空間を揺るがす振動と共に、大地と空間その物が割れ砕け、その空間の狭間から巨大な影が上昇してきた。
「ッ………!? あれは……………!」
その姿は、まるで巨大な金属で出来たドレスのような形をしており、周囲に無数のクリスタルの様なものを浮かべている。
それはまさしく、
『イグドラシル………!!』
俺はそう口にする。
『あれが………イグドラシル………』
『デジモンの『神』か………』
葵とリュウダモンもそう呟いた。
すると、オメガモン Alter-B、アルフォースブイドラモンFM、スレイプモン、エグザモン、ジエスモンGXが近くに集まった。
オメガモン Alter-SがAlter-Bになっていたり、アルフォースブイドラモンがフューチャーモードになってたり、ジエスモンがGXになっていることにちょっと驚いたが、俺達はイグドラシルを見上げた。
すると、
『私はイグドラシル。デジタルワールドの『神』』
女性の合成音声に近い声が響き渡った。
その言葉に
「イグドラシル。直ちに2つの世界の衝突を止めてもらいたい」
そう進言する。
『2つの世界の消滅は決定事項。変更は無い』
「ッ!?」
キッパリと言われたその言葉に緊張感が高まる。
だが、
「お待ちください、イグドラシル」
俺達以外の声が響いた。
俺達が振り返ると、そこには満身創痍だが自分の足で立つクレニアムモンの姿。
クレニアムモンはこちらに歩み寄ってくる。
「クレニアムモンッ………!」
エグザモンが身構えるが、
「安心しろ。もうお前達と戦う気は無い」
「何………?」
その言葉に虚を突かれたように呆気に取られるエグザモン。
クレニアムモンはそのまま皆の横を通り過ぎ、
「イグドラシルよ。この者達の願い、聞き届けては貰えないだろうか?」
「クレニアムモン………!?」
クレニアムモンが口にした言葉に、
『何……………?』
イグドラシルも予想外だったのかそう言い返す。
「我々はこの者達の前に、全員敗北した…………同じロイヤルナイツが相手と言えど、7人全員が敗れた…………これが半数前後であればまだ言い訳は出来た………だが、全員が敗れたとなれば、人間のテイマーの力を認めざるを得ない………」
クレニアムモンはどうやら俺達を認めてくれたようだ。
すると、
「イグドラシル、私も同じ意見だ」
その声に振り返ると、オメガモンも同じように歩み寄って来た。
「私の相手は、私と互角の力を持っていた………いや、相性を踏まえれば、まだ私の方が有利だった。にもかかわらず、私が負けたのは、テイマーの存在が大きいという事に他ならない」
「「オメガモン………」」
オメガモン Alter-Bが声を漏らす。
「この者達の意を認め、人間達の抹消の再考を申し出る!」
オメガモンがハッキリとそう言った。
『……………………………』
そして、暫くの沈黙が流れた後、
『……………………よかろう』
イグドラシルはそう口にした。
その言葉に、俺達の間に希望が生まれる。
だが、
『お前達も人間共々滅びよ!』
「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」
次の瞬間、イグドラシルの周囲に浮遊していた複数のクリスタルが輝くと、同時に俺達に向かって撃ち出された。
「くっ!?」
「ぐあっ!?」
「うわっ!?」
クリスタルは俺達の周囲だけでは無く、傷付き倒れている他のロイヤルナイツ達にも降り注ぎ、爆発を起こす。
「イグドラシル!? 血迷ったか!?」
オメガモンがそう叫ぶ。
『血迷ったのは貴様達のほうだ。『神』の命令は絶対! 逆らう者は断じて許さん!』
「何っ!?」
『主君に背く騎士団など、最早必要無い!』
「イグドラシル…………!」
クレニアムモンがあんまりだと言わんばかりの声を漏らす。
「我々は今まであなたに忠誠を誓ってきた! たった一度の具申でこの仕打ちか!?」
オメガモンが悔しそうに叫んだ。
『私は『神』だ! 絶対の存在だ! その言葉に逆らう事など許される事では無い!』
『違う!!』
イグドラシルの言葉に反論したのは葵だった。
『『神』とは見守る者! 世界の『命』が生きていけるようにほんの少し力を貸すだけ! 世界に生きる『命』を好き勝手していい権利なんて、『神』には無いよ!!』
葵の言葉。
それは女神である葵自身が持つ誇りなのだろう。
『世迷いごとを!!』
クリスタルの1つが
その時、
「ガルルキャノン!!」
オメガモンが放ったガルルキャノンがそのクリスタルを粉砕する。
「オメガモン………?」
「……………………」
オメガモンはガルルキャノンの砲口をイグドラシルへ向けていた。
『オメガモン、貴様、神に背くだけでなく弓引くというのか………!?』
イグドラシルがオメガモンに言い放つ。
「……………もっと早くこうするべきだった…………我が盟友『デュークモン』が『神』を見限ったように……………」
「『!?』」
その言葉に
『デュークモン……………いち早く私を裏切った裏切者か。奴はデジノームの力を借り、自ら力と記憶を捨て、人間に尻尾を振った愚か者では無いか!』
「………………今ならば、その選択は間違いではなかったと言える。デュークモンは最初に気付いていたのだ。『神』は絶対では無いと。だからこそ無限の可能性を求めて人間の元へと行ったのだ」
その言葉で、やはりタカトのギルモンも、おそらく元はイグドラシルに仕えていたデュークモンだったことが伺える。
『ふざけるな! 人間にそのような可能性などあるものか!』
その瞬間、イグドラシルが目の前に巨大なクリスタルを具現する。
「なっ!?」
オメガモンが驚愕の声を上げる。
『消え去れ!』
その巨大なクリスタルがオメガモンに向かって放たれる。
だが、
「そうはさせるか!!」
『ぬぅ………!? 貴様………!』
「アルファモン…………」
イグドラシルが忌々しげな声を漏らし、オメガモンが
「オメガモン、あなたの言う通りだ。デュークモンは…………タカトとギルモンは最高のコンビだ。その2人の出会いが間違いであるなど、例え『神』だろうと否定はさせない!!」
「これ以上の問答は無意味だ。イグドラシル! お前が世界を滅ぼすというのなら、俺達はそれを止める!!」
『愚かな…………神に逆らった報いを受けるが良い!』
イグドラシルは無数のクリスタルを具現する。
「行くぞ皆!」
「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」
『貰ったですぅ!』
いち早くクリスタルの嵐を掻い潜り、イグドラシルの懐へ飛び込んだスレイプモンが左腕の聖弩『ムスペルヘイム』を向ける。
だが、
『まだだっ! 気を付けろ!!』
俺が咄嗟に叫ぶ。
その瞬間、イグドラシルの各部から無数の茨の蔦が伸びてスレイプモンに四方から襲い掛かった。
「なっ!?」
『はわっ!?』
スレイプモンとシアが驚愕に声を漏らした瞬間、閃光が駆け抜けてその茨の蔦を切り裂いた。
「大丈夫か!? スレイプモン!」
『シア、調子に乗らない』
それはアルフォースブイドラモンFMだ。
『なるほど、離れればクリスタルで。近付けば無数の茨の蔦が襲い掛かる………隙が無いのう』
「それならば!」
エグザモンが空高く舞い上がる。
「ドラゴニックインパクト!!」
全身全霊の突撃。
それは無数のクリスタルの攻撃をものともせずに突っ込んでいく。
だが、
『無駄だ!』
イグドラシルの言葉と共に、目の前に巨大なクリスタルが具現され、
「ッ!?」
エグザモンはその巨大なクリスタルと衝突した。
巨大なクリスタルは粉々に砕け散るが、同時にエグザモンも完全に勢いを失って墜落する。
「エグザモン!?」
だが、そのエグザモンに向かって再び無数のクリスタルが襲い掛かる。
「「グレイキャノン!!」」
その時、紫のプラズマ粒子砲がエグザモンの前に放たれ、壁となってエグザモンに当たるはずだったクリスタルを防ぐ。
それを放ったのは、言うまでもなくオメガモン Alter-Bだ。
『御主人!』
ティオが嬉しそうに叫ぶ。
『今までの敵とは違う。油断するな』
ハジメがそう告げた。
その姿にホッとするのもつかの間、
「させるか!」
『行って! 大士! 葵!』
優花が叫ぶ。
『わかった!』
そう言うと、
「デジタライズ・オブ・ソウル!!」
右手から放たれる無数の光弾。
それはあっという間にイグドラシルを爆煙に包む。
『……………………この程度じゃ効かないか…………』
俺はそう呟く。
爆煙の向こうから現れたイグドラシルは、表面が多少焦げ付いただけで、目に見えるダメージは無い。
その時、残っていた煙を切り裂いて、
それらは
「し、しまった!?」
失態に声を漏らした瞬間、黒い稲妻の様なエネルギーが茨の蔦を伝って
「ぐぁああああああああああああああああああああああっ!?!?」
『ぐぅぅぅぅぅっ…………!?』
『きゃぁああああああああっ!?』
そのダメージはもちろん同化している俺達にも伝わり、悲鳴を上げる。
『大士! 葵! このっ………! 邪魔しないで!!』
ジエスモンGXが
その間にも
だがその時、
「エンドワルツ!!」
巻き起こった竜巻が
それを放ったのは、
「クレニアムモン!?」
『クレニアムモン! 貴様も『神』に楯突くか!?』
「イグドラシル………私が今まであなたに仕えてきたのは、あなたが我が君主足り得ると思ってきたからだ。だが、今のあなたに忠誠を誓う事は出来ない………!」
クレニアムモンはそう言い放つ。
「忠臣の助言に耳を傾けない者に君主たる資格は無い!!」
そう言ってクレニアムモンは槍を構えた。
『………もういい、消えろっ!』
クレニアムモンに向かって無数のクリスタルが放たれる。
だが、
「ペンドラゴンズグローリー!!」
エグザモンが放ったレーザーがそのクリスタルを撃ち落とす。
「ッ! エグザモン!?」
『妾達の目下の『敵』は奴じゃからな。『敵』の『敵』は味方とまでは行かんが…………共通の『敵』を倒すまでは協力しようでは無いか』
ティオの言葉に、
「俺に異存はない。ロイヤルナイツが協力してくれるのなら、これ以上心強い事は無い」
『私達は大士に賛成よ』
「うむ」
優花がそう言うと、ジエスモンGXが頷く。
まあ、『敵』に関して一番敏感なのはハジメだが…………
『ハジメ君…………』
『チッ、わかってるよ。今はイグドラシルを倒す事が先決だ。奴を倒すのに戦力が多い事に越したことは無い』
「「と、いう事だ」」
オメガモン Alter-Bの中のハジメも、少し渋ったような感じだが受け入れた。
『ハジメがそれでいいなら構わない』
「ああ」
『同じくですぅ!』
「うむ」
アルフォースブイドラモンFMとスレイプモンも否はない様だ。
「お前達…………」
「そう言う事だ。共同戦線と行こうではないか」
エグザモンがそう言うと、全員がイグドラシルを見据える。
「行くぞ!!」
「デジタライズ・オブ・ソウル!!」
「聖拳滅破っ!!」
「「グレイキャノン!!」」
「シャイニングVフォース!!」
「ビフロスト!!」
「ペンドラゴンズグローリー!!」
「エンドワルツ!!」
「ガルルキャノン!!」
全員の必殺技がイグドラシルへと殺到する。
その威力は言葉では言い表せない程すさまじいものであり、この空間自体の罅もそこら中に広がっていて、イグドラシルも唯では済まないだろうと思っていた。
だが、油断はせずに爆心地を見据える。
煙が晴れて行くと、そこには下半身をほぼ吹き飛ばされたイグドラシルの姿があった。
『どんなもんですか!』
シアがそう言うが、
『……………いや………まだだ!』
俺はそう叫ぶ。
何故なら、失った下半身が瞬く間に修復されていったからだ。
『これほどの力が出せるとはな………だが、『神』の前ではそれすらも無意味だ!』
くそっ!
見た目から予想していたが、自己修復機能はセイバーズと一緒かよ!
『再生した…………?』
ユエが呟く。
『その通りだ。『神』に死はあり得ん………私は生きながらにして何度でも蘇ることが出来る』
「「「「「「「「ッ…………!」」」」」」」」
その言葉に全員に戦慄が走る。
だが、
『ハッ………! 何度でも再生するってんなら、再生を超える速度でぶっ壊せばいいだけの話だ!』
ハジメがそう言うとオメガモン Alter-Bがグレイキャノンを向ける。
『ハジメの言う通りだ! イグドラシルだって無敵じゃない! 攻撃が通じるなら倒せるはずだ!』
俺もそう叫ぶ。
その時、
『理解不能だな。何故お前達はそこまで抗うのか?』
イグドラシルの問いかけ。
『その質問は、もう聞き飽きた!』
『何度だっていうよ! 私達は『生きたい』からだよ!』
ハジメと白崎さんが叫ぶ。
『ハジメ達やブイモン達………皆と生きる『未来』を………!』
『幸せな『未来』を掴みたいんです!』
ユエとシア。
『妾達は『誇り』を持って前に進む!』
『大切な………『愛』する人と一緒に生きていきたいから!』
ティオと優花。
『そして、家族や仲間、故郷…………『大切』なものを護りたいから!』
『だから俺達は戦う! 他の誰の為でもない! 自分達の為に!!』
葵と俺。
それぞれが自分達の思いを叫ぶ。
すると、イグドラシルが僅かな間沈黙し、
『……………………ならば、貴様たちが『生きる場所』そのものを消してやろう』
「何っ!?」
いや、空間その物が激しく揺れ始めた。
それと同時に、空間の罅があちこちに広がり始める。
「何をした!?」
『この空間を支えることを止めた』
まさか『神域』を崩壊させるつもりか!?
だが、この程度で俺達がどうにかなるとは思えないが………
その時、イグドラシルの後方の空間がひび割れて砕け、外界への穴が作られた。
「ッ!? まさか、地上を!?」
まさかこいつは外にいる皆を攻撃するつもりか!?
イグドラシルはその穴から外へ出て行く。
『チッ! させるか!?』
『待ってハジメ君! このまま『神域』を放っておくと、地上にいるリリィや先生達が!』
オメガモン Alter-Bが咄嗟に追いかけようとした時、白崎さんに言われてハッとなる。
一瞬躊躇した時、
『ちょあーーー! 絶妙なタイミングで現れるぅ、美少女戦士、ミレディ・ライセンたん☆ ここに参上! 私を呼んだのは君達かなっ? かなっ?』
なんか出てきた。
「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」
全員が唖然としている。
オメガモンとクレニアムモンまで黙り込んだ。
『なんだよぉ~、せっかくピンチっぽいから助けに来てあげたのにぃ~、ノーリアクションかよぉ~。ミレディちゃん泣いちゃうぞ! シクシク、チラチラッてしちゃうぞぉ?』
『……うぜぇ』
『確かにミレディさんだね………』
思わずそう呟くハジメと白崎さん。
序に俺もうぜぇとは思っている。
ふと気が付くと、空間の崩壊が止まっていた。
『これはお前の仕業か?』
俺がそう聞くと、
『ふふん、まぁね。このくらい解放者たるミレディちゃんには容易いことさぁ~。といっても、あと数分も保たないけどね☆』
そう言えばシアから『神域』の崩壊はミレディが何とかするって言ってたっけ。
ロイヤルナイツやイグドラシルの戦いですっかり忘れてた。
『既に君らの御仲間さん達も地上に投げ捨てて来たからね☆ 後はここにいるメンバーだけだよん! 流石、私! 出来る女だっ! はい、拍手ぅ拍手ぅ!』
確かに八重樫さんやレオモン達を先に逃がしたのは褒めるべきことだが、素直に感心することが出来ないのはミレディのウザさ故だろう。
『ほらほら、何してるの? 君達はアレを追うんでしょ? さっさとゴー! ゴー! あとはお姉さんにまっかせなさ~い☆』
その言葉を聞くと、
『………やっぱりアンタはここに残るのか?』
さっき思い出したが、ミレディがこの『神域』を何とか出来るとしても、それ相応の代償は必要だろう。
つまり、ミレディは命を懸けるという事。
『うん。私の、超奥義☆な魔法で『神域』の崩壊を誘導して圧縮ポンしちゃう予定だから。崩壊寸前だし、私のこの体と魂魄を媒体に魔力を増大させれば十分できる。だから、私はここで終わり』
その言葉に、俺はやはり、とそう思った
『自己犠牲か? 似合わねぇよ。それより――』
ハジメが何か言おうとしたが、ミレディ・ゴーレムに重なるようにして14、5歳くらいの金髪美少女が現れた。
魂魄魔法による投影のようで、それがミレディ本来の姿なのだろう。
『自己満足さぁ。仲間との、私の大切な人達との約束――〝悪い神を倒して世界を救おう!〟な~んて御伽噺みたいな、馬鹿げてるけど本気で交わし合った約束を果たしたいだけだよん』
「「「「「「「………………」」」」」」」
『あのとき、なにも出来ずに負けて、みんなバラバラになって、それでもって大迷宮なんて作って……ずっと、この時を待ってた。今、この時、この場所で、人々の為に全力を振るうことが、ここまで私が生き長らえた理由なんだもん』
その時、どうやったのか葵がアルファモンから分離してミレディの前に立った。
『君は確かアオイちゃんだったね。あの
ミレディがそう言った時、葵が光に包まれて女神の姿となった。
白い翼が広がり、蒼銀の髪が靡く。
『ッ…………!?』
その姿を前にした時、ミレディは自然と跪いていた。
『女神様………我らが怨敵エヒトルジュエを裁いてくれたこと、このミレディ・ライセン。あなたに未来永劫の感謝を…………!』
いつものウザさが嘘の様に礼儀正しく、作法に則っているだろう姿で感謝を述べた。
そのミレディに対し、
「ミレディ・ライセン。自分の『運命』だけでなく、『世界の運命』に抗い続けた意志の強さに、『運命の女神』として敬意を表します。そして、オスカー・オルクス。ナイズ・グリューエン。メイル・メルジーネ。ラウス・バーン。リューティリス・ハルツィナ。ヴァンドゥル・シュネー……………あなた達にも敬意を」
葵がそれらの名を呟くと、ミレディの背後に6人の人影が現れ、葵に………
いや、俺達全員に感謝の意を伝えるように胸に手を当て、頭を下げた。
『えっ………? み、皆…………?』
ミレディがその6人に気付いて驚いた声を上げる。
「彼らは自分達の死後も輪廻の環に帰らず、己の意志の力のみで現世に留まり続け、あなたの傍に居たのですよ」
葵が微笑んでそう言った。
おそらく葵が、許される範囲で『神力』を使って姿が見えるようにしてくれたのだろう。
『オー君………皆………ずっと………ずっと傍に居てくれたんだね………!』
投影されているミレディがボロボロと涙を零す。
「ミレディ・ライセン。そして解放者………いえ、『世界の守護者』達よ。あなた達の『運命に抗い続けた戦い』は、運命の女神アルオイスが確かに見届けました。願わくば、あなた達の来世に幸あらんことを………………」
葵は祈る様にそう言うと、人間の姿に戻ってアルファモンと再び同化する。
「行こう!」
『あなたのその意志の強さ、見習わせてもらうわ』
優花がそう言うと、ジエスモンGXが続く。
『……ん。ミレディ。あなたの魔法は一番役に立った』
『ふざけた所は嫌いですが、その志は確かに立派でしたよ』
ユエとシアがそう言い、アルフォースブイドラモンFM、スレイプモンが飛び込む。
『妾は其方とは会ったことは無いが………その気高き魂には敬意を表するぞ』
ティオがそう言い残すしてエグザモンが穴に飛び込む。
続いてオメガモン Alter-Bが穴に飛び込もうとした時、
『じゃあな、世界の守護者』
『今度こそさよならだね』
ハジメと白崎さんがそう言うと、オメガモン Alter-Bが穴に飛び込んだ。
【Side 三人称】
アルファモン王竜剣達がイグドラシルを追って外界へ出ると、ミレディはふぅ~、と溜息を吐いた。
『『世界の守護者』………か、本物の女神様に認められちゃったよ……………報われた、なんて思っちゃったじゃんか』
ミレディが抑えていた空間の崩壊が再び始まったのか、振動が起こり始める。
その時、傷付いたロイヤルナイツ達がいつの間にかミレディの周りに集まっていた。
『あれ? どうしたの君達? このままここにいると崩壊に巻き込まれちゃうから、脱出するなら早くしなよ』
ミレディがそう言うと、ロードナイトモンが前に出た。
「ミレディと言ったな? お前はあのエヒトに対して反旗を翻したと聞いた…………何故仮にも『神』に逆らったのだ?」
その質問に、
『さっきも言ったけど自己満足だよ。元々この世界が
「自由な意思…………」
『『神』の言いなりなんて操り人形と大差ないでしょ? 私達は自分で考え、自分の意志でこれからを決めて行きたかった』
「「「「「ッ!?」」」」」
その言葉にイグドラシルの言いなりとも言えたロイヤルナイツ達は動揺する。
『あの子達は自分の意志で目的を決めて、自分の意志でそれを貫いた。私達が求めたのはそう言う事だよ』
「「「「「……………………」」」」」
「……………イグドラシルは我々を不要と判断した」
「だが、だからと言って私はそのまま消されるのは承服できん」
「クレニアムモン、オメガモン………」
「故に、私は私の意志でイグドラシルに逆らうことに決めた。お前達は如何する?」
クレニアムモンの言葉にロイヤルナイツ達は一度俯く。
そして、幾度か言葉を交わすとロイヤルナイツ達は空間の穴から脱出していった。
それを見送ると、ミレディは仲間達に振り返る。
『それじゃ、そろそろ始めよっか』
ミレディはそう言うと自分のゴーレムを中心に黒く渦巻く球体を作り出した。
それはさながら全てを飲み込むブラックホールだ。
周辺の空間事呑み込んでいく中、その媒体となったミレディゴーレムが跡形も無くなっていく中、ミレディは仲間達を見る。
その表情は、お疲れ様と言わんばかりに微笑んでいた。
『ずっと傍に居てくれたんだからただいまって言うのは変だね。じゃあ…………』
ミレディの魂は天真爛漫を絵に描いたような表情と声音で叫んだ。
『みんなぁー! さあ、行こーーう!』
次の瞬間、白き空間は、音もなく光と共に消滅した。
一方、地上ではいつの間にかデクスドルグレモンの出現は止まり、空の至る所に空間の罅が現れていた。
「パパ………」
ベルフェモンの肩に乗ったミュウが心配そうに空を見上げながら呟き、
「大士………ドルモン………レオモン………」
ベルゼブモンも戦友の安否を気にしていた。
と、その時、空の一部がぐにゃりと歪んで楕円形の穴が開いた。
広大な空の極一部なので、気付いた者は極僅かだろう。
するとそこから、見た目が鋼鉄の巨人であるヘヴィ―レオモンと、ガイオウモンが飛び出してくる。
ヘヴィ―レオモンの手の上には、龍太郎と鈴、恵理、気絶した光輝が乗せられている。
「な、なんだぁ?」
ヘヴィ―レオモンに気付いたベルゼブモンが思わず声を漏らした。
両者とも飛行能力を持たない為、一直線に地上へ落下していくが、
「ぬん!!」
「フッ!」
ヘヴィ―レオモンは地上にクレーターを作りつつ着地し、ガイオウモンはスタッと何事もない様に着地した。
上空何千メートルのフリーフォールを難無く熟した2体である。
何事かと駆け寄った愛子やリリアーナがヘヴィ―レオモンの腕に乗っている龍太郎たちに気付く。
「坂上君! 谷口さん!」
「あ、先生!」
愛子の呼びかけに手を振って応える鈴。
地上に降ろされた竜太郎達。
光輝は龍太郎に背負われ、記憶を失って不安そうな恵理は鈴に手を引かれている。
それに気付いた愛子は、
「谷口さん………中村さんはやはり………」
「……………はい」
予め恵理への処遇を聞いていた愛子は、寂しそうな表情をする。
「坂上君、天之河君は無事ですか?」
「一応生きてますが、まだ洗脳を解いてから目が覚めて無いのでどうなるかわからないっす」
「そうですか………」
それからガイオウモンに視線を移すと、
「八重樫さん、お疲れ様です。それから、無事………とは言えませんが、天之河君と中村さんを、生きて連れ帰ってくれてありがとうございます」
『まあ、幼馴染としての最後の義理です』
ガイオウモンの中の雫がそう答えた。
「それから…………レオモンさんは如何したんですか? この巨大なロボットは一体………」
愛子がそう声を漏らした時、
「私はここだ。愛子」
突然聞こえたレオモンの声に愛子は困惑した。
「え? え?」
「私がレオモンだ。今は進化してヘヴィ―レオモンだがな」
ヘヴィ―レオモンの言葉に愛子は目を丸くした。
愛子が説明を求めようとしたその時、
――ビキビキビキッ!!
と、一際大きな罅の入る音が聞こえた。
何事かと振り向けば、空の一角に無数に罅が入っている。
そして次の瞬間、バリィィィィィン!とガラスが割れるような甲高い音が響き渡ると、空間が割れ砕け、その中からイグドラシルが姿を現した。
イグドラシルが地上の様子を確認すると、
『まだ生き残っていたか? しぶとい奴らめ………目障りだ、消えろ!』
イグドラシルは無数のクリスタルを具現すると、一気に眼下に向けて放った。
「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」
その事に驚愕する一同。
だが、
「バレッジスイーパー!!」
直ぐに我に返ったヘヴィ―レオモンが左肩の機関砲を放ってクリスタルを撃ち落とし、
「デススリンガー!!」
ベルゼブモンも陽電子砲を連射してクリスタルを破壊していく。
「べるちゃん!!」
「ルォオオオオオオオオッ!!」
黒い炎を纏った鎖がベルフェモンから伸びてクリスタルを防ぐ。
因みに誰も気付かない所で生徒達やハウリア族に向かってきたクリスタルが黒い稲妻によって撃ち落とされていたり。
だが、それでも完全には防ぎきれず、周りに着弾する。
そしてその直後、イグドラシルは再び無数のクリスタルを具現していた。
「また来る!」
誰かが叫んだ。
その瞬間、クリスタルが放たれる。
だが、その目の前を紫色のプラズマ粒子砲が遮り、攻撃を防いだ。
全員がその大本に目をやると、
「待てッ! イグドラシル!!」
アルファモン王竜剣を始めとして、ジエスモンGX、アルフォースブイドラモンFM、スレイプモン、エグザモン、オメガモン Alter-Bがイグドラシルを追ってきた。
『ふん、やはり追ってきたか』
イグドラシルは予想通りと言わんばかりだ。
「これ以上好き勝手はさせない!!」
アルファモン王竜剣がそう叫んで向かって行くが、
『それは如何かな?』
イグドラシルの周囲に浮かぶクリスタルが輝く。
アルファモン王竜剣は自分に対する攻撃だと思っていたのだが、そのクリスタルは突如として真上に向かって放たれた。
「何だと!?」
驚愕の声を上げるアルファモン王竜剣。
『………アルフォースブイドラモン!』
「うん!」
アルフォースブイドラモンFMが翼を広げ、神速と呼べるスピードで放たれたクリスタルに追いつき、アルフォースVセイバーで切断する。
それを見てホッとするのもつかの間。
『何のつもりだ!?』
大士が思わず叫んだ。
『言ったはずだ。お前達の『生きる場所』を消してやろう……と』
イグドラシルの言葉に、大士達は空に映る地球を見上げた。
『お前、まさか地球にも………!!』
『護れるものなら護ってみると良い!』
イグドラシルの周りに次々とクリスタルが生み出され、上空に放たれていく。
「させるものか!!」
その場の全員が一気に動き、空へと舞い上がる。
「デジタライズ・オブ・ソウル!!」
アルファモン王竜剣が無数の光弾でクリスタルを次々と砕いていく。
「グレイキャノン!! ガルルソード!!」
オメガモン Alter-Bが砲撃で広範囲を薙ぎ払い、斬撃で周囲を斬り払う。
「シャイニングVフォース!!」
アルフォースブイドラモンFMが胸から放つ光線でクリスタルを吹き飛ばし、
「オーディンズブレス!!」
スレイプモンが巻き起こした吹雪がクリスタルを凍らせ、粉々に砕く。
「ペンドラゴンズグローリー!!」
エグザモンは槍から放つレーザーでクリスタルを撃ち落とし、間に合わないものはその巨体を生かして自ら盾となる。
「聖拳滅破ッ!!」
ジエスモンGXがタクティカルアームズの拳の乱撃でクリスタルを殴り砕いていく。
地球への攻撃は何とか防げていく。
だが、
『下の者達は如何する?』
新たにクリスタルが生み出され、今度は地上に向かって放たれた。
「拙い!」
地上にいる者達は絶望に包まれた表情を浮かべる。
その時、
「やらせはしない!!」
遅れて『神域』から現れたロイヤルナイツがその身を盾にして地上の者達を護った。
『ロイヤルナイツ!?』
大士は声を上げる。
「イグドラシル………! 我らは我らの意志であなたに反抗することに決めた…………! お前の思い通りにはさせはしない!!」
オメガモンがそう叫ぶとガルルキャノンを展開する。
他のロイヤルナイツ達も、ダメージを負って万全とは程遠い状態だが、その誰の瞳にも迷いは無かった。
『聖騎士……………』
葵が呟く。
葵の言葉通り、その姿はまさに『聖騎士』だ。
「地上の者達は私達に任せろ! お前達はリアルワールドを護れ!!」
オメガモンの言葉にアルファモン王竜剣達は迷いなく頷いた。
「分かった! 地上の皆を頼む!!」
「騎士の誇りに懸けて!!」
アルファモン王竜剣の言葉に、オメガモンは揺るぎなき返事を返した。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
アルファモン王竜剣達が地球へ飛来しようとするクリスタルを撃ち落とす。
「ドラゴンズロア!!」
デュナスモンが両手から放つエネルギー波でクリスタルを次々と撃ち落とす。
「スパイラルマスカレード!!」
ロードナイトモンが高速移動と帯剣による斬撃でクリスタルを切り裂く。
「プラズマシュート!!」
マグナモンが無数のミサイルでクリスタルを迎撃し、
「ヴォルケンクラッツァー!」
ドゥフトモンレオパルドモードが大地を隆起させ、クリスタルを防ぐ壁とする。
「エンドワルツ!!」
クレニアムモンが巻き起こした竜巻が広範囲のクリスタルを巻き込み、
「ちゃぶ台返し!!」
同じようにガンクゥモンが地面をひっくり返して壁にする。
「ガルルキャノン!!」
そしてオメガモンがガルルキャノンを連射しながらクリスタルを撃ち落としていく。
何とか膠着状態に持ち直す事が出来たのもつかの間、
『おのれ! 忌々しい奴らめ!! 何をしようと無駄という事を知るが良い!!』
イグドラシルの言葉と共に、更にクリスタルによる攻撃が激しくなる。
「くっ!」
「まだまだっ!」
それぞれが必死に撃ち落としていたが、遂に地球へ放たれたクリスタルのいくつかを通してしまった。
「しまった!?」
アルファモン王竜剣が思わず叫ぶ。
その時、
『ユエ! シア!』
ハジメが最もスピードのある2人に呼びかけた。
『ん………!』
『分かりましたですぅ!』
2人は返事をして、アルフォースブイドラモンFMが翼を広げ、スレイプモンが駆けだそうとしたその時、茨の蔦が伸びて来て2体の足を絡めとった。
「このっ!」
「邪魔をするな!」
2体はすぐにその茨の蔦を断ち切ろうとしたが、直後に黒い稲妻の様なエネルギーが流された。
「うわぁああああああああああああっ!?」
「ぐわぁああああああああああああっ!?」
エネルギーの奔流に晒され、身動きが取れなくなる2人。
「くそっ!!」
アルファモン王竜剣が悔しそうに吐き捨てつつ翼を羽搏かせる。
『ティオ! 2人を頼む!』
ハジメがそう言って、オメガモン Alter-Bも後を追った。
必死に地球へ向かうクリスタルに追いすがろうとするアルファモン王竜剣とオメガモン Alter-B。
「くっ………! 追いつけない………!」
必死にスピードを上げるアルファモン王竜剣だが、クリスタルのスピードの方が速い。
ぐんぐんと距離を開けられる。
「当たれぇっ!!」
アルファモン王竜剣は無数の光弾を放つ。
だが、元々精密射撃には向いていないその技は、1発だけまぐれ当たりで撃ち落とすものの、他は全て外れてしまう。
「「グレイキャノン!!」」
オメガモン Alter-Bが砲撃で薙ぎ払おうとするが、大半は呑み込めたが2発………たった2発だけ撃ち漏らしてしまう。
『ぐっ……! 畜生………!』
『駄目………このままじゃ………!』
ハジメが悔しそうな声を漏らし、香織も悲痛な声を漏らす。
『や、やめろ…………』
『ま、まって…………』
大士と葵が必死に手を伸ばす。
たった2つとは言え、あのクリスタルが東京に落ちれば、1発で数百メートル範囲は吹き飛ばされるだろう。
運が悪ければ、大士やハジメ達、地球から来た者達の家族が巻き込まれるかもしれない。
「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
アルファモン王竜剣は遠ざかっていくクリスタルに手を伸ばしながら叫んだ。
だが、アルファモン王竜剣の叫びも空しく、クリスタルはどんどんスピードを上げて行く。
もはや、追いつく術など無い。
それでもアルファモン王竜剣やオメガモン Alter-Bは必死に追いすがろうとする。
そんな彼らを嘲笑うように、2発のクリスタルは次元の壁に到達し、
「ファイナルエリシオン!!」
次の瞬間、閃光に呑み込まれた。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
81話の完成です。
遂に出てきたイグドラシル。
色々と問答無用です。
ロイヤルナイツ達をどうしようか迷いましたが最終的に共闘って事で。
オマケの様に出てきたミレディさんでしたが、葵の女神設定を活かしてそれなりに上手くできたと思います。
さて、容赦のないイグドラシルの猛攻の前に地球のピンチ。
その時現れたのは…………
次をお楽しみに。