空の異変に気付き、空が良く見える中庭にやってきた俺達。
すると中庭には、ハジメ達やリリアーナ王女、愛子先生達異世界召喚組が集まっていた。
「あっ、クロキさん! 空がっ…………!」
リリアーナ王女が俺に気付くと、不安げな表情でこちらを伺う。
「ああ、俺達も部屋の窓から見て気付いてる…………!」
俺はハジメの方を向くと、
「ハジメ、お前なら気付いていると思うが、あれは…………」
「ああ。〝遠見〟でも確認したが、あれは東京だな」
「やはりそうか…………」
ハジメの言葉に俺はあらゆる可能性を考える。
「なあ相棒? 『トーキョー』って何だ?」
アグモンや他のデジモン達が首を傾げている。
「東京は大士達が住んでた街だよ」
そう答えたのはドルモンだった。
「あ、そっか。ドルモンは6年前に東京に居たんだったね」
白崎さんが納得したように頷く。
「某も短い間だが東京に住んでいた」
リュウダモンが補足する。
「では、あれは南雲さん達が住んでいた街…………ひいては『世界』だと………?」
「そうなるな」
リリアーナ王女の言葉をハジメが肯定すると、
「でも………何故ハジメさん達の住んでいた世界が空に…………?」
シアが根本的な疑問を口にする。
「十中八九イグドラシルの仕業だろうな…………トータスと地球を繋げた………もしくは繋げようとしているのか…………」
俺が推測を言うと、
「………何の為に?」
ユエがそう問う。
「それは分からないが、何にしろ碌な理由じゃないだろう。次元を繋げるなんて事は、イグドラシルにしても簡単な事じゃない筈だ。そこまでしてトータスと地球を繋げる理由は分からない……………ッ」
繋げる目的を予想する中、最悪の予感が脳裏を過った。
それは、デジモンセイバーズで起こった事。
あれは人間の科学者が起こした惨事だが、同じような事をイグドラシルが出来ないとも言い切れない。
「どうしたの?」
優花が俺の変化に気付いたのかそう聞いてくる。
「あ、ああ……………イグドラシルの目的については分からないが、その結果がもたらす最悪の可能性を予想しちまってな……………」
「最悪の可能性?」
葵が首を傾げる。
「トータスと地球が次元を超えて繋がる…………それだけならまだ良い…………最悪なのは、『こちらの世界』と『向こうの世界』の『衝突』…………!」
「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」
その意味を理解できた者は少ないだろうが、とんでもない出来事だという事は誰にでも分かるだろう。
「……………………どうなるの…………?」
八重樫さんが恐る恐る尋ねてくる。
「推測でしか言えないが、俺の予想では互いの世界の『消滅』。運が良くても片方の世界は消滅。残った世界にも尋常でない被害が齎されると思っている」
俺がそう言った瞬間、
「ピンポンピンポーン! 大正かーーーーい!!」
空から楽しそうな声が聞こえた。
俺達が見上げた所には、
「恵理ッ!!」
谷口さんが叫んだように中村が使徒の翼を広げて佇んでいた。
「恵理っ………良かった………! 生きて…………」
谷口さんが中村が生きていたことに安堵の息を吐く。
しかし、中村はそんな谷口さんを一瞥もせずに、
「キミの言う通りイグドラシルの目的は、こっちの世界と向こうの世界双方の消滅さ。その為にはその2つの世界をぶつけるのが手っ取り早いらしくてね」
「何故そんな事をする?」
俺が問いかけると、
「イグドラシルは人間を不要な存在と判断したのさ。デジモン達に悪影響を与える異物だってね」
中村は淡々と答える。
「そう言うお前は何でそんなに冷静なんだ? 人間が不要だという事はお前もその括りに入っている筈だ」
「アハハハ! 心配してくれてアリガトウ! そこは抜かりないよ。僕がイグドラシルの邪魔をしない、寧ろ協力するって言ったら、僕と光輝君は見逃してくれるってさ」
何を考えてるんだイグドラシルは…………?
無条件で
まあ、気にするほども無い塵芥と判断されたという事も無くは無いが…………
「光輝!? 光輝も生きてるのか!?」
坂上が天之河の名前に反応して問い掛ける。
「うん! もっちろん! 僕の光輝君は、僕と一緒に『神域』に居るよ」
「………『神域』?」
ユエが声を漏らすと、
「エヒトが作り出した空間さ。本来はエヒトが消滅した瞬間に崩壊するはずだったけど、イグドラシルが利用価値があるからって、自分の力で空間を支えてるみたいだね」
「……………………」
ハジメが何を思ったか目を細める。
「そういうわけで君達がいまさら何をしようと無駄なわけ。3日後には皆仲良く消滅ってね! 僕は光輝君と2人きりで生き残るけど悪く思わないでね~!」
次の瞬間、ドパンッという音と共にハジメがドンナーを発砲する。
だが、その弾丸は中村に当たる前に現れたファントモンとメタルファントモンによって防がれた。
「チッ!」
「ざ~んねんっ! 僕が態々君達の前に姿を現すのに何も準備してない筈ないでしょ~?」
中村はこちらを馬鹿にするように空中で腹を抱えるように笑う。
「なら、そいつらを速攻で倒すだけだ」
ハジメはそう言いながらDアークを握る。
確かにブリッツグレイモンなら2体の完全体を歯牙にもかけずに中村を捉えることは可能だろう。
「クスクス………この2体を甘く見ない方が良いよ?」
中村は意味あり気に笑みを浮かべると、
ファントモンが纏っている衣を脱ぎ捨てるように暴くと、
「ファントモン進化!」
全く別の、道化師の様なデジモンとなってその場に降り立つ。
「ピエモン!!」
続いて、メタルファントモンも衣を脱ぎ去ると、
「メタルファントモン進化!」
ドクロの様な顔をしたサイボーグ型デジモンとなる。
「ゴクモン!!」
「進化したじゃと!?」
ティオが叫ぶ。
「ピエモン 究極体 ウィルス種 魔人型デジモン。必殺技は、『トランプ・ソード』」
「ゴクモン 究極体 ウィルス種 サイボーグ型デジモン。必殺技は、『髑髏乱舞』、『邪炎煉獄』、『髑髏旋風』」
俺と優花がデジモンのデータを読み上げる。
「じゃあ、私はこの辺で、もう会うことも無いと思うけど、元気でね~!」
中村はそう言い残すと神山の方へ向かって飛び去る。
「待って恵理! 恵理ッ!!」
谷口さんが叫ぶが中村は振り返りもせずにそのまま飛び去る。
「…………まずはこいつ等をどうにかしないとな…………どちらも並の究極体を超えるデジモンだ」
俺はそう言う。
まあ、アルファモンなら問題無いと思うが。
そう思ってハジメに並ぶようにDアークを取り出そうとして、
「待って!」
優花に呼び止められた。
「優花?」
俺がどうかしたのかと聞き返すと、
「ここは、私とハックモンに任せてくれない?」
「優花!?」
優花の言葉にハックモンは驚いた声を漏らす。
「ハックモンは記憶を取り戻しても私と一緒に居てくれると言った………だから私もその信頼に応えたい…………」
「優花…………!」
「だから、今なら出来そうな気がする……………! 『私達の進化』を………!」
「…………ああ、優花の言う通りだ!」
ハックモンは少し驚いた様子を見せたが、すぐに頷いた。
「クルックル~~! 2人なら出来るっクル!!」
クルモンが額を輝かせながら2人を応援する。
「そうか…………なら任せる」
俺は優花とハックモンを信じてそう言う。
「行くわよ、ハックモン」
「ああ、優花………!」
優花とハックモンは共に歩き出し、数歩歩いたところで同時に駆け出す。
それと同時に優花の持つDアークから光が迸り、2人を包んだ。
――MATRIX
EVOLUTION――
「マトリックスエボリューション!!」
優花がDアークを自分の身体に押し当てると、優花の身体がデータ化される。
「ハックモン進化!」
ハックモンと優花が1つとなり、新たな進化が始まる。
ハックモンの前足が分解され、剣を装備した腕として再構成される。
ハックモンの後脚が分解され、剣と一体化した足として再構成される。
ハックモンの体が分解され、赤いボロボロのマントを纏う体として再構成される。
ハックモンの頭が分解され、優花の真っ直ぐな瞳を持つ、竜人の頭部として再構成される。
それは両腕と両足、尻尾の計5本の刃。
白く輝く身体を持つ竜人の
その名は、
「ジエスモン!!」
ジエスモンとなった優花とハックモンが俺達の目の前に降り立つ。
葵がDアークを取り出し、
「ジエスモン 究極体 データ種 聖騎士型デジモン。必殺技は、『
そのデータを読み上げた。
進化出来ることを微塵も疑ってなかった俺は笑みを浮かべる。
進化したジエスモンを前に、ピエモンとゴクモンは身構えると、
「トランプ・ソード!!」
ピエモンが背中の4本の剣を投げ放つ。
その剣はまるで意思を持つように自在に動き回り、ジエスモンの周囲を取り囲む様に旋回する。
すると、
「『アト』、『ルネ』、『ポル』」
ジエスモンが呟くと同時に、ジエスモンから溢れ出したエネルギーが集まり、それぞれが2本の剣とジエスモンの顔に近い形状を持った火の玉の様な3つの塊が現れ、ジエスモンの周囲を警戒する様に浮遊する。
次の瞬間、ジエスモンの死角である後方からトランプ・ソードの一本が飛来する。
しかし、アトかルネかポルかは分からないが、その内の1つがそのトランプ・ソードを剣で弾き飛ばした。
「ッ!?」
ピエモンは一瞬驚愕するが、すぐに手を翳すと、それが合図になった様にトランプ・ソードが一斉にジエスモンに襲い掛かった。
「……………………」
だが、ジエスモンはそれでも微動だにせず、ピエモン達を見据え続け、襲い掛かってくるトランプ・ソードはその全てをアト、ルネ、ポルが叩き落していた。
「す、すごい…………」
四方八方から襲い掛かってくる剣の舞を全て叩き落しているアト、ルネ、ポルの動きに八重樫さんが呟く。
「あの火の玉の様なものも、侮れぬ強さじゃのう…………」
ティオもそう評する。
一向に仕留められないジエスモンにピエモンが苛立ちを見せた時、その瞬間を狙ったようにジエスモンが地面を蹴ってピエモンに向かって飛び込んだ。
「なっ!?」
ピエモンは驚きのあまりに硬直する。
ジエスモンの剣がピエモンを捉えたと思った瞬間、
「もらったぁぁぁぁぁぁっ!!」
その瞬間を狙ってゴクモンが鎌のような刃となっている右腕でジエスモンの側面から斬りかかった。
「髑髏乱舞!!」
ゴクモンは必殺の乱撃を叩き込もうと刃を振り下ろす。
その瞬間、
「アウスジェネリクス」
ジエスモンが呟くと同時にその姿が掻き消える。
「なっ!?」
驚愕しつつ必殺の一撃を外したゴクモンは大きな隙を晒してしまう。
次の瞬間、ゴクモンの背後にジエスモンが現れる。
『アウスジェネリクス』。
それはジエスモンが自分のデータを一時的に書き換え、物理限界を超えた動きを可能とさせる技だ。
ジエスモンはその技で自分の身体能力を跳ね上げ、一瞬にしてゴクモンの背後に回ったのだろう。
そして、隙だらけのゴクモンに向かって、
「轍剣…………成敗っ!!」
すり抜け様に強烈な一閃を見舞う。
「ぐわぁああああああああああああああっ!?」
ゴクモンは一瞬でデータ粒子に分解された。
「ッ…………! エンディングスペル!!」
ピエモンは攻撃後のジエスモンに向かって両手を合わせて銃の様な形にすると、その指先から強烈な衝撃波を放った。
攻撃後の僅かな隙を狙われたジエスモンは、近距離からのその攻撃を避けることが出来ずに直撃。
爆発に呑まれる。
「ああっ………!」
「園部さん………!」
その光景を見たリリアーナ王女や愛子先生が悲鳴を上げる。
しかし、爆煙が晴れて行くと、そこにはいつの間にかジエスモンの下へ戻っていたアト、ルネ、ポルの3体がジエスモンを護る様に三角形の結界を張っていた。
「なあっ!?」
ピエモンが驚愕の声を漏らした瞬間、
「シュベルトガイスト!!」
アト、ルネ、ポルの3体が結界を解くと同時にピエモンに向かって剣の乱舞を見舞う。
「がぁああああああああっ!?」
そして、続いて飛び込んできたジエスモンが両腕と尻尾の刃を煌めかせると、
「はぁああああああああああああああっ!!」
ピエモンの身体を切り裂き、
「ぐわぁああああああああああああああああっ!?」
ピエモンは断末魔の叫びと共に消滅した。
ジエスモンは赤いマントを靡かせつつアト、ルネ、ポルを呼び戻し、自分の身体へと戻す。
そしてジエスモンは俺達を見下ろし、
「………………」
改めて納得したように頷いた。
俺もその頷きに笑みを浮かべて頷き返す。
今ここに、聖騎士ジエスモンが新生した。
第69話です。
これまた微妙なキリになったのでここまで。
答えを出したハックモンと優花なら進化も出来るだろうという事でここでやっちゃいました。
哀れファントモンとメタルファントモン。
折角進化したのに噛ませ犬扱いで終わってしまった。
とりあえずピエモンはともかくとして、ゴクモンはメタルファントモンの見た目的に進化しそうだったので選びました。
さて、恵理は生きてましたし勇者(笑)が生きてることも判明しましたが…………
次回もお楽しみに。