7体のロイヤルナイツを前に辛くも逃げ切った俺達は、ハインリヒ王国の王城に避難していた。
リリアーナ王女の計らいで王城の一室を借りることが出来た俺達は仲間内で集まっていたが、その空気は重苦しいものだった。
「……………………」
ハジメは平静なように腕を組みながら壁に背を預けているが、時折組んでいる腕の手に力が入っており、悔しさを滲ませているように思える。
「………………強敵………でしたね…………」
シアがポツリと呟く。
「………ん、究極体に進化したハジメ、カオリ、シズクが手も足も出なかった…………」
ユエがそう漏らし、
「一体奴らは何者なのだ? デジモンの究極体の様だが、何故同じ究極体であるご主人様たちが成す術無くやられるのだ?」
ティオが俺の方を向いて疑問を漏らす。
「…………一言で究極体と言っても、その中にもピンからキリまでいるんだ」
俺はそう言う。
「確かにハジメ達のブリッツグレイモン、クーレスガルルモン、ガイオウモンは、並の究極体を圧倒できる力を持っている。だが、あいつらロイヤルナイツは最低でも並の究極体を4体同時に相手しても歯牙にもかけない強さを誇る」
「その『ロイヤルナイツ』というのはなんだ?」
俺の言葉にハジメが口を出す。
「『ロイヤルナイツ』は13体の聖騎士型デジモンからなる聖騎士団の事だ。前世の記憶からだと、その多くは『イグドラシル』に仕えていることが多い。この世界のロイヤルナイツも、その例に漏れず、イグドラシルに仕えている様だな」
「ちょ、ちょっと待って! 13体って事は、同じぐらい強い敵が、最低でもあと6体はいるって事なの!?」
優花が驚愕しながら聞いてくる。
俺はその言葉を聞くと、優花の傍にいるハックモンに一瞬視線を落とす。
その表情は、戸惑うように視線を下げていた。
「………………いや、恐らくだが、現在イグドラシル側に付いているロイヤルナイツは、あの7体だけだ」
俺は自分の考えを口にする。
「どうしてそう思う?」
ハジメが虚偽は許さないと言わんばかりの眼光で俺を睨む。
「………………ロイヤルナイツに属する残り6体の内の1体、『デュークモン』。そのデジモンは、6年前に共に戦った俺の仲間の究極進化した姿だ」
「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」
「そして……………俺とドルモンが進化する『アルファモン』もロイヤルナイツに属する1体だ」
「そう言えば………デュナスモンが『神話の中のロイヤルナイツ』って言ってたっけ………」
葵が呟く。
「まあ、アルファモンには、暴走したロイヤルナイツに対する抑止力という役目があるらしいけどな」
俺はそこで一旦言葉を区切ると、
「……………そして…………残りの4体は恐らく……………」
俺はそう言いながら、ブイモン、クダモン、ドラコモン、ハックモンに視線を移す。
「どうしたんですか………?」
シアが首を傾げる。
「残りの4体は、『アルフォースブイドラモン』、『スレイプモン』、『エグザモン』………………そして『ジエスモン』」
「ッ……………アルフォース………ブイドラモン…………もしかして………!」
ユエは名前から察したのかブイモンを見る。
「ユエの思っている通り、アルフォースブイドラモンはエアロブイドラモンの進化系だ。そしてスレイプモンもチィリンモンの………エグザモンは少しややこしいがドラコモンの究極体だ。そして、ジエスモンは……………」
俺がそう言いながらハックモンに目を向けようとして、
「………ジエスモンは………私だ………!」
その前にハックモン自身がそう答えた。
「ハックモン………?」
優花が怪訝な声を漏らすが、
「……ハックモン。やっぱり記憶が戻ってたんだな……………」
俺がハックモンに呼びかけると、ハックモンは観念したように目を伏せる。
「ああ…………師匠の拳を受けた時にな…………」
「ガンクゥモンか………」
確かハックモンとガンクゥモンは師弟関係だ。
その師弟の絆は他のロイヤルナイツよりも深いものだろう。
「知っていたか……………」
「今だから言うが、お前達と出会った時点で、お前達がロイヤルナイツの退化した姿じゃないかという事は予想していた。アグモンとガブモンの状況から鑑みるに、イグドラシルがデジタルワールドからロイヤルナイツを呼び出す時に、四聖獣から妨害が入ったんじゃないのか?」
「その通りだ。私達はイグドラシルの命により、デジタルワールドからこの世界に召喚される所だった。しかし、それを良しとしない四聖獣によって私達は記憶を封印され、力を失って成長期まで退化し、そして流れ着いた先が…………」
「偶然にも私達の前だったのね…………」
ハックモンの言葉に続いて優花が呟く。
「ああ……………」
ハックモンは頷くと黙り込んだ。
「…………それで、ハックモンは如何するつもりなんだ?」
そんなハックモンに俺は問いかける。
「如何………とは………?」
「未だ記憶が戻らないブイモン達はともかく、お前は記憶が戻ったんだろう? ならば、仕えるべき主の事も思い出したはずだ」
「ッ………………!」
俺の言葉にハックモンは動揺する。
「ま、待っ………!」
優花が何か言う前に俺は視線で優花を制する。
確かに優花にはハックモンを説得する権利はある。
だが、先ずはハックモンの答えを聞いてからだと俺は思っていた。
「ハックモン、俺はお前がどんな答えを出しても尊重するし、イグドラシルへの忠誠の為にロイヤルナイツに戻ると言うのなら止めはしないし、『敵』になる前に始末するなんて真似もしない事を約束する」
俺がそう言うと、
「……………ドルモン…………お前もロイヤルナイツの1人なのだろう………? お前は何故大士と行動を共にする?」
ハックモンはドルモンに問いかけた。
すると、
「そんなの俺が大士と一緒に居たいからに決まってるよ!」
ドルモンは迷いなくそう言う。
「………一緒に………?」
「そうさ。確かに
ドルモンの言葉に俺は笑みを浮かべる。
「そうか……………」
ハックモンは一度考えるように目を伏せると、すぐに目を見開き、
「……………正直に言えば、イグドラシルへの忠誠心は残っている」
「ッ………!」
優花は何か言いそうになったが必死に自分を押し止める。
すると、
「だが…………」
ハックモンは言葉を続ける。
「私は優花と共に在ることが間違いとはどうしても思えない…………」
「ッ………ハックモン………」
ハックモンは一度優花と目を合わせる。
「だから私は確かめたい。もう一度イグドラシルに会って、デジモンと人間のパートナー関係は本当に間違いなのかと問いかけたい」
「そうか……………」
俺が頷くと、次の瞬間には優花がハックモンを抱きしめていた。
「ハックモン………! 良かった………!」
「優花…………例え記憶が戻っても、私が優花のパートナーであることには変わりない」
「うん………!」
ハックモンの言葉に優花は嬉しそうに頷いた。
「…………で? これからどうする? 奴らの話からすると、あちらさんの『神様』は、俺達を執拗に狙う様だが…………」
ハジメがそう言うと、
「つーかよう、黒騎達が全員倒しちまえばいいんじゃねえのか? さっきも7体相手に結構押してただろ?」
坂上がそう言ってくるが、俺は溜息を吐き、
「悪いが無理だ。相打ち覚悟で臨めば半数位は道連れに出来るかもしれないがそこまでだな」
「な、何でだよ……………?」
「アルファモン王竜剣は、オウリュウモンの全能力を攻撃力へ変換した王竜剣を持つ、1対1の近接物理攻撃に特化した形態だ。アルファモン自身は空が飛べるようになった事以外はほとんど変化がない。1対1を7回繰り返すだけなら勝てる可能性はあるが、7体を同時に相手取るとなると、ロイヤルナイツを全員倒す前に確実にこちらに限界が訪れる。クレニアムモンの様に攻撃を完全無効化する相手も居るしな。さっきある程度優位に戦いを進めることが出来たのは、あっちがこちらの戦力を把握していなかった故の油断があったからだ。次からは確実に警戒してくるだろう」
「う…………」
坂上は押し黙る。
「アルファモン王竜剣でもロイヤルナイツを複数相手取るのは2体が限界だろう。無理すれば3体は行けるかもしれないが、負ける可能性が高まる。それから、ベルゼブモンでロイヤルナイツ1体」
「残り4体か………………」
「私達が一斉にかかっても、オメガモンの一撃でやられたしね……………」
白崎さんが呟く。
「…………ハジメ、地球へのゲートを開くのにどのぐらいかかる?」
俺がハジメに問いかけると、
「……………恐らく全員が魔力をつぎ込んでも半月前後は掛かるだろう」
「………っていうか、アオアオは女神様なんだから、こう、てやーって感じで地球に行けないの?」
谷口さんが葵にそう言うと、
「そう言うのは時間や空間を司る神の領分だから……………まあやろうと思えば出来ない事もないけど…………」
「じゃあ…………!」
谷口さんはパッと顔を明るくさせるが、
「でも、やった瞬間に私は消滅の刑に処されるよ」
「却下!」
俺は即答する。
「じゃあ応援を呼ぶのは無理か…………」
「応援って………大士の『仲間』?」
「ああ。さっきも言ったが仲間の1組の究極体はロイヤルナイツのデュークモンだし、他の3人もロイヤルナイツに及ばないまでも、時間稼ぎをするぐらいは可能なはずだ」
とは言え、無いもの強請りをしても仕方ない。
「そうなると、今現在の戦力で何とかするしか無いわけだが……………」
俺はユエとブイモン、シアとクダモン、ティオとドラコモン、優花とハックモンを見る。
「お前達が究極体に進化すれば希望はある」
「私達が…………?」
「さっきも言った通り、お前達の究極体はおそらくロイヤルナイツだ。だが、究極体に進化するにはテイマーとパートナーの完全な信頼が必要だ。ハックモンは答えを出したが、ブイモン達はまだ記憶が戻っていない。お前達もイグドラシルに仕えていたと知った訳だが、まだ実感が湧いてない筈だ。ハックモンが記憶を取り戻した事から、おそらくお前達が記憶を取り戻す事もそう遠く無いと思う。その時にどうするか、しっかりと考えておけ」
そう言ってから、俺はハジメとアグモン、白崎さんとガブモンに視線を向ける。
「俺達は戦力外って事か?」
ハジメは若干機嫌が悪そうだ。
「ハジメとアグモン、白崎さんとガブモン」
俺は2組に呼びかける。
「あん?」
「何かな?」
「お前達にはこれだけは言っておく。ブリッツグレイモンとクーレスガルルモンは、力を合わせればオメガモンに匹敵する」
「「ッ!?」」
「俺が言えるのはこれだけだ。後は自分達で答えを見つけないと意味が無い」
そう、オメガモンと互角の力を持つ、もう1つのオメガモンに…………
「……………とりあえず、今日は休もう。氷雪洞窟を攻略してから碌に休んで無いだろ?」
俺の言葉に、皆は頷いた。
翌日。
「たたた、大変ですぅーーーーーーーっ!!!」
戦いの疲れからか、朝までぐっすりと眠っていた俺達は、シアの大声で目を覚ました。
「んあ?」
「んんっ………! な~に~?」
「朝っぱらから煩いわね…………」
目をこすりながら葵と優花が目を覚ます。
すると、バァンとドアが壊れそうな勢いで開け放たれた。
「大変なんですよぉーーーーーーっ!!」
「「「「「「うわっ!?」」」」」」
シアが大声で叫ぶ。
ノックも無しにいきなり開け放たれた為、俺達は驚いて飛び起きる。
昨夜は疲れていたので何もせずに寝た為、見られて困るような事にはなっていないが。
デジモン達も居るし。
「シア、一体何だ?」
とりあえずそう聞き返す。
「何だじゃないんですーーーーっ!! 外を………! 空をみてくださいぃーーーーーーーーっ!!」
シアは驚愕の感情を全く隠そうとせずにそう叫ぶ。
「外……………?」
「空がどうしたって言うの……………?」
俺達はぐっすり寝ていた所を叩き起こされた事に、少々不機嫌になりながら、まだ瞼が重い目で言われた通り外を見た。
その瞬間、
「「「「「「なっ!?」」」」」」
俺達は眠気が一瞬で吹き飛び、目を見開いて声を漏らした。
何故ならば、空が広がっている筈の頭上には、まるで縞模様の様に空と、『逆さまの大地』が交互に広がっていた。
「何だ………これは…………?」
俺は思わず声を漏らす。
その時、
「大士! あれ!」
葵が空に映る大地の1点を指差す。
そこには、見覚えのある街並み。
簡単に言えば、ビルが立ち並ぶ様と、ひときわ高い二股の建物。
「東京都庁!?」
「まさかあれって…………!」
「「「東京!?」」」
俺達は同時に叫んだ。
俺達の視線の先には、空に映る東京が怪しく揺らめいていた。
第68話です。
短いですがキリが良かったので。
さて、デジモンあるある?2つの世界が繋がる奴です。
イメージ的には初代デジモンアドベンチャーのヴェノムヴァンデモン戦後のあれです。
トータスの空に東京が縞々に映ってるような感じです。
さて、一体何が起こったんでしょうか?
次もお楽しみに。