ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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エピローグ1 最強の敵現る! その名はコウスケ・E・アビスゲート!!

 

 

 

 

 

イグドラシルとの決戦から2週間が経った現在。

俺達はまだトータスに居た。

その理由は、イグドラシルを倒した直後まで遡る。

 

 

 

 

 

イグドラシルを倒した俺は葵と優花に支えられ、無事地上に降りることが出来た。

 

「ふう………」

 

息を吐きながら他の皆を見渡すと、それぞれが地上に降りる度に、すぐに進化が解かれる。

 

「やっと終わったか………」

 

「疲れたぁ~………!」

 

オメガモン Alter-Bから退化したハジメと白崎さんが疲れた表情をしながら呟き、

 

「だりぃよ相棒~!」

 

「ホント疲れた~!」

 

アグモンとガブモンはその場で座り込む。

 

「……………ん、流石に疲れた」

 

「お疲れ様だね、ユエ」

 

アルフォースブイドラモンFMから退化したユエをブイモンが労う。

 

「も~クタクタですぅ~!」

 

「あれ程の激戦だ。仕方あるまい………」

 

スレイプモンから退化し、疲れている事を隠さずに叫ぶシアと、その首に巻き付いているクダモン。

 

「お疲れ様じゃな、ドラコモン」

 

「ティオもな」

 

エグザモンから退化したティオとドラコモンが互いを労い合う。

俺達を含めたここまでのメンバーは、ロイヤルナイツ戦からずっと戦いっぱなしだ。

しかも、ハジメ達はまだ進化出来るようになって日が浅い。

それなのにこれほどの長時間の戦いを続けたのだ。

その消耗も一押しだろう。

その証拠に、タカト達途中参加組はまだ余裕がありそうだ。

ふと空を見ると、イグドラシルが開けたデジタルワールドへのゲートと、空に映る地球の割合が、少しずつ狭まっていることに気付いた。

イグドラシルを倒したことで、世界が元に戻ろうとしているのだろう。

デジタルワールドへのゲートは数分足らずで。

地球の様子も5分程度で見えなくなりそうな感じだ。

すると、

 

「人間達よ! 見事な戦いであった!」

 

オメガモンを先頭に、ロイヤルナイツ達が並ぶ。

 

「あんた達もな。最初は戦い合った間柄だが、正直手を貸してくれて助かった」

 

俺はそう言う。

 

「礼には及ばない。我々も、我々の『意志』で戦う事を決めたのだ」

 

「そうか………あんたたちはこれからどうするんだ?」

 

俺は好奇心からそう聞いてみる。

すると、

 

「それはこれから決めるさ。自分で考え、自分の意志で何を成すかを決める。だが、一先ずはイグドラシルでダメージを受けたデジタルワールドの復興に尽力するつもりだ」

 

自分で考え、自分で決める。

そう言ったオメガモンは、イグドラシルの言いなりだった時とは違い、生き生きしているように思えた。

 

「だが忘れるな。もし人間達が我々デジモン達を苦しめるようならば、我らは迷わずに人間達の前に立ちはだかる!」

 

「……………肝に命じるさ」

 

オメガモンの覚悟の言葉に俺はそう返した。

すると、ロイヤルナイツ達はデジタルゲートに向かって飛んでいく。

 

「さらばだ、人間達よ!」

 

そう言い残し、ロイヤルナイツがデジタルゲートを潜ると、ゲートは完全に閉じて消えた。

 

「オメガモン………」

 

いつの間にかデュークモンCMが俺達の背後に降り立っており、その名を呟く。

 

「デュークモン」

 

俺は振り返りながらその名を呼んだ。

 

「デュークモン………タカト………来てくれて助かったよ。ありがとう」

 

俺は礼を言う。

 

『正直びっくりだよ。いきなり空に現れた異世界の調査に来た先で、大士達が居たんだから』

 

タカトがそう言う。

 

『それにしても、どうして大士達はこの世界に?』

 

「それは…………」

 

俺は説明しようとしたが、話せば長くなる上に、地球との繋がりはどんどんと薄くなっている。

すると、

 

『拙いぞ! 地球が見える割合が減ってきている! これ以上こっちにいると、帰れなくなるぞ!』

 

リョウがそう叫んだ。

 

『そんな! 次元の壁を通り抜けるには究極体の力が必要なのに………!』

 

タカトのその言葉で、何故デュークモン達がトータスに来れたのに、地球からの来訪者が他に居ないのかが見当がついた。

今からでは、異世界召喚組を集めて帰るだけの時間は無いだろう。

俺は少し考え、

 

「タカト達はすぐに地球に帰るんだ」

 

俺はそう言う。

 

『えっ!? でも………』

 

「心配するな。俺達の方でも帰れる算段はついてる。多分一ヶ月以内には帰れるはずだ」

 

俺は一応ハジメに確認の視線を向けると、ハジメは黙って頷く。

 

「タカト達まで帰れなかったら、山木さん達に迷惑がかかるだろ? それに、俺達がもうすぐ帰れることを伝えてくれれば、山木さん達なら騒ぎが最低限になるようにある程度動いてくれるはずだ。やっと地球に帰れても、マスコミからの質問攻めなんてやってられないからな。だから頼む!」

 

『大士…………うん、わかったよ』

 

タカトは少し考えたが、そう頷いてくれた。

 

『その代わり、ちゃんと無事に帰ってきてよ!』

 

「ああ! 約束する!」

 

タカトの言葉に俺は頷く。

 

『皆、行こう!』

 

タカトが仲間達に呼びかける。

 

『いいの?』

 

ルキが問いかけると、

 

『僕は大士を信じる』

 

『そう』

 

ルキはそう言うと頷いた。

皆が空中に飛び立つ。

すると、

 

『大士! 早く帰って来いよ!』

 

『待ってるから!』

 

リョウとジェンがそう言い残す。

俺は手を振って応えた。

そのままセントガルゴモンが背を向け、その肩にデュークモン達が乗ると、ジェット噴射で地球へ向かって飛んでいった。

 

「おおーーーい! 俺達を忘れないでくれぇーーーー!」

 

その後をヒロカズとケンタが乗ったガードロモンが慌てて追いかける。

そのまま地球の方に見えなくなると、暫くして地球の景色が完全に消えてしまった。

 

「………………」

 

俺は暫くその景色を眺めた後に振り返り、

 

「…………てな感じで勝手に決めちゃったわけだが…………良かったか?」

 

今更な確認をする。

 

「ま、いいさ。少し帰るのが遅くなるだけだ。それに、疲れてるからな、今はゆっくりと休みたい」

 

「その意見には賛成だ」

 

ハジメの言葉に俺は同意すると、それぞれのパートナー達を伴って、皆の所へ歩き出すのだった。

 

 

 

 

尚、その少し後、

 

「ラナさんっ! あなたに惚れました! 俺とお付き合いをして下さい!!」

 

という声が響き渡った気がしたのだが、疲れていた俺達はスルーしていた。

 

 

 

 

 

 

更に序だが、勇者(笑)については、目覚めてしばらくは現実を否定していた物の、坂上が夕日に照らされる訓練場で殴り合い………というか一方的なフルボッコにした結果、何とか現実を受け入れ、落ち着いたそうだ。

因みにその間、八重樫さんは完全無視を決め込んだ様だ。

すでに幼馴染としての義理は果たしたとの事。

 

 

 

そんなこんなで約2週間。

王都の復興がてら、クリスタルキーへの魔力の充填を毎日の様に繰り返し、漸く地球へのゲートを開けるだけの魔力が溜まったのだ。

因みに半分ほどは女神化した葵の魔力だったりする。

尚、究極体に進化したヘヴィ―レオモンは戦いの後は成熟期に戻り、ミュウのベルフェモンもスリープモードになって再びミュウの腕に抱かれていた。

更にハジメと白崎さん、優花の、魔物肉を食べて白くなってしまった3人の髪は、再生魔法により黒い色を取り戻している。

優花は染めているので毛の先の方は栗色のままだが。

そしてハジメの左腕の義手は、生身の腕に見えるように偽装を施している。

本当なら、再生魔法で左腕その物も再生できるのだろうが、ハジメはそれをしなかった。

何故なら、既にハジメにとってその義手こそがもう自分の一部だからだ。

まあ、俺達もその事についてはハジメの好きにさせることにした。

そして、リリアーナ王女やメルド団長、カム達ハウリア族を始めとした、世話になったトータスの住人に見送られる中、いよいよ地球へのゲートを開こうとした時、俺は話し出した。

 

「皆、地球へ帰った後、すぐに家に帰りたいだろうけど、それは少し待ってほしい」

 

その言葉に、一斉に『何で?』と言わんばかりの視線が集中する。

 

「よく考えてみて欲しい。俺達にとっては約1年振りの帰郷になる訳だが、地球の人間からすれば、1年間行方不明だった集団がいきなり戻って来た訳だ。どれだけ注目を集めるかは想像できるだろう?」

 

その言葉に、皆は確かにと頷いている。

 

「でだ。俺は政府関係者の人と知り合いで、前の戦いが終わった後に、もうすぐ帰る事をその人に伝えるよう仲間に伝言を頼んでおいた。今どうなっているかは分からないけど、流れのままに任せるよりも、その人を通して世間に伝えて貰う方が、幾分かマシになると思う。勿論、皆の家族はすぐに呼んでもらうつもりだから、自分の足で帰りたいという気持ちは俺も良く分かるけど、そこはどうか我慢して欲しい」

 

俺は頭を下げる。

その言葉に、やや不満げな顔を見せるメンバーもいるが、後々の面倒さを考えたのか、渋々と了承した。

すると、愛子先生がコホンと咳払いをすると、

 

「では、最後に人数確認を行います。ここに揃ってはいない生徒は居ないと思いますが、念の為です」

 

その言葉に、生徒達が『は~い!』と返事をする。

 

「ではまず、相川君…………」

 

愛子先生が出席番号順で名前を呼び始める。

名前を呼ばれた生徒が返事をする中、本来は檜山と近藤の名前がある所で、愛子先生は悲しそうに眼を伏せる。

でも、近藤はともかくとして、檜山に関しては愛子先生が罪悪感を感じる必要は全く無いと思う。

あいつは嫉妬からハジメを殺そうとし、それでも生きていたハジメから許された(というか、無関心になった)のに、それに懲りずに白崎さんを手に入れる為に白崎さんを殺そうとした結果、ハジメの逆鱗に触れて殺されただけだ。

聞いた話では最後までハジメに逆恨みの言葉を吐き続け、遂には謝罪も反省も無かったらしい。(白崎さんには命乞いしたようだが)

俺としても、檜山は冤罪押しつけられた元凶なので、あいつに同情する気持ちは全く無い。

それはともかく、生徒達の名を呼び終わり、更に愛子先生はデジモン達の名も呼んでくれた。

ドルモン達は一瞬呆気に取られたけど、嬉しそうに返事をする。

インプモンやレオモン、クルモンの名前まで呼び終えた愛子先生。

愛子先生はやり切ったと言わんばかりの顔をしていた。

だが、生徒達の一部でクスクスと笑い声が漏れる。

そして、

 

「愛ちゃん先生―っ! 浩介の名前を呼び忘れてますよー!」

 

遠藤が所属しているパーティーのリーダーである永山が楽しそうに笑いながらそう口に出した。

愛子先生はハッとなり、

 

「ご、ごめんなさい遠藤君!! 遠藤君! 遠藤 浩介君!!」

 

影が薄く、普段から忘れがちな遠藤に対し、謝りながら誤魔化すように大声で遠藤の名を呼ぶ。

 

「「「「「「「「「「………………………………」」」」」」」」」」

 

しかし、いくら待っても返事は帰ってこない。

 

「え、遠藤君!? 名前を呼び忘れてしまった事は本当に申し訳ありません! ですから、怒らないで返事をしてくださいぃ~!」

 

返事が返ってこないのは、遠藤が怒っている為だと思った愛子先生は半泣きになりながら返事をするように頼む。

だが、それでも返事は一向に返ってこない。

 

「おいおい遠藤! いくら〝地球に帰る大事な時〟に名前を呼び忘れられたからってそんなに拗ねるなよ!」

 

「そうそう! 愛ちゃん先生の〝いつものうっかり〟じゃないか!」

 

「はうっ!?」

 

遠藤と同じパーティーメンバーの生徒が、愛子先生にダメージを与える言葉を並べながら遠藤を宥める発言をする。

 

「「「「「「「「「「……………………………」」」」」」」」」」

 

しかし、それでも遠藤の返事は返ってこない。

 

「………………なあ、本当に遠藤の奴居ないんじゃないか?」

 

俺が気になった事を発現する。

遠藤は影が薄くて傷付きやすいが、他人を心配させるようなことはしなかった筈だ。

寧ろ影が薄い分、何としても気付いてもらおうと自己主張するタイプだ。

 

「「「「「「「「「「…………………………」」」」」」」」」」

 

皆の背中に冷や汗がダラダラと流れる。

 

「…………………園部?」

 

ハジメが気配感知が得意な優花に呼びかけるが、

 

「気配感知で感じられる人数は、確かに1人足りないわね。まあ普段でもギリギリ。隠蔽技能を使っているなら、いくら私でも見つけるのは無理だけど」

 

優花は肩を竦めてお手上げの意を示す。

 

「え、遠藤を探せーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 

永山が声を上げる。

漸くこの場に遠藤がいない事を悟ったのか、生徒達が慌てだした。

 

「カム、悪いが遠藤を探すのを手伝ってくれ」

 

ハジメは感知能力の高いハウリア族にも応援を要請する。

 

「ボスのご命令とあらば!」

 

カムは見事な敬礼を決めてハウリア族に向き直り、ハウリア族に命令を出そうとした。

すると、

 

「むっ? 如何した〝風影〟のラナインフェリナ?」

 

カムが1人のハウリア族の女性であるラナが気まずそうに目を逸らしていた為、そう問いかける。

どうでもいいが、以前ラナは疾影とか名乗ってなかったか?

 

「えっと………その……………」

 

その頬には、見て分かるほどに冷や汗がダラダラと流れていた。

 

「ラナさん? コウスケさんについて何か知っているんですね?」

 

同じハウリア族であるシアが、ずいっ、と顔を寄せながら問いかける。

 

「あ、あの………何て言うか…………」

 

その姿はいつも厨二な発言を繰り返している『ラナインフェリナ』ではなく、ただの『ラナ』であった。

シアが尚も問い質そうとした時、

 

「お、おい! あれ!」

 

生徒の1人が一点を指差しながら声を上げた。

その先には、ザッザッと地面を踏みしめる音を立てながら歩いてくる、黒い人影。

服はボロボロで髪はボサボサ。

どの様な目に遭ってきたのか簡単には想像できない程に傷付き、苦しんだであろうその姿に、その場に居た皆は唖然となった。

その歩いてきた人影こそ何を隠そう遠藤 浩介その人だった。

 

「あ、ああっ! 遠藤君、無事だったんですね!? もう、何処行ってたんですか!? 心配したんですよ!」

 

愛子先生が一番に我に返り、先程の失態を隠すかのように遠藤に駆け寄った。

 

「………………………」

 

だが、遠藤は無言で愛子先生の横を通り過ぎると、少し俯いていた顔を上げてクワッと目を見開いてハジメを見据え、

 

「南雲 ハジメっ。俺と勝負しろ!!」

 

突如としてそう言い放った。

 

「「「「「「「「「「…………………………………………」」」」」」」」」」

 

一瞬の静寂。

その直後、

 

「浩介ぇ、正気に戻れぇ! 自殺なんて止めろぉ!」

 

と、永山が叫び、

 

「白崎さんっ、綾子ぉ、誰でもいい! 早く回復魔法をっ。頭を念入りに頼む!」

 

と、野村が懇願し、

 

「ハジメくん、早まらないでっ。遠藤くんは、その、ちょっと疲れているだけなんです! 頭がっ」

 

と、愛子先生がハジメに縋り付いた。

更に、天之河と坂上、谷口さんが間に割って入り、冷や汗をダラダラと流しながら決死の覚悟で遠藤を逃がす時間を稼ごうとしている。

ハジメは溜息を吐き、

 

「お前等、俺を何だと思ってんだ……」

 

と、頬を引きつらせていたので、

 

「自業自得だぞ」

 

俺はそう突っ込んでおいた。

そうしてその場が混乱に包まれるも、遠藤は彼らの言葉をまるっと無視し、視線をラナへと向け、大声で叫んだ。

 

「ラナさんっ。大好きっす! 貴女が出した条件――ボスに傷の一つでもつけられるなら、考えなくもないって言葉、信じてます! ラナさんの目の前で、南雲にめっきりくっきり、傷をつけてやりますっ!!!」

 

あー、なるほど。

そういうことね。

俺は漸く遠藤がハジメに勝負を持ちかけたのか理解した。

 

「遠藤の奴………そこまでラナに惚れたんだな…………」

 

俺はしみじみと呟いた。

つまり、遠藤はラナにアタックを繰り返していたのだが、ラナに限らず今のハウリアの女性はハジメに心酔しており、10人に好きな男性のタイプと聞けば、20人が『ハジメ』と答えるぐらい………つまり男性の理想が滅茶苦茶高い。

なのでラナは、遠藤の告白を断る口実か照れ隠しかは分からないが、ハジメと戦って傷を負わせてみろと言ったようだ。

普通にハジメを知るものなら、そんな鬼畜条件を聞けば諦めるのだろうが、あろうことか遠藤はその言葉を真に受け、こうしてハジメに勝負を挑んだと言う訳だ。

同じようにその言葉で状況を察したほぼ全員が、一斉にハウリア族に振り向き、『なんてこと言ってくれたんだ!』と非難の眼差しを向ける。

しかし、そのラナ本人は気まずそうに目を逸らしつつも、頬を僅かに染めていた。

 

「…………ラナってもしかして、満更でも無いんじゃ………?」

 

葵がそう呟く。

 

「少なくとも、脈無しって訳じゃ無さそうね」

 

優花も同意する。

因みにそのラナは同じハウリアの同族達からニヤニヤ笑われ、冷やかしを受けていた。

それで等の勝負を持ちかけられたハジメは、何かシンパシーを感じたのか、その申し出を受けた。

 

 

 

 

 

 

遠藤の要望で場所を王都から離れた荒野に移した後、戦いが始まった。

その戦いは熾烈を極めた。

色んな意味で熾烈を極めた。

主に遠藤の精神面で。

序にハジメの精神も巻き添えに。

しかし、遠藤はそれに耐えた。

身も心も(主に心が!)ボロボロになりながらも、遠藤はハジメに挑んでいく。

何度倒されようと。

何度吹き飛ばされようと。

遠藤は、何度も何度も立ち上がり、ハジメに向かって行った。

そして驚いた事に、遠藤は重力魔法を習得していた。

ラナの話を聞くと、ハジメに傷を付ける事以外に、大迷宮攻略も条件に入って来たらしい。

ここに来る前にボロボロになっていた理由は、つまりそう言う事だった。

遠藤は、たった1人で【ライセン大迷宮】を攻略したのだ。

その様子を見ていた生徒達も、最初は、

 

「もう止めろぉ! 浩介!!」

 

「もう立つな! 本当に死んじまうぞ!」

 

「遠藤! もう諦めるんだ!」

 

などと、遠藤に戦いを止めるよう呼び掛けていたのだが、いつしか、

 

「行け! 浩介! そこだ!」

 

「くっ! 惜しい! 行ける! 行けるぞ遠藤!!」

 

「頑張れ浩介!」

 

遠藤の背中を押すように声援を送っていた。

幾度もの交錯の後、

 

「はぁ………はぁ………」

 

肩で息をして、満身創痍の遠藤と、

 

「………………」

 

未だ無傷の姿でそこに立ち続けるハジメ。

だが、圧倒的な実力差でも、遠藤の目に諦めの色は無かった。

遠藤は手に持つ小太刀を逆手持ち、眼前に構えると、一度目を伏せ、息を吐く。

それから、大きく息を吸い込むと同時に目を見開き、

 

「疾牙影爪のコウスケ・E・アビスゲート、参る!!」

 

そう名乗りを上げながら疾走した。

地面を這うように体勢を低くしながら全力で駆ける遠藤。

それに対し、油断を微塵も見せずに迎え撃つハジメ。

次の瞬間、互いの位置が入れ替わった。

 

「「「「「「「「「「………………………………」」」」」」」」」」

 

その瞬間を見ていた全員が息を呑む。

そして、

 

「くっ…………!」

 

遠藤が苦しそうに表情を歪めながら片膝を着いた。

 

「「「浩介!?」」」」

 

「「「遠藤!?」」」

 

誰もが、『やはり駄目だったか………』や、『やっぱり無理だったんだ………』という諦めムードが漂う。

だが、

 

「あっ……………!」

 

白崎さんが声を上げた。

何故なら、ハジメの頬には一筋の傷があり、血が流れ出していたからだ。

そのハジメ自身も、信じられなかったのか驚愕で目を見開いた状態で固まっている。

それが、ハジメが決して油断していなかった事を物語っていた。

驚愕の表情で固まっていたハジメは、我に返って一度目を伏せると、自嘲気味に笑みを浮かべ、遠藤に振り返り、

 

「……………遠藤…………お前の勝ちだ…………!」

 

素直に負けを認めた。

すると、膝を着いていた遠藤が足を震わせながら立ち上がり、ハジメの方に振り返ると、

 

「………………まだだ………! まだだぞ! 南雲!!」

 

遠藤本人がその勝利を否定した。

 

「何故だ? お前は俺に傷を付けた。それは間違いない事実だ」

 

ハジメはそう問い返す。

すると、

 

「何故なら…………お前はまだ『本気』を出していないからだ!」

 

遠藤はハジメに小太刀の切っ先を突き付けながら叫ぶ。

 

「は? 油断したつもりも手を抜いたつもりも無いんだが…………『殺す』つもりが無かったことを手加減って言うなら話は別だが………」

 

ハジメは物騒な事を口にする。

 

「そうじゃない………! お前には、更に上の姿があるだろう!?」

 

「…………もしかして、アグモンの事を言ってんのか?」

 

「ああそうだ! お前とパートナーデジモンが1つになった姿で来い!」

 

遠藤はとんでもない事を言い出す。

それは流石に俺から見ても無謀に過ぎる。

と、いう事を俺が言うまでもなく、

 

「遠藤ぉ!? 何言ってやがる!? もう十分だろぉ!?」

 

「浩介! もう止めるんだ! 君は勝ったんだぞ!?」

 

「そうだよ! あの南雲に傷を付けたんだぞ!? 大金星じゃないか!」

 

クラスメイト達から再度止めるように声が上がる。

しかし、遠藤は真っ直ぐハジメを睨み付け続ける。

 

「…………………………」

 

その目を暫く受け止めていたハジメだったが、溜息を吐くと、

 

「…………アグモン!」

 

パートナーであるアグモンを呼んだ。

 

「………相棒、本当に良いのか?」

 

アグモンがやや心配げに遠藤を見つめる。

 

「仕方ねえだろ? こうでもしなきゃ納得しそうにねえんだ」

 

ハジメはやれやれと頭を掻く。

 

「まあ、少し相手すれば、実力の差を実感するだろ」

 

ハジメはどうやら、遠藤は戦っている間にハイになり過ぎて感覚がマヒしてるんだろうと思っている様だ。

流石に究極体相手に生身で立ち向かう事は……………

今の俺なら出来ない事も無いかも?

俺のデジソウルの拳の威力は日に日に増している。

以前は完全体を押し返すだけで精一杯だったが、今の俺なら並の究極体を怯ませる事ぐらいは出来そうな気がする。

確かめたわけじゃないけど。

それはともかく、ハジメはDアークを取り出し、

 

「………………本当に良いんだな?」

 

ハジメは遠藤に対して最終確認を取る。

 

「ああ…………! 勿論だ………!」

 

遠藤は迷いなく頷いた。

ハジメはやれやれと一度溜息を吐き、

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

「アグモン進化!」

 

ハジメとアグモンが一体化して究極体へと進化する。

 

「ブリッツグレイモン!!」

 

その場に現れる、真紅の竜機人。

ズシンと踏み出すその一歩は、大地を震わせる。

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

ブリッツグレイモンの咆哮。

ロイヤルナイツに比べれば劣るとはいえ、それでも並の究極体以上の力を持つデジモン。

生身で相対している遠藤は、気迫だけで腰を抜かしてもおかしくは無かった。

だが、

 

「ッ……………………………!」

 

遠藤はその気迫を受けても立っていた。

その頬には冷や汗が流れ、膝を震わせていたとしても、遠藤は真っ直ぐにブリッツグレイモンを睨み付けていた。

 

『………………耐えやがった』

 

ハジメは軽く驚愕した声を漏らした。

ハジメは今の咆哮で戦意を喪失させるつもりだったのだろう。

俺も間違いなく戦意を喪失すると思っていた。

だが、遠藤は恐怖を感じていても戦意は全く衰えず、寧ろ更に燃え上がっているようにも思える。

遠藤は息を大きく吸い込むと、

 

「ラナさん!! 俺は、あなたの想像以上の男だという事を証明してみせます!! だから、見ていてください!! 俺の…………俺達の『進化』を!!!」

 

心の奥底から叫ばれたその言葉の意味に気付くのに、俺は僅かな時間を要した。

故に、

 

「来いっ!!! ファルコモォォォォォォォォン!!!」

 

「ここにいるよ!」

 

次の瞬間放たれた遠藤のその言葉と、その言葉と共に現れた存在に、俺は目を見開いて驚愕することになった。

いつの間にか遠藤の隣には、フクロウに似た体形と、忍者をイメージさせる服装をした鳥型のデジモンがいた。

 

「ファルコモン!?」

 

俺は思わずその名を叫んだ。

更に、

 

「行くぞ!!」

 

遠藤がポケットから取り出した『それ』に目を奪われる。

それは、暗い紫の縁取りのDアーク。

次の瞬間、遠藤とファルコモンが光に包まれた。

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

遠藤が『香ばしいポーズ』を取りながらDアークを掲げると、Dアークが輝いて遠藤の身体をデータ化し、ファルコモンと1つになる。

 

「ファルコモン進化!!」

 

ファルコモンの翼が分解され、紺色のスーツに白い手袋を纏った腕として再構成される。

ファルコモンの足が分解され、紺色のスーツを纏い、金属化した足として再構成される。

ファルコモンの体が分解され、紺色の胸当てを纏った体として再構成される。

ファルコモンの頭が分解され、遠藤の前髪から僅かに見える瞳の輝きをもつ、紅い仮面を被った頭部として再構成される。

それは背中の右側に黒い翼、左腕にクロンデジゾイドの白い翼を持った究極体のサイボーグ型デジモン。

 

「レイヴモン!!」

 

レイヴモンとなった遠藤とファルコモンがその場に降り立つ。

 

「……………………レイヴモンに………進化した…………?」

 

俺は呆然と呟いた。

 

「レイヴモン 究極体 ワクチン種 サイボーグ型……………」

 

葵がDアークで情報を読み上げる。

 

「……………え、遠藤の奴、いつの間にテイマーになってたんだ?」

 

俺は未だに呆然としながら呟く。

 

「あっ! そう言えばコウスケお兄ちゃん、前の戦いの時に進化してたの!」

 

ミュウが叫ぶ。

 

「はっ! そう言えばそうでした!」

 

「ど、如何して今まで忘れていたんでしょう!?」

 

愛子先生やリリアーナ王女も見覚えがあるような言葉を口にする。

 

「『………………………』」

 

その言葉を聞いていたレイヴモンに哀愁が漂っている気がした。

 

「ま、まあ、遠藤がテイマーになってたのは驚いたけど、究極体に進化出来るなら【ライセン大迷宮】の攻略も簡単だよな。うん」

 

俺は気を取り直すようにそう言うと、

 

「馬鹿を言うな」

 

レイヴモンにその言葉を否定された。

 

「【ライセン大迷宮】を攻略したのはコースケの力だ。俺は一切手を出していない」

 

その言葉に俺は驚く。

 

「少しは声援を送ったが、迷宮の攻略や戦いに関しては、全てコースケが突破したんだ」

 

レイヴモンはそう言うとブリッツグレイモンに向き直る。

 

『さあ、勝負だ南雲!!』

 

遠藤がそう言い放つ。

 

『ハッ! 面白れぇ………!』

 

ハジメがニヤリと笑みを浮かべているのが簡単に予想出来る。

向かい合ったブリッツグレイモンとレイヴモンの間の緊張感が高まり、次の瞬間、俺はレイヴモンの姿を見失った。

 

「えっ?」

 

俺が声を漏らした瞬間、ギャリィッと金属同士が擦れる音が響いた。

気付いた時には、レイヴモンか腰の剣を抜いた状態でブリッツグレイモンの背後に移動していた。

ブリッツグレイモンの腕には僅かだが傷がある。

だが、またもいつの間にかレイヴモンの姿を見失った。

超スピードで消えた様に感じるんじゃない。

レイヴモン自体が『認識』し辛いのだ。

まるで、遠藤の影の薄さが更にパワーアップして、そこに居ると目で見えているのに、気配を全く感じさせず、存在自体が薄れている様な感じだ。

そして存在自体が薄れているような気がするため、僅かに他の事に気を取られると、目の前に居ようと瞬間的にレイヴモンを見失ってしまう。

それはブリッツグレイモンも同じようで、中々レイヴモンの存在を捉えることが出来ず、その装甲に、1つ、また1つと傷を増やしていく。

 

「ブラストウイング!!」

 

「くっ……!」

 

レイヴモンが左腕のクロンデジゾイドの翼でブリッツグレイモンの頭部に傷を付ける。

 

「くそっ……! なんてやり辛い………!」

 

元々パワータイプのブリッツグレイモンは、レイヴモンよりスピードで劣っている上に、その存在感の無さにより、狙いが上手く付けられず攻撃が当たらない。

防御力も高いので大きなダメージは負っていないが、攻撃が当たらなければこのままジリジリと削られるだけだろう。

 

「如何する? 相棒………」

 

『………………………なるほど』

 

ブリッツグレイモンがハジメに相談を持ち掛けると、ハジメは納得したように呟く。

 

『……………やるぞ、ブリッツグレイモン!』

 

「わかった、相棒!」

 

何か作戦を立てたのか、ブリッツグレイモンはその場で仁王立ちする。

レイヴモンが油断なく身構え、次の瞬間、再びその姿を見失った。

その直後、

 

「オラァッ!!」

 

「ぐはっ!?」

 

ブリッツグレイモンの右の剛腕がレイヴモンを殴り飛ばしていた。

レイヴモンがかなりの勢いで地面に激突する。

 

「な、何が起こったんですか?」

 

シアが驚いた声を上げる。

 

『ハッ! いくら存在感が無かろうが、攻撃の瞬間はそこに居るんだ。そこを狙えばいいだけの話だ』

 

「あ~、そう言う事ね…………」

 

ハジメの言葉で俺はどんな方法を取ったか見当がついた。

 

「ん、タイシは何が起きたか分かったの?」

 

ユエがそう聞いてくる。

 

「まあ、簡単に言えば、攻撃をワザと受けて、レイヴモンが何処にいるか判断した瞬間にカウンターを決めただけだよ」

 

まあ、言うほど簡単なことでは無いと思うが。

すると、レイヴモンが起き上がる。

 

「ぐぐっ………! やるな………!」

 

そう言いながら立ち上がり、再びブリッツグレイモンを見据える。

 

「お前もな………」

 

再び構えを取る。

すると、

 

『南雲っ! いい加減全力で来い!』

 

遠藤が叫んだ。

 

『………少なくとも、ブリッツグレイモンは『俺』が出せる手札の中では最強だが?』

 

ハジメはそう答える。

 

『あの黒い騎士の姿は如何した!? あれがお前の本当の全力だろう!?』

 

オメガモン Alter-Bの事か?

 

『あの姿は香織のクーレスガルルモンとのジョグレス体だ。これは俺とお前の勝負だろう?』

 

ハジメはそう答える。

 

『だったら白崎さんと一緒に掛かって来い! 最強夫婦そろってめっきりくっきり傷を付けてやる!!』

 

『そこまで甘く見られていたとは心外だな……………いいだろう!』

 

そう言ってブリッツグレイモンは白崎さんへ視線を向ける。

 

「あはは………いいのかな?」

 

白崎さんは苦笑する。

それでもDアークを取り出している所を見るとやる気があるっぽい。

 

――MATRIX

  EVOLUTION――

 

「マトリックスエボリューション!!」

 

「ガブモン進化!」

 

白崎さんがガブモンと共に究極体へ進化する。

 

「クーレスガルルモン!!」

 

クーレスガルルモンがブリッツグレイモンの右隣へ降り立つ。

 

『後悔するなよ?』

 

ハジメがそう告げると、ブリッツグレイモンとクーレスガルルモンが光に包まれ、螺旋を描きながら空へと昇っていく。

 

「ブリッツグレイモン!!」

 

「クーレスガルルモン!!」

 

「「ジョグレス進化!!」」

 

天空で2つの光が1つとなって光の柱が降り注ぐ。

そして、その光の柱の中から現れたのは、

 

「「オメガモン Alter-S!!」」

 

2体のデジモンが1つとなった聖騎士。

 

「………………ッ!」

 

その存在感に、レイヴモンは僅かに声を漏らした。

 

「「さあ、掛かって来い!」」

 

二重に響く声でオメガモン Alter-Sが言い放つ。

 

「ッ! うぉおおおおおおおおっ!! スパイラルレイヴンクロウ!!」

 

左手のカギ爪を突き出しながら高速回転して突っ込むレイヴモン。

それに対し、オメガモン Alter-Sは………………

何もしなかった。

オメガモン Alter-Sはその場に仁王立ちしたまま、躱そうとも迎撃しようともしなかった。

そのままその攻撃がオメガモン Alter-Sの胸に直撃し…………

レイヴモンが弾かれた。

 

「何っ!?」

 

驚愕の声を漏らすレイヴモン。

 

「くっ! ブラストウイング!!」

 

続けてレイヴモンは高速飛行しながら左腕の翼で切り裂こうとする。

しかし、オメガモン Alter-Sの身体に接触した瞬間、クロンデジゾイドで出来ている筈の翼が欠けていた。

 

「なっ!?」

 

それを見て、思わず驚愕の声を漏らすレイヴモン。

オメガモン Alter-Sは何もしていないのに攻撃が通用しないことに驚愕しているのだろう。

 

「ッ! まだだっ!!」

 

レイヴモンは一度空中に距離を取って、右手に持つ剣に黒い雷を纏わせると、

 

天之尾羽張(あめのおはばり)!!」

 

黒い雷をオメガモン Alter-Sに向けて放った。

だが、同時にオメガモン Alter-Sも左腕のグレイキャノンを展開してレイヴモンに向けており、

 

「グレイキャノン!!」

 

プラズマ収束砲を放った。

互いの必殺技が中央で激突する。

その直後、一方的にグレイキャノンが黒い雷を蹂躙した。

 

「はっ!?」

 

プラズマ収束砲は、咄嗟に躱したレイヴモンの右隣を掠める。

だが、その際にレイヴモンの黒い翼が巻き込まれ、吹き飛ばされた。

 

「うわぁっ!?」

 

翼を失ったレイヴモンはそのまま地上に向けて落下する。

 

「うわぁああああああああああああっ!!」

 

土煙を上げながら地面に激突するレイヴモン。

それを静かに見据えるオメガモン Alter-S。

すると、

 

「ま、まだだ………!」

 

レイヴモンはヨロヨロと起き上がると、手に持つ剣『烏王丸』を構え、その足で駆けだした。

翼を失ったとは言え、地を駆ける速度には関係ない。

そのままスピードに乗り、剣を振り被る。

すると、オメガモン Alter-Sは右腕のクーレスガルルモンの頭から剣を展開すると、

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

「ガルルソード!!」

 

斬りかかってくるレイヴモンに合わせてその剣を振った。

そして交錯。

レイヴモンが、オメガモン Alter-Sの後ろに着地する。

その直後、

 

「なぁっ!?」

 

レイヴモンが驚愕の声を漏らした。

レイヴモンの剣が、根元から綺麗に断ち切られていたからだ。

そして、その事に動揺して一瞬動きを止めてしまった。

そして、その隙を逃す程、今の相手は甘くない。

 

「「はあっ!!」」

 

オメガモン Alter-Sの後ろ回し蹴りが炸裂する。

 

「ぐはぁっ!?」

 

その一撃を背中に諸に受け、吹き飛んでいくレイヴモン。

必殺技でもない唯の一撃だが、オメガモン Alter-Sの繰り出すそれは、並の究極体の必殺技の威力を優に凌駕する。

 

「うぐぐ…………!」

 

その一撃を受けたレイヴモンは尚も起き上がろうとするが、その喉元にガルルソードの切っ先が突き付けられた。

 

「ウッ………!?」

 

動きを止めるレイヴモン。

 

「「勝負ありだ」」

 

そう告げるオメガモン Alter-S。

すると、

 

『……………………だが、正直想像以上だったぞ、遠藤。まさか俺に傷を付けるどころか、テイマーになっていて究極体に進化できるとは思ってもみなかった……………まあ、ラナには俺からも多少の口添えはしといてやる。だから………………』

 

ハジメがそう言いかけた時、突きつけられたガルルソードの切っ先をレイヴモンが右手で掴んだ。

いや、遠藤がレイヴモンの身体を突き動かしたのだ。

 

『……………そんなの………意味ねえんだよ……………!』

 

遠藤が声を絞り出す。

 

『『ボスに言われたから俺と付き合う』………! そんなの、俺は望んでねえんだよ!!』

 

そして突然叫び出した。

 

『ラナさんは俺達を普通に見つけてくれたんだ! レイヴモンに進化して、存在感が限りなくゼロに近くなった俺達を、ラナさんは普通に見つけてくれたんだよ!』

 

その言葉に突き動かされる様にレイヴモンがガルルソードを押し返そうとする。

 

『だからラナさんには、ちゃんと俺自身を見て、ちゃんと俺自身に惚れて欲しいんだよ! お前に口利きしてくれなんて、誰が頼んだ!?』

 

「「ッ!?」」

 

その瞬間、オメガモン Alter-Sが目を見開いた。

何故なら、突きつけていたガルルソードがほんの僅かだが押し返されていたからだ。

 

「「レイヴモンッ!?」」

 

「正直俺には、人間同士の恋愛なんてものは未だに理解できねぇ……………けどな、コースケがこんなにも必死になってるんだ…………! 力になってやるのがパートナーってもんだろうが!!」

 

レイヴモンが力を振り絞ってガルルソードを押し返していく。

 

「コースケ!!」

 

レイヴモンが叫ぶ。

 

『ラナさん!! 好きだぁーーーーーーーーーっ!!! だから見ていてください!! 俺は! 絶対に! あなたを振り向かせて見せます!!』

 

遠藤の渾身の叫び。

その瞬間、レイヴモンの身体から、無数の暗い紫色の四角い光の粒子が溢れ出した。

 

「なっ!? あれはまさか、デジソウル!?」

 

俺は思わず叫ぶ。

 

「ど、如何してレイヴモンからデジソウルが!?」

 

葵が目を見開いて驚愕している。

 

「い、いや。デジソウルは思いの力だから、誰に発現してもおかしくない………でも、この輝きはっ………!」

 

デジソウルが高密度になり、1つの大きな輝きとしてレイヴモンを包む。

 

「「うっ……おおっ………!?」」

 

レイヴモンがガルルソードを押し返しつつ立ち上がり、

 

「ふんっ!!」

 

思い切り右手を押し出すと、オメガモン Alter-Sを後退させた。

 

「オメガモン Alter-Sを押し返した!?」

 

優花が驚愕する。

そして、

 

「『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』」

 

デジソウルの輝きに包まれながら、レイヴモンと遠藤が咆哮の様な叫び声を上げた。

その瞬間、

 

―――BURST

   EVOLUTION―――

 

『チャージ……………!! デジソウル…………バースト!!!』

 

レイヴモンは限界を突破した。

仮面や鎧は黒色へ染まり、ボディスーツは白色に。

両腕から紫色の大きな翼が広がり、首からは黒いマフラーを靡かせる。

大気中の全エネルギーをオーラとして纏う、レイヴモンが限界能力を発動した姿。

 

「レイヴモン バーストモード!!」

 

その姿に全員が驚愕の表情で声を失う。

 

「バーストモード…………!」

 

俺は思わず呟く。

まさかバーストモードを発動させるとは…………

俺達の視線の先でレイヴモンBMが高く飛び上がる。

両腕の翼を巨大化させ、黒紫のオーラを纏うと、

 

無双天翔翼之陣(むそうてんしょうよくのじん)!!」

 

そのオーラを刃状にして放った。

 

「「ッ!? グレイキャノン!!」」

 

オメガモン Alter-Sはプラズマ収束砲を放つ。

それらは互いの中央でぶつかり合い、大爆発と共に相殺した。

 

『相殺された!?』

 

白崎さんが驚愕の声を上げる。

だが、次の瞬間、その爆発の中をレイヴモンBMが一直線に突っ込んできた。

 

「「………ッ!? ガルルソード!!」」

 

それに気付いたオメガモン Alter-Sは右腕のガルルソードを振り被り、迷いなく振り下ろした。

その瞬間、

 

怒涛闇供喪之舞(どとうやみくものまい)!!」

 

レイヴモンBMの姿が一瞬で消え去る。

 

「「何ッ!?」」

 

オメガモン Alter-Sが驚愕の声を漏らした瞬間、

 

「ハッ!」

 

一瞬にして背後に回り込んだレイヴモンBMがオメガモン Alter-Sを蹴り上げる。

 

「「ぐあっ!?」」

 

それだけでは終わらず、前後左右上下ありとあらゆる方向から攻撃を繰り返すレイヴモンBM。

それは、オメガモン Alter-Sに確かなダメージを与えている。

 

「す、すげぇ…………」

 

誰かが呟いた。

このまま押し切りそうな雰囲気だったのだが、

 

『いつまでも…………調子に乗ってんじゃねえぞ!!!』

 

ハジメの咆哮が響くと同時に、

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」

 

オメガモン Alter-Sから黒い輝きが迸る。

それに伴い、オメガモン Alter-Sの身体が黒く染まっていき、

 

「「オメガモン Alter-B!!」」

 

オメガモン Alter-Bへと変貌した衝撃でレイヴモンBMを吹き飛ばした。

だが、レイヴモンBMは空中で体勢を整えてうまく地上へ着地する。

 

『………………まさか、Alter-Bまで使わされるとは思ってなかったぜ』

 

ハジメは静かに告げる。

それに対し、遠藤とレイヴモンBMは構えを取ることで応えた。

 

『いいだろう…………最後の勝負だ………!』

 

オメガモン Alter-Bはガルルソードを展開し、ビームソードを発生させる。

対して、レイヴモンBMは黒紫色のオーラを纏った。

 

「「「………………………………」」」

 

両者の間に一瞬の沈黙が流れる。

そして、

 

「「ガルルソード!!」」

 

雷光一閃之突(らいこういっせんのつき)!!」

 

決着は一瞬だった。

人間の目には何が起きたのか分からない。

気付いた時には、両者は技を繰り出し終わっていた。

そして、

 

「ぐはっ!?」

 

レイヴモンBMが倒れた。

そしてそのまま進化が解けて遠藤とファルコモンに分離する。

 

「遠藤!?」

 

「浩介!?」

 

それを見ていた生徒達が叫んだ。

そして同時に、やっぱり駄目だったという空気が流れた。

そんな空気の中、オメガモン Alter-Bは、風でマントの一部が身体を覆いつつも遠藤に歩み寄り、見下ろすと、

 

『遠藤……………今度こそ文句は無いな…………?』

 

ハジメはそう語りかける。

 

「………………………………!」

 

遠藤は何も言わないがプルプルと震えていた。

 

「遠藤…………」

 

「浩介…………」

 

「遠藤君…………」

 

遠藤は悔しがっているのだろうと、皆は同情する様な声で遠藤の名を呟く。

 

『………………文句無しで……………………『お前の勝ち』だ』

 

その言葉に全員が驚くと同時に風が止み、マントで隠されていたオメガモン Alter-Bの身体の一部が露になった。

そこには、明らかに何かで貫かれたであろう、穴の開いたオメガモン Alter-Bの鎧。

 

「…………………ッ!! いよっしゃぁああああああああああああああああああっ!!! やってやりましたよ!! ラナさん!!!」

 

遠藤は仰向けに倒れたまま拳を天へ突きあげ、叫び声を上げた。

そのラナ当人だが、

 

「…………………………はわぁ♡」

 

頬を赤く染め、潤んだ瞳で熱っぽい視線を遠藤へ向けていた。

 

「あ、これは完全に惚れたな」

 

「惚れたね」

 

「惚れたわね」

 

「ん、惚れた」

 

「惚れたですぅ」

 

「惚れたのじゃ」

 

「惚れたの!」

 

俺、葵、優花、ユエ、シア、ティオ、ミュウの満場一致で結論が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、この騒動により、地球への帰還が丸1日遅れたことを記しておく。

その1日で遠藤に何があったのかは……………推して知るべし。

 

 

 







エピローグその1です。
ここで彼が話の中心になると予想した人はいるのだろうか?
遠藤浩介こと深淵卿の恋物語(?)でした。
原作のまま流すのはつまらないので頑張ってバーストモードを発動して貰いました。
因みに深淵卿自身の戦いが無かったのは、深淵卿の偉大さを書ききる自信が無かったからです(爆)。
そしていよいよ次は地球への帰還です。
お楽しみに。
とりあえず次が本編最後の予定。

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