ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第2話 このありふれた転生者にクエストを!

 

 

 

【Side カズマ】

 

 

 

 

アクアのポカで大士達をこの世界に呼び寄せてしまった翌日。

俺はいつも通り、馬小屋で目を覚ました。

 

「…………………………」

 

何気なく隣を見る。

そこには、寝間着姿でだらしなく腹を出しながら、その腹をボリボリと搔きながら眠るアクアの姿。

ある意味いつも通りの朝なんだが……………

 

「これがウチの女神かよ……………」

 

つい昨日、もう1人の…………

否、真の女神様を目撃した。

あのお方を月に例えるなら、俺の隣でだらしなく眠るこいつは、すっぽんどころかミジンコだ。

 

「………俺、何でこいつを特典に選んじまったんだろ………?」

 

俺の転生人生で最初の、そして最大の失敗が特典にこいつを選んだことだと思う。

そんな事を考えていたら目が冴えてしまい、いつもよりも早いが起きることにした。

馬小屋から出ると、丁度登り始めた朝日が俺を照らす。

 

「ん~~~~~~~~~~~っ!」

 

一度、思いっきり伸びをすると、幾分か気分が良くなる。

ふと見れば、大きめのテントがすぐ傍にあった。

すると、その入り口がシャッ、と開かれ、中から大士達が出てきた。

 

「お? カズマ、おはよう。起きるの早いな」

 

「おはよう、カズマ君」

 

「カズマ、おはよう」

 

大士、女神様、優花の順で挨拶してくる。

何か気のせいか女性2人の肌が艶々している気がするんだが…………

いや、まさかな。

大士が2人と恋人だという事は聞いたが、異世界転移したその夜にヤルほど節操無しでは無いだろう。

正直昨夜は期待して耳を澄ませていたが、静かなモノだったし。

いかんな、大士がリア充だからと僻んでるからか、妄想が膨らんでしまう。

俺は、浮かんだ妄想を振り払うように首を振ると、

 

「ああ、おはよう」

 

何でもないように挨拶を返した。

そこで気付いたが、3人の服装は昨日とは違った。

昨日、俺達の前に現れた時は、何処かの学校の制服だったのだが、今の服装は、大士と葵は黒を基調とした、この世界でも普通に通用する格好だし、優花に至っては何故かくノ一っぽい格好になっている。

何処にそんな服をと思っていたが、アイテムボックスの様なマジックアイテムを持っていた事を思い出した。

その中に入っていたんだろう。

その後、アクアが起きるのを待って、約束通りギルドへと案内することにした。

 

 

 

 

 

 

 

大士達を連れてギルドに来た俺は、俺が冒険者登録をした時と同じように、ルナさんが受け持つ受付カウンターに向かった。

 

「おはようございますカズマさん。今日は如何されましたか?」

 

「おはようルナさん。今日は後ろの3人の冒険者登録をお願いしたくてさ」

 

親指で後ろに居る大士達を指しながらそう言う。

 

「そうですか。では、最初に登録手数料がかかりますが?」

 

「手数料は俺が出しとくよ」

 

そう言って3人分の3000エリスを出すと、

 

「ちょっとカズマ! そのお金は私のよ!」

 

わざわざアクアが口を出してくる。

 

「そこは黙っとけアクア。ついでに言えば、3分の1はウィズの金だろ」

 

俺はそう言うと再びルナさんに向き直る。

 

「で、では、そちらの3名の方、説明を行います」

 

その言葉で大士達が前に出る。

ルナさんは俺達が登録した時と同じように、職業や登録カード、レベルについて説明を行う。

 

「では3人とも、こちらの水晶に手を翳してください。あなた方のステータスが登録カードに書き込まれますので、それを元に職業を選んでください」

 

ルナさんがそう言い終えると、

俺は大士が、最初の頃の俺と同じようにワクワクしていると思い、その顔を覗き込んでみた。

だが、

 

「ステータスね…………」

 

大士は逆に気の進まなそうな顔でゲンナリしていた。

如何したんだコイツ?

…………ああ、そう言えばこいつ等って、この世界に来る前にも異世界召喚されたとか言ってたな。

その所為でステータスが高すぎるから、騒がれるのが面倒だと思っているんだな。

おのれ、リア充め!

 

「………………ま、いっか」

 

大士は開き直った様に表情を戻すと、水晶に手を翳す。

水晶が光り輝き、カードにステータスが記載されていく。

 

「クロキ・タイシさんですね……ステータスは…………」

 

ルナさんが大士のステータスを確認する。

すると、

 

「………………全部普通ですね……………しかも、魔力に至っては完全なゼロ!? 知力は高めですが、魔力が無ければ魔法使い系統の職業にはなれませんし……………正直、冒険者になるのはお勧めしませんが…………」

 

ルナさんは気まずそうに、そう口にする。

えっ?

何?

大士は俺とあまり変わらないステータスなの?

しかも、魔力や幸運に至っては俺の方が上?

だって、こいつって異世界召喚されてたんだろ?

どゆこと?

俺が予想外の状況に混乱していると、

 

「ああ、お気になさらず。ステータスが低いのは分かってた事なんで」

 

大士はやっぱりかと、諦めた様に息を吐く。

 

「ですが、このステータスだと最弱職の『冒険者』以外の職業には……………あら?」

 

「どうかしたんですか? ルナさん」

 

ルナさんの反応が気になった俺は尋ねる。

 

「え、ええ………タイシさんのなれる職業欄に、『冒険者』の他に『デジモンテイマー』という聞いた事が無い職業が…………」

 

「ッ!?」

 

その言葉に俺は驚愕し、

 

「あ、じゃあその『デジモンテイマー』でお願いします」

 

大士は即決した。

 

「よ、よろしいのですか? どの様な職業かも分かりませんが…………」

 

「『デジモンテイマー』についてはよく知ってるので大丈夫です。こいつらが『デジモン』と呼ばれる種族なので、そのデジモンと共に戦う職業です」

 

大士は後ろに居るドルモン達を指しながらそう説明した。

 

「は、はあ…………?」

 

ルナさんは少し呆気に取られながら返事をする。

 

「次は私だね」

 

女神様…………もとい葵様が前に出て水晶に手を翳す。

同じように水晶が輝いてステータスが書き込まれていき、

 

「えええぇ!? 何ですかこのステータスは!? 全てのステータスにおいて大幅に平均値を超えてる………それどころか、ギルド史上でも最高レベルのステータスです!」

 

「あ、あはは…………」

 

ルナさんの驚きように葵様は苦笑していらっしゃるが、俺はこの状況にデジャヴを感じた。

ただ、あの時と違う事は、ウチの駄女神は、知力と幸運値が最低レベルだったが、葵様はそんな欠点など無い。

更にはギルド史上でも最高レベルと言ったからには、アクア以上の数値を叩き出したことは間違いないだろう。

流石は女神様。

ウチの駄女神とは大違いだ。

 

「それで職業は如何されますか? このステータスなら、もちろん全ての職業に就くことが可能です………………あら?」

 

「どうかしました?」

 

ルナさんの反応に葵様が尋ねると、

 

「いえ、アオイさんが就ける職業に、先程のタイシさんと同じ『デジモンテイマー』という職業があったので……………」

 

「そうですか」

 

葵様は頬に指を当てながら職業を考えていたが、ふと大士に視線を向け、

 

「大士は、私がなって欲しい職業はある?」

 

「いや、そこは『デジモンテイマー』で良いんじゃないか?」

 

大士がそう言うと、

 

「でも、態々職業として選ばなくても、私が『デジモンテイマー』である事は変わりないし………」

 

「………それもそうか。そうなると……………念のために回復役(ヒーラー)が欲しいかな? 『再生魔法』は燃費悪いだろ」

 

大士がそう言う。

再生魔法って何だ?

 

「じゃあそうするね。ルナさん、回復役(ヒーラー)に適性のある職業は何ですか?」

 

回復役(ヒーラー)であれば、プリーストの上級職であるアークプリーストをお勧めします。あらゆる回復魔法と支援魔法を使いこなし、前衛に出ても問題ないほどの強さを誇る万能職です」

 

「なら、それでお願いします」

 

葵様はアークプリーストを選択なされた。

ウチの駄女神と同じ職業とは、なんという因果か…………!

 

「それでは、ようこそアオイ様! スタッフ一同、今後のご活躍を期待しております!」

 

何時だったかと同じようにスタッフ総出で歓迎するルナさん達。

 

「…………………………」

 

扱いの差に大士がジト目をルナさん達に向けていた。

まあ、気持ちは分かる。

その時、周りの騒動をスルーする様に、優花が水晶に手を翳す。

ルナさんは、葵様の御登場で忘れていたのか、慌ててカードを確認した。

すると、

 

「………………………………………………」

 

ルナさんは見間違いかというように、目を擦って何度もステータスを確認する。

そして、

 

「えぇえええええええええええええええええええええええええええええっ!?!?!?」

 

驚愕の表情で大絶叫を上げた。

 

「す、全てのステータスにおいて先程のアオイさんを上回っています! 特に俊敏に至っては計測不能!? こんなことがあり得るんですか!?」

 

えっ?

優花って葵様より凄いステータスなの?

その事実を俺は信じられなかった。

 

「優花の基本ステータスは俺達の中じゃ最強だからな」

 

「だね」

 

大士と葵様は当然だと言わんばかりだ。

 

「それで職業だけど、投擲や気配感知に特化した職業はある?」

 

「そ、そうですね…………それだと、盗賊の上級職である『アサシン』などをお勧めしますが…………」

 

ルナさんは驚きを通り越して放心状態だ。

 

「アサシン……………………名前がちょっと気になるけど、それで良いわ」

 

アサシンって、暗殺者って意味だよな?

女の子だからそういうのが気になるんだろか?

 

「………………………………深淵卿とは別物。深淵卿とは別物……………」

 

何か呟いていたが、『深淵卿』って何だ?

 

「で、では、優花様も、今後のご活躍をご期待しています…………」

 

ルナさんは何とか体裁を保ちながらそう言った。

すると、3人は揃って俺の方に歩み寄ってくる。

 

「待たせたな」

 

「あ、ああ…………」

 

あの騒動を丸っと無視しやがった。

俺が僅かながら戦慄していると、

 

「カズマ、アクア、ここに居たんですか?」

 

「今日は早いじゃないか、カズマ、アクア」

 

後ろからよく知る2人の女の声が聞こえた。

 

「いっ!?」

 

俺はその声を聞いて思わず固まる。

おい、今日の集合時間はもっと遅い筈だぞ。

俺のパーティーの恥であるこの2人を大士達と合わせたくなかったが為にこんな早い時間からギルドに顔を出したというのに……………

俺はギギギとブリキ人形のように、首を後ろに向ける。

そこには、思った通り、魔法使いの三角帽子を被った小柄な少女と、騎士の恰好をした金髪の女がいた。

 

「お、おはよう2人とも…………今日は早いんだな」

 

俺が何とかそう返すと、

 

「それはこちらの台詞です」

 

「カズマ達がこんな時間からギルドに居る方が珍しいぞ」

 

2人は至極真っ当な答えを返してくる。

俺が答えに困っていると、

 

「カズマの仲間か?」

 

大士がそう口を出してくる。

 

「おや? あなた方は…………?」

 

「誰だ?」

 

俺の近くに居たであろう3人に2人が気付く。

 

「こ、こっちの3人は俺の同郷の人間だよ! つい昨日この街に来たばっかりでさ! 同郷のよしみで冒険者登録の案内をしていたんだ!」

 

俺は咄嗟に大士達と2人の間に割り込み、仲間の恥部を晒す前に大士達と別れようと思っていた。

だが、

 

「黒騎 大士だ。こっちはドルモン。カズマの同郷だ」

 

大士がご丁寧に俺の同郷設定を活かして自己紹介しやがった。

 

「私は神代 葵! こっちはリュウダモン! よろしくね!」

 

葵様が笑顔が眩しい挨拶をする。

 

「園部 優花よ。パートナーはハックモン。よろしく」

 

優花は当たり障りのない自己紹介をした。

だが、こうなると……………

 

「フッ…………名乗られたからには名乗り返すのが礼儀ですね………!」

 

や、やめろ!

何も知らない3人に恥部を晒すんじゃない!!

だが、俺の願いも空しく、

 

「我が名はめぐみん!! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、『爆裂魔法』を操るもの!!!」

 

めぐみんがいつもの様にローブを手で翻しながら、大声で名乗りやがった!

俺は、大士達がドン引きしていると思い、恐る恐る大士達の方を見た。

そこには、

 

「ああ、よろしく」

 

「めぐみんっていうんだ。可愛い名前だね!」

 

「この程度は慣れたものね」

 

こいつら全く動じてねぇーーーーーーーーーーっ!?

何というスルースキル!!

俺が3人のスルースキルに戦慄を覚えた。

だが、パーティーメンバーの問題児はもう1人いる。

 

「私の名はダクネス。クルセイダーを生業としているものだ」

 

こっちはめぐみんとは違った方向の問題児だが、普通に自己紹介するには問題無い筈…………

 

「不器用で攻撃は当たらないが受けるのは得意だ。もし共に戦う事があれば、前衛は任せて貰って構わない…………スライムの粘液でドロドロにされようが、触手持ちのモンスターに拘束されようと構わない! ガンガン前に出るので盾役として扱き使って欲しい! いや、寧ろさせてくれ!!」

 

……が無かったーーーーーーっ!!

何で初対面の奴にそんな事まで言うんだよ!?

顔赤らめてハァハァ言いながら言う事じゃ無いだろ!?

俺は今度こそドン引きされてると思い、恐る恐る大士達を見た。

そこには、

 

「ああ………そういう…………」

 

「ティオの同類がこんな所にもいたんだねー」

 

「世界は狭いわ…………異世界だけど………」

 

やっぱりこいつら動じてねーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?

呆れている節はあるけど、全っ然っ動揺してねえっ!

気になった俺は大士に顔を寄せ、

 

「な、なあ………何でお前らそんなに冷静なんだ? 仲間の俺が言うのも何だが、普通にドン引きレベルだと思うんだが……………」

 

俺は恥を晒すのを覚悟でそう問いかける。

すると、

 

「いや、仲間や知り合いにこれ以上の重症患者がいるからな…………慣れだよ慣れ」

 

「じゅ、重傷患者というと…………?」

 

「例えば…………そこのめぐみんだったな? 彼女の眼帯は厨二を代表するファッションだと思うんだが……………」

 

「おう、合ってるぞ」

 

俺はその言葉を肯定する。

 

「俺達から言わせれば、その程度で厨二を名乗るのは片腹痛い。俺の知る外見の厨二は、『白髪、眼帯、黒コート。眼帯の下の右目は特殊な義眼で、左腕はあらゆるギミックが仕込まれた金属の義手』だ」

 

「何だその厨二が全開してるキャラは……………」

 

俺は大士の発言に耳を疑う。

 

「名前に関しては、それぞれの地方によって変化があるのは当然だから、別に突っ込む所では無い。言動に関しても、名乗る時だけ自分の名と職業と得意な事を少し尊大に言っている程度じゃまだまだ甘い。『疾牙影爪』とか、『深淵蠢動』とか『必滅』とか『アビスゲート』とか『深淵卿』とか、自分で二つ名を名乗る奴らを知ってるからなぁ」

 

その内3つは同一人物だが。

 

「何なんだそいつらは…………?」

 

「異世界のウサミミ一族なんだよなぁ…………」

 

「ウサミミ?」

 

「何でもない」

 

何かすっげー重要な事をはぐらかされた気がするんだが!?

 

「後者の異常性へ………ゴホン、特殊性癖持ちについても、仲間の1人に同類のドMが居たからなぁ」

 

折角最初に言葉を濁したのに、簡単に『ドM』って言っちゃったよ!

せめてそこははぐらかし切ろうぜ!?

 

「ケツパイル喰らって新たな扉を開いた挙句に、扉を開いた男を『ご主人様』と呼び、その『ご主人様』からぞんざいな扱いを受け続けていたにも関わらず、そのほぼ全てを喜びとして受け止めて興奮し、強烈な非致死性のゴム製銃弾喰らっても快感を感じるような奴だ」

 

「ちょっと待てーーーーっ!? ケツパイルって何だーーーーーーっ!?」

 

パイルって何だパイルって!?

もしかしてパイルバンカーじゃないよな!?

 

「しかもそれがとある一族の姫だったんだから世も末だな」

 

「姫ッ!?」

 

女性っ!?

しかもお姫様!?

いや、ダクネスも女だけどさ。

 

「まあ、そう言う訳で、こういう個性的な人間には慣れてるから気にはしない」

 

「頭痛くなってきた……………」

 

突っ込みたい所は色々とあるが、これ以上聞くと俺の方が先に参ってしまう気がした。

なのでこの話は終わりにしよう。

すると、

 

「ところで、早速クエストを受けてみたいんだが、手頃な依頼は知らないか?」

 

大士にそう言われたので、俺は依頼が貼り出されている掲示板に大士達を案内した。

内容を見繕うが、

 

「………つってもなぁ…………最近はとある理由で高難度クエストしか残ってないんだよなぁ…………」

 

ついこの間、この街にもやって来た魔王軍の幹部のベルディアとか言うデュラハンが、この街の近くの古城に居を構えたので、その影響で低ランクの魔物は殆ど居なくなり、高ランククエストしか残ってない。

俺がどうすっかなーっと思っていると、1枚の依頼書が目に入った。

 

「……………………………………」

 

俺はその依頼書を見て思わず固まってしまった。

何故高ランククエストしか残ってない筈なのに、今日に限ってこのクエストが貼り出されているのか?

大士達にクエストを見繕う時に限ってこの依頼が貼り出されているのは、神の思し召しなんだろうか?

俺はふとすぐ近くに居たウチの女神を見る。

 

「…………………いや、無いな」

 

アクアに胡散臭そうな眼を向けたが、同時にもう1人の女神様が視界に入った。

 

「………………やはり女神様の思し召しかもしれない」

 

そうだ。

これはきっと、大士達にこの世界の残酷さを知らしめるために、女神様が引き寄せた『運命』なのかもしれない…………!

そう思った俺は、迷わずにその依頼書を手に取った。

 

「俺がお勧めするクエストはコイツだ!!」

 

お勧めと言うか、これ以外にお勧めできるものが無いだけだが。

 

「ん~? 何々…………【ジャイアントトードの討伐】?」

 

「「ジャイアントトード!?」」

 

大士の言葉にアクアとめぐみんが驚愕の声を上げながら頭を抱える。

 

「直訳すると、巨大なカエル?」

 

「っていうか、この2人は一体如何したの?」

 

葵様はジャイアントトードの名前に首を傾げ、優花はアクアとめぐみんの反応に首を傾げている。

 

「ああ、この2人はジャイアントトードにトラウマがあるんだ。頭からぱっくりいかれて粘液塗れにされた事が…………」

 

そこまで口走って、余計な事を言ってしまったと思った。

まともな神経の女の子なら、そんな事を聞けば嫌がるに決まって…………

 

「ふーん………災難ね」

 

優花はそういうだけで、何も嫌な顔をしなかった。

 

「とりあえず、受けるクエストはこれで良いか?」

 

大士が葵様と優花、それからデジモン達に確認を取ると、皆は一斉に頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

アクセルの街の近くに広がる平原。

俺は再びこの地に足を踏み入れていた。

だが、

 

「カエルは嫌、カエルは嫌、カエルは嫌、カエルは嫌……………!」

 

「ヌルヌルは嫌です、臭いの嫌です、でも口の中はいい感じに温いです………!」

 

「お、おい、2人とも………!?」

 

アクアとめぐみんはダクネスの後ろで震えている。

それとめぐみん。

一番最後の情報は余計だ。

俺は溜息を吐き、

 

「お前らなぁ、そんなにカエルが嫌なら残ってりゃ良かったじゃないか。このクエストは大士達が受けたクエストだぞ?」

 

なんなら今から帰って貰っても構わないが。

 

「嫌よ! ここで引き下がったら、アルオイスに負けた気がするじゃない!!」

 

「安心しろ。元からお前があの御方に勝っている所など1つも無い………!」

 

アクアの言葉に俺はそう断言してやる。

 

「だ、大丈夫……大丈夫………いざとなったらダクネスを生贄にすれば………!」

 

めぐみんが震えながらそういう。

 

「い、生贄だと………!? それは………それは………! 何と酷い!!」

 

そんな興奮した表情で言っても説得力無いぞ、ダクネス。

ある意味いつも通りのメンバーにゲンナリすると、小高い丘の向こうから黄緑色のジャイアントトードが姿を現した。

 

「出た! あいつがジャイアントトードだ!」

 

俺は大士達にそう言う。

 

「まんまでっかいカエルだな………」

 

「大きさは予想以上だけどね」

 

「精々牛位の大きさだと思ってたわ」

 

ジャイアントトードの大きさは、人どころか牛を丸呑みにできるほどの大きさがある。

ぶっちゃけ初めて見た時はその大きさにビビって逃げ回った記憶しかない。

その後にアクアが丸呑みされて動きが止まった隙に倒せたんだがな。

 

「さて、先に仕入れた情報では、ジャイアントトードは打撃に対して高い耐性を持つという話だったが…………」

 

大士がドルモンの方を向き、

 

「とりあえず、打撃に対してどの程度の耐性を持っているか確認したい。ドルモン!」

 

「わかった。メタルキャノン!!」

 

そう呼びかけると、ドルモンがジャイアントトードの方を向いて口を開けると、その口からソフトボール大の鉄球がかなりの速度で撃ち出された。

速度としては、バッティングセンターの時速120㎞ぐらいは出ているだろうか?

ドルモンの必殺技は、鉄球を発射するだけの地味な技だと思いがちだが、よく考えてみて欲しい。

先程も言った通り、鉄球の大きさはソフトボール大。

それは、砲丸投げのアスリートが使う砲丸の大きさと同等以上だ。

重さで言えば7㎏以上はある。

そんな重さで硬い鉄の球が、120㎞以上というスピードで飛ぶという恐ろしさが理解できるだろうか?

人の骨なんか簡単に砕けるだろうし、当たり所が悪ければ即死案件だ。

悪く無くとも四肢の何処かを骨折、もしくは失うかもしれない大怪我を負うだろう。

そんな威力を持った必殺技はジャイアントトードに向かって一直線に飛ぶ。

そしてその身体に吸い込まれる様にめり込み……………

ボヨンと跳ね返されて地面に落ちた。

当たったカエルは、首を傾げて?マークを浮かべているように見える。

つまり、全く堪えていない。

 

「なるほど、弾力のある柔らかい皮膚が打撃の衝撃を吸収してるから効果が薄いのか」

 

大士は今の一連の行動を見てそう口にする。

驚いた様子や動揺した様子は見受けられない。

 

「打撃が駄目なら斬撃は如何だ?」

 

大士はそう言うと、葵様とリュウダモンに視線を向ける。

 

「うん、わかった! お願い、リュウダモン!」

 

「任せよ!」

 

葵様がリュウダモンに呼びかけるとリュウダモンが飛び出す。

流石に向かって来る相手にはジャイアントトードも無視はできなかったのか、口を開けて長い舌を伸ばしてきた。

 

「何のっ!」

 

リュウダモンは華麗なサイドステップでその舌を躱すと、

 

「居合刃!!」

 

口から刃を放った。

 

「ゲコォッ!?」

 

その刃によってカエルの皮膚は切り裂かれ、血が吹き出る。

 

「やっぱり斬撃の方が効果あり。でも、思った以上に肉が分厚くて致命傷までは行かないか………」

 

大士がそう言った時、

 

「ハックモン!」

 

「うむ! ベビーフレイム!!」

 

優花がハックモンに呼びかけ、ハックモンが火球をジャイアントトードに放つ。

 

「ゲコッ!?」

 

火球はジャイアントトードの皮膚の一部を燃やし、熱そうな鳴き声を上げるが、皮膚が一部焦げただけだった。

 

「打撃よりは効果あり、でも、カエルの皮膚は粘液が分泌されているから、その所為で炎の威力が軽減されているな」

 

「お前分析能力高すぎねえか!? 何で一回見ただけでそんな事まで分かるんだよ!?」

 

「いや、割と生き物の生態について興味があるから、図鑑とかで見たカエルの生態を当てはめて予想しただけだが?」

 

俺の言葉に大したことは無いと言わんばかりにそう答える大士。

 

「リュウダモンとハックモンは斬撃系の技を持ってるからいいとして、ドルモンは不利か…………」

 

「どうするんだよ?」

 

俺がそう聞くと、大士は意味あり気に口元に笑みを浮かべた。

 

「カズマ、俺達の世界は、どのデジモンシリーズの延長線の世界観だと言ったか覚えてるか?」

 

「え? デジモンテイマーズだろ? それが如何か…………まさか!」

 

一瞬理解できなかったが、遅れてその意味を理解してハッとなる。

すると大士は、テイマーズのデジヴァイスと一緒に、1枚のデジモンカードを取り出した。

そう言えばテイマーズは旧デジモンカードだったんだよな。

すると大士は、デジヴァイス側面に刻まれている溝に、デジモンカードを通し始めた。

 

「カードスラッシュ!! スナイモン! 鋼の刃!!」

 

その言葉と共に、デジモンカードを通し切った。

そして、ドルモンの両腕が鋭い鎌状の刃へと変化した。

 

「おおっ! これがテイマーズのカードスラッシュ!?」

 

俺は思わず興奮した面持ちで叫んだ。

ドルモンが駆け出す。

 

「はぁああああああああっ!!」

 

鋭い刃の鎌となった腕を振り、ドルモンはジャイアントトードの皮膚を切り裂く。

 

「ゲコォッ!?」

 

効果は抜群だ。

すると、

 

「居合刃!!」

 

再びリュウダモンが口から刃を放つ。

 

「ゲゲコォッ!?」

 

その刃は喉元を切り裂き、今まで以上の出血をさせる。

更に、その怯んだ隙に、

 

「フィフスラッシュ!!」

 

ハックモンが前足の鋭い爪で、ジャイアントトードの背中を大きく切り裂く。

 

「ゲコォォォォッ!?」

 

かなりのダメージを与えたのか、ひときわ大きい悲鳴を上げるカエル。

そして、

 

「これで止め! シャドウシックル!!」

 

ドルモンが鎌の刃にエネルギーを集中させ、それを振ると、斬撃が飛ぶ。

その斬撃がジャイアントトードの身体を大きく切り裂き、それが止めとなってジャイアントトードは地に伏した。

 

「ふむ、こんなもんか…………」

 

「おおっ………まさかこの目でデジモンの戦いを見られるなんて…………俺は異世界転生してから一番感動しているかもしれない………!」

 

大士は今の戦いを分析しているのか思案顔になり、俺は生のデジモンの戦いを見られて感動している。

すると、

 

「何よ! アルオイス達は戦いをデジモン達に任せて後ろで見てただけじゃない!?」

 

アクアが異議ありとばかりに叫ぶ。

いや、デジモンのテイマーは後方から戦況を見て、作戦を立てたり有効なカードを選んで使用するという大事な役割があるんだからな?

モンスターと直接戦う事だけが戦いじゃないぞ。

俺はその事を全然わかってないアクアに溜息を吐いた。

 

「………………って、おい!」

 

俺はアクアに振り返って気付いた。

いつの間にか後方から、別のジャイアントトードが近付いていた事に。

 

「アクア! 後ろ!!」

 

「はぁ~? 何よ? 後ろが如何したって…………?」

 

俺の言葉に反抗的な態度を見せながらも、仕方ないとばかりに後ろを確認したアクアだが、その瞬間に言葉が止まる。

そこには、アクアを見下ろす巨大なカエルの顔。

 

「ひぃいいいいいいいいいいいいいっ!?」

 

アクアは一目散にダクネスの後ろに隠れると、ダクネスをジャイアントトードの方に押し出そうとする。

 

「お、おいアクア!? や、やめろ…………!」

 

ダクネスは口ではそう言っているが、その顔は上気していて嬉しそうだ。

 

「あ、ああ………食われてしまう……………あの大きな口で丸呑みにされて、粘液でヌルヌルのグチャグチャにされ、全身を舐め回されてしまうのだ…………! そうなったら私は………!」

 

「嬉しそうに言ってんじゃねーーーーーーっ!!」

 

カエルの頭がダクネスに近付いていき、その大きな口をガパッと開ける。

 

「あ、ああ…………!」

 

ダクネスは期待に満ちた表情を浮かべ、

 

「ひぃいいいいいいいいいいいいいっ!?」

 

アクアは怯えながらダクネスの腰にしがみ付いている。

如何でもいいがアクア。

その位置だと、お前もダクネスごと丸呑みにされるぞ?

そして成す術無く、過去と同じように仲間達がカエルの口に呑み込まれる………………

その寸前、

 

「たぁああああああっ!!」

 

無数の銀閃が走り、ダクネスを飲み込もうとしていたジャイアントトードが細切れにされた。

 

「…………………あれ?」

 

ダクネスは待ち望んだ快感が来ない事を不思議に思ったのか目を開けると、その目の前には唯の肉塊になったカエルの姿。

そして、その向こう側に立つ、両手に刀を携えた葵様の後ろ姿を見た。

 

「ア、アルオイス…………」

 

アクアが呆然と呟く。

黒髪が風で靡き、両手に携えた刀からはジャイアントトードの返り血が滴っている。

だが、その姿は決して恐怖する様なものでは無く、恐怖や絶望を拭い去る希望の様なものを感じさせる。

葵様は首だけを後ろに向けて肩越しに笑みを浮かべる。

その表情はまさに女神の微笑み。

 

「『戦女神』………………」

 

俺は自然とそんな言葉を漏らしていた。

だが、ダクネスの表情は、まるで楽しみにしていた玩具を取り上げられた子供の様な表情をしている。

 

「まだ来るわよ」

 

優花の言葉にハッとなると、地面の下に居たジャイアントトードが湧きだしてくる。

 

「げぇっ!? 結構数が多い!」

 

合計で10匹近い数が俺達を囲んでいた。

俺は撤退を視野に入れていたが、

 

「それじゃ、私もやろうかしら」

 

優花が特に気負わない声でそう言うと、彼女の右手に宝物庫から取り出したであろう黒い刃物が握られる。

それは、

 

「苦無!?」

 

マンガやアニメで出てくる忍者が使う武器、苦無だった。

優花はそれを振り被ると、

 

「ハッ!」

 

視線に先に居たジャイアントトードに向かって投げつけた。

そして次の瞬間、

 

「ゲコ…………………?」

 

ジャイアントトードのどてっ腹に風穴を開けた。

ジャイアントトードは何が起きたのかも分からずに絶命し、その身体を横たえた。

 

「何だその威力!? 苦無の投擲って威力じゃねえぞ!?」

 

俺は思わず叫んだ。

何故苦無を投げただけで風穴が空く!?

明らかに苦無の大きさよりも何倍も大きい穴が開いてるんだが!?

むしろアンチマテリアルライフルぶっ放したと言われた方が納得できるんだが!?

そう驚く間にも、優花は次々と苦無や手裏剣を取り出して投擲し、一投一殺でジャイアントトードを仕留めて行く。

更に、

 

「てやぁああああああああああああっ!!」

 

葵様が駆け回りながら、ジャイアントトードをすれ違いざまに細切れにしていく。

黒髪を靡かせながら戦場を駆ける葵様は、まるで黒い疾風。

優花のその場から一歩も動かずに投擲のみで仕留める様は、正に正確無比な固定砲台。

 

「何だこのチートヒロイン達は……………」

 

これだけの強さを持ってて性格も良いなんて、何て羨ましいんだ大士の奴!!

俺は嫉妬から思わず大士の方を睨み付けると、思わず顔が青ざめた。

何故なら、大士のすぐ後ろから、また新しいジャイアントトードが地面の下から現れたからだ。

 

「に、逃げろ大士!!」

 

俺は嫉妬も忘れて咄嗟に叫んだ。

その瞬間はとてもゆっくりに見えた。

ジャイアントトードーの目が大士を捉え、大士も後ろを振り向いて互いの視線が交わる。

 

「ゲコッ」

 

ジャイアントトードは大士を餌と定めたのか、大きな口を開ける。

俺は逃げろと叫びたいが、ゆっくりと感じる時間に反して、身体は全く反応してくれない。

ジャイアントトードは頭を下げ始める。

だがその瞬間、大士は一歩動いた………………………ジャイアントトードの懐に向かって。

大士が右の拳を握りしめ、その拳を振り被る。

馬鹿ッ!

ジャイアントトードは打撃に強い耐性が!

そう思った瞬間、大士の拳に金色の光が宿った。

何だ!?

俺の意識はその光に集中する。

よく見ると、大士の右手に宿る金色の光は1つの光では無く、大士の拳から金色の四角い光の粒子が際限なく湧き出るように発生している。

あれは…………まさかデジソウル!?

俺がそう思った瞬間、大士の拳がジャイアントトードの腹に突き刺さった。

その瞬間、俺の体感時間が元に戻る。

 

「いくら打撃に対する耐性が強かろうと……………」

 

「グェエエッ………!?」

 

大士の言葉と共に、ジャイアントトードが、まるで車に引かれたカエルの様な声を出す。

 

「その耐性を超える威力の拳を叩き込めば、ダメージが通るのは道理だ」

 

大士の拳が突き刺さった部分から光が溢れ出し、

 

「グェエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ……………!?!?!?」

 

次の瞬間、ジャイアントトードがまるでボールを投げる様な勢いで吹っ飛ばされていった。

 

「…………………………………………」

 

俺はそれを見て呆然とする。

 

「いや…………つーか、あいつのステータスって、俺とどっこいどっこいじゃなかったっけか?」

 

俺は思わずそう呟いた。

ジャイアントトードを吹っ飛ばした大士が俺の方に戻ってくる。

 

「お、お前、今のパンチの威力は何なんだよ!? って言うか、今の光って、もしかしてデジソウルか!?」

 

俺は思わずそう問いかけた。

 

「ああ、知ってたのか。その通りだ」

 

大士は軽く右手を上げて拳を握ると、再び金色のデジソウルが発生する。

 

「何で使えるんだよ!? お前が居たのはテイマーズの世界だろ!? 何でセイバーズの力が使えるんだよ!?」

 

「それは俺にも分からん。もしかしたら、俺が転生者って事が関係してるのかもしれないが……………いや、それだと遠藤の事が説明付かないか…………」

 

大士が何やら呟く。

だが、すぐに気を取り直し、

 

「まあ、理由は分からないがデジソウルを使えるって事は、あの喧嘩番長の様にデジソウルで身体能力爆上げしてぶん殴ることが出来るんだよ」

 

「…………………お前、もしかして究極体デジモンも殴り倒せるとか言わないよな?」

 

「さあ? 完全体デジモンの全力の突進を止めたことはあるけど、究極体は如何だろ?」

 

「完全体とやり合った事はあるのかよ!?」

 

俺は思わず突っ込んだ。

そして、いつの間にか20匹以上に増えていたジャイアントトードが1匹残らず討伐されていたのに気付いたのは、それから程なくしての事だった。

 

 

 

 

 






このすばクロス第2話です。
オールカズマ視点でした。
今回は冒険者登録と、めぐみん、ダクネスとの出会いと初クエストでした。
相変わらずの大士君、ステータス表記は最弱です。
そしてデジソウルもカードには反映されないという…………
でも職業はデジモンテイマー。
矛盾ありまくりです。
めぐみんとダクネスは、同類をよく知っているので今更この程度で引く訳がない。
初クエストはお馴染みジャイアントトードー。
ま、この三組の敵じゃありませんが。
自分としては、ダクネスの変態ぶりが上手く書けたか疑問。
因みに今更ですが、このすばの時間軸は、ベルディアが一度アクセルに来た少し後です。
次回は幸運の女神でもある彼女との邂逅予定。
では、次もお楽しみに。
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