ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

66 / 298
第65話 女神降臨

 

 

 

 

「偽りの神よ……………この方を傷付けることはこの私が許しません…………!」

 

呆然としていた俺を護る様に立っていた女性は、蒼銀の髪と、真っ白な翼を持っているが、その顔は葵そのものだ。

 

「あ………葵……………?」

 

俺は呆然としたまま呟く。

その呟きに彼女はこちらに振り向くと、優しい微笑みを浮かべた。

その時、

 

「な、何者だ貴様は…………!?」

 

エヒトが狼狽えた様に問いかける。

すると、その女性は目付きを鋭くしてエヒトを睨むと、

 

「『黙りなさい』…………!」

 

その口から命令が発せられる。

 

「ッ………………!?」

 

その命令通り、エヒトは驚愕した表情のまま、声を出すことが出来なくなった。

その目が何をしたと彼女に訴えている。

 

「ただの『神言』です。貴方の使っていた、声に魔力を乗せて相手の魂に働きかける『神言の真似事』ではなく、『魂の格』が上の者から下の者へと行う『真の神言』…………もちろん心強き者であれば抗う事は難しくありません。ですが、貴方如きには抗う事は不可能です」

 

エヒトに向かってそう言い放つ。

その様子を呆然と見つめ続けていた俺は、

 

「葵…………なのか…………?」

 

その彼女にそう問いかけた。

彼女は再び俺に振り向くと、

 

「その問いかけの答えは、少しお待ち下さい…………」

 

彼女は軽く腕を振ると、光の波動が広がり、重傷だったハジメやダメージを受けていた皆の傷を瞬く間に癒し、ミュウ達を閉じ込めていた檻もあっさりと消し去り、怪我をしていた異世界召喚組もあっという間に治癒された。

それから彼女はエヒトへと視線を向けると、

 

「『身体を持ち主へ返しなさい』」

 

その命令が発せられると、ユエの身体から光の球が分離した。

ついでにアルヴの身体からも光の球が分離する。

 

「ユエ!」

 

ハジメが駆け寄ると、

 

「………ん、ハジメ………?」

 

「ユエ………なんだな?」

 

「…………ん、あんな奴に身体を乗っ取られるとは不覚」

 

ハジメの確認の言葉に頷きながらそう言うユエ。

 

「ユエ…………おかえり」

 

「ハジメ……………ん、ただいま」

 

ハジメはユエを抱きしめ、ユエもハジメの背に手を回す。

そんな2人を優しく見守る彼女。

彼女はユエとユエの叔父から分離した光の球を見据える。

恐らくあれがエヒトとアルヴの魂だろう。

 

「数多の運命を狂わせ、神の名を騙る異世界の魔術師の魂よ……………」

 

エヒトに向かって『異世界の魔術師の魂』と言った事に驚く。

やはりエヒトは本物の神では無かったようだ。

 

「運命神 アルオイスの名の下に断罪します…………………『消滅しなさい』」

 

『や、やめろ………! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

『き、消えたくなぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!』

 

ただ一言。

それだけでエヒトとアルヴの魂は消え去った。

 

「……………どうなったの?」

 

ユエが呟くと、

 

「2つの魂は消滅しました。輪廻の環に戻るのではなく、存在そのものの消滅です」

 

存在そのものの消滅と聞いて俺は戦慄を覚えた。

それから俺に向き直ると、

 

「お待たせしました。黒騎 大士さん……………先程の問いにお答えします。確かに私はあなた方と共に歩んできた『神代 葵』である事は間違いありません」

 

彼女はそう言うが、まるで別人であるかのような話し方だ。

 

「ですが、今の私は『アルオイス』……………『運命を司る女神 アルオイス』。それが今の私です」

 

「アル………オイス…………? 運命の………女神………?」

 

俺はその言葉を聞いて、以前も思った俺を転生させてくれた女神様の事を思い出した。

すると、彼女………女神アルオイスと名乗った葵は少し目を伏せ、

 

「あなたには…………『あなたを死なせてしまった女神』と言った方が分かりやすいかもしれません」

 

「ッ!?」

 

俺は思わずハッとなる。

 

「それってまさか………!」

 

ドルモンを支えながら戻ってきた優花が、丁度話を聞いたのか驚愕の声を漏らす。

 

「その通りです。大士さんの前世において、私の過失があなたの命を奪いました……………」

 

まるで懺悔の様に口にする葵。

この話を理解しているのは、俺の前世の話を聞いた優花、ドルモン、リュウダモン、ハックモンだけだろう。

他は何の話か意味が分からず怪訝な表情をしている。

 

「……………その女神様が、何故『葵』に?」

 

「………………………大士さん。あなたが上級神様に私の減刑を願い出た結果、上級神様はその願いを受け入れました」

 

『上級神様』というのは、俺を転生させてくれた女神様の事だろう。

 

「本来は数万年の幽閉どころか存在そのものの消滅すら視野に入れていた筈の私への罰は、あなたの願いによって、『神としての力と記憶を封印され下界に人間として転生する』罰へと軽減されました……………」

 

『存在そのものの消滅』と聞いて、自分の予想以上の大事になっていたのかと驚愕する。

 

「記憶と力は魂の奥底に封印されていましたが、こちらの世界に召喚され、魂へ干渉されたり、魂魄魔法の取得などの影響で、徐々に封印が緩んできていました。そして先程の魂魄魔法が最後の切っ掛けとなり、記憶と、力を僅かに取り戻せるほどにまで封印が緩んでしまったのです」

 

それがこの姿って事か。

すると、葵は再び口を開く。

 

「………………人間へ転生する際、上級神様は私に使命を与えました」

 

「使命…………?」

 

「大士さん、あなたはこの世界にとってはイレギュラーな存在です。それは同時に、『誰とも結ばれない運命』を背負って生まれてきました」

 

「誰とも………結ばれない…………」

 

「じゃあ、大士が異性から不自然に好かれなかったのは………」

 

「そう『運命』で決定づけられていたからです。より正確には、イレギュラーである大士さんの『運命』と、交わる『運命』の持ち主が居なかったと言うべきですが…………」

 

「そういう事だったのか……………」

 

今までの疑問がようやく解けて何処かスッキリする。

 

「よって、上級神様は、あなたと共に歩む使命を私に与えました」

 

「えっ………………?」

 

「あなたを支え、共に歩むこと。それが、私があなたに出来る償いだと……………」

 

その言葉を聞いて、ショックを受ける自分が居る事に気付いた。

 

「…………………葵が俺を愛してくれたのは…………決められた事だったのか…………?」

 

「大士さん………………」

 

「答えてくれ! 葵が俺と一緒に居てくれたことは、予め決められた……………償いの為の偽りの愛だったのか!?」

 

俺は思わず声を荒げてしまう。

今まで葵が傍にいてくれた事も、俺を愛してくれたことも、全ては決められた………偽りの愛だったのか?

 

「……………………………」

 

葵は暫く沈黙した後、

 

「………………はい」

 

「ッ…………!?」

 

頷いたその返事に、俺は今までの思い出に罅が入った気がした。

 

「………『本来は』その筈でした」

 

「………ッ?」

 

続けられたその言葉に俺はハッとなって顔を上げる。

 

「本来であれば、『神代 葵(わたし)』が『転生した(あなたの)魂』を持つ者と出会った際、その魂の持ち主の姿に強烈な好意を植え付けるように…………要はこれ以上無いほどに一目惚れをさせるようになっていました」

 

その言葉を俺は怪訝に思う。

学校で会っていた時は、葵は特にそんな素振りは無かった。

 

「ですが、そこで予想外の事が起こりました。初めて『転生した魂の持ち主(あなた)』が『神代 葵(わたし)』の前に現れた時、それはアルファモンに進化した姿でした」

 

そういえば、アルファモンでデ・リーパーを倒して回っていた時に、葵を助けたのが初めての出会いだったか。

 

「ドルモンと共に進化したとはいえ、アルファモンも『転生した魂の持ち主』に違いありません。それによって『神代 葵(わたし)』は、アルファモンの姿に対して強烈な好意を抱くようになったのです」

 

そう言えば、葵はずっと黒い騎士(アルファモン)の姿を追い続けていたんだったか。

 

「ですが、人間とは違うアルファモンに好意を持ったことで、同じ人間に好意を抱いていれば、気付くことも無かった自分の気持ちの不自然さに『神代 葵(わたし)』は気付いてしまいました」

 

「あっ!」

 

優花が何かに気付いたように声を上げた。

 

「どうした?」

 

「う、うん…………まだ奈落の攻略の途中の話なんだけど、葵が自分の気持ちに苦悩してた時があったから…………」

 

そんな事があったのか…………

 

「更に2つ目の予想外が、この世界、『トータス』への召喚です。それによって、召喚された者達全ての運命が狂ってしまったと言っても過言ではありません。それによって大士さんの『誰とも結ばれぬ運命』も、僅かながら綻びを見せました。とはいえ、それでも『異性から好かれない』という因果は残ってしまいましたが」

 

「綻び…………」

 

「『神代 葵(わたし)』には元々、その因果は通用しません。なので、あなたの姿をありのまま受け止められました。あなたと共に過ごす内、あなたの優しさ、強さ、弱さに触れていきました…………そして、決められた運命ではない、『神代 葵(わたし)』自身の意志であなたに惹かれていきました。決められた運命の影響が全く無いとは言いませんが………『神代 葵(わたし)』が『黒騎 大士(あなた)』を愛したのは、紛れもなく私自身の意志ですよ」

 

葵は微笑んでそう言い切った。

 

「葵……………」

 

「そして優花さん」

 

葵が視線を優花へ移す、

 

「私………?」

 

「あなたは自らの運命を超え、大士さんを愛しました………」

 

「『運命』なんて知らないわ。私は大士を愛した。それが全てよ」

 

「ええ、そうですね」

 

優花の言葉に葵はニッコリと笑みを浮かべると、

 

「…………………あなたになら、彼を任せられます」

 

「えっ? ちょっと! 今の如何いう意味!?」

 

葵の言動に優花が思わず聞き返す。

だが、葵は俺達に背を向けると、

 

「もう時間がありません…………」

 

そう呟いて天を見上げる。

すると、強烈な光の柱が、天から俺達の前に降り注ぐ。

 

「な、なんですか!?」

 

シアが驚愕すると、葵がその光の柱に向かって跪き、頭を垂れた。

その光の柱が徐々に細くなる。

すると、その光の柱の中に圧倒的な存在感を持った『存在』がいる事に気が付いた。

『威圧』されているわけでもないのに、その存在がそこに居るだけで膝を着きそうになる。

ハジメ達ですら立っているのがやっとの様だ。

光の柱が消えると、そこには空中で翼を広げた1人の女神がいた。

 

「あの女神様は……………!」

 

何故女神と分かったのかと言えば、その女神には見覚えがあったからだ。

それは俺を転生させてくれた銀髪の女神様だった。

葵は頭を垂れたまま、

 

「お久しぶりです。上級神様…………」

 

そう呟く。

すると、

 

「下級神アルオイス……………あなたは自分がした事を分っているのですか?」

 

その女神様は葵を責めるような声色でそう話しかけた。

 

「はい…………下界において無許可での『顕現』。一定以上の『神力』の無断使用。そして、下級神独断での断罪の執行……………全てにおいて『神の規律』を破る大罪です。間違いなく『存在の消滅』を課せられる罰を与えられるでしょう」

 

対して葵は落ち着いた声でそう返した。

 

「そこまで分かっていながら何故?」

 

上級神様が聞き返すと、葵は一度俺に視線を向け、すぐに上級神様に戻すと、

 

「私が大士さんを護りたかったからです…………この『存在』の全てを懸けてでも………」

 

「……………それは、彼への贖罪の為ですか?」

 

「いいえ、違います」

 

上級神様の言葉を、葵は即否定する。

 

「贖罪の為でも使命の為でもありません。私が彼を愛しているから…………それだけです」

 

「……………葵」

 

葵の言葉に俺は胸を打たれたような衝撃を受ける。

 

「その為に、あなたは破滅の道を選ぶというのですか?」

 

「覚悟の上です」

 

上級神様の言葉に迷い無く答える葵。

 

「良い覚悟です……………下級神アルオイス」

 

「はい」

 

「下界での無許可での顕現。一定以上の『神力』の無断使用及び下級神独断での断罪の執行。その全てを踏まえれば、『存在の消滅』の刑が妥当だと考えます」

 

「はい。その罰を受け入れ…………」

 

「待ってください!!」

 

俺は思わず声を出した。

今まで上級神様の存在感に圧され、声を出す事すら出来なかったが、葵が『消滅』すると聞いて、やっと声が出た。

 

「女神様! 葵を赦してください! 葵は俺達を助ける為に決まりを破ったんです! だから…………!」

 

「………………『口を挟まないでください』」

 

上級神様がそう告げた瞬間、声が出なくなる。

これが上級神様の『神言』なのだろう。

エヒトの紛い物の神言の様に強制力がある物ではない。

ただ純粋に、その命令を聞かなければいけないと思ってしまう。

だが、

 

「……………ぅ………ぁ…………あああああああああああああっ!!!」

 

俺は気合を入れて声を絞り出した。

 

「黙りません! どうか葵を許してください!!」

 

俺は葵の前に出ると、上級神様に土下座をする。

 

「…………神とは全てにおいて平等でなければなりません。下級神個人の意思で誰かに肩入れすることも、神としては失格です」

 

上級神様は淡々とそう言い放つ。

 

「……………どうしても………葵を許してくれないのなら…………俺は………! あなたと戦います!」

 

俺は土下座の状態から立ち上がると、拳を握ってデジソウルを発動させる。

 

「だ、駄目です!? やめてください大士さん! 上級神様は私達運命を司る神を束ねる御方! 人間であるあなたが敵う御方ではありません!」

 

「関係ない! 俺からお前を奪おうとするのなら、いくら恩神であるあなたと言えど、赦しはしない!!」

 

「大士が戦うなら………俺だって………!」

 

ドルモンが俺の横に並ぶ。

 

「葵は某のテイマーだ。例え女神だろうと関係ない! 葵を護るのは某の役目!!」

 

更にリュウダモンも葵を護る様に立ちはだかる。

 

「リュウダモン…………!」

 

葵が呟く。

上級神様はそんな俺達を一瞥した後目を伏せ、

 

「『跪きなさい』…………!」

 

上級神様の先程よりも強い口調の『神言』が俺達を地面に跪かせようとする。

 

「あぐっ………!? ぐぅぅ………!」

 

「ッ………倒れない!」

 

「葵はっ………護る………!」

 

だが、俺達は膝を震わせながらもその『神言』に抗う。

 

「お、お止めください上級神様!! 罰は私が受け入れます! ですから、どうか大士さん達だけは…………!」

 

「そんな事は………認めない………!」

 

葵の言葉を遮って俺はそう言う。

 

「葵が消えるなんて事は…………俺は絶対に許容できない!」

 

俺は叫ぶとデジソウルを全身に宿し、『神言』を振り切ってしっかりとその場に立つ。

 

「だから俺は、『神』に逆らって地獄に落ちようとも………葵は絶対に渡さない!!」

 

「ッ……………大士っ………!」

 

涙を流す彼女(アルオイス)の口調が最後に『葵』に戻った気がした。

俺はDアークを掲げる。

 

「行くぞ! ドルモン!!」

 

「おおっ!!」

 

葵の為に『神』へと反逆する。

その決意を固めて進化しようと…………

 

「………………『話は最後まで聞きなさい』!」

 

若干の呆れを含んだ『神言』が響き渡った。

 

「えっ?」

 

今までと違う声色に、俺は思わず動きを止めてしまう。

上級神様は改めて葵に視線を向けると、

 

「アルオイス…………確かにあなたは下界に顕現し、規定以上の神力を使用して2つの魂を断罪しました」

 

「はい…………」

 

その言葉に葵は頷く。

すると、

 

「ですが、神を騙るエヒトルジュエとその眷属のアルヴヘイト。その2つの魂にはつい先ほど神会において断罪が決定していました」

 

「「えっ?」」

 

俺と葵の声が重なる。

 

「世界その物を遊戯盤とした神気取りの遊戯……………この世界の内だけで行われていたのなら、『神』は手を出すつもりはありませんでした。この世界に辿り着いたエヒトルジュエは当時原始的で、魔物達に蹂躙されるだけだった人類に知恵と力を与え、人間の生活圏を広げたからです。エヒトルジュエが行った神の遊戯も、『神』の間では為政者による戦争と判断していました……………ですが、今回、エヒトルジュエはやってはならない事をしました。それが別世界からの召喚です。異世界からの召喚は、召喚者の運命を狂わす行為。『神』の間でも重罪です。しかし、『救い』を求める場合に限り、見逃すようにしてきました。ですが、全ての世界に常時目を光らせているわけでもないので、見落とす場合もあるわけですが………………ですが今回は、私が転生させたあなたと、アルオイスが召喚に巻き込まれた事で、早い段階からエヒトルジュエの蛮行が明らかになりました。そして、神会においてエヒトルジュエとアルヴヘイトの処遇を過去を踏まえて審議した結果、エヒトルジュエ、及びその眷属アルヴヘイトを、運命を狂わす大罪人として断罪することが決定されました。そしてその役目はアルオイス、あなたに言い渡される筈でした」

 

「えっ? し、しかし私は現在罰を受けている身で…………!」

 

「エヒトルジュエは神性を備えていたとはいえ、その力は『神』としては、下の下の下。一時的にあなたの封印を解き、対処させるつもりでした。そうすれば、天界の『神』に余計な力を使わせずに対処することが出来るからです。その前に封印が緩んでしまうとは思いませんでしたが……………」

 

「じゃ、じゃあ葵の罪は…………」

 

「フライングですが見逃しましょう。アルオイスが力を行使したのは神会による決定の後なので」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

「ですが、規律を破ろうとしたことには違いありません。よって、アルオイスには、私個神から罰を言い渡します」

 

「ッ…………!」

 

「下級神 アルオイス。あなたに罰を言い渡します」

 

「はいっ………!」

 

葵は覚悟を持って返事をする。

 

「引き続き、『神代 葵』として人間の生を全うしなさい」

 

「はい…………えっ?」

 

葵は覚悟を持って頷いたが、その内容に思わず声を漏らした。

 

「『神代 葵』としての生を終えた時点であなたは再び『神』の座に戻るはずでしたが、規律を自分から破ろうとする者を神の座に戻す訳にはいきません。よって、『神代 葵』としての生を最後まで全うし、罪を最後まで償いなさい」

 

それはつまり、葵はこれからも『葵』としていられるという事で…………!」

 

「は、はい! 謹んでお受けいたします!」

 

葵もその事に気付いたらしく深く頭を下げ、

 

「ありがとうございます! 女神様!」

 

俺は土下座する勢いで頭を下げた。

 

「…………本音を言えば、あなたには早く天界に戻ってきてほしいんですけどね」

 

上級神様は困ったような笑みを浮かべた。

 

「?」

 

俺が何故と首を傾げていると、

 

「アルオイスは下級神と言えど、その力は既に上級神に迫ります。『神』としては若い方なので経験が足りませんが、いずれは私の後釜と言われるほどに優秀な『女神』なのですよ。あなたを過失で死なせてしまった事で、その座は遠のいてしまいましたが、優秀な『女神』であることには変わりませんから。普通の下級神の数十人分に匹敵しますよこの子は」

 

葵ってそんなに凄い女神だったのか…………

俺は思わず葵を見る。

葵は恥ずかしそうに縮こまっている。

背中の翼も折り畳んでモジモジする姿が可愛らしい。

 

「なので、現在の運命神達はアルオイスが抜けた穴を埋めようとてんやわんやしています。居なくなって初めて彼女に頼りきりだった事を実感しているようですね」

 

それって、他の神が葵に仕事押し付けまくってたんじゃね?

つーか、俺を死なせたミスも葵に仕事を押し付けすぎた結果じゃね?

俺がそんな事を思っていると、上級神様はまた困った笑みを浮かべた。

そう言えば上級神様って、心を読めるんだったか…………

つまり図星なのか?

俺がどう判断するか迷っていると、

 

「黒騎 大士さん」

 

上級神様が俺に声を掛ける。

 

「はい」

 

「『神』は必要以上の下界への干渉を禁じています。なので、私の力で召喚者達を地球へ戻すことは出来ません」

 

その辺はハジメがクリスタルキーなんて物を作ったからそう遠くない内に帰れると思うが。

 

「それから、あなたの戦いにも助力することは出来ません」

 

「ッ……………はい」

 

「ですが、諦めなければきっと『運命』は拓けます。最後まで諦めないでください」

 

「ご忠告、感謝いたします」

 

俺は改めて万感の思いを込めて、一礼した。

 

「あなた達の『運命』に幸があらんことを…………」

 

上級神様はそう言い残すと、再び天から降り注いだ光の柱に包まれ、その光の柱が消えると同時に姿を消した。

辺りに静寂が訪れる。

 

「………………………葵」

 

俺が呼びかけると、女神姿の葵は俺に振り向く。

 

「大士…………」

 

「…………これからも、一緒に居られるんだよな?」

 

俺がそう問いかけると、葵は笑みを浮かべ、

 

「うんっ…………!」

 

そうはっきりと頷いた。

漸くホッとできた所為か、今の葵の姿をよく見る余裕が出てくる。

背中の白く大きな翼に腰まで届く蒼銀の髪。

透き通った碧眼と、ギリシャ神話に出てくる神様が纏う様な白き衣。

そんな俺の視線に気付いたのか、楽しそうに笑みを浮かべ、

 

「ふふっ! 如何かな?」

 

俺に見せつけるように翼を大きく広げてバサッバサッと数回動かす。

今更だが天使フェチの俺としては今の葵の姿はクリティカルヒットだったりする。

 

「あ、ああ…………いつもの葵ももちろんだが、今の葵も、その…………綺麗だ…………!」

 

俺がそう言うと、葵は嬉しそうに頬を染めた。

 

「これからは何時でも好きな時にこの姿になってあげるからね!」

 

葵はそう言いつつ翼を消し、黒髪黒目といつもの姿になる。

 

「…………つーか、なれるの?」

 

俺が疑問を覚えながらそう言うと、

 

「うんっ」

 

葵が頷くと、再び女神の姿になる。

 

「良いのかそれ?」

 

罪の1つに下界での無断の顕現もあったと思うんだが。

 

「上級神様が去り際に許可してくれたからね。使える神力は微々たるものだけど。多分、この力で大士を手伝ってあげてって事だと思う。大士は何かとトラブルに巻き込まれる『運命』みたいだから」

 

「……………ほんとあの女神様には感謝しか無いな」

 

「上級神様は良い(ひと)だから」

 

葵はそう言って笑う。

すると、漸く皆がチラホラと集まって来た。

 

「葵…………行こう」

 

俺は手を差し出す。

 

「うん! これからも一緒だよ、大士!」

 

葵が俺の手に自分の手を重ね、俺達は皆の方へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【葵のステータス】

 

 

 

 

 

神代 葵(運命神 アルオイス) 17(?)歳 女 レベル:?

 

天職:デジモンテイマー・女神

 

筋力:6000(女神化時120000)

 

体力:6000(女神化時120000)

 

耐性:6000(女神化時120000)

 

敏捷:6500(女神化時130000)

 

魔力:6500(女神化時130000)

 

魔耐:8000(女神化時160000)

 

技能:言語理解・神力(微)・重力魔法・再生魔法・魂魄魔法・昇華魔法・変成魔法・女神化

 

 

 

 

 

 




第65話です。
女神様の降臨の回でした。
アルオイスだけでは無く上級神様まで御降臨。
エヒトとアルヴは瞬殺でした。
感想で散々エヒトを小物と言っていたのはこのためです。
エセ神が本当の神様に敵う訳は無いのです。
何だかんだで葵はこれまで通り。
次回は皆への説明と…………遂にあの騎士団が…………
お楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。