ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

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ありふれた転生者はゼロの使い魔(仮)
第1話 ありふれた転生者は使い魔(仮)


 

 

 

 

カズマ達の世界から戻ってきてから暫く。

こちらの世界では1ヶ月経っていた為、授業の遅れを取り戻すためにてんやわんやしていたことも落ち着いてきたある日。

いつも通り葵と優花、そしてデジモン達と下校していた。

 

「………………………」

 

俺の右腕に抱き着いている優花は、会話に華を咲かせながらも、何処か油断のない表情で辺りを伺っている。

優花は異世界に飛ばされた先の一件以降、下校時間でも油断が無いように常に気を張り巡らせていた。

 

「優花………偶には気を抜けよ。そんなんじゃ神経が参っちまうぞ?」

 

俺は優花を気にかけてそう言うが、

 

「駄目よ。また異世界に召喚されたらどうするの?」

 

そう言って気を緩めようともしない。

 

「既に2回異世界に行ってるわけだしね。2度ある事は3度あるって言うし」

 

葵もそう言って抱き着く力を強める。

 

「そんな異世界召喚なんて天文台的確率な事がそうそう起こるはずが……………」

 

後で思った事だが、このセリフは正にフラグだったのだろう。

 

「………………ッ!? 魔力反応!?」

 

優花が叫んだ。

 

「この感覚………空間魔法………!?」

 

優花と葵は俺の腕から手を放し、何が起きてもいい様に身構え、俺も険しい表情で目の前を注視する。

すると、俺達の目の前に、縦2m、横1mほどの、楕円形をした光る鏡の様なものが出現した。

 

「これは……………?」

 

「光る………鏡………?」

 

俺と葵は呟く。

 

「魔力反応はこの鏡の様なモノから出ているわ……! おそらく、〝界穿〟みたいな空間ゲートの様なモノじゃないかしら?」

 

「……………空間ゲート…………光る鏡…………?」

 

俺はふと、その言葉に引っ掛かりを感じた。

 

「大士? どうかした?」

 

葵が俺の反応が気になったのか問いかけてきた。

 

「あ、いや、多分気の所為だ………何でもない」

 

俺は気を取り直して目の前の光る鏡を見つめる。

 

「……………何か出てくるような雰囲気は無いが…………」

 

現れただけで、特に何も起きそうにない。

 

「これが空間ゲートだとすれば、迂闊に手を出すのは危険ね。また異世界に飛ばされるかもしれないし………」

 

「優花に賛成」

 

優花がそう言うと葵も同意する。

 

「一先ず、ハジメやユエを連れて来て調べてもらうか? このままほっとくとどうなるか分からないし………」

 

俺がそう言い掛けた時、ダダダッと駆け足の音が聞こえ、

 

「黒騎! 今日も彼女2人と楽しく下校か!? 羨ましいねえこん畜生!!」

 

そんな言葉と共に後ろから突き飛ばされた。

声の主は俺達と同じトータスから帰還したクラスメイトの中野 信治。

常日頃から彼女募集中を公言している非モテ男だ。

なので、複数の彼女が居る俺やハジメを羨ましがっているのだが、ハジメ相手では怖くて手が出せないでいるが、俺に対しては度々やり過ぎない程度にちょっかいをかけてくる。

今回もその手のノリだったのだろうが…………

今回は間が悪すぎた。

 

「うおっ!?」

 

突き飛ばされた俺は前につんのめる。

忘れてはならないが、トータスからの帰還者は、総じて身体能力が高い。

そして俺は、デジソウルこそ使えば身体能力がぶっちぎりで高くなるわけだが、普段は平均成人男性よりも少し高い程度だ。

そんな俺が、常時チート身体能力をもつクラスメイトに軽くと言えど背中から突き飛ばされれば、前に向かって倒れることになるのは自明の理。

その結果、

 

「あっ………」

 

俺は光る鏡に片手を突っ込んでしまった。

その瞬間、

 

「うわっ!?」

 

その鏡に引きずり込まれそうになる。

俺は咄嗟に足を踏ん張ろうとするが、体勢が悪すぎた。

 

「大士!」

 

葵が反対側の手を掴む。

しかし、その時には俺は身体の半分以上を光る鏡に呑み込まれていた。

 

「へっ………? えっ…………?」

 

俺を突き飛ばした中野は何が起きているのか全く理解していない。

 

「ッ…………! 中野っ!! 帰ってきたら覚えておきなさいよ!!」

 

怒鳴るような優花の声が響いたかと思うと、優花は葵と一緒に俺の手を掴む。

 

「大士!」

 

「葵!」

 

「優花!」

 

ドルモン、リュウダモン、ハックモンもそれに続き、俺達は光る鏡に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………あんた達、誰?」

 

気付けば、目の前にピンク色の髪を持った少女がいた。

 

「………………………」

 

俺は咄嗟に辺りを伺う。

すぐ傍には葵と優花。

それにドルモン達も居る。

その事だけでも幾分かホッとした。

だが、周りは明らかに普通では無かった。

黒いマントを纏い、制服と思われる服を着た何人もの少年少女達が並んでいる。

日本ではほぼ見る事の無い草原が広がっている上、背後には石造りの城の様な建物。

 

「………………また異世界召喚か?」

 

俺は今までの経験からそう判断する。

異世界召喚を経験で判断するって、よっぽどの事では無かろうか?

ともかく、そうなると、目の前のピンク色の髪の少女が召喚者だろうか?

 

「大士? 大丈夫?」

 

ドルモンが俺の横に歩み寄ってきて声を掛ける。

 

「ああ、俺は大丈夫だ」

 

俺はドルモンに笑みを向けると、

 

「やったわ!!」

 

突如としてピンク色の髪の少女が叫んだ。

 

「見なさい! 『召喚』に成功したわ! それも3体も! 余計な『平民』もついてきたみたいだけど、とにかくやったわ!」

 

その少女は周りの少年少女達にドヤ顔しながら喜んでいる。

すると、

 

「嘘だろ………? あのルイズが『サモン・サーヴァント』を成功させた………!?」

 

「あの『ゼロのルイズ』が………!?」

 

周りの少年少女達は戸惑いでどよめいている。

だが、俺はその中で聞こえた『サモン・サーヴァント』、『ゼロのルイズ』という単語に耳を疑った。

この世界は、もしや…………

 

「………………………『ゼロの使い魔』かよ………」

 

前世で読んだことのある、アニメ化もされた小説のタイトルを口にした。

となると、このピンク色の髪の少女がルイズか…………

前世ではラノベを代表するツンデレヒロイン(偏見)だった少女だ。

すると、ルイズは俺を丸っと無視し、ドルモンに近付く。

 

「な、何………?」

 

近寄って来たルイズにドルモンは一歩下がる。

 

「えっ……!? アンタ喋れるの!?」

 

「えっ? う、うん………」

 

ドルモンが戸惑いながら頷く。

 

「もしかして韻竜? それにしては獣っぽいし………まあいいわ」

 

ルイズは手に持った杖をドルモンの前で軽く振ると、

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

そう唱え、ドルモンの額に杖を置くと顔を近付けていったので、

 

「待てやコラ」

 

ガシッとその頭を掴んでドルモンから引き離した。

確か今のはコントラなんちゃらとか言う、使い魔のルーンを刻む呪文だった筈。

まあ、デジモンには魔力関係は一切意味を成さないから、ほっといても大丈夫だっただろうが。

とは言え、パートナーに変な事されるのは気分が悪い。

 

「きゃあっ!? 何するのよ無礼者!?」

 

ルイズはそう叫ぶ。

 

「それはこっちのセリフだ! 人のパートナーに何しようとしてやがった!?」

 

「何って、私の正式な使い魔にしようとしただけよ!」

 

ルイズはそう言い返してくる。

 

「ふざけるな! ドルモンを勝手に使い魔なんぞにしようとするな!」

 

「何よ!? 私が召喚したのよ!? 私の使い魔にして何が悪いっていうの!?」

 

「ドルモンは俺のパートナだって言ってんだろうが! 勿論、リュウダモンとハックモンも一緒だ!」

 

俺が言い返すと、ルイズは顔を真っ赤にして、

 

「ミスタ・コルベール! 平民が『コントラクト・サーヴァント』を邪魔しようとしてきます!!」

 

近くに居た教師であろう禿げ頭の男性に進言した。

あの人はコルベール先生か…………

確か小説ではまだ常識人だった筈だが…………

 

「おいおい、ルイズの奴『コントラクト・サーヴァント』を断られてるぜ!」

 

「ははっ! 流石ゼロのルイズ。召喚できても『契約』が出来ないなんてな!」

 

周りはルイズを馬鹿にした雰囲気だ。

 

「ミス・ヴァリエール。私が思うに、その平民達も君の使い魔では無いだろうか?」

 

「そんな………! 彼らは『召喚』に偶々巻き込まれただけで………!」

 

ルイズとコルベール先生が言葉を交わす。

俺はこれ以上流れに任せるのはヤバいと思ったので声を掛けることにした。

 

「お~い」

 

「春の使い魔召喚は、神聖な儀式だ。好むと好まざるに関わらず、召喚された者を使い魔にするしかない」

 

スルーされた。

 

「でも!平民を使い魔にするなんて、聞いたことがありません!」

 

ルイズがそう言うと、再び周りがどっと笑う。

 

「お~い!」

 

「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。彼らは…………」

 

またもやスルーしてコルベール先生は俺達を指差す。

 

「ただの平民かもしれないが、呼び出された以上、君の使い魔にならなければならない。過去、人を使い魔にした話は聞いた事はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。彼らには、君の使い魔になってもらわなくてはな」

 

「おいって!」

 

「そんな………」

 

いくら声を掛けてもスルーされる事に、俺はいい加減頭に来た。

 

「優花。〝威圧〟………! 軽めにな」

 

俺は傍らにいた優花にそう言う。

 

「いいの?」

 

「ああ。どうやらあいつらは俺達を完全に『格下』として見ている様だからな」

 

『ゼロの使い魔』という物語は、トータス以上に『貴族』と『平民』の格差が激しかった筈だ。

つまり、『平民』と思われている間は、『貴族』であるあいつらは話を聞く気は無い。

それなら、無理矢理にでも話を聞いてもらうしかない。

次の瞬間、

 

「………………!」

 

その場に重圧が圧し掛かった。

優花の〝威圧〟だ。

 

「「「「「「「「「「ひぃっ!?」」」」」」」」」」

 

軽めとは言え、実戦経験もない少年少女には厳しかった様だ。

大半が腰を抜かし、意味も分からず怯えている。

腰を抜かさなくとも、突然襲い掛かってきた恐怖に震える者が少数派。

因みにルイズは少数派だ。

だが、

 

「ッ…………!」

 

〝威圧〟が襲い掛かった瞬間にルイズや他の生徒達を庇うように前に立ち、厳しい表情で杖を構えるコルベール先生と、

 

「………………!」

 

恐怖で震える赤髪褐色の少女の前で、身の丈に合わない大きな杖を構える、青髪にメガネをかけた小柄な少女。

この2人だけは別だった。

この青髪の少女がおそらくタバサだろう。

確かコルベール先生は元軍人であり、タバサは幼いころから危険な任務に明け暮れている。

この程度の〝威圧〟には屈しないようだ。

 

「優花、もういい」

 

俺がそう言うと、優花は〝威圧〟を止める。

その瞬間、圧し掛かるような空気が元に戻った。

生徒達は、威圧から解放された事で大きく息を吐く。

そんな中、コルベール先生とタバサだけは未だに警戒を解かなかった。

だが、彼らの意識が俺達に向いた事で、漸く話が出来る。

 

「突然驚かせて悪かったな。だが、こうでもしないとあんた達は俺達の言葉を聞きそうになかったからな」

 

「ッ…………!」

 

コルベール先生は警戒を緩めない。

 

「俺達も突然こんな所に連れて来られて戸惑っているんだ。さっきまでの話から察するに、俺達は『召喚』された様だが、何の目的で俺達を召喚したのか、元の場所に帰れるのか、そう言う事を踏まえて、『対等』な話し合いを申し込みたい」

 

まあ正直、如何いう状況かは分かってるんだが、安易に契約される訳にはいかない。

確か、この世界の契約は、主に対して強制的な好意を持たせ、最終的には主の心と一心同体になるような代物だった筈。

 

「……………………!」

 

「た、対等ですって!? あんた達、私を誰だと………!」

 

「ミス・ヴァリエール! お黙りなさい!」

 

「ッ!?」

 

口を挟もうとしたルイズをコルベールは厳しい口調で諫める。

コルベール先生は先程の威圧で俺達を只者では無いと察している様だ。

 

「…………分かりました。しかし、私の一存では手に余ります。学院長の元へ案内しますので、召喚者であるミス・ヴァリエールを含めた話し合いの場を設けましょう」

 

もっともらしい言い方をしているが、おそらくこの場では大勢の生徒達が居る上、戦力となるのが自身とタバサぐらいしかいない。

それでは生徒全員を護るのは厳しいと感じたのだろう。

よって、この学院の最大戦力でもある学院長の元へ連れて行くことにより、生徒達を危険から遠ざけようというのだろう。

ルイズが居るのは、召喚者本人が居ないのは不自然だし、最悪ルイズ1人だけなら護り切れると思っているのだろう。

まあ、向こうが手荒な真似をしない限り、こちらから手を出す気は無いが。

 

「分かりました。お願いします」

 

俺がそう言うと、コルベール先生は生徒達に向き直り、

 

「皆さん、この後は自習とします。各々の使い魔と親睦を深めてください」

 

そう言うと、生徒達は覚束ない足取りながらも行動を開始する。

 

「では、学院長の元へご案内します」

 

俺達はコルベール先生に続いて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

この学院は五角形に作られており、それぞれの頂点に塔があり、その中心に本塔と呼ばれる一際大きい塔がある。

俺達は、その本塔の最上階にある学院長室へと連れて来られた。

 

「オールド・オスマン。コルベールです」

 

ドアをノックしながら呼びかける。

すると、

 

「入りたまえ」

 

ドアの奥から重々しい声が返って来た。

コルベール先生がドアを開けると、窓の前で手を後ろに組みながら空を眺める髪と髭の長い老人と、椅子に座って書類仕事を熟す緑の髪の女性が居た。

老人がオスマン学院長で、緑の髪の女性がロングビル………しいてはフーケなんだろう。

 

「何じゃね?」

 

オスマン学院長は再び重々しい声でコルベール先生に訊ねると、

 

「はい。今年の使い魔召喚の儀でトラブルが起こりました………」

 

コルベール先生がオスマン学院長の傍に行って小声で説明する。

すると、オスマン学院長が杖を振り、部屋の中にあった机と椅子が浮いて目の前に並べられた。

 

「先ずは掛けたまえ。ミス・ヴァリエールはこちらに」

 

机を挟んで俺、葵、優花とオスマン、コルベール、ルイズが並ぶ形だ。

割と自然にルイズを自分達側にしたな。

 

「先ずは自己紹介をしようかのう。儂はオールド・オスマン。このトリステイン魔法学院の学院長を務めておる」

 

オスマン学院長がそう名乗る。

すると、コルベール先生が一礼をして、

 

「挨拶が遅れました。私はジャン・コルベール。二つ名は『炎蛇』。この学院で教鞭を取らせていただいています」

 

そう名乗った。

すると、

 

「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ! かの由緒正しきラ・ヴァリエール公爵家の三女よ!」

 

ルイズが聞いて驚けと言わんばかりのドヤ顔でそう名乗る。

まあ、普通なら公爵家と聞けば震えあがるのが当然なんだろうが、生憎俺達は普通じゃない。

 

「名乗られたら名乗り返すのが礼儀だな。俺は黒騎 大士。黒騎が苗字で大士が名だ。こっちはパートナーのドルモン」

 

「神代 葵だよ。こっちはパートナーのリュウダモン」

 

「園部 優花よ。パートナーはハックモン」

 

俺達は普通にそう名乗る。

 

「クロキタイシにカミシロアオイ、ソノベユウカ? 変な名前ね」

 

ルイズは馬鹿にしたような口調でそう言う。

 

「これ、ミス・ヴァリエール………!」

 

コルベール先生が諫めようとするが、

 

「文化が違えば使われる言葉も名称も違う。そんな事も分からないのか?」

 

あんまり馬鹿にされ続けるのは癪なのでそう言い返しておく。

 

「何ですって!?」

 

「落ち着きなさいミス・ヴァリエール。名前を馬鹿にしてしまった事は詫びよう。申し訳なかった」

 

オスマン学院長が謝罪を述べる。

 

「謝罪は受け取りましょう」

 

そこまで気にしてないしな。

 

「じゃあ、早速本題に入りたいんだが、俺達がそこの女の子に『召喚』されたという事実は理解した。なら、まず『召喚』した目的を教えて欲しい」

 

俺は分かっているが、葵達も理解した方が良いだろう。

 

「それは私から説明します」

 

コルベール先生が説明する。

 

「先ず、このトリステイン魔法学院では、2年生に進級する際、メイジの一生のパートナーである『使い魔』を召喚する儀式を行います」

 

『一生』と聞いて、葵達はピクリと反応する。

 

「『使い魔』はメイジの力量と属性によって決定すると言われています。『サモン・サーヴァント』の呪文を唱えると、このハルケギニアの何処かに居る使い魔の前に召喚のゲートが現れ、使い魔がそれを通ることによってメイジの目の前に現れ、『契約』を交わす事によって使い魔となるのです。そして本来、使い魔の召喚では人間が呼ばれる事など無い筈なのですが、今回に限ってあなた達が召喚されてしまったのです」

 

「使い魔の役目は?」

 

「主人の目となり耳となる事。主人の望む物を見つけてくる事。主人を護る事。主にこの3つです」

 

「メイジとの『契約』によるメリット、デメリット、契約が解除される条件は?」

 

「メリットは、使い魔は主人の目となり、耳となる能力が与えられます。そして、極稀にですが、特殊な能力が与えられる場合もあります。デメリットと言えるデメリットは無いかと…………そして、契約が解除される時は、使い魔か主人が死ぬときです」

 

「「「…………………」」」

 

まあ、分かっていたことだがメリットは主人基準だな。

使い魔側の事が何も考えられていない。

 

「今の話だけを聞いて判断するなら、『使い魔』になるという話は断らせてもらう」

 

「ッ!? 何でよ!?」

 

「そもそも俺達からすれば、いきなり知らない場所に誘拐されて、知らない奴の奴隷になれと言われてるようなものだぞ。まともな思考の持ち主なら絶対に断ると思うが?」

 

「ラ・ヴァリエール公爵家の三女であるこの私に唯の平民が仕える事が出来るのよ!? 光栄な事じゃない!」

 

「…………あのさ、事ある毎にそうやって家柄や階級を持ち出すのは止めてくれないか? 『対等』に見ようとしても、どうしても下に見ちまうから」

 

俺がそう言うと、

 

「なっ………!?」

 

ルイズは絶句する。

 

「そもそも俺達からすれば、王族やら貴族なんかの階級制度は、とっくの昔に廃れた物で、歴史の教科書に出てくるようなものなんだよ。基本的に皆平等が俺達の国のスタンスで、そんな貴族やら何やらの話を持ち出されても、古臭い風習に拘ってる奴としか思えないんだよ」

 

「ふ、古臭いですってぇ~~!?」

 

「ミス・ヴァリエール、抑えなさい。そちらも余り煽らないでくれんかの?」

 

ルイズが爆発しそうになった所でオスマン学院長が口を出す。

 

「こちらとしては、伝統に則って『使い魔』として契約して欲しいんじゃが………」

 

「さっきも言ったが、俺達には俺達の生活があったんだ。一生仕えろなんて事は御免だ」

 

「じゃが、そうしなければ、ミス・ヴァリエールは留年となってしまうんじゃが…………」

 

「こっちからも言わせてもらうと、そんなのは知ったことじゃない。ちゃっちゃと俺達を元の場所に返して、新しい使い魔を召喚すればいい」

 

出来ないことは分かってるがな。

 

「それは無理なんじゃよ。『サモン・サーヴァント』は召喚した使い魔が死ななければ、新しく召喚することは出来ない。そして、召喚した使い魔を元の場所に送り返す魔法も存在しないのじゃ」

 

「……………改めて聞くと、ふざけた魔法だな」

 

召喚されたら死ぬか奴隷になるかの二択とは。

まあ、俺達は3つ目の選択肢があるが。

 

「まあ、元の場所に帰る事に関しては心配無用だ。その内俺の仲間が迎えに来るだろうから」

 

その言葉にオスマン学院長が目を見開いた。

 

「何じゃと?」

 

「俺の仲間に人探しと空間魔法が得意な奴が居るんでな。時間はそれなりに掛かるだろうが、その内迎えに来ることは間違いない」

 

「むぅ…………」

 

帰れる算段があるとは思いもしなかったんだろうな。

 

「…………だが、条件付きで使い魔の真似事ならしてもいい」

 

「えっ?」

 

「大士?」

 

俺の言葉には皆が驚いたようだ。

まあ、これは俺が前世の記憶の持ち主だから出てきた言葉だが。

 

「条件は、『契約』そのものはしない。期限はこちらの迎えが来るまで。衣食住の保証。主にこの3つだ。この条件で良いなら、使い魔の真似事ぐらいならしてやる」

 

「真似事とは………?」

 

「そこのルイズとやらに付き従い、ある程度の命令は聞き、護る事ぐらいはしよう。勿論、直接命にかかわるような命令や、人の尊厳を踏みにじるような命令は拒否させてもらうがな。何処まで命令を聞くかは、俺達に対する扱いで決める。迎えが来て俺達が居なくなったら、適当に俺達が死んだとでも噂を流せばいいだろう。これなら別にそいつを留年させなくてもいいだろう」

 

「ふむ…………」

 

オスマン学院長は顎髭を撫でながら考える仕草をすると、

 

「その条件に、この学院関係者に危害を加えないという項目を追加しては貰えないだろうか?」

 

そう言って来た。

 

「なるほど…………こちらから危害を加えるつもりは無いが…………常識が違うんだ。変な所で怒りを買って、喧嘩を売られた場合は反撃するぞ?」

 

「その場合は酷い怪我はさせぬよう取り計らって欲しい」

 

「………………ま、いいだろう」

 

その後も細かい条件を突き詰めつつ、話が纏まった時にはすっかりと日が暮れてしまっていた。

 

 

 

 

その夜。

使用人用の寮に部屋を取って貰った俺達は、話し合っていた。

 

「それで? 何で大士は形だけとは言えあの子の使い魔になるなんて言ったの?」

 

優花がずっと気になっていたであろう事を尋ねてくる。

 

「そうだよね。私達なら態々そんな事しなくても、南雲君が迎えに来るまで普通に生きていけると思うし………」

 

葵も不思議そうにそう言う。

 

「まあ、その理由だが、俺の前世の記憶に関係する」

 

「大士の前世?」

 

ドルモンが首を傾げると、

 

「俺の前世の世界にはこんなタイトルのラノベがあった。『ゼロの使い魔』ってな」

 

「ゼロの………」

 

「………使い魔?」

 

リュウダモンとハックモンが揃って首を傾げる。

 

「ああ。異世界のトリステイン魔法学院で落ちこぼれのルイズという少女が、使い魔召喚の儀式で地球の男子高校生の少年を召喚する所から始まるファンタジー小説だな」

 

「それってまさか…………」

 

「ああ。十中八九この世界は、その『ゼロの使い魔』の世界だろう。正確には、それによく似た世界なんだろうけど………」

 

才人では無く、俺達が召喚された時点で別の世界だ。

 

「でも、それが使い魔になる事とどんな関係があるの?」

 

葵がそう聞いてくる。

 

「あ~、その小説は、アニメ化もされてるわけだが、アニメのラスボスはエンシェントドラゴンとか言う完全体デジモンに達するかどうかというレベルのボスだから割とどうでもいいんだが、問題は、ストーリーが原作基準で進んだ時なんだよな」

 

「何が起こるの?」

 

ドルモンが神妙な顔で聞いてくる。

 

「簡単に言えば、この世界のとある国が、地球に侵略してくる可能性がある」

 

「侵略!?」

 

「まあ、この世界の文明レベルなら、地球が負けることは無いと思うが、この世界のルイズは核兵器レベルの魔法を覚える可能性があるから、都市の1つや2つは吹っ飛ぶ可能性がある。物語では未遂に終わったが、もし何かの間違いで日本に最初に攻め入って来たとしたら………そう考えたらな」

 

「そう……大士が使い魔の真似事を引き受けた理由は分かったわ」

 

「それなら、今のうちにその侵略を考えてる首謀者をとっちめたら?」

 

「それも考えたが、まだ侵略してくると決まった訳じゃないから、そこまでする気にはならないな」

 

葵の言葉にそう返す。

 

「じゃあ、暫くは様子見?」

 

「ああ。それから、別に物語に拘るつもりはない。俺達は俺達らしくやっていこうと思う」

 

「そうだね」

 

まあ、好きにやって物語が変わったらその時はその時だ。

そして、それでも地球に侵略してくるつもりなら、その時は最終手段で力尽くで止めるだけだ。

 

 

 

 

 

 

【Side 三人称】

 

 

 

 

 

大士達との交渉が終わった後、オスマンは大きく息を吐いて椅子の背もたれに寄りかかった。

 

「ふいー。久々に疲れたわい」

 

「お疲れ様です。オールド・オスマン」

 

コルベールが労いの声を掛ける。

 

「コルベール君、あの者達の実力をどう見る?」

 

オスマンが真剣な表情で尋ねる。

 

「3人が連れていた使い魔らしき獣たちは、油断さえしなければ何とかなるでしょう………しかし、その3人については分かりません。特に、ユウカと名乗った少女の威圧感は、只者では無いと感じさせました」

 

「そうじゃのう。交渉の最中も、あの女子(おなご)の眼光と来たら、久々に肝が冷えたわい」

 

オスマンは優花の眼光を思い出して大きく息を吐く。

 

「ですが、学院関係者に対して危害を加えない事を条件に入れる事が出来たのは行幸でした」

 

「そうじゃな。まあ、向こうも自分から危害を加えようとは思っておらんかった様じゃがの」

 

オスマンはやれやれと肩を竦める。

 

「コルベール君、早々に問題は起こさないだろうとは思うが、しっかりと眼は光らせておいて欲しい」

 

「はい。分かっております」

 

しかし、2人の心配を他所に、翌日には早々に問題が起こってしまう事を2人は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

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