強キャラ感を出したいがために   作:ナラカナ

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 殺生丸の子供ときいて、犬夜叉熱が再び滾り寄せた次第です。



第一話 傭兵の男

 

 とある守護大名の位を授かっていた男は、この地に蔓延る問題について頭を悩ませていた。順調満帆に力を付け続け、成り上がりの一途を辿ると待ち望んでいたものの、それが思わぬ存在によって足止めされている事実に歯痒い事も感じていた。

 

「お館様、そろそろ…討伐隊が帰還なされる刻でございます」

「そうか…」

 

 家来による報告の声は、男にとってもはや陳腐な響きにしか聞こえなかった。何度も腕の立つ傭兵や大量の兵士を送り込んだとしても、帰還してくるのは手負いの者達。悪ければ誰一人戻ってくることは無かった。

 

 鬼達が棲む、山の暗い麓。その鬼達は人間の味を気に入っているのか、ここら一帯の村人達を攫っては喰い殺していた。例え襲いかかる鬼を退治したとしても、麓にいる鬼の頭を狩らねば、一生繰り返されるだけである。

 だが、鬼を殺す事ができる人間は極一部でしかない。徳の高い坊主、妖怪退治屋。だが魑魅魍魎の世に仕事を請け負う者にも数の限度がある。

 順番を並んでる間に城諸共、鬼に喰い尽かされるだろう。

 

 もし彼等がいれば。

 

 手が足りない状況で思い出すのは男の命によって葬られた、七人隊と呼ばれた傭兵部隊。七人で

百人の働きをすると喩えられるほどに破格の戦闘力を持った者達だった。

 残虐さに恐れを成して殺めたものの、彼等が生きてるのであれば、鬼を殺す事もできただろう。

 

「お、お館様!!大変でございます!」

「何だ…今回も全滅か?」

 

 慌てて駆け寄ってくる家来を横目に、男は鬼を如何にして退治するか、頭ごなしに考えていた。

 

「なっ…」

 

 しかしある者が姿を現したことにより、苦悩の時間は無要になる。

 

「そ、その手に持っているものはまさか」

「頭領の首だ。こいつが、鬼を産んでいた」

 

 南蛮由来なのかわからない鉄の兜を被り、甲冑を纏った巨男。背には長巻と呼ばれる、細長い刀を背負っていた。

 そしてその男が手に持っていたのは、村を襲う鬼とは人一倍大きい鬼の頭。その表情から苦悶が表れており、今も尚首からは血が滴っていた。

 

「な、何と…!!」

「獲物は狩ったんだ。褒美はもらえるよな?」

 

 甲冑の男は首を放り投げ、石ころの様に軽々と転がっていく。死んでいるとはいえ、鬼の頭は悍ましく、家来達は敬遠して眺めていた。それは大名の男も同様だった。

 

「う、うぬ。お主には百貫、そして30俵の米を授けるとしよう」

「そうか。俺は城門で待ってるから、荷車で持ってきてくれ」

 

踵を返し、大名の前から立ち去る甲冑の男。その沈着冷静である立ち振舞いは、爪を隠す鷹の如く、強者の風情が窺える。

 七人隊での失敗を経験した大名にとって狂人でなく、性格的に自身の感情を剥き出していない、目の前の男は喉から手が出るほどに欲しい兵士である。

 

「そなた!わしに仕えんか?」

「お館様!?」

 

 大名は男に部下に入るよう説いた。その言葉に男は足を止めて、大名へと振り返る。

 落とし込める、そう確信した大名がしたり顔で誘い文句をつらつらと述べる。

 

「わしに仕えば、今そなたに渡す報酬の倍はもらえるぞ?しかも衣食住もついてる。これほどの破格の待遇はそなたの腕を見込んでのもの!どうだ?悪くないだーーー」

「断る」

「な、何を…」

「悪いが、俺は1人がいいんだ」

 

 ただ一言、大名の話を遮った男。低く呟いて、再び歩み出す姿はどこか苛立ちを感じさせる雰囲気であった。

 

「待て!それならば、そなたの欲しいものをくれてやろう!」

「…」

「ど、どうだ!ならば女か?」

「…」

「わしは権力はある方だぞ!この辺りのよきおなごを用意する事もできる!」

 

 男に対し、説得し続けた大名。それでも黙り決まっていた男には何も届くことはない。ただ大名が我儘を喚く子供のようで、彼自身はその様な姿を曝け出しても尚、傍若無人な男に大名はわなわなと小さな怒りを震わせる。

 彼の努力も虚しく、とうとう男の姿は見えなくなった。

 

「…やつには使い果たしたぼろい荷車を手配しろ」

「よ、良いのですか?」

「構わんわっ!!」

 

 厚畳へと身を投げたように座り込む大名。怒号によって家来達が脱兎の如く準備へと取り掛かる姿を横目に、奥に飾ってあった大鉾を見つめる。

 

「最近は思い通りにいかないのう、せめてあれを扱える者がいれば、百人力だというのに」

 

 大名は憂いを嘆きながら、独りごちた。

 

 

✳︎

 

 

 あの野郎、しつこかったな…。確かに俺の腕が最高なのはわかるけど、あんなに必死な形相だったのは少し引いてしまった。

 

 城門の鏡柱へと腰掛け、俺は報酬を積んだ荷車がやってくるのを待ち続ける。

 傭兵の仕事はこれが初となったわけだが、初めてにしては中々の上出来だ。あの大名が勢力としている規模は大きい。そんな奴が頭を悩ましていた鬼を退治したのだから、名が広まるのは容易いことだろう。仕事が波に乗るのもそう遠くない話のはずだ。

 

 あとは自由を謳歌して、この戦国の世を旅するとしよう。

 

 ふと思えば神様は俺に対して、慈悲をくれていたのかもしれない。

 長年にわたって満員電車に乗っていた社畜と称される俺はこの戦国の世へとタイムスリップしていた。生まれは小さな村…とはいえ、既に野党によって滅ぼされており、俺は物心ついていた時から、親の顔すらも覚えていなかった。

 泥を啜って何とか這いつくばって生きてきた少年時代だった。しかし幸い自身の体質が頑丈だった事を利用して、死んだ兵士達の武器を漁りながら、こうして傭兵としての生業を手に入れることができた。

 

 説明すれば、どんだけ修羅の世界に適応できてるんだと疑問を抱くだろう。しかし俺だって現代っ子の一人、人の生き死にや戦いに関してはまだ慣れておらず、なんなら鬼を退治していた時は歯をガタガタさせていた。

 だが、一つの弱みを見せると敵はそれを徹底的に追い詰めていく。特に邪な妖怪でならば尚更それが顕著になっていく。

 

 そこで表情を悟られない為に、鉄の兜を被って漫画のキャラによくある謎の多い仮面キャラ…みたいなものを演じている。

 この方が相手に威圧感も与えられるし、何だったら勝手に俺を恐れて手を出してくる事もない。

 

 今回、依頼を出してきた大名も俺を部下に招き入れるほどに強者感が出ていたという実証もあるから、これからもこんな感じで人と接していく事に決まりだ。

 

「あの傭兵殿…?」

「ヴォッ」

 

 過去を振り返りながら、これからの方針を考えながらうたた寝していると、不意に声を掛けられて思わずむせてしまった。

 何とか最小限で済んだのは良かったが、声を掛けてきた家来が怪訝な顔つきでこちらを見ていた。ここでボロを出せば、俺がヘタレであることがバレてしまうかもしれない。

 

「ヴヴッン!!…何用だ?」

「こちらで荷車の用意ができました」

 

 咳き込む真似をしながら、誤魔化していると、城門から褒美を積んだ荷車が家来達によって運ばれる。褒美自体は、俺の要求した通りに用意はされているものの…何となく荷車の外見が古いように見えた。

 

「…なんかぼろくないか?」

「すまない、これしか他に無かったんだ」

 

 苦笑いを浮かべる家来達。一瞬、表情が固まっていたのが、何やら胡散臭いがこれ以上文句を言い続けて、今後俺の仕事に支障をきたす場合もある。甘んじてい受け入れるしかないだろう。

 

「では、またご縁があれば頼みますぞ」

「あぁ。さらば」

 

 煮えきれない雰囲気に包まれながらも、俺は大名の城から立ち去った。

 

 

「お、オオォ…」

 

 

 あの荷車、とんでもない欠陥品だった。地面へと転がった俵達を茫然と見る。荷車は車輪が吹き飛び、もはや原型を留めていない。

 まさか、地に埋まっていた石の突起に車輪が衝突して砂の城よろしく次々に崩れ去っていくとは思わなかった。

 

「ンゥノヤロッ!あのナマズ髭…いい加減な事をしやがって」

 

 地面に拳を叩きつける。これから戻って新たな荷車を取り行こうとも、俵を置いていくなんてただの阿呆がやる事だ。担ぐ…そんな手段もあるが力の問題ではなく、物理的にこの量の俵を担ぐことは無理だ。

 何か紐があれば、ひもひも…ダメだ植物の繊維で紐を作ることはできたとして、この量の俵を括り付けて運べるほどの強度はありはしないだろう。

 

 なんか頑丈な紐…。

 

「そこにいたのか?人間」

 

 ひたすら紐の事を考えて座り込んでいる中、頭上から女の声が聞こえた。

 声の聞こえる方を見てみると、きわどい格好を着た十半ばの少女が空に浮かんでいた。

 真っ先に谷間を見てしまったのが、男の悲しい性。見るからに妖艶な女である事が窺え、少し興奮してしまう。しかし、表情は微笑んで入るものの瞳の奥はこちらに対して殺意が込められており、どうやら逆ナンというわけでも無かった。

 

「その口ぶり、俺を追っていたようだな」

「ええ、なにせ鬼の首をとった人間ってことでだいぶ有名みたいよ?あんた」

 

 この少女。可愛らしいにも関わらず、鬼の仲間なのか。俺が殺した鬼とは、顔も角も生えてはいない。妖怪というの不可思議だな、改めて再確認できた。

 

「では仇討ちという事だな」

「残念ながら、私はそういう話に全く興味がないの。ただ、鬼を殺したっていうあんたに生えている…」

 

 不敵に笑った少女の両手が僅かに動く。それに応じて俺は背中の長巻を抜いた…と思いきや、まるで何かに引っかかるように腕が動かない。いや動かせないと言った方がいいだろう。

 

「何だって!?」

「髪が欲しいのよ!」

 

 全く他の身体もままならず、案山子のようなっ俺に少女は腰にかけていた刀で斬りつけられた。血が辺り一面に広がってしまう。

 

「くそ…っ!」

 

 何とか甲冑と兜のお陰で、深い傷にはならなかったものの、どの道このまま血を垂れ流して死に至る。

 ならばこそ、この少女による妖術を極めるしか手はない。身体を動かす際、何かに引っかかる感触がある。金縛りの類ではなく、俺を封じているのは物理的なものだ。

 そして、俺の予想は的中する。散らばった俺の血が、目に見えない何かに伝っている。俺が理解できたのは、それが糸らしき何かということだ。

 糸使い。バトル漫画で搦手を使うのが常策であり、大概は捕縛すれば勝負有りというものだが、残念ながら、俺の馬鹿力を舐めてはいけない。

 

 それに糸を使ってるっていうのであれば、まさしく好都合。お前には、俺の荷物番という役目にしてやるよ。

 




 因みに主人公の格好はダークソウル2に出てくる騎士アーロンというキャラのまんまです。特に深い意味はないです。
 誤字や時代背景おかしくね?とかのご指摘があればよろしくお願いします。
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