迷宮の中で何を考えてるんだ!?

だけど、妙に体も熱く…………

 

「ッ!?」

 

俺はその瞬間異変を感じた。

異常なほどに葵や優花に襲い掛かりたくなる衝動が沸き上がってくる。

いや、性欲が増長されていると言うべきか。

身体の熱さと共に、心臓が痛いほどに脈打っている。

俺は思わず左手を地面に突きながら右手で胸を握りしめる。

 

「大士!?」

 

俺の様子に気付いたのか、優花が駆け寄ってこようとしている。

でも、今は拙い。

 

「来るなっ!!」

 

「ッ!?」

 

俺は思わず声を荒げてしまう。

優花は驚いて足を止めた。

 

「怒鳴ってすまない…………だけど、今は本当に拙いんだ…………」

 

俺は自分の中の衝動を堪えつつ、息を整えて落ち着こうとする。

ユエやシアもハジメに抱き着き、顔を赤らめている。

八重樫さんは正座をして瞑想で精神統一をしているらしく、微動だにしない。

そんな八重樫さんに天之河も血走った眼で手を伸ばそうとしているし、谷口さんは地面に倒れて見悶え、坂上がそんな谷口さんに這い寄っている。

 

「くそったれ。これがあのスライムの真髄かっ」

 

ハジメがそう叫ぶと、重り付きのワイヤーを投げて天之河と坂上を張り付けにして動きを封じる。

だが、心の中におっさんを飼っていると自称する谷口さんも八重樫さんにヤバい顔で近付いていたのでハジメは谷口さんも磔にした。

メンバーの中で平然としているのは、ハジメ、白崎さん、優花の〝毒耐性〟を持つ3人。

そして、

 

「むぅ、ご主人様よ、無事かの? どうやら、あの魔物の粘液が強力な媚薬になっておったようじゃな」

 

そう言って何故か平然と近付くティオ。

ハジメも目を丸くしている。

 

「強烈な快楽で魔法行使すら阻害しておる。時間が経てば経つほど正気を失って快楽のまま性に溺れることになるじゃろうな。厄介なこと極まりないのぅ。あの物量で襲われては、全く飛沫を浴びないなど不可能じゃろう。戦闘が長引けばそれだけで全滅じゃ。生き残っても仲間がおれば交わらずにはおられんじゃろうから、その後の関係はかなり危うくなりそうじゃしの」

 

「あ、ああ、そうだな……」

 

「うむ。おそらく、それが狙いじゃろう。快楽に耐えて仲間と共に困難を乗り越えられるか……あるいは快楽に負けても絆を保てるか……いずれにしろ性格の悪いことじゃ。〝解放者〟というのは本当に厄介な連中じゃの。もっとも、それもご主人様の毒耐性には敵わんかったようじゃが」

 

「……なぁ、ティオ」

 

「む? なんじゃ、ご主人様よ」

 

「あの粘液がこの事態を引き起こしているという推測は納得できる。俺もそう思うからな……だが、だがな。何でお前は平然としてるんだ? 俺の記憶が確かなら、お前が一番あの粘液を浴びていたと思うんだが」

 

「確かに、妾の体も粘液の効果が発揮されておる。事実、体を駆け巡る快楽に邪魔されて魔法がまともに使えんからの。じゃがのぅ、舐めてくれるなよ、ご主人様よ。妾を誰だと思っておる」

 

「ティオ……」

 

「うむ、流石は己のパートナー。この程度の試練など…………」

 

ハジメとティオの話を聞いていたコアドラモンも、誇らしげに称賛しようとしていた。

だが、

 

「妾はご主人様の下僕ぞ! この程度の快楽、ご主人様から与えられる痛みという名の快楽に比べれば生温いにも程があるわ!! 妾をご主人様以外に尻を振る軽い女と思うてくれるなよぉ!!!」

 

「そうっすか」

 

やはりティオはティオだった。

まあ、お陰で俺の方も少し頭が冷えた。

 

「流石ティオさん、いや、クラルスさんっすわ。マジ、パないっすわ。取り敢えず、それ以上近寄らないでもらえます?」

 

「け、敬語じゃと!? しかも、族名で呼ばれた! 半端ない距離感じゃ! まさか、このタイミングで他人扱いとはっ。はぁはぁ、マズイ、快楽に溺れそうじゃ……」

 

何故か試練以上に快楽に堕ちそうになるティオ。

 

「……………………………」

 

誇らしげに語ろうとしていたコアドラモンも二の句が告げなくなり黙り込む。

 

「なあ、コアドラモン。お前本当にこいつがパートナーでよかったのか?」

 

グレイモンが思わず問いかける。

 

「……………………『これ』が無ければ、本当に何処に出しても恥ずかしくない自慢できるパートナーなのだがな…………」

 

ティオの唯一の欠点にコアドラモンは溜息を吐いた。

 

「要は、この衝動は試練の一環って事でいいんだよね?」

 

多少頬を赤らめてはいるが、割と平気そうな顔で葵が言った。

 

「葵、あなた平気なの?」

 

優花は不思議そうに問いかける。

 

「平気って程でもないけど、オルクスで大士を押し倒しちゃったときの衝動に比べたら、全然大したことないから大丈夫………!」

 

葵がそう言ったので、その時の事を思い出し、思わず精神が崩れかけた。

神水を飲めば治るのだろうが、ここにきて道具に頼るのも何か癪だ。

意味は無くとも耐える事に決めた。

 

 

 

 

 







第52話の完成。
今回は快楽の試練と成熟期の総進撃でした。
進化カードが2枚しか無いと成熟期への進化が辛い。
さて、次回がVS G軍団ですがはてさて。
次もお楽しみに。


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