ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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第4話 この魔剣の主に現実を

 

 

 

 

クリスとの出会いから数日後。

今日も討伐系クエストを受注し、特に問題無く瞬殺したその帰り。

その声は突然聞こえてきた。

 

「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああっ!!?? ピュリフィケーション! ピュリフィケーション!! ピュリフィケーション!!!」

 

甲高い悲鳴と共に、浄化魔法を連呼する聞き覚えのあるその女性の声。

 

「アクアーーー! ギブアップなら言えよ! 鎖引っ張って、檻ごと引き摺って逃げるから!」

 

これまた聞き覚えのある少年の声。

 

「嫌よ! ここで諦めたら、報酬が貰えないじゃない!! ッ!? きゃぁあああああああああああああっ!?!? メキッて言った! 今檻から鳴っちゃいけない音が鳴った!! ピュリフィケーション! ピュリフィケーション! ピュリフィケーション………!!」

 

悲鳴とと共に必死に浄化魔法を連呼している。

 

「………………何やってんだあいつ等?」

 

その声の主達が誰か分かった俺達は、声が聞こえてきた方に足を向ける。

その方向には、汚れた湖が広がっていた。

すると、湖の岸から少し離れた場所にカズマ、めぐみん、ダクネスの3人が立っており、その3人が見つめる先には、大きな岩に鎖で繋がれた檻が湖の浅瀬に沈んでおり、その檻に巨大なワニのモンスターが食いついている。

そして、先程からの悲鳴と連呼される浄化魔法は、その檻の中から聞こえて来ていた。

目を凝らせば、ワニに食いつかれている檻の中には、アクアが閉じ込められている。

状況が呑み込めない俺達は、一先ずカズマ達に声を掛けることにした。

 

「おーい、カズマー!」

 

俺がカズマに呼びかける。

 

「おっ、大士達じゃねえか。そっちもクエストか?」

 

「ああ、討伐の帰りだ…………それよりも、何の罰ゲームだこれは?」

 

檻に入れられたアクアに目をやりながら俺は尋ねる。

 

「ああ。こっちもクエストだよ。湖の浄化だ」

 

カズマがそう言う。

 

「あ、そっか! アクアは水の女神だから、水に触れてるだけで浄化されるもんね」

 

その言葉を聞いて、葵が納得がいったと相槌を打つ。

 

「それで、あのワニのモンスターから身を護る為に檻に入りながら湖の浄化をしてるって事?」

 

カズマと葵の話と現状を踏まえて優花がそう予想する。

 

「おう。俺の作戦だ。いい案だろ?」

 

カズマはドヤ顔をしながら親指で自分を指差す。

 

「………まあ、理に適っていると言えば適ってるんだが………………」

 

俺はそう言いながらアクアに目をやると、

 

「ピュリフィケーション! ピュリフィケーション!! ピュリフィケーション!!!」

 

涙目になりながら必死に浄化魔法を連呼するアクア。

 

「傍目から見れば、鬼畜の所業だよな」

 

俺は思わずそう漏らす。

ワニの行動は更に激しくなり、檻をひっくり返したり、口で挟んで振り回したりしている。

 

「きゃぁあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!???」

 

その度にアクアの悲鳴が響く。

 

「一応、さっきから何度もギブアップするか?って聞いてるんだが、頑として聞かないんだよ…………」

 

カズマも半分呆れている。

アクアも半分意地になっている様だが……………

すると、

 

「……………う~ん、ちょっと見てられないかなぁ~」

 

葵が苦笑しながら岸に向かって歩いていく。

 

「あ! ちょっと! 危ないですよ! 葵様!」

 

カズマがそう呼びかけるが、葵はそのまま歩き続け、岸の近くまで行く。

当然ながら、テリトリーを侵されると判断したワニのモンスターが数匹葵に向かって来たが、

 

「居合刃!!」

 

「メタルキャノン!!」

 

「ベビーフレイム!!」

 

リュウダモン、ドルモン、ハックモンの攻撃がワニ達を怯ませ、

 

「ふっ!」

 

優花が投擲した苦無がワニの頭部を貫いて絶命させる。

葵はそうなるのが当然と言うように、何事も無かったかのように右手を前に翳した。

そして、

 

「〝絶象〟」

 

トータスの神代魔法の1つである再生魔法を発動させた。

その右手の先に光の球が発生し、その光の球が湖に溶けるように落ちると、湖全体が輝き、やがてその光が消えると、

 

「湖が……」

 

ダクネスが驚嘆の声を漏らした。

何故ならば、先程まで薄汚れていた湖の水が、澄んだ透明の色を取り戻していたからだ。

 

「ど、如何いう事ですか!? アクアの浄化でマシになっていたとはいえ、まだ汚かった筈の湖が一瞬で綺麗な水に………!?」

 

めぐみんも驚愕の表情で叫んでいる。

 

「ほう、流石葵様。水を司るアクアが半日掛かると言っていた物件を一瞬で浄化してしまわれるとは………」

 

カズマは葵を称える様な口調でそう言う。

なんつーか、最近カズマの葵への信仰心がうなぎ上りなんだが?

葵が俺達の方へ振り返ると、

 

「余計な事だったらゴメンね? あのままでもアクアなら1時間ぐらいで浄化できてただろうし、報酬を分けろなんて言わないから安心して?」

 

「流石葵様。何と慈悲深い…………」

 

カズマの葵への信仰心が(以下略

 

「………………まあ、アクアが本当に本気になれば、あの程度の湖、一瞬で浄化できた筈なんだけどね」

 

最後の言葉は聞かなかったことにしよう。

 

「あっ、見てください。湖が浄化された事で、ワニ達が移動を始めました」

 

めぐみんが指を指しながらそう言う。

その先では、檻に食いついていたワニのモンスター達が、ここは住み辛くなったと言わんばかりに何処かへと泳ぎ去っていく。

それを確認した後、カズマ達はアクアの居る檻へと歩み寄った。

 

「アクア、無事か?」

 

カズマがそう声を掛ける。

 

「…………………………」

 

しかし、アクアは膝を抱えたまま無反応だ。

 

「………アクア?」

 

「おーい、アクアー? アクアさーん?」

 

ダクネスとカズマが再び声を掛けるが、

 

「…………………………」

 

アクアは無言のまま微動だにしない。

 

「おいっつってんだろ!? どうした?」

 

何も反応しないアクアにキレたのかカズマが声を荒げる。

すると、

 

「…………ぐすっ! うううっ…………!」

 

アクアはすすり泣き始めた。

それを見るとカズマは溜息を吐き、

 

「泣くぐらいならとっととリタイアすればいいのに…………ほら、もう帰るぞ!」

 

呆れながらそう言った。

 

「ううっ………! うううっ………!」

 

ぐずり続けるアクアを見て、カズマは居た堪れなくなったのか、

 

「……なあ、皆で話し合ったんだが………今回の報酬は俺達は要らないから………」

 

そう提案する。

 

「そうだぞアクア! 30万エリスは全部アクアの物だ!」

 

「そ、そうですね! 今回は全て、アクアの働きですから!」

 

ダクネスとめぐみんも、カズマの提案に乗っかってそう言う。

 

「俺達はさっき葵が言った通り、勝手に手を出しただけだから報酬の分け前を貰おうなんて考えて無いからな」

 

一応、俺もそう言っておく。

 

「………………………」

 

泣き声は止まったが、変わらず反応を示さないアクア。

 

「お、おーい………いい加減檻から出ろよー………もうワニは居ないからー………」

 

流石のカズマも心配になったのか、気遣う声色でそう言う。

すると、

 

「…………このまま連れてって……………」

 

今まで無反応だったアクアがボソッと呟いた。

 

「………何だって?」

 

カズマは自分の耳を疑うように問い返した。

 

「………檻の外の世界………怖い…………このまま街まで連れてって…………」

 

か細い声でそう呟くアクアに、カズマ達は何とも言えない表情をした。

 

「完璧にトラウマになってんな、これ」

 

俺は思わずそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、梃子でも動こうとしなかったアクアを、仕方なく檻ごと荷車に乗せ、アクセルの街に帰還した俺達。

街に着いてもアクアは檻から出ようとしなかったので、これまた仕方なく、そのまま街の中を進んでいるが、当然ながら周りからは奇異の視線が集中する。

まあ、それは仕方ないと割り切っているが、

 

「………ル~ル~ルルル………………」

 

アクアが今にも消えそうな程のか細い声で、悲し気な歌を口ずさんでいるので、居た堪れなさが半端無い。

 

「おいアクア………もう街中なんだからその歌は止めてくれ」

 

カズマがそう言うが、アクアは歌う事を止めない。

 

「ボロボロの檻に、膝抱えた女を運んでる時点で、人の注目集めてるんだからな」

 

確かに、傍から見れば奴隷として売られるために捕まった不幸な少女と見えなくもない。

 

「…………と言うか、いい加減出て来いよ!?」

 

ごもっとも。

 

「………嫌。この中こそが私の聖域よ………外の世界は怖いから、暫く出ないわ………」

 

か細いながらもキッパリと否定の言葉を紡ぐアクア。

 

「すっかり引きこもってしまいましたね………」

 

「そうだな………」

 

めぐみんとダクネスもそう言う。

 

「以前の俺みたいだな………」

 

「「えっ?」」

 

「いや、何でもない………」

 

カズマの言葉に2人が声を漏らすが、カズマははぐらかした。

そこで俺はふと思いついたのだが、

 

「なあ葵………今更なんだが、〝魂魄魔法〟でアクアの精神立ち直させれば早かったんじゃないか?」

 

そう葵に行ってみると、葵はちょっと困った顔をして、

 

「それは無理かな? 以前の私が〝魂魄魔法〟関係を無効化してたのと同じで、『女神』であるアクアの『魂の格』は人よりも遥かに高いから、〝魂魄魔法〟じゃ干渉できないの」

 

そういえばアクアも『女神』だったな。

 

「葵の『神言』は?」

 

優花が思いついたようにそう聞くと、

 

「私が持つ本来の『神力』全てを使える状態ならともかく、一分(いちぶ)以下の力しか使えない今の状態じゃ、エヒト程度の偽神ならともかく、同じ下級神のアクアに通じる『神言』は使えないよ」

 

葵はそれも無理だという。

それはそうと、檻の中で膝を抱える『女神』を見ながら、

 

「こんなんでも、エヒトよりは格上なんだな…………腐っても『女神』か…………」

 

俺は何となく感慨深いものを感じた。

すると、

 

「女神様!? 女神様じゃないですか!!」

 

突然男の声が聞こえた。

その声に振り向けば、青い鎧を纏った高校生ほどの茶髪の少年が、荷台の後ろに飛び乗って檻の鉄格子に掴みかかっていた。

 

「ぬぅぅぅぅん…………はっ!!」

 

その少年は力を振り絞って鉄格子を抉じ開ける。

 

「いいっ!?」

 

「マジですか!?」

 

素手で鉄格子を抉じ開けた少年の筋力に、カズマとめぐみんは驚愕の声を上げる。

ダクネスが驚かないのは、自分でもできるからだろうか?

因みに葵と優花も楽勝で出来るし、俺もデジソウルを使えば余裕だ。

ドルモン達は成長期のままでは辛いだろうが。

 

「何をしているのですか女神様!? こんな所で!?」

 

少年はなりふり構わずにアクアに呼びかけ、手を伸ばそうとした。

すると、

 

「おい!」

 

その肩に手が置かれて引き留められる。

引き留めたのはダクネスだ。

 

「私の仲間に馴れ馴れしく触れるな! 貴様………何者だ!?」

 

そう言うダクネスの姿は、正直に言って凛々しく、格好良いと思える。

その性癖を知らなければ………だが。

 

「こういう所もティオに似てるね」

 

俺と同じ事を思ったであろうドルモンがそう言った。

その時、

 

「おいアクア……! あれお前の知り合いだろ………? 女神とか言ってたし………何とかしろよ………!」

 

カズマがコッソリとアクアに呼びかける。

すると、

 

「………………女神?」

 

アクアが虚ろな目のままその言葉に反応した。

 

「そーだよ!」

 

カズマの言葉にアクアが一瞬制止する。

 

「……………ん?」

 

それを怪訝に思ったカズマが声を漏らすと、

 

「………そうよ! 女神よ私は!!」

 

アクアの眼が一瞬にして生気を取り戻し、握り拳を作って気合を入れる。

カズマはその姿を呆れた目で見ていた。

 

「ん~~しょっと! おっとっと!」

 

アクアは、先程少年がこじ開けた鉄格子の隙間から降りの外へと出ると、

 

「さあ! 女神の私に何の用かしら!?」

 

ドヤ顔を浮かべながら胸を張り、荷台の上から偉そうな態度で見下ろしながらそう言った。

 

「…………………………」

 

「…………………………」

 

2人の視線が交わる。

そしてアクアから出てきた言葉は、

 

「………………アンタ誰?」

 

だった。

 

「僕ですよ!? 御剣 響夜です!!」

 

思わず態度を崩して叫んだ御剣 響夜と名乗った少年。

すると、腰から長剣を抜き、アクアに見えるように差し出す。

 

「あなたからこの魔剣グラムを頂き、この世界に転生した御剣 響夜です」

 

「……………へっ?」

 

「へっ?」

 

「へっ?」

 

アクア、ミツルギ、カズマの順で声を漏らす。

アクアはおそらく思い出せなかったから。

ミツルギはアクアの反応が自分の思ってたものとは違ったから。

カズマはミツルギが転生者である事に声を漏らしたのだろう。

 

「え…………? あ、ああ~~~! 居たわねそんな人も!」

 

アクアはおそらく思い出せていないのだろうが、笑って誤魔化している。

 

「ゴメンね、すっかり忘れてた! 結構な人を送ったし、忘れてたってしょうがないわよね!!」

 

いや、誤魔化す気すら無かった様だ。

 

「え……ええ…………」

 

ミツルギは戸惑いながら剣を鞘に納めると、

 

「お久しぶりです、アクア様」

 

気を取り直しながらそう挨拶した。

 

「あなたに選ばれし勇者として、日々頑張っていますよ」

 

ミツルギは胸に手を当てながら、自信満々にそう言った。

 

「…………………………」

 

何だろう?

コイツを見てると、同じクラスメイトのあの男を思い出すんだが?

 

「……ところで、何故アクア様は檻に閉じ込められていたんですか?」

 

本人が檻から出たがらなかっただけだぞ。

俺はそう心の中で突っ込んでおく。

とりあえずカズマが、アクアがこの世界に居る理由と、檻に入っていた理由を説明すると、

 

「はぁあああああああああああああああああああっ!? 女神様をこの世界に引きずり込んで!? しかも檻に閉じ込めて湖に浸けたぁっ!? 君は一体何を考えてるんですかぁっ!?」

 

ミツルギがカズマの胸倉を掴む。

 

「ちょ、ちょっとぉ!? 私としては、結構楽しい毎日送ってるし! ここに連れて来られた事も、もう気にして無いし!」

 

アクアがミツルギを宥めようとする。

 

「アクア様! この男に如何いう風に丸め込まれたか知りませんが、あなたは女神ですよ!? それがこんな………!」

 

ミツルギがカズマを睨む。

そのカズマはミツルギを冷めた目で見ていた。

その顔は言いたい放題言ってくれやがって、って感じだ。

 

「因みにアクア様は、今は一体どこに寝泊りしてるんですか?」

 

ミツルギがそう質問する。

 

「えっと………馬小屋で」

 

アクアがそう答える。

因みにこの世界の駆け出し冒険者は、馬小屋で寝泊りするのが殆どらしい。

 

「はぁっ!? ぐぬぬ………!」

 

その答えを聞いて驚愕したミツルギが、カズマの胸倉を更に強く引っ張りながら睨み付ける。

カズマもミツルギを睨み返している。

すると、

 

「おい! いい加減その手を離せ! 礼儀知らずにも程があるだろ!」

 

ダクネスがミツルギの腕を掴む。

 

「ちょっと撃ちたくなってきました」

 

めぐみんも杖を構えながらそう言った。

 

「それはやめろ。俺も死ぬ」

 

カズマが冷静に突っ込んだ。

 

「君達は……………クルセイダーにアークウィザードか。なるほど…………パーティーメンバーには恵まれてるみたいだね。君はこんな優秀そうな人たちがいるのに、アクア様を馬小屋で寝泊りさせて、恥ずかしいと思わないのか!?」

 

説教臭くそう言うミツルギ。

カズマも心外だと言わんばかりの表情だ。

めぐみん、ダクネスとは、まだ数日の付き合いだが、それでも如何いう人間かは大体把握している。

めぐみんは強大な魔力と、最強の攻撃魔法である爆裂魔法を使えるが、1発限りという制限がある上、使った後は行動不能のお荷物になる。

ダクネスは、パワーも防御力も目を見張る所があるが、いろんな意味で『受け』の性格をしているために、攻撃スキルを覚えようともしない。

どちらも能力的には最高クラスなんだろうが、癖が強すぎるのだ。

それを取りまとめて、馬小屋暮らしとは言え毎日を何とか食いつないでいるカズマは責められるどころか褒めてやってもいいぐらいだ。

 

「おい。カズマの苦労を知らないお前が上から目線で説教するな」

 

俺はつい口を出していた。

 

「むっ? 誰だい君は?」

 

「カズマ達の知り合いだ」

 

ミツルギの問いにそう返す。

 

「説教するなとは心外だな。僕は人として当然のことを言っているだけのつもりだが?」

 

俺に対しても上から目線を崩さないミツルギ。

ミツルギは俺を見ると、そのまま視線を後ろに居る葵と優花に向けた。

 

「ふん。どうやら君もパーティーメンバーには恵まれている様だ」

 

何を思ったのかミツルギはそんな事を言う。

確かに葵も優花も上級職だが、くノ一スタイルの優花はともかく、葵は姿だけではアークプリーストと判断できない筈だが?

それともこいつは2人が美人だから、勝手に上級職とでも思ってるんだろうか?

まあ、それは置いといて、

 

「カズマはまだ駆け出し冒険者だ。この世界の冒険者の情報も少しは集めたが、駆け出し冒険者が馬小屋で寝泊りすることは普通の事らしいじゃないか。別にその事でカズマが責められる謂れは無い筈だが?」

 

「何を言う!? 僕はそんな事はしていない!」

 

キッパリと否定してきたので、

 

「その魔剣グラムとやらがあったから、だろ? そんなイージーモードのチート武器を持ってれば、報酬の良いのクエストも難無くクリアできるだろうし、そりゃ金策で苦労するはず無いだろ?」

 

「ぐっ………!」

 

「その点カズマは幸運と知能以外のステータスが平凡以下のハードモードだ。日々の金策にも苦労するさ」

 

「そーだそーだ! チート魔剣持ちのお前と一緒にするな!」

 

カズマが俺の言葉に乗っかって肯定する。

 

「だ、だが彼にはアクア様という素晴らしいお方が付いているじゃないか!」

 

ミツルギがカズマを指差しながら叫ぶ。

 

「いや、ここ何日かカズマ達と付き合っているが、アクアは単純な戦闘能力はそんなに高く無いぞ。それなのに調子に乗るから余計なトラブルを起こす位だし」

 

「ア、アクア様がそんなお方の筈がない!! そうか! 君と彼はグルで、アクア様や彼女達の力を使ってうまい汁を吸おうと考えているんだな!」

 

そう断言するミツルギ。

 

「……………なんだろ? コイツを見てると、とある男がピンポイントで思い浮かぶんだが?」

 

「奇遇ね。私もそう思ってた所よ」

 

「同じく」

 

俺の言葉に優花と葵が同意する。

コイツもあの勇者(笑)と同じ、ご都合思考の自己完結型か?

すると、

 

「君達、これからはソードマスターである僕と一緒に来ると良い。高級な装備も買い揃えてあげよう。もちろん君達もだ」

 

ミツルギはめぐみんやダクネスだけでなく、葵や優花も勧誘してくる。

すると、

 

「ちょっとヤバいんですけど? あの人本気で引く位ヤバいんですけど? ナルシストも入ってる系で怖いんですけど?」

 

「どうしよう? あの男は生理的に受け付けない………攻めるより受けるのが好きな私だが、あの男だけは無性に殴りたくなってくるのだが………」

 

「撃っていいですか? 撃っていいですか?」

 

「何でいきなりそんな話になるのか分からないんだけど?」

 

「それに、お金や装備品で靡く様な女と思われてるのが一番ムカつくんだけど」

 

アクア、ダクネス、めぐみん、葵、優花がひそひそと話している。

まあ、ハッキリと聞こえているし、聞こえるように喋っているんだろうが。

 

「えーっと…………俺の仲間は満場一致であなたのパーティーには行きたくないみたいです」

 

「こっちも同じく」

 

「じゃ、これで」

 

俺やカズマ達はそう言って踵を返して早く帰ろうとした。

だが、

 

「ッ! 待て!」

 

ミツルギが俺達の前に回り込んで立ち塞がった。

 

「ん? 退いてくれます?」

 

カズマが面倒くさそうな表情で言う。

 

「悪いが、アクア様をこんな境遇に置いては置けない」

 

人の話を聞かずに自分の要求を突き付けるミツルギ。

 

「はぁ、性格だけじゃなく、行動まで天之河に見えてきた………」

 

俺は深く溜息を吐く。

やっぱりこういうタイプとは仲良くなりたいとは思わんな。

 

「勝負をしないか? 僕が勝ったらアクア様達を譲ってくれ」

 

俺はその言葉に目を細める。

それって、勧誘を断られたから力尽くで自分のモノにすると言ってるのと同義だぞ?

更に言えば、本人達が断ってるのに、その本人達の意志を無視して自分のパーティーに引き入れようとしている。

完全に彼女達を『モノ』扱いだ。

ま、無意識なんだろうけど。

しかも、コイツさり気にアクア〝達〟と言いやがった。

つまりは葵や優花もその中に入ってるという事だ。

ピキッと頭に血が上る感覚を覚える。

そんな俺を他所に、ミツルギは言葉を続けた。

 

「君が勝ったら、何でも一つ言う事を聞こうじゃないか」

 

「よし乗った! 行くぞぉぉぉぉぉっ!!」

 

カズマは即答すると同時に剣を抜いてミツルギに斬りかかった。

 

「え? ちょ……! 待った………!」

 

ミツルギは突然の奇襲に慌てながらもギリギリでカズマの剣を避けると、後ろに下がりながら魔剣グラムを抜く。

 

「くっ……!」

 

何とか体勢を立て直したミツルギは、魔剣を構えようとした。

その瞬間、

 

「スティーーーーーーールッ!!」

 

カズマが左手を突き出しながら叫ぶ。

カズマの、相手の持ち物を奪う盗賊スキル『スティール』が発動した。

一瞬閃光が辺りを包み、見えなくなる。

だが、すぐに光が収まり、視界が回復すると、

 

「えっ? あれ?」

 

ミツルギの手から魔剣グラムは消えていた。

 

「………は?」

 

ミツルギは思わず目の前のカズマを見る。

カズマの左手には魔剣グラムが掲げられており、刀身の腹がミツルギに向けられていた。

 

「ほい」

 

魔剣グラムの自重による、自然な動作での振り下ろしがミツルギの脳天目掛けて振り下ろされ、

 

「ちょっと待った」

 

直撃する寸前に俺が刀身を素手で掴んで止めた。

 

「何すんだよ?」

 

カズマが文句あり気に俺を見てくる。

 

「あ、当たり前だ! あんな卑怯な手段、勝負として認められるか!! 仲間が止めるのは当然だろ!?」

 

ミツルギはハッとなりながらカズマを指差して叫ぶ。

 

「いや? 今のは普通にカズマの勝ちだろ?」

 

「………は?」

 

「そもそもお前は冒険者生活をそれなりに続けてきた高レベルの冒険者なんだろ? しかもチートの魔剣持ち。そのチート魔剣持ちの高レベル冒険者が駆け出し冒険者に勝負を挑むこと自体が不公平すぎる。ハッキリ言えば、まともに戦ってカズマが勝てる可能性なんて万に1つも無い。その不公平すぎる勝負を………そもそも受ける必要すらなかった勝負を受けた上で、カズマは自分の持つ手札を最大限に利用して勝ちを捥ぎ取った。お前はカズマを卑怯と言ったが、奇襲は格上に勝つために取る当然の手段だ。お前は当然ともいえる奇襲を警戒もせずに、カズマを舐めてかかった。その上で不意打ちでペースを崩されて、スティールで魔剣を取られたお前が間抜けだったってだけの話だろ。手を尽くして勝利を掴んだカズマを称賛こそすれ、責めるのはお門違いだ」

 

「な、な、な…………?」

 

ミツルギは口をパクパクと開いたり閉じたりしている。

 

「なら、何で止めたんだよ?」

 

カズマが魔剣を地面に突き刺しながらそう聞いてくる。

 

「簡単な話だ。お前がコイツを気絶させたら、俺がコイツを殴れないからな」

 

「は?」

 

ミツルギが声を漏らす。

 

「俺達とカズマ達は別パーティーだ。カズマはアクア、めぐみん、ダクネスを賭けてお前と戦った。その結果はカズマの勝利だ。で、お前はさっき葵と優花も自分のパーティーに引き入れるつもりで勝負を持ち掛けたんだろ? なら、その2人の分の勝負は俺が引き受けるべきだろ?」

 

まあ、こんなのは唯の口実だ。

単純な話、葵と優花に手を出そうとしたコイツを殴りたいだけだ。

 

「カズマ、魔剣をコイツに返してやってくれ」

 

「いいのか?」

 

「ああ。後で魔剣が無かったから負けたとか言う言い訳を聞きたくないだけだ」

 

「まあいいけど………ほれ」

 

カズマが魔剣をミツルギに向かって放る。

 

「うわわっ! っと!」

 

ミツルギは突然投げられた魔剣を取り落としそうになるものの、何とか受け止めた。

 

「なら、とっとと始めるぞ」

 

俺はミツルギの前に歩み出る。

 

「くっ………! 今度は油断しない!」

 

ミツルギは魔剣を構えると意識を集中する。

魔剣に光が宿り、魔力が放出される。

なるほど、魔剣というだけあって中々の力だ。

トータスのベヒモスぐらいなら倒せるんじゃないか?

俺はそう分析する。

 

「エンシェントドラゴンを倒した魔剣グラムの力、思い知るがいい!!」

 

ミツルギは跳躍しながら魔剣を上段に振りかぶる。

 

「はぁあああああああああああああああああああっ!!!」

 

そして、渾身の力を込めて振り下ろしてきた。

こんなもんカズマに繰り出してたら絶対死んでたぞ。

俺はそう思いながら右の拳を握りしめる。

その拳にデジソウルが宿り、俺の身体能力が強化された。

相手が剣を振り下ろしてくるタイミングに合わせて、俺も拳を繰り出した。

ドカァンと激突の衝撃が走り、周囲の人々が驚く。

そして、

 

「なっ!?」

 

ミツルギが驚愕の声を漏らした。

ミツルギが振り下ろした魔剣による渾身の一撃は、デジソウルを纏った俺の拳によって止められていたからだ。

 

「…………エンシェントドラゴンとやらは切り裂けても、俺の拳は切り裂けなかったみたいだな?」

 

俺はそのまま拳に力を込めて押し切り、魔剣をミツルギの手から弾き飛ばした。

 

「そ、そんなっ!?」

 

ミツルギは弾き飛ばされた魔剣を目で追う。

戦いの最中に『敵』から目を離すなよ。

内心突っ込みながら、俺は拳を再び振り被る。

ミツルギの前に踏み込んだことで、ミツルギがようやく俺に気付いた。

 

「ま、待っ…………!」

 

「俺の女達に手を出そうとしたこと、死ぬほど後悔しやがれ!!」

 

ミツルギの制止を無視して拳を繰り出す。

その拳はミツルギの頬にめり込み、骨を軋ませる。

 

「うぉらぁああああああっ!!」

 

大きく振り下ろすように繰り出されたその拳は、ミツルギを地面に叩きつけた。

その衝撃で地面は罅割れ、頬を腫れ上がらせたミツルギは完全に気絶している。

 

「ふう、スッキリした」

 

気が晴れた俺は皆の方に振り返る。

すると、

 

「ん?」

 

葵と優花が俺の両腕を取ってピッタリとくっ付いてきた。

 

「えへへ~♪」

 

「ん………♪」

 

2人は嬉しそうな表情で俺の肩に頭を乗せる。

 

「どうした?」

 

何故ご機嫌なのか分からなかった俺がそう聞くと、

 

「俺の女って言ってくれた♪」

 

「ああやってハッキリ言ってくれるのは、何度聞いても嬉しいものよ」

 

そう言って抱き着く力を強める。

すると、

 

「……………さっきので好感度上がるって………相当だな………」

 

カズマが若干引いた視線で俺達を見る。

まあ、確かに感情に任せて人を殴り倒しただけだからな。

傍目から見れば、暴力を振るった男にすり寄る危ない女とも見られかねない。

まあ、奈落の底で常識がぶっ壊れてる俺達にはどうでもいい事だが。

そのまま気絶しているミツルギをほっといて俺達は帰路に着いた。

因みに、カズマは先程弾き飛ばした魔剣を賭けの報酬として回収していた。

尚、翌日ミツルギが魔剣を取り戻そうとカズマの所にやってきたのだが、その時には既にカズマは魔剣を売り払っており、泣きながら走り去るミツルギの姿が目撃されたという。

 

 

 

 

 

 






このすばクロス第4話です。
今回はこのすば世界の勇者(笑)、ミツルギ君の出番でした。
アニメのミツルギ君より若干天之河っぽくなりましたね。
ちょっとは大士の出番をとも思って殴られて頂きました。
哀れミツルギ……………
次はいよいよベルディア戦。
さて、ベルディアは一体何分持ち堪えることが出来るのか!?(笑)
お楽しみに。

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