ミノフスキー粒子なんて、オカルトチックなっ?! 作:丸亀導師
人の夢、それはいつも不可能という言葉を可能というものに塗り替えてきた。
人は不可能というものが極めて嫌いな生き物であり、出来ることならば全てを可能にしたいという欲がある。
だが、人という生き物は不完全なもので、一人ではそれを乗り越えることは不可能である。
一人で乗り越えることが不可能という事象は、結局のところ最後に解決される難問であろう。
であるがゆえに、人というものは共に手を携え前へと進んでいく。それは横へもそうだが、縦。即ちバトンのように続いていく技術もそうであろう。
積み重ねがあるからこそ、それは前に進む。
では、積み重ねが存在しない技術…例えば最初のコンピューター、それはどうして出来たのだろうか?
恐らくは面倒臭がりが、面倒臭い仕事(計算)をしないために作り出したのだろう。
0から創り出すというのは非常に難しいことだ、それこそ0という概念が出来る前の計算と同じくらいには難しい。
さて、マイケルが行おうとしていることは要するにそう言うことだ。
その理論は言ってしまえばオカルトで、フィクション上にしか登場せず。実現しようとすれば、宇宙を揺るがすほど莫大なエネルギーを必要とする。どれをとっても不可能に近いもので、正直に言えば無理なものが殆どだろう。
ここまで来ていったい何を言っているのだろうか?と思う読者もいることだろう、実際そうだ。
〈なんでそんな話をするのか?さっさと物語を進めろ!〉
と思う方もいるでしょう。しかし、私がなぜこれを記すのかと言えば、マイケル・スパロウ。
彼が当時どういう発想でその理論に至ったのか、今ですら謎に満ちている。
彼がやろうとしたことは、現代の我々にとっては極当たり前となった、恒星間航行の技術。
その最初に必要となった技術。空間への干渉とワームホールの発現及び安定化。
彼はその数式を一人で解き、そしてそれを元に巨大なリングの建造計画を始めた。その直径は凡そ6.4キロ、全長170mの、直径だけは旧時代の円筒型コロニーの基本サイズと同じものである。
今となれば船単体に存在しているそれは、今では超長距離用に使用されている大型のワープゲートの構造であり。ワープ装置の原器。
彼がどういう仮定でそれを思い付いたのか、我々には到底理解出来ないであろうが、ブレイクスルーであったのは間違いない。
それと、時を同じくして亜光速航行技術であるミノフスキードライブ原器が開発されていたのだから、正しく現在の我々の勢力図の拡大に最も貢献したものだろう。
〈帰還から二年後〉
~マイケル~
行き詰まっている…ここはどうすべきか?閃きが必要か?斬新な発想か?う~ん、こう言うときは別のことをやっていればいいのかな?さて、じゃあサイコフレームの解析あれの手伝いにでも行くとしようか?
材料開発部はこっちだったな、おおいたいた皆気難し顔をしてサイコフレームの解析、どこまで行ったのだろうな?
『やあ、解析は順調かな?少し資料を見せてもらいたいな。』
「これは所長、それが順調とは言い難いですね。」
『ほお』
これがサイコフレームね、金属粒子並みに小型化されたコンピューター素子。我々の技術体系に無いものか…古い記憶の中で、確か…UCの技術だった筈だ。
向こうはクローン技術でも我々とは大差無い場所まで言っていた筈なのだが、どうしてこちらはこんなにも遅れているんだろうなぁ。
『それで、何がどうして解らないんだ?』
「それがですね、これ造り出すには先ずはこの素子と同じ効果のものを創らなければならないんですが、何より意味が解らないのは…かってに発光するんです。」
『かってに発光する?というと?電気を通さないにも関わらず化学反応の類いでもなく、発光するのか?』
ええ。
と言って再びそれに目を向ける。
確かにほんのりとエメラルドグリーン色に輝いている。
『美しいな…だが君達は先にこれの原器を造った方が良いその後でも解析する時間はある筈だ、たとえそれが20年30年後だとしても、人類の進歩に変わりはない。近道は遠回り、急ぐほどに足を取られる。なに、私も考えてみよう気分転換にね。』
発光現象の理由は正直いってわからない、だが厄介なものではあるな。だが、逆に言えばこれを上手く利用できれば、よりNTというものの立証をやり易くなるし、何よりMSの強度は増す。技術の応用によって。そうだ。
『もしかすると人の思念だとか、脳波に反応しているのかも知れないな。だとすると。ガンバレルの技術は確かドラグーンというものに置き換わっているそうだね、あれは確か脳波コントロール技術だったか?
だが、確か負担が大きかった筈だ。共同研究してみてくれ、何かわかるかもしれない。』
「あ、そう言えばお嬢さんが来てますよ?仕事で忙しそうですと言ったら、夕飯で話をすると言ってました。
何やら込み入った事情があるようです。」
あの娘が、軍に勤めていても最はこの街に近い基地にいるから、月に一度帰ってきてくれる。そんな貴重な時間に何を言うのだろうか?
『ありがとう、励めよ!』
そうか、今日は早めにあがるとしようか。
さて、古風な黒板に書く訳にはいかないからな、ホワイトボードの方へ少し仮説とそれに伴う計算式でも書いて、行くか暇つぶしに。
~コゼット~
は~やっぱり我が家は落ち着く。
そう思ってリビングのソファーにドカッと座る、テーブルの上に置いてある小包に入ったお菓子を手にとって包みをクルクルと取った所で気が付く。私が家に招待した人が、ものすごく緊張していることに。
『ほら、そんな緊張してたら父さんが帰ってきたときには、気絶しちゃうよ?』
「そ、そうなんですけどこんなに寛いでしまっても良いものなんでしょうか?」
まだ母さんも帰ってきてないし、妹はカレッジに行っていて家にはいないし、暫くはのんびり出来るかなぁ~。
『そう言えば、父さんとあった事無かったっけ?母さんとはピアノの話で盛り上がってたのは知ってるけど。』
「はい、アイナさんは凄い人ですね。ショパンの舟歌をあんなにも美しく弾けるなんて、正直感動しました。コンクールでも優勝出来そうなのに、どうして本職にしないのか疑問に思うほどです。」
私には到底不可能な事ね、料理は父に似ず料理人顔負けの腕はある筈だけど、音楽は父に似て機械的だからなぁ。
『本職と趣味は分けた方が良いって言ってたから、よっぽど研究が好きだったから二番目って感じでやってたけどね。でも、私はアナタの方が好きだけどねぇ。』
頬を紅く染めちゃって、かわいい。
「ただいまぁ~」
母さんが帰ってきた、
『お帰り、父さんは?』
「車を置いてくるって駐車場にいってる。この靴誰の?」
『それは父さんが来た後で!』
母さんがリビングに来ると、直ぐに誰か解ったように挨拶を始めた。そして、玄関のドアが開く。
父がリビングへとやってくる。
「ただいま、君は誰だ?」
「は、初めまして。コゼットさんと、同じ職場に勤めています。ニコル・アマルフィと言うものです。いつも、コゼットさんにはお世話になっております。」
『ニコル…ニコルはね、私の彼氏なの。』
急激に空気が冷え込んでいく、父の後ろから何やらオーラのようなものが見える。
「ニコル君と言ったか、少し二人で話をしよう。母さん、コゼットがこちらにこれないようにしておいてくれ。」
とてつもない威圧感だ…ニコル大丈夫かな。
「心配しなくても良いと思うよ?ただ、確かめたいだけだと思うから。」
『何を?』
「命の大切さを。」
数分後帰ってきた二人は何かあったようだが、互いに笑い話をするような感じで意気投合していた。
それから数ヶ月後私とニコルは結婚した。
それから子供も出来て、長い長い時間が流れる。そんな中でも、父は研究に没頭し人生で始めて自らその理論を発表する時が来た。
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