ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第61話 勇者の暴走! 大士VS光輝!!

 

 

 

 

転生者である事を告白し、それでも葵と優花は変わらず俺を受け入れてくれた事に感謝しつつ、俺達は次に繋がっているであろう誰かの試練の場を目指して歩いていた。

やがて突き当りの壁に辿り着き、その壁に近付くと壁が開いて次の試練の場が露になる。

そこでは、

 

『奪われた。だろ?』

 

「違う! 奪われたなんて……」

 

灰色の髪に黒い鎧を纏った虚像の天之河の嘲笑を、荒い息を吐きながら大量の汗を流す天之河が咄嗟に反論している所だった。

 

「雫が言う通り、香織は最初から南雲のことが……だから、俺は……」

 

『誤魔化さなくていい。俺はお前だ。お前俺のことは誰よりよく分かっているさ。雫に言われたことも納得したふりをしただけで、心の底では奪われたと思っている。未だに香織は自分と共にあるべきだと、そう思っている。小学生の頃からずっと一緒だったんだ。中学で出会ったか何か知らないけど、自分の方が長く一緒にいたのに、これからもずっと一緒だと信じていたのに、香織はヒーローである自分のヒロイン()なのに……』

 

「黙れっ。俺は、そんなこと考えてない! 勝手なことを言うなっ。大迷宮の魔物め! 俺は惑わされないぞ!」

 

そう叫びながら天之河は聖剣を振り、無数の光刃を飛ばす。

しかし、虚像の天之河も黒い聖剣を振ると、同じ軌道で黒い光刃が飛ばされ、相殺。

いや、いくつかは黒い光刃が押し勝ち、天之河に襲い掛かった。

あ、これ駄目だ。

俺はその数度のやり取りで察した。

すると、天之河越しに虚像の天之河が俺達に目をやり、

 

『おや? どうやらお客さんの様だ』

 

虚像の天之河はわざとらしく驚いた表情を見せた。

天之河が思わず振り返る。

 

「く、黒騎!?」

 

天之河は驚愕した表情を見せる。

 

『ここはそれぞれの試練の場と繋がっているからな………どうやらあいつらは自分の試練を突破した様だぞ? 未だに手古摺ってるお前と違って』

 

「くっ………!」

 

煽るような虚像の言動に天之河は焦った表情を隠せずに自分の虚像に向き直ると力任せに斬りかかる。

すると、

 

「お、大士じゃねえか」

 

インプモンが開いた出口のすぐ横の氷壁にもたれ掛かりながら天之河達を眺めつつ、俺に声を掛けてきた。

 

「インプモン……! 天之河と一緒だったのか」

 

「まあな。そっちは無事クリアできたみてぇだな」

 

「ああ。それで、天之河は………?」

 

俺は先程の様子から予想はしているが、一応尋ねてみた。

 

「全然駄目だ。偽物から図星突かれまくってそれを必死に否定しようとしてるだけだ」

 

インプモンは呆れた口調でそう言う。

 

「ああ………やっぱり………」

 

予想通りの結果に俺は脱力する。

 

「あいつある意味昔の俺よりも酷ぇんじゃねえの?」

 

「なんつーかな………お前は自分の弱さを認めたくなくて、『力』だけを求めて道を誤ったんだが、天之河の場合は完全な善意で動いていて、『正義』に準ずる自分は間違って無いと思い込んでるから、自分の中にある嫉妬や憎悪といった『悪意』が認められないんだよ。それを認めたら、自分が『完全な正義の味方』であることを否定することになるからな」

 

「ある意味一番性質悪ぃな…………」

 

インプモンが表情を歪める。

 

『動揺が酷いな。せっかく南雲が強化してくれた聖剣も、それじゃあ宝の持ち腐れだよ。それとも憎く妬ましい南雲だからこそ、まともに使いたくないってことかな?』

 

「そんなの関係ない! 俺は、南雲を憎んだりなんて……」

 

『ほらほら、そうやって直ぐに現実から目を背けるから……また俺が強化されてしまったじゃないか』

 

虚像の天之河が特大の黒い光の斬撃を放つ。

天之河は相殺できないと悟ったのか横っ飛びで回避した。

 

『香織だけじゃなくて、ユエ達が南雲を慕っているのも気に食わないんだよな? あんなに可愛くて強くて魅力的な女の子達はヒーローである自分()と共にあるのが相応しいもんな? 簡単に人を切り捨てるような南雲なんかを慕うなんて認められないもんな?』

 

「いい加減にしろ! 彼女達は本気で南雲を……それは彼女達が決めることで……だからっ」

 

『そこに居る黒騎だってそうだ。かつて世界を救った救世主の癖に、違う世界というだけでこの世界を救おうとしない。それどころか自分()の『正義』を尽く否定する。そして、そんな黒騎が神代さんや園部さんといった魅力的な女の子を侍らせているのも気に食わない』

 

「違うっ! 黒騎は自分の大切な物の為に………!」

 

『自分の為だけにしか戦わない自己中野郎って事だろう? 神代さんも園部さんもそんな自己中野郎に騙されている被害者だ。だから正義の味方(ヒーロー)である自分()が助けて、彼女達も自分()ヒロイン()になるべきなんだ、って?』

 

そんな風に思ってたんかいコイツ。

 

「そんなわけあるか! そんな……」

 

『おいおい、一体、どれだけ俺を強化したら気が済むんだ?』

 

自分の闇をただ否定するだけの天之河。

2人の力の差は、最早圧倒的と言っていい。

ステータスで言うなら、既に倍近い差が出ているのではないだろうか。

 

「まるで子供の癇癪ね…………」

 

優花が呆れた声を漏らす。

 

「私はまともに試練受けてないけど、あれじゃあ駄目だって事は分かるなぁ………」

 

葵も苦笑いを見せる。

 

「翔け巡れ、〝天翔剣・嵐〟!!」

 

天之河が無数の斬撃を虚像に向けて放つ。

 

『無駄だよ。集え、〝天爪流雨・震〟』

 

だが虚像が放った一条の黒い光の砲撃に全てが蹴散らされた。

そのまま黒い光の砲撃が天之河に向かって突き進む。

 

「っ、阻め、〝光鎧〟!!」

 

天之河は鎧の能力で目の前に障壁を発生させる。

だが、黒い砲撃はその障壁を打ち破って天之河を大きく吹き飛ばした。

 

「ぐわぁ!?」

 

氷壁に激突する天之河。

 

『圧倒したいんだろ? 南雲と黒騎をさ。あいつらを跪かせて許しを請わせたいんだ。それから、香織を取り戻して、ユエ達や神代さん、園部さんに好意を向けられて、世界を救って、皆を連れて帰って、称賛を浴びて……』

 

「黙れぇええええっ!!」

 

尚も虚像の言葉を否定する天之河。

〝限界突破〟発動の兆候である光が天之河の身体から発せられ、

 

「いい加減にしろっ!!!」

 

その瞬間、俺は思わず叫んでしまった。

 

「ッ!?」

 

その叫びに天之河の発動しようとした〝限界突破〟が止まる。

天之河は目を見開いて俺を見る。

 

「天之河!! 目の前に居るお前の虚像は、確かに偽物だ! だが、その偽物はお前の記憶や人格を読み取って作られたモノ! その言葉に嘘はない! 目の前に居るのは、紛れもなく自分が持つ心の『闇』なんだ! それを認めたくないからと言って頭ごなしに否定するんじゃない! 先ずは認めろ! そしてその『闇』と向き合うんだ!!」

 

「………………………」

 

天之河は俯き、何も言わないが俺は言葉を続ける。

 

「天之河! お前は『完全無欠のヒーロー』を目指しているんだろう! 確かにお前は他人よりも非凡な才能を持っていて、他人よりも出来ることは多いのかもしれない! だが、お前も唯の人間なんだ! 『完璧な人間』なんてこの世の何処にもいないんだよ! 心に『闇』を抱えるのは仕方の無い事なんだ!」

 

「……………………………」

 

天之河は俯き続けているが、氷壁に叩きつけられた際に半ば埋まった腕の先の手を握り始める。

 

「『光』と『闇』は表裏一体! 『光』があれば、『闇』もまた存在する! 人の心も同じだ! 『善』の心の裏側には『悪』も必ず併せ持つ! だから嫉妬や他人を恨む心を持つことは別に恥じる事じゃない! 大切なのは、自分の『闇』を否定する事じゃない! 自分の『闇』に負けない事だ!!」

 

これが俺の精一杯の助言。

 

「…………………………………黒騎」

 

天之河は俯いていた顔をゆっくりと上げて行く。

 

「…………黒騎…………お前は……………」

 

天之河は四肢に力を入れ、両の拳を握りしめる。

 

「…………………お前は……………!」

 

そして顔を上げた天之河のその目は、

 

「お前はまた俺の『正義』を否定するのか!?」

 

憎悪に満ちていた。

 

「………………………………」

 

俺は言葉を失う。

どうやら俺の言葉は天之河には全く届かなかったらしい。

 

「お前はいつもそうだ! 自分が世界を救ったからって俺を一方的に非難し、説教臭く何度も何度も…………!」

 

どうやら天之河は俺の助言を単なるやっかみとしか受け取っていなかったようだ。

 

「俺は間違ってないのに………! 『正しい』事しかしていないのに………! 何故お前は俺を否定する!?」

 

お前(自分)を否定しているのはお前(自分)だろうに…………」

 

こいつは自分の『(一部)』を否定している。

それに気付いていない。

いや、認めようともしていない。

自分が『絶対の正義』であると信じ込んで(勘違いして)いる。

 

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

聖剣に光が収束され、特大の斬撃となって俺に向かって放たれた。

 

「なっ!?」

 

これは俺にも予想外だった。

馬鹿とは言え、仮にも味方に向かって攻撃をするとは思ってなかった。

 

「チッ!」

 

俺は顔の前で両腕を交差させ、デジソウル全開で防御する。

軽いしっぺを受けた位の痛みを腕に感じた。

 

「「「「「「大士!?」」」」」」

 

葵と優花、デジモン達が驚愕の声を漏らす。

 

「………………何のつもりだ?」

 

俺はそう聞き返すと、

 

「………………そうか…………そうだったんだな………………黒騎…………お前は『正義』を否定する『悪』だったんだな……………!」

 

天之河はそう言って俺を『悪』と断じた。

まあ、お前の『正義』に相容れないという意味では間違ってないだろうが………

 

「…………だったら何だ?」

 

「認めたな………? 自分が『悪』だと。やっぱり俺は間違ってなかった……………神代さんも園部さんも洗脳されてお前を好きだと思わされてるだけなんだ………!」

 

何故そうなる?

 

「ああそうか…………やっと辻褄が合った。お前の連れているデジモンが洗脳の力を持っているんだな? きっと最初から南雲とグルだったんだ…………あのオルクスでトラップに掛かった時から…………お前が神代さんと孤立した時、お前はデジモンの力で神代さんを洗脳し、デジモンの1体を神代さんに付けて昔からの友達と思い込ませ、何食わぬ顔で俺達と合流。南雲が橋から落ちたのもきっとわざとだ。罪を檜山に擦り付け、自分はあの黒いデジモンが居るから橋から落ちても助かるという確信があった。そして黒騎が香織を洗脳、南雲の下へ連れて行く手筈になっていたんだ。そしておそらく、洗脳の現場を園部さんに見られた。だから黒騎は園部さんも洗脳し、一緒に連れ去った。そして奈落の底で3人を徹底的に洗脳。その体を弄びながら、自分達を愛していると思い込ませたんだ。そして3人だけでは飽き足らず、ユエやシア、ティオ、先生、リリィ………そして挙句の果てには雫まで…………! はは…………漸くだ………漸く見つけたぞ、諸悪の根源を!!」

 

ご都合解釈&自己完結ここに極まれり。

俺はもう言い返す気も無かった。

 

「大士、黙らせて良い?」

 

優花が不機嫌を隠そうともせずに俺に訊ねてくる。

どうやら俺が攻撃された事も相まって、殺意が漏れ出している。

 

「寧ろオウリュウモンで塵も残さず消滅させたいんだけど………!」

 

葵に至っては、俺の事だけでは飽き足らず、無二の相棒であるリュウダモンを悪の手先扱いされた事で本気で殺りそうだ。

 

「待て待て! お前らだと本気で殺りそうだから待て!」

 

「寧ろ殺す以外の選択肢は無くない?」

 

「っていうか殺らせて」

 

優花も葵も、容赦が無え!

 

「ハッ! お前はそう言う奴だったな。戦いの場にか弱い女の子を引っ張り出し、無理矢理戦わせて自分は安全な所で傍観する。なんて最低な奴だ…………! 待っていてくれ、神代さん、園部さん。すぐに黒騎と、そこに居る薄汚いデジモン達を始末して解放してあげるから」

 

お前は黙れ!

本当に死ぬぞ!

あと無駄に良い笑顔なのが腹立つ。

2人の殺気が更に膨らんできたので、

 

「分かった分かった! 面倒くさいがそれでお前の気が済むなら相手してやるよ!」

 

俺がそう言うと、

 

『ハハハ! 面白い事になって来たな! さぁ、お前()。ヒーロータイムだ。悪者からヒロイン達を助け出そうじゃないか!』

 

今まで傍観していた虚像の天之河が赤黒い光の粒子となって渦巻き始めた。

その渦巻いた粒子が天之河を包む。

 

「うるさいっ。お前の指図は受けない。今だけ使ってやるだけだ! 黒騎とデジモン達、そして南雲を倒したあとは、お前の番だということを忘れるなっ」

 

そう叫びながらもその粒子を受け入れる。

天之河の純白の魔力に赤黒い魔力の線が混じり、更に片目も赤黒くなり、オッドアイとなる。

更に天之河は右手に聖剣を握っていたが、左手にも虚像が使っていた黒い聖剣が握られる。

 

「融合したのかよ…………」

 

「不本意ではあるけど、な。お前らを倒す為なら甘んじて受け入れよう。もっとも、あとでこいつも倒すけれど」

 

「…………『闇』を否定するなとは言ったが、受け入れてどうするんだよ…………」

 

俺は大きく溜息を吐いた。

 

「好きに囀るといいさ。何を言ったところで、もう俺には勝てない。この湧き上がる力があれば俺は全てを取り戻せる!」

 

「全部失う勢いだと思うんだがな………」

 

俺はもう呆れた言葉しか出てこない。

 

「御託はいらない。覚悟しろ、黒騎っ!! 〝覇潰〟!!」

 

その瞬間溢れ出る魔力。

〝覇潰〟って、確か〝限界突破〟の最終派生技能で、一時的に5倍のステータスを得るだったか。

今は虚像の力も加わって、単純計算で天之河×2人分×5倍だから、普段の約10倍って所か?

天之河の基本ステータスが大体1000として、1万前後のステータスって所か。

奈落を出た頃のハジメに匹敵するステータスだな。

本気で殺しに来てるな。

次の瞬間、地面を蹴って真っ直ぐに突っ込んできた。

 

「はぁああっ!!」

 

基本ステータスが低い俺の事を舐めているのか、フェイントも何もない。

ただ正面から2本の聖剣を交差させながら俺を十字に切り裂かんと振るう。

だが甘い。

俺は拳にデジソウル宿し、聖剣が交差する中心に向かって繰り出す。

聖剣は俺の拳の薄皮1枚すら切り裂くこと叶わずに止まる。

 

「なっ!?」

 

天之河は驚愕するが、

 

「ふんっ!」

 

俺は拳を振り切って、天之河を押し返す。

天之河はたたらを踏むが何とか体勢を持ち直す。

天之河が再び斬りかかってくる前に、俺は口を開いた。

 

「天之河、お前は俺を『悪』といったな? 『悪』とは何だ?」

 

「『悪』は『悪』だ! 『正義』に従わないものだ!!」

 

天之河はそう叫びながら斬りかかってくる。

 

「答えになっていないな…………」

 

俺は再び拳を繰り出してその一撃を止める。

 

「ならもう1つ聞こう。『七つの大罪』を知っているな?」

 

「勿論だ! お前の様な『悪』が持つ邪悪な意志の事だ!!」

 

いや、人間を罪に導く可能性があるっていう欲望や感情の筈だが………

 

「…………何か飛躍した表現をされたが、お前はその『七つの大罪』の内、俺がどれに当てはまると思ってるんだ?」

 

「ハッ! 言われなければ分からないか!? なら教えてやる! まずは『色欲』! 神代さんや園部さんの体を好きなように弄んだお前はまさに『色欲』の権化だ!」

 

「…………………まあ、否定はせんな」

 

それなりに自分がスケベなのは自覚してるし。

 

「そして『怠惰』! 世界を救う力があったのに行動しなかったお前は『怠惰』だ!!」

 

「…………何でだよ?」

 

割と面倒くさがりなのは認めるが、力があるのに行動しなかったから『怠け者』って言うのはおかしくないか?

 

「更に『強欲』! 女性を次から次へと欲するお前は『強欲』の塊だ!!」

 

「いや、葵と優花以外を欲した記憶は無いが…………」

 

それはハッキリと否定したい。

ハジメも同じくだ。

 

「この通りお前は『七つの大罪』の内、3つも当てはまっている!!」

 

俺に向かって聖剣の剣先をビシッと突き付けながらそう言い放つ。

 

「…………………なら、俺がその3つに当てはまっているとしよう。なら、お前自身は如何だ?」

 

「何だと?」

 

「お前自身にも『七つの大罪』に当てはまる感情や考えがあるはずだが?」

 

「ふざけるな! 俺はそんな邪な感情など持ってはいない!!」

 

天之河はその言葉を否定する様に聖剣を振って光の斬撃を飛ばす。

俺はデジソウルを纏った裏拳を放って、その斬撃を別方向へ弾き飛ばした。

 

「そうかな? じゃあ、俺の考察を教えてやろう。先ずは『嫉妬』。白崎さんやユエ達に囲まれるハジメを見て、面白くない、妬ましいと思ってたんだろう? それが『嫉妬』でなくて何だというんだ?」

 

「それはお前達が香織達を洗脳していたからだ! 俺は純粋に香織達を心配してだな………!」

 

「綺麗な女の子たちは自分の傍に居るべきだと? それは立派な『色欲』じゃないのか?」

 

「ち、違う! 香織や雫は、昔から俺の傍に居たんだ! だから、俺の傍に居るのが当たり前で………」

 

「それなら葵や優花、ユエ、シア、ティオは関係無いんじゃないのか? 見た目麗しい彼女達を欲したのなら、それは間違いなく『色欲』だ」

 

「ち、違う……違う!」

 

「更にお前は富………はともかく、名声を欲しているな。それも異常に。自分は勇者だ。世界を救うヒーローだという立場に浸りたいがために…………それもある意味『強欲』だと俺は思うぞ」

 

「でっ、出鱈目を言うなぁっ!!」

 

「そうやって直ぐに頭に血が上って『力』に訴えるのは『憤怒』と言えないか?」

 

「ッ………!」

 

繰り出そうとした聖剣の一撃が止まる。

 

「そして何より、お前は『傲慢』だ。自分の価値観で『正義』を決めつけ、自分の力でその『正義』を押し通してきた。自分が世界の『正義』だと言わんばかりにな」

 

「違う! 俺は、皆の為を思って…………! それに、それを言うならお前もだろう!? お前も自分の価値観で俺の正義を否定し続けた!! お前こそ『傲慢』じゃないのか!?」

 

再び斬りかかってくる。

俺はそれをまた拳で跳ね返すと、

 

「ああ、そうだな。そう言う意味では俺も『傲慢』だ」

 

天之河の言葉を肯定した。

天之河は意外だったのか目を見開く。

 

「『傲慢』に限らず、『色欲』、『嫉妬』、『怠惰』、『暴食』、『強欲』、『憤怒』…………『七つの大罪』の全てを俺は持っていると思っている」

 

「フンッ! ようやく自分の罪を認めたか!」

 

「………………そしてそれは、世界中の人間すべてが同じだとも思っている」

 

「ふざけるな! 世界中の人間すべてがお前と同じだと思うな!!」

 

「……………さっきも言ったが、『光』と『闇』は表裏一体。兄弟みたいなものだ。『光』があれば『闇』もまた存在する。だが逆に、『闇』がある所にも、また『光』がある。『七つの大罪』とは人が持つ心の『闇』の部分だ。ならば『七つの大罪』と対になる『光』は何だと思う?」

 

「な、何の話だ……!?」

 

「まあ、ここからは持論になるが………例えば、人が持つ三大欲求の1つ、『食欲』。お前は食べることが『罪』だと思うか?」

 

「そ、そんな訳ないだろう!? 人は食べなければ生きていけない! それが『罪』の筈無いだろう!?」

 

「だが、『食欲』が行きすぎれば『暴食』となる。立派な『七つの大罪』の1つだ」

 

「ッ…………!?」

 

「同じ三大欲求の『睡眠欲』。寝る事も生きるためには必要だが、寝てばかりいれば『怠惰』となり、『性欲』だって種の存続という意味では必要な感情で『罪』とは言えないが、それに溺れれば『色欲』となる」

 

「ッ……!」

 

「今より良くなりたいという思いでお金や権力を求めるのも『罪』とは言い難いが、それに執着してしまえば『強欲』となるし、『嫉妬』だって誰かを深く想ったり、こうなりたいと願うからこそ生まれる負の感情だ。怒る事も必要な時があるが、我を忘れてしまえば『憤怒』となって必要以上に周りを傷付け、『傲慢』も元を正せば『自分を信じる心』が暴走してしまった結果だと俺は思っている。そのどれもが『光』と『闇』を併せ持っているんだよ」

 

「ぐぐっ…………!」

 

「お前は『正義』を貫いているつもりなのかもしれないが、それは一歩間違えれば簡単に『悪』になりえるという事を理解しろ」

 

「……………………そ、そんな事は無いぃぃぃぃぃっ!! 俺の『正義』が『悪』になるなんて事があるはずがないっ!!」

 

天之河は首を振って叫ぶ。

 

「訳の分からない言葉で俺を惑わそうったってそうはいかない!! 俺はもう迷わない!! お前を殺して皆を解放する!!」

 

『殺す』って言っちゃったよ。

もう考える事も放棄したっぽいな。

俺はほんの僅かだが天之河の良心に期待していたが、違う方向に突っ走り出した馬鹿に言う言葉は無い。

天之河は2本の聖剣に魔力を込め始める。

 

「ったく、この分からず屋が………!」

 

俺は拳を握り込んで、今まで以上にデジソウルを燃やす。

次の瞬間、天之河が突っ込んできたので、俺も地面を蹴って天之河に向かって突っ込む。

 

「はぁあああああああああああああああああっ!!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

俺の拳と、白と黒の2本の聖剣が激突した。

 

 

 

 

 

 

【Side 優花】

 

 

 

 

大士の必死の呼びかけも空しく、天之河は子供の癇癪を起こして考える事を放棄した。

私はふと、壁の向こうから近付いてくる気配に気付いた。

 

「はぁあああああああああああああああああっ!!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

天之河と大士が激突する瞬間、壁が開いた。

そして、

 

「がはぁああああああああああああああっ!?」

 

天之河が一方的に吹き飛んだ。

すると、

 

「どういう状況だこれは?」

 

雫を背中に背負った南雲、アグモン、コテモン、クルモンが姿を見せる。

雫は安心しきった表情で南雲の背に身を任せていた。

 

「南雲」

 

「園部、一体どうなってんだ?」

 

南雲が状況が全く分からないのか私に訊ねてくる。

 

「簡単に言えば、馬鹿が試練に大苦戦。大士がヒントを与えたけど認められずに癇癪起こして虚像を取り込んでパワーアップ。それで現在大士に逆恨みで八つ当たり中、って所」

 

「おけ、把握。おい、起きろ八重樫!」

 

南雲は背中の雫を揺すって起こそうとする。

雫に天之河(馬鹿)の説得を頼むつもりなのだろう。

正直無理だと思うけど。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

壁に叩きつけられていた天之河が飛び出し、大士に斬りかかる。

 

「はあっ!」

 

それに対し、大士は一瞬だけ全身にデジソウルを纏ったかと思うと、それを四肢に集中させ、両手両足にのみデジソウルを纏う状態になった。

次の瞬間、大士は地面を踏み砕きながら飛び出す。

 

「なっ!?」

 

一瞬で懐に飛び込まれた天之河は驚愕の声を漏らし、

 

「はっ!」

 

大士からの強烈なボディーブローを受ける。

 

「がはっ!?」

 

その威力で宙に浮いた所を、

 

「はぁあああああっ!!」

 

大士が後ろ回し蹴りで追撃。

そのまま吹き飛ばされて、再び氷壁に激突する。

その時の音で雫がむにゅむにゅと反応し、

 

「ん、んむぅ、な~にぃ? もう少し寝かせ……」

 

「アホか! この状況でよく寝ぼけられるな! 今すぐ起きねぇと人間砲弾にするぞ!」

 

南雲が割と本気そうな雰囲気で叫ぶ。

雫は次の瞬間ハッとなって南雲の背中からすごすごと降りる。

 

「爆睡し過ぎだろう。図太い奴だなぁ」

 

「ず、図太くなんてないわよ。ただ、南雲くんの背中が気持ちよゴニョゴニョ……」

 

「まぁ、八重樫のことはどうでもいいんだ。それより、あれ。何とかしてくれ」

 

「ど、どうでもいいって……っていうかこの状況、何がどうなって……え?」

 

寝ぼけていた雫がようやく現状に気付く。

 

「うぉぁあああああああああああああああっ!!」

 

天之河が起き上がって、再び大士に斬りかかる。

だけど、今度は一直線に攻撃せず、大士の目の前で〝縮地〟を使うと後ろに回り込んだ。

 

「ッ!」

 

首を狙って薙ぎ払われた聖剣を大士は咄嗟にしゃがんで躱す。

 

「ふっ!」

 

大士は前を向いてしゃがんだ状態から後ろに足を突き出し、足の裏が天之河の顎を捉える。

 

「がっ!?」

 

宙を舞う天之河。

 

「おお~。大士も結構やるなぁ………」

 

南雲は気楽にその状況を観戦している。

 

「このっ! 『悪者』の癖に!」

 

天之河は空中で体勢を立て直すと、

 

「〝天翔剣・嵐〟!!」

 

広範囲に拡散する無数の光の斬撃を放った。

 

「チッ!」

 

大士は防御態勢を取ると、全身にデジソウルを纏う。

大士に光の斬撃が降り注ぐけど、大したダメージは無いみたいだった。

 

「光輝! ダメよ! もう一人の自分に負けてはダメ! 正気に戻って、自分に打ち勝って!」

 

雫が天之河に向かって叫ぶ。

すると、天之河は今初めて雫や南雲達に気付いたようで、軽く目を見開くけど、すぐにニッコリと笑いかけた。

 

「雫………来ていたのか……………安心してくれ。雫のことは必ず助け出してみせるよ」

 

「光輝? 何を言って……」

 

天之河の言葉に雫は困惑した声を漏らす。

 

「雫もそこのデジモンの力でに洗脳されてしまったんだろ? 大丈夫。南雲やデジモンを倒せば解けるはずだ。……南雲、黒騎、元クラスメイトでも俺の大切な幼馴染を傷付けてただで済むと思うな。お前達とデジモン達を倒して、香織や他の女の子達にかけられた洗脳も全て解いてやる! そして、彼女達と共に、俺は世界を救う!!」

 

天之河はそう言うと大士に向き直る。

 

「何意味不明な事言ってんだあの馬鹿は?」

 

南雲が呆れた顔で私に問いかける。

 

「あの馬鹿の中じゃ、大士と南雲が諸悪の根源みたいよ。デジモンには洗脳の力があって、私達や香織達は、その力で操られてしまった悲劇のヒロインらしいわ」

 

「脈絡が無いにも程があるだろう?」

 

「あの馬鹿の中じゃそれで筋が通ってるみたいよ」

 

「笑えねぇ………」

 

南雲はくだらないと言わんばかりの表情だ。

 

「光輝! しっかりしなさい! 何を吹き込まれたのか知らないけれど、惑わされないで!」

 

「雫……」

 

「聞いて、光輝。自分の嫌な部分と向き合うのは本当に辛いことよ。私も危うく死ぬところだったから良くわかるわ。でも、受け入れて乗り越えないと先へは進めない。強くなって沢山の人を救いたいなら、ここで都合のいい思い込みに縋ってはダメ。目を覚ましなさい!」

 

雫がそう言うと、雫ににっこりと微笑みを向ける。

 

「ありがとう、雫。雫は、いつもそうやって俺の為に真剣になってくれるよな」

 

「光輝……」

 

目を覚ましたのかと雫の表情に喜色が浮かぶ。

だけど、

 

「そんな俺を心配してくれる表情を見せられると、危うく騙されそうになるところだったよ」

 

「……光輝?」

 

「わかってる。雫がその言葉を無理矢理『言わされている』事には気付いているから。雫が黒騎と同じように俺の『正義』を否定する様な事を言うはずが無いんだ………!」

 

「……」

 

雫は天之河が何を言っているのか理解できないようで呆然となっている。

 

「無駄よ。そう言う説得はさっき大士が全部やったわ。その上でそれが『自分の正義』を否定する事と受け取ったから、何を言っても大士が洗脳して言わせてるとしか解釈しないわ」

 

「救えねぇな…………」

 

南雲はゴミを見るような目で馬鹿を見やる。

 

「大丈夫。南雲からも黒騎からも救い出す。もう、好きでもない男の傍に寄り添う必要はないんだ。雫がいるべき場所に帰してみせるからな」

 

「……私がいるべき場所? それは何処のことを言っているのかしら?」

 

「そうか。……それもわからなくなってしまったんだな。可哀想に。南雲も黒騎も本当に許せないな」

 

「光輝。答えて」

 

「あぁ、それはもちろん、俺の隣だよ。今までずっとそうだったし、これからもそうだ」

 

『今まで』はともかく、『これから』の居場所をアンタが決めつける権利はないわよ!

雫の居場所を決めつけるなんて、大士の言った通り『傲慢』ね。

 

「光輝…………」

 

雫の言葉が弱々しくなる。

 

「問答は無用だ。洗脳された雫にはわからないだろうけど、これが〝正しい〟ことなんだよ。南雲! 黒騎の次はお前だ! 首を洗って待っていろ!」

 

さっき大士が言ってたことが良く分かるわ。

本人は正真正銘『善意』で動いている。

だけど、『善』も行き過ぎれば『悪』になる。

今の天之河はまさにそれだ。

しかもその事に本人が気付いて無いから止まろうともしない。

これ以上無いほど性質の悪い『正義』ね。

天之河は今まで力押しで大士に挑んでいたけど、正面からは分が悪いと悟ったのかスピードを主体とした攻撃に切り替えたようだ。

〝縮地〟を連続で使い、ヒット&アウェイで大士に斬りかかっている。

 

「はっ! せいっ!」

 

だけど、大士は全身にデジソウルを纏っているから天之河の剣は効かない。

 

「…………………」

 

大士はジッと耐えているだけ。

でも、それで正解だと思う。

天之河は〝覇潰〟を使ってるから、その消耗は激しい筈。

時間が経てば、天之河は勝手に力尽きる。

 

「はぁ、はぁ………卑怯だぞ! 正々堂々戦え!!」

 

自分の消耗を自覚しているのか身を護ってばかりの大士に文句を言う。

なんて勝手な。

 

「耐えてれば相手が勝手に消耗するんだから、守りを固めるのは普通に選択する戦術だと思うけど………」

 

葵も呆れた様に呟く。

すると、大士も大きく溜息を吐くと、

 

「はぁっ!!」

 

後ろから斬りかかってきた天之河の一撃を躱すと同時に強烈なカウンターのボディーブローを見舞った。

 

「ぐはぁっ!?」

 

吹き飛ぶ天之河。

 

「ほれ、反撃してやったぞ」

 

やれやれと息を吐く。

大士は優しいからなるべく傷付けないように天之河の消耗を待ってたみたいだけど、ああまで言われてムカついたから殴り返したみたいね。

 

「お前さえ、お前らさえいなければ、全部上手くいってたんだ! 香織も雫もずっと俺のものだった! 神代さんや園部さんも俺のものになっていたんだ! この世界で勇者として世界を救えていた! それを、全部お前らが滅茶苦茶にしたんだ!」

 

「……」

 

本当に何言ってんのコイツ?

昔の大士が世界を物語としてしか見てなかったって、こういう事かしら?

多分私が思うに昔の大士よりも酷い。

大士は世界を物語として見ていたとは言ったけど、自分が『主人公』とは言っていなかった。

あくまで『主人公の仲間』という形だ。

だから自分が『特別』だとは思いこんでも、世界が自分の為に動いているとは考えなかった。

でも、天之河の言動は完全に自分を『主人公(ヒーロー)』として見ている。

自分が世界の中心のつもりで、世界は自分の為に動いていると思っていると言っても過言じゃない。

 

「人殺しのくせにっ。簡単に見捨てるくせにっ。そんな最低なお前らが、人から好かれるはずがないんだ!」

 

「……だから、洗脳したって?」

 

「そうだろう! それ以外に何がある! 香織も雫も、神代さんも園部さんも、ユエもシアもティオも、みんな洗脳して弄んでいるんだっ。どうせ龍太郎や鈴だって洗脳するんだろう!? そうはさせない。 俺が勇者なんだ。みんなお前達の手から救い出して、全部、全部取り戻す! お前らはもう要らないんだよっ!!」

 

「…………要らない………ね」

 

大士は本当に呆れた様に呟いた。

勇者(自分)』を散々苦しめた『悪者(大士と南雲)』は、いい加減退場しろって事かしら?

その時、また新たに壁が開いてそこから残りの皆が現れた。

 

「お前らも無事だったようだな」

 

南雲が皆を見回してそう言う。

 

「……ん。平気。それより、その馬鹿はなに?」

 

「そうですよ。何か随分なこと言ってますけど」

 

ユエとシアが不機嫌そうな声色でそう言う。

恋人(南雲)を悪く言われた事と、呼び捨てにされた事を不快に思っているようね。

 

「簡単に説明すると、自分の虚像に負けてご都合解釈全開で大士と俺に八つ当たり中ってところだ。虚像を取り込んで力の底上げをしてやがる。自分を取り戻せれば試練クリアなんだろうが……無理だな。八重樫ですら匙を投げた所だ」

 

「雫ちゃんが匙を投げるって相当だね………」

 

香織が呆れた様に呟く。

その時、天之河も皆が合流したことに気付いたのか、ニッコリと笑みを向けた。

 

「みんな、来てたんだな。少し待っていてくれ。今、こいつと南雲、そしてデジモン共を倒してみんなを解放してみせるから」

 

いい加減殺していいかしら?

ユエ達も不快な表情を隠そうとして無いし、葵、南雲、香織、雫に至っては殺気が漏れてるんだけど。

勿論私も。

すると、坂上と鈴が声を上げた。

 

「なに言ってんだよ、光輝! どうしちまったんだ! 正気に戻れよ!」

 

「光輝くん、しっかりして! 倒さなきゃならないのは黒騎君や南雲君じゃなくて、自分自身だよ!」

 

だから無駄だって。

 

「……黒騎、南雲。まさか、既に龍太郎と鈴まで洗脳してるなんて。どこまで腐っているんだ。どこまで俺から奪えば気が済むんだ! あぁ、そうか。今、わかったよ。恵里のことも……お前達の仕業なんだな? あんな風に豹変するなんておかしいと思っていたんだ。でも、お前達が洗脳したんだとすれば全ての辻褄が合う」

 

「合わねぇよ、ド阿呆」

 

南雲が思わず突っ込む。

 

「今更、言い訳は見苦しいぞ。必ず罪を償わせてやる」

 

「お前の阿呆さ加減も十分大罪だと思うが……」

 

大罪の八つ目に『阿保(天之河)』も入れるべきかしらと、私は本気で思った。

天之河が雄叫びを上げて2つの聖剣を掲げる。

魔力が激しく渦巻き、聖剣に集中していく。

多分〝神威〟を放つつもりなんでしょうけど………

 

「はぁ…………」

 

大士は溜息を吐く。

多分隙だらけだから、殴るべきかどうか迷ってる感じね。

でも、大士は殴りかかることはしなかった。

デジソウルを全身に纏い、天之河に向かって構える。

天之河も大士を見据えると、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべ。

 

「終わりだ! 黒騎!!」

 

天之河は2本の聖剣を振り下ろす。

 

「消し飛べ! 〝神威〟!!」

 

白と黒の螺旋を描いた魔力砲撃が放たれた。

それに対し、

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

大士は全身にデジソウルを纏ったまま、地面を蹴ってその魔力砲撃に向かって飛び込んだ。

大士が魔力砲撃に呑み込まれ、その魔力砲撃が氷壁に激突して粉砕した。

 

「ははっ! やったぞ! 黒騎を倒した! 南雲、次はお前の番だ!」

 

天之河はそう言いながら南雲の方を振り向くけど、南雲は呆れた目で天之河を見ていた。

 

「止めを刺したことを確認する前に『敵』から目を離すなよ、甘ちゃんが………!」

 

南雲がそう言った瞬間、砲撃を放った際に巻き起こって視界を塞いでいた煙を切り裂き、大士がデジソウルを纏ったまま飛び出してきた。

 

「なっ!?」

 

天之河が驚愕の声を漏らす。

懐に踏み込んだ大士は、右の拳を握りしめ、全身のデジソウルを右手のみに集中させる。

 

「くっ………!」

 

天之河は咄嗟に黒い方の聖剣を盾にした。

次の瞬間、

 

「うぉらぁああああああああああああああっ!!!」

 

大士が放ったのは抉り込む様に打ち込まれるボディーブロー。

その一撃は、黒い聖剣を枯れ木の如く圧し折り、天之河の金色の鎧を陥没させてその腹に突き刺さる。

 

「がっ…………はぁあっ………………!?」

 

絶叫を上げる暇もなく、衝撃が天之河の体を貫く。

その瞬間、天之河の背中から大士の金色のデジソウルが噴き出し、

 

『ぐわぁあああああああああああああああっ!?』

 

その奔流に押し出される様に虚像の天之河がデジソウルによってその姿をかき乱されながら空中に消えた。

天之河は身体をくの字に折り曲げた状態で気絶し、大士が拳を引くとその場に倒れる。

 

「ったく、世話の焼けるガキだ」

 

大士がそう呟く。

精神年齢は私達よりもずっと年上だという大士の言葉は、妙に説得力がある様に聞こえた。

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 





第61話です。
もうちょっとあっさり終わって、神代魔法&概念魔法取得まで行くかと思ったら、妙に楽しくなってしまって無駄に長くなりました。
7つの大罪云々は書いてる最中に唐突に思いついて入れてしまった。
まあ、全部持論なんで異論は認めます。
デジソウル万能説加速しました。
何故か虚像を吹き飛ばします。
魔力とは相性悪いのに………!
寧ろ相性悪かったから吹っ飛ばせたって事で(ご都合主義)。
次回で神代魔法と概念魔法取得です。
お楽しみに。
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