いきなり地面に空いた空間の穴に引き込まれたと思ったら、次の瞬間には一瞬の浮遊感を感じて何処かに落とされた。
「きゃっ!?」
「おわっ!?」
「くっ!?」
「うわっ!?」
「ぬっ!?」
「くぅっ!?」
余りにも突然だったので対処することが出来ず、着地に失敗する。
「いたた………」
「何が起こったんだ………?」
「って言うか、ここ何処よ?」
俺達はぶつけた所を摩りながら起き上がり、周りを確認すると、見覚えの無い街並みが広がっていた。
明らかに日本では無く、中世………トータスの様な街並みが広がっている。
「…………………………またやらかしやがったよ。この駄女神…………!」
ふと聞こえたその声に振り向けば、俺と同年代か少し下で、日本人と思われる少年と、水色の髪の少女がいた。
その少年はジト目でその水色の髪の少女を見つめている。
「………………………」
俺は改めて周囲を見渡す。
そして、ある一つの結論に辿り着いた。
「…………………もしかして、また異世界召喚か異世界転移か?」
俺はそう呟く。
「あ~………この様子だとそれっぽいね…………」
「はぁ~………………」
葵が頷き、優花が深いため息を吐く。
「大士、大丈夫?」
「葵、無事か?」
「優花、怪我は無いか?」
ドルモン、リュウダモン、ハックモンが俺達を心配して声を掛けてくる。
「お前達も追いかけて来てくれたんだな」
俺はドルモンの頭を撫でる。
「勿論だよ。大士が何処かへ行くなら、何処にだってついて行くよ!」
ドルモンは笑みを浮かべてそう言った。
「………………何だこいつら? いきなり呼び出された割には、スゲェ落ち着いてるんだが…………」
傍に居た少年が俺達に怪訝そうな視線を向ける。
「っていうかアクア。さっきのウィズが言ってたことが本当なら、こいつらはお前の知り合いなんじゃないのか?」
「えっ? そう言われても…………」
水色の少女が俺達の見渡すと、
「こんな子達を転生させたかしら…………?」
首を傾げながらそう呟いた。
「…………なあ、あんたらは俺達がここに呼び出された理由を何か知ってるのか?」
彼らの言動からそう予想して質問する。
「え~っと…………何て言ったらいいのか…………」
少年が頬をヒクつかせながら隣の水色の髪の少女に目をやる。
その時、
「ご、ごめんなさ~~~~~~い!!」
そんな謝罪の言葉と共に飛び込んできたのは、ウェーブのかかった茶髪の女性。
「すいません! すいません! すいませ~ん!」
土下座しそうな勢いで謝り続けるその女性に、
「「「「「「?」」」」」」」
俺達は首を傾げて顔を見合わせるしか無かった。
あの後、茶髪の女性が経営しているという店に案内され、そこで大まかな事情の説明を受けた。
「なるほど…………つまり、あなたが仕入れた『使用者の魔力を吸い取って、使用者の知り合いをランダムで強制的に目の前に呼び出す』と言われたマジックアイテムを、そこに居る水色の髪の女の子が間違って起動させて、俺達がこの場に呼び出されたと…………?」
「はい…………ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
茶髪の女性は丁寧な仕草でお辞儀をする。
「そうよ! 全部このリッチーの所為よ!!」
水色の髪の少女がズビシッと指を突き付けてそう叫んだ。
「ほら! 土下座でもして謝りなさいよ!」
「あああ! 本当にごめんなさ~い!!」
水色の髪の女の子が、茶髪の髪の女性の頭をグイグイと地べたに擦り付けようとしている。
すると、隣に居た少年の手がゆっくりと伸びて、水色の髪の少女の後頭部を掴んだかと思うと、
「謝るのはお前もだろうが!!」
強引に頭を下げさせた。
「ちょっと! 何でこの私が謝らなきゃいけないのよ!?」
「そもそもの発端は、宴会芸しながら道を歩いてて転んだことだろうが!」
ギャーギャーと言い合う2人。
そんな様子を見て、エヒトによる召喚の前例があって警戒していた俺達は毒気を抜かれた。
俺は力を抜き、
「あ~、まあ、落ち着け。とりあえず悪気の無い事故の結果って事だけは理解した。で、最初に確認したいんだが、元の場所に戻る方法は…………」
俺がそう言うと、茶髪の女性が申し訳なさそうな顔をして、
「すみません…………」
そう謝罪を口にする。
「………無いわけね」
軽く溜息を吐く。
「本当に………本当に申し訳ありません!」
思いつめた表情で謝罪を続けるその女性。
水色の髪の少女は未だに少年とギャーギャー言っているが。
「ああ、そんなに思いつめなくても、暫くすればダチが迎えに来ると思うから心配しなくても大丈夫だ」
「「「え?」」」
あっけらかんと言った俺の言葉に、3人が呆気に取られた声を漏らした。
「知り合いに人探しと空間転移が得意な奴が居るからな」
因みに羅針盤とクリスタルキーを持つハジメの事である。
「どのくらいかかるかは、この世界が元の世界からどのぐらい離れているかによるが………」
「元の世界って…………」
俺の言葉が気になったのか、少年が問いかけてきた。
「俺達はこの世界とは全く違う世界から来たんだよ。地球の日本ってトコだが……」
「日本!?」
少年が思い切り食いついてきた。
「じゃあ、あんた達は、やっぱり日本人なのか!?」
「そういう反応するって事は、もしかしてそっちも?」
「ああ。俺も日本人だ。日本で一度死んで、こっちの世界に転生してきたんだ」
「所謂異世界転生って奴か…………そう言えば自己紹介をしてなかったな」
俺は今更な事に気付いた。
「俺は黒騎 大士。こっちはパートナーのドルモン」
「よろしくね」
「私は神代 葵! パートナーはリュウダモンだよ!」
「よろしく頼む」
「私は園部 優花よ。それからパートナーのハックモン」
「ハックモンだ」
パートナーと共に自己紹介をする。
「お、おう……俺は佐藤 和真。こっちはパーティーメンバーのアクアだ」
「フフン。アクアよ」
少年――カズマの紹介に何故かドヤ顔で名乗る少女――もといアクア。
「……………アクア?」
葵がその名を聞いて不思議そうに復唱した。
「あ、私はリッチーのウィズと申します」
「リッチー? アンデットのか?」
その名乗りに気になる所があった俺は聞き返す。
「はい。ノーライフキングなんてやってます」
まるで、自分の職業はOLですと言わんばかりに、気軽な口調でそういうウィズ。
ぶっちゃけ見た目は人間と変わり無いな。
「ところで、俺達がこの場に呼び出された理由がマジックアイテムの暴発って事は分かったが、そこのアクア………だっけ? が、使用者になるんだよな?」
「え、ええ。まあ………」
ウィズがおずおずと答える。
「で、そのマジックアイテムは使用者の知り合いをランダムで呼び出すと?」
「は、はい…………」
俺の質問に答えて行くウィズ。
「その割には、俺はそのアクアを知らないんだが………」
俺がそう言うと、
「アクアもこの3人の事は知らないのかよ?」
「人間の知り合いなんて居るわけないじゃない………!」
「じゃあ、何でこいつらが呼び出されたんだよ!?」
カズマが俺達を指差しながら叫ぶ。
「私が思うに、最初に空間の穴が開いたのは葵の足元よ。だから、呼び出されたのは葵で、私や大士達は巻き添えじゃないかしら?」
優花がそう言う。
「そう言えばそうだったな………葵?」
俺は葵へ視線を向ける。
その葵は先程からアクアの顔をジッと見つめ続けていて、
「………………な、何かしら?」
ジッと見つめられている事に耐えられなくなったのか、アクアがそう聞き返した。
すると、
「ねえアクア……………」
「な、何よ…………?」
「アクアってもしかして、『水を司る女神』のアクア?」
葵が言った言葉に俺は目を見開く。
すると、
「フフフ……………そう! その通りよ! この私がアクシズ教団で崇められている水の女神、アクアよ!!」
アクアはドヤ顔をしつつ、指をビシッとこちらに突き付けながら言い放った。
「ああ、やっぱりアクアだったんだ」
葵はそれをスルーして合点がいったと相槌を打つ。
「やっぱり知り合いなのか?」
俺がそう問いかけると、
「うん。私と同じ下級神で、『水を司る女神』だよ。私と同じ頃に『神』になった女神で、所謂、同期みたいな感じかな?」
「下級神?」
葵の言葉に、カズマが『何だそれ』と言いたげな声を漏らす。
「下級神って言うのは、『神』にも位があって、最上級神、上級神、下級神の3つに分かれてるの。言葉通り下級神って言うのは一番下だね」
「…………………アクア。お前、あれだけ偉そうなこと言っといて、『神』の中じゃ下っ端だったんだな…………」
カズマがジト目をアクアに向ける。
「何よその目は!? そもそも最上級神様は1柱しかいないし、上級神様もそれぞれ司る役目毎に1柱ずつよ! カズマにも分かりやすく言えば、上級神様達はオリンピックの種目で金メダルを取るようなお方達なんだからね! それで最上級神様は、その上級神様達が参加しているオリンピックの種目の金メダルを総ナメしちゃう位凄い御方なの! 下級神でもオリンピックに出場できるぐらいは凄いんだからね!」
「分かるような、分からんような…………」
アクアの説明にカズマは困った顔をする。
「っていうか! 何であんたは天界の決まり事を知ってるの!?」
アクアが思い出したように葵を指差す。
「アクア、私だよ。『運命を司る女神』のアルオイスだよ」
葵が自分を指差しながらそう言う。
「アル………オイス……………?」
葵の言葉にアクアが呆然とその名を口にする。
「…………………ああぁ~~~~~~~~~~~!! アンタ、アルオイスじゃない!!」
暫しの沈黙の後、アクアがガバッと立ち上がったかと思うと、葵に向かってそう叫んだ。
「うん、久し振りだね、アクア」
葵は笑みを浮かべてそう言う。
「何だアクア? やっぱり知り合いなのか?」
カズマがアクアに訊ねる。
「ええ。私の〝元〟同期で、〝元〟女神のアルオイスよ!」
アクアが『元』を強調しながらそう言うと、
「元?」
カズマが首を傾げた。
「今から20年近く前に、女神の仕事をミスって、人間に転生させられて、下界に堕とされたのよ(笑)。プ~クスクス♪」
「何をミスったんだよ?」
カズマはおそらく好奇心からそう尋ねたのだろう。
「ププッ! 聞いて驚きなさい………! コイツってば、1人の人間の運命を狂わせて死なせちゃったのよ!」
「……………なんつーテンプレな事を……………」
カズマは呆れた様な視線を葵へ向ける。
「それでそんな唯の人間になっちゃったわけ? アハハッ! おっかしー!」
葵を指差しながら爆笑するアクア。
「……………………………」
俺は右手を握りしめると、遠慮なくその頭に拳骨を落とした。
「いったぁーーーーーーーーっ!? 殴った!? アンタ、今女神であるこの私の頭を殴ったわね!?」
アクアが頭に出来たタンコブを抑えながら、涙目で俺を睨む。
「知るか! 女神だろうが何だろうが、恋人が理不尽に笑われれば、誰だって怒るわ!!」
「何よ!? 本当の事じゃない!! 大体、アルオイスが居なくなったせいで私の仕事が増えて大変だったんだから!!」
アクアはそう言い返してくる。
「……………こいつも駄女神の部類なのか…………?」
カズマがジトーッとした視線を、葵に向けてくる。
すると、
「ねえ、アクア…………?」
葵が俯きながら口を開く。
「私とアクアは、そもそも司る役目が違う訳だし、『運命の女神』である私が居なくなった所で、『水の女神』であるアクアには影響は出ない筈だよ?」
「ッ……………………!?」
その言葉にアクアの動きがピタリと止まる。
「私が居なくなってアクアの仕事が増えたのは、元々アクアが私に半分以上仕事を押し付けてた所為だと思うんだけど?」
顔を上げた葵はニッコリと笑みを浮かべている。
だが、目が笑っていない。
「そ、それは~~…………」
「第一、同期だからって、どうして水を司る役目のアクアが運命を司る私に仕事を持ってくるのかな? お門違いにも程があると思うんだけど?」
葵の言葉にこの場の皆の視線がアクアに集中する。
勿論、非難の意を添えて、だ。
「アクア………………」
カズマの視線は、まるでゴミを見るような目でアクアを見ている。
「そ、そんな目で見ないでよ~~~!?」
「自業自得だね」
葵が追い打ちをかける。
「ちょ、アルオイス! アンタ性格変わってない!?」
「そりゃ人間として18年生きてきたからね。今の私は運命の女神『アルオイス』であると同時に、人間の『神代 葵』だよ!」
「くっ………! って言うか、アンタ女神の記憶は封印されたはずじゃ………!?」
アクアが今更な事に気付く。
「まあ、上級神様にも予想外の事が起こって、なんやかんやで女神としての記憶と少しの力を取り戻したんだよ」
「意味分かんないわよ!」
アクアが更に捲し立てようとした所で、
「ちょっと待て! 今更だが俺は途轍もなく聞き捨てならない事を聞いた気がするんだが………!?」
カズマがハッとした様に叫んだ。
「何よカズマ?」
アクアが聞き返すと、カズマの顔がぐりんと俺の方を向く。
若干気持ち悪い動きだ。
「お前、さっきそっちの子を『恋人』と言わなかったか?」
「おう」
「……………………『恋人』?」
「恋人だ」
「………誰と誰が?」
「俺と葵が」
「…………………お前もリア充野郎だったのかぁっ!!!」
突然キレた様に叫ぶカズマ。
「…………リア充ね…………まあ、確かに俺は彼女が居ない奴から見れば、リア充と言えないことも無い。恋人が2人も居るしな」
「ふ、2人ぃ~!?」
「おう」
俺はそう言って優花の方を見る。
その行動で悟ったのか、カズマは更に殺気の籠った視線を向けた。
「てんめぇっ! リア充じゃ飽き足らず、ハーレム野郎だったのかぁっ!?」
血涙を流しそうな勢いで俺の胸倉を掴んでくる。
「ハーレム野郎ね………………」
俺がそんな事を言われる日が来るとは……………
ハジメに比べれば俺なんて……………
「……………何でそんな遠い目をしてんだよ?」
ハジメの事を思い出していた俺に幾分か落ち着いた声色でカズマが問いかけてきた。
「いや、真のハーレム野郎を知る俺にとっちゃ、俺がハーレム野郎を名乗るのは烏滸がましいと思ってな…………」
「し、真の………ハーレム野郎………だと…………?」
「ああ。合計で8人の嫁がいるぞ」
「は、8人………!?」
カズマは恐れ戦いたように仰け反る。
「ああ。しかも中身は、クラスメイトから先生、異世界の王女様まで選り取り見取りだ」
「ッ……………!?!?!?」
カズマは最早声にならないぐらい驚いている様だ。
「つーわけで、恋人が2人だけの俺は、まだ可愛いもんだ」
「なん…………だと…………!?」
最初は俺に対して殺意とも言うべき嫉妬心を露にしていたカズマだったが、ハジメの事を説明したら、その凄さに圧倒されていた。
因みに、俺が、ハジメが凄いと思う所は、ハーレムメンバー全員が自分の意志でハーレムに加わっているという所だ。
金や権力を使ったハーレムなら、8人程度は中世レベルの異世界なら珍しくないだろう。
だが、8人全員が好意を寄せていて、女性全員がそれを受け入れているというのは珍しいと思っている。
「……………………………………………」
既にカズマは放心状態だ。
すると、
「ちょっとアルオイス! アンタの男って二股かけてるの!?」
今度はアクアが叫び出した。
「うん」
葵は間髪入れず頷く。
「アンタはそれでいい訳!?」
なんかこの問答も慣れてきたなぁ。
「相手が優花なら文句は無いよ。っていうか、大士に二股勧めたのはどっちかと言えば私だし」
確かにな。
「んなっ!? 女神の1人としてそれは如何なの!?」
「別に神の掟でも、人間は複数の伴侶を娶っちゃいけないなんて決まりは無いし。地球にある国の多くは一夫一妻制が多いってだけで」
「で、でも…………」
アクアが葵に質問を投げかけている時、
「な、なあ…………」
再起動したカズマが俺に話しかけてきた。
「ん?」
「そっちの女神ってさ、なんつーか…………人間っぽくね? アクアは事ある毎に自分が女神だとか、尊大な態度を取ったりするんだが…………」
「神にも個神差っていうのがあるんだろ?」
「こうしてみると、フツーの女の子にしか見えないんだが………」
「それは否定しないが…………そうだな…………」
カズマは葵が女神だという事が若干信じられないみたいなので、
「葵。カズマが葵が女神に見えないんだそうだ」
「えっ? そうかな?」
「そりゃそうでしょ? 今のアンタは何処からどう見ても唯の人間だもん」
俺の言葉に葵が声を漏らすと、アクアまで便乗してくる。
「この私と比べれば、女神としての品格なんて無いに等しいわ!」
アクアがその水色の髪を手で後ろに払いながらそう言い放つ。
「アクアはアクアで、そう言う所が女神に見えないんだがな…………」
カズマがジト目でアクアを見る。
すると、
「それじゃあ…………」
葵が立ち上がって手を胸の前で組むと、光に包まれた。
「「「ッ!?」」」
カズマ、アクア、ウィズの3人が驚きで目を見開く。
次の瞬間、葵の背中から大きな白い翼が広がり、黒だった長い髪が蒼銀へと変化する。
更に身に纏う衣服も白い衣へと変化し、『運命神 アルオイス』としてその場に顕現した。
「これならどうでしょうか?」
口調を変えて葵がそう言った。
「「「……………………………………………」」」
3人は驚愕で口をあんぐりと開けていたが、
「な、何で女神の姿になれるのよ!?」
アクアが一番に口を開いた。
「……いろいろありましたから」
葵は微笑んでそう言う。
すると、カズマが突然その場に土下座し、
「ウチの女神と代わってください!!」
そんな事を言い出した。
いきなりそんな事を言われた葵はキョトンとし、
「ちょっとカズマ!? 何言ってるの!?」
アクアが異議ありとばかりに叫ぶ。
しかし、カズマはその言葉を無視し、俺に縋り付く。
「なあ、頼む! ウチの女神とそっちの女神様を交換してくれ!」
「断る!」
当然だが俺の答えはNoだ。
「そんな固い事言うなよ! こっちの女神も見て呉れは良いだろ? 見て呉れだけは!」
やけに『見て呉れ』を強調するカズマ。
何か、それだけでカズマの苦労が分かる気がする。
「だが断る!」
とは言え、その程度で答えが変わる訳も無し。
「ちょっとカズマ! さっきから聞き捨てならないんですけど!?」
アクアが心外だと言わんばかりに叫ぶ。
「お前こそ何言ってやがる!? どっからどう見てもあっちの女神様の方が格上だろ!? お前とあっちの女神様が同じ階級だなんて絶対嘘だ!!」
疑問形では無く確信を持って叫ぶカズマ。
アクアの事を『女神』と呼んでいるのに、葵の事は『女神様』だしな。
「失礼ね! 私を神の仕事をミスする様な子と一緒にしないで頂戴!」
「仕事をまともにやってないならミスしようがねえだろ!!」
カズマが即言い返すが、それはある意味ミスなのでは?
「…………………確か葵って、次期上級神って言われてたのよね?」
優花がポツリと呟く。
「普通の下級神の十数倍優秀だとも聞いたな」
リュウダモンが誇る様にそう言う。
「上級神様が、本来であれば早く天界に戻ってきて欲しいとも言っていたぞ」
ハックモンが付け加え、
「あと、最終的に普通の下級神の200倍の仕事をしてたんだよね?」
ドルモンがそう言った。
「「…………………………」」
カズマがアクアをジト目で見ると、アクアは視線を合わせようとしない。
「………………お前、そんな相手に仕事押し付けてたのか?」
「ピューピュー……………!」
口笛を吹いて誤魔化そうとするアクア。
すると、
「あ、あの~~~~……………」
ウィズがおずおずと発言する。
「失礼ですが、そろそろ御力を抑えていただけると…………アクア様とは比較にならないぐらいの神力が漏れ出してて…………このままじゃ私、消えちゃいますぅ〜〜〜〜………!」
ウィズが半泣きになりながらそう訴える。
心無し、ウィズの姿が薄らいでいる気がする。
「ああ、ゴメンね………」
葵はすぐに人間の姿に戻った。
「ほっ………」
ウィズは安堵の息を吐く。
「何やってんのよアルオイス! リッチーなんだし、そのまま消しちゃえば良かったじゃない!」
が、アクアがそんな事を言い出す。
「アクア、相変わらずのアンデット嫌いなんだね」
葵が苦笑しながらそう言う。
「そんなの当然じゃない! アンデットは自然の摂理に反する害悪よ! この世に存在したって百害あって一利なしなのよ!!」
何という暴論。
少なくとも、ウィズは良い奴だと思うが。
「そっちの女神様はアンデットって聞いても平気なのか?」
カズマがそう尋ねる。
「意志を持たないゾンビやグールなんかはともかく、ちゃんと人の心を持った相手なら、それ相応に対応するよ」
「ほ~~。立派な考えだ。ウチの女神にも見習って欲しいものだ」
カズマはこれ見よがしにアクアを見る。
「ふん………!」
アクアは頬を膨らませながらそっぽを向いた。
すると、
「ところでさあ………さっきから気になってたんだが、お前らの隣にいるそいつらって
………デジモンだよな?」
「ん? 知ってるのか?」
カズマの言葉に肯定しながら聞き返す。
「やっぱそうなのか! いや~、俺も結構デジモンは好きなジャンルだったからさ。実際にデジモンをこの目で見られて感激だぜ!」
カズマは笑ってそう言う。
「カズマは単にヒキニートだっただけでしょ?」
「引きこもりとニートを足すな!」
アクアの言葉に思わず突っ込むカズマ。
「それにしても、ドルモンにリュウダモンに…………確かハックモンだったか? ロイヤルナイツに進化出来るデジモンだな」
「「「ッ!」」」
その言葉に俺達は反応した。
「カズマ、一つ聞きたいんだが、デジモンのTVアニメシリーズは何処まで知ってる?」
「ん? デジモンアドベンチャーの無印が最初で、02、テイマーズ、フロンティア、セイバーズと来て、クロスウォーズだろ?」
「………………そこまで知ってるのか…………」
「ん? それが如何したんだ?」
「いや、どうやら俺達が居た日本とカズマの居た日本は違う世界みたいだ」
「は?」
「俺達は、テイマーズの世界の延長線上にある時間軸から来た」
「何ぃっ!?」
「大体7年前にデ・リーパー事件があったんだ」
「そうだったのか……………ん? ちょっと待て………! 何かおかしいぞ…………?」
カズマは会話に矛盾がある事に気付いたのだろう。
言葉を止めて考え出した。
「そうか! テイマーズの世界から来たのはともかく、何でその世界が『テイマーズの世界』って知ってるんだ!?」
カズマが気付いたのかそう叫ぶ。
「そりゃ俺が転生者だからだな」
「なぬ!?」
「さっき話に出てただろ? 葵が昔ミスって人を1人死なせたって。その時死んだのが前世の俺だ。間違って死んだお詫びに、俺が望んだデジモンテイマーになりたいという願いを叶える為に、上級神様がテイマーズの世界に転生させてくれたんだよ。つまり、俺の前世はカズマと同じ世界か、もしくはかなり近い世界なんだろうな」
「………………ん? って事は、お前って自分を殺した奴と付き合ってるって事?」
「そうなるな。そもそも、葵が転生した理由の1つが、『誰とも結ばれない運命』を背負った俺と生きる為だったんだよ」
「………………誰とも結ばれない割には2人目の恋人が居るじゃねーか!」
カズマが納得いかないと言わんばかりの表情をする。
「まあ、優花に関しては自分で自分の『運命』を超えたってだけなんだが………簡単に言うと、俺達は1年位前にこことはまた別の異世界に召喚されたんだよ」
「はあっ!?」
「その時に『運命』が狂って、色々とあった訳だ。それを全部話すと長くなるから簡便な」
「………………俺も相当だけど、お前らも波乱万丈な人生送ってるんだな」
「まあな。けど、毎日が楽しくて生き甲斐もあるぜ」
俺はそう言って笑う。
「ま、とにかく何時になるかは分からないが、その内迎えが来るから俺達の事は心配すんな。ただ、念のためにある程度稼げる方法は確保しておきたい」
俺がそう言うと、
「でしたら、冒険者になるのは如何でしょうか?」
ウィズがそう発言する。
「冒険者? こっちにもそういうのがあるのか?」
「はい。町の人達の依頼を解決したり、モンスターを退治したりするお仕事です」
「なるほど、いきなり居なくなっても迷惑は掛かり辛いか…………その冒険者にはどうやって?」
「ギルドに登録すればそれで完了です。ただし、登録料が1人1000エリス掛かりますが……………」
「ふむ、当然だが、この世界の金は無いな」
「でしたら、私が立て替えましょう。ご迷惑をおかけしたお詫びです」
ウィズは立ち上がってカウンターからお金を取り出そうとする。
すると、
「おいアクア。3分の2はお前が出せ!」
「えぇ~!? なんで私が!?」
「責任の大半はお前にあるからだろうが! 少しは責任を感じろ!!」
「ええ~!? 嫌よ! 2000エリスも出したら今夜のシュワシュワが~~~~!?」
「一回位我慢しろ! 第一ウィズに出させたらまた食費削るはめになるだろうが!」
カズマの言葉にウィズを見ると、ウィズは苦笑いをしていた。
「とりあえず借りるという形にしておく。借りた分は必ず返す」
俺はそう約束して登録分を借りることにする。
その後、ウィズの店を後にすると、既に日が傾いていた。
「そういや、大士達は寝床は如何するんだ?」
「一応キャンプセットを持ってるから、適当な広場があればそこにテント立てようと思ってるが、良い場所無いか?」
俺はカズマにそう聞く。
「俺達が寝泊りしてる馬小屋の前なら大丈夫じゃないか?」
カズマがそう言ったのでそこに行くことにした。
案内された場所へ到着すると、確かに広さは十分だった。
「ここなら大丈夫か」
周りは既に薄暗くなっている。
「って言うか、キャンプセットなんて何処に持ってるんだよ?」
カズマが今更な事を聞いてきた。
俺は右手を前に突き出すと、中指に嵌められていた指輪が光る。
この指輪は、俺専用宝物庫。
ハジメがハウリア族に渡したアーティファクトのノウハウを生かし、魔力の無い俺でも使えるようにした宝物庫だ。
しかも、魂魄魔法も組み込んであるので俺以外には使えない。
トータスから戻った後、俺がハジメに頼み込んで作って貰ったものの1つだ。
俺から1mほど前に大きめのテントが現れる。
「うおっ!? いきなりテントが現れたぞ!?」
カズマが驚く。
俺は右手の指輪を見せつけると、
「こいつは宝物庫って言ってな、所謂アイテムボックスの様なものだ」
「なんちゅー便利な物を…………」
カズマが羨ましそうにこちらを見る。
「こういう時の為に、この中に必要な物は大体揃ってるんだよ。そう言う訳で、俺達の寝床は心配なし!」
「そ、そうか…………」
宝物庫の存在だけで圧倒されたのか、カズマは呆けながら頷く。
「じゃあ、明日はギルドまでの案内は頼むな」
「お、おう………」
そう言って俺達はテントに入る。
因みにこのテントも普通のテントでは無く、中の広さは空間魔法でホテルの一室ぐらいには広げられており、ベッドはもちろんの事、風呂やトイレまで完備されている。
防犯もバッチリで、許可していない者が入ることが出来ない上、隠蔽機能までついており、防音機能も当然ある。
更にはデジモン用の別室まであり、その部屋ごとにも防音が完備されている。
そして、ベッドは1つしか無いが、その大きさは3人寝ても余裕のある大きさだ。
つまりそう言う事だ。
トータスから日本に帰った後は、お互いの生活もあり、恋人としての時間が少なくなってしまった。
俺達は、久々に時間を気にすることなくお互いを求め合ったのだった。
このすばクロスの第1話目でした。
葵とアクアの関係はこんな感じ。
楽しめたでしょうか?
因みに、葵の力をオリンピックで表すと、銀メダリストぐらいです。
アクアはギリギリオリンピック出場ってトコです。
さて、次回はカズマの仲間との顔合わせと初めてのクエストの予定。
お楽しみに。