ありふれた転生者はデジモンテイマー   作:友(ユウ)

98 / 298
第3話 ありふれた喋る剣(インテリジェンスソード)

 

 

 

 

 

優花がギーシュとの決闘という名の遊びを終わらせて戻ってくる。

 

「お疲れ」

 

「優花、カッコ良かったよ」

 

俺と葵がそう声を掛ける。

 

「まあ、『疲れ』るほどでもなかったけどね」

 

そう言いながら優花は槍を宝物庫へ戻す。

 

「優花。今の戦いはもしや……………」

 

ハックモンが何かに気付いたようにそう口にする。

優花は頷き、

 

「ええ、ワザと見せつけるように派手に戦ったわ。ある程度強さを見せつけておいた方が、余計なやっかみを受けなくても済むと思ったの」

 

確かにさっきの戦いは優花らしからぬ派手な戦いだった。

いつもの優花なら、苦無と手裏剣だけで追い込んでクールに勝つのだが、今回はわざわざ接近戦を選び、更にはワルキューレを片手で投げ飛ばし、磔にするという荒業さえ見せている。

まともな思考の持ち主なら、余計な波風は立てないように気を使うだろう。

貴族の子供に(俺達にとって)まともな思考の持ち主がどれだけいるか分からないが。

すると、

 

「な、ななな………何なのよ今のはぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

今まで黙っていたルイズが爆発したように叫び出した。

 

「あら、ご主人サマ。どうかした?」

 

優花は何でもないように聞き返す。

 

「ユウカ! アンタそんなに強かったの!?」

 

ルイズが驚愕の表情で問いかける。

 

「だから言ったじゃない。平気だって」

 

「た、確かにそう言ってたけど…………ギーシュはドットメイジとは言え、軍人の家系の息子なのよ! それをあんな簡単に………!」

 

「これでも俺達は、それなりの修羅場を潜ってるからな」

 

「あの程度の実力なら、下から数えた方が全然早いよね」

 

ルイズの言葉に俺と葵がそう答える。

 

「しゅ、修羅場って…………」

 

「別に俺達は、自分達が弱いとも戦えないとも言った覚えは無いが?」

 

「へ、平民がそんな強いなんて思わなくて………」

 

また平民か…………

 

「何度も言うが、俺達の居た所じゃ貴族も王族も平民も無いんだ。確かに唯の庶民の生まれだが、それだけで人間の全てが決まるほど短絡的な考えは持ってないんだよ」

 

「それに、魔法が使えるのが偉いっていうのなら、私と葵は使えるけど?」

 

「へっ?」

 

優花がそう言うと、右手の先に炎を灯す。

 

「あ、あんた達、貴族だったの!? って言うか、詠唱と杖は!?」

 

だから貴族も平民も無いって何度言えば………

って言うか、そう言えばこの世界の魔法使いは、杖持ってないと魔法使えないんだったか………

 

「優花が使う魔法は、こことは違う場所で発展した魔法体系のものだ。まあ、本来は詠唱は要るし、杖の代わりに魔法陣が必要だが、優花は特殊な技能を持ってるから、その2つは省略できるんだよ」

 

まあ、言っても分からんだろうが…………

 

「も、もしかして先住魔法!?」

 

「いや、違うって」

 

「で、でも、始祖ブリミルが与えて下さった系統魔法以外に、魔法が存在するなんて………!」

 

あ~、この世界は始祖ブリミルとやらに心酔してるからなぁ……

 

「このハルケギニアに広まっている系統魔法は、確かにその始祖ブリミルとやらが広げた魔法なんだろう。だが、それはあくまで魔力の使い方の1つに過ぎない。魔力を別の方法で使おうとした人物が居ないと何故言い切れる?」

 

「そ、そんなの異端認定を………」

 

「自分が知るもの以外を認めない。さっきも言ったが、そう言う考えも人の可能性を潰す要因の1つだぞ」

 

「ッ……………!?」

 

「ま、俺達には関係無いから好きにすると良いさ」

 

何か説教臭くなってしまったので、俺はそう言って話を切り上げた。

 

 

 

 

 

その日の夕方。

シエスタに声を掛けられ、俺達が厨房へ顔を出すと、

 

「おお! 来たか! 『我らの槍』達よ!」

 

料理長のマルトーさんがそう叫びながら出迎えた。

その言葉に、

 

「『我らの槍』?」

 

「何それ?」

 

優花と葵がそう零す。

俺はそれを聞いて、そう言えば原作主人公の才人は最初、剣でギーシュを倒したから、『我らの剣』と讃えられていた事を思い出した。

優花は槍を使ってギーシュを圧倒したら『我らの〝槍〟』になったんだな。

 

「当然よ! 女でありながら槍1本で貴族に勝った者! 俺たち平民からすれば英雄だぞ!」

 

マルトーさんは興奮しっぱなしである。

 

「英雄って言われても………私はただ、あの色男の言い分が気に食わなかっただけだし………」

 

優花は困惑の表情を浮かべながら呟く。

 

「聞いたかお前ら!」

 

それを聞いたマルトーさんは、厨房の全員に聞こえるように大きな声で叫んだ。

 

「真の英雄とはこういうものだ。己の成した偉業を誇ったりはしない! 見習えよ! お前ら! 英雄は誇らない!」

 

「「「「「「「「「「英雄は誇らない!」」」」」」」」」」

 

厨房の中のコック達が一斉に唱和する。

気持ちが高ぶっているコック達は、優花の反応をただの謙遜としか思っていない。

 

「た、大士………」

 

優花が救いを求める様な視線を俺に向けてくる。

そうは言っても、今の彼らは何を言っても優花を称えるだろう。

とりあえず落ち着くまで我慢しろとしか言えなかった。

 

 

 

 

 

 

この世界に召喚されて、1週間近くが過ぎた初めての虚無の曜日。

 

「王都に行く?」

 

突然訪ねて来て王都へ行くと伝えた俺達に、ルイズはそう聞き返してきた。

 

「ああ、如何いう所かはちゃんと見ておきたくてな」

 

俺はそう言うが、本当の目的はデルフリンガーを手に入れる事だ。

魔法を吸収する能力を持つデルフリンガーは、魔法至上主義のこの世界では役に立つ。

簡単に言えば、魔法そのものに対処する術がない俺の護身用だ。

ぶっちゃけ魔法に耐える事は出来るが、痛い事には変わりないので好き好んで魔法を受けたくは無いのだ。

ガンダールヴでは無いので、持ち主として気に入ってくれるかは分からないが、虚無の使い手であるルイズのアドバイザーぐらいにはなるだろうという考えだ。

因みに代金は、宝物庫の中にいくつか入っている、ハジメが錬成の練習の過程で作り上げた純度の高い金や銀などの鉱石を売ろうかと思っている。

すると、

 

「わ、私も行くわよ!」

 

ルイズはそう言って来た。

俺達が、何で? と首を傾げると、

 

「わ、私はあんた達のご主人様なんだからね! 必要な物があるなら買い与えてあげるわよ!」

 

正直、貴族の感覚しか持たないルイズが来てもあまり意味は無いだろうと思っていたが、お金を出してくれるならありがたいと思ってその申し出を受けることにした。

 

「わかった。そう言う事なら頼む」

 

俺はそう頷く。

 

「それなら急がないとね。王都まで馬で3時間もかかるんだから、ぐずぐずしていたら帰ってくる前に日が暮れちゃうわ。馬も早く借りて来なきゃ………」

 

ルイズはそう言って立ち上がる。

だが、

 

「ああ、移動手段に関しては心配しなくていい」

 

「えっ?」

 

そう言った俺の言葉に、ルイズは声を漏らしたのだった。

 

 

 

 

 

 

学園の敷地の外に出ると、

 

「移動手段って何なのよ。何も無いじゃない!」

 

ルイズはそう言って来るが、俺はそれを無視して宝物庫の指輪を前に掲げる。

すると、目の前に魔力駆動四輪が現れた。

ルイズは目を丸くしてそれを見つめる。

因みにこの魔力駆動四輪は、トータスで使っていたモノとは別物だ。

ハジメが旅の後半で仲間が増えてきたために、新たに魔力駆動四輪を作っていたのだが、使う前に飛空艇フェルニルが完成したためにお蔵入りになっていた物をハジメが改良し、譲り受けたのだ。

因みに改良の点だが、俺でも動かせるように魔晶石に魔力を溜めて、その魔力で動くようにしている。

空気中の魔素を取り込んで魔力に変換しているので、魔素の多い世界なら勝手に魔力が充填されていくようになっている。

勿論、優花や葵が直接魔力を送り込む事も可能だ。

後は、内蔵された各ギミックを動かすために、特定部位に魔力を送るのではなく、ハジメの趣味によって運転席の色んな所にレバーやら隠しスイッチやらが追加されている。

 

「な、何なのよこれぇーーーっ!?」

 

当然ながら、ルイズは叫ぶ。

 

「簡単に言えば、馬無しで動く馬車の様な物だ」

 

俺は簡潔に答える。

 

「とりあえず乗ってくれ。分かる事なら行きながら説明してやる」

 

そう言って俺は運転席に。

前の席には葵とルイズが乗り、後ろには優花とデジモン達が乗る。

アクセルを踏んで車を走らせると、その快適さにもルイズは驚いていた。

 

 

 

 

 

約一時間後。

 

「………………信じられないわ…………馬で3時間は掛かる所を、たった1時間足らずで着くなんて…………」

 

ルイズは呆然と呟く。

魔力駆動四輪は、目立たないように王都から少し離れた所で止めて、宝物庫の中にしまった。

そこから歩いて王都の門を潜ると、やはり中世世代の街並みが広がっていた。

 

「おぉ~~………!」

 

俺は感嘆の声を漏らす。

トータスの街並みに似ているが、やはり何処か違う。

そんな俺の感嘆の声を聞いて、ルイズは自慢げな顔をすると、

 

「どう? ここがトリステイン王国の首都である王都よ!」

 

驚いたでしょ?と言わんばかりにそう言った。

 

「あ~………自慢げになってる所悪いが、俺達の居た場所の都市はもっとデカいからな? 俺が声を漏らしたのは、古代遺跡や、古い町並みが残る場所なんかを見た感覚に近いからな」

 

俺は一応そう訂正しておく。

 

「こっ、古代遺跡………!」

 

ピキッとルイズの額に青筋が浮かび上がるのが分かった。

ルイズはギリギリで怒りを抑えると、

 

「ま、まあいいわ。それで? 行きたい場所は何処?」

 

怒りで僅かに声を震わせながらもそう問いかけてくるルイズ。

 

「まあ基本的に生活必需品が売ってる所なんかの場所……………後は、最後で構わないが武器屋を覗いておきたい」

 

「武器屋?」

 

「もしかしたら、掘り出し物があるかもしれないからな」

 

「そう? ま、いいけど………あの乗り物のお陰で時間に余裕もあるしね」

 

そう言ってルイズの案内で街を回っていく。

食料品が売ってる店や服屋、酒場なんかの場所も含めてルイズに案内してもらう。

昼食を店で摂り、午後も同じように街を見て回った。

そして、空がオレンジ色に染まって来た頃、

 

「……………思ったよりも時間かかっちゃったわね………」

 

ルイズがそう呟く。

今は最後の目的地である武器屋を目指していた。

 

「ピエモンの秘薬屋の近くだったから、この近くなんだけど…………」

 

ピエモンと聞いて、思わずあの道化師の様な究極体デジモンを思い浮かべてしまう俺。

 

「あ、あった」

 

ルイズは剣の看板が吊り下がった店を見つけると呟く。

羽扉を開け、武器屋に入ると店主が話しかけてくる。

 

「旦那。貴族の旦那。うちは真っ当な商売してまさあ。お上に目をちけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや」

 

その言葉を聞いて思った事は、本当に真っ当な商売をしているならそんな言葉は出てこないだろうという事だった。

すると、ドルモン達に気付いたのか、驚いた顔をする。

 

「客よ」

 

ルイズは腕を組んで言う。

 

「こ、こりゃおったまげた。貴族が剣を!おったまげた!」

 

店主は何とか表情を取り繕いつつ話を繋げる。

 

「どうして?」

 

「いえ、若奥様方。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる。と相場はきまっておりますんで」

 

「使うのは私じゃないわ。使い魔よ」

 

「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も剣をふるようで」

 

小説で読んだ時も思ったが、本当に胡散臭い店主だな。

店主は全員に目配せをして、それから視線を俺に戻し、じろじろと眺めて来る。

 

「剣をお使いになるのは、この方で?」

 

俺を見て店主はそう言った。

まあデジモン達は元より、葵も優花も、序にルイズも、一見しただけでは剣を振る様には見えないだろう。

 

「私は、剣のことなんかわからないから。適当に選んで頂戴」

 

ルイズがそう言うと、店主はいそいそと奥の倉庫に消えた。

 

「………こりゃ、鴨がネギしょってやってきたわい。せいぜい、高く売りつけるとしよう」

 

そんな事を呟いていたようだが、優花の耳にはしっかりと入っていたりする。

それから店主は、1メートルほどの長さの細身の剣を持って現れた。

そして、店主は思い出すように口を開く。

 

「そういや、昨今は宮廷の貴族の方々の間で下僕に剣を持たすのがはやっておりましてね。その際にお選びになるのが、このようなレイピアでさあ」

 

「貴族の間で、下僕に剣を持たすのがはやってる?」

 

ルイズが尋ねると、店主はもっともらしく頷いた。

 

「へえ、なんでも、最近このトリステインの城下町を、盗賊が荒らしておりまして・・・・」

 

「盗賊?」

 

「そうでさ。なんでも、『土くれ』のフーケとかいう、メイジの盗賊が、貴族のお宝を散々盗みまくってるって噂で。貴族の方々は恐れて、下僕にまで剣を持たせる始末で。へえ」

 

「ふ~ん…………どう?」

 

ルイズは店主の話に興味は無い様で、俺にそう聞いてくる。

俺はそのレイピアを持って軽く眺め、

 

「何の変哲もない唯のレイピアだな。これは要らんな」

 

それからキッパリとそう言った。

元から欲しい剣は決まっている。

向こうから声を掛けてくれれば話は早いんだが…………

 

「俺が探してるのは掘り出し物だ。もっと珍しい剣は無いのか?」

 

俺がそう言うと、店主は小さく舌打ちし、「素人が!」と呟きながら店の奥へ消えて行く。

今度は俺にも聞こえたぞ。

少しすると、今度は立派な剣を油布で拭きながら、主人は現れた。

 

「これなんかいかがです?」

 

見た目は見事な剣だった。

1.5メートルはあろうかという金色の大剣だった。

柄は両手で扱えるように長く、立派な拵えである。

ところどころに宝石が散りばめられ、鏡のように諸刃の剣が光っている。

見るからに切れそうな、頑丈そうな剣であった。

 

「店一番の業物でさ。貴族のお供をさせるなら、このぐらいは腰から下げて欲しいものですな。と言っても、こいつを腰から下げるのはよほどの大男でないと無理でさあ。やっこさんなら、背中にしょわんといかんですな」

 

「素晴らしい剣だわ!」

 

ルイズは満足そうに絶賛するが、俺達は逆に冷めた目でその剣を見ていた。

 

「…………馬鹿にしてるのか? こんなのどっからどう見ても観賞用の装飾剣じゃねえか! 武器としてならさっきのレイピアの方がまだマシだ!」

 

俺はその剣を一目見てそう言う。

原作の才人は、何でこんなもの見て欲しくなったのだろうかと不思議に思う。

 

「そうね、こんなに宝石を埋め込まれてちゃ、剣の強度自体も落ちるだろうし」

 

「私もこんな目立つ武器は、戦場じゃ振りたくないなぁ………」

 

優花と葵も評価は最悪だ。

 

「俺が欲しいのは『武器』だ。見てくれだけの『飾り』じゃないんだよ!」

 

俺は店主に向かってそう言う。

店主は慌てた様に取り繕い、誇る様に話し出した。

 

「コイツを鍛えたのは、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿で。魔法がかかってるから鉄だって一刀両断でさ。ごらんなさい、ここにその名が刻まれているでしょう?」

 

店主は柄に刻まれた文字を指差した。

 

「だからなんだ? 魔法がかかっていようが何だろうが、この剣は武器としては鈍らだ。俺が信じるのは『魔法』なんかじゃなく、職人が『魂』を込めた『技術』で作り出した逸品だ。それでも魔法が凄いというのなら、その職人が魂込めて作り上げた逸品に魔法を掛けた方が遥かに良い武器になるだろう」

 

俺は店主を睨み付けながらそう言う。

 

「うぅ…………」

 

店主は二の句が告げなくなって言い淀んでいる。

すると、

 

「おでれーた、おでれーた。坊主、おめぇ見る目あるな」

 

いきなり男の低い声がした。

店主は頭を抱えている。

俺はもしやと思ってその声がする方に顔を向けた。

しかし、そこには乱雑に剣が積み上げられているだけだ。

俺はそこに近付き、錆びの浮いた1本の片刃の剣を取り出す。

 

「こいつか…………?」

 

「おおっ、一発で俺っちを見つけるたぁやるじゃねーか」

 

その剣が鍔をカチカチと鳴らしながらそう喋る。

 

「それって、インテリジェンスソード?」

 

ルイズがそう言う。

 

「やいデル公!商売の邪魔すんじゃねえ!」

 

店主が剣に向かって怒鳴る。

 

「けけけ………商売の邪魔って、この坊主はそのなまくらを見破ってたじゃねえか………ほ~う。坊主、おめぇ、何度も修羅場を潜って来たみてえだな。その歳でてーしたもんだ」

 

その剣はかなりの年季が入っており、所々に錆が浮いている。

だが、この剣こそ俺達が探していた剣だ。

 

「俺は黒騎 大士。お前、名前は?」

 

俺がそう聞くと、

 

「俺っちはデルフリンガー様だ!」

 

偉そうにそう名乗る。

だが、何処か気持ちのいい喋り方だ。

 

「そうか…………お前、俺の相棒にならないか?」

 

「オメーのか…………! まあいいぜ。一発で俺っちを見抜いたんだ。そんじょそこらの剣士よりかは面白そうだ! よろしくな相棒!」

 

本人(本剣?)の許可が貰えた俺は、

 

「ご主人サマ、こいつが欲しい」

 

ルイズの方を向いてそう言った。

 

「え~~~?そんなのにするの?もっと綺麗で喋らないのにしなさいよ」

 

ルイズはデルフリンガーを見ながら嫌そうにそう言う。

 

「いいんだよ。俺が欲しかったのはこういう珍しい剣だ。少なくとも、そっちのゴテゴテの装飾剣よりかは遥かに良い剣なのは保証するぞ」

 

「けけけ、分かってるじゃねえか相棒!」

 

俺の言葉にデルフリンガーは気分良さげにそう言った。

俺の言葉に折れたのか、ルイズは仕方なさげに店主の方を向き、

 

「あれ、おいくら?」

 

値段を聞く。

 

「あれなら100で結構でさ」

 

「安いじゃない」

 

「こっちにしてみりゃ、厄介払いみたいなもんでさ」

 

ルイズが金額を払うと、

 

「まいど」

 

店主は気前良く愛想笑いをした。

剣を取り、鞘に納めると俺に手渡してくる。

 

「どうしても煩いと思ったら、こうやって鞘に入れれば大人しくなりまさあ」

 

俺はデルフリンガーを受け取る。

 

「どうも」

 

俺はそう言うと、デルフリンガーを軽く鞘から抜いて喋れるようにしてやる。

 

「おう! ありがてえな! いつもの使い手なら煩いと鞘に押し込まれてる所だ」

 

デルフリンガーは機嫌が良さそうな声色でそう言った。

俺達は店を出ると、日が沈みかけており、東の空は暗くなりかけていた。

 

「思ったよりも時間がかかっちゃったわ。早く帰らないと!」

 

ルイズが空を見ながらそう言う。

俺達は急ぎ足で王都の門から出ると、魔力駆動四輪を取り出す。

正直優花に空間魔法を使ってもらった方が速いのだが、こんな所で手札を見せるつもりはない。

行きと同じく、宝物庫から魔力駆動四輪を出してそれに乗り込む。

それから走り始めると、

 

「おでれーた! 何だこの乗り物!? 俺っちも6000年ぐれぇ生きてるが、こんな乗り物は初めて見るぜ!」

 

助手席に座る葵に持ってもらっているデルフリンガーが驚いた声を上げる。

 

「そりゃそうだろ。元々は異世界の乗り物なんだ。ま、こいつはその乗物を魔力で動くようにアレンジしてある物だけどな」

 

俺はハンドルを握りながらそう言う。

すると、

 

「異世界ってどういう事よ?」

 

俺の言葉が気になったのか、ルイズがそう言ってくる。

 

「俺達はこの世界とは違う、全く別の世界から召喚されたんだ。魔法じゃなく、『科学』という技術で発展してきた世界だ」

 

「そんなの信じられないわ」

 

俺の言葉にルイズはそう言う。

 

「そりゃそうだろう。言っても信じてくれないと思っていたから言わなかった。別に信じてくれなくてもいい。使い魔の戯言と思って聞き流してくれ」

 

説明するのは面倒なので、俺はそう言ってその話を打ち切る。

 

「そういやデルフ」

 

正式名称を呼ぶのは長いので、略してそう呼ぶ。

 

「何だ、相棒?」

 

「お前、さっき6000年前から生きてると言っていたが、それホントか?」

 

俺は一応確認を取る。

 

「あ~、はっきりとは覚えてねえけど、確かそんなもんだ」

 

「それこそ信じられないわ。6000年前って言ったら、始祖ブリミルが降臨した時代じゃない」

 

ルイズがデルフの言葉に文句を言う。

 

「ブリミル? ん~~~どっかで聞いたような気が…………忘れた」

 

「なにそれ」

 

その言葉にルイズが呆れる。

すると、

 

「それにしても剣が喋るなんて、ファンタジーにも程があるわね」

 

優花がそう言ったので、

 

「何言ってるんだよ? 剣じゃないけど、魂が無機物に宿っている所なら、俺達は既に見てるだろ?」

 

俺はそう答える。

 

「えっ………?」

 

優花は一瞬分からなかったようだが、

 

「あっ! もしかして、ミレディ?」

 

葵が気付いたようにそう聞いてくる。

 

「ああ。ミレディの場合はゴーレムの核に魂を宿らせていたが、理屈はおそらく一緒じゃないか?」

 

俺はそう推測する。

 

「なら、もしかしたら〝魂魄魔法〟で干渉できるかもね」

 

優花の言葉に、

 

「じゃあ試してみるね!」

 

葵が目を瞑って魂魄魔法を行使。

デルフが淡い光に包まれる。

 

「何………この光………?」

 

「おおっ!? 何だ何だ!?」

 

ルイズとデルフが驚いた声を漏らす。

すると、

 

「ああ、あ~、あ~! 思い出した思い出した! そういやそうだったぜ!」

 

突然デルフが声を上げる。

 

「嬢ちゃん、俺を抜きな」

 

葵にそう言うと、葵は鞘からデルフを引き抜いた。

すると、錆びだらけの刀身が輝く。

 

「こ、今度は何!?」

 

ルイズが叫ぶと光が収まっていく。

そして、改めてその刀身を見たルイズは絶句した。

何故なら、そこには先程の錆びだらけの剣は無く、磨き抜かれた輝く刀身を持つ剣があったからだ。

 

「これがほんとの俺の姿さ! 相棒! いやぁ、てんで忘れてた! そういや、飽き飽きしてたときに、テメエの体を変えたんだった! なにせ、面白いことはありゃあしねえし、つまらん連中ばっかりだったからな!」

 

「………なっ? 言った通り掘り出し物だっただろ?」

 

俺はルイズにそう言った。

尚、葵が言うにはデルフの魂の奥底にはまだ封じられた記憶があるが、それを無理に思い出そうとすると、デルフの魂が砕ける可能性があると言われたので、それ以上の追及は止めておいた。

 

 

 

 

 

 

学園に戻った時にはすっかり暗くなっていた。

学園の敷地に入る前に魔力駆動四輪を降りて宝物庫にしまう。

 

「ずっと思ってたけど、便利ねそれ」

 

一応ルイズに道すがら宝物庫の説明も軽くしていたので、今更物が消える事に驚きは無い。

 

「言っておくがやらねーからな。それ以前にこれは俺以外には使えねーからな」

 

「分かってるわよ………」

 

そう言うルイズだが、その表情は何処かガッカリしていた。

その時だった。

 

―――ドゴォォォン!

 

と、いきなり爆音が響く。

 

「これは爆発音? いや、打撃音か!?」

 

俺はそう言う。

優花がすぐに感知技能を最大にすると、

 

「学園の本塔の近くに何か居るわ!」

 

そう叫んだ。

俺達が本塔に向かって駆け出すと、やがて暗がりの中に20メートルほどの巨大な土ゴーレムが学園の本塔から離れて行く姿が見えた。

 

「ゴーレム!?」

 

ルイズが叫ぶ。

原作通りフーケのゴーレムが『破壊の杖』を奪った様だな。

だけど、確かルイズの爆発で罅が入った所を狙ってようやく宝物庫の壁を壊してた筈。

だったらこのままほっとけば何も出来ずに終わるのではないかと思っていたんだが、本塔の壁には見事な大穴が空いている。

 

「何でっ!?」

 

俺は思わず叫んでしまった。

原作よりフーケのゴーレムが強かったのか?

そう勘ぐった時、

 

「…………あっ!」

 

優花が気まずそうに声を漏らした。

俺は思わず振り向く。

 

「どうした?」

 

すると、

 

「…………あそこ、私があの色男と決闘した時に槍を投げつけた場所だわ………」

 

「………………あっ!」

 

俺も思い出した。

確かに優花はあの辺りにワルキューレを投げつけて槍で磔にしていた。

まさかその時の影響がこんな所で出るなんて…………

ゴーレムはそのまま歩いていくと、草原の真ん中あたりで崩れて唯の土の小山となった。

すると、空から青い竜が降りてくる。

 

「ヴァリエール! 何でこんな所にいるのよ?」

 

青い竜の背中からキュルケが顔を出す。

その隣には青髪の少女、タバサの姿もある。

って事は、この青い竜はシルフィードか。

 

「ツェルプストー! アンタこそ!」

 

ルイズがそう叫ぶと、

 

「私達はいきなり大きな音が響いてきたから様子を見に来ただけよ」

 

キュルケがそう言うと、

 

「わ、私達は王都に買い物に行った帰りよ」

 

ルイズもそう答える。

 

「で? 結局何だったわけ、あのゴーレム?」

 

「…………宝物庫」

 

キュルケの問いにタバサが穴が開いた壁を指差す。

 

「盗賊って事?」

 

「おそらく…………」

 

キュルケの言葉にタバサが頷くと、

 

「っていうか、誰よその子?」

 

ルイズがタバサを見ながらそう言った。

 

「私の友達よ」

 

キュルケがハッキリとそう言う。

 

「あんた友達居たの?」

 

「失礼ね。何処かの『ゼロ』とは違うのよ」

 

「ッ…………!」

 

キュルケの言葉にルイズは青筋を浮かべる。

俺はそんなやりとりを見ながら、フーケをどうするか考えるのだった。

 

 

 

 

 





ゼロ魔クロスの第3話です。
今回はデルフリンガーとの出会い。
デルフリンガー無くても良いかなとは思いましたが、あれば便利なんで結局持たせることにしました。
尚、当初の考えでは、このまま武器屋に置き去りにしてフェードアウトというルートも考えていました。
次回はVSフーケ編。
お楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。