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宮湖永遠。
別の街からやってきた、年上の魔法少女。私の魔法の力である過去への移動に巻き込まれているらしい、私の魔法の唯一の被害者といえる人。
軽い調子で飄々とした態度を見せているが、その意志は固く、強い。
『きっと、終わらせるよ…今回で、この世界で。あなたとこの世界を、絶対に救ってみせるよ。この私が、宮湖永遠が、あなたの魔法少女として救ってみせるよ!』
あの魔法少女の言葉が忘れられない。
少しだけ、魔法少女のことをまだ知らないでいた頃の、架空の世界の魔法少女に憧れを持っていた頃の事を思い出した。キラキラと輝くおとぎの世界の存在。杖をさらさらと振って何でも奇跡を起こしてみんなを幸せにする、そんな姿が彼女と何故か重なった。
未だに彼女がどういう人なのかは掴めないでいる。ただ、表裏のない人間性だけは少しずつだが感じるように思える。あまりにも素直すぎて、裏があるのではないかと疑ってしまう程の。
良い人なのだろう。魔法少女という過酷な現実を何年も続けて尚、心が死んでいないというのはそれだけでもその人の強さを表しているといってもいい。
未来を知っているからこそ、逃げるのではなくて立ち向かう。そして見滝原にまで赴いた。
純粋に凄いと思う。現実に立ち向かうために、あらゆるものを切り捨て、目的を達成させる。しかし切り捨てるものは本当の最小限で。そんな強さを感じた。
だからこそ、分からない。あの人が、分からない。
たった数度の出会いで全てが分かるとは到底思わないが、しかしそれでもあの魔法少女は見えないところが多すぎる。見えた部分以外のところがあまりにも分からなさすぎる。それが余計に謎を増やしている。
直近の目的は一致している。協力はありがたい。しかし、本当にそれで信じていいのだろうか。
何度も繰り返したことで、自分は臆病になっているのではないか。信じることから逃げていないか。そう自分に問いかける。
他人を信じることに対して、臆病になっていないか。期待を裏切られた時の失望を最小限にするために、必要なものまで切り捨てていないだろうか。
何度も何度も、私は自分に、暁美ほむらに問いかける。
しかしその答えがまとまることは、その日には終ぞ無かった。
●●●●○doqomo 13:21 88% ⬜︎
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人間を通常か否かだけで分別しようとする現代精... ☆
今日は使い魔を発見したよ!
ちょうどさっき見つけて倒した!
でも魔女の本体の気配は全然感じなかったな。もしかしたら使い魔だけ別の街から紛れ込んできたのかも。
アオちゃんとミズちゃんに連絡しておいたから、多分何かあっても大丈夫だと思う!
あ、さっき送った写真見てくれた? ゆうちゃんかっこよすぎてきゅんきゅんしちゃうんだけど!
相変わらず中々素直になってくれないんだけれども、そんなゆうちゃんが可愛くてかっこいいよね!
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「はぁ……」
届いたメールの中身に永遠の口から思わずため息が漏れる。あの子は必要な部分だけのメールを送る事が出来ないのだろうか。あの子からすれば後半の部分も必要なのであろうが、永遠にとっては全く必要としない部分だ。いらない情報など読む時間の無駄とさえ云える。心の中でぶつぶつ文句を言いながらメールの文章を読み返し、返信を打ち始める。そもそもなんでわざわざメッセージでなくメールで送ってきたのだろうか。無駄な手間を取っているあたりもらしいといえばらしいが、やはり分からない。
無用で無駄な文字を打つのだって時間を使うというのに、どうしてあの子はこうなのだろうか。これだからこそ、あの子なのだと言えるだろうけれど……。困った様子を見せながらもその顔は綻んでいた。
件名はどうせ文字制限に引っかかったのだろう。結局何が云いたかったのかよく分からないメールだが、まだ無事なことだけは確認できて安心した。
あの子はまだ生きている。
それだけで、安心する。生きていてくれていることが嬉しい。メールが来るまでは気が気ではない。許されるのならば、1時間ごとに電話をしてその声を確認したいくらいだ。
さすがにそんなことはできないが、やはり変わらない様子に安心するのと同時に変わらない様子に呆れてしまう。街を任せておけば、ちょっとくらいは緊張感を持って動いてくれるかなと期待したものだが、やはり無駄な期待であったようだ。直接言ってなかったとはいえ、あの子にそんな期待をするのが間違っていると彼女はため息を一つ。
生きている、それだけで、心がまだつなぎ止められる。絶望せずに済む。永遠からすれば、街は少々どうなってでも、あの子さえ生きていれば。そんな事を思う程に、彼女はその少女に依存とも云える信頼を寄せていた。
「あぁ、……」
後輩魔法少女の名を呟く。こうしてみると、なんだか恋する乙女のようではないか。常日頃から相手の事を考えているなど、まさに典型的なそれなのではないだろうか。
彼女は頭に浮かんだそんな考えに少し赤面しながらも、馬鹿らしいと頭を抑えて忘れようとする。前提として自分も相手も二人とも女じゃないか。同性同士というのは自身の考えからするとちょっといただけない。少なくとも自分は魔法少女ということ以外はマイノリティではないはずだと言い聞かせる。それに、あの子にはとっても仲の良い男の子がいるではないか。あれを恋人関係と言えば照れながらも怒ってくるけれど。
あの子が生きて幸せを享受している姿を見ていられる事は、それは則ち彼女にとっての幸せなのだ。生きている、それだけで嬉しい。
何年も魔法少女として生きていると、魔女との戦いの中で命を落とす魔法少女をどうしても見てしまう。ある魔法少女は全身を潰されて、ある魔法少女は頭から胴体を喰いちぎられて、ある魔法少女はその末路に恐怖して自ら、ある魔法少女は魔女と道連れに。
何人も見てきた。あらゆる場所で、あらゆる相手と戦い、そして散って逝った同胞たち。その度に永遠は恐怖した。恐怖で涙があふれて、足がもつれて動かなくなり、無様と言われようが子供のように泣きじゃくる。
そんな魔法少女を何人も見てきた中で、ようやく久しぶりに出会えた同じ街に住む魔法少女。大切にしない訳がない。
幸い、彼女にはそれだけの年月を生き残ってきたことでキャリアとして実力が蓄積され、守るだけの力は持ち合わせていた。
だからこそずっと守ってきた。何があっても失う事のないように。大切を守る為に。ずっとずっと。
あの日が来るまでは。
……。
いつまでもこんなことを考えるものではない。
陰鬱な気分に押しつぶされそうになったところで、永遠は頭を振って思考を切り替えた。
彼女が見滝原にやってきて、初めの一週間が終わろうとしていた。
深く考えることはなく、ただ一つの目的の為に、ただ未来を掴む為にこうしてはるばるとやって来た。
拠点の事も考えずに、見滝原での活動のことも考えずに、ただ急き立てられるように、居ても立ってもいられずにこうしてここまでやって来た。無計画ここに極まれり。
「さすがに疲れたなぁ。いつまでも気を張り続けるのも、そう簡単なことじゃないし……」
ふ、と息を吐き、永遠はだらりと全身の力を抜いていく。
昨日の巴マミ救出劇から一夜明け、彼女は見滝原に来てから初めて、その心の緊張を解いた。
瞳に意志の宿っていた力強い目はそこに目力などなく、顔は俯き気味で暗く、心無しか漂わせる雰囲気も変わっている。
素の彼女の姿がそこにあった。
宮湖永遠という少女は意図的に、二つのペルソナともいうべき簡易的な人格を形成させている。人格というには大仰で、意識というには変化が大きすぎる、そんな変化。
一つは元々自分自身が持っていた、本当の自分ともいうべきもの。もう一つは魔法少女として活動する時に活動しやすくする為に、意識を入れ替える様に作り上げたもの。
意識を切り替えることで合理的効率的に魔女退治を行う事ができ、そしてより強力な魔法少女として成長していったのだった。
しかし二つの人格というのはそもそも彼女が魔法少女になった為に作った訳でもなければ、元々そういう気質があった訳でもない。ただ、憧れの人に少しでも近づけるようにという"投影"と、必要な力を得る為にという合理的な判断によって得た物だ。
見滝原に到着し、マミら魔法少女たちと接していたときの姿は全ていわば作り上げた人格とすらいえる。他人と関わり、魔女に毅然と立ち向かう。そして魔法少女に未来と希望を与える。そんな姿を理想として作り上げた彼女の人格。
実際の彼女の元来の気質といえる性格は、それとは真逆といえるものであった。
他人と関わることを恐れ、魔女という存在に恐怖し、魔法少女に庇護される。その先にあるのは彼女に対する同胞からの失望と怒りもしくは無関心。
彼女が生まれ育ち、十数年の間で育まれた生来のものがそれであった。
自分と異なるものが何もかも怖い。恐れの対象として常に怯え続けて恐怖していた。
ずっとずっとそうして生きてきた。魔法少女として生きる人生を選択した後もずっと何もかもに恐怖していた。
魔女に恐れ、使い魔に恐れ、そして普段と変わらず他人とそれらを取り巻く全てを恐れていた。
そんな彼女もとある出会いによってその人生に大きな変化が訪れたのだった。
その出会いがなければ彼女は恐らく一生変わることはなかっただろう。だからこそ、その出会いに感謝し、そして何よりも大切にしていた。
大切で、失いたくないもの。宮湖永遠という少女が、心にずっと持ち続ける思い。
そして見滝原に来た意味。
心に巡る、様々な思い。きっと。
きっと、きっと、守るから。絶対に、終わらせるから。
ゆっくりと長い深呼吸を三度。
ふわふわとしていた頭を落ち着けて、ようやく視点が目の前に定まったところで彼女は立ち上がった。
「(えっと……、どうしよう……。とりあえず外に出ようかな……)」
そして彼女は街へと繰り出した。
別段目的がある訳でもなければ、魔女退治の為のパトロールをする為でもない。勿論繁華街が好きなどという理由もない。
彼女が現在住処としているところは、見滝原の住宅街から外れた土地に建てられた住人の居ない空き家。平和的に引っ越したのかそれとも夜逃げか。事情は知る由もないが、建てられて10年も経っていないであろう比較的新しいその小さな家の一部屋を住処として、彼女は見滝原の拠点としていた。当然悪い事であることは自覚してるし、罪悪感もあるが、今はそれよりも自身の身の方が優先だった。
勿論隠匿の為に魔法を張り巡らせては居るが、いつまでもここに居る訳にはいかない。
空き家である以上、そもそも水道や電気は使えないし、仮に通っていても使用していればメーターが動いていることで隠しきれなくなる。水道が通っていないことはつまり入浴は出来ないものの、それは身体の汚れは魔法でなんとかなる。が、食欲と睡眠には限界がある。
睡眠の問題は今はこうして屋根のある拠点があるためになんとかなっているが、食事に関しては毎回買わなくてはいけないために資金が目減りしていく一方だった。女子校生が自由に使える資金など、たかがしれている。真面目に考えないと決戦の日に食事の所為で全力を出せないというふざけた問題を解決出来ない。
金策といっても人見知りの極みともいえる彼女が出来る仕事など知れているし、そもそも仕事などしていればいざという時に動けなくなる。無計画、ここに極まれり。
その問題も解決しなければならないが、それはそれで後になって考えても問題ないだろうとやはり楽観的な思考に基づいて現実逃避に走る。今日よりも明日の方がいい考えが思い浮かぶ。それが彼女の思考スタイルであった。
住宅街から繁華街へと繋がる長い一本道をゆっくりと歩きながらふらふらと考えに耽る。今日より明日でも、今考え続けることは悪いことではない。彼女の思考はいくつもの課題と問題を解決するためにフル回転していた。
何度も経験してきた災厄の日まではすでにあと2週間ほどに迫っていた。世界を繰り返すスタート地点が大凡1ヶ月前。この時点で半分の時間を消費した事になる。無駄には、出来ない。
「(何しようかな……別に何かをするつもりは全くないんだけれど……)」
繁華街の入り口の外れでまわりをきょろきょろと見渡しながら、これからの行動を決めていく。
平日の昼を過ぎたころ、ようやく授業を終えた生徒達の姿がちらほらと見かけるようになったころ。永遠は何をするでも無く、景色を眺め、人を見ず、ただ人や雲の流れを視界に入れ、流れている音楽を頭の中に取り込んではそのまま何かを感じる前にそのまま頭から抜いていた。要するに、何もしていなかった。
ベンチに座る彼女へと視線を動かすものは居れども、まじまじと眺める人間は居ない。彼女にとってはその視線の移動さえ緊張し苦痛になるのだが、それでも今は何となく人の姿を視界に入れておきたかった。
今自分がどこにいるのかを確かめる為に。今自分が居る場所を記憶する為に。今自分がここにいる目的を忘れない為に。
十数年の間住み慣れた彼女の故郷ではなく、まったく別のところ。何故ここにいるのか。それを再び意識するために。目の前に映るその景色を、その人々を、その建物を目に映して記憶する。
いま、わたしはここにいる。
この現実を見失わないために。
そして守る為に。
彼女自分の未来を、この街の未来を。そして、時間を繰り返す少女、暁美ほむらの未来を。
魔法少女としての意識のスイッチは切っているといえども、その思考は常に魔法少女としての思考回路が働いている。魔法少女である限り、彼女はその使命を負い続ける。だからこそ、ずっとずっと考え続ける。この先の未来をつくる為に。
この青い空をずっと見続ける為に。
「あれ…?」
ぽけーと空を眺めていると、聞き覚えのあるような声が近くから聞こえてきた。上空数百メートルにまで飛んでいた意識を急いで地上にまで戻し、声のしてきた方向へと地面からゆっくりと顔を上げるようにして首を傾ける。そこにはやはり見覚えのあるような制服があった。
普段の彼女は人の顔を見て話す事がとにかく苦手である。それどころか他人を顔を合わせることに異常ともいえるほどに緊張してしまい、言葉が上手く出てこなくなるのだ。
自分に話しかけてくる人間など、この時間この場所にはいないと思い込んでいただけに、余計にその緊張と混乱は強くなる。
目線をゆっくりと少しずつ上げていく。恐る恐る、首から上へと視線を動かす。そこには、昨日会ったばかりの少女の顔があった。
「あ、やっぱり。あ、あの、覚えてますか…? 昨日、病院での魔女の結界の中で助けてもらった……」
覚えている。顔と名前は一致している。魔法少女候補生の鹿目まどか。少しおどおどした様子ではあるものの、正体不明の彼女に話しかけてくるあたり、肝は据わっているのだろうか。そんな事は頭の中でぽつりぽつりと出てくるものの、実際のところ彼女は緊張と混乱に支配されたままで、身体は硬直し、口はぱくぱくと小さく動いているだけで言葉は何も出てきていない。
同性であっても、普段の状態の永遠が会話を行うには非常に大きなエネルギーと勇気を必要とする。
そもそも彼女にとって、普段の状態でも気兼ねなく話す事の出来る相手など、家族を含めても片手で数えられる程だ。たとえ魔法少女候補であっても昨日会ったばかりで会話も一言二言ほどしか交わしていない少女など、初対面にも等しくそう簡単に会話など出来るはずもなかった。エネルギーや勇気というような問題ではなく、もはや単純に不可能といっても過言ではない。
故にどうしようも出来ない状況であった。
だが目の前の少女は仲間になる可能性のある子だ。頭の中でそう反芻させ、頑張って会話を続けようと試みる。
話しかけられたのだから、なんとか言葉を出したいと思ってはいれども、しかしちゃんとした言葉が口から出てくることはない。あ、だとか、う、みたいな意味を為さない、空気が漏れ出たようなものしか口からは出ない。頭の中ではある程度は返す言葉は思いついているのだ。しかしそれを言葉にする事が出来ない。口に出す事が出来ない。そして何も言葉を返さず、目線を合わせようとしない彼女に対してまどかは少し不審に思ったのか、少し覗き込むような姿勢をとる。
ただでさえ目の前に自分に話しかけている人間がいるというのに、それに加えて視線など合ってしまえばもう何も出来ないのは明らかであった。既に何も出来ていない以上、更に何も出来なくなってしまう。最早固まるしかなかった。
そんな状況と、緊張の限界から涙が零れそうになったところで、現状の彼女にとっての救世主が現れた。
「やぁまどか。それと永遠。君たちが二人きりで会うとは、珍しいこともあるものだね」
彼女曰くは白いぬいぐるみ。悪魔のかぶり物。その他いくつもの罵倒が混じったあだ名が付けられているキュゥべえがそこに現れた。まどかは突然現れたキュゥべえに特に驚く様子もなく、変わらない会話を繰り広げている。そんな一人と一匹の様子を少しだけ眺めたあとに、彼女はキュゥべえに対して救いの目を送った。最早今の彼女にとってテレパシーを送るのでさえ不可能な程にパニックになっている。
永遠の元々の気質をよく知っているキュゥべえは、これまでの経験から彼女が今なにを求めているのかを推測し、理解した。
それとなくまどかと会話を続けながら、なるべく永遠に会話が飛び火しないようにと微妙な会話のバランスをコントロールする。
「ところで、まどかは永遠に何か用があったのかな」
「別にそういう訳じゃないんだけど……。ただちょうど見かけたから声を掛けただけで……。あ、そうだ」
ぽんと手をならす動作をして、身体をキュゥべえから再び永遠の方へと向ける。自分との会話は終わったものだと考えていたため、永遠はまどかがこちらへ向くのと同時にびくりと反応する。
「魔法少女のことについて、少しお話を聞かせてほしいんですけど……」
永遠は困惑した。
このまま適当にキュゥべえとの中身のない受け答えをしてもらっていれば早々にどこかに行ってくれると思っていたからだ。
まさかこんな展開に繋がるとは思ってもみなかった。
永遠は困惑した。
一体どうすればいいのか、永遠には分からなかった。
というか何故自分にそんなことを聞こうとするのかさえ、永遠には理解出来なかった。この街にはすでに巴マミと暁美ほむらという先輩魔法少女がいるにも拘らず、だ。
目の前の少女にとって、永遠は別の街に住んでいてそして正体不明ともいえるような存在だ。敵か味方かもおそらくは深く理解していないだろう。そんな自分にどうして、と永遠は自問する。しかし当然のことながらその答えが出ることはない。ただひとつのヒントとして、『魔法少女の事を聞きたい』という先ほどの言葉。少なくとも、悪い方向に感情は持ってないことだけは推測されるが……。
仲が良いが故に聞けないことなのだろうか。自分も含め、ティーンエイジャーの女の子は何かと多感な時期だ。心の距離が近いが故に、余計に聞きにくいこともあるのかもしれない。だからといって、自分か……。永遠はそんな予測に行き着き、ため息を吐く。
頼られるのは一向に構わないが、しかしどうにも困った。
もう少し後であれば、いくらでも頼ってくれて構わないのだが、しかし今はまだ彼女の心の準備がまったく出来ていない。
魔法少女として意識のスイッチを変えている時であれば、いくらでも来てくれて構わないのだが、こうやって、現状の彼女に聞きにくるというのは両者にとって最悪のタイミングとしかいえなかった。
どうしよう、どうしよう。
永遠は何度も何度も頭の中で思考を巡らせる。いまここで話を聞くのが得策か、それとも適当に理由を付けてとっとと逃げるべきか。たとえ聞いたところで自分は何か出来るだろうか。というかそもそもその話をちゃんとこの子に切り出せるだろうか。
沈黙が続く。永遠はまどかと視線を合わせようとしない。それを訝しむまどかが顔を覗き込もうとしたので更に視線をずらす。
また沈黙が流れる。
永遠は冷や汗を流しながら、なんとかこの場を切り抜けられないだろうかと頭を回転させるが、如何せん彼女にとっては状況が悪すぎた。普段必要な時には十二分以上に働く彼女の頭も、今は完全に停止しているに等しい状態にあった。
普段は沈黙などものともしない彼女でも、この沈黙は気まずいものであった。なんとかしたいと思っても、頭の中には何もない。どうしようか、どうしようもないと、外面以上に内心焦りが加速している永遠。
そんな彼女のことを知ってか知らずか、その沈黙を破るのはやはり永遠ではなく、まどかであった。
「魔法少女の、契約のことについて知りたいことがあるんですけれど、お話を聞かせてもらってもいいですか?」