【Side 三人称】
大士達が『神域』へ向かってから程なく。
王都の空に異変が訪れた。
ビシビシッとひび割れる音と共に、王都の上空の空間に罅が入り、亀裂が広がる。
「やっぱり来やがったか…………おいテメエら! 覚悟はいいな!」
「「「「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」」」」
ベルゼブモンブラストモードを先頭に、無数の〝竜化〟した竜人族達が王都上空に待機している。
王都の住民は予め帝国に避難させており、ここに居るのはベルゼブモンや竜人族達。
そして、後方支援としてリリアーナや愛子、レミア、ミュウを始めとして、王国の一部の騎士やハウリア族、あとは自主的に名乗り出た異世界召喚組だけだ。
そしてついに、砕けるような音と共に空間に穴が開き、そこから無数のデジモン達が押し寄せてきた。
エアドラモンやクワガーモン、フライモン、ピッドモンなどの成熟期デジモンが多くの割合を占め、その成熟期デジモンを率いるようにメガドラモン、ギガドラモン、オオクワモンといった何体かの完全体デジモンがいた。
「数は多いが成熟期と完全体………大士の予想通りだな…………」
ベルゼブモンはそう呟くと、
「行くぞ!!」
開戦の狼煙を上げるようにデススリンガーの引き金を引いた。
地上からは、上空で行われている激戦の様子が伺える。
「パパ…………」
ミュウは『神域』へ行ってしまったハジメを心配する様に呟く。
その腕にはベルフェモンスリープモードがしっかりと抱きしめられている。
すると、
「さあ皆さん! 戦いが始まりました! 間もなく負傷者がやってくると思います! 回復魔法を使える人は怪我の手当てを! 他の人は負傷者に手を貸したり治療の手伝いをお願いします!」
愛子が皆に指示を飛ばす。
やがて、竜人族の中からフラフラと飛びながら後方支援組の所へ降りてくる竜が現れた。
その竜は近くの広場へ降りると〝竜化〟を解く。
その竜人は腕に怪我を負っていた。
「大丈夫ですか!? 治療班! 腕の治療を! それと体力回復の魔法薬を!」
リリアーナが即座に指示を出し、その通りに動いていく。
「すまない、助かる………」
竜人族の男性は礼を言うと、傷が治ったことを確認し、再び〝竜化〟して戦場へと戻っていく。
今はまだ少数だが、戦いが激しくなるにつれ負傷者は増えて行くだろう。
戦いに関しては任せることしか出来ない彼女達は、もどかしさを感じた。
「デススリンガー!!」
ベルゼブモンがクワガーモンを率いているオオクワモンを撃ち落とし、竜人族のブレスの一斉放射でクワガーモン達を撃ち落としていく。
「ダークネスクロウ!!」
近付いてきたメガドラモンを爪で引き裂きつつ、
「今の所は順調か…………」
ベルゼブモンはそう漏らす。
思ったよりも完全体の数が少ない上に、ハジメのアーティファクトで力を底上げされた竜人族達の活躍が予想以上だ。
1対1なら成熟期にはまず負けないし、完全体相手でも5体がかり位でかかれば何とか倒す事も出来ている。
負傷者も無理をせず早期に治療を受けることで繰り返し再戦闘を可能にし、継続的な戦闘を可能にしている。
治療の方も負傷者の数に対して追いついており、今すぐ防衛線が崩れるような事は無い。
ベルゼブモンはチラリと空間の亀裂を見る。
空には突入した大士達が戦っている影響か、デジモン達が出てきた空間の亀裂とは別に、空の至る所に罅が入り始めている。
そして、最初にデジモン達が出てきた空間の亀裂からは、もうデジモン達は出てこない。
おそらく保有戦力はこれで全てなのだろう。
ベルゼブモンはそう判断する。
「テメエら! もう少しだ! 気合い入れろぉ!!」
「「「「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」」」」」
終わりが見えたことで一層気合が入る竜人族達。
残りのデジモン達を全滅させるのは、時間の問題だった。
【Side Out】
【Side イグドラシル】
―――敵戦力……………想定外
―――計画に支障の可能性あり
―――計画変更
―――
【Side Out】
【Side 三人称】
「こいつで…………ラスト!!」
ベルゼブモンはそう叫びながら最後のメガドラモンをデススリンガーで撃ち抜く。
「へっ……! 思ったよりも楽勝だったな」
そう言いながら口元を吊り上げて笑みを浮かべる。
その様子を地上から見ていたミュウ達は、
「やったの! 皆の勝ちなの!」
「あらあら、ミュウったら………うふふ」
ミュウが笑顔ではしゃぐ姿をレミアが優しそうな笑みで見つめる。
「ほっ……! どうやら乗り切ったようですね…………皆さん! 私達の仕事はもう少しありますよ! 竜人族の皆さんを労ってあげましょう!」
愛子が消耗した竜人族達を治療する様に支持する。
生徒達が、「は~い」と元気よく返事をした瞬間だった。
――ビキィッ!!
と今までよりも大きな亀裂が入る音が響く。
「な、何ですか!?」
愛子が慌てて空を見上げると、そこには今までよりも大きな亀裂が空に入っていた。
そして、バキャァッ!と空間が割れ砕けると共に、悍ましい数の紅と黒の体色を持つ、鋼の仮面を被った竜型のデジモンが滝の様になだれ落ちてきた。
「なっ!?」
ベルゼブモンすらその数に驚愕で目を見開く。
「何だ!? こいつらは!?」
相手の正体は分からないが、ギャアギャアを喚き散らすその姿からは知性など感じ取れず、獣の様な闘争本能だけを感じる。
だが、
「…………ドルグレモンに似てる………?」
色合いの違いや細部の誤差はあるものの、全体的なフォルムはドルグレモンに酷似していた。
しかし、その竜の軍勢は凶暴な鳴き声を上げながら王都に向かって降下してくる。
「チィッ!」
ベルゼブモンが舌打ちしつつもデススリンガーを連射する。
命中した竜は撃ち落とされていくが、単発攻撃では滝に小石を投げ入れる様なものだ。
「それならっ………!」
ベルゼブモンは銃口で魔法陣を描くと、
「カオスフレア!!」
魔法陣に撃ち込まれた陽電子砲が増幅され、砲撃となって竜達を薙ぎ払う。
しかし、1対1を得意とするベルゼブモンにとって、殲滅は得意では無く、撃ち漏らしを多く出してしまう。
「くっ! テメエら! 行ったぞ!」
ベルゼブモンが竜人族達に叫ぶ。
「はぁっ!!」
竜人族が襲い掛かってくる竜型デジモンにブレス攻撃を浴びせかけた。
だが、
「ギャアギャア!!」
「なっ!?」
竜型デジモンは攻撃を受けても怯まず、そのまま襲い掛かってきて竜人族に体当たりを仕掛ける。
「ぐわっ!?」
ハジメのアーティファクトで強化されている筈の鱗を易々と傷付け、鮮血が飛び散る。
「こいつめ!!」
竜人族は至近距離からブレス攻撃を浴びせかけ、今度こそ、その竜型デジモンを撃ち落とした。
「な、何なんだコイツらは………今までの敵とは違う………!」
竜人族の1人がそう零す。
今までのデジモン達は、攻撃すれば怯んだし、ちゃんと感情も感じ取れていた。
だが、目の前の竜型デジモン達は攻撃を受けても怯むことなど全く無く、痛みを感じている節さえ感じられない。
ただ目の前の敵を排除するだけの殺人マシーン。
そんな印象を与える竜型デジモンに竜人族達は恐怖を覚えた。
地上からでもその竜型デジモン達は確認できていた。
「な、何ですか!? あの大群は!?」
「わかりません! ですが、まだ終わっていなかったという事です!」
愛子とリリアーナがそう言うと、
「ねえ、あの竜みたいなのって、黒騎のデジモンに似てない?」
「そう言われると…………進化した姿にそっくりかも…………」
かつて『愛ちゃん護衛隊』に所属し、ドルグレモンを見たことがある宮崎 奈々と菅原 妙子が呟く。
その言葉に他のメンバーが本当かと確認しようとした時、
「違うもん!!」
幼い声が響き渡った。
見れば、ミュウが涙を浮かべた目で奈々と妙子を睨み付けていた。
「おじちゃんのドルちゃんはあんな冷たい声なんてしてないの! もっと勇敢で、優しい声なの!」
そう叫ぶミュウに2人は思わずたじろぐ。
すると、ミュウはDアークを取り出す。
「デクスドルグレモン 完全体 ウィルス種 アンデッド型デジモン。必殺技は、『ブラッディ―ケイブ』と『メタルメテオ』! なの!」
表示された情報を叫ぶ。
無数に現れたデクスドルグレモンはベルゼブモンや竜人族達を振り切り、王都の街に降り立つ。
着地しただけで王都の建物を押しつぶす様は正に怪獣だ。
更には尾を振り、首を振り向かせるだけで近くの建物は破壊される。
「ああっ……! 街が………!」
リリアーナも覚悟はしていたとはいえ、目の前で街が破壊されるのはショックだろう。
その時、城壁を破壊しながら1体のデクスドルグレモンが王城の敷地内に侵入した。
「きゃあっ!」
「うわぁあああっ! き、来たっ!?」
異世界召喚組や騎士が声を上げる。
「きゃぁああああああああっ!?」
逃げ遅れた生徒の1人がデクスドルグレモンに踏みつぶされようとした時、シャッ、と黒い影が走ってその生徒を救い出した。
「大丈夫かな? お嬢さん」
その影は、口元まで覆う黒装束にワンレンズ型のサングラスを身に付け、その頭上に『ウサミミ』を靡かせている。
「この深淵蠢動の闇狩鬼カームバンティス・エルファライト・ローデリア・ハウリア。ボスの命により皆様の命をお守りいたす!」
長々と名乗ったがカムである。
まごう事なきシアの父親のカムである。
唯のカムである。
すると、
「必滅のバルトフェルド!!」
「疾影のラナインフェリナ!!」
「空裂のミナステリア!!」
「幻武のヤオゼリアス!!」
「這斬のヨルガンダル!!」
「霧雨のリキッドブレイク!!」
ハウリア族達が何処からともなく、痛い名を名乗りながら姿を現す。
香ばしいポーズも添えて。
「「「「「「「「「「…………………………………………」」」」」」」」」」
それを見た者達はドン引きし、
「ギャ、ギャアッ…………!」
心無し知性などあるはずがないデクスドルグレモンも引いた気がした。
しかし、カム達はそれを気にすることも無く、
「お前達! 優先順位は分かっているな!?」
「ハッ! 最優先でお嬢とお嬢の母上様の安全!」
「次点にアイコ教諭とリリアーナ王女!」
「それからそれ以外です!!」
その言葉に『それ以外』に括られた者達、特に異世界召喚組が待てやコラと一斉に内心突っ込む。
「うむ! ボスからの直々のご命令! 身命を賭して成し遂げよ! 散っ!!」
バッと散らばる様に姿を消すハウリア族。
それからハッとなった様に再び暴れ始めるデクスドルグレモンだったが、巨大な脚や飛び散る瓦礫に誰かが押しつぶされそうになる度、その下からハウリア族が救い出す。
しかし、ハウリア族は危険察知や気配遮断には長けているが、非力なのでデクスドルグレモンを倒す事は出来ない。
更に上空のベルゼブモンや竜人族達も、続々と現れるデクスドルグレモン達を全て止めることは出来ず、次々とデクスドルグレモンの地上到達を許してしまう。
「畜生! こいつら次から次へと!!」
ベルゼブモンが悪態を吐きながらデクスドルグレモンを撃ち落とす。
「族長! このままでは!!」
「何としても耐えるのだ! ここで我々が退けば、一気に押し込まれる!」
竜人族の族長であり、ティオの祖父であるアドゥルが叫ぶ。
だが、デクスドルグレモンの圧倒的物量差に押しつぶされてしまうのも時間の問題だった。
その時、地上に到達したデクスドルグレモンの1体が首を仰け反らせ、超巨大な鉄球を生み出す。
「なっ!?」
「まさか、あれを!?」
直径200mにも達する巨大な鉄球を掲げるデクスドルグレモン。
それを見た愛子達が戦慄を覚える。
「くっ! お前達! せめてお嬢やアイコ教諭達だけでも………!」
カムがミュウ達だけでも逃がそうと、ハウリア族に指示を飛ばそうとした時、
「駄目なの!!」
ミュウが叫んだ。
「ミュウ!?」
「お嬢!?」
その声にレミアやハウリア族達が驚いた声を上げる。
「パパと約束したの! ミュウが………ミュウがママ達を護るの!」
迫る脅威にミュウは涙を浮かべながらも気丈に振る舞う。
「だから………ミュウが逃げちゃ駄目なのっ!!」
ミュウはレミアの腕を抜け出すと、前に駆け出す。
「ミュウ!?」
レミアも慌てて後を追う。
その時、デクスドルグレモンから必殺のメタルメテオが放たれた。
技を放ったデクスドルグレモンから王城までの直線上にある建物を押しつぶしながら巨大な鉄球が突き進む。
それはミュウ達どころか、王城すらも容易く砕き、押しつぶすだろう。
それでもミュウは止まらず皆の前に飛び出すと、
「ミュウが……………護るのーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
腕に抱いているベルフェモンを思い切り抱きしめながら、目を瞑って叫んだ。
そのままミュウが目前まで迫った巨大な鉄球に押し潰される…………………
その瞬間、
「ヴミャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ~~~~~~~~~~ッ!?」
大音量の眠そうな猫の鳴き声の様な声が響いた。
それと同時にミュウの目前まで迫っていた鉄球が逆方向の衝撃と共に粉々になりながら吹き飛ばされ、鉄球を放ったデクスドルグレモンごと消し飛ばされる。
ミュウは、パチクリと目を丸くすると、
「べるちゃん…………?」
その衝撃波を放ったベルフェモンへ視線を落とした。
すると、ベルフェモンスリープモードが突然空中へ浮かび出し、それを掴んでいたミュウも一緒に宙へ浮く。
「ミュウ!?」
レミアが叫ぶが、ミュウとベルフェモンはそのまま空中に浮かび続け、ある程度の高さまで到達すると、
―――ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!
続けて戦場全てに響き渡るほどの、大音量の目覚まし時計の様な音が鳴り響いた。
その音はベルゼブモンや竜人族達だけでなく、デクスドルグレモン達の気も引く。
すると、閉じられていたベルフェモンスリープモードの目がカッと見開かれ、体に巻き付けられていた鎖が弾け飛ぶ。
ベルフェモンが巨大化していくにつれ、その顔は黒山羊の様な顔に。
背中には6枚の悪魔の様な翼。
両腕と両腿に鎖を巻き付けた、まさに魔王と呼ぶべき魔王型デジモン。
「ルォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」
ベルフェモン レイジモードが目を覚ました。
その姿に地上に居た者達は恐怖を覚える。
しかし、その左肩に乗っていたミュウはベルフェモンの顔を見上げ、
「………………べるちゃん?」
きょとんとはしていたが、特に恐怖という感情は湧いてこなかった。
「ルォォ…………」
ベルフェモンはミュウに視線を向ける。
ミュウはその視線を真っすぐに見返す。
その時、呆気に取られていたベルゼブモンや竜人族達の隙を突き、大量のデクスドルグレモン達が地上へ向かって降下していった。
「しまった!!」
ベルゼブモンが悔いるが、もう間に合わない。
だが、その時だった。
「べるちゃん!」
ミュウが叫び、左手を前に翳すと、
「なぎはらえーーーーーーーーーーーーーーーっ!! なのっ!」
「ルォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
それを合図としたようにベルフェモンが口にエネルギーを集中し、巨大な砲撃を放った。
ミュウの言葉通り薙ぎ払われる様に放たれた砲撃。
それはデクスドルグレモンを片っ端から消滅させていき、その命令通りに薙ぎ払った。
とは言え、それでも撃ち漏らしは出てくる。
何体かのデクスドルグレモンがベルフェモンを囲うように接近しようとしたが、
「ルォオオオオオオオオッ!!」
黒い炎を纏った鎖が体の各部から伸びてデクスドルグレモンを焼き尽くす。
更に、両腕の先にある地獄の炎を纏った爪で近付くデクスドルグレモンを引き裂いていく。
だが、
「「「「「きゃぁああああああああああああっ!?」」」」」
「「「「「うわぁああああああああああああっ!?」」」」」
ベルフェモンの足元にいた愛子やリリアーナ、レミア達が悲鳴を上げる。
ベルフェモンが一歩歩くことですら地面を砕くほどの威力があるのだ。
地上にいる者達にとっては堪ったものではない。
「あっ! 動いちゃ駄目なの! ママ達が潰れちゃうの!」
ベルフェモンの顔をポカポカと殴るミュウ。
「ル、ルォォ…………!?」
ベルフェモンは困った様に呻く。
だが、容易に動けないとなると、ベルフェモンの攻撃を掻い潜るデクスドルグレモンが出てくる。
ベルフェモンの砲撃、鎖、爪を掻い潜った3体のデクスドルグレモンがレミアに襲い掛かる。
「疾影のラナインフェリナ!! 母上様を!!」
カムがラナに、レミアを救い出すように指示する。
「母上様! 失礼します!」
ラナがレミアを抱き上げてデクスドルグレモンの嚙みつきを躱しながら離れようとするが、次の瞬間、瓦礫の山を突き破ってもう1体のデクスドルグレモンが現れた。
「なっ!?」
着地した直後のラナは僅かな隙が生まれる。
1人であれば直ぐに離脱できたのだが、レミアを抱えていたのが問題だった。
元々非力な兎人族は人1人抱えるだけでも重労働だ。
「ま、間に合わない………! 申し訳ありません、ボス……!」
最早レミア共々食い殺される未来しか見えない。
「ママ!?」
ミュウも叫ぶが、ベルフェモンの力では2人も巻き込んでしまう。
打つ手無し。
誰もがそう思っていたし、事実その通りだった。
そして、
「ギャアギャア! ギャッ……………!?」
何の前触れもなく、そのデクスドルグレモンの首が落とされた。
「えっ………?」
その事実に最初に気付いたラナが声を漏らす。
すると、
「ギャッ!?」
「ギャオゥッ!?」
「ギギャッ!?」
続けて3体のデクスドルグレモンの首が落とされた。
「一体………何が………?」
レミアが不思議そうにキョロキョロと周りを見渡す。
「ママ………!」
ミュウがホッとしたようにベルフェモンの肩の上で声を漏らした。
「一体どういう事でしょう………?」
愛子が突然デクスドルグレモンの首が斬り落とされた事を怪訝に思う。
すると、ラナがウサミミをピクリとさせて、すぐそこの虚空を見つめた。
そして、
「………………君、気配操作がとっても上手ね。私じゃ敵わないかも」
ニッコリと微笑みを浮かべながら虚空に話しかけた。
「ふえ?」
その行動にベルフェモンの肩から見ていたミュウは首を傾げる。
そのままラナが見ている虚空に目を凝らすと…………
「…………………………あっ!」
そこには、3mほどの身長。
紺色のボディスーツを身に纏い、右の背中にカラスの様な黒い片翼。
左腕にクロンデジゾイド製の翼を持ち、腰に刀剣『鳥王丸』を携えた赤い仮面を付けた人型のデジモンがいた。
「レイヴモン 究極体 ワクチン種 サイボーグ型デジモン。必殺技は、『スパイラルレイヴンクロウ』、『ブラストウィング』、『
ミュウがそのデジモンのデータを読み上げる。
すると、
「おいコースケ!! この人俺達の存在に気付いてくれたぞ!!!」
まるで奇跡を目にしたかのように驚愕しつつそう叫んだ。
そして、
『マジかよ!? 信じらんねぇっ!!!』
また別の声がそのレイヴモンから聞こえてくる。
「その声…………もしかして遠藤君!? 遠藤君何ですか!?」
愛子がその声で気付く。
「ふえっ? コースケお兄ちゃん?」
ミュウが首を傾げる。
浩介はミュウも以前あっていたので覚えていた………いや、思い出したのだろう。
因みに今の今まで忘れていた。
すると、
「私の名前は疾影のラナインフェリナ・ハウリア。疾風のように駆け、影のように忍び寄り、致命の一撃をプレゼントする、ハウリア族一の忍び手!」
『……そ、そうですか』
ラナが突然自己紹介を始め、浩介が若干引き気味に頷く。
「でも、君を見ていたら、この二つ名を名乗るのが恥ずかしくなっちゃたわ。だから、悔しいけど〝疾影〟の二つ名は君に譲る。君の名前は?」
『……俺は遠藤浩介………今の姿はレイヴモンですけど…………あと、こいつの元の姿はファルコモンってデジモンです』
「じゃあ、君は今日から〝疾影〟……ううん、私を超えているのだから……〝疾牙影爪のコウスケ・E・アビスゲート〟と名乗るといいわ! 悔しいけどね!」
『いえ、結構――』
「助けてくれて感謝するわ! 疾牙影爪のコウスケ・E・アビスゲート! そしてレイヴモン!」
『……………………』
正直浩介にとってそんな痛々しい二つ名は勘弁だった。
だが、ラナは兎人族だ。
元々、愛玩奴隷としては一番人気があっただけに兎人族は総じて整った容姿をしている。
そしてラナもその例に漏れず、ものすごく美人だ。
オマケにスタイルも良い。
その美人なお姉さんが可愛らしい笑顔を向けてくれる。
何より、ラナはレイヴモンを………影の薄い自分を見つけてくれたのだ。
――綺麗なお姉さん、ウサミミ付きは好きですか?
浩介の脳裏にそんな問答が過る。
そしてその答えは………………
『疾牙影爪のコウスケ・E・アビスゲート、参る!』
「それでいいのかコースケ…………」
呆れるように呟くレイヴモンだったが、浩介のやる気がレイヴモンにも伝達しているのか動きが更に冴えわたる。
ミュウのベルフェモンが砲撃によって大部分を撃ち落とし、撃ち漏らしたデクスドルグレモンをベルゼブモンと竜人族が食い止め、それでも抜けてしまったデクスドルグレモンをレイヴモンが始末する。
今ここに、王都防衛網が完成した。
・遠藤 浩介のパートナーデジモン
【ファルコモン】
テイマー:遠藤 浩介
レベル:成長期
属性:ワクチン種
タイプ:鳥型デジモン
必殺技:『スクラッチスマッシュ』、『手裏裏剣』、『打竹落し』
進化:ファルコモン→ペックモン→ヤタガラモン→レイヴモン
備考
デジモン界の遠藤 浩介(笑)
魔人族の手勢としてイグドラシルによってトータスに呼び出されていたが、ドルゴラモンによって魔人国が壊滅するまでイグドラシルを含めて誰にも気付かれなかった過去を持つ。
ハジメ達が撤退する際、誰にも気付かれずにドサクサでゲートを潜って王国に辿り着く。
その際、異世界召喚組がエヒト勢によって誘拐された際、1人気付かれずに王国に取り残されていた浩介と出会い、一瞬で途轍もないシンパシーを感じて出会ったその場でテイマーとパートナーの関係となる。
Dアークは暗い紫の縁取り。
王都防衛戦時で浩介と出会って2日だが、その2日で誰よりも浩介と分かり合い、融合進化に至るまでになった。
因みに進化しても影の薄さは改善されなかった。
寧ろレイヴモンになった場合は浩介の影の薄さとかけ合わさって更に影が薄くなった。
余談だがそのレイヴモンを見つけたラナは異常。
後の葵(運命神 アルオイス)に言わせれば、浩介とラナは、本来の運命の相手以上に強い『運命』の交わりが出来上がったから、らしい。
はい、第75話の完成です。
ミュウのベルフェモンレイジモードは予想した人は多いでしょうが、まさかの深淵卿にパートナーがいたとはだれが思ったでしょうか!?
この世界でも彼が深淵卿となる『運命』は変えられず。
まあ、寧ろ綺麗なウサミミお姉さん(+他数名)を嫁に出来るんだから変えなくてもいいよね!
作者も気付かぬままに出会って究極体へと至っていた浩介とファルコンでした(笑)
そして次回はいよいよVSロイヤルナイツ。
お楽しみに。