ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第58話 真紅の竜機人! ブリッツグレイモン!!

 

 

 

 

フロストゴーレムを倒して雪煙のトンネルをくぐると、丁度ハジメとアグモンも別の雪煙のトンネルから出てきた所だった。

 

「お、大士ももう終わらせたか」

 

「ああ、拳で盾ごと砕いたからな」

 

「俺が言うのも何だが、お前も大概人間離れしてきたなぁ」

 

「自覚してる」

 

そう軽口を言い合っていると、新しいトンネルが開通し、

 

「大士! 良かった、無事だったのね!」

 

「無事で何よりだ」

 

優花とハックモンが駆け寄ってくる。

 

「ああ。俺もデジソウルを使えるようになってからは強くなってるからな。それでなくてもドルモンが居るんだ。あの程度に後れは取らねえよ」

 

更に続けて、ユエとブイモン、シアとクダモン、ティオとドラコモン、白崎さんとガブモンの順で雪煙のトンネルが開通した。

それから少し時間を置いて葵とリュウダモンが出てくる。

 

「葵!」

 

俺は思わず声を掛ける。

多少の怪我はあるようだが、特にひどい怪我は無いようだった。

 

「あ、大士」

 

「大丈夫だったか?」

 

「うん、ゴーレムの防御力に少し手古摺ったけど、雫に教わった鎧を着てる人を相手にする時の関節狙いで何とか倒せたよ」

 

「そうか………」

 

その言葉を聞いて俺はホッとする。

 

八重樫さんがコテモンに支えられながら血だらけで出てきた。

 

「雫ちゃん!!」

 

血だらけで出てきた八重樫さんに白崎さんは悲痛な声を上げて駆け寄ると、すぐに治癒魔法を使う。

 

「ふぅ、ありがとう、香織。もう大丈夫よ」

 

「よかった。……沢山怪我してたから、あの時のこと思い出して焦っちゃったよ」

 

白崎さんの言うあの時とはオルクス大迷宮で魔人族に襲撃された時の事だろう。

あの時も八重樫さんは大怪我を負っていた。

 

「あの時に比べればずっとマシでしょう? 少なくとも腕一本持っていかれたりはしてないわ。この程度、軽傷、軽傷」

 

「もうっ、雫ちゃんたら……」

 

男前だな八重樫さん。

 

「それにしても、雫ほどの剣士があそこまで心を乱されるとは、拙者達には聞こえぬが、その『声』とやらは、余程厄介なのでござるな」

 

コテモンがそう呟く。

 

「ええ………そうね…………ほんと厄介だわ………」

 

八重樫さんは軽く俯く。

人は誰しも心に光と闇を持っている。

八重樫さんにも何か悩みがあるんだろうな。

まあ、それを乗り越えるのがこの試練の目的なんだが。

 

「八重樫は、もうちょっと適当になった方がいいな」

 

ハジメが突然口を開く。

 

「はい?」

 

「真面目すぎるって言ってるんだ。ただでさえ囁き声で精神やられてんだろ? なら、こういう時は一緒に騒いでリフレッシュしてればいいんだよ。ここには、お前が世話を焼かなきゃならない奴はいねぇんだから」

 

「……」

 

八重樫さんは驚いたのか大きく目を見開いている。

 

「何なら、リラックス出来るようにシアのウサミミを貸してやろうか? 可愛いもの大好きの雫ちゃん?」

 

「っ、うるさいわね! 結構よっ! っていうかそのニヤニヤ笑いを止めなさい!」

 

八重樫さんが真っ赤になって叫ぶ。

こういうのは珍しいな。

そんな八重樫さんを白崎さんとユエがジーッと見ていた。

 

「な、何よ」

 

「……雫ちゃんが赤くなってる。いつもより可愛くなってる」

 

「……ん。ハジメに意地悪されて喜んでる」

 

「ちょっ、喜んでないし、可愛くなんてなってないわよ! 二人してからかわないで!」

 

八重樫さんは抗議するが、2人は疑いの眼差しを向ける。

 

「……また増える?」

 

「うぅ、現状を考えれば今更一人増えたところでとは思うし……それに雫ちゃんならむしろ……」

 

寧ろ増えないと思っている方がおかしい。

八重樫さん自身は認めていない様だが明らかにハジメを意識してるだろう。

時折ハジメに向かって天之河と思わしき攻撃が来るが、ハジメは余裕で回避しつつ状況を静観する。

やがて、辛くも全員が無事試練を突破した天之河達。

全員の回復が終わった後、俺達は門に現れた光の膜に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

【Side 葵】

 

 

 

 

 

次に私が気が付いた時、周りに皆の姿は無かった。

でも、

 

「どうやら分断されたようだな」

 

私の傍らにはリュウダモンが居た。

念のために、デジモンと触れ合っていたのが功を奏したみたい。

周りを伺うと、ここは通路みたいで、2m四方のミラーハウスみたいだった。

多分、他の皆も1人1人分断されていると思う。

 

「………いくよ、リュウダモン」

 

「うむ」

 

私はリュウダモンと共に通路の先へ進みだす。

1人だったら不安だったと思うけど、隣にリュウダモンが居るのはとても心強い。

そのまま10分ぐらい歩いた頃だろうか?

広い部屋に出ると、その部屋の中央に床と天井を繋ぐ太い柱が立っていた。

その柱も氷で出来ていて、私の姿を映し出す。

 

「葵、他に通路は無い様だ」

 

辺りを見回したリュウダモンがそう言うと、

 

「う~ん………この柱が何か関係してると思うんだけど…………」

 

私は部屋の中央にあった柱に近付いて、その氷の柱に映った自分の姿を眺める。

すると、

 

「えっ…………?」

 

柱に映った自分の姿に変化が現れた。

黒髪が蒼銀に。

瞳の色も碧眼へ。

そして背中には真っ白な大きな翼を持った姿へ変化した。

その姿には見覚えがあった。

ハルツィナ樹海の試練で見た夢の中の、『私』の姿だ。

そして次の瞬間、氷の柱に罅が入り、バキィィィィンと甲高い音を立てると共に柱が粉々に砕けてしまった。

 

「きゃっ!?」

 

「葵!」

 

飛んでくる氷の破片から、リュウダモンが前に出て私を護る。

柱が砕け散ると、部屋の奥に通路が現れる。

 

「……………何だったのかな?」

 

「わからん………道は開いたようだが…………」

 

私とリュウダモンは何が起こったのか分からずに首を傾げるだけだった。

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 

 

転移して孤立………というより、ドルモンと一緒に別の場所に飛ばされ、氷の道を進むと氷の円柱がある広い部屋に出た。

 

「見るからに怪しい円柱だな………」

 

俺は用心しながらその円柱へ近付く。

その円柱には自分の姿が映し出され、まるでその円柱の中に自分が居るようにも思える。

 

「あ~………この迷宮のコンセプトから考えるともしかして…………」

 

『思っている通りだ。『俺』』

 

その円柱に映った俺の姿が勝手にしゃべり出した。

 

「大士!」

 

「はぁ………やっぱりそういう試練か…………」

 

ドルモンが叫ぶが、俺は溜息を吐いた。

 

『予想通りと言った顔だな?』

 

「まあ、この迷宮のコンセプトは『自分の心に打ち勝つ』事。自分の闇の部分と向き合う試練があるだろうって事は予想できたからな」

 

『ハハハ! 流石『俺』! 前世の創作物じゃこんな展開はテンプレだからな!』

 

「あ~………やっぱりその事も知ってんのな?」

 

『当然だ。俺は『(お前)』だからな』

 

柱に映った俺が歩き出すと、柱の中から出てきた。

だが、髪が白く、服装も俺が黒っぽい服装に対して、白い服装をしている。

 

「…………白い俺って似合わんな」

 

俺はその姿をまじまじと見つめる。

 

『『(お前)』の予想通りこの試練のコンセプトは『自分に打ち勝つ』事。俺を倒す事がこの試練の合格条件だ!』

 

「…………………………」

 

『この身は単なる虚像だが、そのステータスは『(お前)』と寸分違わない。勝敗を分けるのは心の強さだ! さあ行くぞ!』

 

白い『俺』が殴りかかってくる。

 

「………………………ん?」

 

俺はふとある事を思った。

俺はデジソウルを発現したためにハジメ達並に戦えるようにはなったが、ステータスプレートで表される数値は相変わらずだ。

と、いう事は…………

俺はほんの少しデジソウルを発現させて左手を前に出した。

そして、ペチッと情けない音を立ててその拳を受け止めた。

 

「……………………」

 

『……………………』

 

俺達の間に沈黙が流れる。

 

『あ、あれ…………?』

 

『俺』が困惑した表情をする。

その理由は俺にも予想出来た。

 

「…………やっぱりデジソウルは魔法じゃ再現できないみたいだな」

 

恐らくだが、この試練は本来、ステータスプレートの応用で攻略者のステータスを読み取り、それを元に虚像を作り出すものなのだろう。

しかし、俺は元々人並み程度のステータスしか持ってないのだ。

この迷宮の機能は律義にそれを反映し、俺の虚像を作り出した。

しかし、ステータスプレートに反映されなかったデジソウルはこの迷宮もコピーすることが出来ず、俺の虚像は人並み程度の力しか持ってないわけだ。

デジソウルに限らず、デジモン達には神水も効果が無かったし、回復魔法も作用しない。

魔法の発動によって生まれる熱や衝撃などは影響を受けても、魂魄魔法を利用していると思われる迷宮の試練などにも影響を受けていない。

即ち、デジモンは魔力が直接作用する効果を受けないのだ。

デジモンに魔法の影響が直接作用しないのは、デジタル物質と魔力は相性がトコトン悪いのかもしれない。

因みに転移なんかは、俺達の肉体では無く、空間に作用しているために同じように別の場所に飛ばされていると勝手に思っている。

 

「で、どうする? 俺の思い付きから言うと、それぞれのコピーは攻略者と互角の力を持ってるけど、心の天秤が正か負のどちらに傾くかでコピーの力が増減して戦いが有利になるか不利になるかが決まると思うんだが………………一般人ステータスが多少増減した所でデジソウルを発現した俺に負ける要素は無い訳だけど……………」

 

『……………俺の存在意義って一体…………………』

 

「そ、そう落ち込むな………! なっ?」

 

何故か自分の虚像を慰める俺。

 

『そ、そうだな………! 力では敵わなくてもお前の心を揺さぶることは出来る!』

 

少しでも役目を全うしようとしているのか、俺の虚像は立ち上がって俺を見据える。

 

『さて…………お前は本当に女性から愛されていると思っているのか?』

 

「それってここに来る途中で言ってた質問だよな?」

 

『ああそうだ。だが、それは一番お前が不安に思っている部分でもある』

 

「なるほど。確かにそう言われればそうかもな。けど、俺は葵と優花を信じる。そう決めた」

 

『ふむ、この程度では動じないか…………だが、『(お前)』自身は如何だ? 彼女達の愛情に応えられていると、自信を持って言えるのか? 彼女達にすら隠し事をしている『(お前が)』………!』

 

その言葉に、俺はチクリと痛い所を刺された気がした。

 

『言えないよなぁ? 『(お前)』は前世の記憶がある事を隠している………! そして同時に、この世界がアニメの世界であることもなぁ!』

 

「………………」

 

『それを知った時、彼女達は如何いう反応をするだろうなぁ? もしかしたら、それが切っ掛けで『(お前)』から離れて行くかもなぁ!』

 

それを聞いた俺は……………

 

「……………なるほど、それが俺が無自覚に抱えている不安と言う訳か」

 

予想以上に納得してしまった。

 

『何…………?』

 

「よし決めた! これが終わったら葵と優花には俺が転生者という事を話そう!」

 

2人には『いつか』話そうと思っていたが、何だかんだでずるずると引き延ばしてきた。

 

「ありがとよ。『お前()』のお陰で覚悟が出来た」

 

『いつか』なんて言ってたら駄目だ。

今日この試練が終わって2人が揃ったら言う。

そう決めた。

俺は拳にデジソウルを宿す。

『覚悟』を持ったからか、そのデジソウルの輝きはいつもより力強く感じる。

 

『フフフ………『弱い自分を乗り越える』なんて試練は、『(お前)』には必要無かったわけか………』

 

「だな………そういうのは6年前に既に済ませてる」

 

『なら最後に見せてみろ。『(お前)』の輝きを!』

 

俺は拳を握りしめ、地面を蹴った。

 

「うぉおおおおおおおっ!!」

 

俺はデジソウルで輝く拳を、虚像の俺に叩きこんだ。

虚像の俺は悲鳴を上げることも無く俺を見る。

 

『眩しいな…………』

 

「…………確かにお前は俺の影だったのかもしれない………けど、俺はお前(自分の闇)を否定しない」

 

『何………?』

 

「人は誰しも心に光と闇を持っている。光と闇は表裏一体。光があれば、闇も必ず存在する。だけど、光は勿論、闇も自分の心なんだ。それを否定するという事は、自分を否定することと同義だ。だから俺は『(お前)』を否定しない」

 

『格好つけてるのか?』

 

「………かもな」

 

『フッ…………』

 

虚像の俺は満足そうに笑みを浮かべると、フッと消えていった。

 

「大士…………」

 

ドルモンが歩み寄ってくる。

すると、

 

「あれ? 大士?」

 

後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

 

「葵?」

 

俺が振り向くと、そこにはきょとんとした顔の葵とリュウダモンが居た。

 

「やっぱり大士だ」

 

葵は嬉しそうに駆け寄ってくる。

 

「そっちも無事だったか」

 

俺はホッと息を吐く。

 

「うん、特に何もなかったよ」

 

その言葉に俺は首を傾げる。

 

「何もなかった? 負の自分と戦ったんじゃないのか?」

 

「負の自分? ううん、私は部屋にあった円柱が勝手に砕けて、開いた道を進んで来たらここに出ただけだけど…………」

 

「………………どうなってんだ一体?」

 

俺が首を傾げていると、試練を突破したと判断されたのか、部屋の奥に道が出来る。

葵が通って来た道がここに繋がったという事は、あの道も誰かの試練の間に繋がっている可能性が高い。

 

「次は優花だったらいいんだけどな」

 

俺は転生者であるという事を話すために、この場所は丁度いい。

俺とドルモン、葵とリュウダモンは新たに出来た道を歩く。

やがて見えた出口を潜ると、

 

「いい加減煩いわよ! 『(あなた)』に何を言われようと、私は葵と一緒に大士を愛する! これは未来永劫変わらない『私』の想いよ!!」

 

優花が黒髪の『優花(虚像)』を槍で貫いていた所だった。

黒髪の優花が消えると、

 

「……………あっ」

 

優花は俺達に気付いて驚いた顔をした。

 

「何時からいたの?」

 

「たった今だ。正確には、虚像に止めを刺した瞬間だな」

 

「そう………無事みたいで安心したわ」

 

優花はフッと笑みを浮かべる。

 

「そっちもな」

 

「私はクリアしたか怪しい所なんだけど…………」

 

葵は自信無さげにそう言う。

その時、この部屋の奥に新たな道が開いた。

 

「あれが次の道かしら?」

 

「ああ、また別の仲間の試練の間に繋がってると思う」

 

「そう………なら、早く他の皆と合流しましょ?」

 

そう言って優花とハックモン、葵とリュウダモンが開いた道に向かって歩き出した。

そこで俺は、

 

「ちょっと待ってくれ」

 

皆を呼び止めた。

 

「「「「?」」」」

 

4人は不思議そうな顔で振り向く。

 

「先に進む前に、話しておきたい事がある」

 

「話?」

 

「一体何を?」

 

俺の言葉に葵と優花が俺に向き直った。

 

「まずはすまない。俺はお前達に隠し事をしていた」

 

「隠し事?」

 

「ああ。この事を知ってるのはドルモンだけだ。お前達にもいつか言うつもりだったんだが、踏ん切りがつかなくてな…………『(虚像)』にその事を指摘されたから、丁度いいと思ってな……………」

 

「そう…………それで、私達にも隠してた事って?」

 

優花の言葉に俺はそこで一呼吸置き、

 

「……………………俺は転生者だ」

 

その言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side ハジメ】

 

 

 

 

 

 

『ぐっ、どうなってる。……俺が弱体化している気配もないというのにっ』

 

「ん? 弱体化?」

 

『っ、これは己を乗り越える試練だ。自らが抱える負の感情を乗り越える度に、負の虚像である俺は弱体化していく。逆に、目を逸らせば逸らすほど強化されていく』

 

「はん、そういうルールか」

 

現れた俺の虚像が困惑した声を漏らす。

 

『だが、お前は克服していない。ただ、問題を先送りにしただけの開き直りだ。証拠に、俺は弱体化していないのに……なのに、なぜ俺を上回るっ! 俺はお前なのにっ!』

 

「正確には、俺と相対するまでの俺、だろ?」

 

『どういうっ、っ、ことだっ!』

 

「わからないのか? お前という虚像は、俺から読み取った情報で出来ている。それは、おそらく迷路に入ってから、この部屋の氷柱の前に来るまでのこと。つまり、お前は数十分前までの俺でしかないということだ。なら、今、この戦いで、数十分前の自分より強くなればいい。それだけのことだ」

 

『馬鹿な……そんなこと』

 

「俺が俺を否定するなよ。殺し合いの中で活路を見出す。筋一本でも、コンマ一秒の速さでも、一滴の魔力でも、半歩先の先読みでも、相手を上回れば生き残れる。ずっと、そうやって殺し合いを制して来た。そうだろう?」

 

『確かに、そうだった。……全く、この試練を〝乗り越える〟のではなく〝開き直る〟ことで突破する奴がいるとはな。動揺してくれれば、まだ俺の勝機もあったのに』

 

「馬鹿言うな。最初からお前の勝機なんてない。虚像は所詮、虚像だ。そのムカつく面ごと粉砕してやる」

 

『自虐だぞ、それ』

 

虚像の俺はそう言い残して、俺のレールガンによって撃ち抜かれ、姿を消した。

 

「……………終わったか」

 

最後まで気を抜かずにいると、部屋の奥に道が現れる。

 

「行くぞ。アグモン、クルモン」

 

「おう! さっすが相棒だぜ!」

 

「クルル~!」

 

アグモンと、何故か一緒に飛ばされていたクルモンは気分が良さそうに俺を追いかけてくる。

俺達が新たに現れた道に足を踏み入れようとした時、ゴゴゴと部屋全体が揺らぎだした。

 

「ッ!? 何だ!」

 

「地震か!?」

 

「クルッ!?」

 

俺とアグモンは警戒態勢を取る。

次の瞬間、天井を突き破って何かがこの部屋に侵入してきた。

巻き上げられた砂埃が晴れて行くと、

 

「グガガガガガガガッ!!」

 

「奴は…………ダークドラモン!?」

 

「あんとき逃げた奴か!」

 

ダークドラモンは唸り声を上げて俺達を見据える。

 

「チッ! 逃がしてくれそうにないか! 行けるか、アグモン?」

 

「やるしかねえだろ!」

 

「だな。離れてろよ、クルモン!」

 

「クルッ!」

 

クルモンは出来るだけ離れて身を隠す。

ダークドラモンは究極体。

だが、生き残るためには戦って勝つしか道はない。

 

「いいだろう…………俺の前に立ちはだかるなら誰だろうと『殺す』!!」

 

俺はカードを取り出し、Dアークに通していく。

 

「カードスラッシュ!」

 

Dアークに通す間にカードがブルーカードへと変化する。

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

Dアークから放たれる光。

その光を受けてアグモンが進化する。

 

「アグモン進化!」

 

成長期から成熟期へ。

そして成熟期から完全体へと進化を遂げる。

 

「メタルグレイモン!!」

 

メタルグレイモンとなったアグモンは、ダークドラモンに向かって機械化された左腕を構え、俺はシュラーゲンを取り出して銃口を向ける。

 

「死ね!」

 

俺はその言葉と共に引き金を引く。

 

「ギガデストロイヤー!!」

 

メタルグレイモンも同時に2発のミサイルを放った。

それらはダークドラモンに直撃し、爆煙で包む。

部屋が崩落しかねない程の衝撃が広がるが、そんな事を気にして勝てる相手では無い事は分かっている。

多少のダメージでも与えていれば御の字と思っていたのだが、

 

「グガガガガガガ…………!」

 

ダークドラモンは全くの無傷でその姿を見せた。

 

「チッ!」

 

俺は思わず舌打ちする。

 

「ガァアアアアアアアアッ!!」

 

ダークドラモンは右腕のギガスティックランスを向けて突進してきた。

 

「させるか!!」

 

メタルグレイモンが機械化された左腕を振るって迎撃しようとする。

その2つがぶつかり合った瞬間、

 

「ぐうっ………!」

 

メタルグレイモンが声を漏らす。

メタルグレイモンの機械化された左腕がダークドラモンの右腕の槍によって貫かれていた。

 

「ッ! メタルグレイモン!!」

 

俺は〝縮地〟と〝空力〟を使って空中を跳ね回り、ドンナーとシュラークを両手に持ってダークドラモンの眼前に突きつけ、連続で引き金を引いた。

 

「ガアッ!!」

 

その弾丸は頭部にある半透明のバイザーの様な物に弾かれるが、ダークドラモンの視線がこちらを向く。

俺はそんなダークドラモンにロケットランチャー〝オルカン〟を向け。

 

「これでも喰らってろ!」

 

躊躇無く連続で発射した。

ダークドラモンの顔面が爆炎に包まれる。

だが、

 

「グガァアアアアアアアアアッ!!」

 

その直後に咆哮で爆炎が吹き飛ばされ、同時に俺の身体にも衝撃が走る。

 

「ぐぅぅっ………!」

 

オルカンを盾に。

更に〝金剛〟も発動し、その衝撃に耐えるが、空中では踏ん張りがきかずに後方に吹き飛ばされる。

 

「相棒!」

 

メタルグレイモンが吹き飛ばされる俺を咄嗟に右手で掴んだ瞬間、

 

「グガァッ!!」

 

ダークドラモンが身体を捻って強烈な尾撃をメタルグレイモンに叩き込んだ。

 

「ぐはぁっ!?」

 

吹き飛ばされ、壁に叩きつけられるメタルグレイモン。

俺はメタルグレイモンに庇われたために、ダメージは少なかったが、メタルグレイモンは究極体の攻撃を諸に受けていた。

 

「うぐぐっ………!」

 

メタルグレイモンは大ダメージを受けていたが、何とか立ち上がる。

 

「まだいけるか!? メタルグレイモン!」

 

「はっ! 当然!」

 

メタルグレイモンも強気な発言を崩さない。

だが、

 

「なっ!?」

 

見上げたダークドラモンは眼前に暗黒球体を作り出していた。

 

「ダークロアー………!!」

 

圧縮されたダークマターのエネルギー弾が撃ち出される。

回避は不可能。

 

「くっ! 耐えられるか………!?」

 

俺は咄嗟に1枚のカードをスラッシュする。

 

「カードスラッシュ! 無効化プラグインP!!」

 

「相棒!!」

 

メタルグレイモンは俺に覆い被さる。

次の瞬間、俺達は暗黒球体に呑み込まれた。

 

 

 

「……………うぐっ!」

 

身体中の痛みで目を覚ます。

辺りは地面と壁が抉れ、完全な球状にクレーターが出来ている。

 

「メタルグレイモンが庇ってくれたことと………最後のカードスラッシュが功を奏したか………!」

 

先程の必殺技が直接解放されていたら、迷宮ごと吹き飛ばされていただろう。

 

「くっ………メタルグレイモンは………?」

 

俺は身を起こして辺りを伺う。

すると、メタルグレイモンはアグモンに退化して俺の前に倒れていた。

 

「アグモン………! しっかりしろ! アグモン!」

 

俺はアグモンに呼びかける。

 

「うぐぐ………あ、相棒………」

 

俺の声に反応したアグモンに俺は安堵を覚えた。

 

「2人とも、しっかりするっクル!」

 

いつの間にかクルモンが近くに来て俺達に声を掛けていた。

俺達は何とか立ち上がってダークドラモンを見上げる。

するとそこには、

 

「グガガガガガ…………!」

 

2発目のダークロアーを放とうとしているダークドラモンの姿があった。

 

「ハッ……! 容赦がねえな………! だが、それが正しい………『敵』は確実に殺す……!! 気が合いそうだ………!」

 

ハジメはそれでも不敵に笑う。

 

「けどな………俺は絶対に死なねえ! 殺してでも生き延びる!!」

 

「ああ、絶対に殺されたりなんかしてやらねえ!!」

 

俺とアグモンは手を掴んで互いを支え合う。

 

「クルッ! そうっクル! 絶対に諦めちゃダメっクル!!」

 

クルモンもそう叫ぶ。

その額のマークが輝いている気がしたが、そんな事は気にしてる暇はない。

そして遂にその暗黒球体が俺達に向かって放たれた。

 

「俺達を殺せるなら殺してみろ!」

 

「絶対に生き延びてやる!」

 

「「俺達は絶対に『生』き抜いて見せる!!」」

 

その瞬間、俺達は暗黒球体に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

光が満ちた。

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

俺の身体がデータとなり、アグモンと一つになる。

 

「アグモン進化!」

 

アグモンの腕が分解され、真紅の装甲の機械椀として再構築される。

アグモンの足が分解され、真紅の装甲の機械脚として再構築される。

アグモンの胴が分解され、真紅の装甲のボディとして再構築される。

アグモンの頭部が分解され、ハジメの生き抜く意志を持った瞳を持つ真紅の竜機人の頭部として再構築される。

それは背中に砲撃にも推進装置にも使えるサンダーバーニアを装備した、ウォーグレイモンの亜種である真紅の竜機人。

 

「ブリッツグレイモン!!」

 

暗黒球体の中で進化したブリッツグレイモン()は、自然とどうするべきか理解していた。

ブリッツグレイモン()は周囲へプラズマ粒子を展開。

バリアとして形成する。

 

「エレックガード………!」

 

それは俺達を消滅させるはずだった暗黒球体を防ぎ切り、無事な姿をダークドラモンの前に見せつけた。

 

「グガッ!?」

 

耐えきったことか。

それとも進化して姿形が変わったことか。

もしくはその両方か。

ダークドラモンが驚いたように動揺を見せた。

ブリッツグレイモン()は腕に引っ付いていたクルモンを地面に下ろす。

 

「もう大丈夫だ………隠れていろ」

 

「クルッ!」

 

クルモンは安心したように笑って離れて行く。

ブリッツグレイモン()はダークドラモンを見据えつつ、現状を確認していた。

 

『…………………これが、究極体への進化か…………』

 

不思議な感覚だ。

人間()デジモン(アグモン)と融合して、デジモン(ブリッツグレイモン)に『進化』した。

だが、不快な感覚は全く無い。

寧ろ何処か安心を覚える。

 

「相棒………」

 

ブリッツグレイモンとなったアグモンが呟く。

 

『ああ…………生き延びるぞ!』

 

「おおっ!」

 

ドシンと重々しい足音を響かせて一歩踏み出す。

初めて進化したのに、ブリッツグレイモン()は自分のスペックを完璧に把握していた。

ブリッツグレイモンは重量級のパワーを生かした格闘戦と、雷撃を使った戦闘を得意とする。

地面が陥没する程の力強さで踏み込むと、ドンッと音を立ててダークドラモンに向かって跳躍した。

 

「『うぉおおおおおおおおっ!!』」

 

俺の拳に合わせてブリッツグレイモンもその剛腕を振りかぶり、ダークドラモンに叩きつける。

 

「グガァアアアアアッ!?」

 

顔面を殴られたダークドラモンは、確実にダメージを感じさせる鳴き声を上げて吹っ飛び、壁に叩きつけられる。

 

「グガッ………グガァアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

ダークドラモンは怒ったのか右腕の槍を構えて突進してきた。

だが、

 

『甘ぇ!』

 

ブリッツグレイモン()は左腕で突き出された槍を外側へ受け流すと、右の剛腕をダークドラモンの腹部へ叩き込む。

 

「ガァッ!?」

 

ダークドラモンが苦しそうに動きを止めた瞬間、ブリッツグレイモン()は大きく脚を振り上げ、踵落としの様にダークドラモンの頭部目掛けて振り下ろした。

 

「ガァアアアアアアアアアッ!?」

 

地面に叩きつけられ、大きく陥没させるダークドラモン。

ブリッツグレイモン()は地面に降り立つ。

ダークドラモンは起き上がると空中に飛び上がり、再び眼前に暗黒球体を作り出す。

 

「……………………」

 

ブリッツグレイモン()は無言で背中のサンダーバーニアを両肩から前方へ展開。

両肩に担ぐキャノン砲の様に砲口を前方へ向けた。

 

「ダークロアー!!」

 

ダークドラモンは暗黒球体を放つ。

その瞬間、

 

「サンダーバーニア!!」

 

両肩の2門の砲口からプラズマ砲が放たれた。

二条の光が暗黒球体と激突。

それらを飲み込もうとする暗黒球体とせめぎ合う。

 

「『おらぁああああああああああああああああっ!!!』」

 

だが、俺達の生き残る意志はそんな暗黒球体を貫く。

 

「ガッ!?」

 

暗黒球体を貫いたプラズマ砲はダークドラモンに襲い掛かる。

しかし、咄嗟に回避行動を取ったダークドラモンの翼を抉っただけで二条の閃光はそのまま天井を貫き、空へと消える。

 

「グガガ…………」

 

ダークドラモンはその一撃を躱したがフラフラとバランスが悪そうに浮かんでいた。

翼を抉られた事で動きが鈍っているのだろう。

そして、その隙を逃す程、俺はお人好しでは無い。

ブリッツグレイモン()はサンダーバーニアを背面へ向ける。

サンダーバーニアは攻撃だけでは無く推進力にも使える。

即ち、

 

「サンダーバーニア!!」

 

一直線に突っ込むだけなら凄まじいスピードを出す事が出来る!

ブリッツグレイモン()はその勢いのまま右腕をダークドラモンに突き出し、胴を殴りつけたままダークドラモンを壁に叩きつける。

 

「グガァアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」

 

それだけでもダークドラモンは大ダメージを受けたようだが、それだけでは終わらない。

 

「プラズマステーク!!」

 

ブリッツグレイモン()の腕の先にある3門の銃口のような穴。

そこから杭が飛び出してダークドラモンの装甲を貫く。

 

「ガッ!?」

 

そして、その杭から雷撃が放たれ、対象を内部から破壊する。

 

「グギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!??」

 

内部から。

しかもサイボーグ型であるダークドラモンにとって雷撃は弱点となりえる攻撃。

それに耐える事など出来ず、ダークドラモンは断末魔の叫びを上げて、データの粒子に分解された。

 

「やったっクル!」

 

それを見ていたクルモンが嬉しそうに声を上げた。

ブリッツグレイモン()は地面に降りると、光に包まれた。

そのまま俺とアグモンに分離する。

 

「……………」

 

「……………」

 

俺達は何も言わずに互いを見やり、

 

「…………」

 

俺は右の拳を突き出す。

 

「へっ…………」

 

アグモンも笑みを浮かべながら右腕を握って俺の拳に突き出した。

拳がぶつかり合う。

俺はこの時、香織に対する『特別』とは違う『特別』を、確かにアグモンに感じたのだった。

 

 

 

 

 








第58話です。
中々手応えのある出来になったと思います。
大士達の試練とハジメとアグモンの究極進化でした。
大士はデジソウルを再現されなかったのでバトル自体は楽勝。
でも、自分の虚像に感じる所があったらしく、遂に転生者であることの告白を。
葵は原因不明で試練そのものが受けられず…………?
優花は難無くクリアですね。
さて、次回は彼女が…………
お楽しみに。
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