ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第70話 折れない勇気! 疾走スレイプモン!!

 

 

 

【Side シア】

 

 

 

 

ユウカさんが究極体への進化を成功させて、現れた2体のデジモンを撃退した後、私達は再び集まって今後の方針を話し合っていました。

 

「さて、中村の奴がベラベラと喋ってくれたから、知りたい情報は大体把握できた」

 

ハジメさんがいきなりそう言います。

 

「ああ。まず、イグドラシルの目的は『世界』同士の衝突。ぶっちゃけデジタルワールドにも影響を及ぼすと思うんだが、イグドラシルには最低限守る自信があるんだろうな」

 

タイシさんが続き、

 

「タイムリミットは3日後って言ってたね」

 

「居場所は『神域』…………」

 

「そこに恵理と光輝君も…………」

 

それぞれが分かっている情報を口にしていきます。

 

「ふむ…………」

 

ハジメさんが顎に手を当てながら考える仕草をしていると、

 

「シア」

 

「はいです」

 

私に声を掛けてきたので応えます。

 

「お前はライセン大迷宮に行ってくれ」

 

「……もしかして、ミレディですか?」

 

「そうだ。『神域』へ行くだけなら羅針盤とクリスタルキーで事足りると思うが、少しでも『神域』の情報があれば儲け物だしな。あのときは強制排除されたからショートカットの方法が分からない。一応、攻略の証は渡しておくが、ブルック近郊の泉で反応しなければ、また中を通らなきゃならないからな」

 

「多分、それでも通してくれると思いますが……ダメでも、今度は半日でクリアして見せますよ。今の私なら、あの大迷宮は遊技場と変わりません」

 

「俺もそう思う。頼んだ」

 

「はいです!」

 

ハジメさんに頼りにされた事が嬉しくて、私は返事に力が入ってしまいます。

 

「後序にエヒトの最期でも教えてやれ。多分笑い転げるだろ」

 

ハジメさんからゲートキーを受け取ると、私は早速ブルック近郊の泉に転移しました。

 

 

 

 

 

ブルック近郊の泉に出た私は、

 

「…………………………………」

 

「何も起こらないな」

 

私の首に巻き付いているクダモンがそう言います。

ライセン大迷宮の攻略の証を掲げてみますが何も反応しません。

 

「ん~~~~~反応しませんね……………やっぱり入り口から行くしか無いんでしょうか?」

 

私は改めてゲートを開くとライセン大迷宮の入り口付近に転移します。

懐かしいと思いつつ入り口のある崖の割れ目に入っていくと、

 

『おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』

 

懐かしくもウザく思える看板が目に入ります。

 

「シア、これは何と書いてあるのだ?」

 

クダモンが興味本位でしょうがそう問いかけてきます。

そう言えばデジモンはこちらの世界の文字は読めないんでしたね。

だから私はニッコリと笑い、

 

「クダモン。世の中には知らなくていい事もあるんですよ?」

 

そう言ってあげました。

 

「そ、そうか…………」

 

何故かクダモンはドン引きしつつそう言って頷きました。

どうしたんでしょうね?

私はこんなにも笑顔で教えてあげたというのに。

まあ気を取り直して先に進みましょう。

私は記憶に従って隠し回転扉がある壁を押すと、これまた記憶の通りに数本の矢が飛んできます。

あの時は醜態をさらしてしまいましたが、今なら造作もありません。

パシパシッと、自分の身体に当たる矢を片手で掴み取ります。

 

「このような罠が…………」

 

「こんなのはまだ序の口ですよ。さて、これはもう一度迷宮をクリアしないといけないんでしょうか?」

 

目の前の石板に浮かんだ文字をスルーしながら最初の部屋に踏み入ります。

その時、

 

「シア、攻略の証が………!」

 

クダモンの言葉で攻略の証に目を落とすと、攻略の証が輝いています。

すると、突然部屋の扉が全て閉じられ、

 

「はわっ!?」

 

部屋が乱回転しながら移動を始めました。

もしかしてこれがショートカットでしょうか?

相変わらず性格悪いです!

私はピョンピョンと飛び跳ねながら部屋の勢いに振り回されないように出来るだけ空中に留まります。

やがて部屋の動きが落ち着き、ガコンと何かに嵌り込んだ音がしたと思ったら、部屋の扉が開きました。

そして、

 

「やーやー! 久しぶりだねウサギちゃん☆ 今度はお漏らししなかったかな~? プ~クスク…………おおうっ!?」

 

あのチビゴーレムの姿でウザい口調と共に出てきたので、とりあえず出会い頭にドリュッケンの一撃を見舞っておきました。

ギリギリで躱されましたが…………

まあ、躱せる程度に抑えたんですけどね。

 

「久し振りですね~ミレディ………? 相変わらずウザそうで安心しましたよ~………!」

 

ドリュッケンを肩に担ぎながらチビゴーレムのミレディを見下ろします。

 

「ヤ、ヤダなぁ………ほんのお茶目な冗談じゃないかぁ…………?」

 

ミレディはへりくだりながらそう言ってきます。

このままでは話が進まないと思った私は溜息を吐いてドリュッケンを宝物庫にしまいます。

 

「おふざけに付き合う気は無いので単刀直入に言います。『神域』について知っている事を全部吐いてください」

 

私はズバッとこっちの意見だけを伝えます。

 

「おやおや~? 君達はエヒト(クソヤロー)の事なんて関係無いんじゃなかったのかなぁ?」

 

相変わらず人のあげ足を取るような言い方です。

 

「ええ。勿論関係ありませんよ。寧ろとっくに消えた奴の事なんて関係あるわけないじゃないですか」

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」

 

途轍もなく長い沈黙の後にミレディが声を漏らしました。

 

「ゴメン、上手く聞き取れなかったからもう一回言って?」

 

「ですからエセ神(エヒト)はとっくに消えたと言ったんです」

 

「………………………………『消えた』ってどういう事?」

 

ミレディは私の言葉が信じられないのか何度も確認してきます。

 

「言葉の通りです。本物の『神罰』を受けて、『魂』の存在そのものが『消滅』しました」

 

「本物の…………神罰…………?」

 

「アオイさんを覚えてますか?」

 

「魔法の適性バッチリだったあの黒髪ちゃんの事だよね? 〝適性皆無のウサギちゃん〟と違って☆」

 

ぶっ壊してあげましょうかね!?

私はその衝動を我慢しつつエヒトの最期を説明しました。

すると、

 

「……………………………………………………」

 

ミレディは俯いたまま黙り込んでしまいました。

ハジメさんは笑い転げるとか言ってましたが、ミレディも人の子です。

長年の怨敵があっさりと消えたことに思う所があるんだろうなと思っていました。

その時、

 

「…………………………あ」

 

ミレディが何か言葉を漏らしました。

 

「………………あ……………あ……………」

 

私はその言葉を聞き取ろうとウサミミを澄ませた瞬間、

 

「……………アーーーーーッヒャヒャヒャヒャヒャッ!!!」

 

ミレディは奇声の様な笑い声を上げて床を転げまわりました。

 

「神様気取りのクソヤローがっ………! 調子に乗って神罰を受けてっ…………! 魂ごと消滅ぅっ!? プ~クスクス☆ エヒト(クソヤロー)ざまぁ☆」

 

笑い転げながら満面の笑みでエヒトをこき下ろします。

 

「…………………ハジメさんの言う通りですぅ…………」

 

ミレディの行動を完全に予測していたハジメさんに、私は何とも言えない気分になります。

ミレディが暫く笑い転げていると、ある時ピタッと止まり、

 

「いやぁ。笑った笑った! もう一生分笑った気がするよ!」

 

何とも晴れ晴れとした声色でそう言いました。

 

「それで『神域』の事についてだったね。残念だけど、詳しい事は私にも分からないや。ただ、今の『神域』はエヒト(クソヤロー)が消えて崩壊するはずだった所を、その別の『神』が支えてる状態だったよね?」

 

「はい。寝返った人が言うにはそうらしいですけど………」

 

「う~ん…………そうなると拙い状況になってるかもしれないなぁ~」

 

「………? 何がですか?」

 

ミレディの言葉の意味が分からずにそう聞くと、

 

「おやおや~? ウサギちゃんは分からないのかな~? 所詮頭はウサギだね~?」

 

「ムカッ!」

 

ミレディの相変わらずの人を小馬鹿にする言い方にムカっときます。

 

「…………つまり、イグドラシルが『神域』が崩壊するエネルギーを塞き止めているという事で、イグドラシルが塞き止めることを止めてしまえば、その塞き止められていたエネルギーが一気に溢れ出し、この世界にも少なからず影響を与えるという事か?」

 

「ピンポーン! そこのヘビ君?はウサギちゃんよりも頭がいいねぇ~☆」

 

一々私を比較に出さないでください!

 

「私の予想じゃ、神山を中心として辺り一帯吹っ飛ぶぐらいだと思うよ☆」

 

言い方が軽いです!

でも、辺り一帯吹っ飛ぶと聞いても『そのぐらいですか』としか思わない私は何なんでしょう?

国ごと吹っ飛ばせる究極体を何度も見てきたせいですかねぇ?

特にタイシさんが暴走させたドルゴラモンは凄かったですから。

あれを見た後だと、大概の事は『そのぐらい』で済ませそうです。

 

「はあ、要はイグドラシルを倒してしまうと『神域』が崩壊して地上も巻き添えを食うという事ですね」

 

漸く私にも理解できました。

 

「まぁ、『神域』についてはこのミレディさんに任せておきなさい! 私の、超奥義☆な魔法で地上に影響が出ないようにしてあげるよ☆」

 

どうやらミレディには『神域』の崩壊の影響を抑える方法があるみたいですね。

 

「そう言う事ならお任せしますが…………対価はいいんですか?」

 

「そんなの要らないよ~☆ むしろ、あのエヒト(クソヤロー)を消してくれた君達に対するお礼みたいなものだよ~☆」

 

「消したのはアオイさんなのでお礼はそちらに」

 

「それはもちろん☆」

 

なんか素直なミレディって違和感ありまくりですね。

まあ、エヒト(エセ神)を倒すという悲願が叶ったからでしょうが…………

 

「では、私はそろそろハジメさんの所に……………」

 

戻ろうと思ったその瞬間、

 

―――ドゴォォォォォォォン!

 

と爆発音と地鳴りが鳴り響きました。

 

「ふわっ!? 何ですか!?」

 

「これは………?」

 

「なんだいなんだい! 人が折角いい気分なのに………!」

 

ミレディが文句を言いつつ空間魔法的なもので映像を映し出しました。

するとそこには、かつて戦った巨大ゴーレムが真っ二つにされており、ボス部屋の一部が崩落した光景があった。

そして、真っ二つにされたゴーレムの前には、緑色の細身の身体をした、両腕に赤い光の剣を発生させた人型がいた。

 

「あれは………もしかして…………」

 

私はDアークを使ってあの人型を調べます。

 

「フウジンモン 究極体 ワクチン種 マシーン型デジモン。必殺技は、『クリティカルアーム』と『マルトサイクロン』…………って、究極体ですか!?」

 

「むっか~! このミレディちゃんの居ぬ間に好き勝手やってくれちゃったね! そんな奴にはお仕置きだよ!」

 

ミレディがそう言うと、いつかと同じようにボス部屋の天井が崩落していきます。

ご丁寧にほぼ全てがフウジンモンの頭上に来るように。

フウジンモンは落ちてくる天井を見上げたまま動きません。

そのまま天井のブロックに押しつぶされたように見えました。

 

「ふん、どんなもんだい!」

 

ミレディはざまあみろと言わんばかりですが、あの程度では………

私がそう思った瞬間、積みあがっていたブロックが一気に吹き飛ばされました。

その下からは、やはり無傷のフウジンモンが姿を見せます。

 

「あ~………やっぱり効いてませんね…………因みに言っておくと、あれは以前ミレディの巨大ゴーレムを圧倒したドルグレモンやヒシャリュウモンよりも遥かに強いですから」

 

私はそう言うと、ボス部屋に向かって駆け出します。

 

「シア、もしや奴と戦う気か?」

 

首に巻き付いているクダモンがそう問いかけてきます。

 

「はい。ここからだと、私の故郷であるハルツィナ樹海がそれなりに近い位置にあります。ここで逃げることも可能ですが、そうした場合、ハルツィナ樹海に向かう可能性もゼロではありません」

 

「ッ………! そうか」

 

クダモンはハッとしてから納得します。

 

「それに、私達はただの究極体よりはるかに強いロイヤルナイツと戦うつもりなんです! 普通の究極体相手に逃げたら、いざという時に戦えるはずがありません!」

 

「シア……………わかった。我も全力を尽くそう」

 

「信じてますよ、クダモン………!」

 

私達がボス部屋に辿り着くと、フウジンモンは静かにこちらを見据えていました。

 

「…………あの様子から察するに、始めから目的は私達…………もしくはクダモンでしょうか? そうなると、イグドラシルからの刺客って事になりますね…………」

 

「シア、力を出し惜しみして勝てる相手ではない! 最初から全力で行く!」

 

「分かりました! 行きますよクダモン!」

 

クダモンが私の首から離れて前に飛び出します。

同時に私もDアークとカードを取り出します。

 

「カードスラッシュ!」

 

Dアークにカードをスラッシュしていき、その途中でカードがブルーカードへと変化する。

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

「クダモン進化!」

 

Dアークから放たれた光がクダモンを完全体に進化させます。

 

「チィリンモン!!」

 

進化したチィリンモンが空中に浮遊する足場の1つに着地します。

チィリンモンはその足場から眼下のフウジンモンを見据え、互いの視線が交差しました。

一瞬静寂が訪れます。

その時、足場の一部が欠片となって落下し、地面に落ちて砕けたその瞬間、それが合図と言わんばかりにフウジンモンが突っ込んできました。

100m近くあった距離を一瞬で詰めます。

 

「ッ!?」

 

チィリンモンは咄嗟に足場を蹴ってその場を離脱します。

その瞬間、フウジンモンの腕のブレードが振るわれ、チィリンモンが居た足場が真っ二つになりました。

 

「凄い切れ味ですぅ…………」

 

このボス部屋の足場は、砕くことはそう難しい事ではありませんが、あんなにきれいに切り裂くことは至難です。

それを簡単にやってのけてしまう究極体は、やはり半端ではありません。

ですが、その切れ味も当たらなければ意味はありません!

私はアオイさんから分けてもらったカードの1枚を取り出します。

 

「カードスラッシュ! 高速プラグインH! ハイパーアクセル!」

 

パートナーデジモンのスピードをアップさせるカードです!

 

「迅速の心得!!」

 

チィリンモンは素早い動きで相手を翻弄する戦い方が得意です。

そのチィリンモンにこのカードの効果を合わせれば、例え究極体相手でもスピードなら負けない筈です。

チィリンモンはいつもより多い数の分身を生み出し、フウジンモンを取り囲みます。

ですが、それらは全て残像。

本物のチィリンモンは…………

 

「疾風天翔剣!!」

 

ほぼ直上から一気に急降下してきます。

フウジンモンは辺りの残像に気を取られていて、直撃すると私は確信しました。

そして、チィリンモンの角がフウジンモンの脳天を貫く。

そう思った瞬間、フウジンモンの姿が掻き消えました。

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

チィリンモンと私は驚愕で目を見開きます。

完全に捉えたと思った一撃は、フウジンモンが居た足場を砕くだけに終わりました。

そして次の瞬間、チィリンモンの背後にフウジンモンが現れ、

 

「クリティカルブレード!!」

 

その腕の2つのエネルギーブレードでチィリンモンの背中を斬りつけました。

 

「ぐぁああああああっ!?」

 

チィリンモンの悲鳴が響くと同時に、

 

「あぐぅううううううっ!?」

 

私の背中にも焼けつくような痛みが走りました。

 

「………そ、そういえば、完全体に進化させるとパートナーデジモンのダメージがテイマーに伝わる事があるんでしたね……………」

 

なら、これはチィリンモンが感じている痛み…………

大事な事を思い出し、私は気を取り直します。

 

「チィリンモン! 一旦離れてください! 追撃が来ます!」

 

「くっ!」

 

チィリンモンはダメージを負いながらも地面を蹴ってフウジンモンから離れようとします。

ですが、

 

「なっ!?」

 

フウジンモンは一瞬でチィリンモンの回避先に回り込んでチィリンモンを蹴り飛ばしました。

 

「ぐあっ!?」

 

「あぐっ!?」

 

同時に私の体にも痛みが走ります。

瓦礫に突っ込んだチィリンモンは身を起こそうとしますが、

 

「マルトサイクロン!!」

 

フウジンモンが少し前屈みになると、背中に付いている環に風が集まり始めます。

 

「ま、拙い!」

 

チィリンモンはダメージを気にせずに私の下へ辿り着くと、

 

「シア! 防御を!」

 

「は、はいです! カードスラッシュ!!」

 

私は慌ててカードをスラッシュします。

 

「防御プラグインC!!」

 

チィリンモンは私を庇うようにその身を盾にし、私も〝身体強化〟をして身を硬くします。

次の瞬間、フウジンモンの環から超高密度に圧縮された竜巻が放たれました。

 

「うぐぐ…………!」

 

「むぅぅ………!」

 

私達はその風に必死に耐えていましたが、やはり力の差は大きく、

 

「うぁああああああああっ!?」

 

「きゃぁああああああああああっ!?」

 

私達は一緒に風に吹き飛ばされてしまいました。

私は必死にチィリンモンにしがみ付き、チィリンモンも私へのダメージを極力少なくするように身を盾にし続けます。

竜巻の中に発生する真空の刃がチィリンモンの身体を傷付け、更に減衰した風でも私の体に無数の傷を付けていきます。

やがて暫く竜巻の中で振り回された後、竜巻が消え、空中に投げ出された私達は地面に墜落しました。

 

「ううっ…………!」

 

自分のダメージとチィリンモンからのダメージのフィードバックで2倍痛いです。

私が身を起こすと、少し離れた所にクダモンが倒れていました。

 

「ク、クダモン…………!」

 

私は立ち上がってクダモンに歩み寄ろうとしました。

でも、その前にフウジンモンがクダモンの傍に降り立つと、クダモンを拾い上げました。

手は無いので左腕に引っかけてる状態です。

って、そんな説明をしてる場合じゃないです!

 

「クダモンを連れ去る気ですか………!」

 

やっぱりフウジンモンの狙いはクダモンを連れて行く事みたいです。

ですが!

 

「そう簡単に連れて行かせるわけないじゃないですか!!」

 

私は宝物庫からドリュッケンを呼び出し、〝身体強化〟で全力で殴りかかります。

 

「うぉりゃぁああああああああああああああっ!!」

 

私の全力で振るった戦槌がフウジンモンの頭に直撃します。

しかし、防御も何もしなかった癖に、全くと言っていいほどダメージは通らず、逆に私の腕が思い切り痺れました。

 

「くうっ…………!」

 

「…………………」

 

声を漏らす私に、フウジンモンが無造作に腕を振り上げます。

私は咄嗟に飛び退きましたが、ほんの少し掠り、

 

「きゃぁあああああああああああっ!?」

 

信じられないほどの衝撃が私を吹き飛ばします。

瓦礫に突っ込みますが、まだ身体は動きます。

私は直ぐに身を起こし、

 

「クダモンを放しなさい!!」

 

再びドリュッケンを振りかぶりながら突っ込みます。

 

「おんどりゃぁああああああああああああっ!!」

 

殴りかかる私に向かって、フウジンモンが無造作に横に腕を振ります。

その衝撃で私は吹き飛ばされ、再び瓦礫に突っ込みました。

ハッキリ言って無茶苦茶痛いです。

でも、このままクダモンを連れて行かせるわけにはいきません。

 

「この程度ですか!? まだまだ私は行けますよ!」

 

強がりを言いながら私は再び突っ込みます。

その度に吹き飛ばされ、それでも立ち上がって私はまた突っ込みます。

何度それを繰り返したでしょうか?

ある時、

 

「ううっ…………シア、我の事はいい…………逃げるのだ………」

 

クダモンが目を覚ました様で、私にそう言ってきます。

 

「何馬鹿の事言ってるんですか!? 私は絶対にクダモンを見捨てませんよ!」

 

私は既に罅だらけのドリュッケンを、力を振り絞って担ぎ上げ、回復薬と魔法薬を飲みます。

 

「うぉ………りゃぁああああああああああああああああああっ!!」

 

私は駆け出し、ドリュッケンを振り被ります。

フウジンモンは、最早私に止めを刺す気なのか、ドリュッケンは無視しています。

おそらく、攻撃した後にカウンターで止めを刺すつもりなのでしょう。

跳び上がった私のドリュッケンが振るわれ、フウジンモンの頭部に直撃し、同時にドリュッケンが砕け散りました。

 

「……………………………ッ」

 

私は僅かに声を漏らします。

そしてそのまま地面に着地した瞬間、フウジンモンが右腕のエネルギーブレードを発生させ、私に斬りかかってきました。

このタイミングでは、〝身体強化〟した私でも避けれません。

そして、究極体の攻撃であれば、私の防御など意味を成さないでしょう。

フウジンモンも、それを計算した必殺の一撃。

 

「……………………………………ッ!」

 

故に、その瞬間こそが最大の好機!!

 

「身体強化! 〝レベルⅩ〟!!」

 

〝天啓視〟によりフウジンモンの動きは読めていました。

そして、先程飲んだ魔法薬はハジメさん特性の〝チートメイトDr〟。

昇華魔法特化成分過剰含有の飲み物で、身体強化状態の私でないと自壊してしまうほどの強化を齎してくれます。

レベルⅩはその中でも最大レベル。

通常の身体強化状態の倍以上の強化をすることが出来ます。

跳ね上がった身体能力で地面を蹴った私は、フウジンモンの刃が届くより早くフウジンモンの懐に飛び込み、左腕に引っかけられていたクダモンを奪い返しました。

そのまま勢いに任せて後方に離脱。

クダモンを懐に抱えつつ、勢い余って瓦礫に突っ込みました。

 

「あいたぁ~!? 助けた後の事を考えていませんでしたぁ~!」

 

失敗しました。

格好つかないですね。

でも、大事なモノはちゃんと取り返しました。

 

「シア………何故………?」

 

クダモンは驚愕の表情で私を見上げます。

 

「何故って…………クダモンは私のパートナーだからですよ?」

 

何故そんな事を聞くのでしょう?

 

「しかし………その為にシアの大切にしていたドリュッケンが…………」

 

クダモンが粉々になったドリュッケンの破片に目をやります。

 

「確かにドリュッケンはハジメさんから頂いた大切な武器です。でも、武器なんて物はいつか壊れるものです。そんなものよりクダモンの方が『大切』に決まってるじゃないですか!」

 

「シア…………!」

 

「私はクダモンのテイマーです。そしてクダモンは私の『大切』なパートナーです。例え同じクダモンの別個体が居たとしても、『私のパートナーのクダモン』は、ここにいるクダモンだけです。そんな『唯一無二のパートナー』を見捨てて逃げられるわけないじゃないですか」

 

「シア………だが、我は………」

 

「クダモンが元ロイヤルナイツか如何かなんて関係ありません。もし記憶が戻ったとしても、クダモンが『唯一無二のパートナー』である事には変わりありません!」

 

「……………………シア」

 

「だからクダモンも、ちゃんと気持ちを教えてください。もし記憶が戻ったら、クダモンは如何したいんですか?」

 

「……………………我は……………我も…………許されるなら…………記憶が戻ってもシアと共に居たい…………」

 

その言葉を聞いて、私は笑みを浮かべます。

 

「だったら居てください! 記憶が戻っても、私達はずっと一緒です!」

 

「………いいのか?」

 

「良いも何も、私がそう望んでるんです!」

 

「シア…………ああ!」

 

クダモンの表情から、漸く迷いが消えました。

その時、私達の周りに光の輪が浮かび上がります。

 

「この光は………もしかして…………」

 

私はクダモンを抱えながら立ち上がると、フウジンモンを見据えます。

 

「一先ず、私達の仲を引き裂こうとする、あの無礼者をコテンパンにしてやりましょう!」

 

「フッ…………ああ、そうだな…………我とシアが力を合わせればその程度造作もない……!」

 

「その通りです! 行きますよクダモン!」

 

「ああ、シア! 共に行こう!」

 

私達の思いが1つになったその瞬間、

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

光が満ちた。

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

私がDアークを身体に押し付けると、身体がデータとなってクダモンと1つになります。

 

「クダモン進化!」

 

クダモンの前足が分解され、赤い鎧を纏う腕として再構成される。

クダモンの尾が分解され、六本足の馬脚をもつ下半身として再構成される。

クダモンの胴体が分解され、赤い鎧を纏う体として再構成される。

クダモンの頭が分解され、シアの折れない勇気の籠った瞳として再構成される。

それは、六本足の馬の下半身を持つ、獣人型の聖騎士。

 

「スレイプモン!!」

 

スレイプモンとなった私達は、空中に浮いている足場に降り立ちます。

 

『…………これが………進化…………!』

 

初めての究極進化に私は思わず呟きます。

すると、

 

「………………シア…………いきなりだが、全て思い出した」

 

スレイプモンはそう言います。

 

『記憶が戻ったんですか?』

 

「ああ…………だが、答えは変わらない。我は、これからもシアと共に居る………!」

 

『そうですか。それが聞ければ十分です』

 

私はそう言うと気を取り直してフウジンモンを見据えます。

フウジンモンは、進化した私達を見て一瞬狼狽えたようでしたが、すぐに斬りかかってきます。

先程までは、見切る事は出来なかったそのスピード。

しかし、今のスレイプモン()なら…………

超スピードでスレイプモン()の後ろへ回り込んだフウジンモン。

ですが、更にそれを超える超スピードでスレイプモン()はフウジンモンの後ろへ回り込みました。

 

「遅い」

 

その言葉でフウジンモンは後ろへ回り込まれた事に気付いたようで、振り向きざまに腕のエネルギーブレードを振るってきました。

しかし、それを軽く跳躍して躱すと、序とばかりに後ろ脚でフウジンモンの頭を蹴りつけながら別の足場へ跳躍します。

その蹴りで足場に叩きつけられたフウジンモンは、すぐに起き上がるとこちらに向かって前傾姿勢を取り、

 

「マルトサイクロン!!」

 

再び超圧縮の竜巻を放ってきました。

先程は成す術無く吹き飛ばされましたが、今度はそうはいきません。

 

「むん!」

 

スレイプモン()は右腕に装備している聖盾、『ニフルヘイム』を構え、一気に駆け出しました。

フウジンモンが放った竜巻の中を突っ切ります。

竜巻の中の無数の真空波は、スレイプモン()が構えたニフルヘイムと、レッドデジゾイドの鎧の前に傷一つ付ける事叶いません。

そのまま竜巻の中を突っ切り、眼前にフウジンモンを捉えます。

 

「ッ………!? クリティカルブレード!!」

 

それに気付いたフウジンモンは2つのエネルギーブレードで攻撃してきますが、スレイプモン()は再び超スピードでフウジンモンの背後に回り込みます。

背中合わせの状態で回り込んだスレイプモン()は、後ろ足でフウジンモンを思い切り蹴り上げました。

空中に蹴り上げられたフウジンモンに、左腕に装備されている聖弩『ムスペルヘイム』を向けます。

そこに装填されている矢が光と共に灼熱を帯び始め、

 

「ビフロスト!!」

 

次の瞬間、一気に放たれました。

それは空中に打ち上げられたフウジンモンを貫き、そのまま迷宮の天井を突き破って空へと消えていきました。

貫かれたフウジンモンは、データ粒子に分解されていきます。

それを見届けると、スレイプモン()は光に包まれて私とクダモンに分離すると、

 

「は~! もう、疲れました~~~~~!」

 

その場でバッタリと大の字に倒れます。

 

「シア…………」

 

「クダモン………少しだけ休みましょう…………それからハジメさんに報告を………」

 

そう言い掛けた所で強烈な眠気が私を襲います。

 

「シア………気にせずゆっくり眠ると良い。今のシアには休息が必要だ…………」

 

「そうですね………流石に生身で究極体に挑んだのは無謀でしたか…………」

 

私はウトウトとし始め…………

 

「シア………我が迷いを捨てられたのは、君の『勇気』のお陰だ…………君に感謝を………」

 

クダモンのその言葉を最後に私は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

【Side Out】

 

 

 

 

 






第70話の完成。
今回はシアの究極進化でした。
序にミレディの出番も少々。
やはりシアには『勇気』という言葉が似合いますね。
原作でも『真の勇者』はシアだとも言われていますし。
さて、味方陣営のロイヤルナイツ2人目。
次は…………
お楽しみに。



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