ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第54話 昇華魔法

 

 

新たに現れた枝を登っていく。

先頭を歩くハジメの両側には白崎さんとユエがぴったりとくっ付いており、片時も離れようとはしない。

先程の試練の、感情の反転により、一時でもお互いを憎んでしまった事を埋め合わせている様に思える。

そんな光景に剥れたシアとティオが背後から抱き着く。

それを八重樫さんや天之河達が何とも言えない表情で見ていた。

因みに最後尾を歩く俺もハジメの事は言えない。

俺の両腕には、葵と優花がしっかりと抱き着いているからだ。

まあ、それを愛しく思っている俺も大概だが。

新たに出来た枝の通路を登り切ると、今までと同じように洞が出来ていた。

更に同じようにその洞へ入ると転移陣が起動し、光に包まれる。

次の瞬間目の前に広がったのは、庭園だった。

面積は学校の体育館程度。

小さな水路や芝生の地面が美しい風景を作っている。

するとティオが底辺の端まで歩いていき、その外を見下ろすと、

 

「ご主人様よ。どうやらここは大樹の天辺付近みたいじゃぞ?」

 

そう言うティオの言葉に俺達も端まで行って見下ろすと、雲海の様に樹海を覆う濃霧の光景があった。

 

「こりゃ凄いな………」

 

俺はその光景に思わず呟く。

 

「うん………素敵な光景だね」

 

俺の言葉に同意する様に葵が呟く。

 

「……………でもおかしくない? 飛空艇から見た時は、樹海の中にこんな大樹なんて見えなかった筈だけど…………」

 

そう言った優花の言葉にそう言えばそうだと疑問が浮かぶ。

 

「……なるほど。隠蔽する魔法でも働いてるってことか」

 

「……ん。闇系統にそういう魔法はある……魂魄魔法ならもっと……あるいは空間をずらしてる?」

 

「もしくはその両方か…………」

 

ハジメとユエの推測に俺も口を挟む。

すると、ハジメが水路に囲まれた小さな島を見つめ、

 

「やっぱり、ここがゴールか」

 

その呟きにそれぞれが………特に天之河達のパーティーが感嘆の息を漏らしている。

その島に足を踏み入れると、そこに立てられていた石板から魔力の光が水路を伝い、それ自体を輝かせる。

 

「………水路自体が魔法陣になっているのか」

 

俺がそう呟いた時、頭の中に新しい神代魔法の知識が刻まれる。

どうやら俺も攻略者として認められた様だ。

これで俺が得た神代魔法は4つ目。

魔力無いから使えないけどな。

宝の持ち腐れにも程があるだろう。

ともかく、これで大迷宮は6つ目を攻略したことになる。

そう思っていると、目の前の石板に絡みついた樹がうねり始め、人の胸像の様な形を取った。

見た感じ女性の様だ。

 

『まずは、おめでとうと言わせてもらうわ。よく、数々の大迷宮とわたくしの、このリューティリス・ハルツィナの用意した試練を乗り越えたわね。あなた達に最大限の敬意を表し、ひどく辛い試練を仕掛けたことを深くお詫び致します』

 

その女性の胸像が口を開いた。

恐らく今までと同じ、解放者が遺した言葉の様だ。

 

『しかし、これもまた必要なこと。他の大迷宮を乗り越えて来たあなた方ならば、神々と我々の関係、過去の悲劇、そして今、起きている何か……全て把握しているはずね? それ故に、揺るがぬ絆と、揺らぎ得る心というものを知って欲しかったのよ。きっと、ここまでたどり着いたあなた達なら、心の強さというものも、逆に、弱さというものも理解したと思う。それが、この先の未来で、あなた達の力になることを切に願っているわ』

 

まあ普通にありがたいお言葉なんだろうが、ハジメは面倒くさくなったのかキョロキョロと辺りを見回している。

攻略者の証でも探しているのだろう。

 

『あなた達が、どんな目的の為に、私の魔法―― 〝昇華魔法〟を得ようとしたのかは分からない。どう使おうとも、あなた達の自由だわ。でも。どうか力に溺れることだけはなく、そうなりそうな時は絆の標に縋りなさい』

 

やがてハジメはじれったくなったのか、証があるであろう石板をチラチラと見始める。

その内空気を読まずに強引に取り出しそうだ。

すると、

 

『わたくしの与えた神代の魔法〝昇華〟は、全ての〝力〟を最低でも一段進化させる。与えた知識の通りに。けれど、この魔法の真価は、もっと別のところにあるわ』

 

次に出たその言葉に、ハジメはクワッと目を見開きながら食いついた。

現金な奴である。

 

『昇華魔法は、文字通り全ての〝力〟を昇華させる。それは神代魔法も例外じゃない。生成魔法、重力魔法、魂魄魔法、変成魔法、空間魔法、再生魔法……これらは理の根幹に作用する強大な力。その全てが一段進化し、更に組み合わさることで神代魔法を超える魔法に至る。神の御業とも言うべき魔法――〝概念魔法〟に』

 

ぶっちゃけ魔法を使えない俺には理解できん。

ハジメは何となく理解はしてるようだが。

 

『概念魔法――そのままの意味よ。あらゆる概念をこの世に顕現・作用させる魔法。ただし、この魔法は全ての神代魔法を手に入れたとしても容易に修得することは出来ないわ。なぜなら、概念魔法は理論ではなく極限の意志によって生み出されるものだから。わたくし達、解放者のメンバーでも七人掛りで何十年かけても、たった三つの概念魔法しか生み出すことが出来なかったわ。もっとも、わたくし達にはそれで十分ではあったのだけれど……。その内の一つをあなた達に』

 

彼女がそう言った直後、石板の中央がスライドして懐中時計の様なものが出てきた。

ハジメがそれを取ると、しげしげと見つめる。

 

『名を〝導越の羅針盤〟――込められた概念は〝望んだ場所を指し示す〟よ』

 

その言葉に俺は………俺達は心臓が跳ねたのを感じた。

 

『どこでも、何にでも、望めばその場所へと導いてくれるわ。それが隠されたものでもあっても、あるいは――別の世界であっても』

 

「っ……」

 

その言葉に誰かが息を呑んだのが分かる。

 

『全ての神代魔法を手に入れ、そこに確かな意志があるのなら、あなた達はどこにでも行ける。自由な意志のもと、あなた達の進む未来に幸多からんことを祈っているわ』

 

そう言い終えると、樹で出来た胸像は再び元の石板に絡みつく樹へと戻っていった。

それから暫く静寂がその場を支配する。

すると、

 

「ユエ、念の為に聞くが……昇華魔法を使えば……空間魔法で………………世界を越えられるか?」

 

ハジメが俺達地球組の誰もが思っているであろう事を、魔法のエキスパートであるユエに問いかけた。

 

「…………………」

 

ユエはその問いに直ぐには答えず、目を瞑ってしばし思考に没頭する。

ハジメの期待に、ユエは自分の持つ知識を総動員して可能性を探っているのだろう。

やがて結論が出たのか、ゆっくりと瞼を開くとハジメと目を合わせ、

 

「…………ごめんなさい」

 

「そうか……」

 

ユエから出た答えは否であった。

だが、ハジメもそれは予想していたのか落胆は無い。

しかし、ユエはハジメの期待に応えられなかった事を悔いているのか、俯いてしまう。

ハジメはそんなユエの頭を撫でながら、

 

「なに、問題ないさ。あわよくばって思っただけだ。必要な神代魔法はあと一つ。それを手に入れればいいだけだからな。なんにせよ、ユエがそんな顔をする必要はねぇよ」

 

気にしないようにそう言った。

ユエは嬉しそうにその手を受け入れている。

そこへ、

 

「な、なぁ、南雲。さっきの話……その概念魔法が使えるようになれば……」

 

天之河が恐る恐る声を掛ける。

 

「ああ、帰れるだろうな。少なくとも、転移先はこの羅針盤が教えてくれるだろう」

 

「そう……か……」

 

ハジメの言葉に天之河は希望を見た表情になった。

すると、

 

「あ、あの、南雲君は、その、帰るとき……えっと……」

 

谷口さんが遠慮がちに口を開く。

何を言いたいのかを察したハジメは答えた。

 

「安心しろ。定員制限やらデメリットでもない限り、ついでに全員連れ帰ってやるよ」

 

「そ、そっか、えへへ。ありがとう、南雲君」

 

「それより、やけに自信なさげにそんなことを聞いて来るってことは……お前等、ダメだったな?」

 

「「「うっ!?」」」

 

ハジメの言葉に図星だったのか天之河達は胸を押さえる。

刻み込まれた知識からすれば、天之河達のステータスでも昇華魔法を使えば他の大迷宮でも攻略できる可能性が出てくる。

それでも自信無さげに聞いてきたという事は、駄目だったという事だろう。

 

「とりあえず俺らのパーティーは全員クリアできたみたいだな」

 

俺達を一通り見回して、これと言って落ち込んでいる者が居ないことからそう判断するハジメ。

天之河は、その事実に何処か納得いかなそうな顔をしている。

だが、ハジメはそれをスルーし、

 

「とにかく、一度フェアベルゲンに戻って、少しゆっくりしよう。ゴキブリの大群は軽くトラウマだ。精神ダメージがヤバイ……香織とユエに癒されたい」

 

「うん! いっぱい甘えさせてあげるね!」

 

「くふふ……いっぱいして上げる」

 

「わ、私も、膝枕とか! いろいろしますよぉ! 何ならその先も!」

 

「ふむ、ご主人様は疲れておるのじゃな。よかろう。妾を椅子替わりにしてくつろぐがいい。別に足場でもいいんじゃよ? 好きなだけ踏みつけてくれていいんじゃよ?」

 

いつも通りのハジメ達に俺は軽く苦笑するが、

 

「大士、私達も………ね?」

 

「今回は精神的にキツかったから、お互いに癒し合いましょ?」

 

葵と優花の言葉に、今すぐ押し倒したくなる衝動を堪えるのは、快楽の試練を耐えるより大変だった。

俺達はそのまま、現れた出口へのショートカットの転移陣に乗り、大迷宮を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

フェアベルゲンに用意された客室で、俺は目を覚ました。

俺の両側には葵と優花が一糸纏わぬ姿でスヤスヤと寝息を立てている、

昨日は大迷宮から戻ってくるなり、食事と風呂を済ませて各自休憩となったのだが、俺達は大迷宮での精神的ダメージを癒すために、結構遅くまでいたしていた。

俺は2人を起こさないようにベッドを抜け出す。

俺は床に乱雑に脱ぎ捨てられた自分の衣服を拾うと手早く身に着け、部屋を出た。

未だ早朝なだけあり、出歩いている人は少ない。

俺が外に出て少しすると、

 

「大士!」

 

後ろからドルモンが走ってくる。

おそらく俺が外に出たことを窓から見て追いかけてきたのだろう。

 

「ドルモン。おはよう」

 

「うん、おはよう! 大士はこんな早くにどうしたの?」

 

挨拶を交わすとドルモンがそう問いかけてくる。

 

「ああ、ちょっと確認をな」

 

「確認?」

 

ドルモンが首を傾げながら俺の後を付いて来る。

その途中、何故かハジメが宙に浮いた十字架に八重樫さんを磔にして運んでいる所を目撃したが、まあ、ハジメのやることだからとスルーした。

俺は泉の畔にある人目の付かなそうな所まで来ると、右手に意識を集中する。

すると、右手にデジソウルが宿り、四角い光の粒子が炎の様に揺らめく。

 

「あ、それって昨日の………!」

 

ドルモンが声を漏らす。

 

「デジソウルだな」

 

俺はそう言う。

 

「ねえ、デジソウルって何なの?」

 

ドルモンはそう聞いてくる。

 

「ドルモン、俺が前世の話をしたことは覚えてるよな?」

 

「うん。大士の前世だと、この世界もアニメの世界だったんだよね? たしか、シリーズの3作目だっけ?」

 

「ああ。それでこのデジソウルなんだが、アニメシリーズの5作目に出てくるものなんだ」

 

「そうなの?」

 

「因みにその作品の主人公は究極体デジモンすら殴り倒すキャラだった」

 

「それ本当に人間?」

 

「俺でも成熟期デジモンは殴り倒せたけどな」

 

俺は冗談交じりにそう言う。

 

「で、ハッキリと明言されているわけじゃないが、デジソウルには身体能力を上げる力もあるみたいなんだ」

 

いくらかの喧嘩番長が強いと言っても、あくまで人間だ。

究極体どころか成熟期デジモンを殴り倒せるだけでもおかしい。

頑丈さや跳躍力も人間離れしてるし、デジソウルに身体強化能力があると考えるのが普通だ。

最終回でも非力な女性キャラがデジソウルでパンチングマシンぶっ壊してたし。

 

「そしてその強化具合も思いの力の強さに比例しているようだ」

 

俺は、葵や優花、ドルモンへの思いを込めると、デジソウルが全身から溢れ出る。

その拳を泉に向かって繰り出すと、拳の直線上の水面が弾け、泉が真っ二つになった。

 

「………………俺も大概人間離れしてきたな」

 

予想以上の威力に俺はポツリと呟く。

確かに力が欲しいとは思っていたが、これは予想以上だ。

だが、強大な力はそれ故に溺れやすい。

大きな力を振るう事には大きな責任が伴う。

慢心せずに行こうと心に刻み込んだ。

 

 

 

 





第54話です。
今回は神代魔法の取得とデジソウルの再確認。
何だかんだでデジソウル便利。
次回から最後の大迷宮に向かいます。
さて、どうなるか………?




オマケ


デジソウルがステータスプレートに反映されてたらこうなってた。
(本編にはまったくかんけいありません?)




黒騎 大士 17歳 男 レベル:番長

天職:デジモンテイマー・喧嘩番長二世

筋力:理不尽

体力:根性

耐性:不条理

敏捷:それなり

魔力:なにそれおいしいの?

魔耐:理解不能

技能:言語理解・融合進化・重力魔法・再生魔法・魂魄魔法・昇華魔法・デジソウル
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